JP2004069954A - 光合分波器用多層膜フィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】安価でかつ低損失、ばらつきの少ない多層膜フィルターを大量に提供することを目的とする。
【解決手段】基材の多層膜形成面(基材A面)の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材の反射防止膜形成面(基材B面)の表面粗さを0.2nm以上1.4nmとすることで、挿入損失を−0.4dB以下とすることができ、基材B面と基材A面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑える。基材の表面粗さの下限を0.2nmとすることにより安価で大量生産できる。
【選択図】 図1
【解決手段】基材の多層膜形成面(基材A面)の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材の反射防止膜形成面(基材B面)の表面粗さを0.2nm以上1.4nmとすることで、挿入損失を−0.4dB以下とすることができ、基材B面と基材A面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑える。基材の表面粗さの下限を0.2nmとすることにより安価で大量生産できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信における波長多重通信システムに用いられる光合分波器に用いられる多層膜フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信分野においては、高速で大量の情報を伝送可能にする方法の一つとして波長多重通信システムの開発が盛んに行われている。この波長多重通信システムは複数の波長の光を重ねて伝送するものである。情報を伝送するための光ファイバーの前後に複数の波長の光を重ねて多重化したり、多重化された光を別々の波長の光に分けたりする光合分波器を接続する必要がある。
【0003】
光合分波器は多層膜フィルターを複数個使って構成されている。光合分波器に使用される、多層膜フィルターには、ある光の波長近傍でのみ透過率が高く、透過帯域以外(阻止帯域)の光を高度に反射する狭帯域フィルターとしての光学特性が要求される。
【0004】
図2に、波長λ1、λ2、λ3、λ4の光が多重化された状態λ1234の光から、それぞれの波長の光を分波する光分波器5を示す。波長λ1、λ2、λ3、λ4の光をそれぞれ透過する4つの多層膜フィルター1a〜1dが必要である。λ1分波用の多層膜フィルター1aにλ1234の光を入射しλ1の光を透過させ、他のλ234の光を反射して次のλ2分波用の多層膜フィルター1bに入射させる。このフィルター1bによってλ2の光が透過され、他の光λ34が反射される。同様にして、λ3、λ4分波用の多層膜フィルター1c、1dによってλ3、λ4の光が別々に取り出される。分波する光がλ1〜nであれば、光分波器5はn個の透過波長領域の異なる多層膜フィルターで構成される。
【0005】
図1に多層膜フィルターの外観形状を示す。多層膜フィルター1は、基材3の一方の面(以後、基材A面と言う)に狭帯域フィルターとして機能する多層膜2および光反射膜10が形成され、他方の面(以後、基材B面と言う)に、反射防止膜4が形成されている。
【0006】
丸もしくは角状の厚さ1mm程度で、使用する光の波長範囲にわたって透明な基板の一方の面に多層膜2、光反射防止膜10を、他面に反射防止膜4を、真空蒸着法、スパッタ法等により形成し、基板を略1.4mm角に切断し、基材3のA面に多層膜2および光反射防止膜10、基材3のB面に反射防止膜4が形成された多層膜フィルター1が得られる。
【0007】
図3に多層膜2の膜構成の一例を示す。多層膜2は、基材3上に、キャビティー層6がカップリング膜7を挟んでn層積層されている。最上層のキャビティー層6上には光反射防止膜10が配される。キャビティー層6はミラー層8aとスぺーサー膜9、ミラー層8bから構成される。ミラー層8a,8bは高屈折率膜11と低屈折率膜12が交互にm層積層された構造で、スペーサー膜9下(基材側)のミラー層8aは、基材側から高屈折率膜11と低屈折率膜12の順に積層され、スペーサー膜9上のミラー層8bは基材側から低屈折率膜12と高屈折率膜11の順に積層されている。
【0008】
波長λ0を中心とした透過帯域を得るには、ミラー層8を構成する高屈折率膜11及び低屈折率膜12の光学膜厚がλ0/4になるように形成し、スペーサー膜9は光学膜厚が(λ0/4)×L(Lは遇数)になるように形成する。光学膜厚は、膜材料の屈折率と物理的膜厚の積で表される。ミラー層8の積層数mを増やすことで透過帯域がより狭くなるので、透過帯域幅により積層数mが決められている。
【0009】
狭帯域フィルターでは透過帯域を狭くするとともに、透過帯域から阻止帯域への透過率の傾き(透過率の変化)を急峻にする必要がある。透過率の傾きを得るため、キャビティー層6もn回積層される。多層膜2の表面における光反射を防止するため、最上層のキャビティー層6上に、単層膜あるいは数層の膜からなる光反射防止膜10を形成する。光反射防止膜10の物理的膜厚と積層数は、キャビティー層等の膜構成により異なる。
【0010】
多層膜フィルターの各層を構成する膜の厚みは光学膜厚で制御される必要がある。光学膜厚は、物理的膜厚と膜の屈折率の積で表わされる。物理的膜厚の求め方は、高屈折率膜の屈折率をnH、低屈折率膜の屈折率をnLとすると、光学膜厚がλ0/4となる高屈折率膜の膜厚は、λ0/4nH、光学膜厚がλ0/4となる低屈折率膜の膜厚は、λ0/4nLと表記することもできる。
高屈折率膜としては、TiO2(屈折率約2.3)、Ta2O5(屈折率約2.1)、低屈折率膜としては、SiO2(屈折率約1.4)が主に使用されている。
【0011】
光通信における波長多重通信システムでは、ITU(International Telecommunication Union)グリッドと言われる標準化された波長間隔の光が多重化して伝送される。ITUグリッドにおける隣り合う波長の間隔、隣接波長間隔は、200GHzと言われるシステムでは、1.6nm、現在主流の100GHzのシステムでは、0.8nmと狭帯域化が進んでいる。
