JP2004063705A - 無誘導巻線及びその形成方法並びに永久電流スイッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便な方法で無誘導巻線を作成し、高速なオン動作をする永久電流スイッチを得る。
【解決手段】巻線を行うに際してスペーサーを挟み込みながら巻線する。スペーサーには超電導巻線を挟持する溝を設けておき、巻線か動くのを防止するとともに、冷媒との良好な接触を確保する。巻線する際には円盤状にターンガイドを配置した方向転換用治具を使用する。
【選択図】 図9
【解決手段】巻線を行うに際してスペーサーを挟み込みながら巻線する。スペーサーには超電導巻線を挟持する溝を設けておき、巻線か動くのを防止するとともに、冷媒との良好な接触を確保する。巻線する際には円盤状にターンガイドを配置した方向転換用治具を使用する。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超電導関連装置で使用されている超電導永久電流スイッチ装置に使用する無誘導巻線及びそれを使用した永久電流スイッチ並びにそれらの形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導磁気エネルギー貯蔵システム、核融合システム、核磁気共鳴装置や磁気浮上列車、理化学実験用超電導マグネットなどの超電導コイルでは、運転中に直流電源から切り離して永久電流スイッチで短絡し、閉ループの中を電流が循環して長期に渡って流れ続けるいわゆる永久電流モードで使用するのが一般である。超電導永久電流スイッチは、超電導マグネットと組み合わせて永久電流回路を実現させるために不可欠な要素である。超電導マグネットを永久電流状態で運転する装置においては、超電導コイルと永久電流スイッチを並列接続して構成し、この並列回路を所望の電源にパワーリードを介して接続する構成が一般的になっている。超電導コイルを構成する超電導線は極低温においては超電導状態になって電気抵抗値が零になっており理論的には永久に電流が流れ続けることになる。
【0003】
図11は永久電流スイッチが設けられる超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示すものであり、この例の装置において、21は超電導コイル、22は超電導コイル21に並列接続された永久電流スイッチ、23は超電導コイル21と永久電流スイッチ22に接続されたパワーリード、24はパワーリード23に組み込まれた開閉スイッチ、25はパワーリード23に接続された交直変換器をそれぞれ示している。更にこの例の永久電流スイッチ22は、超電導線材19を無誘導巻コイル状に加工して形成され、超電導線材19には予備電源29が接続されている。また、図11において26は制御磁界用超電導マグネット、27はこの制御磁界用超電導マグネット26に接続された定電流源である。更に、図11において28は冷却容器による極低温領域を示し、この領域を液体ヘリウムにより極低温に冷却することで超電導コイル21と永久電流スイッチ22と制御磁界用超電導マグネット26をそれぞれ超電導状態にすることができるようになっている。なお、前記制御磁界用超電導マグネット26は1テスラ(T)程度の磁場を発生させることができるものである。
【0004】
次に図11に示す装置のスイッチング作動の経過状態を図12に示す。図11に示す装置において、たとえば通電電流を300Aとし、液体ヘリウム温度において制御磁界用超電導マグネットを励磁すると0.3Tでオフ状態となり、超電導線材に流れていた300Aの電流が遮断される。この後、超電導永久電流スイッチをオン状態にするために、外部磁場を0.2Tまで下げると、この状態で超電導線材には10Aの電流が復流する。この状態で、永久電流スイッチ用超電導線材の両端部に、予備電源から電圧を加え、復流した電流と逆方向の電流を0.27秒間流して超電導線材に流れる電流を完全にゼロとする。前記0.27秒の通電後に予備電源からの電圧印可を停止し、先のオン状態の際と同じ状態とし、その後0.2秒で超電導線材に流れる電流が300Aまで復帰し、オン状態とすることができる。
【0005】
図13〜図15に、このような構成の超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示す。これらの図において符号1は超電導コイルを示し、この超電導コイル1と永久電流スイッチ2を並列接続し、この回路にパワーリード3と開閉スイッチ4とを介して交直変換装置5を接続し、交直変換装置5に図示略の交流電源系統を接続して構成されている。前記超電導コイル1と永久電流スイッチ2は、いずれも極低温において超電導状態に転位する超電導体から形成され、液体ヘリウムなどの冷媒で冷却されるようになっている。なお、図13〜15において、超電導コイル1と永久電流スイッチ2とを液体ヘリウムで冷却する装置とその回路については省略してある。
【0006】
図13〜図15に示す超電導エネルギー貯蔵装置を用いて電力の貯蔵を行うには、図13に示すように永久電流スイッチ2を開放して直流電流を超電導コイル1に流し、磁気エネルギーとして電力を貯蔵する。次に、図14に示すように永久電流スイッチ2を閉じて超電導コイル1の両端を短絡するとともに開閉スイッチ4を開放すると、超電導コイル1は極低温状態に冷却されていて電気抵抗がゼロであるがために、電流は減衰することなく超電導コイル1を流れ続け、そのときの超電導コイル1に蓄えられたエネルギーが無損失で保存されることになる。次にこの貯蔵された電力を取り出すには、図15に示すように永久電流スイッチ2を開放するとともに開閉スイッチ4を閉じることで、超電導コイル1に蓄えられていた磁気エネルギーを電力として取り出すことができる。
【0007】
図16は従来の永久電流スイッチの断面図である。この図において、永久電流スイッチ40はリング状をしており、断面が外径側に開き両端につば44のある断面がコの字状をした巻枠41の中に超電導巻線50が巻回されている。直径が0.5mm程度の丸線のヒーター線からなるヒーター線46を図の上下方向である軸方向に沿って巻枠41に巻回し、その外径側に直径が1mm程度の丸線に成形された超電導線50を巻回してある。この図では先にヒーター線46を巻回しその上に超電導巻線50を巻回した構成を示してあるが、巻回の順序をこの逆にする場合もある。また、この図ではヒーター線46、超電導巻線50はそれぞれ1層だけで構成されているが、層を重ねて多層構造をとる場合もある。巻枠41の巻線が巻回される部分の直径は約100mm程度であり、前述のように超電導線やヒーター線の直径は1mmないしそれ以下であり、この図ではこれら丸線の寸法を実際よりも大きく描いてある。
