JP2004061476A - 新規蛍光キレート試薬と金属イオンの測定法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は励起光や散乱光による測定誤差を起こさないストークスシフトの大きい蛍光キレート試薬を提供することである。
【解決手段】キレート生成能を有する蛍光団とその蛍光団の発光スペクトルと重なる吸収スペクトルを有する蛍光団を同一分子内に持ち、スムーズな蛍光共鳴エネルギー移動を行わせることで、蛍光強度の増加と大きなストークスシフトが得られ、上記課題を解決した。
【選択図】
なし。
【解決手段】キレート生成能を有する蛍光団とその蛍光団の発光スペクトルと重なる吸収スペクトルを有する蛍光団を同一分子内に持ち、スムーズな蛍光共鳴エネルギー移動を行わせることで、蛍光強度の増加と大きなストークスシフトが得られ、上記課題を解決した。
【選択図】
なし。
Description
【0001】
【発明の属する分野】
本発明は、新規蛍光キレート試薬及びその試薬を用いる亜鉛イオンの定量法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体内には、生理活性物質の代謝や合成など生体機能の維持に関与している多数の金属が存在している。その中でも亜鉛は鉄に次いで含量の多い必須金属元素であり、細胞内のほとんどの亜鉛イオンは蛋白質と強固に結合し、蛋白質の構造保持や機能発現に関与している。また、亜鉛はアポトーシスとの関係やシナプス終盤より神経伝達物質などと共に放出されていることが報告されている。既存の酵素の補因子としての役割に加えて種々の役割を担っていると推測されており、生体内亜鉛イオンを正確に定量することは極めて重要な分析課題となっている。
【0003】
亜鉛イオンの定量法として、原子吸光光度法、ICP(inductively coupled plasma)法、蛍光キレート試薬による方法が報告されている。その中でも蛍光キレート試薬を用いる測定法は操作が簡便であり、また、生細胞中の亜鉛イオンの動的な解析が可能なため、非常に有効な測定法である。
【0004】
これまでに報告されている蛍光キレート試薬として、可視光励起型の蛍光団であるローダミンやフルオレセインが挙げられる。また、亜鉛イオンに対して優れた選択性を有する蛍光キレート試薬として、N−(6−メトキシ−8−キノリニル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド(TSQ)、ダンシルアミノエチルシクレン[T.Koike,T.Watanabe,S.Aoki,E.Kimura,M.Shiro,J.Am.Chem.Soc.,118,12696(1996)]や6−ヒドロキシ−9−[4−(4,7,10−トリメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)]フェニル−3H−キサンテン−3−オン(ACF)誘導体が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ローダミンやフルオレセインはストークスシフトが小さいため、励起光やその散乱光による測定誤差が生じやすい。また、亜鉛に特異的な蛍光キレート試薬であるTSQは脂溶性が高いため細胞膜等に吸着されやすく、測定誤差が生じやすい。ダンシルアミノエチルシクレンは測定時に試薬が存在する環境の違い、すなわち、溶媒の種類、あるいは細胞外、細胞内もしくは細胞膜などにおける水溶性、脂溶性などの環境の違いにより、蛍光量子収率と蛍光の色調が大きく変化するという欠点がある。[平塚寿章,蛋白質 核酸 酵素,42,1069(1997)]ACF誘導体は、亜鉛イオンと特異的に錯体を形成するが、pH10で測定するため、塩基性に耐性のある試料以外は測定できないという問題点を有している。[T.Hirano,K.Kikuchi,Y.Urano,T.Higuchi,T.Nagano,Angew.Chem.Int.Ed.,39,1052(2000)]
【0006】
上記のように、既存の蛍光キレート試薬は種々の問題点を有しており、特に生体系中の亜鉛イオンの定量においては到底満足できる結果を得ることができない。生体系においても使用できる亜鉛に特異的な蛍光キレート試薬が強く求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は鋭意研究を重ねた結果、下記構造式1
【0008】
【化5】
