JP2004071746A - 電極接合体及び電極接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱疲労特性に優れ、耐久性が高い電極接合体を提供すること。
【解決手段】第1電極又は半導体素子からなる基部と、該基部に接合される第2電極と、該基部と該第2電極とを電気的に接続するはんだ層と、を有する電極接合体であって、該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもつことを特徴とする。第2電極の基部に接する面の一部に凹状部を設け、その凹状部内にはんだ層を形成することで、はんだ層の周囲を第2電極の緩衝部で拘束する。緩衝部は第2電極の基部に接する面の余部であり、凹状部を取り囲む形態をもつので、はんだ層に加わる熱応力によるはんだ層の端部の塑性変形が緩衝部によって抑制できる。従って、接合部におけるはんだ層の剥離・亀裂の発生が抑制でき、接合部の耐久性が向上する。
【選択図】 図1
【解決手段】第1電極又は半導体素子からなる基部と、該基部に接合される第2電極と、該基部と該第2電極とを電気的に接続するはんだ層と、を有する電極接合体であって、該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもつことを特徴とする。第2電極の基部に接する面の一部に凹状部を設け、その凹状部内にはんだ層を形成することで、はんだ層の周囲を第2電極の緩衝部で拘束する。緩衝部は第2電極の基部に接する面の余部であり、凹状部を取り囲む形態をもつので、はんだ層に加わる熱応力によるはんだ層の端部の塑性変形が緩衝部によって抑制できる。従って、接合部におけるはんだ層の剥離・亀裂の発生が抑制でき、接合部の耐久性が向上する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極間又は半導体素子と電極との間を接合した電極接合体及びそれらの接合方法に関し、より詳しくは耐久性に優れた電極接合体及び電極の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題、エネルギー問題等の観点から、エネルギー効率の高い電気自動車や、ハイブリッド自動車等の開発が進められている。そのような電気自動車等においてはモータの駆動用電力を制御するパワー半導体モジュールが用いられる。
【0003】
パワー半導体モジュールは内部に実装された半導体素子等からなるパワー半導体素子をもつ。パワー半導体素子はモータや電源等との間でワイヤボンド等により電気的に接続される必要がある。ワイヤボンドは、直接、パワー半導体素子上に形成すると、ワイヤボンド形成時の物理的操作により、パワー半導体素子が破損するおそれがある。そこで、ワイヤボンドを行うバッファとしてパワー半導体素子上に電極が設けられる。例えばパワー半導体素子上にモリブデン製電極をはんだ接合する従来技術がある。このパワー半導体素子上に接合した電極板上に対してアルミニウム線(φ0.35mm〜φ0.5mm)をワイヤボンドしている。モリブデン製電極をワイヤボンドにおけるバッファとして作用し、超音波ワイヤボンディング時のパワー半導体素子の破損を防止している。
【0004】
ところで、パワー半導体モジュールには高い効率と高い信頼性とが求められる。ここで、パワー半導体モジュールの効率を向上するためには、パワー半導体素子と、電極との間の接合部の抵抗を低下することが効果的である。電極とパワー半導体素子との接合部はパワー半導体モジュール中で特に大電流が流れる部分である。パワー半導体モジュールは、その作動により発熱し熱膨張を繰り返し、電極とパワー半導体素子との間における接合の熱疲労特性が信頼性向上の観点から問題となる。電極と、パワー半導体素子等の半導体素子とは一般的に異なる素材から形成されているので線膨張率が異なるからである。
【0005】
ここで、パワー半導体モジュール等の半導体デバイスにおいて、パワー半導体素子等の半導体素子と、電極とを接合する方法として、はんだ付けが汎用されている。しかしながら、はんだ付けにより接合された接合部は熱疲労特性が充分でない。そこで、特開2000−307043号公報には、パワー半導体素子と電極を導電性樹脂により接続するとともに、その接続部にスペーサを介在させたパワー半導体モジュールが提案されている。はんだの代わりに弾性率の低い導電性樹脂を採用し、更にスペーサにより導電性樹脂の厚みを制御することにより、パワー半導体素子上部に電極を設置した構造の熱疲労信頼性を確保している。
【0006】