【0008】
巻枠41の中の超電導巻線50やヒーター線46は接着剤を塗布しながら巻回するとともに、巻回作業終了後にモールド樹脂42を含浸して加熱硬化して一体化する。このモールド樹脂としてはエポキシ樹脂にアルミナ粉などの充填剤を混入したものが使用される。充填剤を混入する理由は、超電導線など金属との熱膨張係数の値を近くして極低温に冷却したときの熱応力の発生を低減するとともに、熱伝導係数を小さくして超電導巻線50とヒーター線46との間の熱結合をより良好にするためである。
超電導巻線50やヒーター線46の巻線群の更にその外側に断熱層43を設け、前述のようにヒーター線46に電流を流して超電導巻線50を加熱する際の効率を高める構成としている。この断熱層43は巻線のモールドに使用したと同じ樹脂に充填剤を混入しないものを使用する。充填剤を混入しない理由は、充填剤を混入すると前述のように熱伝導係数が小さくなり断熱層としての機能に支障が生ずるからである。なお、超電導巻線50の超電導線やヒーター線46を構成するヒーター線はいずれも絶縁被覆が施されてあるがその図示は省略してある。この絶縁被覆によって超電導線やヒーター線の間の絶縁が確保されている。
【0009】
超電導巻線50は、永久電流スイッチとしてはオフの状態である常電導状態での抵抗値を大きくするために安定化銅を除去した超電導体だけのもの、あるいは、銅より2桁以上も抵抗率の大きな例えばキュプロニッケル合金(Cu−Ni)を被覆材とした超電導線を使用する。このような超電導線では何らかの理由で突然超電導状態から常電導状態に移行するいわゆるクエンチが生じ易くなるので、超電導線近傍の磁界の強度を低減することを目的として永久電流スイッチ40の超電導巻線50は無誘導巻きという特殊な巻回方法が採用されている。
【0010】
無誘導巻きは、超電導線を2本に折り返して先端の折り曲げ部を巻枠に設けた溝に挿入固定した上で2本単位に巻回して行くもので(例えば、実開昭62−34408号公報参照)、超電導線に流れる電流は常にこの2本の超電導線を反対方向に流れて互いに磁場を打ち消し合うことになる構成である。無誘導巻きを採用する1つの理由は、周知のように超電導線は磁場が強いほど臨界電流が低下するという特性を持っているので、超電導巻線3が生起する磁場の強度を低減するためであり、もう1つの理由は図11の超電導コイル21が生起する磁場を乱さないようにするためである。
巻き始めの超電導線の折り返し部の曲げ半径は超電導線の半径の10倍程度が必要とされており、余り小さな曲げ半径で曲げると超電導線内の応力などによってクエンチが起こり易くなることが知られている。
【0011】
クエンチが起こり難い巻線とするため、図16に示す超電導巻線50の巻き始めの折り返し部54は、図17に示すように構成されている。すなわち、超電導巻線50はこのつば44に沿った位置から巻き始められる。折り返し部54は図17に示すようにつば44に接する超電導線52がつば44に直角に半径R1で直角に折り曲げられ、その後半径R2で同じ方向に半周折り曲げられた上で、半径R3で反対方向に直角に折り曲げられて超電導線53として超電導線52に沿う位置に到り、この後は超電導52,53を一緒にまとめて軸方向に並べた状態で巻回される。図18は図17のD−D’断面図である。折り返し部54は巻枠50に設けられた溝48に挿入し接着剤47で固定しこの接着剤47が固化したところで巻回を開始する。溝48の深さは折り返し部54の超電導線が巻枠の表面からはみ出さないよう少なくとも超電導線の直径以上の深さを有している。
また、円筒状の巻枠41に超電導線を無誘導巻きで巻回してなる超電導巻線50とヒーター線46とを樹脂モールドして一体化するとともに断熱層で被覆し、前記断熱層と前記超電導巻線50及びヒーター線46とからなる巻線群との間にはく離層を設けることが提案されている(特開平3−261184号公報参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のような密着させて巻線を行う構造においても、超電導状態が壊れて常電導状態に遷移するスイッチオフ動作では高速な動作が可能であったが、常電導状態から超電導状態に復帰するスイッチオン動作では、密着線内に熱がこもってしまい、高速なオン・オフ動作を実現することが不可能であった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため本発明の無誘導巻線は、円筒状の巻枠に電流方向の相異なる超電導線を互いに隣接して巻線してなる永久電流スイッチ用巻線であって、該超電導巻線は前記円筒状の巻枠表面に設けられた螺旋状の溝に支持されており、かつ溝を有するスペーサーを介して一定間隔を保って複層に積層して巻線した無誘導巻線とした。
このような構造の無誘導巻線を構成すれば、超電導線がスペーサーを介して一定間隔を保って巻線されているので冷媒との接触が良くなり、常導電状体から超電導状態への高速切り替えが可能となる。また、溝付きのスペーサーを使用しているので超電導線の振動が防止でき、安定した導電特性が得られるようになる。したがって常導電状態での抵抗値を大きくすることが可能となり、長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線とすることが可能となる。
【0014】
また、本発明の無誘導巻線では、前記巻枠は表面に縦縞状の凸部を有し、該凸部表面に螺旋状の溝を有しているものを使用するのが好ましい。さらに前記スペーサーは表裏両面に螺旋状に連なる溝を有しているものを使用するのが好ましい。
一定の間隔又は厚さを有するスペーサーと溝を利用して超電導線を一定間隔を保持して巻線することが可能となり、密着線内に熱がこもることも無く、効果的に冷却することができるからである。
【0015】