光を狭帯域で透過させるためには、ミラー層8の積層数mと、キャビティー層6の積層数nを多くすることが必要である。隣接波長間隔0.8nmで使用可能な狭帯域フィルターを得るためには、mを6から7、nを4から5程度とする必要があり、多層膜2は、100から200近くの積層数で構成されることになる。このような多積層数の膜の膜厚を高精度で制御することで、初めて所望の狭帯域フィルターを得ることが可能になるものである。
【0012】
基材3には、使用される波長領域にわたって透明であることが要求される。また、多層膜フィルターとして所定の形状に加工する必要があるため、多層膜を支持して機械加工に耐え、プロセスを通してかかる熱的な負荷にも耐え得る材質が要求される。さらに、基材3には、環境温度変化に対し多層膜の膜厚方向の熱膨張収縮により生ずる光学特性の変化を抑制するという役割もある。多層膜2の熱膨張係数は概略30x10−7/deg.であり、これよりも熱膨張係数の大きい基材3を用いることで、例えば、熱膨張した多層膜を基材のさらに大きい熱膨張によって膜面方向に引っ張って膜厚の変化を最小限にする。これらの要求を満たす基材材質として、熱膨張係数110x10−7/deg.の透明ガラスが主に使用される。
【0013】
基材B面に設けられる反射防止膜4は、単層膜あるいは複数層の膜からなり、TiO2、Ta2O5、SiO2が主に使用されている。
【0014】
光合分波器は低損失であること、すなわち光合分波器に光を通す前後で光量が低下しないことが重要である。低損失な光合分波器を用いることで、光量を増幅させる中継点が少なくて済む等、より安価な通信システムの構築が可能となる。
【0015】
光合分波器で発生する損失には、大きく分けて2つあり、多層膜フィルター自身で生ずる損失と、それ以外の損失がある。光合分波器では、それぞれの多層膜フィルターは光ファイバーと接着剤等で接続、固定されている。この接続、固定状態によって損失が生じる場合がある。光ファイバーの端面の状態、多層膜フィルターと光ファイバーの接触状態を、固定に用いる接着剤や接着方法を検討することで低損失に抑えることが行われている。
【0016】
多層膜フィルター自身で生ずる損失としては、所定の波長領域の、それぞれの波長の光について、入射光量が多層膜フィルターを通過したときに何%の光量となっているかを表す透過率をdB(デシベル)表示したものがある。透過率をA%とすると、dB表示では透過率は10log10(A/100)(dB)であり、透過率が100%の場合0dB、透過率が下がるとdB表示では負の値となる。
【0017】
図4に多層膜フィルターに光を入射した時の分光特性を示す。一般的に最大透過率の点Tmaxと入射光量の差を挿入損失という。挿入損失は、多層膜フィルターを光が通過することによって、透過させたい波長の光が入射光に対してどれだけ減少してしまったかを表すものであり、多層膜フィルター自身の損失を表すものである。以下、挿入損失という場合には、多層膜フィルター自身の損失を表すものとする。透過率が−15dBとなる波長をλa,λbと称し、λaとλbの中心のλ0を中心波長と呼ぶ。多層膜フィルターとしては、λaとλbの差が小さい(透過率の傾きが大きい)こと、挿入損失が小さいこと、λ0が設計値と一致することが望まれる。
【0018】
挿入損失は、主に、多層膜フィルター内で起こる光の散乱に起因する。散乱とは、光の波が障害物にあたったときに、それを中心として、周囲に広がっていく波ができる現象である。
高屈折率膜と低屈折率膜を交互に積層させた構造であるため、膜間には界面が生じる。この界面の平坦性が悪いと界面での光の散乱が大きくなる。狭帯域フィルターの機能を上げるには、多層膜の積層数を多くする必要があり、必然的に界面の数も多くなる。積層された膜の界面を積層界面と称する。積層界面の平坦性が悪いと、光が積層界面を横切る毎に散乱が加わり、全体として大きな挿入損失を生じることになる。そのため、光が積層界面で散乱されて挿入損失を生じないように、多層膜の積層界面は、平坦であることが望まれる。反射防止膜に付いても同様である。
【0019】
多層膜及び反射防止膜の積層界面の平坦性を悪くする主な要因として2つ挙げられる。一つは、薄膜自身が成長過程で生じる粒成長等によって膜面に凹凸が生じ積層界面の平坦性を悪化させる。他は、基材表面の凹凸が原因で積層界面に凹凸が生じ積層界面の平坦性を悪化させるものである。粒成長により生ずる凹凸は製膜条件を検討することで低減するしかない。基材表面に凹凸がある場合には、薄膜自身の成長過程での凹凸形成がなくても、基材の表面状態が転写されるかたちで薄膜が成長し、それが積層界面の凹凸となる。
【0020】
基材の表面を平坦にして基材の凹凸の影響が出ないようにし、挿入損失を低減すると、基材の精密研磨が要求され加工時間の増加、歩留りの低下から基材の価格が大幅に上がるため、結果的に多層膜フィルターの価格を上げるだけでなく、大量生産の足枷となってしまっていた。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基材の表面状態と多層膜フィルターの挿入損失の関係を定量的に把握して、安価でかつ低損失、ばらつきの少ない多層膜フィルターを大量に提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層膜フィルターは、基材の一方の面に形成されたフィルター機能を有する多層膜および光反射防止膜、他方の面に形成された反射防止膜からなる光合分波器に用いられる多層膜フィルターであって、基材の表面粗さRaは、多層膜形成面側は0.2nm以上0.7nm以下、反射防止膜形成面側は0.2nm以上1.4nm以下であることを特徴とする。
【0023】
表面粗さRaは、JIS B0601に規定される算術平均粗さで規定される。
多層膜形成面(基材A面)側の表面粗さRaの上限が0.7nm、反射防止膜形成面(基材B面)側の表面粗さRaの上限が1.4nmの基材を使用することで、光合分波器に求められる低挿入損失の多層膜フィルターを得ることができる。表面粗さRaが、基材A面で0.7nm、基材B面で1.4nmより大きくなると、挿入損失が大きな多層膜フィルターとなり、製品の歩留まりが大きく低下してしまう。基材A,B面側の表面粗さRaを、0.2nm未満としても、それ以上の挿入損失の低減効果は認められないだけでなく、基材の精密研磨にかかるコストが急激に増加する。また、基材A,B面側とも、表面粗さRaの下限を0.2nmとすることで、基材の精密研磨コストの低減が図れる。
【0024】
本発明の多層膜フィルターは、反射防止膜を形成する基材B面の表面粗さRa1と、多層膜を形成する基材A面の表面粗さRa2の比Ra1/Ra2が1/1以上3/2以下であることを特徴とする。
