JP2004061288A - 膀胱癌の検査判定方法 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明によれば、患者の尿から、高い確率で膀胱癌の診断ができると同時に、その深達度及び異型度を従来の病理学的、臨床的診断とほぼ一致する成績で検査判定できる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の尿を用いて、膀胱癌の深達度及び異型度を簡易に検査判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体内の微量タンパク質の検出は、主にその物質固有の抗原性を利用した免疫学的測定法やそのタンパク質の持つ特定機能を利用した酵素活性の測定などにより行われてきた。ところが、生体内のタンパク質は疾病により様々な修飾を受け、免疫学的な抗原性を失ったり機能を失ったりすることがあるため、これまでの検査法では、必ずしも目的タンパク質を正確に測定することはできなかった。特に癌のように組織変性を伴う疾患においては、特定タンパク質が種々の生化学的変異体を取り得ることが知られており(Nippon Hinyokika Gakkai Zasshi1995,9, 1429−1434)、このような変異体の存在については、たとえもとのタンパク質と同様に検出されることがあったにしても、正常体と変異体の区別をすることは困難であった。
【0003】
また、疾病の発症、進行、治癒の過程では、それぞれの段階で多くのタンパク質が複雑に連携しつつ関与しており、さらに、同じ病名、病態であっても、その原因、経緯、治療履歴等が異なれば、関わるタンパク質が異なる場合もある。従って、数種類のタンパク質を個別に定量して疾病診断の判断材料とする従来の診断法では、個々の患者に則した精確な病態判定は期待できなかった。例えば、CEAあるいはCA19−9等は汎用されている腫瘍マーカーではあるが、その正診率20〜50%と低く、決して満足できるものではない。この原因はこれらの腫瘍マーカーが癌の一局面を反映しているにすぎないためと考えられている。
【0004】
このため、臨床現場においては、より精確で且つ迅速に病態を把握できる検査法が望まれているところであり、また治療においても、投薬等による治療効果を早い段階で知ることができれば、その後の治療戦略を立てる上で非常に価値ある情報となる。特に治療期間が長期になり、或いは治療戦略の決定が治療成績に大きく影響するような疾病、例えば癌治療では特に望まれている。
【0005】
一方、膀胱癌は、癌の進行具合によって、膀胱粘膜内に癌が留まっている表在性膀胱癌と膀胱の筋肉や膀胱外にまで癌が根を張るように発育した浸潤性膀胱癌の二種類に分類され、時間の経過によって表在性膀胱癌から浸潤性膀胱癌へと進行する。そして、その治療は外科的切除手術が一般的で、化学療法、放射線療法が併用される場合もある。表在性膀胱癌の場合は経尿道的切除術による治療が施されることが多く、一般的に患者への負担は比較的軽いが、浸潤性膀胱癌の場合は膀胱全摘出或いは、部分切除と言った治療を必要とすることが多くなり、当然患者への負担も大きくなる。従って、膀胱癌の深達度判定は治療戦略を立てる上で非常に大きな意義を持つ。また、膀胱癌の特徴として再発率の高いことが挙げられ、術後は定期的な経過観察を行う必要がある。
【0006】
現在、膀胱癌は深達度と異型度という病理学的検査結果を中心として、その治療方針の決定や予後の判定が行われている(TNM臨床分類)。深達度は程度によって、Ta(表在粘膜を越えず非浸潤で乳頭状に発育するもの)とT1(粘膜下層に浸潤がある)、Tis(上皮内癌:粘膜内に存在する平らな腫瘍)、T2(筋層浸潤があるもの)、T3(膀胱外の脂肪組織に浸潤があるもの)、T4(膀胱外の臓器に浸潤する)に分類され、Ta、T1、Tisは表在性、T2以上を浸潤性膀胱癌とされる。浸潤の程度がひどくなればなるほど、リンパ節転移や他臓器への転移の頻度は上昇し予後も悪くなる。
【0007】
また、異型度は癌細胞自体の悪性度を示す指標であり、細胞異型、構造異型の観点からG0(異型性を示さない)、G1(軽度異型)、G2(中等度異型)、G3(高度異型)の4段階に分類される。異型度は予後を推測する上で重要であり、特にG3の予後は不良である場合が多い。このように、単に膀胱癌といってもその性質はさまざまであり、深達度、異型度を中心とした個々の患者の臨床的背景から総合的に治療方針の決定や、予後判定がなされている。
【0008】