また、本発明の無誘導巻線の形成方法は、円板表面に螺旋状にターンガイドを配置した一対の方向転換用治具をターンガイドを対向させて配置し、該円板の中心に表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠を配置して挟持し、該巻枠の一端から巻枠の溝に沿って超電導線を巻線し、巻枠の他端まで巻線したならば2個のターンガイドに超電導線をからませて巻線方向を反転させ、前記巻線に隣接して並行に巻線し、巻線が巻枠を往復したならば再び2個のターンガイドに超電導線をからませて巻線方向を反転させ、前記巻線の表面に溝を有するスペーサーを配置した後該スペーサー表面の溝に沿って超電導線を巻線する操作を必要回数繰り返して巻線する方法を採用した。
この方法によれば簡単な治具を使用することにより多層の無誘導巻線を容易に形成することができるようになる。
【0016】
また、本発明の永久電流スイッチは、上記のようにして形成した本発明の無誘導巻線を使用したものであって、表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠に超電導線が無誘導巻きで一定間隔を保って巻線されており、かつ巻線層間に溝を有するスペーサーを介在させて層間間隔を一定に保って複層に積層して巻線された永久電流スイッチとした。
このような永久電流スイッチとすれば、常導電状態での抵抗値を大きくすることが可能となり、長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線となるので常導電状体から超電導状態への高速切り替えが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図を使用して本発明を詳細に説明するが、以下の図においては説明を判りやすくするため、縮尺は必ずしも正確には描かれてはいない。
図1は本発明の永久電流スイッチの構造を示す断面図であり、図2は図1の線A−A’に沿った断面を示す平面図である。
図2に示すように永久電流スイッチ10はリング状をしており、図1に示すように断面がL字状の巻枠11の表面に超電導巻線13が巻線されている。超電導巻線13はスペーサー12を介して層状に(図では3層まで巻線した例を示している)巻線されており、電流の向きが互いに逆方向の13a,13bが隣接して並行して巻線されている。超電導巻線13は巻枠11の上限間を往復しながらスペーサー12を介して層状に巻線されている。また、超電導巻線13は巻枠11の表面に形成された溝とスペーサー12の表面に形成された溝によって挟持されることにより、一定の間隔を保って巻線されている。スペーサー12の表面に形成された溝と巻枠11の表面に形成された溝の詳細を図3〜図6を使用して説明する。
【0018】
図3はスペーサー12の縦断面を拡大して示す図であり、図4は図3に示すスペーサー12の線B−B’に沿った断面図である。
スペーサー12は厚さD(D=2〜3mm)のポリイミド樹脂等からなる帯状の絶縁体の両面に溝12a,12bを形成したものである。溝12a,12bの深さ(D−d)×1/2は超電導巻線13の半径の1/2〜1/3とするのが適当である。溝のピッチpは超電導巻線13の直径とほぼ同じとし、電流方向の異なる2本の超電導巻線13a,13bがなるべく接近するように構成する。
図4ではスペーサー12の断面は長方形で示されているが、超電導巻線13の曲率半径は巻線の外層側になるほど大きくなるので、超電導巻線13の曲率半径に合わせてやや円形断面を有するように構成するのが好ましい。
電流方向の異なる2本の超電導巻線13a,13bは、これらスペーサー12表面の溝12a,12bにはめ込むように挟持させて、互いに隣接させて交互に配置するようにして巻線する。
【0019】
図5は巻枠11の表面を一部拡大して示した図であり、図6は図5に示す巻枠11の線C−C’に沿った断面図である。巻枠11の表面に数本の縦縞状の凸部11bが形成されており、その表面には巻枠11の表面を螺旋状に貫くスパイラル溝11aが形成されている。図5に示す巻枠11の線C−C’に沿った断面図を示すと図6のように巻枠11の表面に深さt、角度θ、ピッチpの切り込みからなるスパイラル溝11aが形成されている。スパイラル溝11aの深さでは超電導巻線の半径の1/2〜1/3とするのが適当である。スパイラル溝11aのなす角度θは60度程度とするのが好ましく、ピッチpは超電導巻線の直径とほぼ同じとするのが好ましい。スパイラル溝11aはさきの1列目のスペーサー12表面の溝12aに対峙して、超電導巻線13を挟持する。
【0020】
次に、本発明の無誘導巻線の形成方法について説明する。
図7は本発明の無誘導巻線の形成方法で使用する方向転換用治具の斜視図である。また、図8は図7に示す方向転換用治具の平面図である。
本発明で使用する方向転換用治具30は、固定用円板31の表面に細く短い円柱状のターンガイド32が螺旋状に複数個配置されている。図7ではターンガイド32が8個並んでいる状態を示している。ターンガイド32は細く短い円柱状の突起であって、2個1組で超電導巻線の向きを反転させて巻き戻すために使用される。図8に示すようにターンガイド32は固定用円板31上に同心円状に配置される巻枠11の表面に近接して32a−1,32a−2,32b−1,32b−2,32c−1,3c−2,32d−1,32d−2,・・・・のように、紙面上左に行くにしたがって巻枠11から次第にはなれてゆく螺旋状をなして配置されている。巻線が層をなすにしたがって、巻線ラインが巻枠表面から飛び出してくるからである。
【0021】
ターンガイド32の直径は24〜60mm程度(超電導撚線の直径の8〜20倍程度)とし、合成樹脂製のネジ状に形成して固定用円板31の表面にネジ止めしておく。ターンガイド32は超電導巻線層が重なって来るにしたがって巻枠11の表面から離れていくので、固定用円板31の表面にあらかじめ螺旋状にネジ穴を配列しておき、巻線が進行するにしたがって適宜新たなターンガイドを設置する。
【0022】
このようなターンガイド32を使用して無誘導巻線を形成する手順について図9及び図10を用いて説明する。
無誘導巻線を形成するには図7及び図8に示した方向転換用治具30を使用し、ターンガイド32を利用して巻線方向を反転させて巻いていく。
図9はターンガイド32で巻線が方向転換する様子を説明する図である。1層目の巻線13a−1が、図では省略してある巻枠の表面の溝に導かれて、紙面左上方から降りてくる。巻線13a−1はターンガイド32a−2の外側へ出てきて、ターンガイド32a−1の裏側へ廻り込み、32a−1に巻き付いて方向転換し、ターンガイド32a−2の外側を廻ってスペーサーの溝によって導かれ、巻線13a−1に隣接して巻線13a−1と逆方向に向かう巻線13a−2となって紙面左上方へ登っていく。
