JP2004067788A - 光触媒コーティング剤用組成物および光触媒コーティング剤 - Google Patents

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窪田 克則
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Abstract

【課題】酸化チタンによる高い光触媒作用と良好な密着性および塗膜硬度の実現を可能としたコーティング剤用組成物、コーティング剤の提供を課題とする。
【解決手段】全組成物量に対して、重量%表示で、光触媒作用を有する酸化チタンを10〜50%、珪酸アルカリを30〜80%、カチオン交換性層状粘土鉱物を2〜15%含むことを特徴とするコーティング剤用組成物である。また前記コーティング剤用組成物を、重量比で1.5倍以上の水に分散させたコーティング剤である。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒作用を有するコーティング剤組成物、光触媒を有するコーティング剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、特定波長以下の光を照射すると、酸化作用によって脱臭、抗菌、防カビ、防汚などの効果を発現する光触媒の応用については数多く提案されている(例えば特開平6−385号)。また既に多様な用途において、実施工あるいは試作施工されている。
代表的な光触媒である酸化チタンは微細粒子であるため、光触媒作用を付与するには何らかの方法でこの微細粒子を対象物に付着させる必要がある。
酸化チタンのみを付着させる方法としては、焼結させるか、あるいはゾルーゲル法による膜形成方法があるが、いずれも400℃以上の高温焼付けが必要であり、よって被着体の種類が限定されたり、コスト高となってしまう。
一方、常温で簡便的に造膜させる方法としては、酸化チタンに膜形成の役割を担うバインダー成分を混合させたコーティング剤を用いる方法がある。
ここでバインダー成分としては、有機物を用いた場合は光触媒作用によって分解するため、一般的に塗料に用いられている有機成分を適応することは出来ず、シリカを主成分とする無機物を用いることが多い。
しかしながらこのような無機成分の場合、100℃以上の焼付け乾燥を施すことで或る程度の塗膜物性を確保できるものの、常温乾燥の場合は、被着体との密着性が悪い点に加え、塗膜硬度が低いことから用途が限定されているのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで焼付け工程を必要としない常温乾燥を前提として、酸化チタンによる高い光触媒作用に加え、各種被着体に対し良好な密着性と、鉛筆硬度で6H以上の塗膜硬度の実現を可能としたコーティング剤用組成物、コーティング剤の提供を課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、酸化チタン含有のコーティング剤の成分組成を探索、最適化を図ることで、塗膜物性に優れたコーティング組成系を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明のコーティング剤用組成物は、全組成物量に対し重量%表示で、光触媒作用を有する酸化チタンを10〜50%、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリが30〜80%、カチオン交換性層状粘土鉱物を2〜15%含むことを第一の特徴としている。
また本発明のコーティング剤用組成物は、上記第一の特徴に加えて、他の成分として金属、金属酸化物、リン酸塩、カルシウムシリケート、金属シリコン、アルミナ、シリカ、アパタイト、フッ素成分の何れか1つ以上を25重量%以下含むことを第2の特徴としている。
また本発明のコーティング剤は、上記第1または第2の特徴に示す組成物を、重量比で1.5倍以上の水に分散させてあることを第3の特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のコーティング剤用組成物は、これを水に分散させることでコーティング剤となるが、先ずこのコーティング剤用組成物の構成成分について説明する。
酸化チタンはコーティング剤用組成物の主要な成分として、光触媒作用を発現する成分である。
