JP2004068139A - 溶解金属材料の酸化防止方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料の収容容器を電気的に絶縁するとともにこの金属材料に負の電気素量を持つエレクトロンを供給する。この発明によれば、金属材料が酸化する際に失われてしまうエレクトロンを供給して還元雰囲気を形成するので酸化現象による不都合を可及的に阻止できるものである。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料の酸化防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来より、鉄、銅、アルミニウムなどの金属材料は、インゴットやスクラップを含むリターン材などを、例えば、酸素や酸素富化空気を支燃性ガスとしたバーナーによる化石燃料の燃焼熱やアーク熱などの加熱手段によって溶解し、この溶解状態(溶湯)をアーク熱などの補助的加熱手段で保持し、所望の用途に適宜供されている。
【0003】
ところで、このようにして加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料は、常時、空気や燃焼ガスに晒されているため一定量の酸化物が生成されることは避けられず、例えば、常温においても酸化しやすいアルミニウムなどの場合では溶湯表面にすぐに酸化物が形成されてしまう。またこのような溶解金属を鋳造に用いる場合などでは生成された酸化物を頻繁に除去する必要がある。
【0004】
そして溶解保持された金属材料の酸化量が増加すると湯流れが低下するだけでなく、前記のアルミニウムの場合などは硬度の高い酸化物が生成されてしまうため機械加工が困難となり、さらに溶湯中には水素ガスおよび不純物などが混入していることが多く、このような溶湯を製品化すると巣ができてしまったり、不純物をそのまま含有してしまうので品質の低下が生じるなどの問題があった。
【0005】
このような事情から、金属材料を溶解保持する坩堝などの収容容器を含む溶解保持炉の構造自体に工夫を凝らしたり、溶湯にアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを供給して水素ガスを放散するなど種々の対策が講じられているが充分とはいえなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明では、金属材料が空気に触れて酸素と結びついたときだけが酸化ではなく、負の電気素量を持つエレクトロン(電子=−e)の移動が生じたとき、すなわち、金属元素がエレクトロンを失ったときも酸化現象であることに着目し、具体的には、加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料の収容容器を電気的に絶縁するとともにこの金属材料に負の電気素量を持つエレクトロンを供給することにより還元状態を保持して酸化現象が生じるのを阻止しようとするものである。
【0007】
なお、この場合、導電性素材で容器を形成するとともにこの容器と電源装置の陰極側とを接続すれば金属材料にエレクトロンを好適に供給することができ、また導電性素材としては、自然電極電位が異なりしかも大きな電位差を有する複数の素材により構成するのが好ましい。
【0008】
一方、容器を非導電性素材で形成する場合は、電源装置の陰極側に耐熱電極を接続し、この電極を容器に収容した金属材料に浸漬することによりエレクトロンの供給を好適に達成することができる。
【0009】
さらにまた、容器内の原料金属を不活性雰囲気で囲繞したり、あるいはこの原料金属に不活性気体を供給してバブリングすれば、供給されるエレクトロンとの相乗作用によって顕著な抗酸化効果を期待することができるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料の酸化防止方法を実施する好適な形態を例示し、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
すなわち、本発明に係る金属の溶解保持方法を実施するに際しては、例えば、図1に示すような金属溶解保持炉10を好適に使用することができる。この金属溶解保持炉10は耐熱素材で形成された筐体の内部にインゴットやリターン材などの被溶解金属材料M1を予熱する予熱部(タワー)12と、この予熱部12から降下した被溶解金属材料M1を酸素バーナなどの加熱手段14による燃焼熱を用いて溶解する溶解用坩堝16と、この溶解用坩堝16から湯樋18を介して流下した溶解金属(溶湯)Mを貯留する保持用坩堝20を備えている。なお、この保持用坩堝20には、例えば、アーク熱を使用する補助的加熱手段22が配設されており溶解金属Mの溶解状態を保持するように構成されている。
【0011】
