JP2004068754A - 蒸発燃料処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料タンク10内で発生した蒸発燃料を大気に放出させることなく処理する。燃料タンク10と連通すると共に、内燃機関の吸気通路38に連通するパージ孔26と大気に通じる大気孔24とを備えるキャニスタ22を設ける。キャニスタ22の内部に、大気孔24からパージ孔26に向かうガスの流れを生じさせることのできるポンプ32を設ける。内燃機関の排気空燃比を検出する酸素センサ50を設ける。ポンプ32のオン・オフの切り換えに伴って排気空燃比に所定の変化が生じたか否かに基づいて、ポンプ32が正常であるか否かを判断する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸発燃料処理装置に係り、特に、燃料タンク内で発生する蒸発燃料を大気に放出させることなく処理するための蒸発燃料処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平5−312113号公報に開示されるように、燃料タンクと連通するキャニスタを備える蒸発燃料処理装置が知られている。キャニスタは、燃料タンクに連通していると共に、パージ制御弁を介して内燃機関の吸気通路に連通している。また、このキャニスタは、大気に連通する大気孔を備えている。大気孔には、キャニスタに対して加圧空気を供給することのできるポンプが連通している。
【0003】
上記従来の装置において、燃料タンク内で発生した蒸発燃料は、一旦キャニスタに吸着される。この装置は、内燃機関の運転中に所定のパージ条件が成立すると、パージ制御弁を開いてキャニスタに吸気負圧を導入する。その結果、キャニスタ内に吸着されている蒸発燃料は、大気孔から吸入された空気と共に吸気通路にパージされる。その結果、燃料タンク内で生じた蒸発燃料は、大気に放出されることなく、内燃機関の運転中に燃料として処理される。
【0004】
ところで、内燃機関の吸気負圧は、スロットル開度が開くに連れて大気圧に近い値になる。このため、内燃機関の高負荷運転時には、十分な吸気負圧が発生せず、パージ制御弁を開くだけでは十分なパージ流量が得られないことがある。上記従来の装置は、このような場合にポンプを作動させる。ポンプが作動すると、キャニスタの大気孔に加圧空気が供給され、キャニスタの前後に、十分なパージ流量を生じさせるに足る差圧が発生する。このため、上記従来の装置によれば、内燃機関の高負荷運転時にも高いパージ能力を確保することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
内燃機関の吸気通路にキャニスタ内の蒸発燃料をパージする場合、パージされる燃料分を燃料噴射量から減量して空燃比荒れを防ぐ必要がある。そして、このような減量を行うためには、吸気通路に流入するパージガス流量を正確に把握することが必要である。
【0006】
上記従来の装置のようにキャニスタの内部に強制的に空気の流れを生じさせることのできるポンプを備える装置にあっては、ポンプが作動している場合とポンプが停止している場合とでパージガス流量に差が生ずる。このため、この種の装置では、ポンプにオン指令が発せられている場合には、ポンプが作動していることを前提としてパージガス流量を推定し、また、ポンプにオフ指令が発せられている場合には、ポンプが停止していることを前提としてパージガス流量を推定することが必要となる。
【0007】
パージガス流量の推定が上記前提の下で行われる場合、ポンプの異常に起因してその前提が崩れた場合は、パージガス流量の推定値に無視できない誤差が生ずる。より具体的には、オン指令を受けているにも関わらずポンプが適正に作動しないような場合には、パージガス流量の推定値に大きな誤差が生ずる。そして、このような推定値の誤差は空燃比の制御精度を悪化させる原因となる。
【0008】
このため、キャニスタ内に強制的に空気の流れを生じさせるポンプを備えるシステムにあっては、そのポンプの異常を速やかに検出できることが望ましい。しかしながら、従来、この種のシステムにおいて、ポンプの異常を簡便に、かつ、精度良く検出するための手法は提案されていなかった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、キャニスタ内に強制的に空気の流れを生じさせるポンプの異常を、簡便に、かつ、精度良く検出することのできる蒸発燃料処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を大気に放出させることなく処理するための蒸発燃料処理装置であって、
前記燃料タンクと連通すると共に、内燃機関の吸気通路に連通するパージ孔と大気に通じる大気孔とを備えるキャニスタと、
前記キャニスタの内部に、前記大気孔から前記パージ孔に向かうガスの流れを生じさせることのできるポンプと、
吸気通路内の燃料成分濃度、或いは排気空燃比に応じた出力を発する出力発生手段と、
ポンプのオン・オフの切り換えに伴って吸気通路内の燃料成分濃度、或いは排気空燃比に所定の変化が生じたか否かに基づいて、前記ポンプが正常であるか否かを判断する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記パージ孔と前記吸気通路の間に配置されるパージ制御弁と、
ポンプのオン・オフに対応してその作動・非作動が適正に切り替わる状況下で、前記オン・オフの前後で同等のパージ流量が得られるように、前記ポンプのオン・オフと協調させて、前記パージ制御弁の実質的開度を変化させる協調制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記協調制御手段は、前記ポンプのオン・オフが切り換えられた後、その切り換えの影響が前記パージ制御弁の位置に及ぶのに要する時間が経過するのを待って、前記パージの実質的開度を変化させる遅延手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記吸気通路の内圧である吸気負圧を検出する吸気負圧検出手段と、
前記吸入空気量、前記吸気負圧、および前記ポンプの定格に基づいて、前記ポンプのオン・オフ切り換えの後に、その切り換え前のパージ流量を確保するために前記パージ制御弁が実質的に実現すべき目標開度を算出する目標開度算出手段とを備え、
前記協調制御手段は、前記目標開度が実現されるように前記パージ制御弁を制御するパージ制御弁制御手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明は、第2乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記キャニスタから前記吸気通路にパージされるパージガス中のベーパ濃度を検出するベーパ濃度検出手段と、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、
前記異常検出手段は、
前記ベーパ濃度が排気空燃比の目標値より薄く、かつ、ポンプがオフされているときに、ポンプがオンされているときに比して排気空燃比が薄くなる傾向が生じている場合に、前記ポンプの異常を判断する低濃度時異常検出手段と、
前記ベーパ濃度が排気空燃比の目標値より濃く、かつ、ポンプがオフされているときに、ポンプがオンされているときに比して排気空燃比が濃くなる傾向が生じている場合に、前記ポンプの異常を判断する高濃度時異常検出手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように前記燃料噴射量に空燃比フィードバック補正を施す空燃比フィードバック手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、前記異常検出手段は、前記燃料噴射量に施される空燃比フィードバック補正の大きさに基づいて、排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かを判断することを特徴とする。
【0016】
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、前記異常検出手段は、前記排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かに基づいて前記ポンプが正常であるか否かを判断し、更に、
前記キャニスタから前記吸気通路にパージされる蒸発燃料分に相当する燃料が燃料噴射量から減量されるように、前記燃料噴射量にパージ分減量補正を施すパージ分減量補正手段と、
前記ポンプのオン・オフが切り換えられる前後で、前記パージ分減量補正の大きさを固定するパージ補正保持手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、
前記キャニスタから前記吸気通路にパージされるパージガス中のベーパ濃度を検出するベーパ濃度検出手段と、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、前記異常検出手段は、前記排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かに基づいて前記ポンプが正常であるか否かを判断すると共に、前記ベーパ濃度が前記排気空燃比の目標値近傍の値である場合には、前記判断を保留することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
実施の形態1.