(Dはキレート生成能をもち、DおよびAは、それぞれ、蛍光を発することができ、SはDとAを連結するスペーサーを示す)で示され、金属イオンとキレートを生成した後のDの発光スペクトルとAの励起スペクトルが重なることを特徴とする新規蛍光物質を開発した。すなわち、1は励起された蛍光団D(ドナー分子)が発光現象を伴わず、その遷移エネルギーを近接した発光団A(アクセプター分子)に移動させ、アクセプター分子を発光させる蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescerce resonance energy transfer:FRET)現象を利用したもので、亜鉛とDが錯体を形成することで、よりスムーズな蛍光共鳴エネルギー移動が行える化合物である。このスムーズな蛍光共鳴エネルギー移動により、強い蛍光強度と大きなストークスシフトが得られ、精度よく亜鉛を定量することができる。
【0009】
本発明の代表的な例として下記構造式2で示されるDBD−ED−CNEDTAを取り上げ、その製造法を例示する。
【0010】
【化6】
【0011】
本発明の代表的な蛍光キレート試薬であるDBD−ED−CNEDTAは、N−(3−カルボキシ−2−ナフチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−トリ酢酸(CNEDTA)と4−(N,N−ジメチルアミノスルホニル)−7−(2−アミノエチルアミノ)−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(DBD−ED)から下記反応式3にしたがって合成することができる。
【0012】
【化7】
【0013】
CNEDTAとDBD−EDの反応における縮合剤としては、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などが挙げられ、使用される溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリルなどの有機溶媒、あるいはその混合溶媒が挙げられる。
【0014】
以上のように本発明の代表的な蛍光キレート試薬は、極めて容易な方法で合成することができる。以下に、上記化合物2の有用性を明らかにする。
【0015】
本発明の蛍光キレート試薬は、既知の蛍光キレート試薬と同様の手法で用いることが可能である。通常は、エタノール、アセトニトリルなどの有機溶媒、生理食塩水などの水性媒体、あるいはそれらの混合媒体などに2で示される新規蛍光物質を溶解し、この溶液を金属イオンを含む適切な緩衝液中に添加して蛍光スペクトルを測定すればよい。
【0016】
上記化合物2は高極性化合物であり、細胞膜や細胞の脂肪組織への試薬の吸着が小さく、細胞質へ均一に拡散するため、誤差の少ない亜鉛イオンの測定ができる。また、pH5から生理条件下において蛍光強度の変化が小さいため、生細胞中などの緩衝系が存在しない場合であっても蛍光が安定し、温和な条件下で測定を行うことができる。また、2と亜鉛は1:1のキレートを形成するため、蛍光強度の変化が直線的であり、定量性の良い測定ができる。さらに、紫外線241nm,337nmと可視光438nmの三点の励起波長が選択できる。
【0017】
また、上記化合物2のカルボキシル基をエステル化すると、膜透過性が向上する。そのため、スムーズに細胞膜を透過することができる。そして、細胞内のエステラーゼによってエステルが加水分解されて細胞内で2が生成し、亜鉛イオンと錯体を形成することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明に係る実施例を記載するが、これは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
【実施例1】
DBD−ED−CNEDTAの合成
【0020】
【化8】
【0021】
CNEDTA128mg(0.32mmol)にジメチルスルホキシド1mlを加え、EDC27mg(0.14mmol)のアセトニトリル溶液を加えてCNEDTAを活性化した。そこに、DBD−ED29.8mg(0.104mmol)のアセトニトリル溶液を加え、3時間縮合反応を行なった。反応終了後、アセトニトリルを留去し、塩酸酸性下、酢酸エチルで抽出し、有機層を集め酢酸エチルを留去した。残留物を溶離液、水:アセトニトリル=1:1とした逆相カラムクロマトグラフィーにより精製し、DBD−ED−CNEDTA橙色粉末結晶43.8mg(収率62%)を得た。
【0022】
得られたDBD−ED−CNEDTAの主な物性を以下に示す。
MS m/z:670[M−H]−
NMR(ppm)in CD3Cl3+CD3OD,8.845(1H,s,f),8.090(2H,m,a+e),7.918(2H,m,c+o),7.708(1H,t,d,J=6.5Hz),7.652(1H,t,c,J=8.5Hz),6.322(1H,d,o,J=7.5Hz),3.982(2H,s,g)
【0023】
【実施例2】
ABD−ED−CNEDTAの合成
【0024】
【化9】
【0025】
