JP2004069634A - 平板状フローセル測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】平板状フローセルと光学系の位置合わせ作業を容易に高精度に行うことができる平板状フローセル測定装置を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも1つの測定部を有する流路を備えた平板状フローセルと、(b)測定部に光ビームを照射する手段と、(c)測定部からの散乱光を検出し、出力する手段と、(d)試料のない状態で(c)からの出力と、平板状フローセルまたは光ビームの位置出力とを関連付けて、平板状フローセルまたは光ビームの移動量を算出して、移動を指示する手段と、(e)(d)からの移動指示に基づいて、平板状フローセルまたは光ビームを移動させる手段を備えた平板状フローセル測定装置。
【選択図】 図5
【解決手段】(a)少なくとも1つの測定部を有する流路を備えた平板状フローセルと、(b)測定部に光ビームを照射する手段と、(c)測定部からの散乱光を検出し、出力する手段と、(d)試料のない状態で(c)からの出力と、平板状フローセルまたは光ビームの位置出力とを関連付けて、平板状フローセルまたは光ビームの移動量を算出して、移動を指示する手段と、(e)(d)からの移動指示に基づいて、平板状フローセルまたは光ビームを移動させる手段を備えた平板状フローセル測定装置。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、平板状フローセル測定装置に関するものであり、特に、光学系と流路の位置合わせ機構を備えた平板状フローセル測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Si、ガラス、樹脂等からなる平板内に微細な流路を備えたマイクロチップ上でさまざまな分析や反応を行うことが近年盛んに研究されている。マイクロチップを用いると、分析、反応等に用いる試薬量が極めて少なくてすみ、低コストのマイクロチップを使い捨てにすることにより、分析、反応等のバッチ間の汚染を防ぐことができる等の特徴がある。
【0003】
このようなマイクロチップ上で試料を測定する方法として、光学的又は電気的な検出方法が一般に用いられている。特に、光学的検出方法は、高感度で、マイクロチップに対して非接触で測定が行えることから、広く用いられている。光学的検出方法においては、測定のための光ビームを正確にマイクロチップ上の流路に位置合わせしなければならない。特に、シースフローセルを用いて粒子や細胞を1個ずつ分析するフローサイトメーターでは、粒子や細胞の流れの幅は10〜30μm程度に絞られ、測定精度を上げるために光ビームは数μm以下の精度で位置合わせすることが要求される。平板状フローセルを使い捨て使用とする場合、新しいフローセルを装置にセットする毎に位置合わせ作業が必要となり、これを簡単、かつ、正確に行えるようにすることが非常に重要である。
【0004】
従来、光学系とフローセルの位置合わせ方法として、特開平3−146848号公報には、光ビームを流路横断方向に走査し、被検部を通過する試料からの信号を検出し、その検出信号が最大となるようにビーム位置を設定する方法が開示されている。
交換可能な平板状フローセルと光学系の位置合わせ方法として、米国特許第5748827号明細書には、マイクロチップとステージのキネマティック・マウントが用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べた特開平3−146848のように、フローセルに試料を流し、試料に光ビームを照射し、試料からの散乱光等の信号を計測し、信号が最大となるように光ビーム位置を調整する方法では、位置合わせをとるために試料を流さなければならず、微量で貴重な試料には不向きである。また、測定用試料ではなく、調整用に、異なる試料を流すことにより位置合わせ作業を行うこともできるが、試料切り替え時のコンタミの可能性等、フローセルを使い捨てにするメリットが失われてしまう。
【0006】
米国特許第5748827号明細書のようなマイクロチップとステージの形状を利用した位置合わせ方法では、位置合わせのためのピンや溝等の構造は一般に機械加工で形成される。その位置精度は通常あまり高くなく、精度を上げると製造コストが高くなる。樹脂製マイクロチップの場合、一体成型で位置合わせのための構造を作成することができるが、成型時の樹脂の膨張・収縮等の影響で数μmレベルの精度を達成することは困難である。
【0007】
このように、従来技術は、調整の容易性やコストの面で十分ではなく、特に、交換可能な平板状フローセルを用い、頻繁に位置合わせ作業が必要となる平板状フローセル測定装置において、改善が望まれていた。