【0023】
巻枠の上端まで登り詰めた巻線13a−2は、新たに追加されたスペーサーの溝によって2層目に導かれ、再び下方に向かって降下し、巻枠の下端では、紙面右上方から巻線13b−1となって降りてくる。巻線13b−1はターンガイド32b−1の外側へ出てきて、ターンガイド32b−2の裏側へ廻り込み、32b−2に巻き付いて方向転換し、ターンガイド32b−2の外側を通ってスペーサーの溝によって導かれ、巻線13b−1に隣接して巻線13b−1と逆方向に向かう巻線13b−2となって紙面右上方へ登っていく。
このように巻線13は、2個のターンガード32を使用して方向転換をしながら電流方向の相反する2本の線が隣接して併走しながら、巻枠に巻かれていく。図のように巻枠の下部で巻線の方向が反転する際には、紙面右上方向から降下してくる巻線と、紙面左上から降下してくる巻線とが、交互に方向反転を繰り返すことになる。方向反転を繰り返して巻線層数が増す毎に、巻線の位置は巻枠中心から遠ざかってくるので、ターンガイドの位置も巻枠中心から遠ざかる螺旋状に配列してある。
【0024】
図10は巻線を施したターンガイド近傍の断面を示す図である。図10に示すように固定用円板31の上に台座33を介して巻枠11が固定されている。台座33の直径は巻枠11の直径よりも小さい。固定用円板31の表面上には、巻枠11表面の凸部11bとほぼ同じ位置になるようにターンガイド32が配置されている。あるいは巻線の層が形成されている場合には、凸部11bに代わってスペーサーの表面とほぼ同じ位置になるように、ターンガイド32が配置される。これらターンガイド32で方向転換した超電導巻線13は、図に示すように巻枠表面の溝もしくはスペーサーの溝に導かれて、一定間隔を保って相隣接して巻かれて行く。
【0025】
このような方法により巻線を繰り返し、各巻線の層間にはスペーサーを配置して各巻線の層間間隔を一定に保つとともに、往復の巻線も密に隣接させて巻線する。
このようにして無誘導巻線を構成することにより、各線間の間隔を一定に維持することができるので、冷媒との接触が良くなり、常電導状体から超電導状態への高速復帰が可能となる。また、簡単な方法で多層の無誘導巻線が可能となり、常電導状体での抵抗値を大きくとることも可能となる。さらに長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線を得ることも可能となる。
【0026】
本発明の永久電流スイッチは、上記の本発明の方法によって得られた無誘導巻線を使用したものであって、表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠に超電導線が無誘導巻きで一定間隔を保って巻線されており、かつ巻線層間に溝を有するスペーサーを介在させて層間間隔を一定に保って複層に積層して巻線された永久電流スイッチである。
本発明の永久電流スイッチにあっては、各線間の間隔を一定に維持することができるので、冷媒との接触が良くなり、また、簡単な方法で多層の無誘導巻線が可能となり、常電導状体での抵抗値を大きくとることも可能となる。さらに長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線が可能となるので、常電導状体から超電導状態への高速復帰が可能となる利点を有する。
【0027】
【発明の効果】
本発明によればスペーサーを挟み込んで巻線してあるので、冷媒との接触が良くなり、常電導状態から超電導状態への高速復帰が可能となる。また、多層無誘導巻き線用の複雑な巻枠を使用することなく、簡単な構造の巻枠で多層無誘導巻き線が得られるようになる。さらに多層無誘導巻き線が得られるようになったことで、常電導状態での抵抗値を高くすることが可能となり、長尺な巻線を施してもインダクタンスの低い巻線とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久電流スイッチを示す断面図である。
【図2】図1に示す永久電流スイッチの線A−A’に沿った断面図である。
【図3】スペーサーの縦断面を示す図である。
【図4】図3に示すスペーサーの線B−B’に沿った断面図である。
【図5】巻枠の表面を一部拡大して示す図である。
【図6】図5に示す巻枠の線C−C’に沿った断面図である。
【図7】本発明で使用する方向転換用治具の斜視図である。
【図8】本発明で使用する方向転換用治具の平面図である。
【図9】ターンガイドで巻線が方向転換する様子を説明する図である。
【図10】巻線を施したターンガイド近傍の断面を示す示す図である。
【図11】本発明に係わる永久電流スイッチを備えた超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示す構成図である。
【図12】本発明の永久電流スイッチがオフ状態からオン状態になる場合の電流値の変化を示す図である。
【図13】超電導エネルギー貯蔵装置の一例に充電している状態を示す構成図である。
【図14】超電導エネルギー貯蔵装置の一例に電力を保存している状態を示す構成図である。
【図15】超電導エネルギー貯蔵装置の一例から電力を取り出している状態を示す構成図である。
【図16】従来の永久電流スイッチを示す断面図である。
【図17】超電導巻線の折り返し卯を示す平面図である。
【図18】図17に示す超電導巻線の線D−D’に沿った断面図である。
【符号の説明】
1,21・・・・・超電導コイル、2,10,22,40・・・・・永久電流スイッチ、11,41・・・・・巻枠、12・・・・・スペーサー、13,50・・・・・超電導巻線、10・・・・・永久電流スイッチ、25・・・・・交直変換器、26・・・・・制御磁界用超電導マグネット、27・・・・・定電流源、28・・・・・極低温領域、30・・・・・方向転換用治具、31・・・・・固定用円板、32・・・・・ターン用ガイド、54・・・・・折り返し部
【発明の属する技術分野】
本発明は超電導関連装置で使用されている超電導永久電流スイッチ装置に使用する無誘導巻線及びそれを使用した永久電流スイッチ並びにそれらの形成方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】
