JP2004071036A - 高密度光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【目的】2光子過程イオン化フォトクロムミズムという新規で画期的な記録原理と現行の追記型、書換え可能型の光記録媒体の技術との組み合わせにより、高密度、且つ大容量のリムーバブルな光記録体を提供することを目的とする。
【構成】高分子材料中に有機色素、もしくは低分子化合物をドープした記録材料に対して、記録材料自身もしくは記録材料を積層した基板に物理的な凹凸を形成することによりアドレス情報を入れたことを特徴とする光記録媒体である。
【選択図】 図2
【構成】高分子材料中に有機色素、もしくは低分子化合物をドープした記録材料に対して、記録材料自身もしくは記録材料を積層した基板に物理的な凹凸を形成することによりアドレス情報を入れたことを特徴とする光記録媒体である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2光子過程を利用した高密度光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、社会の高度情報化の進展は目覚ましく、多くの情報を記録でき、またそれを移動、携帯できるような媒体が社会生活において不可欠のものとなっている。現在、そのようなリムーバブルな大容量媒体として、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等の追記型、書換え可能型の光記録媒体が広く普及しており、非常に大きな市場を形成している。
【0003】
しかし、これらいずれの媒体もいわゆるヒートモード記録方式を採用している。即ち、レーザ光を細く絞り込み、記録媒体上で熱に変換し熱反応により記録している。この場合、光エネルギーを熱エネルギーに変換して用いるため、光が本質的に備えている波長、偏光、位相などの特性を記録に生かすことができない。
【0004】
より高密度化、大容量化、高速化を達成するに、現状はレーザ波長の短波長化、及びレンズの高NA化によりビームスポットを小さくすることを行っているが、光の持つ特性を生かしたフォトンモード記録方式がより好ましい。
【0005】
フォトンモードを利用した書き換え可能な記録媒体として、フォトクロミック材料を用いた光記録媒体が提案されている。フォトクロミズムを利用する光記録媒体は、このAの状態、Bの状態のうち、どちらか一方を情報未記録状態(情報が記録されていないとする状態)、他方を情報記録状態(情報が記録されているとする状態)に対応させることにより2値論理記録が可能となる。また、記録されている情報を再生する場合には、Aの状態での物性値とBの状態での物性値との違いを検出すればよい。フォトクロミック反応前後、すなわちAの状態とBの状態とでは光の吸収スペクトルが大きく異なるので、例えば、波長λ1もしくはλ2におけるAの状態での光の吸収強度とBの状態での光の吸収強度との違いを検出することによって情報記録状態か情報未記録状態かの読み出し、すなわち情報の再生が可能となる。更に、フォトクロミズムの可逆性を利用して、記録された情報の消去及び書き換えが可能となる。
【0006】
このようなフォトクロミック材料として、例えば、チオインジゴのような光異性化反応を用いるものや、開環及び閉環反応、酸化還元反応を用いるスピロピラン化合物、フルギド化合物などが知られており、特開2001−262135、特開2001−262135、特開平09−241625、特開平08−050735、特開平06−202270、特開平06−148791等で多数出願されている。
【0007】
一般に、フォトクロミズムは、個々の分子の異性化反応に基づくことから解像度が高く、また物質移動を伴わず電子励起による結合の組換えという量子効果をそのまま記録に用いていることから、本質的に繰り返し使用に対する耐久性の高いフォトンモード記録を可能にする潜在能力をもっている。
【0008】
しかし、フォトクロミック反応には閾値がなく吸収された光量に比例して反応が起こるため、光の吸収の有無を読み取るための光照射(記録情報の再生)を繰り返すことで記録情報が徐々に消去されてしまい、ヒートモード記録の書換え可能型光記録材料に匹敵するような特性をもった光記録材料はまだ開発されていないのが現状である。
【0009】
従って、レーザービームの繰返し照射により記録再生が行われるので、記録媒体の長寿命化のためには、非破壊読み出し機能を有し、且つレーザービームに対して閾値を持つようなフォトクロミック反応を利用した新たな書換型フォトクロミック光記録媒体が望まれている。
【0010】
非破壊読み出しを達成するには、光量が小さい場合には光反応せず、光量が大きい時にのみ光反応する系を構築すれば良い。その一つの方法は多(2)光子過程を利用することである。
【0011】