【0025】
基材B面は挿入損失に直接影響しないと考えられていたが、基材A面とB面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑えられることが判った。しかし、基材B面は基材A面に比べ表面粗さを良くする必要は特にない。基材の精密研磨を行い、表面粗さの良い面を基材A面として使用することで、安価に多層膜フィルターを製造することが可能となる。基材A面とB面の表面粗さが大きく異なると、表面粗さによる基材の反りが発生し、基材の反りによって多層膜にかかる応力の差が生じ挿入損失にばらつきが生じると考えられるため、基材A面とB面の表面粗さの比を規定することは大きな意味を持つものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら本発明の実施形態について、以下に詳細を説明する。多層膜フィルター、多層膜の構成は従来技術と略同一であるので、同一の図を用いて説明する。図1に多層膜フィルターの斜視図、図3に多層膜の構成を示す。図3に示す多層膜の構成で、図1に示す多層膜フィルターを作製し、基材の表面粗さと挿入損失の関係を詳細に調べた。基材の表面粗さは、基材A面を0.1nmから1.0nmまで、基材B面を0.1nmから2.0nmまで変化させた。
【0027】
使用した基材は、SiO2、Na2O、K2O、TiO2を主成分とする厚さ1mmのガラス板であり、その特性は(比重=2.88、ヤング率=85GPa,ビッカース硬度=570、摩耗度(Aa)=197、耐熱温度=500℃、熱伝導率=0.9W/(m・deg.)、熱膨張係数=105×10−7/deg.(−30〜70℃)、熱膨張係数=113×10−7/deg.(0〜200℃)、耐水性RW(P)=2、耐酸性RA(P)=1、内部透過率=99.9%(波長1550nm)、屈折率n=1.658(波長1550nm計算値)、屈折率の温度変化dn/dt=−0.7×10−6/deg.(波長1550nm、−30℃〜70℃計算値)である。
【0028】
ガラス板は、スラリー濃度を5〜20%、スラリー流量を10〜100ml/分、研磨速度(基板回転数、研磨パッドの回転数)を10〜50rpmの条件で、研磨時間を変えて精密研磨(ラッピング加工)を行った。スラリーには、酸化セリウム系およびコロイダルシリカ系を併用した。
【0029】
基材A,B面の表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定し、一辺10μmの正方形の領域で求めた。表面粗さの測定範囲が狭いため基材を代表する表面粗さの値とするには難があるので、約1.5mm角の領域で20個所測定を行い、20個の測定値中で最も表面粗さの大きい値を、その領域の表面粗さRaとしている。
【0030】
表面粗さを測定した基材A面に多層膜を形成した。多層膜は図3に示す構成とした。キャビティー層の繰り返し数n=4とし、ミラー層の高屈折率膜と低屈折率膜の繰り返し数mは、キャビティー層を基材側から順に第1、第2、第3、第4とすると、第1、第2キャビティー層はm=7、第3キャビティー層はm=8、第4キャビティー層はm=6とした。光反射防止膜は、光学膜厚がλ0/2となるように低屈折率なSiO2膜を形成した。ミラー層を構成する高屈折率膜にはTa2O5(屈折率2.15)、低屈折率膜にはSiO2(屈折率1.46)を使用した。多層膜の総積層数は128層で、総膜厚(物理的膜厚)は約34μmとなった。
【0031】
基材B面に形成する反射防止膜は、基材側から順に、Ta2O5(319.9nm)、SiO2(403.4nm)、Ta2O5(254.5nm)、SiO2(202.5nm)の順で、4層膜構造とした。括弧内は、成膜した物理膜厚を示している。
【0032】
基材A面の多層膜、光反射防止膜および基材B面の反射防止膜の形成には、イオンビームアシスト蒸着装置を使用し、成膜条件は表1の通りとした。前記の膜はいずれもTa2O5とSiO2で構成されており、膜厚の違いによる成膜時間以外は、表1の成膜条件を用いた。
【0033】
表1
【0034】
成膜後、ダイアモンド砥石を用い1.4mm角切断し、図1に示す多層膜フィルターを得た後、基材A,B面の表面粗さが異なる多層膜フィルターを用い、中心波長λ0前後3nmの波長範囲を有する光を多層膜フィルターに入射し、分光特性を測定し挿入損失を求めた。
【0035】
図5に、基板A面の表面粗さと挿入損失の関係を示す。基板B面の影響をなくすため、基板B面の表面粗さは0.3nm〜0.7nmの範囲の多層膜フィルターを用いている。基材A面の0.1nmから1.0nmの表面粗さと挿入損失の間には相関関係が見られ、表面粗さが粗くなるに従い、挿入損失も増加している。特に表面粗さが0.7nmを越えると挿入損失も−0.4dBを越え多層膜フィルターとしては使用が難しいことが判る。また、基材A面の表面粗さ0.1nmから0.5nmにおいては、挿入損失にほとんど差がなく安定して低い値が得られている。
【0036】
図6に、基材B面の0.1から2.0nmの表面粗さと挿入損失の関係を示す。基板A面の影響をなくすため、基板A面の表面粗さは0.3nm〜0.5nmの範囲の多層膜フィルターを用いている。基材B面の表面粗さが0.1nmから1.4nmの間においては、挿入損失が−0.4dB以下であるが、1.5nmを越えると挿入損失が増加し始め、2nmになると挿入損失が−1.5dBと多層膜フィルターとして使用できない値を示した。
【0037】
基材B面に付加した、光ファイバーの反射損失には大きな差がないため、基材B面の表面粗さが挿入損失に影響を及ぼしていることは確かである。基材B面の表面粗さが基材A面に形成された多層膜の挿入損失にどの様に影響しているか理論的な解明は出来ていない。しかし、基材A面とB面の表面粗さが大きく異なると、表面粗さによる基材の反りが発生し、基材の反りによって多層膜にかかる応力の差が生じ挿入損失にばらつきが生じるものと考えられるが、確証が得られているわけではない。しかしながら、基材B面の表面粗さを規定することは、多層膜フィルターの挿入損失低減には重要であると言える。何れにしても、基材A面の表面粗さは0.7nm、基材B面の表面粗さを1.4nm以下にすることで、挿入損失は−0.4dB以下が得られることが判る。
【0038】