超電導磁気エネルギー貯蔵システム、核融合システム、核磁気共鳴装置や磁気浮上列車、理化学実験用超電導マグネットなどの超電導コイルでは、運転中に直流電源から切り離して永久電流スイッチで短絡し、閉ループの中を電流が循環して長期に渡って流れ続けるいわゆる永久電流モードで使用するのが一般である。超電導永久電流スイッチは、超電導マグネットと組み合わせて永久電流回路を実現させるために不可欠な要素である。超電導マグネットを永久電流状態で運転する装置においては、超電導コイルと永久電流スイッチを並列接続して構成し、この並列回路を所望の電源にパワーリードを介して接続する構成が一般的になっている。超電導コイルを構成する超電導線は極低温においては超電導状態になって電気抵抗値が零になっており理論的には永久に電流が流れ続けることになる。
【0003】
図11は永久電流スイッチが設けられる超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示すものであり、この例の装置において、21は超電導コイル、22は超電導コイル21に並列接続された永久電流スイッチ、23は超電導コイル21と永久電流スイッチ22に接続されたパワーリード、24はパワーリード23に組み込まれた開閉スイッチ、25はパワーリード23に接続された交直変換器をそれぞれ示している。更にこの例の永久電流スイッチ22は、超電導線材19を無誘導巻コイル状に加工して形成され、超電導線材19には予備電源29が接続されている。また、図11において26は制御磁界用超電導マグネット、27はこの制御磁界用超電導マグネット26に接続された定電流源である。更に、図11において28は冷却容器による極低温領域を示し、この領域を液体ヘリウムにより極低温に冷却することで超電導コイル21と永久電流スイッチ22と制御磁界用超電導マグネット26をそれぞれ超電導状態にすることができるようになっている。なお、前記制御磁界用超電導マグネット26は1テスラ(T)程度の磁場を発生させることができるものである。
【0004】
次に図11に示す装置のスイッチング作動の経過状態を図12に示す。図11に示す装置において、たとえば通電電流を300Aとし、液体ヘリウム温度において制御磁界用超電導マグネットを励磁すると0.3Tでオフ状態となり、超電導線材に流れていた300Aの電流が遮断される。この後、超電導永久電流スイッチをオン状態にするために、外部磁場を0.2Tまで下げると、この状態で超電導線材には10Aの電流が復流する。この状態で、永久電流スイッチ用超電導線材の両端部に、予備電源から電圧を加え、復流した電流と逆方向の電流を0.27秒間流して超電導線材に流れる電流を完全にゼロとする。前記0.27秒の通電後に予備電源からの電圧印可を停止し、先のオン状態の際と同じ状態とし、その後0.2秒で超電導線材に流れる電流が300Aまで復帰し、オン状態とすることができる。
【0005】
図13〜図15に、このような構成の超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示す。これらの図において符号1は超電導コイルを示し、この超電導コイル1と永久電流スイッチ2を並列接続し、この回路にパワーリード3と開閉スイッチ4とを介して交直変換装置5を接続し、交直変換装置5に図示略の交流電源系統を接続して構成されている。前記超電導コイル1と永久電流スイッチ2は、いずれも極低温において超電導状態に転位する超電導体から形成され、液体ヘリウムなどの冷媒で冷却されるようになっている。なお、図13〜15において、超電導コイル1と永久電流スイッチ2とを液体ヘリウムで冷却する装置とその回路については省略してある。
【0006】
図13〜図15に示す超電導エネルギー貯蔵装置を用いて電力の貯蔵を行うには、図13に示すように永久電流スイッチ2を開放して直流電流を超電導コイル1に流し、磁気エネルギーとして電力を貯蔵する。次に、図14に示すように永久電流スイッチ2を閉じて超電導コイル1の両端を短絡するとともに開閉スイッチ4を開放すると、超電導コイル1は極低温状態に冷却されていて電気抵抗がゼロであるがために、電流は減衰することなく超電導コイル1を流れ続け、そのときの超電導コイル1に蓄えられたエネルギーが無損失で保存されることになる。次にこの貯蔵された電力を取り出すには、図15に示すように永久電流スイッチ2を開放するとともに開閉スイッチ4を閉じることで、超電導コイル1に蓄えられていた磁気エネルギーを電力として取り出すことができる。
【0007】
図16は従来の永久電流スイッチの断面図である。この図において、永久電流スイッチ40はリング状をしており、断面が外径側に開き両端につば44のある断面がコの字状をした巻枠41の中に超電導巻線50が巻回されている。直径が0.5mm程度の丸線のヒーター線からなるヒーター線46を図の上下方向である軸方向に沿って巻枠41に巻回し、その外径側に直径が1mm程度の丸線に成形された超電導線50を巻回してある。この図では先にヒーター線46を巻回しその上に超電導巻線50を巻回した構成を示してあるが、巻回の順序をこの逆にする場合もある。また、この図ではヒーター線46、超電導巻線50はそれぞれ1層だけで構成されているが、層を重ねて多層構造をとる場合もある。巻枠41の巻線が巻回される部分の直径は約100mm程度であり、前述のように超電導線やヒーター線の直径は1mmないしそれ以下であり、この図ではこれら丸線の寸法を実際よりも大きく描いてある。
【0008】
巻枠41の中の超電導巻線50やヒーター線46は接着剤を塗布しながら巻回するとともに、巻回作業終了後にモールド樹脂42を含浸して加熱硬化して一体化する。このモールド樹脂としてはエポキシ樹脂にアルミナ粉などの充填剤を混入したものが使用される。充填剤を混入する理由は、超電導線など金属との熱膨張係数の値を近くして極低温に冷却したときの熱応力の発生を低減するとともに、熱伝導係数を小さくして超電導巻線50とヒーター線46との間の熱結合をより良好にするためである。
超電導巻線50やヒーター線46の巻線群の更にその外側に断熱層43を設け、前述のようにヒーター線46に電流を流して超電導巻線50を加熱する際の効率を高める構成としている。この断熱層43は巻線のモールドに使用したと同じ樹脂に充填剤を混入しないものを使用する。充填剤を混入しない理由は、充填剤を混入すると前述のように熱伝導係数が小さくなり断熱層としての機能に支障が生ずるからである。なお、超電導巻線50の超電導線やヒーター線46を構成するヒーター線はいずれも絶縁被覆が施されてあるがその図示は省略してある。この絶縁被覆によって超電導線やヒーター線の間の絶縁が確保されている。
