JP2004060044A - アルミニウムの表面処理法およびアルミニウム材 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルミニウム表面の陽極酸化処理および封孔処理において、耐食性、耐熱性、および耐摩擦性に優れたアルミニウムの表面処理法およびアルミニウム材を提供する。
【解決手段】電解液が硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸などの電解浴、あるいはこれらの電解液に金属の水和あるいは水和酸化物を含む電解浴でアルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、さらに金属の水和物あるいは水和酸化物を主成分とする溶液中で封孔処理をすることによって、アルミニウム表面に形成されたアルミニウム酸化物層中の孔と酸化物層の表面に、金属の水和物あるいは水和酸化物を主成分とした化合物あるいは前記化合物に金属を含む化合物を吸着、析出あるいはアルミニウム酸化物とが混在した封孔処理をすることを特徴とするアルミニウムの表面処理法およびアルミニウム材。
【選択図】なし
【解決手段】電解液が硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸などの電解浴、あるいはこれらの電解液に金属の水和あるいは水和酸化物を含む電解浴でアルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、さらに金属の水和物あるいは水和酸化物を主成分とする溶液中で封孔処理をすることによって、アルミニウム表面に形成されたアルミニウム酸化物層中の孔と酸化物層の表面に、金属の水和物あるいは水和酸化物を主成分とした化合物あるいは前記化合物に金属を含む化合物を吸着、析出あるいはアルミニウム酸化物とが混在した封孔処理をすることを特徴とするアルミニウムの表面処理法およびアルミニウム材。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアルミニウムの陽極酸化処理および陽極酸化後の封孔処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムは種々の用途に適用できるように、耐食性、耐熱性や耐摩耗性などの特性が、陽極酸化法による表面処理によって改善されている。しかし、この方法のみでは、耐食性が十分でなく、陽極酸化処理後、封孔処理が施されている。
【0003】
陽極酸化処理には大別して、酸性浴、アルカリ性浴、非水浴がある。酸性浴には硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸などが、アルカリ性浴にはアンモニア−フッ化物、アルカリ−過酸化物、リン酸ナトリウムなどが、非水浴には硼酸−ホルムアミド、硫酸系化合物の溶融塩などが適用されている。
【0004】
封孔処理には蒸気法、純水沸騰水法、酢酸−ニッケル法、重クロム酸法、珪酸ナトリウム法がある。
【0005】
しかし、アルミニウムの耐食性、耐熱性、耐摩耗性、表面硬度、加工性などの特性を満足させるためには、一般に、種々の煩雑な陽極酸化法と種々の封孔処理の組み合わせによる表面処理が施され、作業性を著しく妨げ、また特性も満足できるものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の欠点を解消し、作業性に優れ、また、表面特性、特に耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れた陽極酸化皮膜層にクラックのないアルミニウムの表面処理法及びアルミニウム材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、公知の酸性浴あるいは公知の酸性浴に金属の水和物あるいは水和酸化物(以下、金属酸化物のゾルと表記)を含む電解浴中で陽極酸化処理を施し、アルミニウムの表層に陽極酸化皮膜を形成し、さらに陽極酸化皮膜中に封孔処理によって、▲1▼陽極酸化皮膜中に金属の水和物、水和酸化物を主成分とした化合物(以下、金属酸化物のゾルと表記)を混在あるいは表層に吸着、析出させたアルミニウムあるいは、▲2▼陽極酸化皮膜中に金属、金属の水和物、水和酸化物を主成分とした化合物を混在あるいは表面に吸着、析出させたアルミニウム材が提供される。
本発明の上記アルミニウムの表面においては、本発明の封孔処理で形成された金属や金属酸化物のゾルを主成分とした付着量は特に制限されるものではない。
【0008】