このような2光子フォトクロミック反応による3次元記録媒体、及びその記録方法として、ニトロスピロベンゾピランによる2波長2光子励起による体積多重光記録(D. A. Parthenopoulos and P. M. Renzepis, J.Appl.Phys., 68, 5814 (1990))がある。しかし、この記録原理として非線形の2光子過程を利用しているため、基本的に記録感度が悪い。また、この記録媒体にはアドレス情報がないため、媒体を一度システムから取り出してしまうと記録位置を探すのが非常に困難であり、リムーバブルという観点において大きな問題があった。更に、記録媒体を固定したままレーザ光の入射位置を変えることで記録しているが、機械駆動部少ない代わりに、記録位置を正確に制御するためには、システムとして免振機構を設ける必要があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規で画期的なフォトクロミズムの原理を用いて、CD−R等現行の追記型、書換え可能型の光記録媒体の技術で、高密度、且つ大容量のリムーバブルな光記録体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決すべく種々研究の結果、下記に示す記録媒体によって、上記課題を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1) 円盤状基板とその上に形成された記録材料からなる光記録媒体であって、前記記録材料が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープしたものであり、かつ多光子過程を利用した記録が可能であることを特徴とする光記録媒体。
【0014】
(2) 円盤状基板からなる光記録媒体であって、前記円盤状基板が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープした2光子過程を利用した記録が可能な記録材料からなることを特徴とする光記録媒体。
【0015】
(3) 前記記録材料が段階的2光子イオン化によるフォトクロミズムを備えたことを特徴とする(1)または(2)に記載の光記録媒体、である。
【0016】
この記録の原理を以下に説明する。有機色素、もしくは低分子化合物に対してS1←S0に相当する波長のレーザ光を照射し励起する。その励起されたS1状態、もしくは交換交差により生成したT1状態が十分な寿命を持っていれば、レーザパワーに依存して、もう1光子の光を吸収して更に高いエネルギー状態まで励起させることが出来る。この高エネルギー状態がイオン化エネルギーを超えていれば、励起された分子はそのままカチオンラジカルとなる。つまり、十分な波長及びレーザパワーを与えてやればこの段階的2光子過程を経由して有機色素、もしくは低分子化合物をイオン化することが出来る。この際、カルボニル基等の電子親和力の高い基を有する高分子の中に有機色素、もしくは低分子化合物をドープしておけば、イオン化により放出された電子をイオン化された分子の近くにいる高分子が捕捉し保持するため、イオン化されたカチオンラジカルと電子を捕捉したアニオンラジカルが局在的に安定に存在することが可能である。イオン化されたカチオンラジカルの吸収スペクトルは、有機色素、もしくは低分子化合物の吸収スペクトルと異なっているので、その物性の差を利用して記録/再生を行うことが出来る。特に、通常のフォトクロミック材料に比べ、吸収スペクトルの変化が大きいため記録信号の検出が容易である。
【0017】
更に、熱、もしくは電場、もしくは赤外光により高分子に捕捉されている電子を元の分子に戻すことができ、それにより記録を消去、及び再記録も可能となる。
【0018】
この原理を利用すれば、この過程が電子励起状態の寿命であるナノ秒オーダーで完了するため高速記録が可能である。また、熱拡散及び物質移動を伴わないため高解像度を有し、記録材料の劣化は少ない。図1(a)(b)に示す通り、1光子過程は光強度に比例した反応サイズが得られるのに対し、2光子過程では光強度の2乗に比例した反応サイズが得られる。さらにレーザパワーに対して閾値を持ち、エネルギー密度の高い、つまり光の絞られた部分のみが反応するため、記録ピットが小さく、かつピットの境界がシャープになるので高密度記録が可能である。
【0019】
上記の記録材料に対してアドレス情報を含んだ円盤状の記録媒体にすることで、現行のサーボ技術、ピックアップ技術等を利用することが可能となる。更に、ディスク面内だけでなく、レーザ光の焦点位置を制御することで3次元記録も可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる有機色素、もしくは低分子化合物は、光を照射することにより書込み、つまりイオン化できなければならない。従って、励起状態の寿命が長く、イオン化ポテンシャルが低いことが望ましい。
【0021】