CNEDTA145mg(0.36mmol)にジメチルスルホキシド1mlを加え、EDC27mg(0.14mmol)のアセトニトリル溶液を加えてCNEDTAを活性化した。そこに、ABD−ED 31mg(0.12mmol)のアセトニトリル溶液を加え、3時間縮合反応を行なった。反応終了後、アセトニトリルを留去し、塩酸酸性下、酢酸エチルで抽出し、有機層を集め酢酸エチルを留去した。残留物を溶離液、水:アセトニトリル=1:1とした逆相カラムクロマトグラフィーにより精製し、ABD−ED−CNEDTA橙色粉末結晶11.15mg(収率14%)を得た。
【0026】
得られたABD−ED−CNEDTAの主な物性を以下に示す。
MS m/z:644[M+H]+
NMR(ppm)in CD3OD,8.761(1H,s,f),8.169(1H,s,a),8.034(1H,d,e,J=8.5Hz),7.959(1H,d,b,J=8.5Hz),7.899(1H,d,o,J=8.0Hz),7.671(1H,t,d,J=7.0Hz),7.612(1H,t,c,J=7.5Hz),6.332(1H,d,n,J=8.0Hz),4.121(2H,s,g),3.644(6H,m,h+i+m),2.869(2H,m,l)
【0027】
【実施例3】
亜鉛イオンの測定
亜鉛含有食品約280mgをとり、1M酢酸5mlを加え煮沸水浴中で30分加熱した。これを、SILICAFIBERで濾過し水を加えて全量50mlとした。この液2.5mlをとり、あらかじめ1M酢酸ナトリウムで置換し十分に水で洗浄したQMA Sep−Pakと、1M酢酸で洗浄した後、十分に水で酢酸を洗浄したSep−Pak−Plusとを直結したカラムにアプライし、水で洗い込み全量20mlとした。さらに、この液2mlを取り水を加えて全量10mlとし、試料溶液とした。
【0028】
100mM HEPES緩衝液は、HEPES11.9mgを秤量し、水を加えて全量500mlとし、1M水酸化ナトリウムを加え、pHメーターでpH7.5となるように調整した。調整した緩衝液200μlに試料溶液200μlを加え充分に混和した。これに、それぞれ1.0×10−5M ZnCl2溶液200μl、1.0×10−5M ZnCl2溶液400μl、2.5×105−MZnCl2溶液200μlを加えたものを調整した。ここに5.0×10−5M DBD−ED−CNEDTA溶液200μlを加え充分に混和した。つづいて、それぞれに、400,200,400μlの水とアセトニトリル800μlを加え充分に混和し、30分放置後、蛍光強度を測定した。比較対照液は、HEPES緩衝液200μlに5.0×10−5M DBD−ED−CNEDTA溶液200μlと水800μlとアセトニトリル800μlを加え充分に混和したものを用いた。
【0029】
励起波長241nm,蛍光波長552nmと励起波長438nm,蛍光波長556nmと励起波長337nm,蛍光波長557nmにおける蛍光強度変化をそれぞれ図1,2,3に示す。また、本法による測定結果とICPによるZnの測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明化合物は極めて容易に合成することができ、亜鉛イオンの蛍光キレート試薬として機能する。また、この蛍光キレート試薬はFRET現象を利用することで、蛍光強度の増加と大きなストークスシフトが得られ、精度よく亜鉛を定量できる。さらに、酸性から生理条件下における範囲で亜鉛イオンの測定が行える。そのため、一般的な亜鉛イオンの測定だけでなく生体系における亜鉛イオンの測定にも利用できる優れた蛍光キレート試薬である。
【図面の簡単な説明】
【図1】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長241nm、蛍光波長552nmでの蛍光強度を示した図である。
【図2】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長337nm、蛍光波長557nmでの蛍光強度を示した図である。
【図3】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長438nm、蛍光波長556nmでの蛍光強度を示した図である。
【発明の属する分野】
本発明は、新規蛍光キレート試薬及びその試薬を用いる亜鉛イオンの定量法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体内には、生理活性物質の代謝や合成など生体機能の維持に関与している多数の金属が存在している。その中でも亜鉛は鉄に次いで含量の多い必須金属元素であり、細胞内のほとんどの亜鉛イオンは蛋白質と強固に結合し、蛋白質の構造保持や機能発現に関与している。また、亜鉛はアポトーシスとの関係やシナプス終盤より神経伝達物質などと共に放出されていることが報告されている。既存の酵素の補因子としての役割に加えて種々の役割を担っていると推測されており、生体内亜鉛イオンを正確に定量することは極めて重要な分析課題となっている。