現在、当該深達度と異型度は、手術時に採取された病理組織の検査によって正確に判定され、病理組織検査では深達度のみならず腫瘍細胞の悪性度に関して信頼性の高い結果が得られるが、病変部のごく一部しか観察していないため、全体像を把握するのは困難であるうえ、前述のごとく、病理組織の採取は患者にとって大きな苦痛を伴う。また、手術前には超音波検査やCTスキャンなどの方法によって深達度を判定する方法も行われているが、これには大掛りな検査機器を必要とし患者への負担も大きい。
【0009】
従って、尿を用いて膀胱癌の深達度を検査判定できる方法が開発できれば、膀胱癌治療に貢献できるばかりではなく、患者の苦痛や負担を軽減することが可能になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、二次元電気泳動を用いて、患者尿から膀胱癌の深達度及び異型度を簡易に検査判定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、二次元電気泳動法を用いて組織、臓器、臨床サンプル等に含まれるタンパク質を網羅的に解析することが可能なプロテオーム解析法(Electrophoresis 1999, 20, 2100−2110)に着目し、これを利用して、膀胱癌患者の尿中に放出されるタンパク質を分析したところ、膀胱癌特異的なタンパク質として知られているフィブロネクチンやこれを基質とする酵素マトリックスメタロプロテアーゼが修飾及び断片化されて等電点(pI)と分子量(MW)によって決まる二次元電気泳動座標上の特定領域に発現し、その発現パターン及び発現強度が膀胱癌の深達度及び異型度と密接に相関すること及び当該発現パターン及び発現強度を用いることにより膀胱癌の深達度及び異型度が正確に検査判定できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、患者から採取した検体尿を、等電点(pI)及び分子量(MW)に基づいて分離する二次元電気泳動に付し、A群(pI:約5.28〜5.38、MW:約70kDa)、B群(pI:約4.30〜5.35、MW:約70〜110kDa)、C群(pI:約4.50〜6.20、MW:約230kDa)、D群(pI:約5.20〜5.35、MW:約150kDa)及びE群(pI:約6.25〜6.50、MW:約60kDa)における泳動パターン及びスポット強度を測定することを特徴とする膀胱癌の深達度及び異型度の検査判定方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の検査判定方法に用いられる検体尿は、患者から採取した尿を、予め脱塩し、少なくともアルブミン及びグロブリン等の夾雑タンパク質を除去したものを用いるのが好ましい。尿中にはアルブミンやグロブリンが多く存在し、二次元電気泳動上では大きな影として現れるため、判定に必要なタンパク質スポットが覆い隠されてしまう可能性があることから、これらを予め除去しておくことが好ましい。
【0013】
脱塩は、生化学分野で通常行われる脱塩操作を用いればよく、例えば、透析あるいはゲル濾過、限外ろ過膜、電気的溶出等による方法を行えばよい。
夾雑タンパク質を除去する方法としては、例えば本発明おいて検出すべきタンパク質群を特異的に吸着し、アルブミン及びグロブリン等の夾雑タンパク質とは結合しないアフィニティー担体を用いたクロマトグラフィーが挙げられる。この方法によれば、夾雑タンパク質を除去すると同時に、目的タンパク質の濃縮も行えるため、微量タンパク質の検出も可能となり好ましい。斯かる特異的アフィニティー担体としては、ゼラチンビーズ、ヘパリンビーズ、チバクロンブルービーズ、レッドセファロースビーズ、ベンザミジンビーズ等が挙げられ、中でも検出感度を上げる点からフィブロネクチンやこれを基質とする酵素マトリックスメタロプロテアーゼを特異的に吸着するゼラチンビーズを用いるのが好ましい。
また、抗アルブミン抗体とプロテインAを固定化させたアフィニティーカラムでアルブミンやグロブリンを同時に除去することでもよい。
また、イオン交換樹脂、ゲル濾過、疎水性親和力による分離担体やヒドロキシアパタイト担体を用いたクロマトグラフィーにより、検出目的タンパク質とその他の夾雑タンパク質を分離するような処理を行うこと、或いは抗体アフィニティーカラムを用いて質的変化を受けた一群の抗原タンパク質を濃縮する方法でもよい。
【0014】