本発明は、このような問題点を解決し、高精度の位置合わせ作業を容易に行うことができる平板状フローセル測定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決するため、新たな位置合わせ装置を検討した結果、平板状フローセルにおいて、マイクロ流路壁からの散乱光を測定することにより流路位置を知ることができ、その情報から正確な位置合わせが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) (a)少なくとも1つの測定部を有する流路を備えた平板状フローセルと、(b)測定部に光ビームを照射する手段と、(c)測定部からの散乱光を検出し、出力する手段と、(d)試料のない状態で(c)からの出力と、平板状フローセルまたは光ビームの位置出力とを関連付けて、平板状フローセルまたは光ビームの、予め指定された位置への移動量を算出して、移動を指示する手段と、(e)(d)からの移動指示に基づいて、平板状フローセルまたは光ビームを移動させる手段を備えた平板状フローセル測定装置。
(2) 平板状フローセルが交換可能である(1)に記載の平板状フローセル測定装置。
(3) 平板状フローセルはシースフローセルである(1)又は(2)に記載の平板状フローセル測定装置。
(4) 光ビームがレーザー光である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の平板状フローセル測定装置。
(5) 検出器が0.5°以上45°以下の範囲内の角度の散乱光を測定するものである請求項(1)〜(4)のいずれか1つに記載の平板状フローセル測定装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。
本発明の平板状フローセル測定装置の1例を図1に示す。図1において、測定部に光を照射する手段は、光源22及びレンズ郡23で構成されている。光源22より出た光ビーム32は、レンズ群23により集光され、光ビームを透過させるための開口部を持った電動マイクロステージ33上の平板状フローセル1を照射する。
【0010】
平板状フローセル1は、後で図2により詳細に説明するように、少なくとも1つの測定部を有する流路を備えている。
光源22は、高出力でコヒーレンシーの高いレーザーが望ましいが、その他の光源でもよい。平板状フローセルは、ガラスや透明樹脂等で作成することができる。平板状フローセル内を流れる試料に光ビームがあたると、試料から散乱光や蛍光が発生する。試料がない場合でも、フローセル自身から弱い散乱光が生じている。
【0011】
散乱光又は蛍光33は、レンズ25によりコリメートされ、ビームスプリッター26により2つの光路に分かれる。1方は、レンズ27により集光され、光センサー28に導かれ、前方散乱光が測定される。他方は、光学フィルター29で必要な波長の光のみ透過させ、レンズ30により集光され光センサー31に導かれ、蛍光測定に用いられる。
図1において、測定部からの散乱光を検出し出力する手段は、レンズ25、ビームスプリッター26、レンズ27、光センサー28で構成されている。レンズ25の手前にアパーチャー24を置くことにより、平板状フローセルを透過したレーザー光をカットし、光センサー28に入射する散乱光角度を規定する。図7は、アパーチャー24の一例の正面図である。円aの大きさで検出器に入射する最小の散乱光角度を規定し、円bの大きさで検出器に入射する最大の散乱光角度を規定している。
【0012】
光センサー28、29からの出力信号は、増幅器34で増幅され、AD変換器35でデジタル変換されてパーソナルコンピューター36でデータ収録、信号処理・制御が行われる。
このような装置において、光ビームと平板状フローセルの測定部との位置合わせをとる方法について説明する。
平板状フローセルのデザインにより流路中の最適測定位置は決まっており、予め、パーソナルコンピューター36にその位置座標を入力しておく。電動マイクロステージを矢印Aに示したように流路の流れに垂直方向に移動させて、試料が流れていない状態で散乱光の測定を行う。電動マイクロステージ33は、パーソナルコンピューター36の移動指示に基づいて,ステージコントローラ37を介して移動させられる。電動マイクロステージの代わりに、ガルバノ・ミラー等を用いて光ビームを走査してもよい。パーソナルコンピューター36は、ステージ位置と光センサー28からの出力信号とを関連付けて、両者を対応付けられながら記録すると共に、平板状フローセルの、予め指定された位置への移動量を算出して、電動マイクロステージ33の移動を指示する。