【0003】
亜鉛イオンの定量法として、原子吸光光度法、ICP(inductively coupled plasma)法、蛍光キレート試薬による方法が報告されている。その中でも蛍光キレート試薬を用いる測定法は操作が簡便であり、また、生細胞中の亜鉛イオンの動的な解析が可能なため、非常に有効な測定法である。
【0004】
これまでに報告されている蛍光キレート試薬として、可視光励起型の蛍光団であるローダミンやフルオレセインが挙げられる。また、亜鉛イオンに対して優れた選択性を有する蛍光キレート試薬として、N−(6−メトキシ−8−キノリニル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド(TSQ)、ダンシルアミノエチルシクレン[T.Koike,T.Watanabe,S.Aoki,E.Kimura,M.Shiro,J.Am.Chem.Soc.,118,12696(1996)]や6−ヒドロキシ−9−[4−(4,7,10−トリメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1−イル)]フェニル−3H−キサンテン−3−オン(ACF)誘導体が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ローダミンやフルオレセインはストークスシフトが小さいため、励起光やその散乱光による測定誤差が生じやすい。また、亜鉛に特異的な蛍光キレート試薬であるTSQは脂溶性が高いため細胞膜等に吸着されやすく、測定誤差が生じやすい。ダンシルアミノエチルシクレンは測定時に試薬が存在する環境の違い、すなわち、溶媒の種類、あるいは細胞外、細胞内もしくは細胞膜などにおける水溶性、脂溶性などの環境の違いにより、蛍光量子収率と蛍光の色調が大きく変化するという欠点がある。[平塚寿章,蛋白質 核酸 酵素,42,1069(1997)]ACF誘導体は、亜鉛イオンと特異的に錯体を形成するが、pH10で測定するため、塩基性に耐性のある試料以外は測定できないという問題点を有している。[T.Hirano,K.Kikuchi,Y.Urano,T.Higuchi,T.Nagano,Angew.Chem.Int.Ed.,39,1052(2000)]
【0006】
上記のように、既存の蛍光キレート試薬は種々の問題点を有しており、特に生体系中の亜鉛イオンの定量においては到底満足できる結果を得ることができない。生体系においても使用できる亜鉛に特異的な蛍光キレート試薬が強く求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は鋭意研究を重ねた結果、下記構造式1
【0008】
【化5】
(Dはキレート生成能をもち、DおよびAは、それぞれ、蛍光を発することができ、SはDとAを連結するスペーサーを示す)で示され、金属イオンとキレートを生成した後のDの発光スペクトルとAの励起スペクトルが重なることを特徴とする新規蛍光物質を開発した。すなわち、1は励起された蛍光団D(ドナー分子)が発光現象を伴わず、その遷移エネルギーを近接した発光団A(アクセプター分子)に移動させ、アクセプター分子を発光させる蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescerce resonance energy transfer:FRET)現象を利用したもので、亜鉛とDが錯体を形成することで、よりスムーズな蛍光共鳴エネルギー移動が行える化合物である。このスムーズな蛍光共鳴エネルギー移動により、強い蛍光強度と大きなストークスシフトが得られ、精度よく亜鉛を定量することができる。
【0009】
本発明の代表的な例として下記構造式2で示されるDBD−ED−CNEDTAを取り上げ、その製造法を例示する。
【0010】
【化6】
【0011】
本発明の代表的な蛍光キレート試薬であるDBD−ED−CNEDTAは、N−(3−カルボキシ−2−ナフチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−トリ酢酸(CNEDTA)と4−(N,N−ジメチルアミノスルホニル)−7−(2−アミノエチルアミノ)−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール(DBD−ED)から下記反応式3にしたがって合成することができる。
【0012】
【化7】
【0013】