本発明の検査判定方法には、第一次元目を等電点(pI)、第二次元目を分子量(MW)に基づいて分離する二次元電気泳動が用いられ、これにより検体尿中に含まれる個々のタンパク質は、等電点(pI)と分子量(MW)によって分離する。次いで、平面ゲル上に展開されたタンパク質を、CBB、サイプロルビー、銀染色法等によりスポットとして可視化することによって検出し(Electrophoresis 2000, 21, 1037−1053)、膀胱癌に特異的なタンパク質(群)の位置を平面ゲル上の座標で特定する。座標軸は、サンプルに添加したマーカータンパク質、あるいは健常群、疾患群に共通して再現性良く検出されるスポットを基準として設定すればよく、また基準スポットを利用して位置補正を行うことにより、個々の二次元電気泳動像の直接比較が可能になる。
【0015】
電気泳動の条件は、特に限定されるものではなく、プロテオーム解析法に用いられる一般的な条件を用いればよいが、第一次元目の等電点(pI)による分離は、例えばpI4〜7の範囲で等電点勾配を固定化したポリアクリルアミドゲルを用いて、両性電解質と尿素、還元剤としてDTTやメルカプトエタノールを添加したバッファーをサンプルと混合して、変性、還元条件下での等電点電気泳動を行えばよく、第二次元目の分子量(MW)による分離については、例えばアクリルアミドモノマー濃度勾配を8〜18%の範囲でつけた平板ポリアクリルアミドゲルを用いて、SDS−PAGE法を行えばよい。
【0016】
なお、本発明においては、疾患に特異的なタンパク質(群)の位置を二次元電気泳動上の座標で特定できればよく、必ずしもタンパク質を同定する必要はないが、質量分析装置等を用いてアミノ酸配列を決定するか、あるいはペプチドマスフィンガープリント法を用いればタンパク質の同定も可能である(Electrophoresis 2000, 21, 1145−1154)。
【0017】
タンパク質スポットの量的な判定は、染色強度をデンシトメトリーの値として読みこみ、数値化することによって行えばよい。また、サンプル間の染色強度のバラツキは標準マーカースポットとの比をとることで補正できる。ここで、膀胱癌に関わるタンパク質の重要度を勘案してファクターを設定してもよい。すなわち、得られた数値にファクターを乗じることによって差別化を強調し、判定を容易にすることができる。
【0018】
斯かる条件の下、軽度浸潤膀胱癌患者、中等度浸潤膀胱癌患者、高度浸潤膀胱癌患者及び健常人から採取した尿を二次元電気泳動に展開し、その染色パターンを比較すると、膀胱癌患者では健常人検体ではスポットが確認できない領域(A群(pI:約5.28〜5.38、MW:約70kDa)、B群(pI:約4.30〜5.35、MW:約70〜110kDa)、C群(pI:約4.50〜6.20、MW:約230kDa)、D群(pI:約5.20〜5.35、MW:約150kDa)及びE群(pI:約6.25〜6.50、MW:約60kDa))に、膀胱癌の深達度に相関して変動するスポット群が見いだされる(図1〜図4)。
尚、pI及びMWにおける「約」は、pIについては±0.02の範囲で誤差を含み、MWについてはA群は±5kDa、B群は±5kDa、C群は±30kDa、D群は±10kDa、E群は±5kDaの誤差範囲を含むことを示す。
【0019】
すなわち、(1)深達度T1の軽度浸潤膀胱癌においては、1)A群にスポットが観測され(強度和は500以下)、2)B群にスポットが観測されないか又は観測されたスポットが一列であり(強度和は300以下)、且つ3)C、D、E群の少なくとも2群でスポットが観測されない、(2)深達度T2の中等度浸潤膀胱癌においては、1)A群にスポットが観測され(強度和は1500以下)、2)B群に観測されるスポット群が一列または二列であり(強度和は3000以下)、且つ3)C、D、E群のいずれかにスポットが観測される(強度和は2000以下)、(3)深達度T3の高度浸潤膀胱癌においては、1)A〜E群全ての群で(強い)スポットが観測され、且つ2)B群に観測されるスポット群が三列である、という特徴があり、また(4)細胞異型度G3の膀胱癌では、A群強度和/A群強度和+B群強度和が0.1以下であるという特徴がある。
【0020】
従って、上記A〜E群の5つの領域における泳動パターン及びスポット強度を測定することにより、以下のように膀胱癌の深達度及び異型度が判定できる。尚、判定にあたっては、ステップを順番に進めて行き、判定された段階でその先には進まないものとする。
【0021】
(1)第1ステップ
下記▲1▼〜▲3▼の全てを満たす場合は深達度T1(粘膜下層に浸潤がある)と判定する。
▲1▼A群にスポットが観測されること(強度和は500以下)。