【0013】
先に述べたように、試料がなくても、平板状フローセルの部材自身や流路の壁面のわずかな荒れ等から散乱光が生じている。特に、流路側壁で強く散乱される。流路横断方向の散乱光強度変化を見ると、2つの流路側壁に対応する位置に散乱光強度の極大点がそれぞれ現れる。この測定結果から、パーソナルコンピューター36により、ソフトウエア処理により極大点位置を計算することによって、光ビームを基準とした流路の位置座標が求まる。その情報から、流路中の適切な位置、通常は流路中央に光ビームがくるよう、必要なステージ移動量を計算し、パーソナルコンピューター36からステージコントローラー37を制御して、電動マイクロステージ33を所定量駆動する。このような操作により、光ビームと平板状フローセルの位置合わせをとることができる。
【0014】
散乱光の測定角度は0.5°から45°の範囲が好ましい。測定角度が0.5°未満になると、透過光と散乱光の切り分けが難しくなり、45°を越えると、流路側壁に由来する散乱信号が弱くなり、極大点の検出が難しくなる。
本発明は、平板状フローセルが使い捨てで新しいフローセルをセットする毎に位置合わせ作業をしなければならない場合、特に効果的である。また、流路内の所定の位置に高精度に位置合わせすることができる。例えば、平板状フローセルがシースフローセルの場合、フローセルの中心を流れる細い試料流に光ビームを正確に位置合わせさせる必要がある。また、光ビームがレーザー光の場合、その強度分布はガウシアン分布をもつので、ビームの中心を正確に測定対象に合わせる必要がある。本発明によれば、このような用途で数μm以下の精度を容易に実現できる。
【0015】
本発明の、平板状フローセルについて説明する。
図2は、平板状シースフローセルの構造及び送液機構を示す斜視図である。平板状フローセルは、透明アクリル樹脂で作成されており、細胞や粒子を含む試料液を収納する試料液ポート2とシース液を収納するシース液ポート3、4を備え、各ポートは平板内に形成されている流路5、6、7にそれぞれ接続している。流路5,6、7は、合流点8で試料液がシース液に両側から挟まれるように合流し、流路9に接続している。流路9の末端は、廃液ポート10に接続している。
【0016】
試料液ポート2、シース液ポート3、4の開口部はカップラー11で覆われ、カップラー11と平板状フローセル1の間は、気密が保たれている。カップラー11は、チューブ12を介して、陽圧源に接続している。カップラー11に陽圧がかかることにより、試料ポート2、シース液ポート3、4の液が流路中へと押し流される。
図2の平板状フローセルの合流部の流れの様子を図3に示す。合流部で液流れは層流となるような流速で流され、試料液13、シース液14,15は、図に示すように層状に流れ、試料液の流れは縮流される。流路9における試料液とシース液の流量比は、カップラー11にかけられる圧力によらず、流路5、6、7の圧力損失の比、すなわち、流路形状とそこを流れる液の粘度で決まる。圧力損失を適当に設計することにより、試料流が流路の中央を安定して流れるようにしている。
【0017】
平板状シースフローセルの作成方法を図4にしたがって説明する。図4の各図は断面を表している。工程(A)において、フォトマスク16上の流路パターンをフォトリソグラフィー工程でSi基板18上の感光性レジスト17に転写する。続いて、工程(B)に示すように、感光性レジスト17の未感光のレジスト部を除去し、次いで、Si基板18のエッチングを行って、流路パターンの溝38をSi基板18上に形成する。流路パターンの溝38は、図2における、流路5,6,7,8,9に該当するものである。
【0018】
次に、工程(C)において、Si基板18上にNiを電鋳し、流路パターンが凸状になったNiプレート19を作成する。その後、Si基板18とNiプレート19を分離する。工程(D)において、Niプレート19を型として透明樹脂基板20を熱圧縮成形することにより、流路パターンの溝38を透明樹脂基板上に転写する。工程(E)において、透明樹脂基板20の液ポート39となる部分を穴あけ加工し、流路パターンが形成されている面に別の樹脂基板21を貼り合わせることにより、工程(F)に示すような平板状シースフローセルを作成する。なお、工程(F)の図は、工程(E)の状態から反転した形で表示している。液ポート39は、図2の試料ポート2、シース液ポート3、4、廃液ポート10に該当するものである。
【0019】
【実施例1】
図1の光散乱測定装置により、平板状シースフローセルの前方散乱光の測定を行った。