[装置構成の説明]
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の蒸発燃料処理装置の構成を説明するための図である。本実施形態の蒸発燃料処理装置は、燃料タンク10を備えている。燃料タンク10には、タンク内圧を測定するためのタンク内圧センサ12が設けられている。タンク内圧センサ12は、大気圧に対する相対圧としてタンク内圧を検出し、その検出値に応じた出力を発生するセンサである。
【0020】
燃料タンク10には、ROV(Roll Over Valve)14,16を介してベーパ通路18が接続されている。ベーパ通路18は、ダイヤフラム式の給油弁20を介してキャニスタ22に接続されている。キャニスタ22の内部には、燃料ベーパを吸着するための活性炭が充填されている。このため、燃料タンク10の内部で発生した燃料ベーパは、ベーパ通路18および給油弁20を通ってキャニスタ22に到達し、キャニスタ22の内部に吸着保持される。
【0021】
キャニスタ22には、大気孔24およびパージ孔26が設けられている。大気孔24には、CCV(Canister Closed Valve)30を介してポンプ32が連通している。ポンプ32の吸入孔は、フィルタ34を介して大気に開放されている。CCV30は、外部から駆動信号を受けることにより大気孔24を閉弁するノーマルオープンタイプの電磁弁である。CCV30が開いている場合は、ポンプ32を作動させることにより、ポンプ32により生成される加圧空気をキャニスタ22の大気孔24に供給することができる。
【0022】
キャニスタ22のパージ孔26は、パージガスの流量を制御するためのパージVSV(Vacuum Switching Valve)36を介して内燃機関の吸気通路38に連通している。パージVSV36は、デューティ制御されることにより実質的に任意の開度を実現する制御弁である。
【0023】
内燃機関の吸気通路38には、その内部に吸入される空気量Gaを検出するエアフロメータ40が組み付けられている。エアフロメータの下流には、吸入空気量Gaを制御するためのスロットルバルブ42が配置されている。上述したパージ孔26は、そのスロットルバルブ42の下流において吸気通路38に連通している。
【0024】
内燃機関の吸気ポートには、その内部に燃料を噴射するための燃料噴射弁44が組み付けられている。燃料噴射弁44には、燃料供給通路46から高圧の燃料が供給されている。燃料噴射弁44は、外部から供給される駆動信号を受けてニードルバルブを開弁させることにより、その開弁時間(燃料噴射時間TAU)に応じた量の燃料を噴射することができる。
【0025】
内燃機関の排気通路48には、排気ガス中に酸素が含まれているか否かに基づいて、排気空燃比がリッチであるかリーンであるかに応じた出力を発する酸素センサ50が配置されている。酸素センサ50の下流には、排気ガスを浄化するための触媒ユニット52が配置されている。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のシステムは、ECU(Electronic Control Unit)60を備えている。ECU60には、上述したタンク内圧センサ12を始め、エアフロメータ40や酸素センサ50など、内燃機関に組み込まれている各種センサの出力が供給されている。ECU60は、それらのセンサ出力に基づいて、CCV30、ポンプ32、パージVSV36、および燃料噴射弁46などの状態を制御することができる。
【0027】
[パージ動作の説明]
本実施形態のシステムにおいて、燃料タンク10の内部で発生したベーパは、ベーパ通路18を通ってキャニスタ22に導かれ、その内部に吸着保持される。ECU60は、内燃機関の運転中、所定のパージ条件が成立する状況下で、パージVSV36を適当に開弁させる。内燃機関の運転中にパージVSV36が開弁されると、キャニスタ22に吸気負圧が導かれ、キャニスタ22に吸着されているベーパは、大気孔24から吸入される空気と共に吸気通路にパージされる。
【0028】
また、本実施形態において、ECU60は、パージの実行中に必要に応じて、CCV30を開いた状態でポンプ32を作動させる。その結果ポンプ32の作動が開始されると、ポンプ32によって生成される加圧空気がキャニスタ22の大気孔24に供給され始める。
【0029】
ECU60は、具体的には、高圧(大気圧近傍値)の吸気管圧力PMが生ずる内燃機関の高負荷運転時にポンプ32を作動させる。吸気管圧力PMが高圧である場合は、パージVSV36を開くだけでは十分なパージガス流量を得ることができない。このような状況下でポンプ32が作動すると、吸気負圧が不十分であっても十分なパージガス流量を確保することができる。このため、本実施形態の装置によれば、内燃機関の運転状態に関わらず、優れたパージ能力を確保することができる。
【0030】
また、ECU60は、内燃機関のアイドル運転時など、十分に大きな吸気負圧が発生し、パージ孔26付近の圧力が過剰に負圧化するような場合にもポンプ32を作動させる。パージ孔26の付近が過剰に負圧化すると、その負圧が燃料タンク10に導かれて、タンク内の蒸発燃料がキャニスタ22を通過して吸気通路38に直接パージされる事態が生ずる。また、このようにして生ずる蒸発燃料の直接パージは、内燃機関における空燃比荒れの原因となる。本実施形態の装置において、上記の状況下でポンプ32を作動させると、パージ孔26付近の圧力を高めて蒸発燃料の直接パージを防止することができる。従って、本実施形態の装置によれば、十分に大きな吸気負圧が生ずる状況下でも、空燃比荒れを生じさせることなくキャニスタ22内の蒸発燃料を適正にパージさせることができる。
【0031】
[パージに伴う燃料噴射量補正の説明]
内燃機関の吸気通路38に蒸発燃料がパージされている状況下で、所望の空燃比を実現するためには、パージガスとして供給されている燃料および空気の影響を排除すべく燃料噴射量に補正を施すことが必要である。そして、このような減量補正を実現するためには、パージVSV36を通過するパージガス流量QPGと、パージにより供給される蒸発燃料量と、燃料噴射量とを精度良く制御することが必要である。
【0032】
本実施形態において、ECU60は、パージガス流量QPGと、パージにより供給される蒸発燃料の量とを精度良く制御する手法の一部として、パージ率PGRを目標パージ率TGTPGRに一致させる処理を実行している。パージ率PGRは、パージガス流量QPGと吸入空気量Gaとの比(QPG/Ga)で表される値である。パージ流量QPGは、吸気管圧力PM、パージVSV36の実質的開度、およびポンプ32のオン・オフ状態により決定される。このため、ECU60は、吸気管圧力PMやポンプ32のオン・オフ状態を考慮したうえで、パージVSV36の実質的開度(駆動デューティDUTY)を適当に制御することでパージ率PGRを目標パージ率TGTPGRに一致させることができる。尚、ECU60は、吸気管圧力PMは、エアフロメータ40により検出される吸入空気量Gaなどに基づいて公知の手法で推定することができる。また、吸気管圧力PMは、吸気通路38に圧力センサを設けて実測することとしてもよい。
【0033】
また、ECU60は、燃料噴射量を適正に補正する手法の一部として、パージガス中のベーパ濃度を検出している。より具体的には、ベーパ濃度学習値FGPGを、公知の手法で求めている。ここで、ベーパ濃度学習値FGPGは、パージ率PGR1%当たりの噴射量減量割合と一致するように学習される。つまり、ベーパ濃度学習値FGPGは、1%のパージ率PGRでパージガスがパージされた場合に、その影響を相殺するために燃料噴射量に施すべき減量割合としての物理的意味を有している。このような減量割合は、パージガス中のベーパ濃度が濃いほど大きな値となり、一方、そのベーパ濃度が薄いほど小さな値となる。従って、ベーパ濃度学習値は、既述した通り、パージガス中のベーパ濃度としての物理的意味も有している。
【0034】