また、特開平11−68284号公報には、パワー半導体素子に接合する電極の表面に微細な凹凸を形成することで、接合部に対して応力が均等に加わるようにするパワー半導体モジュールが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のパワー半導体モジュールは以下の不都合があった。パワー半導体モジュール等の電極接合体は通称「パワーサイクル試験」と呼ばれるヒートショックサイクル試験をクリアすることが求められる。パワーサイクル試験は電極接合体の接合部に大電流を断続的に通電して接合部の温度を周期的に変化させる試験である。接合部の温度を低温と高温との間で非常に多くの回数、高速変化させることで電極接合体の接合部の熱疲労特性を試験する。従来の電極接合体はパワーサイクル試験における温度変化条件がΔTj=60℃(ΔTj:接合部の1サイクルにおける温度変化幅)で120万回程度でパワー半導体素子と電極との接合部に亀裂が生じ電気的特性の劣化が認められた。自動車用途のパワー半導体モジュールでは温度変化条件がΔTj=100℃と更に過酷な条件で試験を行うほか、他の試験項目である冷熱サイクル試験ではΔTj=140℃の温度変化を加えたときの熱疲労特性が問題となっており、接合部の耐久性の確保は一層困難である。また、パワー半導体素子と電極との接合に導電性高分子を用いた特開2000−307043号公報では、導電性樹脂の導電性が充分とはいえず、必要な電気的特性を満たすことができなかった。
【0008】
電極接合体の熱疲労特性を向上するためには、パワー半導体素子及び電極についてそれぞれの線膨張率を近づけることが有効であると考えられるが、パワー半導体素子と線膨張率が近いモリブデンからなる電極を用いた特開2000−307043号公報のパワー半導体モジュールでも接合部の破壊を防止できなかった。
【0009】
パワー半導体素子を構成するシリコンの線膨張率は3〜4×10−6/℃程度であり、この値と差が小さいモリブデン(線膨張率:4.9×10−6/℃)、銅−モリブデン(線膨張率:8.9×10−6/℃)等の採用が検討されているが、熱疲労特性は充分でなかった。接合部の温度変化に伴い大きな塑性歪み(熱歪み)が発生することに起因して亀裂が発生し、発生した亀裂が徐々に接合部の内部にまで進展して最終的にはパワー半導体モジュールの電気的特性劣化や接合部の破壊に至る。また、安価な材料である銅(線膨張率:17×10−6/℃)やアルミニウム(線膨張率:25×10−6/℃)の使用が望まれる。
【0010】
そして、特開平11−68284号公報に開示された技術は、充分な熱疲労特性を有していないばかりか、電極に対して微細な加工を行う必要があり加工性が低いので、低コストでの作成が困難であった。
【0011】
そこで本発明では熱疲労特性に優れ、耐久性が高い電極接合体を提供することを解決すべき課題とする。また、耐久性の高い電極接合体を製造できる電極の接合方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究を行った結果、以下の電極接合体を発明した。すなわち、本発明の電極接合体は、第1電極又は半導体素子からなる基部と、該基部に接合される第2電極と、該基部と該第2電極とを電気的に接続するはんだ層と、を有する電極接合体であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもつことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
更に上記課題を解決する本発明の電極の接合方法は、第1電極又は半導体素子からなる基部上に、はんだを介して第2電極を載せる載置工程と、該はんだを溶融し該基部と該第2電極との間にはんだ層を形成して接合する接合工程と、を有する電極接合方法であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもち、
該載置工程は、該基部と該緩衝部との間に接着剤を介在させる工程を含むことを特徴とする(請求項3)。
【0014】
第2電極の基部に接する面の一部に凹状部を設け、その凹状部内にはんだ層を形成することで、はんだ層の周囲を第2電極の緩衝部で拘束する。緩衝部は第2電極の基部に接する面の余部であり、凹状部を取り囲む形態をもつ。その結果、はんだ層に加わる熱応力によるはんだ層の端部の塑性変形が緩衝部によって抑制できる。従って、接合部におけるはんだ層の剥離・亀裂の発生が抑制でき、接合部の耐久性が向上する。その結果、従来線膨張率の観点から使用が困難であったアルミニウム、銅等の安価であって、加工性に優れ且つ電気的特性にも優れた素材を第2電極に対して用いることができる。アルミニウム、銅等は熱的性質にも優れるので、基部が半導体素子である場合に、放熱性、均熱性等に優れた電極接合体を提供することができる。
【0015】
そして、前記第2電極は、前記凹状部の該内部と外部とを連通する連通孔をもつことが好ましい(請求項2、4)。電極接合体の製造時において、溶融したはんだを充填することで凹状部内にはんだ層を形成する場合に、凹状部とはんだ層との間に残存しやすい雰囲気中の気体をこの連通孔から除去することができる。残存する気体はボイドを形成し、はんだ層と第2電極との間の電気的・熱的接続を阻害する。従って、より確実に第2電極及びはんだ層、そしてはんだ層及び基部の間の密着性を向上することができ、はんだ層をより拘束できるので熱による歪みの発生をより抑制できる。更に密着性が向上することで熱的・電気的更には機械的性質がより優れた電極接合体を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(電極接合体)
本実施形態の電極接合体は、基部と、その基部に接合される第2電極と、それら第1電極及び第2電極の間に配設されるはんだ層とを有する。基部は第1電極又は半導体素子である。第1電極は更に何らかの部材に接合されている。第1電極とその部材との接合方法は特に限定しない。半導体素子は例えばIGBT等のパワー半導体素子である。パワー半導体素子は大電流を外部に導出することが必要である。第2電極は基部に対して主にはんだ層を介して電気的に接続される。更に、第2電極にはワイヤボンド等がなされて、基部と外部の部材とを電気的に接続する。