フローセルの流路内はシースバッファーで満たされているが、試料を流していない状態で、光ビームが測定部の流路を横断するように電動マイクロステージを駆動し、前方散乱信号を測定した。光源にはレーザーを使用し、前方散乱受光器は2°〜8°の範囲の散乱光を受光するように設置した。パーソナルコンピューター36に記録された信号強度とステージ位置座標、すなわち、フローセル位置の関係を図5に示す。このチャート上で、2つの極大点a及びbが現れ、その位置は流路側壁の位置に一致していた。
【0020】
前に述べたように、図2のシースフローセルは、その流路形状と送液方法により、常に試料流が合流部において、その中央を流れるようになっているので、流路の位置がわかれば、試料を直接測定しなくても、流路の中心に光ビームがくるように平板状フローセルを移動させることにより、光ビームを試料流に正確に位置合わせさせることができ、精度の高い測定が可能となる。
図5の2つの極大点の中心cに光ビームの中心がくるように、電動マイクロステージを駆動し、その位置で今度は、市販のフローサイトメーター調整用標準ビーズ(ポリスチレン製、粒径6μm)を流し、ビーズの散乱信号を測定した。その測定結果を図6に示す。図6から、従来のように標準ビーズの測定信号を見ながら位置合わせを合わせた時とほぼ同じ信号強度及び低分散の良好なデータが得られることがわかる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の平板状フローセル測定装置は、光ビームの照射位置を流路の横断方向に移動させながら、試料の流れていない平板状フローセルの散乱光を測定することにより、流路の側壁位置を知ることができ、その情報から光ビームを流路中央に正確に位置合わせすることができる。
本発明によると、従来の技術に比べて、調整用の試料を必要とせず、安価な使い捨てフローセルに対して、容易に再現性よく、高精度の位置合わせ作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平板状フローセル測定装置の一例の配置図。
【図2】本発明に用いる平板状シースフローセルと送液機構の一例を示す斜視図。
【図3】本発明のシースフローセルの合流部の流れの平面模式図。
【図4】本発明の平板状シースフローセルの作成の一例を示す工程図。
【図5】実施例の、試料を流さない状態でのフローセルからの散乱信号と測定位置の関係を示すグラフ。
【図6】実施例における、標準ビーズの散乱信号のヒストグラム。
【図7】図1のアパーチャーの一例を示す正面図。
【産業上の利用分野】
本発明は、平板状フローセル測定装置に関するものであり、特に、光学系と流路の位置合わせ機構を備えた平板状フローセル測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Si、ガラス、樹脂等からなる平板内に微細な流路を備えたマイクロチップ上でさまざまな分析や反応を行うことが近年盛んに研究されている。マイクロチップを用いると、分析、反応等に用いる試薬量が極めて少なくてすみ、低コストのマイクロチップを使い捨てにすることにより、分析、反応等のバッチ間の汚染を防ぐことができる等の特徴がある。
【0003】
このようなマイクロチップ上で試料を測定する方法として、光学的又は電気的な検出方法が一般に用いられている。特に、光学的検出方法は、高感度で、マイクロチップに対して非接触で測定が行えることから、広く用いられている。光学的検出方法においては、測定のための光ビームを正確にマイクロチップ上の流路に位置合わせしなければならない。特に、シースフローセルを用いて粒子や細胞を1個ずつ分析するフローサイトメーターでは、粒子や細胞の流れの幅は10〜30μm程度に絞られ、測定精度を上げるために光ビームは数μm以下の精度で位置合わせすることが要求される。平板状フローセルを使い捨て使用とする場合、新しいフローセルを装置にセットする毎に位置合わせ作業が必要となり、これを簡単、かつ、正確に行えるようにすることが非常に重要である。
【0004】
従来、光学系とフローセルの位置合わせ方法として、特開平3−146848号公報には、光ビームを流路横断方向に走査し、被検部を通過する試料からの信号を検出し、その検出信号が最大となるようにビーム位置を設定する方法が開示されている。
交換可能な平板状フローセルと光学系の位置合わせ方法として、米国特許第5748827号明細書には、マイクロチップとステージのキネマティック・マウントが用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べた特開平3−146848のように、フローセルに試料を流し、試料に光ビームを照射し、試料からの散乱光等の信号を計測し、信号が最大となるように光ビーム位置を調整する方法では、位置合わせをとるために試料を流さなければならず、微量で貴重な試料には不向きである。また、測定用試料ではなく、調整用に、異なる試料を流すことにより位置合わせ作業を行うこともできるが、試料切り替え時のコンタミの可能性等、フローセルを使い捨てにするメリットが失われてしまう。