【0009】
超電導巻線50は、永久電流スイッチとしてはオフの状態である常電導状態での抵抗値を大きくするために安定化銅を除去した超電導体だけのもの、あるいは、銅より2桁以上も抵抗率の大きな例えばキュプロニッケル合金(Cu−Ni)を被覆材とした超電導線を使用する。このような超電導線では何らかの理由で突然超電導状態から常電導状態に移行するいわゆるクエンチが生じ易くなるので、超電導線近傍の磁界の強度を低減することを目的として永久電流スイッチ40の超電導巻線50は無誘導巻きという特殊な巻回方法が採用されている。
【0010】
無誘導巻きは、超電導線を2本に折り返して先端の折り曲げ部を巻枠に設けた溝に挿入固定した上で2本単位に巻回して行くもので(例えば、実開昭62−34408号公報参照)、超電導線に流れる電流は常にこの2本の超電導線を反対方向に流れて互いに磁場を打ち消し合うことになる構成である。無誘導巻きを採用する1つの理由は、周知のように超電導線は磁場が強いほど臨界電流が低下するという特性を持っているので、超電導巻線3が生起する磁場の強度を低減するためであり、もう1つの理由は図11の超電導コイル21が生起する磁場を乱さないようにするためである。
巻き始めの超電導線の折り返し部の曲げ半径は超電導線の半径の10倍程度が必要とされており、余り小さな曲げ半径で曲げると超電導線内の応力などによってクエンチが起こり易くなることが知られている。
【0011】
クエンチが起こり難い巻線とするため、図16に示す超電導巻線50の巻き始めの折り返し部54は、図17に示すように構成されている。すなわち、超電導巻線50はこのつば44に沿った位置から巻き始められる。折り返し部54は図17に示すようにつば44に接する超電導線52がつば44に直角に半径R1で直角に折り曲げられ、その後半径R2で同じ方向に半周折り曲げられた上で、半径R3で反対方向に直角に折り曲げられて超電導線53として超電導線52に沿う位置に到り、この後は超電導52,53を一緒にまとめて軸方向に並べた状態で巻回される。図18は図17のD−D’断面図である。折り返し部54は巻枠50に設けられた溝48に挿入し接着剤47で固定しこの接着剤47が固化したところで巻回を開始する。溝48の深さは折り返し部54の超電導線が巻枠の表面からはみ出さないよう少なくとも超電導線の直径以上の深さを有している。
また、円筒状の巻枠41に超電導線を無誘導巻きで巻回してなる超電導巻線50とヒーター線46とを樹脂モールドして一体化するとともに断熱層で被覆し、前記断熱層と前記超電導巻線50及びヒーター線46とからなる巻線群との間にはく離層を設けることが提案されている(特開平3−261184号公報参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のような密着させて巻線を行う構造においても、超電導状態が壊れて常電導状態に遷移するスイッチオフ動作では高速な動作が可能であったが、常電導状態から超電導状態に復帰するスイッチオン動作では、密着線内に熱がこもってしまい、高速なオン・オフ動作を実現することが不可能であった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため本発明の無誘導巻線は、円筒状の巻枠に電流方向の相異なる超電導線を互いに隣接して巻線してなる永久電流スイッチ用巻線であって、該超電導巻線は前記円筒状の巻枠表面に設けられた螺旋状の溝に支持されており、かつ溝を有するスペーサーを介して一定間隔を保って複層に積層して巻線した無誘導巻線とした。
このような構造の無誘導巻線を構成すれば、超電導線がスペーサーを介して一定間隔を保って巻線されているので冷媒との接触が良くなり、常導電状体から超電導状態への高速切り替えが可能となる。また、溝付きのスペーサーを使用しているので超電導線の振動が防止でき、安定した導電特性が得られるようになる。したがって常導電状態での抵抗値を大きくすることが可能となり、長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線とすることが可能となる。
【0014】
また、本発明の無誘導巻線では、前記巻枠は表面に縦縞状の凸部を有し、該凸部表面に螺旋状の溝を有しているものを使用するのが好ましい。さらに前記スペーサーは表裏両面に螺旋状に連なる溝を有しているものを使用するのが好ましい。
一定の間隔又は厚さを有するスペーサーと溝を利用して超電導線を一定間隔を保持して巻線することが可能となり、密着線内に熱がこもることも無く、効果的に冷却することができるからである。
【0015】
また、本発明の無誘導巻線の形成方法は、円板表面に螺旋状にターンガイドを配置した一対の方向転換用治具をターンガイドを対向させて配置し、該円板の中心に表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠を配置して挟持し、該巻枠の一端から巻枠の溝に沿って超電導線を巻線し、巻枠の他端まで巻線したならば2個のターンガイドに超電導線をからませて巻線方向を反転させ、前記巻線に隣接して並行に巻線し、巻線が巻枠を往復したならば再び2個のターンガイドに超電導線をからませて巻線方向を反転させ、前記巻線の表面に溝を有するスペーサーを配置した後該スペーサー表面の溝に沿って超電導線を巻線する操作を必要回数繰り返して巻線する方法を採用した。
この方法によれば簡単な治具を使用することにより多層の無誘導巻線を容易に形成することができるようになる。
【0016】
また、本発明の永久電流スイッチは、上記のようにして形成した本発明の無誘導巻線を使用したものであって、表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠に超電導線が無誘導巻きで一定間隔を保って巻線されており、かつ巻線層間に溝を有するスペーサーを介在させて層間間隔を一定に保って複層に積層して巻線された永久電流スイッチとした。