【0017】
第1電極及び/又は第2電極の形状は特に限定しない。好ましい形状として、板状体が例示できる。従来は熱歪みを低減するために第2電極を薄くすることが行われていたが(例えば、0.2mm以下)、熱疲労特性に優れた本実施形態の電極接合体では第2電極を厚くすることが可能となる(例えば、0.2〜5mm程度)。その結果、第2電極が均熱効果を発揮でき、基部の温度分布を均一化でき、安定動作が期待できる。
【0018】
第1電極及び/又は第2電極を構成する素材は、それぞれ接合されている部材(例えばシリコン製の半導体素子)の素材と線膨張率が近い素材を選択することが好ましい。例えば、シリコンに対して線膨張率が近い素材としてはモリブデン、銅−モリブデン合金等が挙げられる。なお、特に線膨張率が近い素材を選択しなくても、本発明の電極接合体は高い耐久性を発揮できる。例えば、低コスト且つ電気伝導性に優れた素材であるアルミニウムや銅を用いることができる。
【0019】
第2電極は基部と接する側の面の一部に凹状部をもつ。凹状部は内部にはんだ層が形成される。ここで、凹状部にはその凹状部の内部と外部とを連通する連通孔をもつことが好ましい。例えば、連通孔は、第2電極が板状体である場合に、第2電極の厚み方向を貫通する方向に設けることができる。更に、第2電極の基部と接する側の面には、前述した凹状部を取り囲むように、緩衝部をもつ。緩衝部は基部と固定されている。緩衝部を基部に固定する方法としては特に限定しない。好ましくは弾性率が低い素材、例えば樹脂、からなる接着剤を用いる。はんだ層の周囲を緩衝部で取り囲むことで、はんだ層の端部に加わる熱応力を低減できる。
【0020】
はんだ層を構成するはんだは特に限定されず一般的なはんだを用いることができる。
【0021】
(電極の接合方法)
本実施形態の電極の接合方法は、載置工程と接合工程とを有する。載置工程は基部上に接着剤とはんだを介して第2電極を載せる工程である。接合工程はそのはんだを加熱溶融して基部と第2電極との間にはんだ層を形成する工程である。本接合方法で用いる基部、第2電極及びはんだは前述した電極接合体で説明したものと同じであり、更なる説明は省略する。
【0022】
載置工程では、接着剤及びはんだを基部上の第2電極が接合される部位に載置する。接着剤は第2電極の緩衝部が接する部位に載置する。接着剤の種類は特に限定しないが、後述する接合工程において加熱を行うので、加熱により硬化する熱硬化性樹脂を用いることが加工性・取り扱い性の観点から好ましい。はんだは第2電極の凹状部が接する部位に載置する。はんだを載置する量は凹状部内を完全に充填できる量とすることが好ましい。はんだの量を凹状部内を完全に充填できる量とすることで、基部と第2電極との間に隙間を生ずることがなくなり、基部と第2電極との間の電気的接続を充分に達成できる。
【0023】
ここで、第2電極の凹状部には前述した連通孔をもつことが好ましい。連通孔をもつことで基部上に載置するはんだの量を多少多くしても連通孔から余剰のはんだを流出でき、はんだが基部と第2電極との間から漏れ出すことがなくなる。連通孔を設ける位置としては特に限定しないが、第2電極にワイヤボンドを行う場合には、ワイヤボンドを形成するスペースを充分に残すことが望まれる。例えば、ワイヤボンドを1箇所設けるのに必要な大きさとして、幅0.7mm、長さ1.5mm程度のスペースを設けるように、連通孔を設けることが好ましい。
【0024】
第2電極の凹状部はどのように形成しても良い。例えば、プレス加工、切削加工等の公知の方法が採用できる。特にプレス加工が簡便で安価に凹状部を形成できるので好ましい。
【0025】
接合工程は、基部と、その基部上に載置した、接着剤、はんだ及び第2電極とを加熱し、はんだを溶融させることで、基部と第2電極との間にはんだ層を形成する。はんだ層は第2電極の凹状部内に形成される。はんだを加熱溶融する方法は特に限定されず一般的な方法が採用できる。
【0026】
【実施例】
本実施例の電極接合体としてのパワー半導体モジュールについて説明する。本パワー半導体モジュールは、図1に示すように、第2電極5が、基部としてのパワー半導体素子4上にはんだ層3cを介して接合されている。パワー半導体素子4は下面側にはんだ層3bを介して絶縁基板2が接合される。更に絶縁基板2の下面側には放熱板1がはんだ層3aを介して接合される。
【0027】
第2電極5は、図2に示すように、パワー半導体素子4に接する側の面に凹状部52をもつ。凹状部52の周囲は緩衝部51によって完全に取り囲まれている。緩衝部51は同一平面にあり、接着剤層6を介してパワー半導体素子5に固定されている。凹状部52は内部に連通孔53をもつ。連通孔53は第2電極5を貫通して、凹状部53の内部と第2電極5の凹状部53と反対側の面とを連通する。第2電極の表面にはアルミニウム製のワイヤボンド(図略)が形成されている。
【0028】