【0006】
米国特許第5748827号明細書のようなマイクロチップとステージの形状を利用した位置合わせ方法では、位置合わせのためのピンや溝等の構造は一般に機械加工で形成される。その位置精度は通常あまり高くなく、精度を上げると製造コストが高くなる。樹脂製マイクロチップの場合、一体成型で位置合わせのための構造を作成することができるが、成型時の樹脂の膨張・収縮等の影響で数μmレベルの精度を達成することは困難である。
【0007】
このように、従来技術は、調整の容易性やコストの面で十分ではなく、特に、交換可能な平板状フローセルを用い、頻繁に位置合わせ作業が必要となる平板状フローセル測定装置において、改善が望まれていた。
本発明は、このような問題点を解決し、高精度の位置合わせ作業を容易に行うことができる平板状フローセル測定装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決するため、新たな位置合わせ装置を検討した結果、平板状フローセルにおいて、マイクロ流路壁からの散乱光を測定することにより流路位置を知ることができ、その情報から正確な位置合わせが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1) (a)少なくとも1つの測定部を有する流路を備えた平板状フローセルと、(b)測定部に光ビームを照射する手段と、(c)測定部からの散乱光を検出し、出力する手段と、(d)試料のない状態で(c)からの出力と、平板状フローセルまたは光ビームの位置出力とを関連付けて、平板状フローセルまたは光ビームの、予め指定された位置への移動量を算出して、移動を指示する手段と、(e)(d)からの移動指示に基づいて、平板状フローセルまたは光ビームを移動させる手段を備えた平板状フローセル測定装置。
(2) 平板状フローセルが交換可能である(1)に記載の平板状フローセル測定装置。
(3) 平板状フローセルはシースフローセルである(1)又は(2)に記載の平板状フローセル測定装置。
(4) 光ビームがレーザー光である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の平板状フローセル測定装置。
(5) 検出器が0.5°以上45°以下の範囲内の角度の散乱光を測定するものである請求項(1)〜(4)のいずれか1つに記載の平板状フローセル測定装置。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら説明する。
本発明の平板状フローセル測定装置の1例を図1に示す。図1において、測定部に光を照射する手段は、光源22及びレンズ郡23で構成されている。光源22より出た光ビーム32は、レンズ群23により集光され、光ビームを透過させるための開口部を持った電動マイクロステージ33上の平板状フローセル1を照射する。
【0010】
平板状フローセル1は、後で図2により詳細に説明するように、少なくとも1つの測定部を有する流路を備えている。
光源22は、高出力でコヒーレンシーの高いレーザーが望ましいが、その他の光源でもよい。平板状フローセルは、ガラスや透明樹脂等で作成することができる。平板状フローセル内を流れる試料に光ビームがあたると、試料から散乱光や蛍光が発生する。試料がない場合でも、フローセル自身から弱い散乱光が生じている。
【0011】
散乱光又は蛍光33は、レンズ25によりコリメートされ、ビームスプリッター26により2つの光路に分かれる。1方は、レンズ27により集光され、光センサー28に導かれ、前方散乱光が測定される。他方は、光学フィルター29で必要な波長の光のみ透過させ、レンズ30により集光され光センサー31に導かれ、蛍光測定に用いられる。
図1において、測定部からの散乱光を検出し出力する手段は、レンズ25、ビームスプリッター26、レンズ27、光センサー28で構成されている。レンズ25の手前にアパーチャー24を置くことにより、平板状フローセルを透過したレーザー光をカットし、光センサー28に入射する散乱光角度を規定する。図7は、アパーチャー24の一例の正面図である。円aの大きさで検出器に入射する最小の散乱光角度を規定し、円bの大きさで検出器に入射する最大の散乱光角度を規定している。
【0012】
光センサー28、29からの出力信号は、増幅器34で増幅され、AD変換器35でデジタル変換されてパーソナルコンピューター36でデータ収録、信号処理・制御が行われる。