CNEDTAとDBD−EDの反応における縮合剤としては、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などが挙げられ、使用される溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリルなどの有機溶媒、あるいはその混合溶媒が挙げられる。
【0014】
以上のように本発明の代表的な蛍光キレート試薬は、極めて容易な方法で合成することができる。以下に、上記化合物2の有用性を明らかにする。
【0015】
本発明の蛍光キレート試薬は、既知の蛍光キレート試薬と同様の手法で用いることが可能である。通常は、エタノール、アセトニトリルなどの有機溶媒、生理食塩水などの水性媒体、あるいはそれらの混合媒体などに2で示される新規蛍光物質を溶解し、この溶液を金属イオンを含む適切な緩衝液中に添加して蛍光スペクトルを測定すればよい。
【0016】
上記化合物2は高極性化合物であり、細胞膜や細胞の脂肪組織への試薬の吸着が小さく、細胞質へ均一に拡散するため、誤差の少ない亜鉛イオンの測定ができる。また、pH5から生理条件下において蛍光強度の変化が小さいため、生細胞中などの緩衝系が存在しない場合であっても蛍光が安定し、温和な条件下で測定を行うことができる。また、2と亜鉛は1:1のキレートを形成するため、蛍光強度の変化が直線的であり、定量性の良い測定ができる。さらに、紫外線241nm,337nmと可視光438nmの三点の励起波長が選択できる。
【0017】
また、上記化合物2のカルボキシル基をエステル化すると、膜透過性が向上する。そのため、スムーズに細胞膜を透過することができる。そして、細胞内のエステラーゼによってエステルが加水分解されて細胞内で2が生成し、亜鉛イオンと錯体を形成することができる。
【0018】
【実施例】
以下に本発明に係る実施例を記載するが、これは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
【実施例1】
DBD−ED−CNEDTAの合成
【0020】
【化8】
【0021】
CNEDTA128mg(0.32mmol)にジメチルスルホキシド1mlを加え、EDC27mg(0.14mmol)のアセトニトリル溶液を加えてCNEDTAを活性化した。そこに、DBD−ED29.8mg(0.104mmol)のアセトニトリル溶液を加え、3時間縮合反応を行なった。反応終了後、アセトニトリルを留去し、塩酸酸性下、酢酸エチルで抽出し、有機層を集め酢酸エチルを留去した。残留物を溶離液、水:アセトニトリル=1:1とした逆相カラムクロマトグラフィーにより精製し、DBD−ED−CNEDTA橙色粉末結晶43.8mg(収率62%)を得た。
【0022】
得られたDBD−ED−CNEDTAの主な物性を以下に示す。
MS m/z:670[M−H]−
NMR(ppm)in CD3Cl3+CD3OD,8.845(1H,s,f),8.090(2H,m,a+e),7.918(2H,m,c+o),7.708(1H,t,d,J=6.5Hz),7.652(1H,t,c,J=8.5Hz),6.322(1H,d,o,J=7.5Hz),3.982(2H,s,g)
【0023】
【実施例2】
ABD−ED−CNEDTAの合成
【0024】
【化9】
【0025】
CNEDTA145mg(0.36mmol)にジメチルスルホキシド1mlを加え、EDC27mg(0.14mmol)のアセトニトリル溶液を加えてCNEDTAを活性化した。そこに、ABD−ED 31mg(0.12mmol)のアセトニトリル溶液を加え、3時間縮合反応を行なった。反応終了後、アセトニトリルを留去し、塩酸酸性下、酢酸エチルで抽出し、有機層を集め酢酸エチルを留去した。残留物を溶離液、水:アセトニトリル=1:1とした逆相カラムクロマトグラフィーにより精製し、ABD−ED−CNEDTA橙色粉末結晶11.15mg(収率14%)を得た。
【0026】
得られたABD−ED−CNEDTAの主な物性を以下に示す。
MS m/z:644[M+H]+
NMR(ppm)in CD3OD,8.761(1H,s,f),8.169(1H,s,a),8.034(1H,d,e,J=8.5Hz),7.959(1H,d,b,J=8.5Hz),7.899(1H,d,o,J=8.0Hz),7.671(1H,t,d,J=7.0Hz),7.612(1H,t,c,J=7.5Hz),6.332(1H,d,n,J=8.0Hz),4.121(2H,s,g),3.644(6H,m,h+i+m),2.869(2H,m,l)
【0027】
【実施例3】
亜鉛イオンの測定
亜鉛含有食品約280mgをとり、1M酢酸5mlを加え煮沸水浴中で30分加熱した。これを、SILICAFIBERで濾過し水を加えて全量50mlとした。この液2.5mlをとり、あらかじめ1M酢酸ナトリウムで置換し十分に水で洗浄したQMA Sep−Pakと、1M酢酸で洗浄した後、十分に水で酢酸を洗浄したSep−Pak−Plusとを直結したカラムにアプライし、水で洗い込み全量20mlとした。さらに、この液2mlを取り水を加えて全量10mlとし、試料溶液とした。