酸化チタンの含有量は、より良好な光触媒作用を付与するためには多い方がよいが、多過ぎると塗膜の密着性および硬度が低下する。また塗膜が白濁する。
よってこれらの特性のバランスを確保するため、酸化チタンの全組成物量に対する含有量は、10〜50重量%の範囲にすることが必要である。そして好ましくは20〜40重量%とする。
【0006】
珪酸アルカリとカチオン交換性層状粘土鉱物は塗膜形成成分としての役割を果たす。珪酸アルカリとしては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムを用いることができる。また、カチオン交換性層状粘土鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族等いずれも使用可能であるが、不純物が少なく品質が安定している合成スメクタイトの使用が望ましい。
なおこれらの含有量は、塗膜の密着性と硬度とを確保するため、珪酸アルカリを全組成物量に対して30〜80重量%、カチオン交換性層状粘土鉱物を全組成物量に対して2〜15重量%の範囲にする。好ましくは、珪酸アルカリは45〜65重量%、カチオン交換性層状粘土鉱物は4〜8重量%とする。
【0007】
コーティング剤用組成物の他の成分として、発現させたい特性や機能により、全組成物量に対して25重量%以下の範囲でそれらを含有させることができる。
例えば塗膜硬度を更に向上させるために、亜鉛等の金属や金属酸化物、リン酸塩、カルシウムシリケート、金属シリコンの1つ以上を含有させることができる。また、親水性であればアルミナやシリカ、疎水性の場合はPTFE等のフッ素成分、吸着性付与の場合はアパタイトを含有させることができる。
【0008】
上記したコーティング剤用組成物を水に分散させることで、本発明のコーティング剤を得ることができる。即ち、コーティング剤用組成物の全量を、重量比で1.5倍以上の水に分散させることで、コーティング剤を得る。
ここで、重量比が1.5未満では粘度が高く塗装作業が困難となって好ましくない。なお、コーティング剤用組成物と水との重量比は、より好ましくは10〜30とする。
【0009】
本発明のコーティング剤をコーティングする対象は特に限定されず、例えば、ガラス、タイル、石材、金属、コンクリート、木材、プラスチック等が挙げられる。
ただし、木材やプラスチックおよび有機塗装面については、直接コーティングすると光触媒作用によって被着体が分解されるため、予めプライマー塗装するのが望まれる。プライマーとしては無機成分であればいかなるものでも適応できるが、本発明のコーティング剤において、光触媒作用を有する酸化チタンを除いたコーティング系や、光触媒作用を防止した酸化チタン(白顔料用もしくはアモルファスタイプ等)に置き換えたコーティング系の使用が望ましい。
【0010】
コーティング剤の塗布方法については特に限定されるものではなく、スプレー、ローラー、刷毛等々いかなる方法でもよい。
【0011】
以上のような本発明のコーティング剤を用いることで、優れた密着性と高い塗膜硬度が得られる詳細なメカニズムは、必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。
優れた密着性を呈する要因としては、珪酸アルカリの粘着性の高さと、ガラス、石材、タイル等の二酸化ケイ素を主成分とする被着体に対してはシロキサン結合による架橋反応が、コンクリートについては、コンクリート中の金属イオンとの置換反応が、金属や一部のプラスチックに対してはアルカリによる表面の局部腐蝕反応が寄与しているものと推定される。
また高い塗膜硬度が得られる要因は、カチオン交換性層状粘土鉱物の結晶中に存在するAl、Mg、Fe等の金属と珪酸アルカリとの化学反応にて反応生成物が出来ることに起因するものと考えられる。
【0012】
【実施例】
実施例1
光触媒作用を呈する酸化チタン(チタン工業株式会社製PC−101)5gに対し、精製水250g、JIS K1408に規定されている珪酸ナトリウム液1号の相当品(珪酸ナトリウム含有量:52〜57重量%)17.5g、合成スメクタイト(コープケミカル株式会社製SWN)1gの混合液を作製し、ガラス、塗装鋼板、タイルのそれぞれにスプレーにて塗布し、12時間の常温乾燥させた。
これらのサンプルに対し、碁盤目状カット後のテープ剥離試験(JIS K5400に準ずる)を行ったところ、いずれも全く剥離は確認されず塗膜密着性は良好であった。また、鉛筆硬度を確認(JIS K5400に準ずる)したところ7Hの硬さで、6H以上を確保できた。