このような装置において、光ビームと平板状フローセルの測定部との位置合わせをとる方法について説明する。
平板状フローセルのデザインにより流路中の最適測定位置は決まっており、予め、パーソナルコンピューター36にその位置座標を入力しておく。電動マイクロステージを矢印Aに示したように流路の流れに垂直方向に移動させて、試料が流れていない状態で散乱光の測定を行う。電動マイクロステージ33は、パーソナルコンピューター36の移動指示に基づいて,ステージコントローラ37を介して移動させられる。電動マイクロステージの代わりに、ガルバノ・ミラー等を用いて光ビームを走査してもよい。パーソナルコンピューター36は、ステージ位置と光センサー28からの出力信号とを関連付けて、両者を対応付けられながら記録すると共に、平板状フローセルの、予め指定された位置への移動量を算出して、電動マイクロステージ33の移動を指示する。
【0013】
先に述べたように、試料がなくても、平板状フローセルの部材自身や流路の壁面のわずかな荒れ等から散乱光が生じている。特に、流路側壁で強く散乱される。流路横断方向の散乱光強度変化を見ると、2つの流路側壁に対応する位置に散乱光強度の極大点がそれぞれ現れる。この測定結果から、パーソナルコンピューター36により、ソフトウエア処理により極大点位置を計算することによって、光ビームを基準とした流路の位置座標が求まる。その情報から、流路中の適切な位置、通常は流路中央に光ビームがくるよう、必要なステージ移動量を計算し、パーソナルコンピューター36からステージコントローラー37を制御して、電動マイクロステージ33を所定量駆動する。このような操作により、光ビームと平板状フローセルの位置合わせをとることができる。
【0014】
散乱光の測定角度は0.5°から45°の範囲が好ましい。測定角度が0.5°未満になると、透過光と散乱光の切り分けが難しくなり、45°を越えると、流路側壁に由来する散乱信号が弱くなり、極大点の検出が難しくなる。
本発明は、平板状フローセルが使い捨てで新しいフローセルをセットする毎に位置合わせ作業をしなければならない場合、特に効果的である。また、流路内の所定の位置に高精度に位置合わせすることができる。例えば、平板状フローセルがシースフローセルの場合、フローセルの中心を流れる細い試料流に光ビームを正確に位置合わせさせる必要がある。また、光ビームがレーザー光の場合、その強度分布はガウシアン分布をもつので、ビームの中心を正確に測定対象に合わせる必要がある。本発明によれば、このような用途で数μm以下の精度を容易に実現できる。
【0015】
本発明の、平板状フローセルについて説明する。
図2は、平板状シースフローセルの構造及び送液機構を示す斜視図である。平板状フローセルは、透明アクリル樹脂で作成されており、細胞や粒子を含む試料液を収納する試料液ポート2とシース液を収納するシース液ポート3、4を備え、各ポートは平板内に形成されている流路5、6、7にそれぞれ接続している。流路5,6、7は、合流点8で試料液がシース液に両側から挟まれるように合流し、流路9に接続している。流路9の末端は、廃液ポート10に接続している。
【0016】
試料液ポート2、シース液ポート3、4の開口部はカップラー11で覆われ、カップラー11と平板状フローセル1の間は、気密が保たれている。カップラー11は、チューブ12を介して、陽圧源に接続している。カップラー11に陽圧がかかることにより、試料ポート2、シース液ポート3、4の液が流路中へと押し流される。
図2の平板状フローセルの合流部の流れの様子を図3に示す。合流部で液流れは層流となるような流速で流され、試料液13、シース液14,15は、図に示すように層状に流れ、試料液の流れは縮流される。流路9における試料液とシース液の流量比は、カップラー11にかけられる圧力によらず、流路5、6、7の圧力損失の比、すなわち、流路形状とそこを流れる液の粘度で決まる。圧力損失を適当に設計することにより、試料流が流路の中央を安定して流れるようにしている。
【0017】
平板状シースフローセルの作成方法を図4にしたがって説明する。図4の各図は断面を表している。工程(A)において、フォトマスク16上の流路パターンをフォトリソグラフィー工程でSi基板18上の感光性レジスト17に転写する。続いて、工程(B)に示すように、感光性レジスト17の未感光のレジスト部を除去し、次いで、Si基板18のエッチングを行って、流路パターンの溝38をSi基板18上に形成する。流路パターンの溝38は、図2における、流路5,6,7,8,9に該当するものである。
【0018】