ECU60は、上述したベーパ濃度学習値FGPGにパージ率PGRを掛け合わせることにより、パージ補正係数FPG=FGPG×PGRを算出する。このようにして算出されるパージ補正係数FPGは、パージ率“PGR”でパージされている蒸発燃料を相殺するために燃料噴射量に施すべき減量割合としての意味を有している。従って、ECU60は、蒸発燃料のパージの影響を考慮することなく算出した基本の燃料噴射量(基本燃料噴射時間TAU0)にパージ補正係数FPGを掛け合わせることにより、パージの影響を相殺することのできる燃料噴射量(燃料噴射時間TAU)を算出することができる。
【0035】
本実施形態において、ECU60は、パージの実行中に、上述した手順に従って、パージVSV36の駆動デューティDUTYを制御し、また、燃料噴射量時間TAUを算出する。そして、その燃料噴射時間TAUが実現されるように燃料噴射弁44を駆動する。このため、本実施形態の装置によれば、大きな空燃比荒れを生じさせることなくキャニスタ22内の蒸発燃料を適切に吸気通路38にパージさせることができる。
【0036】
[空燃比フィードバック制御の説明]
本実施形態の装置は、蒸発燃料のパージ分を相殺するための上記の燃料噴射量補正の他に、排気空燃比を目標空燃比(理論空燃比)に一致させるための空燃比フィードバック制御を実行している。より具体的には、ECU60は、排気空燃比を理論空燃比に一致させるための空燃比フィードバック係数FAFを算出し、そのFAFを基本の燃料噴射量(基本燃料噴射時間TAU0)に掛け合わせることにより燃料噴射量(燃料噴射時間TAU)を算出している。
【0037】
図1に示すシステムは、既述した通り、排気通路48に酸素センサ50を備えている。ECU60は、酸素センサ50の出力に基づいて、排気空燃比がリッチであるか、或いはリーンであるかを判断することができる。空燃比フィードバック係数FAFは、排気空燃比がリッチである場合は減少方向に更新され続ける。FAFが減少方向に更新されると、燃料噴射量が徐々に減量され、やがて排気空燃比はリッチからリーンに反転する。
【0038】
また、空燃比フィードバック係数FAFは、排気空燃比がリーンである間は増加方向に更新され続ける。FAFが増加方向に更新されると、燃料噴射量が徐々に増量され、やがて排気空燃比はリーンからリッチに反転する。本実施形態の装置では、ECU60が上述した空燃比フィードバック制御を実行することで燃料噴射量の微小な調整が行われ、その結果、精度良く排気空燃比が目標空燃比(理論空燃比)の近傍に維持される。
【0039】
尚、ECU60は、パージの実行や、内燃機関の運転状態などに応じて、基本的には排気空燃比が目標空燃比(理論空燃比)と一致するように燃料噴射量を算出する。従って、その基本的な算出が適正に行われている場合は、空燃比フィードバック制御FAFは、基準の値(例えば1.0)を中心として、その上下に対称に増減を繰り返すように更新される。そして、燃料噴射量の基本的な算出にずれが生ずると、空燃比フィードバック係数FAFの反転中心が、その基準の値から上方或いは下方にシフトする。
【0040】
ECU60は、また、制御の便宜上、空燃比フィードバック係数FAFの平均値FAFAVを算出している。平均値FAFAVは、空燃比フィードバック係数FAFの反転中心と一致すべき値である。従って、平均値FAFAVは、燃料噴射量の基本的な算出が適正に行われている場合は、ほぼFAFの基準値(例えば1.0)と一致し、一方、その基本的な算出にずれが生じている場合は、その基準値より大きな値、或いは小さな値にシフトする。
【0041】
[ポンプの異常を検出する原理の説明]
図2は、本実施形態の装置において発生するパージガス流量と内燃機関の負荷との関係を、ポンプ32が作動している場合とポンプ32が停止している場合とにつき表した図である。この図に示す通り、パージガス流量は、ポンプ32が作動している場合に、ポンプ32が停止している場合に比して明らかに多量となる。従って、本実施形態の装置においては、ポンプ32が適正に動作している限り、ポンプ32のオン・オフを切り換えることにより、パージ流量に有意な差を生じさせることができる。
【0042】
図3は、本実施形態の装置においてポンプ32の異常を検出するための第1の手法を説明するためのタイミングチャートである。より具体的には、図3(A)はポンプ32のOBD制御中(On Board Diagnosis)における空燃比フィードバック係数FAFの波形、図3(B)はOBD制御中にポンプ32に供給されるON・OFF指令の波形、図3(C)はOBD制御中に制御計算に用いられるパージ率PGRの波形をそれぞれ示している。
【0043】
図3において、時刻t1以前は、通常の規則に従って、ポンプ32に対してON指令が発せられた状態で蒸発燃料が安定にパージされているものとする。この場合、蒸発燃料のパージ分に適合したパージ補正係数FPGが算出され、そのパージ分を相殺するように燃料噴射量が減量補正される。その結果、図3(A)に示すように、空燃比フィードバック係数FAFは、その基準値を中心として反転を繰り返す。
【0044】
図3に示す例では、上記の安定状態が形成されている環境下で、制御計算に用いられるパージ率PGRを一定に維持したまま(図3(C)参照)ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられる(図3(B)、時刻t1参照)。より具体的には、パージVSV36に対する駆動デューティDUTYが一定に維持され、かつ、パージ補正係数FPG(=FGPG×PGR)が一定に維持されたまま、ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられる。
【0045】
パージVSV36に対する駆動デューティDUTYが一定のまま、ポンプ32が作動状態から停止状態に変化すれば、吸気通路38に流入するパージガス流量QPGは減少する。パージガス中のベーパ濃度が理論空燃比より濃い場合は、パージの実行中に、燃料噴射量を減量させるべくベーパ濃度学習値FGPGが負の値として算出される。そして、このような状況下で、パージ補正係数FPG=PGR×FGPGが一定のままパージガス流量QPGが減少すると、FPGによる燃料噴射量の減量が過剰となり、排気空燃比はリーン側に偏ろうとする。
【0046】
本実施形態の装置は、既述した通り、排気空燃比を理論空燃比に維持すべく、燃料噴射量の空燃比フィードバック制御を実行している。このため、排気空燃比がリーン側に偏ろうとすると、その空燃比を理論空燃比の近傍に維持するために、空燃比フィードバック係数FAFが基準値より大きな値に更新される。その結果、ポンプ32が正常である場合は、図3(A)に示すように、時刻t1においてポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられた後、空燃比フィードバック係数FAFは、反転中心が基準値より大きな値となるように、その値を変化させる。
【0047】
これに対して、ポンプ32に異常が生じており、時刻t1以前にそもそもポンプ32が作動していなかった場合は、時刻t1においてポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられても、その切り換えによりパージ流量QPGには何らの変化も生じない。パージ流量QPGに変化が生じなければ、排気空燃比は、時刻t1の後も、それ以前と同様に、パージ補正係数FPGを用いた補正のみでほぼ理論空燃比となる。この場合、空燃比フィードバック係数FAFは、時刻t1の後も、ほぼ基準値を中心として反転する挙動を維持する。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態の装置では、蒸発燃料が安定してパージされている状況下で、ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられた場合に、ポンプ32が正常であれば、空燃比フィードバック係数FAFにはその切り換え前後で変化が生ずる。一方、ポンプ32に異常が生じている場合は、その切り換えの前後で空燃比フィードバック係数FAFに変化は生じない。このため、本実施形態の装置によれば、パージ率PGRを一定にしたまま(DUTYおよびFPGを一定にしたまま)ポンプ32に対する指令をON指令からOFF指令に切り換え、その後、空燃比フィードバック係数FAFがどのような変化を示すかを見ることで、ポンプ32が正常であるか否かを精度良く判断することができる。
【0049】