次に、光触媒作用を確認するため、ガラス塗装板(膜厚0.5μm)のアセトアルデヒドの分解能を以下の試験手順で測定したところ、2時間で78ppmが44ppmに低減しているのが認められた。
(1)サンプルの大きさを80cmとし、ブラックライトにて紫外線強度1mW/cmで2時間の事前照射を行う。
(2)サンプルを500cm の密閉容器に入れ、アセトアルデヒド濃度が100ppmになるように仕込む。
(3)アセトアルデヒドのサンプルへの吸着が終了させるために、密閉容器を暗室に1時間放置する。
(4)アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフィ(株式会社島津製作所製、GC−8APF型)にて測定する。
(5)ブラックライトにて紫外線強度1mW/cmで2時間の照射を行う。
(6)アセトアルデヒドの濃度をガスクロマトグラフィ(株式会社島津製作所製、GC−8APF型)にて測定し、(4)の結果と対比する。
【0013】
実施例2
光触媒作用を呈する酸化チタン(チタン工業株式会社製PC−101)5gに対し、精製水250g、JIS K1408に規定されている珪酸ナトリウム液1号の相当品(珪酸ナトリウム含有量:52〜57重量%)13g、合成スメクタイト(コープケミカル株式会社製SWN)0.75gの混合液を作製し、ガラス、塗装鋼板、タイルのそれぞれにスプレーにて塗布し、12時間の常温乾燥させた。
これらのサンプルに対し、碁盤目状カット後のテープ剥離試験(JIS K5400に準ずる)を行ったところ、いずれも全く剥離は確認されず塗膜密着性は良好であった。また、鉛筆硬度を確認(JIS K5400に準ずる)したところ7Hの硬さで、6H以上を確保できた。
次に、光触媒作用を確認するため、ガラス塗装板(膜厚0.5μm)のアセトアルデヒドの分解能を実施例1と同様の手順で測定したところ、2時間で81ppmが36ppmに低減しているのが認められた。
【0014】
【発明の効果】
本発明は以上の構成および作用からなり、請求項1に記載のコーティング剤用組成によれば、全組成物量に対し重量%表示で、光触媒作用を有する酸化チタンを10〜50%、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリが30〜80%、カチオン交換性層状粘土鉱物を2〜15%含むことから、酸化チタンによる高い光触媒作用と、珪酸アルカリとカチオン交換性層状粘土鉱物によって、常温乾燥にて優れた塗膜密着性と高い塗膜硬度を実現できるコーティング剤を提供することが可能となった。
また請求項2に記載のコーティング剤用組成物によれば、請求項1に記載の構成による効果に加えて、他の成分として金属、金属酸化物、リン酸塩、カルシウムシリケート、金属シリコン、アルミナ、シリカ、アパタイト、フッ素成分の何れか1つ以上を25重量%以下含むので、塗膜硬度を更に向上させたり、親水性や疎水性あるいは吸着性を付与することが可能なコーティング剤を提供することが可能となった。
さらに請求項3に記載のコーティング剤によれば、請求項1または2の組成物を、重量比で1.5倍以上の水に分散させてあるので、請求項1または請求項2に記載の効果を有するコーティング皮膜を、容易にあらゆる被着体に施すことが可能となった。

Claims (3)

  1. 全組成物量に対して、重量%表示で、
    光触媒作用を有する酸化チタンを10〜50%、
    珪酸アルカリを30〜80%、
    カチオン交換性層状粘土鉱物を2〜15%
    含むことを特徴とするコーティング剤用組成物。
  2. 他の成分として金属、金属酸化物、リン酸塩、カルシウムシリケート、金属シリコン、アルミナ、シリカ、アパタイト、フッ素成分の何れか1つ以上を25重量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載のコーティング剤用組成物。
  3. 請求項1または請求項2の組成物を、重量比で1.5倍以上の水に分散させてあることを特徴とするコーティング剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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