しかしながら、基材の表面粗さを良くするには研磨加工に時間を要するだけでなく歩留りの低下を招くものである。基材A,B面の表面粗さを0.7nmに加工するコストを1として、表面粗さと加工コスト比を図7に示す。加工コスト比には、歩留りによるコスト増加分も含んでいる。ここで言う歩留りを低下させる主な不良としては、修正出来ない基材表面のうねり、スクラッチ等によって基材が使用出来ないものである。加工コストは表面粗さが2.0nmから0.3nm程度までは、表面粗さが良くなるに従い加工コストは単純に増加するが、0.2nm以下となると急激にコストが上昇している。これは、加工時間の増加に比べ、低歩留りによるコスト増加が著しいためである。このことから、基材A,B面の表面粗さ下限を0.2nmを限度にすることで、基材の加工コストの増加を抑えることが可能となる。また、上限を基材A面は0.7nm,基材B面は1.4nmとすることで、低損失で安価な多層膜フィルターを提供することができる。
【0039】
本発明の他の実施例として、多層膜の積層数を164層に増やした多層膜フィルターにおいても、前述した、実施例と同様基材A,B面の表面粗さと挿入損失に付いて測定を行った。
キャビティー層の繰り返し数n=5とし、ミラー層の繰り返し数mは、キャビティー層を基材側から順に第1、第2、・・、第5とし、第1、第2はm=7、第3はm=8、第4、第5はm=7とした。多層膜上の光反射防止膜、基材B面の反射防止膜は、先の実施例と同じとした。
多層膜の総積層数は164層で、総膜厚(物理的膜厚)は約39μmであった。
【0040】
基材の表面粗さと挿入損失の関係は、図5と図6に示した結果と同様な傾向と値であり、基材B面の表面粗さを0.3nm〜0.7nmの範囲としたとき、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材A面の表面粗さは、0.7nm以下であった。また、基材A面の表面粗さを0.3nm〜0.5nmの範囲としたときの、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材B面の表面粗さは1.4nm以下であり、多層膜の積層数を変えても低損失が得られる基材の面粗さは同じであった。
【0041】
基材A面の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材B面の表面粗さを0.2nm以上1.4nm以下にすることで、安価で低挿入損失な多層膜フィルターが得られることを示した。しかし、基材を前記表面粗さで製造した場合、挿入損失のばらつきが約0.2dBあることが判った。多層膜フィルターとして使用する上では問題はないのであるが、よりばらつきの少ない多層膜フィルターを実現するため、基材A面とB面の関係についてより詳細に調べた。基材B面の表面粗さをRa1、基材A面の表面粗さをRa2とすると、Ra1/Ra2が3/2以下の関係を示す多層膜フィルターでは、Ra1/Ra2の値に関係なく、挿入損失のばらつきが小さいことが判った。Ra1/Ra2が3/2を超えた多層膜フィルターの挿入損失はばらつきが大きかった。
【0042】
表2に、基材A面の表面粗さの範囲と挿入損失のばらつきを示す。挿入損失のばらつきの項で全多層膜フィルターとは、基材A面の表面粗さ範囲に入る全ての多層膜フィルターの挿入損失のばらつきを示し、Ra1/Ra2≦3/2の多層膜フィルターの項は、全多層膜フィルター内でRa1/Ra2≦3/2の関係を満たす多層膜フィルターの挿入損失ばらつきを示している。ばらつきは、基材A面の表面粗さ範囲にある多層膜フィルターが示した挿入損失の最大値から最小値を引いて求めている。
【0043】
表2
【0044】
表2から判るように、基材A面表面粗さRa1とB面の表面粗さRa2の関係を、Ra1/Ra2が3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑えることができるものである。
基材A,B面の表面粗さを規定することで、挿入損失の値を小さくすることができ、また、基材A,B面の表面粗さの比を規定することで挿入損失のばらつきを小さくできるものである。
【0045】
本発明の他の実施例として、1200nm〜1700nmの波長領域での、基材表面粗さと挿入損失の関係について調べた。波長多重通信に使用される光の波長領域は、Cバンドと言われる1530〜1565nmの領域が主に使用されているが、近年の大容量化に伴いCバンドだけでは足りず、Lバンド(1565〜1625nm)やSバンド(1460〜1530nm)も必要となってきている。今後、さらに新しいバンドが加えられることは充分考えられることであり、多層膜フィルターとしては、1200nm〜1700nmの波長領域においても、低挿入損失が要求されてくる。
【0046】
中心波長λ0の狙い値を1200nm、1700nmの多層膜フィルターを作製した。膜構成は本発明の実施例と同じ128層とし、各膜の厚みを中心波長λ0に合う様に調整した。多層膜の物理的総膜厚は、1200nmで約30μm、1700nmで43μmとなった。
【0047】
1200nm,1700nmの多層膜フィルターの挿入損失と基材の表面粗さの関係は、他の実施例と同様、基材B面の表面粗さを0.3nm〜0.7nmの範囲としたとき、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材A面の表面粗さは、0.7nm以下であった。また、基材A面の表面粗さを0.3nm〜0.5nmの範囲としたときの、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材B面の表面粗さは1.4nm以下であった。
【0048】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、基材の多層膜形成面(基材A面)の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材の反射防止膜形成面(基材B面)の表面粗さを0.2nm以上1.4nmとすることで、挿入損失を−0.4dB以下とすることができ、基材B面と基材A面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑え、安価で高性能な多層膜フィルターを供給することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層膜フィルターの斜視図である。
【図2】光分波器の動作を説明する模式図である。
【図3】多層膜の膜構成図である。
【図4】多層膜フィルターの分光特性を示す図である。
【図5】基材A面の表面粗さと挿入損失の関係を示す図である。