具体例としては、フェニレンジアミン系、カルバゾール系、ピリレン系、ベンジジン系、ビフェニル系、ベンゼン系、ピレン系、キノリト錯体、フェナントロリン錯体、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、インドアニリン系色素、ピロメテン系色素、ペリレン系色素、クマリン系色素等が挙げられる。また、特性向上のために1種または2種以上を併用することは可能である。本発明において用いられる高分子は、光によって記録/再生を行う波長において透明でなくてはならない。また、イオン化に放出された電子を捕捉するために、カルボニル基等の電子親和力の高い基を有していることが必要である。具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂同士、もしくはそれ以外のポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等も加えたコポリマーでも良い。
【0022】
本発明における記録層は、高分子に有機色素、もしくは低分子化合物をドープして均一に分散させる。この記録層は、キャスト法、ホットメルト法、射出成形法等により得られ、図2にその断面を示したような円盤状のディスクにすることで記録層2がそのまま基板となる光記録媒体とすることが可能である。また、図2に示すようにディスク表面にプレグルーブ3を形成することで、反射率に差が得られるため、現行のCD−R等で用いられているサーボ機構を利用して、記録再生用のレーザビームをプレグルーブ上に走査することが可能となる。更に、アドレス情報やROM情報としてのプレピット(物理的な凹凸)を形成してもよい。またその上に反射層となる金属層を形成してもよい。レーザ光4は図で下から照射される。
【0023】
また、図3に断面を示したように、この記録材料を円盤状の透明基板に積層することで記録層2と基板1を別の材料を用いて媒体化しても良い。ここでの基板は、特に光の透過性が高く、かつ光学的異方性の小さいものが望ましい。具体的には、上記で挙げた高分子材料や、ガラス、石英等の無機材料等を用いることができる。この記録媒体にも同様に、図3に示すようなプレグルーブ3やさらにアドレス情報やROM情報を入れるため、記録層2もしくは基板1に予めプレピットを形成してもよい。プレグルーブは基板に予め設けておけばよい。
【0024】
更に、記録機能向上、劣化防止等の目的で、記録層、もしくは記録媒体の上層もしくは下層に、保護層や反射層等を設けても良いし、これらの層は2種以上設けても良い。
【0025】
上記記録媒体は、回転させながら記録/再生を行う。回転することによりサーボ機構を利用することが可能となり、アドレス情報を読み込むことで正確に記録/再生の位置を制御することが出来るため、リムーバブル性に優れた媒体となり得る。アドレス情報については、現状のCD−R等光記録媒体で利用されているようなプレブルーブに特定の周波数を持つウォブルによって記録しておく方法も用いることができる。もしくは記録媒体中にROM情報として予めアドレス情報を記録しても良い。トラッキングやフォーカスのサーボはCD−Rなどで実用化されている周知の方法を採用することができる。
【0026】
また、この記録原理は2光子過程を利用したフォトンモードで記録を行うため、空間的に微小な分子レベルのピット記録することが可能である。従って、図4に示すように記録層2内の焦点位置1または2にフォーカス位置を制御して記録することによって3次元記録も可能となる。焦点位置の制御に関しては、レーザー走査型共焦点顕微鏡で利用されている現行の技術を用いれば良い。また、この記録層内における焦点位置の制御による3次元多層記録は、上下層間のクロストーク等の影響が小さい限り、何層設けても構わない。記録層2のレーザ光4を照射する側と反対側の面にプレグルーブ3を形成しても、反射率のちがいによりトラッキングを行うことができる。
【0027】
具体的な記録媒体の製造方法の例を以下に述べる。まず、ポリマーであるPMMAをトルエンに溶解させる。そこへ、記録のレーザ波長領域に吸収を持つ低分子化合物を加える。例えば、YAGレーザの3倍波である355nmの光を用いる場合には、低分子化合物としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンが好ましい。この際、この低分子化合物は、レーザ波長に対して十分な吸収があり、且つ析出しない濃度となるように加える。実際には、〜10−2M程度が好ましい。
【0028】
次に、この溶液をガラス上にキャストすることによって記録層となるフィルムを作成する。このフィルムを十分に風乾させた後、減圧乾燥を行う。その後、更に減圧したままPMMAのTg以上の温度で加熱、乾燥することでフィルム中の溶媒を完全に除去する。溶媒を完全に除去するためにはフィルムの厚みを200μm以下程度にすることが望ましい。最終的には、ガラスからフィルムを剥がし、ディスクの形状、及びアドレス情報に関する加工を行うことで媒体化する。もしくは、キャストするガラスに対して、予めディスク状、且つアドレス情報の加工を施しておけば、フィルムを剥がすことなくそのまま基板として利用することが好ましい。