本電極接合体を製造する方法としては、放熱板1、はんだ層3aとなるはんだ箔、絶縁基板2、はんだ層3bとなるはんだ箔、パワー半導体素子4をこの順に積層し、更に、パワー半導体素子4上に第2電極5を載せて(載置工程)、はんだ溶融炉内で加熱して、それぞれのはんだを溶融させて接合する(接合工程)。パワー半導体素子4と第2電極5との間には接着剤層6となる接着剤(熱硬化性樹脂)と凹状部52内を充填するはんだ層3cとなるはんだとを載置する。接着剤は、パワー半導体素子4上であって、第2電極5の緩衝部51が接する部位に配設され、接合工程における加熱で固化し、緩衝部51とパワー半導体素子4とを接合する。はんだは、パワー半導体素子4上であって、第2電極5の凹状部52が接する部位に配設する。はんだを配設する量としては凹状部52内を完全に充填するよりも僅かに多い量とすることでより確実に凹状部52内をはんだ層3cで充填することができる。余分なはんだは、はんだが溶融したときに連通孔53内にあふれ出し、パワー半導体素子4と第2電極5との間からはみ出ることはない。はんだ溶融炉内では第2電極5の上から圧力を加えることで、パワー半導体素子4と第2電極5との間の密着性を向上できる。
【0029】
図1に示したパワー半導体モジュールを用いてパワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層3cの端部において発生する塑性歪み振幅を解析した。塑性歪み振幅の解析は有限要素法により行った。解析条件としては、温度変化条件をΔTj=140℃として行った。塑性歪み振幅はΔTj=140℃とした温度変化を応力として加えたときの応力−歪み曲線を算出して求めた塑性変形の差分の全体に対する百分率として求めた。
【0030】
実施例において、解析に用いたモデルは、放熱板1が銅−モリブデン製で厚みが3mmであり、絶縁基板2がアルミニウム/窒化アルミニウム/アルミニウムの3層構造でそれぞれの厚みが0.4mm/0.635mm/0.4mmであって、パワー半導体素子4が厚みが0.37mmであり、第2電極5が厚みが0.4mmで凹状部52の深さが0.2mmである。第2電極5の材質はモリブデン(実施例1)及び銅(実施例2)の2種類を検討した。はんだ層はそれぞれはんだ層3aが0.25mm、はんだ層3bが0.1mm、はんだ層3cが0.25mmである。接着剤層6は厚みが0.05mmである。従って、パワー半導体素子4と第2電極5との間の厚みは0.25mmである。
【0031】
比較例としてのパワー半導体モジュールは図1に示したパワー半導体モジュールのうち、第2電極5の形状の厚みが0.2mmの一様な平板状であり、パワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層の厚みが0.25mmである以外は同じである(モリブデン:比較例1、銅:比較例2)。また、比較例3:モリブデン、比較例4:銅として、それぞれ第2電極の厚みを3mmとしたパワー半導体モジュールについても塑性歪み振幅を求めた。
【0032】
パワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層の端部の塑性歪み振幅は、比較例1の結果を1とした場合の相対値で表すと、実施例1が0.20、実施例2が0.37、比較例2が4.64であった。はんだ層の端部の塑性歪み振幅の大きさが小さいほど熱疲労特性に優れている。モリブデンも用いた実施例1のパワー半導体モジュールは比較例1と比較して5分の1以下にまで塑性歪みの値が低減できた。また、銅を用いた実施例2のパワー半導体モジュールは比較例2と比較して12分の1以下にまで塑性歪みの値が低減できた。実施例1、2共に塑性歪み振幅が著しく低減できヒートショック等に対して高い耐性をもつことが予測できる。
【0033】
前述した比較例1及び比較例2のパワー半導体モジュールについて、第2電極の厚みをそれぞれ3mmとして実際に冷熱衝撃試験を行った。試験条件は低温条件としての−40℃と、高温条件としての105℃とで各7分間放置するもので、低温条件から高温条件(高温条件から低温条件)への移行を1分間かけて行った。低温条件から高温条件、そして低温条件への変化を合わせて1サイクルとし、3000サイクルの冷熱衝撃試験を行った後のパワー半導体モジュールの外観を調べた。パワー半導体素子と第2電極との間のはんだ層について、クラックの発生の有無をもって合格・不合格を決定した。試験の結果、第2電極にモリブデンを用いた比較例3が合格であり、第2電極に銅を用いた比較例4が不合格であった。
【0034】
比較例3のパワー半導体モジュールにおける塑性歪み振幅は3.2%であり、比較例4のパワー半導体モジュールにおける塑性歪み振幅は8.3%であった。従って、好ましい塑性歪み振幅の大きさとしては3.2%以下であり、更に好ましくは2.6%以下である。電極接合体の接合部における塑性歪み振幅の値が、これら好ましい値となるように、電極接合体を構成する凹状部の形状、第2電極の厚み、はんだ層の厚み接着剤層の厚み等を改変することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における電極接合体の断面概略図である。
【図2】実施例における第2電極の正面図である。
【符号の説明】
1…放熱板
2…絶縁基板
3a、3b、3c…はんだ層
4…パワー半導体素子