また、本発明のアルミニウム材の陽極酸化処理皮膜は、硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸を主成分とした浴、あるいはこれらに金属酸化物のゾルを含む浴から得られ、封孔処理は金属酸化物のゾルを主成分とした浴に浸せき、スプレー、電解処理あるいはこれらの方法を組み合わせることによって提供される。
【0009】
本発明において、アルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、次いで、封孔処理を施すことによって、陽極酸化物層中および表層に金属や金属酸化物の化合物を主成分としたゾル成分層あるいは混在した層が形成され、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れた皮膜が得られることが判明し以下、本発明について説明する。
【0010】
本発明の表面処理を施す素材となるアルミニウムはアルミニウムおよび各種のアルミニウム合金が適用できる。即ち、アルミニウムという表示には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。例えば、1090,2011,3003,4043,5005,6061,7075などがあり、用途に応じて選択的に用いられる。
これらのアルミニウムは成形加工後あるいは貯蔵中に経時変化によって素地表面に油脂、異物、不純物、変質層などが付着形成されるので、これらを取り除く必要がある。その方法として、機械的前処理、化学的前処理が施され、公知の方法で処理される。次いで本発明の陽極酸化処理が施される。
例えば、耐熱性や硬度を必要とする場合は、通常硫酸浴や蓚酸浴の適用が好ましい。陽極酸化皮膜の硬質膜は一般に電流密度、浴濃度、浴温度に影響され、硫酸浴において、硬質膜を得るには、比較的薄い濃度で、低温処理を施すことは周知の事実である。しかし、陽極酸化皮膜層が15μm以上になるとクラックが発生しやすくなる。上記の公知の陽極酸化処理後、硬質膜で、15μm以上と厚い酸化皮膜層にクラックの発生が認められないものにおいて、耐食性改善のために公知の封孔処理を施すと、クラックが発生し悪影響を及ぼすものが多い。特に高温処理はクラックが発生し易い。耐熱性に悪影響を及ぼすクラックの発生は、素材のアルミニウムの体積膨張率など急激な物性変化によるといわれ、クラックの発生を抑制するための方法が種々工夫されている。
【0011】
前記クラックの発生を抑制するための方法が種々工夫されているが、対策が十分ではなく、冷熱を繰り返すような用途への適用や衝撃を伴う部位への適用へは膜剥がれが生じることがある。
【0012】
本発明においては、クラックの発生を抑制するためには陽極酸化浴中に金属酸化物ゾルの添加が効果的であり、封孔処理による悪影響の程度が小さい。また、公知の陽極酸化処理後、本発明の封孔処理を施すとクラックの発生や膜剥がれを抑制することができる。
【0013】
本発明は、上記の陽極酸化処理後、封孔処理によってクラックの発生を抑制することができる。
本発明の陽極酸化処理および封孔処理に用いられるゾルは金属の水和物、水和酸化物から成り、1種以上が適用される。これらの金属には、アルミニウム、シリコン、亜鉛、錫、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、銅、チタン、ジルコン、イットリウム、アンチモン、インジュウム、カルシウム、ゲルマニウム、ストロンチュウム、ヴナジウム、タンタル、ネオジム、マグネシウム、バリウムなどの金属が含まれる。これらの金属は限定されるものではなく、任意のpHにおいてゾル(水和物、水和酸化物)を形成するものであれば適用することができる。
【0014】
陽極酸化処理浴に適用される1種以上のゾル濃度は特に制限されないが、浴の安定性、経済性からみると、5〜50g/lが好ましい。そのほかの条件は公知の陽極酸化処理法が適用できる。
【0015】
封孔処理浴中の1種以上のゾル濃度は特に制限されないが、浴の安定性、経済性からみると金属として5〜100g/lが好ましい。浴温度は浴の安定性、経済性から60℃以下が好ましい。電解処理において、電解時の素地金属の極性は陽極あるいは陰極にすることができる。その選択は浴のpHが影響を及ぼす水和物や水和化合物の極性によって異なる。例えば、アルミニウム水和酸化物のゾルの場合、プラスに帯電しているときは、素地金属を陰極にする方が好ましい。また、他の金属酸化ゾルがプラスに帯電している場合、陰極処理によって金属が析出する場合がある。シリカゾルの場合マイナスに帯電しているときは、陽極にする方が好ましい。電流密度は5A/dm2以下が好ましい。電解処理のほかに浸せき処理、スプレー処理をすることもできる。電解処理の場合、短時間処理が可能であり、浸せき処理と併用することもできる。