次に、工程(C)において、Si基板18上にNiを電鋳し、流路パターンが凸状になったNiプレート19を作成する。その後、Si基板18とNiプレート19を分離する。工程(D)において、Niプレート19を型として透明樹脂基板20を熱圧縮成形することにより、流路パターンの溝38を透明樹脂基板上に転写する。工程(E)において、透明樹脂基板20の液ポート39となる部分を穴あけ加工し、流路パターンが形成されている面に別の樹脂基板21を貼り合わせることにより、工程(F)に示すような平板状シースフローセルを作成する。なお、工程(F)の図は、工程(E)の状態から反転した形で表示している。液ポート39は、図2の試料ポート2、シース液ポート3、4、廃液ポート10に該当するものである。
【0019】
【実施例1】
図1の光散乱測定装置により、平板状シースフローセルの前方散乱光の測定を行った。
フローセルの流路内はシースバッファーで満たされているが、試料を流していない状態で、光ビームが測定部の流路を横断するように電動マイクロステージを駆動し、前方散乱信号を測定した。光源にはレーザーを使用し、前方散乱受光器は2°〜8°の範囲の散乱光を受光するように設置した。パーソナルコンピューター36に記録された信号強度とステージ位置座標、すなわち、フローセル位置の関係を図5に示す。このチャート上で、2つの極大点a及びbが現れ、その位置は流路側壁の位置に一致していた。
【0020】
前に述べたように、図2のシースフローセルは、その流路形状と送液方法により、常に試料流が合流部において、その中央を流れるようになっているので、流路の位置がわかれば、試料を直接測定しなくても、流路の中心に光ビームがくるように平板状フローセルを移動させることにより、光ビームを試料流に正確に位置合わせさせることができ、精度の高い測定が可能となる。
図5の2つの極大点の中心cに光ビームの中心がくるように、電動マイクロステージを駆動し、その位置で今度は、市販のフローサイトメーター調整用標準ビーズ(ポリスチレン製、粒径6μm)を流し、ビーズの散乱信号を測定した。その測定結果を図6に示す。図6から、従来のように標準ビーズの測定信号を見ながら位置合わせを合わせた時とほぼ同じ信号強度及び低分散の良好なデータが得られることがわかる。
【0021】
【発明の効果】
本発明の平板状フローセル測定装置は、光ビームの照射位置を流路の横断方向に移動させながら、試料の流れていない平板状フローセルの散乱光を測定することにより、流路の側壁位置を知ることができ、その情報から光ビームを流路中央に正確に位置合わせすることができる。
本発明によると、従来の技術に比べて、調整用の試料を必要とせず、安価な使い捨てフローセルに対して、容易に再現性よく、高精度の位置合わせ作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の平板状フローセル測定装置の一例の配置図。
【図2】本発明に用いる平板状シースフローセルと送液機構の一例を示す斜視図。
【図3】本発明のシースフローセルの合流部の流れの平面模式図。
【図4】本発明の平板状シースフローセルの作成の一例を示す工程図。
【図5】実施例の、試料を流さない状態でのフローセルからの散乱信号と測定位置の関係を示すグラフ。
【図6】実施例における、標準ビーズの散乱信号のヒストグラム。
【図7】図1のアパーチャーの一例を示す正面図。
Claims (5)
- (a)少なくとも1つの測定部を有する流路を備えた平板状フローセルと、(b)測定部に光ビームを照射する手段と、(c)測定部からの散乱光を検出し、出力する手段と、(d)試料のない状態で(c)からの出力と、平板状フローセルまたは光ビームの位置出力とを関連付けて、平板状フローセルまたは光ビームの、予め指定された位置への移動量を算出して、移動を指示する手段と、(e)(d)からの移動指示に基づいて、平板状フローセルまたは光ビームを移動させる手段を備えた平板状フローセル測定装置。
- 平板状フローセルは交換可能である請求項1記載の平板状フローセル測定装置。
- 平板状フローセルがシースフローセルである請求項1又は2記載の平板状フローセル測定装置。
- 光ビームがレーザー光である請求項1〜3のいずれか1項記載の平板状フローセル測定装置。
- 検出器が0.5°以上45°以下の範囲内の角度の散乱光を測定するものである請求項1〜4のいずれか1項記載の平板状フローセル測定装置。
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- 2002-08-09 JP JP2002232545A patent/JP2004069634A/ja active Pending
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