【図6】基材B面の表面粗さと挿入損失の関係を示す図である。
【図7】基材の表面粗さと加工コストの関係を示す図である。
【符号の説明】
2 多層膜フィルター、2 多層膜、3 基材、4 反射防止膜、
5 光分波器、6 キャビティー層、7 カップリング膜、8 ミラー層、
9 スペーサー膜、10 光反射防止膜、11 高屈折材層、
12 低屈折材層。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信における波長多重通信システムに用いられる光合分波器に用いられる多層膜フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信分野においては、高速で大量の情報を伝送可能にする方法の一つとして波長多重通信システムの開発が盛んに行われている。この波長多重通信システムは複数の波長の光を重ねて伝送するものである。情報を伝送するための光ファイバーの前後に複数の波長の光を重ねて多重化したり、多重化された光を別々の波長の光に分けたりする光合分波器を接続する必要がある。
【0003】
光合分波器は多層膜フィルターを複数個使って構成されている。光合分波器に使用される、多層膜フィルターには、ある光の波長近傍でのみ透過率が高く、透過帯域以外(阻止帯域)の光を高度に反射する狭帯域フィルターとしての光学特性が要求される。
【0004】
図2に、波長λ1、λ2、λ3、λ4の光が多重化された状態λ1234の光から、それぞれの波長の光を分波する光分波器5を示す。波長λ1、λ2、λ3、λ4の光をそれぞれ透過する4つの多層膜フィルター1a〜1dが必要である。λ1分波用の多層膜フィルター1aにλ1234の光を入射しλ1の光を透過させ、他のλ234の光を反射して次のλ2分波用の多層膜フィルター1bに入射させる。このフィルター1bによってλ2の光が透過され、他の光λ34が反射される。同様にして、λ3、λ4分波用の多層膜フィルター1c、1dによってλ3、λ4の光が別々に取り出される。分波する光がλ1〜nであれば、光分波器5はn個の透過波長領域の異なる多層膜フィルターで構成される。
【0005】
図1に多層膜フィルターの外観形状を示す。多層膜フィルター1は、基材3の一方の面(以後、基材A面と言う)に狭帯域フィルターとして機能する多層膜2および光反射膜10が形成され、他方の面(以後、基材B面と言う)に、反射防止膜4が形成されている。
【0006】
丸もしくは角状の厚さ1mm程度で、使用する光の波長範囲にわたって透明な基板の一方の面に多層膜2、光反射防止膜10を、他面に反射防止膜4を、真空蒸着法、スパッタ法等により形成し、基板を略1.4mm角に切断し、基材3のA面に多層膜2および光反射防止膜10、基材3のB面に反射防止膜4が形成された多層膜フィルター1が得られる。
【0007】
図3に多層膜2の膜構成の一例を示す。多層膜2は、基材3上に、キャビティー層6がカップリング膜7を挟んでn層積層されている。最上層のキャビティー層6上には光反射防止膜10が配される。キャビティー層6はミラー層8aとスぺーサー膜9、ミラー層8bから構成される。ミラー層8a,8bは高屈折率膜11と低屈折率膜12が交互にm層積層された構造で、スペーサー膜9下(基材側)のミラー層8aは、基材側から高屈折率膜11と低屈折率膜12の順に積層され、スペーサー膜9上のミラー層8bは基材側から低屈折率膜12と高屈折率膜11の順に積層されている。
【0008】
波長λ0を中心とした透過帯域を得るには、ミラー層8を構成する高屈折率膜11及び低屈折率膜12の光学膜厚がλ0/4になるように形成し、スペーサー膜9は光学膜厚が(λ0/4)×L(Lは遇数)になるように形成する。光学膜厚は、膜材料の屈折率と物理的膜厚の積で表される。ミラー層8の積層数mを増やすことで透過帯域がより狭くなるので、透過帯域幅により積層数mが決められている。
【0009】
狭帯域フィルターでは透過帯域を狭くするとともに、透過帯域から阻止帯域への透過率の傾き(透過率の変化)を急峻にする必要がある。透過率の傾きを得るため、キャビティー層6もn回積層される。多層膜2の表面における光反射を防止するため、最上層のキャビティー層6上に、単層膜あるいは数層の膜からなる光反射防止膜10を形成する。光反射防止膜10の物理的膜厚と積層数は、キャビティー層等の膜構成により異なる。
【0010】
多層膜フィルターの各層を構成する膜の厚みは光学膜厚で制御される必要がある。光学膜厚は、物理的膜厚と膜の屈折率の積で表わされる。物理的膜厚の求め方は、高屈折率膜の屈折率をnH、低屈折率膜の屈折率をnLとすると、光学膜厚がλ0/4となる高屈折率膜の膜厚は、λ0/4nH、光学膜厚がλ0/4となる低屈折率膜の膜厚は、λ0/4nLと表記することもできる。
高屈折率膜としては、TiO2(屈折率約2.3)、Ta2O5(屈折率約2.1)、低屈折率膜としては、SiO2(屈折率約1.4)が主に使用されている。
【0011】
光通信における波長多重通信システムでは、ITU(International Telecommunication Union)グリッドと言われる標準化された波長間隔の光が多重化して伝送される。ITUグリッドにおける隣り合う波長の間隔、隣接波長間隔は、200GHzと言われるシステムでは、1.6nm、現在主流の100GHzのシステムでは、0.8nmと狭帯域化が進んでいる。
光を狭帯域で透過させるためには、ミラー層8の積層数mと、キャビティー層6の積層数nを多くすることが必要である。隣接波長間隔0.8nmで使用可能な狭帯域フィルターを得るためには、mを6から7、nを4から5程度とする必要があり、多層膜2は、100から200近くの積層数で構成されることになる。このような多積層数の膜の膜厚を高精度で制御することで、初めて所望の狭帯域フィルターを得ることが可能になるものである。
【0012】
基材3には、使用される波長領域にわたって透明であることが要求される。また、多層膜フィルターとして所定の形状に加工する必要があるため、多層膜を支持して機械加工に耐え、プロセスを通してかかる熱的な負荷にも耐え得る材質が要求される。さらに、基材3には、環境温度変化に対し多層膜の膜厚方向の熱膨張収縮により生ずる光学特性の変化を抑制するという役割もある。多層膜2の熱膨張係数は概略30x10−7/deg.であり、これよりも熱膨張係数の大きい基材3を用いることで、例えば、熱膨張した多層膜を基材のさらに大きい熱膨張によって膜面方向に引っ張って膜厚の変化を最小限にする。これらの要求を満たす基材材質として、熱膨張係数110x10−7/deg.の透明ガラスが主に使用される。