【0016】
封孔処理浴の安定化とpH調整のため導電性物質を添加することができる。酸性浴では、無機酸、有機酸のいずれも使用できる。例えば、アルミニウムのゾルの場合、浴安定化のために一般に塩酸、あるいは酢酸が少量添加される。このように酸の選択は、ゾルの安定性を妨げないものであれば特に制限されない。また、浴安定化のため水溶性の有機高分子を添加することもできる。
【0017】
更に、他の機能性を付与するために、不溶性あるいは難溶性物質を添加剤として加えることができ、特に制限されるものではない。代表的な添加剤には有機化合物、無機化合物がある。例として、有機化合物には、樹脂粉末、樹脂エマルジョンがあり、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、フッ素系、メラミン系、ウレタン系、オレフィン系、塩化ビニル系、シリコン系などの樹脂が含まれ、限定されるものではなく、また、1種以上混合して使用することができ、これらの共析によって樹脂の特性が付与される。例えば、フッ素系やオレフィン系の樹脂を適用すると、耐食性と同時に潤滑性が向上する。無機化合物には炭素および炭化物や窒化物、硼化物系金属粉末や公知の防錆顔料があり、C,SiC,AlN,MoSi2,TiC,WC,TiN,TiB2などが含まれ、これらの共析によって、耐食性、耐摩耗性などの特性が向上する。また、これらの添加剤は有機化合物と無機化合物を混合して使用することもできる。添加される添加剤の粒径は微細な方が好ましいが、大きくなると、表層のみに析出する。
【0018】
このように本発明の処理によって特性が向上するのは、陽極酸化処理皮膜のアルミニウムのOH基と封孔処理浴中の金属の水和酸化物を主体とした化合物とが乾燥時に縮合反応を生じ、異種金属との強固な結合と緻密な皮膜層の形成と酸化皮膜の内部応力に対する緩衝作用によるものと考えられる。また、陽極酸化処理においてゾルを含む方がより特性が向上するのは、明らかではないが、封孔処理に対して、より効果的な吸着作用を及ぼすものと考えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を表1〜表3に基づいて説明する。
表1に示すアルミニウム素材を用いて前処理を施した後、陽極酸化処理を施した。また、表1の処理を施した後、表2に示す本発明の封孔処理を施した。表1と表2に示す陽極酸化処理と封孔処理を施した本発明の実施例1〜26および比較例1〜10を表3に示した。
【0021】
上記のようにして得られた試料は下記に示す方法において外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性などを評価した。結果を表3に示した。
外観・・・クラックの発生の程度を目視観察した
○ : クラックの発生なし
△ : わずかに発生
× : クラック発生
耐食性・・・JISZ2371の塩水噴霧試験により白錆の発生の程度を目視観察した。
○ : 白錆の発生なし
△ : わずかに白錆発生
× : 白錆発生
耐熱性・・・150℃、200℃、250℃の温度に加熱して、クラックの有無を目視観察した。
◎ : 250℃クラックの発生なし
○ : 200℃クラックの発生なし
△ : 200℃わずかにクラックの発生
× : 150℃クラック発生
耐摩耗性・・・JISH8682の砂落し摩耗性試験
表3の特性評価にみられるように、本発明の実施例1〜26は比較例1〜10に比較して、外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性のいずれの特性についても優れた特性を示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
以上に示すように、本発明の陽極酸化処理と封孔処理によって得られたアルミニウム材は従来のアルミニウム材よりも外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性が優れ、陽極酸化処理皮膜層にクラックの発生が生じにくいことが判明した。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、アルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、次いで封孔処理層を設けた金属の酸化物を主成分とした処理層で被覆されたアルミニウム材であり、耐食性、耐摩耗性に優れている。また、200℃の加熱処理を行っても、処理被膜層にクラックの発生は認められず、耐熱性を必要とする用途への適用が可能である。本発明においては、クラックの発生を抑制するためには浴中に金属酸化物ゾルの添加が効果的であり、他の添加剤を併用することにより、多くの特性を付与することが可能である。