5…第2電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極間又は半導体素子と電極との間を接合した電極接合体及びそれらの接合方法に関し、より詳しくは耐久性に優れた電極接合体及び電極の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題、エネルギー問題等の観点から、エネルギー効率の高い電気自動車や、ハイブリッド自動車等の開発が進められている。そのような電気自動車等においてはモータの駆動用電力を制御するパワー半導体モジュールが用いられる。
【0003】
パワー半導体モジュールは内部に実装された半導体素子等からなるパワー半導体素子をもつ。パワー半導体素子はモータや電源等との間でワイヤボンド等により電気的に接続される必要がある。ワイヤボンドは、直接、パワー半導体素子上に形成すると、ワイヤボンド形成時の物理的操作により、パワー半導体素子が破損するおそれがある。そこで、ワイヤボンドを行うバッファとしてパワー半導体素子上に電極が設けられる。例えばパワー半導体素子上にモリブデン製電極をはんだ接合する従来技術がある。このパワー半導体素子上に接合した電極板上に対してアルミニウム線(φ0.35mm〜φ0.5mm)をワイヤボンドしている。モリブデン製電極をワイヤボンドにおけるバッファとして作用し、超音波ワイヤボンディング時のパワー半導体素子の破損を防止している。
【0004】
ところで、パワー半導体モジュールには高い効率と高い信頼性とが求められる。ここで、パワー半導体モジュールの効率を向上するためには、パワー半導体素子と、電極との間の接合部の抵抗を低下することが効果的である。電極とパワー半導体素子との接合部はパワー半導体モジュール中で特に大電流が流れる部分である。パワー半導体モジュールは、その作動により発熱し熱膨張を繰り返し、電極とパワー半導体素子との間における接合の熱疲労特性が信頼性向上の観点から問題となる。電極と、パワー半導体素子等の半導体素子とは一般的に異なる素材から形成されているので線膨張率が異なるからである。
【0005】
ここで、パワー半導体モジュール等の半導体デバイスにおいて、パワー半導体素子等の半導体素子と、電極とを接合する方法として、はんだ付けが汎用されている。しかしながら、はんだ付けにより接合された接合部は熱疲労特性が充分でない。そこで、特開2000−307043号公報には、パワー半導体素子と電極を導電性樹脂により接続するとともに、その接続部にスペーサを介在させたパワー半導体モジュールが提案されている。はんだの代わりに弾性率の低い導電性樹脂を採用し、更にスペーサにより導電性樹脂の厚みを制御することにより、パワー半導体素子上部に電極を設置した構造の熱疲労信頼性を確保している。
【0006】
また、特開平11−68284号公報には、パワー半導体素子に接合する電極の表面に微細な凹凸を形成することで、接合部に対して応力が均等に加わるようにするパワー半導体モジュールが提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のパワー半導体モジュールは以下の不都合があった。パワー半導体モジュール等の電極接合体は通称「パワーサイクル試験」と呼ばれるヒートショックサイクル試験をクリアすることが求められる。パワーサイクル試験は電極接合体の接合部に大電流を断続的に通電して接合部の温度を周期的に変化させる試験である。接合部の温度を低温と高温との間で非常に多くの回数、高速変化させることで電極接合体の接合部の熱疲労特性を試験する。従来の電極接合体はパワーサイクル試験における温度変化条件がΔTj=60℃(ΔTj:接合部の1サイクルにおける温度変化幅)で120万回程度でパワー半導体素子と電極との接合部に亀裂が生じ電気的特性の劣化が認められた。自動車用途のパワー半導体モジュールでは温度変化条件がΔTj=100℃と更に過酷な条件で試験を行うほか、他の試験項目である冷熱サイクル試験ではΔTj=140℃の温度変化を加えたときの熱疲労特性が問題となっており、接合部の耐久性の確保は一層困難である。また、パワー半導体素子と電極との接合に導電性高分子を用いた特開2000−307043号公報では、導電性樹脂の導電性が充分とはいえず、必要な電気的特性を満たすことができなかった。
【0008】
電極接合体の熱疲労特性を向上するためには、パワー半導体素子及び電極についてそれぞれの線膨張率を近づけることが有効であると考えられるが、パワー半導体素子と線膨張率が近いモリブデンからなる電極を用いた特開2000−307043号公報のパワー半導体モジュールでも接合部の破壊を防止できなかった。
【0009】
パワー半導体素子を構成するシリコンの線膨張率は3〜4×10−6/℃程度であり、この値と差が小さいモリブデン(線膨張率:4.9×10−6/℃)、銅−モリブデン(線膨張率:8.9×10−6/℃)等の採用が検討されているが、熱疲労特性は充分でなかった。接合部の温度変化に伴い大きな塑性歪み(熱歪み)が発生することに起因して亀裂が発生し、発生した亀裂が徐々に接合部の内部にまで進展して最終的にはパワー半導体モジュールの電気的特性劣化や接合部の破壊に至る。また、安価な材料である銅(線膨張率:17×10−6/℃)やアルミニウム(線膨張率:25×10−6/℃)の使用が望まれる。
【0010】