【0013】
基材B面に設けられる反射防止膜4は、単層膜あるいは複数層の膜からなり、TiO2、Ta2O5、SiO2が主に使用されている。
【0014】
光合分波器は低損失であること、すなわち光合分波器に光を通す前後で光量が低下しないことが重要である。低損失な光合分波器を用いることで、光量を増幅させる中継点が少なくて済む等、より安価な通信システムの構築が可能となる。
【0015】
光合分波器で発生する損失には、大きく分けて2つあり、多層膜フィルター自身で生ずる損失と、それ以外の損失がある。光合分波器では、それぞれの多層膜フィルターは光ファイバーと接着剤等で接続、固定されている。この接続、固定状態によって損失が生じる場合がある。光ファイバーの端面の状態、多層膜フィルターと光ファイバーの接触状態を、固定に用いる接着剤や接着方法を検討することで低損失に抑えることが行われている。
【0016】
多層膜フィルター自身で生ずる損失としては、所定の波長領域の、それぞれの波長の光について、入射光量が多層膜フィルターを通過したときに何%の光量となっているかを表す透過率をdB(デシベル)表示したものがある。透過率をA%とすると、dB表示では透過率は10log10(A/100)(dB)であり、透過率が100%の場合0dB、透過率が下がるとdB表示では負の値となる。
【0017】
図4に多層膜フィルターに光を入射した時の分光特性を示す。一般的に最大透過率の点Tmaxと入射光量の差を挿入損失という。挿入損失は、多層膜フィルターを光が通過することによって、透過させたい波長の光が入射光に対してどれだけ減少してしまったかを表すものであり、多層膜フィルター自身の損失を表すものである。以下、挿入損失という場合には、多層膜フィルター自身の損失を表すものとする。透過率が−15dBとなる波長をλa,λbと称し、λaとλbの中心のλ0を中心波長と呼ぶ。多層膜フィルターとしては、λaとλbの差が小さい(透過率の傾きが大きい)こと、挿入損失が小さいこと、λ0が設計値と一致することが望まれる。
【0018】
挿入損失は、主に、多層膜フィルター内で起こる光の散乱に起因する。散乱とは、光の波が障害物にあたったときに、それを中心として、周囲に広がっていく波ができる現象である。
高屈折率膜と低屈折率膜を交互に積層させた構造であるため、膜間には界面が生じる。この界面の平坦性が悪いと界面での光の散乱が大きくなる。狭帯域フィルターの機能を上げるには、多層膜の積層数を多くする必要があり、必然的に界面の数も多くなる。積層された膜の界面を積層界面と称する。積層界面の平坦性が悪いと、光が積層界面を横切る毎に散乱が加わり、全体として大きな挿入損失を生じることになる。そのため、光が積層界面で散乱されて挿入損失を生じないように、多層膜の積層界面は、平坦であることが望まれる。反射防止膜に付いても同様である。
【0019】
多層膜及び反射防止膜の積層界面の平坦性を悪くする主な要因として2つ挙げられる。一つは、薄膜自身が成長過程で生じる粒成長等によって膜面に凹凸が生じ積層界面の平坦性を悪化させる。他は、基材表面の凹凸が原因で積層界面に凹凸が生じ積層界面の平坦性を悪化させるものである。粒成長により生ずる凹凸は製膜条件を検討することで低減するしかない。基材表面に凹凸がある場合には、薄膜自身の成長過程での凹凸形成がなくても、基材の表面状態が転写されるかたちで薄膜が成長し、それが積層界面の凹凸となる。
【0020】
基材の表面を平坦にして基材の凹凸の影響が出ないようにし、挿入損失を低減すると、基材の精密研磨が要求され加工時間の増加、歩留りの低下から基材の価格が大幅に上がるため、結果的に多層膜フィルターの価格を上げるだけでなく、大量生産の足枷となってしまっていた。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、基材の表面状態と多層膜フィルターの挿入損失の関係を定量的に把握して、安価でかつ低損失、ばらつきの少ない多層膜フィルターを大量に提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層膜フィルターは、基材の一方の面に形成されたフィルター機能を有する多層膜および光反射防止膜、他方の面に形成された反射防止膜からなる光合分波器に用いられる多層膜フィルターであって、基材の表面粗さRaは、多層膜形成面側は0.2nm以上0.7nm以下、反射防止膜形成面側は0.2nm以上1.4nm以下であることを特徴とする。
【0023】
表面粗さRaは、JIS B0601に規定される算術平均粗さで規定される。
多層膜形成面(基材A面)側の表面粗さRaの上限が0.7nm、反射防止膜形成面(基材B面)側の表面粗さRaの上限が1.4nmの基材を使用することで、光合分波器に求められる低挿入損失の多層膜フィルターを得ることができる。表面粗さRaが、基材A面で0.7nm、基材B面で1.4nmより大きくなると、挿入損失が大きな多層膜フィルターとなり、製品の歩留まりが大きく低下してしまう。基材A,B面側の表面粗さRaを、0.2nm未満としても、それ以上の挿入損失の低減効果は認められないだけでなく、基材の精密研磨にかかるコストが急激に増加する。また、基材A,B面側とも、表面粗さRaの下限を0.2nmとすることで、基材の精密研磨コストの低減が図れる。
【0024】
本発明の多層膜フィルターは、反射防止膜を形成する基材B面の表面粗さRa1と、多層膜を形成する基材A面の表面粗さRa2の比Ra1/Ra2が1/1以上3/2以下であることを特徴とする。
【0025】
基材B面は挿入損失に直接影響しないと考えられていたが、基材A面とB面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑えられることが判った。しかし、基材B面は基材A面に比べ表面粗さを良くする必要は特にない。基材の精密研磨を行い、表面粗さの良い面を基材A面として使用することで、安価に多層膜フィルターを製造することが可能となる。基材A面とB面の表面粗さが大きく異なると、表面粗さによる基材の反りが発生し、基材の反りによって多層膜にかかる応力の差が生じ挿入損失にばらつきが生じると考えられるため、基材A面とB面の表面粗さの比を規定することは大きな意味を持つものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