しかしながら、上述したOBD制御によれば、既述した通り、ポンプ32が正常である場合に排気空燃比の乱れと、それに伴う空燃比フィードバック係数FAFの変動とが発生する。そして、ポンプ32が異常である場合に、安定した運転状態が維持される。
【0050】
ポンプ32は正常であるのが通常であり、ポンプ32に異常が生ずるのは極めて希なことである。従って、上述したOBD制御によれば、通常の状態では排気空燃比に荒れが生じ、極めて希な状態でのみ安定した運転状態が維持されることになる。このような特性は、内燃機関において良好なエミッション特性を得るうえで好ましいものではなく、むしろ良好なエミッション特性を得るうえでは、その逆の特性が生ずること、つまり、通常時(正常時)には安定した運転状態が維持され、希な事態(異常時)においてのみ排気空燃比に荒れが生ずることが望ましい。
【0051】
このような要求は、例えば、ポンプ32のOBD制御の際に、ポンプ32のON・OFFの切り換えと協調させて、パージVSV36に対する駆動デューティDUTYを適切に変化させることにより満たすことができる。以下、図4を参照して、上記の要求を満たしつつポンプ32の異常を検出するための手法(本実施形態の装置でポンプ32の異常を検出するための第2の手法)について説明する。
【0052】
図4は、本実施形態の装置が、上述した第2の手法でポンプ32のOBD制御を行った場合の動作を説明するためのタイミングチャートである。より具体的には、図4(A)はOBD制御中における空燃比フィードバック係数FAFの波形、図4(B)はOBD制御中にポンプ32に供給されるON・OFF指令の波形、図4(C)はOBD制御中におけるパージVSV36の駆動デューティの波形、図4(D)はOBD制御中におけるパージ補正係数FPGの波形をそれぞれ示している。
【0053】
図4において、時刻T1以前は、通常の規則に従って、ポンプ32に対してON指令が発せられた状態で蒸発燃料が安定にパージされているものとする。この場合、蒸発燃料のパージ分に適合したパージ補正係数FPGが算出され、そのパージ分を相殺するように燃料噴射量が減量補正される。その結果、図4(A)に示すように、空燃比フィードバック係数FAFは、その基準値を中心として反転を繰り返す。
【0054】
図4において、時刻T0では、OBDの開始に備えて、目標パージ率TGTPGRが、パージの実効を目的とした値(例えば8%)から、空燃比荒れの抑制を目的とした値(例えば2%)に下げられる。その結果、図4(C)に示すように、パージVSV36に対する駆動デューティDUTYは、実パージ率PGRを目標パージ率TGTPGRに一致させるべく時刻T0において低下している。
【0055】
パージ補正係数FPGは、既述した通りベーパ濃度学習値FGPGにパージ率PGRを掛け合わせることにより算出される。従って、パージ率PGRが低下すれば、パージ補正係数FPGも小さな値となる。このため、時刻T0において、パージ補正係数FPGは、図4(D)に示すようにステップ的に小さな値に変化している。パージ率補正係数FGPがこのように変更されると、駆動デューティDUTYの低下に関わらず、つまり、パージ率PGRの低下に関わらず、蒸発燃料のパージ分が燃料噴射量から適正に減量される状態が維持される。このため、図4(A)に示すように、空燃比フィードバック係数FAFは、時刻T0の後も、基準値を中心に反転する傾向を維持する。
【0056】
図4において、時刻T1は、OBD制御が開始される時刻を示している。すなわち、ここで説明するOBD制御の第2の手法では、時刻T1において、先ず、ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられる。時刻T1においてポンプ32に対する指令が切り換えられることにより、ポンプ32が正常に作動状態から停止状態に切り替わると、それ以前はキャニスタ22に供給されていた加圧空気が、その時点で消滅するという変化が生ずる。この変化は、キャニスタ22とパージVSV36との距離などにより定まる遅延時間の後に、パージVSV36を通過するパージガス流量QPGに反映される。
【0057】
図4に示す時刻T2は、時刻T1の後、上記の遅延時間が経過する時刻である。従って、ポンプ32が正常に機能していれば、つまり、時刻T1における指令の切り換えに応えてポンプ32が正常に作動状態から停止状態に変化するとすれば、パージVSV36を通過するパージガス流量QPGは、パージVSV36の開度が維持される限り時刻T2において減少する。
【0058】
OBD制御の第2の手法では、図4(C)に示すように、時刻T2においてパージVSV36に対する駆動デューティDUTYがステップ的に増大される。ここで、駆動デューティDUTYに加えられるステップ値、或いはステップ変化後に駆動デューティDUTYが採る値は、ポンプ32の停止に伴うパージガス流量QPGの減少分を相殺して、パージガス流量QPG(より正確には現実のパージ率PGR)を一定に維持することができる値に設定される。このため、ポンプ32が正常に機能している場合、第2の手法によれば、時刻T1およびT2の前後でパージガス流量QPG(より正確には現実のパージ率PGR)に変化は生じない。
【0059】
図4(D)に示すように、パージ補正係数FPGは、時刻T1およびT2の前後において、一定に維持される。パージ補正係数FPGが一定に維持され、かつ、パージガス流量QPG(より正確には現実のパージ率PGR)に変化が生じなければ、蒸発燃料のパージ分が燃料噴射量から適正に減量される状態が維持される。このため、ポンプ32が正常である場合は、図4(A)に示すように、時刻T1およびT2の後も、空燃比フィードバック係数FAFは基準値を中心に反転する傾向を維持する。
【0060】
これに対して、ポンプ32に異常が生じており、時刻T1以前にそもそもポンプ32が作動していなかった場合は、時刻T1においてポンプ32に対する指令が切り換えられても、加圧空気の発生状況にはその切り換えにより何らの変化も生じない。従って、このような状況下で駆動デューティDUTYが増大されると、時刻T2においてパージ流量QPG(現実のパージ率PGR)にステップ的な増加が生ずる。
【0061】
パージガス中のベーパ濃度が理論空燃比より濃い場合は、パージの実行中に、燃料噴射量を減量させるべくベーパ濃度学習値FGPGが負の値として算出される。そして、このような状況下で、パージ補正係数FPG=PGR×FGPGが一定のまま(制御計算上のパージ率PGRが一定のまま)パージガス流量QPG(現実のパージ率PGR)が増大すると、FPGによる燃料噴射量の減量分を超える燃料がパージにより供給される事態が生じ、排気空燃比はリッチ側に偏ろうとする。その結果、空燃比フィードバック係数FAFは、燃料噴射量を減量させる方向に、つまり、図4(A)に示すように、その反転中心が基準値より小さな値となるように更新される(FGPG<0時)。
【0062】
また、パージガス中のベーパ濃度が理論空燃比より薄い場合は、パージの実行中に、燃料噴射量を増量させるべくベーパ濃度学習値FGPGが正の値として算出される。そして、このような状況下で、パージ補正係数FPGが一定のまま現実のパージ率PGRが増大すると、FPGによっては十分な燃料増量が確保できない事態が生じ、排気空燃比はリーン側に偏ろうとする。その結果、空燃比フィードバック係数FAFは、燃料噴射量を増量させる方向に、つまり、図4(A)に示すように、その反転中心が基準値より大きな値となるように更新される(FGPG>0時)。
【0063】
以上説明した通り、OBD制御の第2の手法によれば、ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられた後に、ポンプ32が正常である場合には安定した空燃比が維持され、空燃比フィードバック係数FAFに何らの変化も生じない状態が形成される。一方、ポンプ32に異常が生じている場合は、僅かな空燃比荒れを吸収するために空燃比フィードバック係数FAFが増加または減少方向に変化する事態が生ずる。
【0064】