そして、特開平11−68284号公報に開示された技術は、充分な熱疲労特性を有していないばかりか、電極に対して微細な加工を行う必要があり加工性が低いので、低コストでの作成が困難であった。
【0011】
そこで本発明では熱疲労特性に優れ、耐久性が高い電極接合体を提供することを解決すべき課題とする。また、耐久性の高い電極接合体を製造できる電極の接合方法を提供することを解決すべき課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
上記課題を解決する目的で本発明者らは鋭意研究を行った結果、以下の電極接合体を発明した。すなわち、本発明の電極接合体は、第1電極又は半導体素子からなる基部と、該基部に接合される第2電極と、該基部と該第2電極とを電気的に接続するはんだ層と、を有する電極接合体であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもつことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
更に上記課題を解決する本発明の電極の接合方法は、第1電極又は半導体素子からなる基部上に、はんだを介して第2電極を載せる載置工程と、該はんだを溶融し該基部と該第2電極との間にはんだ層を形成して接合する接合工程と、を有する電極接合方法であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもち、
該載置工程は、該基部と該緩衝部との間に接着剤を介在させる工程を含むことを特徴とする(請求項3)。
【0014】
第2電極の基部に接する面の一部に凹状部を設け、その凹状部内にはんだ層を形成することで、はんだ層の周囲を第2電極の緩衝部で拘束する。緩衝部は第2電極の基部に接する面の余部であり、凹状部を取り囲む形態をもつ。その結果、はんだ層に加わる熱応力によるはんだ層の端部の塑性変形が緩衝部によって抑制できる。従って、接合部におけるはんだ層の剥離・亀裂の発生が抑制でき、接合部の耐久性が向上する。その結果、従来線膨張率の観点から使用が困難であったアルミニウム、銅等の安価であって、加工性に優れ且つ電気的特性にも優れた素材を第2電極に対して用いることができる。アルミニウム、銅等は熱的性質にも優れるので、基部が半導体素子である場合に、放熱性、均熱性等に優れた電極接合体を提供することができる。
【0015】
そして、前記第2電極は、前記凹状部の該内部と外部とを連通する連通孔をもつことが好ましい(請求項2、4)。電極接合体の製造時において、溶融したはんだを充填することで凹状部内にはんだ層を形成する場合に、凹状部とはんだ層との間に残存しやすい雰囲気中の気体をこの連通孔から除去することができる。残存する気体はボイドを形成し、はんだ層と第2電極との間の電気的・熱的接続を阻害する。従って、より確実に第2電極及びはんだ層、そしてはんだ層及び基部の間の密着性を向上することができ、はんだ層をより拘束できるので熱による歪みの発生をより抑制できる。更に密着性が向上することで熱的・電気的更には機械的性質がより優れた電極接合体を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(電極接合体)
本実施形態の電極接合体は、基部と、その基部に接合される第2電極と、それら第1電極及び第2電極の間に配設されるはんだ層とを有する。基部は第1電極又は半導体素子である。第1電極は更に何らかの部材に接合されている。第1電極とその部材との接合方法は特に限定しない。半導体素子は例えばIGBT等のパワー半導体素子である。パワー半導体素子は大電流を外部に導出することが必要である。第2電極は基部に対して主にはんだ層を介して電気的に接続される。更に、第2電極にはワイヤボンド等がなされて、基部と外部の部材とを電気的に接続する。
【0017】
第1電極及び/又は第2電極の形状は特に限定しない。好ましい形状として、板状体が例示できる。従来は熱歪みを低減するために第2電極を薄くすることが行われていたが(例えば、0.2mm以下)、熱疲労特性に優れた本実施形態の電極接合体では第2電極を厚くすることが可能となる(例えば、0.2〜5mm程度)。その結果、第2電極が均熱効果を発揮でき、基部の温度分布を均一化でき、安定動作が期待できる。
【0018】
第1電極及び/又は第2電極を構成する素材は、それぞれ接合されている部材(例えばシリコン製の半導体素子)の素材と線膨張率が近い素材を選択することが好ましい。例えば、シリコンに対して線膨張率が近い素材としてはモリブデン、銅−モリブデン合金等が挙げられる。なお、特に線膨張率が近い素材を選択しなくても、本発明の電極接合体は高い耐久性を発揮できる。例えば、低コスト且つ電気伝導性に優れた素材であるアルミニウムや銅を用いることができる。
【0019】
第2電極は基部と接する側の面の一部に凹状部をもつ。凹状部は内部にはんだ層が形成される。ここで、凹状部にはその凹状部の内部と外部とを連通する連通孔をもつことが好ましい。例えば、連通孔は、第2電極が板状体である場合に、第2電極の厚み方向を貫通する方向に設けることができる。更に、第2電極の基部と接する側の面には、前述した凹状部を取り囲むように、緩衝部をもつ。緩衝部は基部と固定されている。緩衝部を基部に固定する方法としては特に限定しない。好ましくは弾性率が低い素材、例えば樹脂、からなる接着剤を用いる。はんだ層の周囲を緩衝部で取り囲むことで、はんだ層の端部に加わる熱応力を低減できる。