【0029】
記録/再生については、上記の具体例の通り低分子化合物としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンを用いた場合、該低分子化合物は300 ̄380nm付近に吸収を持つため、YAGレーザの3倍波である355nmの光で励起することができる。レーザ光が十分なパワー、もしくはエネルギー密度を持つ場合には、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンは2光子イオン化され、500 ̄700nmの領域にカチオンの吸収が現れる。従って、この領域の光吸収量をモニターすることにより、記録/再生を行うことができる。またこの媒体に、PMMAのTg程度の温度で加熱するとカチオンが電子を受取り再度元の該低分子化合物に戻る。つまり、データを消去することが可能となる。また、消去後に再記録も可能である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明の目的は、新規で画期的なフォトクロミズムの原理と現行の追記型、書換え可能型の光記録媒体の技術との組み合わせにより、高密度、且つ大容量のリムーバブルな光記録媒体が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1光子過程と2光子過程の比較
【図2】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(記録層が基板を兼ねている場合)
【図3】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(基板上に記録層を積層した場合)
【図4】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(3次元記録した場合)
【発明の属する技術分野】
本発明は、2光子過程を利用した高密度光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、社会の高度情報化の進展は目覚ましく、多くの情報を記録でき、またそれを移動、携帯できるような媒体が社会生活において不可欠のものとなっている。現在、そのようなリムーバブルな大容量媒体として、CD−R、CD−RW、DVD−R、DVD−RW等の追記型、書換え可能型の光記録媒体が広く普及しており、非常に大きな市場を形成している。
【0003】
しかし、これらいずれの媒体もいわゆるヒートモード記録方式を採用している。即ち、レーザ光を細く絞り込み、記録媒体上で熱に変換し熱反応により記録している。この場合、光エネルギーを熱エネルギーに変換して用いるため、光が本質的に備えている波長、偏光、位相などの特性を記録に生かすことができない。
【0004】
より高密度化、大容量化、高速化を達成するに、現状はレーザ波長の短波長化、及びレンズの高NA化によりビームスポットを小さくすることを行っているが、光の持つ特性を生かしたフォトンモード記録方式がより好ましい。
【0005】
フォトンモードを利用した書き換え可能な記録媒体として、フォトクロミック材料を用いた光記録媒体が提案されている。フォトクロミズムを利用する光記録媒体は、このAの状態、Bの状態のうち、どちらか一方を情報未記録状態(情報が記録されていないとする状態)、他方を情報記録状態(情報が記録されているとする状態)に対応させることにより2値論理記録が可能となる。また、記録されている情報を再生する場合には、Aの状態での物性値とBの状態での物性値との違いを検出すればよい。フォトクロミック反応前後、すなわちAの状態とBの状態とでは光の吸収スペクトルが大きく異なるので、例えば、波長λ1もしくはλ2におけるAの状態での光の吸収強度とBの状態での光の吸収強度との違いを検出することによって情報記録状態か情報未記録状態かの読み出し、すなわち情報の再生が可能となる。更に、フォトクロミズムの可逆性を利用して、記録された情報の消去及び書き換えが可能となる。
【0006】
このようなフォトクロミック材料として、例えば、チオインジゴのような光異性化反応を用いるものや、開環及び閉環反応、酸化還元反応を用いるスピロピラン化合物、フルギド化合物などが知られており、特開2001−262135、特開2001−262135、特開平09−241625、特開平08−050735、特開平06−202270、特開平06−148791等で多数出願されている。
【0007】
一般に、フォトクロミズムは、個々の分子の異性化反応に基づくことから解像度が高く、また物質移動を伴わず電子励起による結合の組換えという量子効果をそのまま記録に用いていることから、本質的に繰り返し使用に対する耐久性の高いフォトンモード記録を可能にする潜在能力をもっている。
【0008】