このため、上述した第2の手法によれば、ポンプ32に対する指令が切り換えられた後、空燃比フィードバック係数FAFがどのような変化を示すかを見ることで、ポンプ32が正常であるか否かを精度良く判断することができる。また、この手法によれば、通常時(ポンプ32の正常時)には空燃比の安定した状態を維持し、空燃比の荒れを、希な状況下(ポンプ32の異常時)に限って生じさせることができる。このため、OBD制御の第2の手法によれば、上述した第1の手法が用いられる場合に比して、内燃機関のエミッション特性を改善することができる。
【0065】
図4において、時刻T3は、OBD制御を終了させるべくポンプ32に対する指令がOFF指令からON指令に切り換えられる時刻である。また、時刻T4は、時刻T3の後、ポンプ32とパージVSV36との距離に起因する遅延時間の経過を待って、パージVSV36に対する駆動デューティを時刻T2以前の値に減少させる時刻である。これらの処理によれば、時刻T4の後に、時刻T2以前の状態、つまり、パージ流量QPGとパージ補正係数FPGとが釣り合った状態を復元することができる。
【0066】
また、OBD制御の第2の手法では、時刻T4の後、空燃比荒れの抑制を目的とした値(例えば2%)に下げられていた目標パージ率TGTPGRが、パージの実効を目的とした値(例えば8%)にむけて徐々に増大される。その結果、図4(C)および図4(D)に示すように、パージVSV36に対する駆動デューティDUTYおよびパージ補正係数FPGが、何れも徐々に増大される。この際、パージ流量QPGとパージ補正係数FPGの釣り合いは維持されるため、図4(A)に示すように、空燃比フィードバック係数FAFは、その基準値を中心として反転を繰り返す。
【0067】
図5は、ECU60が、上述した第2の手法に従ってポンプ32のOBD制御を進めるべく実行する制御ルーチンのフローチャートである。
図5に示すルーチンでは、先ず、蒸発燃料のパージが
行われているか否かが判別される(ステップ100)。
その結果、パージが実行されていないと判別された場合は、ポンプ32の作動が禁止された後、速やかに今回の処理サイクルが終了される(ステップ102)。
【0068】
一方、上記ステップ100においてパージが実行されているとの判断がなされた場合は、次に、パージカウンタCPGRSTの計数値が判定値KTより大きいか否かが判別される(ステップ104)。
パージカウンタCPGRSTは、ポンプ32の作動を伴うパージが開始された後の経過時間を計数するためのカウンタである。一方、判定値KTは、安定したパージ状態の形成に要する時間、つまり、蒸発燃料のパージ分をパージ補正係数FPGで適正に補正することのできる状況が形成されるまでに要する時間に対応するように設定された値である。従って、本ステップ104において、CPGRST>KTが成立しないと判別された場合は、ポンプ32の作動を伴う安定したパージが未だ実行されていないと判断できる。一方、上記条件が成立する場合は、ポンプ32の作動を伴う安定したパージが既に実行されていると判断できる。
【0069】
上記ステップ104において、CPGRST>KTが成立しないと判別された場合は、次に、ポンプカウンタCPUMPの計数値が異常判定値KOBDより大きいか否かが判別される(ステップ106)。
ポンプカウンタCPUMPは、OBD制御が繰り返し実行される過程で、ポンプ32の異常が認識された回数を計数するためのカウンタである。一方、異常判定値KOBDは、ポンプカウンタCPUMPの計数値に基づいて、ポンプ32の異常を現実に判定するためのしきい値である。
【0070】
従って、上記ステップ106において、CPUMP>KOBDが成立すると判別された場合は、ポンプ32の異常判定がなされる(ステップ108)。
そして、この場合は、以後、ポンプ32をオフするために上記ステップ102の処理が実行された後、今回の処理サイクルが終了される。
【0071】
一方、上記ステップ106において、CPUMP>KOBDが成立しないと判別された場合は、ポンプ32の異常判定を行うことなく、ポンプ32の動作制御が実行される(ステップ110)。
本ステップ110の処理では、具体的には、ポンプ指令一時値tPUMPの状態(ONまたはOFF)に合わせて、ポンプON指令或いはOFF指令がポンプ32に対して発せられる。ポンプ32は、本ステップ110において発せられる指令に応じて、作動状態または停止状態となる。尚、ポンプ指令一時値tPUMPは、個々の処理サイクルの過程において、ポンプに対する仮指令の内容を記憶しておくためのメモリ値である。ポンプ指令一時値tPUMPの設定手法については、後に具体的に説明する。
【0072】
安定パージの形成に必要な時間が経過した後、図5に示すルーチンが起動されると、上記ステップ104において、CPGRST>KTが成立するとの判断が成される。この場合、次に、今回の処理タイミングが、OBD制御の開始タイミングと一致しているか否か、より具体的には、図4に示す時刻T0に相当しているか否かが判別される。(ステップ112)。
【0073】
その結果、今回の処理タイミングがOBD制御の開始タイミングと一致していると判別された場合は、次に、OBDカウンタCOBDが0にリセットされる(ステップ114)。
一方、今回の処理タイミングがOBD制御の開始タイミングと一致していない、つまり、OBD制御は既に開始されていると判別された場合は、上記ステップ114の処理がジャンプされる。
【0074】
図5に示すルーチンでは、上記の処理に次いで、OBDカウンタCOBDのインクリメント処理が実行去れる(ステップ116)。
【0075】
次に、OBDカウンタCOBDの計数値が所定値T1以上であるか、より具体的には、今回の処理タイミングが図4に示す時刻T1と一致しているかが判別される(ステップ118)。
【0076】
OBD制御が開始された後(時刻T0の後)、時刻T1が到来するまでの間は、上記ステップ118において、COBD≧T1が成立しないと判別される。この場合、以後、目標パージ率TGTPGRが空燃比荒れの抑制を目的とした値KPG1(例えば2%)に設定された後(ステップ120)、上述したステップ106以降の処理が実行される。
ポンプ指令一時値tPUMPは、OBD制御の開始時にはONとされている。このため、ステップ106に次いでステップ110の処理が実行される場合、COBD≧T1が成立するまでの間は、その処理が実行される毎にポンプ32に対してON指令が発せられる。
【0077】
時刻T1の到来後に本ルーチンが起動されると、今度は、上記ステップ118において、COBD≧T1が成立していると判別される。この場合は、先ず、パージ補正保持制御、つまり、パージ係数FPGを現在値に保持するための制御が開始される(ステップ122)。
【0078】
次いで、ポンプ32に対するポンプ指令一時値tPUMPがOFFとされる(ステップ124)。
既述した通り、ポンプ指令一時値tPUMPは、OBD制御が開始された時点ではONとされている。従って、その値tPUMPは、時刻T1において本ステップ124の処理が初めて実行されることにより、ONからOFFに変更される。
【0079】
図5に示すルーチンでは、次に、OBDカウンタCOBDの計数値が所定値T2以上であるか、より具体的には、今回の処理タイミングが図4に示す時刻T2と一致しているかが判別される(ステップ126)。
時刻T2が到来するまでは、つまり、時刻T1の後、所定の遅延時間が経過するまでの間は、COBD≧T2が成立しないと判別される。この場合、以後、速やかに上記ステップ106以降の処理が実行される。ここでは、ポンプ指令一時値tPUMPがOFFとされているため、ステップ110では、ポンプ32に対してOFF指令が出力される。
【0080】
以上説明した処理によれば、時刻T1の時点で、目標パージ率TGTPGRをKPG1に維持したまま、つまり、パージVSV36の駆動デューティを2%程度の小さな値に維持したまま、パージ補正係数FGPを変化させることなく、ポンプ32に対する指令をON指令からOFF指令に切り換えることができる。そして、以後、遅延時間が経過するまで(時刻T2が到来するまで)、その状態を維持することができる。
【0081】
時刻T2が到来した後、本ルーチンが起動されると、上記ステップ126において、COBD≧T2が成立すると判別される。この場合、次に、目標パージ率TGTPGRがKPG2に書き換えられる(ステップ128)。