【0020】
はんだ層を構成するはんだは特に限定されず一般的なはんだを用いることができる。
【0021】
(電極の接合方法)
本実施形態の電極の接合方法は、載置工程と接合工程とを有する。載置工程は基部上に接着剤とはんだを介して第2電極を載せる工程である。接合工程はそのはんだを加熱溶融して基部と第2電極との間にはんだ層を形成する工程である。本接合方法で用いる基部、第2電極及びはんだは前述した電極接合体で説明したものと同じであり、更なる説明は省略する。
【0022】
載置工程では、接着剤及びはんだを基部上の第2電極が接合される部位に載置する。接着剤は第2電極の緩衝部が接する部位に載置する。接着剤の種類は特に限定しないが、後述する接合工程において加熱を行うので、加熱により硬化する熱硬化性樹脂を用いることが加工性・取り扱い性の観点から好ましい。はんだは第2電極の凹状部が接する部位に載置する。はんだを載置する量は凹状部内を完全に充填できる量とすることが好ましい。はんだの量を凹状部内を完全に充填できる量とすることで、基部と第2電極との間に隙間を生ずることがなくなり、基部と第2電極との間の電気的接続を充分に達成できる。
【0023】
ここで、第2電極の凹状部には前述した連通孔をもつことが好ましい。連通孔をもつことで基部上に載置するはんだの量を多少多くしても連通孔から余剰のはんだを流出でき、はんだが基部と第2電極との間から漏れ出すことがなくなる。連通孔を設ける位置としては特に限定しないが、第2電極にワイヤボンドを行う場合には、ワイヤボンドを形成するスペースを充分に残すことが望まれる。例えば、ワイヤボンドを1箇所設けるのに必要な大きさとして、幅0.7mm、長さ1.5mm程度のスペースを設けるように、連通孔を設けることが好ましい。
【0024】
第2電極の凹状部はどのように形成しても良い。例えば、プレス加工、切削加工等の公知の方法が採用できる。特にプレス加工が簡便で安価に凹状部を形成できるので好ましい。
【0025】
接合工程は、基部と、その基部上に載置した、接着剤、はんだ及び第2電極とを加熱し、はんだを溶融させることで、基部と第2電極との間にはんだ層を形成する。はんだ層は第2電極の凹状部内に形成される。はんだを加熱溶融する方法は特に限定されず一般的な方法が採用できる。
【0026】
【実施例】
本実施例の電極接合体としてのパワー半導体モジュールについて説明する。本パワー半導体モジュールは、図1に示すように、第2電極5が、基部としてのパワー半導体素子4上にはんだ層3cを介して接合されている。パワー半導体素子4は下面側にはんだ層3bを介して絶縁基板2が接合される。更に絶縁基板2の下面側には放熱板1がはんだ層3aを介して接合される。
【0027】
第2電極5は、図2に示すように、パワー半導体素子4に接する側の面に凹状部52をもつ。凹状部52の周囲は緩衝部51によって完全に取り囲まれている。緩衝部51は同一平面にあり、接着剤層6を介してパワー半導体素子5に固定されている。凹状部52は内部に連通孔53をもつ。連通孔53は第2電極5を貫通して、凹状部53の内部と第2電極5の凹状部53と反対側の面とを連通する。第2電極の表面にはアルミニウム製のワイヤボンド(図略)が形成されている。
【0028】
本電極接合体を製造する方法としては、放熱板1、はんだ層3aとなるはんだ箔、絶縁基板2、はんだ層3bとなるはんだ箔、パワー半導体素子4をこの順に積層し、更に、パワー半導体素子4上に第2電極5を載せて(載置工程)、はんだ溶融炉内で加熱して、それぞれのはんだを溶融させて接合する(接合工程)。パワー半導体素子4と第2電極5との間には接着剤層6となる接着剤(熱硬化性樹脂)と凹状部52内を充填するはんだ層3cとなるはんだとを載置する。接着剤は、パワー半導体素子4上であって、第2電極5の緩衝部51が接する部位に配設され、接合工程における加熱で固化し、緩衝部51とパワー半導体素子4とを接合する。はんだは、パワー半導体素子4上であって、第2電極5の凹状部52が接する部位に配設する。はんだを配設する量としては凹状部52内を完全に充填するよりも僅かに多い量とすることでより確実に凹状部52内をはんだ層3cで充填することができる。余分なはんだは、はんだが溶融したときに連通孔53内にあふれ出し、パワー半導体素子4と第2電極5との間からはみ出ることはない。はんだ溶融炉内では第2電極5の上から圧力を加えることで、パワー半導体素子4と第2電極5との間の密着性を向上できる。
【0029】
図1に示したパワー半導体モジュールを用いてパワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層3cの端部において発生する塑性歪み振幅を解析した。塑性歪み振幅の解析は有限要素法により行った。解析条件としては、温度変化条件をΔTj=140℃として行った。塑性歪み振幅はΔTj=140℃とした温度変化を応力として加えたときの応力−歪み曲線を算出して求めた塑性変形の差分の全体に対する百分率として求めた。
【0030】