しかし、フォトクロミック反応には閾値がなく吸収された光量に比例して反応が起こるため、光の吸収の有無を読み取るための光照射(記録情報の再生)を繰り返すことで記録情報が徐々に消去されてしまい、ヒートモード記録の書換え可能型光記録材料に匹敵するような特性をもった光記録材料はまだ開発されていないのが現状である。
【0009】
従って、レーザービームの繰返し照射により記録再生が行われるので、記録媒体の長寿命化のためには、非破壊読み出し機能を有し、且つレーザービームに対して閾値を持つようなフォトクロミック反応を利用した新たな書換型フォトクロミック光記録媒体が望まれている。
【0010】
非破壊読み出しを達成するには、光量が小さい場合には光反応せず、光量が大きい時にのみ光反応する系を構築すれば良い。その一つの方法は多(2)光子過程を利用することである。
【0011】
このような2光子フォトクロミック反応による3次元記録媒体、及びその記録方法として、ニトロスピロベンゾピランによる2波長2光子励起による体積多重光記録(D. A. Parthenopoulos and P. M. Renzepis, J.Appl.Phys., 68, 5814 (1990))がある。しかし、この記録原理として非線形の2光子過程を利用しているため、基本的に記録感度が悪い。また、この記録媒体にはアドレス情報がないため、媒体を一度システムから取り出してしまうと記録位置を探すのが非常に困難であり、リムーバブルという観点において大きな問題があった。更に、記録媒体を固定したままレーザ光の入射位置を変えることで記録しているが、機械駆動部少ない代わりに、記録位置を正確に制御するためには、システムとして免振機構を設ける必要があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規で画期的なフォトクロミズムの原理を用いて、CD−R等現行の追記型、書換え可能型の光記録媒体の技術で、高密度、且つ大容量のリムーバブルな光記録体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決すべく種々研究の結果、下記に示す記録媒体によって、上記課題を達成できることを見出し本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1) 円盤状基板とその上に形成された記録材料からなる光記録媒体であって、前記記録材料が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープしたものであり、かつ多光子過程を利用した記録が可能であることを特徴とする光記録媒体。
【0014】
(2) 円盤状基板からなる光記録媒体であって、前記円盤状基板が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープした2光子過程を利用した記録が可能な記録材料からなることを特徴とする光記録媒体。
【0015】
(3) 前記記録材料が段階的2光子イオン化によるフォトクロミズムを備えたことを特徴とする(1)または(2)に記載の光記録媒体、である。
【0016】
この記録の原理を以下に説明する。有機色素、もしくは低分子化合物に対してS1←S0に相当する波長のレーザ光を照射し励起する。その励起されたS1状態、もしくは交換交差により生成したT1状態が十分な寿命を持っていれば、レーザパワーに依存して、もう1光子の光を吸収して更に高いエネルギー状態まで励起させることが出来る。この高エネルギー状態がイオン化エネルギーを超えていれば、励起された分子はそのままカチオンラジカルとなる。つまり、十分な波長及びレーザパワーを与えてやればこの段階的2光子過程を経由して有機色素、もしくは低分子化合物をイオン化することが出来る。この際、カルボニル基等の電子親和力の高い基を有する高分子の中に有機色素、もしくは低分子化合物をドープしておけば、イオン化により放出された電子をイオン化された分子の近くにいる高分子が捕捉し保持するため、イオン化されたカチオンラジカルと電子を捕捉したアニオンラジカルが局在的に安定に存在することが可能である。イオン化されたカチオンラジカルの吸収スペクトルは、有機色素、もしくは低分子化合物の吸収スペクトルと異なっているので、その物性の差を利用して記録/再生を行うことが出来る。特に、通常のフォトクロミック材料に比べ、吸収スペクトルの変化が大きいため記録信号の検出が容易である。
【0017】
更に、熱、もしくは電場、もしくは赤外光により高分子に捕捉されている電子を元の分子に戻すことができ、それにより記録を消去、及び再記録も可能となる。
【0018】
この原理を利用すれば、この過程が電子励起状態の寿命であるナノ秒オーダーで完了するため高速記録が可能である。また、熱拡散及び物質移動を伴わないため高解像度を有し、記録材料の劣化は少ない。図1(a)(b)に示す通り、1光子過程は光強度に比例した反応サイズが得られるのに対し、2光子過程では光強度の2乗に比例した反応サイズが得られる。さらにレーザパワーに対して閾値を持ち、エネルギー密度の高い、つまり光の絞られた部分のみが反応するため、記録ピットが小さく、かつピットの境界がシャープになるので高密度記録が可能である。