▲2▼B群にスポットが観測されないか、または観測されたスポットが一列であること(強度和は300以下)。
▲3▼CDE群の少なくとも2群でスポットが観測されないこと。
(2)第2ステップ
上記▲1▼〜▲3▼のいずれかが該当せず、下記▲4▼〜▲6▼の少なくとも2つを満たす場合は深達度T2(筋層浸潤があるもの)と判定する。
▲4▼A群にスポットが観測されること(強度和は1500以下)。
▲5▼B群に観測されるスポット群が一列または二列であること(強度和は3000以下)。
▲6▼CDE群のいずれかにスポットが観測されること(強度和は2000以下)。
(3)第3ステップ
下記▲7▼及び▲8▼を満たす場合は深達度T3(膀胱外の脂肪組織に浸潤があるもの)と判定する。
▲7▼全ての群で(強い)スポットが観測されること。
▲8▼B群に観測されるスポット群が三列であること。
(4)第4ステップ
第1ステップ〜第3ステップの判定に関わらず、A群強度和/A群強度和+B群強度和が0.1以下の場合、細胞異型度G3(高度異型)であり、異型度は高いと判定する。
【0022】
なお、A〜E群に含まれるタンパク質をMALDI−TOF MSによるペプチドフィンガープリント法により同定したところ、A群はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP−2)、B群はMMP−9、C〜E群は基底膜成分の中に含まれるフィブロネクチンがいずれも翻訳後修飾を受け、かつ断片化したものであった。MMPは癌細胞の浸潤、転移過程において中心的役割を果たすことが知られており、基底膜の主成分であるIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックスを破壊する酵素である(Clinical Cancer Research2000, 6, 2333−2340)。また、フィブロネクチンは基底膜成分として癌の浸潤に伴って分解され、それらが尿中にも放出される(Clinical chemistry 1991, 37, 466−471)。またフィブロネクチンは血液中にも比較的多量に存在することから、膀胱癌の主要な症状である血尿に伴って、血液にも由来していると考えられる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する
(1)尿検体の前処理
膀胱腫瘍患者尿(3〜10mgクレアチニン相当量)及び健常人尿(10mgクレアチニン相当量)を50mM NaClを含む50mM Tris−HClバッファー、pH7.8により(3回)透析し脱塩する。続いて、この尿検体に同バッファーにて平衡化したゼラチンセファロースCL−4Bビーズ(ファルマシア社)をベッドボリュームで100μl加え、4℃で2時間反応させた後、ビーズを同バッファーで洗浄液の紫外部吸収(280nm)がベースラインに達するまで洗浄した。その後、このビーズに5Murea,2Mthiourea,1%DTT,2%CHAPS,2%SB3−10,2%ampholineを含むバッファー(以下lysis buffer)350μlを加えビーズに吸着したタンパク質を溶出した。
【0024】
(2)二次元電気泳動
上記溶出液は等電点電気泳動用ゲルに吸収させた後、一次元目に等電点電気泳動、二次元目にSDS−PAGEを行い、銀染色によりスポットを可視化した。等電点電気泳動のゲルはファルマシア社製ドライストリップの等電点範囲pI4〜7で長さ18cmのものを用いた。等電点方向の座標の指標とするために、pIマーカーとして第一化学薬品社製の2D−タンパク質等電点マーカー「第一」を用い、一定量を検体と混合して同時に泳動した。
【0025】
二次元目のSDS−PAGEは8〜18%のアクリルアミド濃度勾配をつけた、縦17cm、横21cm、厚さ1mmのポリアクリルアミドゲルを用いた。分子量マーカーにはシルバーステインブロードレンジマーカー(バイオラッド社)を用い、検体中のタンパク質の泳動に影響を与えない泳動ゲルの端部分を利用して、検体と同時に泳動した。
【0026】
(3)タンパク質スポットの座標表示と定量
各タンパク質スポットの位置は、pIマーカー及び分子量マーカーを基準として設定した座標で表記できる。各スポット群の定量値は、デンシトメトリーの値をもとに、ゲルイメージをコンピューター画像に変換し、メラニー3ソフトウエア(バイオラッド社)で画像のバックグラウンド差し引いた後、計算させた値をもとにした。さらにこの値は染色強度補正、クレアチニン補正して、検体間でのスポット強度比較に用いた。染色強度の補正には、一定量添加して泳動しているpIマーカーのスポット強度を基準に用いた。クレアチニン補正は、特定の尿中物質の濃度を一定量のクレアチニンあたりの量としてあらわすことで、尿検体間の濃淡差を補正する方法である。本実施例では、各スポット群の強度をクレアチニン10mgあたりに換算した値を用いた。