【産業上の利用分野】
本発明はアルミニウムの陽極酸化処理および陽極酸化後の封孔処理に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウムは種々の用途に適用できるように、耐食性、耐熱性や耐摩耗性などの特性が、陽極酸化法による表面処理によって改善されている。しかし、この方法のみでは、耐食性が十分でなく、陽極酸化処理後、封孔処理が施されている。
【0003】
陽極酸化処理には大別して、酸性浴、アルカリ性浴、非水浴がある。酸性浴には硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸などが、アルカリ性浴にはアンモニア−フッ化物、アルカリ−過酸化物、リン酸ナトリウムなどが、非水浴には硼酸−ホルムアミド、硫酸系化合物の溶融塩などが適用されている。
【0004】
封孔処理には蒸気法、純水沸騰水法、酢酸−ニッケル法、重クロム酸法、珪酸ナトリウム法がある。
【0005】
しかし、アルミニウムの耐食性、耐熱性、耐摩耗性、表面硬度、加工性などの特性を満足させるためには、一般に、種々の煩雑な陽極酸化法と種々の封孔処理の組み合わせによる表面処理が施され、作業性を著しく妨げ、また特性も満足できるものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の欠点を解消し、作業性に優れ、また、表面特性、特に耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れた陽極酸化皮膜層にクラックのないアルミニウムの表面処理法及びアルミニウム材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、公知の酸性浴あるいは公知の酸性浴に金属の水和物あるいは水和酸化物(以下、金属酸化物のゾルと表記)を含む電解浴中で陽極酸化処理を施し、アルミニウムの表層に陽極酸化皮膜を形成し、さらに陽極酸化皮膜中に封孔処理によって、▲1▼陽極酸化皮膜中に金属の水和物、水和酸化物を主成分とした化合物(以下、金属酸化物のゾルと表記)を混在あるいは表層に吸着、析出させたアルミニウムあるいは、▲2▼陽極酸化皮膜中に金属、金属の水和物、水和酸化物を主成分とした化合物を混在あるいは表面に吸着、析出させたアルミニウム材が提供される。
本発明の上記アルミニウムの表面においては、本発明の封孔処理で形成された金属や金属酸化物のゾルを主成分とした付着量は特に制限されるものではない。
【0008】
また、本発明のアルミニウム材の陽極酸化処理皮膜は、硫酸、蓚酸、クロム酸、硼酸を主成分とした浴、あるいはこれらに金属酸化物のゾルを含む浴から得られ、封孔処理は金属酸化物のゾルを主成分とした浴に浸せき、スプレー、電解処理あるいはこれらの方法を組み合わせることによって提供される。
【0009】
本発明において、アルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、次いで、封孔処理を施すことによって、陽極酸化物層中および表層に金属や金属酸化物の化合物を主成分としたゾル成分層あるいは混在した層が形成され、耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れた皮膜が得られることが判明し以下、本発明について説明する。
【0010】
本発明の表面処理を施す素材となるアルミニウムはアルミニウムおよび各種のアルミニウム合金が適用できる。即ち、アルミニウムという表示には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。例えば、1090,2011,3003,4043,5005,6061,7075などがあり、用途に応じて選択的に用いられる。
これらのアルミニウムは成形加工後あるいは貯蔵中に経時変化によって素地表面に油脂、異物、不純物、変質層などが付着形成されるので、これらを取り除く必要がある。その方法として、機械的前処理、化学的前処理が施され、公知の方法で処理される。次いで本発明の陽極酸化処理が施される。