【0019】
上記の記録材料に対してアドレス情報を含んだ円盤状の記録媒体にすることで、現行のサーボ技術、ピックアップ技術等を利用することが可能となる。更に、ディスク面内だけでなく、レーザ光の焦点位置を制御することで3次元記録も可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる有機色素、もしくは低分子化合物は、光を照射することにより書込み、つまりイオン化できなければならない。従って、励起状態の寿命が長く、イオン化ポテンシャルが低いことが望ましい。
【0021】
具体例としては、フェニレンジアミン系、カルバゾール系、ピリレン系、ベンジジン系、ビフェニル系、ベンゼン系、ピレン系、キノリト錯体、フェナントロリン錯体、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、インドアニリン系色素、ピロメテン系色素、ペリレン系色素、クマリン系色素等が挙げられる。また、特性向上のために1種または2種以上を併用することは可能である。本発明において用いられる高分子は、光によって記録/再生を行う波長において透明でなくてはならない。また、イオン化に放出された電子を捕捉するために、カルボニル基等の電子親和力の高い基を有していることが必要である。具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂同士、もしくはそれ以外のポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂等も加えたコポリマーでも良い。
【0022】
本発明における記録層は、高分子に有機色素、もしくは低分子化合物をドープして均一に分散させる。この記録層は、キャスト法、ホットメルト法、射出成形法等により得られ、図2にその断面を示したような円盤状のディスクにすることで記録層2がそのまま基板となる光記録媒体とすることが可能である。また、図2に示すようにディスク表面にプレグルーブ3を形成することで、反射率に差が得られるため、現行のCD−R等で用いられているサーボ機構を利用して、記録再生用のレーザビームをプレグルーブ上に走査することが可能となる。更に、アドレス情報やROM情報としてのプレピット(物理的な凹凸)を形成してもよい。またその上に反射層となる金属層を形成してもよい。レーザ光4は図で下から照射される。
【0023】
また、図3に断面を示したように、この記録材料を円盤状の透明基板に積層することで記録層2と基板1を別の材料を用いて媒体化しても良い。ここでの基板は、特に光の透過性が高く、かつ光学的異方性の小さいものが望ましい。具体的には、上記で挙げた高分子材料や、ガラス、石英等の無機材料等を用いることができる。この記録媒体にも同様に、図3に示すようなプレグルーブ3やさらにアドレス情報やROM情報を入れるため、記録層2もしくは基板1に予めプレピットを形成してもよい。プレグルーブは基板に予め設けておけばよい。
【0024】
更に、記録機能向上、劣化防止等の目的で、記録層、もしくは記録媒体の上層もしくは下層に、保護層や反射層等を設けても良いし、これらの層は2種以上設けても良い。
【0025】
上記記録媒体は、回転させながら記録/再生を行う。回転することによりサーボ機構を利用することが可能となり、アドレス情報を読み込むことで正確に記録/再生の位置を制御することが出来るため、リムーバブル性に優れた媒体となり得る。アドレス情報については、現状のCD−R等光記録媒体で利用されているようなプレブルーブに特定の周波数を持つウォブルによって記録しておく方法も用いることができる。もしくは記録媒体中にROM情報として予めアドレス情報を記録しても良い。トラッキングやフォーカスのサーボはCD−Rなどで実用化されている周知の方法を採用することができる。
【0026】
また、この記録原理は2光子過程を利用したフォトンモードで記録を行うため、空間的に微小な分子レベルのピット記録することが可能である。従って、図4に示すように記録層2内の焦点位置1または2にフォーカス位置を制御して記録することによって3次元記録も可能となる。焦点位置の制御に関しては、レーザー走査型共焦点顕微鏡で利用されている現行の技術を用いれば良い。また、この記録層内における焦点位置の制御による3次元多層記録は、上下層間のクロストーク等の影響が小さい限り、何層設けても構わない。記録層2のレーザ光4を照射する側と反対側の面にプレグルーブ3を形成しても、反射率のちがいによりトラッキングを行うことができる。
【0027】