本ステップ128において用いられるKPG2は、時刻T1において、ポンプ32が正常に作動状態から停止状態に変化したとした場合に、ポンプ32の停止に伴うパージガス流量QPGの減少分を相殺して、パージガス流量QPG(より正確には現実のパージ率PGR)を一定に維持するための値である。
【0082】
このKPG2は、つまり、ポンプ32の停止に伴うパージガス流量QPGの減少分を補うべく時刻T2において設定すべき目標パージ率TGTPGRは、ポンプ32の定格、吸入空気量Ga、吸気管圧力PM、現在のパージ流量QPGなどに基づいて決定することができる。ECU60は、吸入空気量Gaや吸気管圧力PMなどとの関係でKPG2を定めたマップを記憶している。上記ステップ128では、そのマップに従って別ルーチンにより決定されたKPG2が、目標パージ率TGTPGRとして設定される。
【0083】
上記の処理によれば、時刻T2において、目標パージ率TGTPGRがKPG1からKPG2に変更される。本実施形態の装置において、このような変更が行われると、その後新たに設定された目標パージ率TGTPGRが実現されるように、パージVSV36に対する駆動デューティDUTYがステップ的に増大される。その結果、ポンプ32が正常に作動状態から停止状態に変化していた場合は、時刻T2の前後で現実のパージ率PGRがほぼ一定に維持される。一方、ポンプ32に異常が生じていた場合(時刻T1以前からポンプ32が停止していた場合)は、時刻T2の前後で現実のパージ率PGRに有意な増加が生ずる。
【0084】
図5に示すルーチンでは、次に、空燃比フィードバック係数FAFの平均値FAFAVが、NG域に属しているか否かが判別される(ステップ130)。
【0085】
図6は、平均値FAFAVのNG領域をベーパ濃度学習値FGPGとの関係で定めたマップの一例である。図6において、縦軸は、判定に用いられる平均値FAFAVの値である。図6に示すように、本実施形態では、ベーパ濃度学習値FGPGが、理論空燃比に対応する値(図中に破線の付された値、以下、「理論空燃比対応値」と称す)より小さく、かつ、平均値FAFAVがFAFの基準値(図6では0)より十分に大きい領域が第1のNG領域とされている。また、ベーパ濃度学習値FGPGが、理論空燃比対応値より大きく、かつ、平均値FAFAVがFAFの基準値より十分に小さい領域が第2のNG領域とされている。そして、それ以外の領域は、正常領域、或いは他部品の影響域として、NG領域から除外している。
【0086】
図4(A)を参照して説明した通り、ポンプ32が異常である場合は、ベーパ濃度が濃く、ベーパ濃度学習値FGPGが負の値であった場合には、空燃比フィードバック係数FAFが基準値より小さな値にシフトする傾向が生ずる。また、ベーパ濃度が薄く、ベーパ濃度学習値FGPGが正の値であった場合には、空燃比フィードバック係数FAFが基準値より大きなにシフトする傾向が生ずる。図6に示す2つのNG領域によれば、それらの傾向の何れかが発生している場合に、ポンプ32の異常を的確に判断し、かつ、それら以外の場合に、ポンプ32の異常が誤判定されるのを有効に防止することができる。
【0087】
また、図6に示すマップにおいて、第1NG領域の下限値は、ベーパ濃度学習値FGPGが理論空燃比対応値に近づくに連れて、その値が大きくなるように設定されている。一方、第2NG領域の下限値は、ベーパ濃度学習値FGPGが理論空燃比対応値に近づくに連れて、その値が小さくなるように設定されている。つまり、第1NG領域および第2NG領域は、何れも、FGPGが理論空燃比対応値に近づくほど、ポンプ32の異常が判定され難くなるように設定されている。
【0088】
ベーパ濃度学習値FGPGは、パージガスの空燃比が理論空燃比に近いほど、理論空燃比対応値に近づく。一方で、パージ流量QPGの変化に対する空燃比フィードバック係数FAFの感度は、パージガスの空燃比が理論空燃比に近づくほど低下する。従って、ベーパ濃度学習値FGPGが理論空燃比対応値に近づくに連れて、FAFの変化に基づいてポンプ32の異常を判断するのは困難となる。
【0089】
図6に示す第1NG領域および第2NG領域によれば、そのような判断の難しい状況下で、ポンプ32の異常が誤判定されるのを有効に防止することができる。従って、本実施形態の装置によれば、空燃比フィードバック係数FAFの変化に基づいて、ポンプ32の異常発生を極めて精度良く判定することができる。
【0090】
図5に示すルーチン中、上記ステップ130において、平均値FAFAVがNG領域に属していないと判別された場合は、以下に説明するステップ132および134の処理がジャンプされ、速やかに後述するステップ136の処理が実行される。一方、平均値FAFAVがNG領域に属していると判別された場合は、先ず、ポンプカウンタCPUMPがインクリメントされ(ステップ132)、次いで、OBDカウンタCOBDに所定値T3が代入される(ステップ134)。
【0091】
上記の処理に続いて、OBDカウンタCOBDの計数値が所定値T3以上であるか否かが判別される(ステップ136)。
本ステップ134の処理により、COBD≧T3が成立しないと判別された場合は、未だ図4に示す時刻T3が到来していないと判別することができる。この場合は、以後速やかに上記ステップ106以降の処理が実行される。ここでは、ポンプ指令一時値tPUMPが最終的にOFFに設定されたままであるため、ステップ106に次いでステップ110の処理が実行される場合、ポンプ32には、処理サイクルが繰り返される毎にOFF指令が発せられる。
【0092】
上記ステップ134の処理によりCOBDにT3が代入された後に、或いは、自然なインクリメント処理の結果COBDがT3に到達した後に、上記ステップ136の処理が実行されると、COBD≧T3が成立するとの判断が成される。この場合は、次に、COBD≧T4が成立するか否かが判別される(ステップ138)。
【0093】
時刻T4が到来する以前、つまり、時刻T3の後所定の遅延時間が経過する以前は、上記ステップ138においてCOBD≧T4の条件が成立しないとの判断が成される。この場合は、パージ補正保持制御を解除するための処理(ステップ140)がジャンプされ、パージ補正係数FPGの変更が禁止されたまま、ポンプ指令一時値tPUMPがOFFからONに書き換えられる(ステップ142)。
【0094】
上記ステップ142の処理が終了すると、次に、ポンプカウンタCPUMPの計数値が異常判定値KOBDより大きいか否かを判断すべく、ステップ106の処理が実行される。尚、異常判定値KOBDは、0以上の固定値である。
この時点でCPUMP>KOBDが成立する判断された場合は、既述した通り、ポンプ32の異常が判定され、ステップ108および102の処理が実行される。この場合、以後、ポンプ32の作動が禁止され、ポンプ32が停止していることを前提として、蒸発燃料のパージ制御が実行される。
【0095】
一方、現時点では、CPUMP>KOBDが未だ成立していないとの判断がなされた場合は、次にステップ110の処理が実行される。時刻T3以降は、既述した通りポンプ指令一時値tPUMPが最終的にONとされる(ステップ142参照)。このため、時刻T3の後、時刻T4が到来するまでの間は、ステップ110が実行される毎に、パージ補正係数FPGが保持されたままポンプ32に対してON指令が発せられる。
【0096】
時刻T4が到来した後に上記ステップ138の処理が実行されると、今度は、COBD≧T4の条件が成立すると判断される。この場合は、ステップ138の処理に次いで、パージ補正保持制御が解除され(ステップ140)、その後、上述したステップ142以降の処理が実行される。
【0097】
本実施形態の装置は、パージ補正保持制御が解除されると同時に、パージ補正係数FPGの更新を許可すると共に、目標パージ率TGTPGRの更新を許可する。その結果、時刻T4の後、目標パージ率TGTPGRが別ルーチンにより徐々に増大され、その増大に伴って、駆動デューティDUTY、およびパージ補正係数FPGにもほぼ一定の速度での増大が生ずる(図4中、時刻T4以降参照)。
【0098】
以上説明した通り、図5に示すルーチンによれば、図4に示すタイミングチャートに沿った手順でポンプ32のOBDを進めることができる。このため、本実施形態の装置によれば、排気空燃比の変動に基づいて、より具体的には、空燃比フィードバック係数FAFの変動に基づいて、ポンプ32の異常を精度良く検出することができる。