また、保持用坩堝20には、インバータを含む制御機構24を介して商用電源などの電源装置26の陰極側に接続された導体コード28が適宜のコネクタ部材30によって接続され、負の電気素量を持つエレクトロン(−e)が供給されるようになっている。
なお、溶解用坩堝16および保持用坩堝20は、例えば、黒鉛などの導電性素材により形成されているが、金属溶解保持炉10の筐体内側部には電気的に絶縁性を備える絶縁素材32が張設されており、従って、前記溶解用坩堝16、保持用坩堝20と大地(GL)とは電気的に絶縁されている。このように溶解用坩堝16や保持用坩堝20を大地(GL)に対して電気的に絶縁するのは、コネクタ部材30を介して保持用坩堝20内の溶解金属Mに供給されるエレクトロン(−e)が大地(GL)に漏洩しないようにするためである。
【0012】
このように構成される金属溶解保持炉10においては、例えば、アルミニウムなどのインゴットやリターン材などの金属材料は加熱手段14によって予熱部(タワー)12で予熱されたのち溶解用坩堝16で溶融して溶湯となり、この溶湯が一定量以上になると湯樋18を介して保持用坩堝20に貯留される。そしてこの保持用坩堝20に貯留された溶湯Mは所定の用途に供されるまで補助的加熱手段22によってその溶融状態を保持されるが、該溶湯Mには電源装置26の陰極側から負の電気素量を持つエレクトロン(−e)が供給される。
【0013】
ところで、通常、アルミニウムは、図2に示すようなメカニズムによって酸素と結びついて酸化してしまう。すなわち、アルミニウムAl(原子番号13)は、+3価の金属であって最外殻のM殻には3つの自由電子があるのに対し、酸素O(原子番号8)の最外殻のL殻には2つの自由電子が不足している。このような状態で、アルミニウムAl原子2つと酸素O原子3つとが結合すると酸素のL殻は電子で満たされて安定化(酸化)し、その結果、化合物である二酸化アルミニウム(Al2O3)が生じることになる。
【0014】
これに対し、本発明に係る溶解保持方法によれば、図3aに示すように保持用坩堝20に貯留されているアルミニウムAl溶湯(M)は空気に晒されているにもかわらず、電源装置26の陰極側からコネクタ部材30を介して負の電気素量を持つエレクトロン(−e)が供給されるので、アルミニウムAl溶湯(M)中だけでなくその表面近傍も無数のエレクトロン(−e)で満たされている。そしてこれらのエレクトロン(−e)がアルミニウムAl原子の最外殻のM殻および酸素O原子のL殻に入って安定させるため、アルミニウムAl原子と酸素O原子との結合が妨げられることになり、従って、酸化現象によって生じる種々の不都合を可及的に阻止できることになるのである(図3b参照)。
【0015】
なおこの場合、溶解用坩堝16や保持用坩堝20の素材を、電位差を有する複数の導電性素材により構成すれば、金属材料(溶湯)Mだけでなく複数の素材を含む電位差で生ずる微弱電流によってエレクトロン(−e)が継続的に供給されるので酸化の抑制効果を向上させることができる。
【0016】
また、図1に示す本発明方法の実施の態様では、溶解用坩堝16や保持用坩堝20を導電性素材の黒鉛で形成したが、非導電性素材によって形成してもよく、この場合は、電源装置26の陰極側に接続した耐熱電極(図示せず)を溶解用坩堝16や保持用坩堝20に収容される金属材料Mに浸漬することにより、エレクトロン(−e)の供給を好適に行うことができるものである。
【0017】
さらにまた、金属溶解保持炉10の筐体内部にアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを供給して溶解用坩堝16や保持用坩堝20の金属材料Mを不活性雰囲気によって囲繞したり、あるいはこれらの溶解用坩堝16や保持用坩堝20の金属材料(溶湯)、例えば、アルミニウム溶湯中に同様の不活性ガスを注入して生成した水素ガスを放散するように構成すれば、電源装置26からのエレクトロン(−e)の供給と相まって抗酸化効果をさらに向上させることができるものである。
【0018】
酸化量の比較試験1
所定容量の黒鉛製容器(坩堝)A、Bを用意し、これらの容器A、Bに金属材料として約560gのアルミニウムを夫々投入して加熱溶解するとともに、容器Aのみに200Vの直流電源装置の陰極側から負の電気素量を持つエレクトロン(−e)を供給し、所定時間保持したのち凝固させて両容器A、B内のアルミニウムの重量を計測した。
【0019】
この比較試験によれば、エレクトロン(−e)を供給しなかった容器Bのアルミニウムは酸素と結合して酸化物が生成されたため重量増加率が0.27%もあったのに対し、容器Aでは供給されたエレクトロン(−e)がアルミニウムAl原子や酸素原子の最外殻に入って両者の結合(酸化)を阻止したのでその重量増加率は容器Bのアルミニウムの約1/7(0.04%)に減少し、従って、容器Aのアルミニウムは容器Bのアルミニウムに比べ、酸化量の大幅な低減を図ることができた。
【0020】
酸化量の比較試験2