図面を参照しながら本発明の実施形態について、以下に詳細を説明する。多層膜フィルター、多層膜の構成は従来技術と略同一であるので、同一の図を用いて説明する。図1に多層膜フィルターの斜視図、図3に多層膜の構成を示す。図3に示す多層膜の構成で、図1に示す多層膜フィルターを作製し、基材の表面粗さと挿入損失の関係を詳細に調べた。基材の表面粗さは、基材A面を0.1nmから1.0nmまで、基材B面を0.1nmから2.0nmまで変化させた。
【0027】
使用した基材は、SiO2、Na2O、K2O、TiO2を主成分とする厚さ1mmのガラス板であり、その特性は(比重=2.88、ヤング率=85GPa,ビッカース硬度=570、摩耗度(Aa)=197、耐熱温度=500℃、熱伝導率=0.9W/(m・deg.)、熱膨張係数=105×10−7/deg.(−30〜70℃)、熱膨張係数=113×10−7/deg.(0〜200℃)、耐水性RW(P)=2、耐酸性RA(P)=1、内部透過率=99.9%(波長1550nm)、屈折率n=1.658(波長1550nm計算値)、屈折率の温度変化dn/dt=−0.7×10−6/deg.(波長1550nm、−30℃〜70℃計算値)である。
【0028】
ガラス板は、スラリー濃度を5〜20%、スラリー流量を10〜100ml/分、研磨速度(基板回転数、研磨パッドの回転数)を10〜50rpmの条件で、研磨時間を変えて精密研磨(ラッピング加工)を行った。スラリーには、酸化セリウム系およびコロイダルシリカ系を併用した。
【0029】
基材A,B面の表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定し、一辺10μmの正方形の領域で求めた。表面粗さの測定範囲が狭いため基材を代表する表面粗さの値とするには難があるので、約1.5mm角の領域で20個所測定を行い、20個の測定値中で最も表面粗さの大きい値を、その領域の表面粗さRaとしている。
【0030】
表面粗さを測定した基材A面に多層膜を形成した。多層膜は図3に示す構成とした。キャビティー層の繰り返し数n=4とし、ミラー層の高屈折率膜と低屈折率膜の繰り返し数mは、キャビティー層を基材側から順に第1、第2、第3、第4とすると、第1、第2キャビティー層はm=7、第3キャビティー層はm=8、第4キャビティー層はm=6とした。光反射防止膜は、光学膜厚がλ0/2となるように低屈折率なSiO2膜を形成した。ミラー層を構成する高屈折率膜にはTa2O5(屈折率2.15)、低屈折率膜にはSiO2(屈折率1.46)を使用した。多層膜の総積層数は128層で、総膜厚(物理的膜厚)は約34μmとなった。
【0031】
基材B面に形成する反射防止膜は、基材側から順に、Ta2O5(319.9nm)、SiO2(403.4nm)、Ta2O5(254.5nm)、SiO2(202.5nm)の順で、4層膜構造とした。括弧内は、成膜した物理膜厚を示している。
【0032】
基材A面の多層膜、光反射防止膜および基材B面の反射防止膜の形成には、イオンビームアシスト蒸着装置を使用し、成膜条件は表1の通りとした。前記の膜はいずれもTa2O5とSiO2で構成されており、膜厚の違いによる成膜時間以外は、表1の成膜条件を用いた。
【0033】
表1
【0034】
成膜後、ダイアモンド砥石を用い1.4mm角切断し、図1に示す多層膜フィルターを得た後、基材A,B面の表面粗さが異なる多層膜フィルターを用い、中心波長λ0前後3nmの波長範囲を有する光を多層膜フィルターに入射し、分光特性を測定し挿入損失を求めた。
【0035】
図5に、基板A面の表面粗さと挿入損失の関係を示す。基板B面の影響をなくすため、基板B面の表面粗さは0.3nm〜0.7nmの範囲の多層膜フィルターを用いている。基材A面の0.1nmから1.0nmの表面粗さと挿入損失の間には相関関係が見られ、表面粗さが粗くなるに従い、挿入損失も増加している。特に表面粗さが0.7nmを越えると挿入損失も−0.4dBを越え多層膜フィルターとしては使用が難しいことが判る。また、基材A面の表面粗さ0.1nmから0.5nmにおいては、挿入損失にほとんど差がなく安定して低い値が得られている。
【0036】
図6に、基材B面の0.1から2.0nmの表面粗さと挿入損失の関係を示す。基板A面の影響をなくすため、基板A面の表面粗さは0.3nm〜0.5nmの範囲の多層膜フィルターを用いている。基材B面の表面粗さが0.1nmから1.4nmの間においては、挿入損失が−0.4dB以下であるが、1.5nmを越えると挿入損失が増加し始め、2nmになると挿入損失が−1.5dBと多層膜フィルターとして使用できない値を示した。
【0037】
基材B面に付加した、光ファイバーの反射損失には大きな差がないため、基材B面の表面粗さが挿入損失に影響を及ぼしていることは確かである。基材B面の表面粗さが基材A面に形成された多層膜の挿入損失にどの様に影響しているか理論的な解明は出来ていない。しかし、基材A面とB面の表面粗さが大きく異なると、表面粗さによる基材の反りが発生し、基材の反りによって多層膜にかかる応力の差が生じ挿入損失にばらつきが生じるものと考えられるが、確証が得られているわけではない。しかしながら、基材B面の表面粗さを規定することは、多層膜フィルターの挿入損失低減には重要であると言える。何れにしても、基材A面の表面粗さは0.7nm、基材B面の表面粗さを1.4nm以下にすることで、挿入損失は−0.4dB以下が得られることが判る。
【0038】
しかしながら、基材の表面粗さを良くするには研磨加工に時間を要するだけでなく歩留りの低下を招くものである。基材A,B面の表面粗さを0.7nmに加工するコストを1として、表面粗さと加工コスト比を図7に示す。加工コスト比には、歩留りによるコスト増加分も含んでいる。ここで言う歩留りを低下させる主な不良としては、修正出来ない基材表面のうねり、スクラッチ等によって基材が使用出来ないものである。加工コストは表面粗さが2.0nmから0.3nm程度までは、表面粗さが良くなるに従い加工コストは単純に増加するが、0.2nm以下となると急激にコストが上昇している。これは、加工時間の増加に比べ、低歩留りによるコスト増加が著しいためである。このことから、基材A,B面の表面粗さ下限を0.2nmを限度にすることで、基材の加工コストの増加を抑えることが可能となる。また、上限を基材A面は0.7nm,基材B面は1.4nmとすることで、低損失で安価な多層膜フィルターを提供することができる。
【0039】
本発明の他の実施例として、多層膜の積層数を164層に増やした多層膜フィルターにおいても、前述した、実施例と同様基材A,B面の表面粗さと挿入損失に付いて測定を行った。