実施例において、解析に用いたモデルは、放熱板1が銅−モリブデン製で厚みが3mmであり、絶縁基板2がアルミニウム/窒化アルミニウム/アルミニウムの3層構造でそれぞれの厚みが0.4mm/0.635mm/0.4mmであって、パワー半導体素子4が厚みが0.37mmであり、第2電極5が厚みが0.4mmで凹状部52の深さが0.2mmである。第2電極5の材質はモリブデン(実施例1)及び銅(実施例2)の2種類を検討した。はんだ層はそれぞれはんだ層3aが0.25mm、はんだ層3bが0.1mm、はんだ層3cが0.25mmである。接着剤層6は厚みが0.05mmである。従って、パワー半導体素子4と第2電極5との間の厚みは0.25mmである。
【0031】
比較例としてのパワー半導体モジュールは図1に示したパワー半導体モジュールのうち、第2電極5の形状の厚みが0.2mmの一様な平板状であり、パワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層の厚みが0.25mmである以外は同じである(モリブデン:比較例1、銅:比較例2)。また、比較例3:モリブデン、比較例4:銅として、それぞれ第2電極の厚みを3mmとしたパワー半導体モジュールについても塑性歪み振幅を求めた。
【0032】
パワー半導体素子4と第2電極5との間のはんだ層の端部の塑性歪み振幅は、比較例1の結果を1とした場合の相対値で表すと、実施例1が0.20、実施例2が0.37、比較例2が4.64であった。はんだ層の端部の塑性歪み振幅の大きさが小さいほど熱疲労特性に優れている。モリブデンも用いた実施例1のパワー半導体モジュールは比較例1と比較して5分の1以下にまで塑性歪みの値が低減できた。また、銅を用いた実施例2のパワー半導体モジュールは比較例2と比較して12分の1以下にまで塑性歪みの値が低減できた。実施例1、2共に塑性歪み振幅が著しく低減できヒートショック等に対して高い耐性をもつことが予測できる。
【0033】
前述した比較例1及び比較例2のパワー半導体モジュールについて、第2電極の厚みをそれぞれ3mmとして実際に冷熱衝撃試験を行った。試験条件は低温条件としての−40℃と、高温条件としての105℃とで各7分間放置するもので、低温条件から高温条件(高温条件から低温条件)への移行を1分間かけて行った。低温条件から高温条件、そして低温条件への変化を合わせて1サイクルとし、3000サイクルの冷熱衝撃試験を行った後のパワー半導体モジュールの外観を調べた。パワー半導体素子と第2電極との間のはんだ層について、クラックの発生の有無をもって合格・不合格を決定した。試験の結果、第2電極にモリブデンを用いた比較例3が合格であり、第2電極に銅を用いた比較例4が不合格であった。
【0034】
比較例3のパワー半導体モジュールにおける塑性歪み振幅は3.2%であり、比較例4のパワー半導体モジュールにおける塑性歪み振幅は8.3%であった。従って、好ましい塑性歪み振幅の大きさとしては3.2%以下であり、更に好ましくは2.6%以下である。電極接合体の接合部における塑性歪み振幅の値が、これら好ましい値となるように、電極接合体を構成する凹状部の形状、第2電極の厚み、はんだ層の厚み接着剤層の厚み等を改変することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における電極接合体の断面概略図である。
【図2】実施例における第2電極の正面図である。
【符号の説明】
1…放熱板
2…絶縁基板
3a、3b、3c…はんだ層
4…パワー半導体素子
5…第2電極
Claims (4)
- 第1電極又は半導体素子からなる基部と、該基部に接合される第2電極と、該基部と該第2電極とを電気的に接続するはんだ層と、を有する電極接合体であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもつことを特徴とする電極接合体。 - 前記第2電極は、前記凹状部の該内部と外部とを連通する連通孔をもつ請求項1に記載の電極接合体。
- 第1電極又は半導体素子からなる基部上に、はんだを介して第2電極を載せる載置工程と、該はんだを溶融し該基部と該第2電極との間にはんだ層を形成して接合する接合工程と、を有する電極接合方法であって、
該第2電極は、該基部と接する側の面の一部に設けられ且つ該はんだ層が内部に充填される凹状部と、該面の残部であって、該凹状部を取り囲み且つ該基部に固定される緩衝部と、をもち、
該載置工程は、該基部と該緩衝部との間に接着剤を介在させる工程を含むことを特徴とする電極接合方法。 - 前記第2電極は、前記凹状部の該内部と外部とを連通する連通孔をもつ請求項3に記載の電極接合方法。
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Cited By (1)
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JP2012244132A (ja) * | 2011-05-24 | 2012-12-10 | Hitachi Ltd | 半導体装置 |
-
2002
- 2002-08-05 JP JP2002227193A patent/JP2004071746A/ja active Pending
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