比較試験1と同様に所定容量の黒鉛製容器(坩堝)A、Bを用意してこれらの容器A、Bに純アルミニウム(粒状)を夫々投入して加熱溶解(800℃で7.5時間)するとともに、容器Aのみに商用電源(100V)の陰極側から負の電気素量を持つエレクトロン(−e)を供給し、両容器A、Bを所定時間保持したのち凝固させて夫々の重量を計測した。
【0021】
この試験によれば、比較試験1と同様にエレクトロン(−e)を供給しなかった容器Bのアルミニウムは酸素と結合して酸化物が生成された(重量増加率0.34%)のに対し、容器Aでは供給されたエレクトロン(−e)がアルミニウムや酸素に最外殻に入って両者の結合を阻止したので増加率は約1/2(0.18%)に減少した。従って、容器Aのアルミニウムは容器Bのアルミニウムに比べて酸化を防止できることが確認された。
【0022】
【発明の効果】
先に述べたように、本発明に係る金属の溶解保持方法によれば、金属材料の収容容器を電気的に絶縁するとともにこの金属材料に負の電気素量を持つエレクトロン(電子=−e)を供給することにより還元雰囲気を形成するので、溶湯金属材料と酸素との結合を阻止して酸化現象によって生じる種々の問題を防止することができるだけでなく溶湯の品質も向上させることができる。また、保持時間が長くても酸化を抑制することができ、その結果、湯流れの低下などの不都合を阻止することができるなど種々の利点を有するものである。
以上、本発明に係る溶解金属材料の酸化防止方法の好適な実施の態様として金属溶解保持炉を、また金属材料としてアルミニウムを例示して説明したが、本発明方法は構造の異なる金属溶解保持炉やアルミニウム以外の種々の金属材料の酸化防止にも普遍的に適用することができ、本発明の精神を逸脱しない範囲内において種々の変更をなし得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶解金属材料の酸化防止方法を実施する好適な形態としての金属溶解保持炉の概略説明図である。
【図2】溶解金属材料の一例であるアルミニウムの酸化のメカニズムを模式的に表した説明図である。
【図3】本発明に係る溶解金属材料の酸化防止方法の模式説明図であって、aは図1に示す金属溶解保持炉における溶湯(アルミニウム)とこの溶湯に供給されるエレクトロン(−e)との状態を示す説明図、bは酸化防止方法のメカニズムを模式的に表した説明図である。
【符号の説明】
10…金属溶解保持炉、
12…予熱部(タワー)、
14…加熱手段、
16…溶解用坩堝、
18…湯樋、
20…保持用坩堝、
22…補助的加熱手段、
24…制御機構、
26…電源装置、
28…導体コード、
30−コネクタ部材、
32…絶縁素材、
Claims (6)
- 加熱溶解および/もしくは溶解保持された金属材料の収容容器を電気的に絶縁するとともにこの金属材料に負の電気素量を持つエレクトロンを供給することを特徴とする溶解金属材料の酸化防止方法。
- 容器を導電性素材で形成し、この容器と電源装置の陰極側とを接続することを特徴とする請求項1に記載の溶解金属材料の酸化防止方法。
- 導電性素材は、電位差を有する複数の素材により構成することからなる請求項2に記載の溶解金属材料の酸化防止方法。
- 容器を非導電性素材で形成し、電源装置の陰極側に接続される耐熱電極を前記容器に収容した金属材料に浸漬することからなる請求項1に記載の溶解金属材料の酸化防止方法。
- 容器内の金属材料を不活性雰囲気で囲繞することからなる請求項1〜4のいずれかに記載の溶解金属材料の酸化防止方法。
- 容器内の金属材料に不活性気体を供給することからなる請求項1〜4のいずれかに記載の溶解金属材料の酸化防止方法。
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JP2002259412A JP2004068139A (ja) | 2002-08-02 | 2002-08-02 | 溶解金属材料の酸化防止方法 |
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Cited By (2)
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JP2010501820A (ja) * | 2006-08-23 | 2010-01-21 | レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード | 溶融炉中で処理された製品の汚染を最小化するための蒸気補強された膨張する体積のガス |
JP2010230237A (ja) * | 2009-03-27 | 2010-10-14 | Aisin Takaoka Ltd | 金属溶解炉および金属溶解方法 |
-
2002
- 2002-08-02 JP JP2002259412A patent/JP2004068139A/ja active Pending
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