キャビティー層の繰り返し数n=5とし、ミラー層の繰り返し数mは、キャビティー層を基材側から順に第1、第2、・・、第5とし、第1、第2はm=7、第3はm=8、第4、第5はm=7とした。多層膜上の光反射防止膜、基材B面の反射防止膜は、先の実施例と同じとした。
多層膜の総積層数は164層で、総膜厚(物理的膜厚)は約39μmであった。
【0040】
基材の表面粗さと挿入損失の関係は、図5と図6に示した結果と同様な傾向と値であり、基材B面の表面粗さを0.3nm〜0.7nmの範囲としたとき、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材A面の表面粗さは、0.7nm以下であった。また、基材A面の表面粗さを0.3nm〜0.5nmの範囲としたときの、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材B面の表面粗さは1.4nm以下であり、多層膜の積層数を変えても低損失が得られる基材の面粗さは同じであった。
【0041】
基材A面の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材B面の表面粗さを0.2nm以上1.4nm以下にすることで、安価で低挿入損失な多層膜フィルターが得られることを示した。しかし、基材を前記表面粗さで製造した場合、挿入損失のばらつきが約0.2dBあることが判った。多層膜フィルターとして使用する上では問題はないのであるが、よりばらつきの少ない多層膜フィルターを実現するため、基材A面とB面の関係についてより詳細に調べた。基材B面の表面粗さをRa1、基材A面の表面粗さをRa2とすると、Ra1/Ra2が3/2以下の関係を示す多層膜フィルターでは、Ra1/Ra2の値に関係なく、挿入損失のばらつきが小さいことが判った。Ra1/Ra2が3/2を超えた多層膜フィルターの挿入損失はばらつきが大きかった。
【0042】
表2に、基材A面の表面粗さの範囲と挿入損失のばらつきを示す。挿入損失のばらつきの項で全多層膜フィルターとは、基材A面の表面粗さ範囲に入る全ての多層膜フィルターの挿入損失のばらつきを示し、Ra1/Ra2≦3/2の多層膜フィルターの項は、全多層膜フィルター内でRa1/Ra2≦3/2の関係を満たす多層膜フィルターの挿入損失ばらつきを示している。ばらつきは、基材A面の表面粗さ範囲にある多層膜フィルターが示した挿入損失の最大値から最小値を引いて求めている。
【0043】
表2
【0044】
表2から判るように、基材A面表面粗さRa1とB面の表面粗さRa2の関係を、Ra1/Ra2が3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑えることができるものである。
基材A,B面の表面粗さを規定することで、挿入損失の値を小さくすることができ、また、基材A,B面の表面粗さの比を規定することで挿入損失のばらつきを小さくできるものである。
【0045】
本発明の他の実施例として、1200nm〜1700nmの波長領域での、基材表面粗さと挿入損失の関係について調べた。波長多重通信に使用される光の波長領域は、Cバンドと言われる1530〜1565nmの領域が主に使用されているが、近年の大容量化に伴いCバンドだけでは足りず、Lバンド(1565〜1625nm)やSバンド(1460〜1530nm)も必要となってきている。今後、さらに新しいバンドが加えられることは充分考えられることであり、多層膜フィルターとしては、1200nm〜1700nmの波長領域においても、低挿入損失が要求されてくる。
【0046】
中心波長λ0の狙い値を1200nm、1700nmの多層膜フィルターを作製した。膜構成は本発明の実施例と同じ128層とし、各膜の厚みを中心波長λ0に合う様に調整した。多層膜の物理的総膜厚は、1200nmで約30μm、1700nmで43μmとなった。
【0047】
1200nm,1700nmの多層膜フィルターの挿入損失と基材の表面粗さの関係は、他の実施例と同様、基材B面の表面粗さを0.3nm〜0.7nmの範囲としたとき、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材A面の表面粗さは、0.7nm以下であった。また、基材A面の表面粗さを0.3nm〜0.5nmの範囲としたときの、−0.4dB以下の挿入損失を示す基材B面の表面粗さは1.4nm以下であった。
【0048】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、基材の多層膜形成面(基材A面)の表面粗さを0.2nm以上0.7nm以下、基材の反射防止膜形成面(基材B面)の表面粗さを0.2nm以上1.4nmとすることで、挿入損失を−0.4dB以下とすることができ、基材B面と基材A面の表面粗さの比を3/2以下とすることで、挿入損失のばらつきを抑え、安価で高性能な多層膜フィルターを供給することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】多層膜フィルターの斜視図である。
【図2】光分波器の動作を説明する模式図である。
【図3】多層膜の膜構成図である。
【図4】多層膜フィルターの分光特性を示す図である。
【図5】基材A面の表面粗さと挿入損失の関係を示す図である。
【図6】基材B面の表面粗さと挿入損失の関係を示す図である。
【図7】基材の表面粗さと加工コストの関係を示す図である。
【符号の説明】
2 多層膜フィルター、2 多層膜、3 基材、4 反射防止膜、
5 光分波器、6 キャビティー層、7 カップリング膜、8 ミラー層、
9 スペーサー膜、10 光反射防止膜、11 高屈折材層、
12 低屈折材層。
Claims (2)
- 基材の一方の面に形成された光フィルター機能を有する多層膜および光反射防止膜、他方の面に形成された反射防止膜からなる光合分波器用多層膜フィルターであって、基材の表面粗さRaが多層膜形成面側は0.2nm以上0.7nm以下、反射防止膜形成面側は0.2nm以上1.4nm以下であることを特徴とする光合分波器用多層膜フィルター。
- 基材の反射防止膜形成面側の表面粗さRa1と、多層膜形成面側の表面粗さRa2の比Ra1/Ra2が、1/1以上3/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光合分波器用多層膜フィルター。
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