【0099】
また、図5に示すルーチンによれば、ポンプ32に対する指令の切り換えと、パージVSV36に対する駆動デューティの変更とを、ポンプ32とパージVSV36の距離に起因する遅延時間を考慮したうえで協調させることができる。このため、本実施形態の装置によれば、ポンプ32の正常時に空燃比荒れが生ずるのを有効に防止して、優れたエミッション特性を確保することができる。
【0100】
ところで、上述した実施の形態1においては、ポンプ32に対する指令がON指令からOFF指令に切り換えられた後の空燃比フィードバック係数FAFの変化に基づいてポンプ32の異常を検出することとしているが(図3中時刻t1、図4中時刻T1参照)、異常検出の手法はこれに限定されるものではない。すなわち、ポンプ32の異常は、ポンプ32に対する指令がOFF指令からON指令に切り換えられた後のFAFの変化に基づいて検出することとしてもよい。また、ポンプ32の異常は、FAFの変化からではなく、排気空燃比の変化から直接検出することとしてもよい。
【0101】
また、上述した実施の形態1では、上記図6に示すマップにおいて、第1および第2NG領域が、ベーパ濃度学習値FGPGが理論空燃比対応値に一致する場合にも、平均値FAFAVが十分に大きい場合、或いは十分に小さい場合には、ポンプ32の異常が判定されるようにが設定されている。しかしながら、それらの設定はこれに限定されるものではない。すなわち、第1および第2NG領域は、FGPGが理論空燃比対応値の近傍値である場合には、常にポンプ32の異常判定が成されないように設定することとしてもよい。
【0102】
また、上述した実施の形態1では、ポンプ32に対する指令が切り換えられた後に、排気空燃比に生ずる変化に基づいてポンプ32の異常を検出することとしているが、異常検出の基礎は、排気空燃比に限定されるものではない。すなわち、吸気通路38に燃料成分濃度を検出するためのセンサを設けたうえで、ポンプ32に対する指令が切り換えられた後に、吸気通路38内の燃料成分濃度の変化に基づいてポンプ32の異常を検出することとしてもよい。
【0103】
尚、上述した実施の形態1においては、ECU60が、上記ステップ130の処理を実行することにより前記第1の発明における「異常検出手段」が実現されている。
【0104】
また、上述した実施の形態1においては、ECU60が、上記ステップ128の処理を実行すると共に、目標パージ率TGTPGRが実現されるように駆動デューティDUTYを制御することにより前記第2の発明における「協調制御手段」が実現されている。
【0105】
また、上述した実施の形態1においては、ECU60が、上記ステップ126の処理を実行することにより前記第3の発明における「遅延手段」が実現されている。
【0106】
また、上述した実施の形態1においては、エアフロメータ40が前記第4の発明における「吸入空気量検出手段」に、目標パージ率TGTPGRが前記第4の発明における「目標開度」にそれぞれ相当していると共に、ECU60が、公知の手法で吸気管圧力PMを推定することで前記第4の発明における「吸気負圧検出手段」が実現される。また、ECU60が、上記ステップ128で用いられるKPG2を算出することにより前記第4の発明における「目標開度算出手段」が、KPG2に設定された目標パージ率TGTPGRが実現されるように駆動デューティDUTYを制御することにより前記第4の発明における「パージ制御弁制御手段」が、それぞれ実現されている。
【0107】
また、上述した実施の形態1においては、エアフロメータ40が前記第5の発明における「吸入空気量検出手段」に、酸素センサ50が前記第5の発明における「排気側センサ」に、それぞれ相当している。そして、ECU60が、ベーパ濃度学習値FGPGを学習することにより前記第5の発明における「ベーパ濃度検出手段」が、吸入空気量Gaに基づいて基本燃料噴射時間TAU0を算出することにより前記第5の発明における「噴射量制御手段」が、図6に示す第1NG領域においてポンプ32の異常を検出することにより前記第5の発明における「低濃度時異常検出手段」が、図6に示す第2NG領域においてポンプ32の異常を検出することにより前記第5の発明における「高濃度時異常検出手段」が、それぞれ実現されている。
【0108】
また、上述した実施の形態1においては、エアフロメータ40が前記第6の発明における「吸入空気量検出手段」に、酸素センサ50が前記第6の発明における「排気側センサ」に、それぞれ相当している。そして、ECU60が、吸入空気量Gaに基づいて基本燃料噴射時間TAU0を算出することにより前記第6の発明における「噴射量制御手段」が、空燃比フィードバック係数FAFを用いて基本燃料噴射時間TAU0に補正を施すことにより前記第6の発明における「空燃比フィードバック手段」が、それぞれ実現されている。
【0109】
また、上述した実施の形態1においては、酸素センサ50が前記第7の発明における「排気側センサ」に相当していると共に、ECU60が、燃料噴射量に対してパージ補正係数FPGを用いた補正を施すことにより前記第7の発明における「パージ分減量補正手段」が、上記ステップ122の処理を実行することにより前記第7の発明における「パージ補正保持手段」が、それぞれ実現されている。
【0110】
また、上述した実施の形態1においては、ポンプ32が、キャニスタ22の大気孔24に連通しているが、ポンプ32の位置はこれに限定されるものではない。すなわち、ポンプ32は、キャニスタ22内に強制的に空気の流れを発生させ得るものであれば良く、パージ孔26とパージVSV36の間に配置してもよい。
【0111】
また、上述した実施の形態1においては、エアフロメータ40が前記第8の発明における「吸入空気量検出手段」に相当している。そして、ECU60が、ベーパ濃度学習値FGPGを学習することにより前記第8の発明における「ベーパ濃度検出手段」が、吸入空気量Gaに基づいて基本燃料噴射時間TAU0を算出することにより前記第8の発明における「噴射量制御手段」が、図6に示すマップを参照してポンプ32の異常を判定しつつ、FGPGが理論空燃比対応値の近傍値である場合にポンプ32のNG判定を保留することにより前記第8の発明における「異常検出手段」が、それぞれ実現されている。
【0112】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
第1の発明によれば、ポンプのオン・オフの切り換えに伴って吸気通路内の燃料成分濃度、或いは排気空燃比に変化が生じたか否かに基づいて、ポンプの状態を判断することができる。つまり、本発明によれば、ポンプのオン・オフに伴って、パージ流量が適正に変化し、その結果として吸気通路内の燃料成分濃度や排気空燃比に適正な変化が生じたか否かに基づき、ポンプの異常を簡便に、かつ、精度良く検出することができる。
【0113】
第2の発明によれば、ポンプのオン・オフが切り換えられるのと協調して、パージ制御弁の実質的開度が変更される。この場合、ポンプが正常である場合には吸気通路内の燃料成分濃度や排気空燃比に変化を生じさせることなく、それらに変化が生じた場合にポンプの異常を認定することができる。従って、本発明によれば、ポンプに異常が生じない限り空燃比荒れの原因を生じさせることなくポンプの異常判定を行うことができる。
【0114】
第3の発明によれば、ポンプのオン・オフが切り換えられた後、その変化がパージ制御弁の位置に及ぶのに要する遅延時間の影響を考慮して、パージ制御弁の協調制御を行うことができる。このため、本発明によれば、ポンプが正常である場合に、そのオン・オフの切り換えに伴って生ずる空燃比荒れを十分に小さく抑制することができる。
【0115】
第4の発明によれば、ポンプのオン・オフ切り換えの後に、その切り換え前のパージ流量と同等のパージ流量を生じさせることのできるパージ制御弁の目標開度を、吸入空気量、吸気負圧、およびポンプの定格に基づいて容易かつ高精度に算出することができる。
【0116】