このような永久電流スイッチとすれば、常導電状態での抵抗値を大きくすることが可能となり、長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線となるので常導電状体から超電導状態への高速切り替えが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図を使用して本発明を詳細に説明するが、以下の図においては説明を判りやすくするため、縮尺は必ずしも正確には描かれてはいない。
図1は本発明の永久電流スイッチの構造を示す断面図であり、図2は図1の線A−A’に沿った断面を示す平面図である。
図2に示すように永久電流スイッチ10はリング状をしており、図1に示すように断面がL字状の巻枠11の表面に超電導巻線13が巻線されている。超電導巻線13はスペーサー12を介して層状に(図では3層まで巻線した例を示している)巻線されており、電流の向きが互いに逆方向の13a,13bが隣接して並行して巻線されている。超電導巻線13は巻枠11の上限間を往復しながらスペーサー12を介して層状に巻線されている。また、超電導巻線13は巻枠11の表面に形成された溝とスペーサー12の表面に形成された溝によって挟持されることにより、一定の間隔を保って巻線されている。スペーサー12の表面に形成された溝と巻枠11の表面に形成された溝の詳細を図3〜図6を使用して説明する。
【0018】
図3はスペーサー12の縦断面を拡大して示す図であり、図4は図3に示すスペーサー12の線B−B’に沿った断面図である。
スペーサー12は厚さD(D=2〜3mm)のポリイミド樹脂等からなる帯状の絶縁体の両面に溝12a,12bを形成したものである。溝12a,12bの深さ(D−d)×1/2は超電導巻線13の半径の1/2〜1/3とするのが適当である。溝のピッチpは超電導巻線13の直径とほぼ同じとし、電流方向の異なる2本の超電導巻線13a,13bがなるべく接近するように構成する。
図4ではスペーサー12の断面は長方形で示されているが、超電導巻線13の曲率半径は巻線の外層側になるほど大きくなるので、超電導巻線13の曲率半径に合わせてやや円形断面を有するように構成するのが好ましい。
電流方向の異なる2本の超電導巻線13a,13bは、これらスペーサー12表面の溝12a,12bにはめ込むように挟持させて、互いに隣接させて交互に配置するようにして巻線する。
【0019】
図5は巻枠11の表面を一部拡大して示した図であり、図6は図5に示す巻枠11の線C−C’に沿った断面図である。巻枠11の表面に数本の縦縞状の凸部11bが形成されており、その表面には巻枠11の表面を螺旋状に貫くスパイラル溝11aが形成されている。図5に示す巻枠11の線C−C’に沿った断面図を示すと図6のように巻枠11の表面に深さt、角度θ、ピッチpの切り込みからなるスパイラル溝11aが形成されている。スパイラル溝11aの深さでは超電導巻線の半径の1/2〜1/3とするのが適当である。スパイラル溝11aのなす角度θは60度程度とするのが好ましく、ピッチpは超電導巻線の直径とほぼ同じとするのが好ましい。スパイラル溝11aはさきの1列目のスペーサー12表面の溝12aに対峙して、超電導巻線13を挟持する。
【0020】
次に、本発明の無誘導巻線の形成方法について説明する。
図7は本発明の無誘導巻線の形成方法で使用する方向転換用治具の斜視図である。また、図8は図7に示す方向転換用治具の平面図である。
本発明で使用する方向転換用治具30は、固定用円板31の表面に細く短い円柱状のターンガイド32が螺旋状に複数個配置されている。図7ではターンガイド32が8個並んでいる状態を示している。ターンガイド32は細く短い円柱状の突起であって、2個1組で超電導巻線の向きを反転させて巻き戻すために使用される。図8に示すようにターンガイド32は固定用円板31上に同心円状に配置される巻枠11の表面に近接して32a−1,32a−2,32b−1,32b−2,32c−1,3c−2,32d−1,32d−2,・・・・のように、紙面上左に行くにしたがって巻枠11から次第にはなれてゆく螺旋状をなして配置されている。巻線が層をなすにしたがって、巻線ラインが巻枠表面から飛び出してくるからである。
【0021】
ターンガイド32の直径は24〜60mm程度(超電導撚線の直径の8〜20倍程度)とし、合成樹脂製のネジ状に形成して固定用円板31の表面にネジ止めしておく。ターンガイド32は超電導巻線層が重なって来るにしたがって巻枠11の表面から離れていくので、固定用円板31の表面にあらかじめ螺旋状にネジ穴を配列しておき、巻線が進行するにしたがって適宜新たなターンガイドを設置する。
【0022】
このようなターンガイド32を使用して無誘導巻線を形成する手順について図9及び図10を用いて説明する。
無誘導巻線を形成するには図7及び図8に示した方向転換用治具30を使用し、ターンガイド32を利用して巻線方向を反転させて巻いていく。
図9はターンガイド32で巻線が方向転換する様子を説明する図である。1層目の巻線13a−1が、図では省略してある巻枠の表面の溝に導かれて、紙面左上方から降りてくる。巻線13a−1はターンガイド32a−2の外側へ出てきて、ターンガイド32a−1の裏側へ廻り込み、32a−1に巻き付いて方向転換し、ターンガイド32a−2の外側を廻ってスペーサーの溝によって導かれ、巻線13a−1に隣接して巻線13a−1と逆方向に向かう巻線13a−2となって紙面左上方へ登っていく。
【0023】
巻枠の上端まで登り詰めた巻線13a−2は、新たに追加されたスペーサーの溝によって2層目に導かれ、再び下方に向かって降下し、巻枠の下端では、紙面右上方から巻線13b−1となって降りてくる。巻線13b−1はターンガイド32b−1の外側へ出てきて、ターンガイド32b−2の裏側へ廻り込み、32b−2に巻き付いて方向転換し、ターンガイド32b−2の外側を通ってスペーサーの溝によって導かれ、巻線13b−1に隣接して巻線13b−1と逆方向に向かう巻線13b−2となって紙面右上方へ登っていく。
このように巻線13は、2個のターンガード32を使用して方向転換をしながら電流方向の相反する2本の線が隣接して併走しながら、巻枠に巻かれていく。図のように巻枠の下部で巻線の方向が反転する際には、紙面右上方向から降下してくる巻線と、紙面左上から降下してくる巻線とが、交互に方向反転を繰り返すことになる。方向反転を繰り返して巻線層数が増す毎に、巻線の位置は巻枠中心から遠ざかってくるので、ターンガイドの位置も巻枠中心から遠ざかる螺旋状に配列してある。
【0024】