具体的な記録媒体の製造方法の例を以下に述べる。まず、ポリマーであるPMMAをトルエンに溶解させる。そこへ、記録のレーザ波長領域に吸収を持つ低分子化合物を加える。例えば、YAGレーザの3倍波である355nmの光を用いる場合には、低分子化合物としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンが好ましい。この際、この低分子化合物は、レーザ波長に対して十分な吸収があり、且つ析出しない濃度となるように加える。実際には、〜10−2M程度が好ましい。
【0028】
次に、この溶液をガラス上にキャストすることによって記録層となるフィルムを作成する。このフィルムを十分に風乾させた後、減圧乾燥を行う。その後、更に減圧したままPMMAのTg以上の温度で加熱、乾燥することでフィルム中の溶媒を完全に除去する。溶媒を完全に除去するためにはフィルムの厚みを200μm以下程度にすることが望ましい。最終的には、ガラスからフィルムを剥がし、ディスクの形状、及びアドレス情報に関する加工を行うことで媒体化する。もしくは、キャストするガラスに対して、予めディスク状、且つアドレス情報の加工を施しておけば、フィルムを剥がすことなくそのまま基板として利用することが好ましい。
【0029】
記録/再生については、上記の具体例の通り低分子化合物としてN,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンを用いた場合、該低分子化合物は300 ̄380nm付近に吸収を持つため、YAGレーザの3倍波である355nmの光で励起することができる。レーザ光が十分なパワー、もしくはエネルギー密度を持つ場合には、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミンは2光子イオン化され、500 ̄700nmの領域にカチオンの吸収が現れる。従って、この領域の光吸収量をモニターすることにより、記録/再生を行うことができる。またこの媒体に、PMMAのTg程度の温度で加熱するとカチオンが電子を受取り再度元の該低分子化合物に戻る。つまり、データを消去することが可能となる。また、消去後に再記録も可能である。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、本発明の目的は、新規で画期的なフォトクロミズムの原理と現行の追記型、書換え可能型の光記録媒体の技術との組み合わせにより、高密度、且つ大容量のリムーバブルな光記録媒体が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】1光子過程と2光子過程の比較
【図2】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(記録層が基板を兼ねている場合)
【図3】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(基板上に記録層を積層した場合)
【図4】本発明の光記録媒体の1例の断面図
(3次元記録した場合)
Claims (3)
- 円盤状基板とその上に形成された記録材料からなる光記録媒体であって、前記記録材料が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープしたものであり、かつ多光子過程を利用した記録が可能であることを特徴とする光記録媒体。
- 円盤状基板からなる光記録媒体であって、前記円盤状基板が高分子材料中に有機色素もしくは低分子化合物をドープした2光子過程を利用した記録が可能な記録材料からなることを特徴とする光記録媒体。
- 前記記録材料が段階的2光子イオン化によるフォトクロミズムを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光記録媒体。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002227882A JP2004071036A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 高密度光記録媒体 |
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---|---|---|---|
JP2002227882A JP2004071036A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 高密度光記録媒体 |
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Country | Link |
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-
2002
- 2002-08-05 JP JP2002227882A patent/JP2004071036A/ja active Pending
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