第5の発明によれば、ベーパ濃度が排気空燃比の目標値より薄いか否かに応じて、異なる基準でポンプの異常を判断することができる。ポンプとパージ制御弁とが協調制御される環境下で、ポンプが適正に動作しない場合は、ポンプにオン指令が発せられている場合に比してポンプにオフ指令が発せられている場合にパージ流量は多量となる。そして、ベーパ濃度が薄い場合は、パージガス流量が多量となるほど排気空燃比は薄くなり、一方、ベーパ濃度が濃い場合は、パージ流量が多量となるほど排気空燃比は濃くなる。このため、本発明で用いられる基準によれば、ベーパ濃度が薄い場合も濃い場合も、正確にポンプの異常を検出することができる。
【0117】
第6の発明によれば、ポンプのオン・オフが切り換えられることにより空燃比フィードバック補正の大きさに変化が生じたか否かに基づいて、その切り換えに伴ってポンプの作動・非作動が適正に切り換えられたか否か、つまり、ポンプが正常であるか否かを正確に判断することができる。
【0118】
第7の発明によれば、通常時には、パージされる蒸発燃料分が燃料噴射量から減量されることにより、パージの実行に関わらず安定した空燃比精度が維持できる。一方、ポンプの異常を検出するためにポンプのオン・オフが切り換えられる場合は、その前後でパージ分減量補正の大きさが固定されるため、ポンプのオン・オフの影響を排気空燃比に顕著に生じさせることができる。このため、本発明によれば、通常時には良好な排気エミッション特性を実現しつつ、ポンプの異常を精度良く検出することができる。
【0119】
第8の発明によれば、ベーパ濃度が排気空燃比の目標値近傍の値である場合には、ポンプの状態に関する判断を保留することができる。ベーパ濃度が排気空燃比の目標値近傍の値をとる場合、ポンプのオン・オフに伴ってパージ流量が変化しても、排気空燃比に顕著な変化は生じない。本発明によれば、このような状況下で誤った判断が成されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】実施の形態1の装置において発生するパージガス流量と内燃機関の負荷との関係を示す図である。
【図3】実施の形態1の装置においてポンプの異常を検出するための第1の手法を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】実施の形態1の装置においてポンプの異常を検出するための第2の手法を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】実施の形態1の装置において第2の手法に従ってポンプのOBD制御を進めるべく実行する制御ルーチンのフローチャートである。
【図6】実施の形態1の装置において図5に示すルーチンを実行する際に参照されるマップの一例である。
【符号の説明】
10 燃料タンク
22 キャニスタ
30 CCV(Canister Closed Valve)
32 ポンプ
36 パージVSV(Vacuum Switching Valve)
38 吸気通路
40 エアフロメータ
46 燃料噴射弁
50 酸素センサ
Claims (8)
- 燃料タンク内で発生した蒸発燃料を大気に放出させることなく処理するための蒸発燃料処理装置であって、
前記燃料タンクと連通すると共に、内燃機関の吸気通路に連通するパージ孔と大気に通じる大気孔とを備えるキャニスタと、
前記キャニスタの内部に、前記大気孔から前記パージ孔に向かうガスの流れを生じさせることのできるポンプと、
吸気通路内の燃料成分濃度、或いは排気空燃比に応じた出力を発する出力発生手段と、
ポンプのオン・オフの切り換えに伴って吸気通路内の燃料成分濃度、或いは排気空燃比に所定の変化が生じたか否かに基づいて、前記ポンプが正常であるか否かを判断する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする蒸発燃料処理装置。 - 前記パージ孔と前記吸気通路の間に配置されるパージ制御弁と、
ポンプのオン・オフに対応してその作動・非作動が適正に切り替わる状況下で、前記オン・オフの前後で同等のパージ流量が得られるように、前記ポンプのオン・オフと協調させて、前記パージ制御弁の実質的開度を変化させる協調制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の蒸発燃料処理装置。 - 前記協調制御手段は、前記ポンプのオン・オフが切り換えられた後、その切り換えの影響が前記パージ制御弁の位置に及ぶのに要する時間が経過するのを待って、前記パージの実質的開度を変化させる遅延手段を備えることを特徴とする請求項2記載の蒸発燃料処理装置。
- 前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記吸気通路の内圧である吸気負圧を検出する吸気負圧検出手段と、
前記吸入空気量、前記吸気負圧、および前記ポンプの定格に基づいて、前記ポンプのオン・オフ切り換えの後に、その切り換え前のパージ流量を確保するために前記パージ制御弁が実質的に実現すべき目標開度を算出する目標開度算出手段とを備え、
前記協調制御手段は、前記目標開度が実現されるように前記パージ制御弁を制御するパージ制御弁制御手段を備えることを特徴とする請求項2または3記載の蒸発燃料処理装置。 - 前記キャニスタから前記吸気通路にパージされるパージガス中のベーパ濃度を検出するベーパ濃度検出手段と、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、
前記異常検出手段は、
前記ベーパ濃度が排気空燃比の目標値より薄く、かつ、ポンプがオフされているときに、ポンプがオンされているときに比して排気空燃比が薄くなる傾向が生じている場合に、前記ポンプの異常を判断する低濃度時異常検出手段と、
前記ベーパ濃度が排気空燃比の目標値より濃く、かつ、ポンプがオフされているときに、ポンプがオンされているときに比して排気空燃比が濃くなる傾向が生じている場合に、前記ポンプの異常を判断する高濃度時異常検出手段とを含むことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項記載の蒸発燃料処理装置。 - 前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように前記燃料噴射量に空燃比フィードバック補正を施す空燃比フィードバック手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、前記異常検出手段は、前記燃料噴射量に施される空燃比フィードバック補正の大きさに基づいて、排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の蒸発燃料処理装置。 - 前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、
前記異常検出手段は、前記排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かに基づいて前記ポンプが正常であるか否かを判断し、更に、
前記キャニスタから前記吸気通路にパージされる蒸発燃料分に相当する燃料が燃料噴射量から減量されるように、前記燃料噴射量にパージ分減量補正を施すパージ分減量補正手段と、
前記ポンプのオン・オフが切り換えられる前後で、前記パージ分減量補正の大きさを固定するパージ補正保持手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の蒸発燃料処理装置。 - 前記キャニスタから前記吸気通路にパージされるパージガス中のベーパ濃度を検出するベーパ濃度検出手段と、
前記吸気通路を流れる吸入空気量を検出する吸入空気量検出手段と、
前記排気空燃比が目標値となるように、前記吸入空気量に基づいて燃料噴射量を制御する噴射量制御手段と、を備え、
前記出力発生手段は、排気空燃比に応じた出力を発する排気側センサを含み、前記異常検出手段は、前記排気空燃比に前記所定の変化が生じたか否かに基づいて前記ポンプが正常であるか否かを判断すると共に、前記ベーパ濃度が前記排気空燃比の目標値近傍の値である場合には、前記判断を保留することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の蒸発燃料処理装置。
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