【0028】
100mM HEPES緩衝液は、HEPES11.9mgを秤量し、水を加えて全量500mlとし、1M水酸化ナトリウムを加え、pHメーターでpH7.5となるように調整した。調整した緩衝液200μlに試料溶液200μlを加え充分に混和した。これに、それぞれ1.0×10−5M ZnCl2溶液200μl、1.0×10−5M ZnCl2溶液400μl、2.5×105−MZnCl2溶液200μlを加えたものを調整した。ここに5.0×10−5M DBD−ED−CNEDTA溶液200μlを加え充分に混和した。つづいて、それぞれに、400,200,400μlの水とアセトニトリル800μlを加え充分に混和し、30分放置後、蛍光強度を測定した。比較対照液は、HEPES緩衝液200μlに5.0×10−5M DBD−ED−CNEDTA溶液200μlと水800μlとアセトニトリル800μlを加え充分に混和したものを用いた。
【0029】
励起波長241nm,蛍光波長552nmと励起波長438nm,蛍光波長556nmと励起波長337nm,蛍光波長557nmにおける蛍光強度変化をそれぞれ図1,2,3に示す。また、本法による測定結果とICPによるZnの測定結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明化合物は極めて容易に合成することができ、亜鉛イオンの蛍光キレート試薬として機能する。また、この蛍光キレート試薬はFRET現象を利用することで、蛍光強度の増加と大きなストークスシフトが得られ、精度よく亜鉛を定量できる。さらに、酸性から生理条件下における範囲で亜鉛イオンの測定が行える。そのため、一般的な亜鉛イオンの測定だけでなく生体系における亜鉛イオンの測定にも利用できる優れた蛍光キレート試薬である。
【図面の簡単な説明】
【図1】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長241nm、蛍光波長552nmでの蛍光強度を示した図である。
【図2】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長337nm、蛍光波長557nmでの蛍光強度を示した図である。
【図3】DBD−ED−CNEDTAと様々な濃度の亜鉛イオンにおける励起波長438nm、蛍光波長556nmでの蛍光強度を示した図である。
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JP2002252010A JP2004061476A (ja) | 2002-07-29 | 2002-07-29 | 新規蛍光キレート試薬と金属イオンの測定法 |
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WO2009013360A1 (fr) * | 2007-07-26 | 2009-01-29 | Pierre Fabre Medicament | Nouveaux dérivés fluorescents de polyamines, leur procédé de préparation et leurs applications en tant qu'outils de diagnostic dans le traitement des tumeurs cancéreuses. |
JP2009168450A (ja) * | 2007-12-29 | 2009-07-30 | Shino Test Corp | 試料中の金属の測定方法 |
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2002
- 2002-07-29 JP JP2002252010A patent/JP2004061476A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2009013360A1 (fr) * | 2007-07-26 | 2009-01-29 | Pierre Fabre Medicament | Nouveaux dérivés fluorescents de polyamines, leur procédé de préparation et leurs applications en tant qu'outils de diagnostic dans le traitement des tumeurs cancéreuses. |
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