【0027】
(4)判定
高度浸潤患者尿(T3)、中等度浸潤患者(T2)、軽度浸潤患者尿(T1)、健常人検体をゼラチンビーズ処理し、二次元電気泳動にかけた。それぞれの標準的な二次元電気泳動像を図1〜図4に示す。図に示すようにA群からE群の領域に各々の病態に特徴的なパターンの表れることが観測された。なお、健常人検体では、この領域にスポットは確認できない。
【0028】
表1〜4に、TNM臨床分類に従って分けた病態毎に、病理学的に判定された腫瘍細胞の異型度、クレアチニン10mgあたりに換算したA〜E群のスポット強度の総和、B群に観測されるスポット列の段数、A群強度和/A群強度和+B群強度和、本発明の方法による判定結果と異型度を示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
この結果、本実施例の10例の健常人では、A〜E群のタンパク質は検出されなかった。表在性膀胱癌患者では、10例中8例は本発明の検査判定法で陽性となった。
【0034】
浸潤性膀胱癌では、6例中6例が本発明の方法で陽性となり、4例は本発明の方法と病理学的、臨床的診断による深達度、異型度は一致した。患者11と15については、患者11では異型度がG3、患者15では深達度がT2と判定され、病理学的、臨床的にはそれぞれG2、T3と判定され乖離していたが、深達度及び異型度が2以上の判定値を超えて乖離することはなかった。その他はすべて本発明の方法と一致した。
【0035】
これらより、本発明の方法は、高い確率で膀胱癌の診断ができることのみならず、深達度と異型度の高い腫瘍を、従来の病理学的、臨床的診断とほぼ一致する成績で、尿から検査判定できる方法であることが確認された。
【0036】
(5)タンパク質の同定
タンパク質の同定は、目的スポットを切り出し、トリプシンによるゲル内消化を行い、そのペプチド断片の質量数をMALDI−TOF MSで測定する、ペプチドマスフィンガープリント法で行った。その結果、A群はMMP−2、B群はMMP−9、C群はフィブロネクチン(230kDa)、D群はフィブロネクチン断片(150kDa)、E群はフィブロネクチン断片(60kDa)と同定された。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、患者の尿から、高い確率で膀胱癌の診断ができると同時に、その深達度及び異型度を従来の病理学的、臨床的診断とほぼ一致する成績で検査判定できる。すなわち本発明の検査判定方法によれば、腫瘍が筋層にまで浸潤した浸潤性膀胱癌(T2以上)と、筋層にまで達していない段階(T1)の表在性膀胱癌の区別を簡便かつ明確に検査判定できる。前者の予後は後者に比べて不良であるため、浸潤性か表在性かの診断が治療法の選択に関わる最重要因子となっているが、本発明の検査判定方法によれば、斯かる治療法の選択を非侵襲的に且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】膀胱癌患者尿(深達度:T3)の二次元電気泳動パターンを示す図である。
【図2】膀胱癌患者尿(深達度:T2)の二次元電気泳動パターンを示す図である。
【図3】膀胱癌患者尿(深達度:T1)の二次元電気泳動パターンを示す図である。
【図4】健常人尿の二次元電気泳動パターンを示す図である。
Claims (2)
- 患者から採取した検体尿を、等電点(pI)及び分子量(MW)に基づいて分離する二次元電気泳動に付し、A群(pI:約5.28〜5.38、MW:約70kDa)、B群(pI:約4.30〜5.35、MW:約70〜110kDa)、C群(pI:約4.50〜6.20、MW:約230kDa)、D群(pI:約5.20〜5.35、MW:約150kDa)及びE群(pI:約6.25〜6.50、MW:約60kDa)における泳動パターン及びスポット強度を測定することを特徴とする膀胱癌の深達度及び異型度の検査判定方法。
- 少なくもアルブミン及びグロブリンを除去した後、二次元電気泳動に付すものである請求項1記載の検査判定方法。
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