図10は巻線を施したターンガイド近傍の断面を示す図である。図10に示すように固定用円板31の上に台座33を介して巻枠11が固定されている。台座33の直径は巻枠11の直径よりも小さい。固定用円板31の表面上には、巻枠11表面の凸部11bとほぼ同じ位置になるようにターンガイド32が配置されている。あるいは巻線の層が形成されている場合には、凸部11bに代わってスペーサーの表面とほぼ同じ位置になるように、ターンガイド32が配置される。これらターンガイド32で方向転換した超電導巻線13は、図に示すように巻枠表面の溝もしくはスペーサーの溝に導かれて、一定間隔を保って相隣接して巻かれて行く。
【0025】
このような方法により巻線を繰り返し、各巻線の層間にはスペーサーを配置して各巻線の層間間隔を一定に保つとともに、往復の巻線も密に隣接させて巻線する。
このようにして無誘導巻線を構成することにより、各線間の間隔を一定に維持することができるので、冷媒との接触が良くなり、常電導状体から超電導状態への高速復帰が可能となる。また、簡単な方法で多層の無誘導巻線が可能となり、常電導状体での抵抗値を大きくとることも可能となる。さらに長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線を得ることも可能となる。
【0026】
本発明の永久電流スイッチは、上記の本発明の方法によって得られた無誘導巻線を使用したものであって、表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠に超電導線が無誘導巻きで一定間隔を保って巻線されており、かつ巻線層間に溝を有するスペーサーを介在させて層間間隔を一定に保って複層に積層して巻線された永久電流スイッチである。
本発明の永久電流スイッチにあっては、各線間の間隔を一定に維持することができるので、冷媒との接触が良くなり、また、簡単な方法で多層の無誘導巻線が可能となり、常電導状体での抵抗値を大きくとることも可能となる。さらに長尺の巻線を施してもインダクタンスの低い巻線が可能となるので、常電導状体から超電導状態への高速復帰が可能となる利点を有する。
【0027】
【発明の効果】
本発明によればスペーサーを挟み込んで巻線してあるので、冷媒との接触が良くなり、常電導状態から超電導状態への高速復帰が可能となる。また、多層無誘導巻き線用の複雑な巻枠を使用することなく、簡単な構造の巻枠で多層無誘導巻き線が得られるようになる。さらに多層無誘導巻き線が得られるようになったことで、常電導状態での抵抗値を高くすることが可能となり、長尺な巻線を施してもインダクタンスの低い巻線とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の永久電流スイッチを示す断面図である。
【図2】図1に示す永久電流スイッチの線A−A’に沿った断面図である。
【図3】スペーサーの縦断面を示す図である。
【図4】図3に示すスペーサーの線B−B’に沿った断面図である。
【図5】巻枠の表面を一部拡大して示す図である。
【図6】図5に示す巻枠の線C−C’に沿った断面図である。
【図7】本発明で使用する方向転換用治具の斜視図である。
【図8】本発明で使用する方向転換用治具の平面図である。
【図9】ターンガイドで巻線が方向転換する様子を説明する図である。
【図10】巻線を施したターンガイド近傍の断面を示す示す図である。
【図11】本発明に係わる永久電流スイッチを備えた超電導エネルギー貯蔵装置の一例を示す構成図である。
【図12】本発明の永久電流スイッチがオフ状態からオン状態になる場合の電流値の変化を示す図である。
【図13】超電導エネルギー貯蔵装置の一例に充電している状態を示す構成図である。
【図14】超電導エネルギー貯蔵装置の一例に電力を保存している状態を示す構成図である。
【図15】超電導エネルギー貯蔵装置の一例から電力を取り出している状態を示す構成図である。
【図16】従来の永久電流スイッチを示す断面図である。
【図17】超電導巻線の折り返し卯を示す平面図である。
【図18】図17に示す超電導巻線の線D−D’に沿った断面図である。
【符号の説明】
1,21・・・・・超電導コイル、2,10,22,40・・・・・永久電流スイッチ、11,41・・・・・巻枠、12・・・・・スペーサー、13,50・・・・・超電導巻線、10・・・・・永久電流スイッチ、25・・・・・交直変換器、26・・・・・制御磁界用超電導マグネット、27・・・・・定電流源、28・・・・・極低温領域、30・・・・・方向転換用治具、31・・・・・固定用円板、32・・・・・ターン用ガイド、54・・・・・折り返し部
Claims (6)
- 円筒状の巻枠に電流方向の相異なる超電導線を互いに隣接させて巻線してなる永久電流スイッチ用巻線であって、該超電導巻線は前記円筒状の巻枠表面に設けられた螺旋状の溝に支持されており、かつ溝を有するスペーサーを介して一定間隔を保って複層に積層して巻線してなることを特徴とする無誘導巻線。
- 前記巻枠は表面に縦縞状の凸部を有し、該凸部表面に螺旋状の溝を有していることを特徴とする請求項1に記載の無誘導巻線。
- 前記スペーサーは表裏両面に螺旋状に連なる溝を有していることを特徴とする請求項1に記載の無誘導巻線。
- 円板表面に螺旋状にターンガイドを配置した一対の方向転換用治具をターンガイドを対向させて配置し、該円板の中心に表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠を配置して挟持し、該巻枠の端から巻枠の溝に沿って超電導線を巻線し、巻枠の他端まで巻線したならば2個のターンガイドに超電導線を沿わせて巻線方向を反転させ、前記巻線に隣接して並行に巻線し、巻線が巻枠の元の端まで往復したならば、前記巻線の表面に両面に溝を有するスペーサーを配置した後該スペーサー表面の溝に沿って超電導線を巻線する操作を必要回数繰り返して巻線することを特徴とする無誘導巻線の形成方法。
- 表面に螺旋状の溝を有する円筒状の巻枠に超電導線が無誘導巻きで一定間隔を保って巻線されており、かつ巻線層間に溝を有するスペーサーを介在させて層間間隔を一定に保って複層に積層して巻線されてなることを特徴とする永久電流スイッチ。
- 請求項4に記載のターンガイドを用いたことを特徴とする無誘導巻線方向転換治具。
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