例えば、耐熱性や硬度を必要とする場合は、通常硫酸浴や蓚酸浴の適用が好ましい。陽極酸化皮膜の硬質膜は一般に電流密度、浴濃度、浴温度に影響され、硫酸浴において、硬質膜を得るには、比較的薄い濃度で、低温処理を施すことは周知の事実である。しかし、陽極酸化皮膜層が15μm以上になるとクラックが発生しやすくなる。上記の公知の陽極酸化処理後、硬質膜で、15μm以上と厚い酸化皮膜層にクラックの発生が認められないものにおいて、耐食性改善のために公知の封孔処理を施すと、クラックが発生し悪影響を及ぼすものが多い。特に高温処理はクラックが発生し易い。耐熱性に悪影響を及ぼすクラックの発生は、素材のアルミニウムの体積膨張率など急激な物性変化によるといわれ、クラックの発生を抑制するための方法が種々工夫されている。
【0011】
前記クラックの発生を抑制するための方法が種々工夫されているが、対策が十分ではなく、冷熱を繰り返すような用途への適用や衝撃を伴う部位への適用へは膜剥がれが生じることがある。
【0012】
本発明においては、クラックの発生を抑制するためには陽極酸化浴中に金属酸化物ゾルの添加が効果的であり、封孔処理による悪影響の程度が小さい。また、公知の陽極酸化処理後、本発明の封孔処理を施すとクラックの発生や膜剥がれを抑制することができる。
【0013】
本発明は、上記の陽極酸化処理後、封孔処理によってクラックの発生を抑制することができる。
本発明の陽極酸化処理および封孔処理に用いられるゾルは金属の水和物、水和酸化物から成り、1種以上が適用される。これらの金属には、アルミニウム、シリコン、亜鉛、錫、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、銅、チタン、ジルコン、イットリウム、アンチモン、インジュウム、カルシウム、ゲルマニウム、ストロンチュウム、ヴナジウム、タンタル、ネオジム、マグネシウム、バリウムなどの金属が含まれる。これらの金属は限定されるものではなく、任意のpHにおいてゾル(水和物、水和酸化物)を形成するものであれば適用することができる。
【0014】
陽極酸化処理浴に適用される1種以上のゾル濃度は特に制限されないが、浴の安定性、経済性からみると、5〜50g/lが好ましい。そのほかの条件は公知の陽極酸化処理法が適用できる。
【0015】
封孔処理浴中の1種以上のゾル濃度は特に制限されないが、浴の安定性、経済性からみると金属として5〜100g/lが好ましい。浴温度は浴の安定性、経済性から60℃以下が好ましい。電解処理において、電解時の素地金属の極性は陽極あるいは陰極にすることができる。その選択は浴のpHが影響を及ぼす水和物や水和化合物の極性によって異なる。例えば、アルミニウム水和酸化物のゾルの場合、プラスに帯電しているときは、素地金属を陰極にする方が好ましい。また、他の金属酸化ゾルがプラスに帯電している場合、陰極処理によって金属が析出する場合がある。シリカゾルの場合マイナスに帯電しているときは、陽極にする方が好ましい。電流密度は5A/dm2以下が好ましい。電解処理のほかに浸せき処理、スプレー処理をすることもできる。電解処理の場合、短時間処理が可能であり、浸せき処理と併用することもできる。
【0016】
封孔処理浴の安定化とpH調整のため導電性物質を添加することができる。酸性浴では、無機酸、有機酸のいずれも使用できる。例えば、アルミニウムのゾルの場合、浴安定化のために一般に塩酸、あるいは酢酸が少量添加される。このように酸の選択は、ゾルの安定性を妨げないものであれば特に制限されない。また、浴安定化のため水溶性の有機高分子を添加することもできる。
【0017】
更に、他の機能性を付与するために、不溶性あるいは難溶性物質を添加剤として加えることができ、特に制限されるものではない。代表的な添加剤には有機化合物、無機化合物がある。例として、有機化合物には、樹脂粉末、樹脂エマルジョンがあり、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、フッ素系、メラミン系、ウレタン系、オレフィン系、塩化ビニル系、シリコン系などの樹脂が含まれ、限定されるものではなく、また、1種以上混合して使用することができ、これらの共析によって樹脂の特性が付与される。例えば、フッ素系やオレフィン系の樹脂を適用すると、耐食性と同時に潤滑性が向上する。無機化合物には炭素および炭化物や窒化物、硼化物系金属粉末や公知の防錆顔料があり、C,SiC,AlN,MoSi2,TiC,WC,TiN,TiB2などが含まれ、これらの共析によって、耐食性、耐摩耗性などの特性が向上する。また、これらの添加剤は有機化合物と無機化合物を混合して使用することもできる。添加される添加剤の粒径は微細な方が好ましいが、大きくなると、表層のみに析出する。
【0018】
このように本発明の処理によって特性が向上するのは、陽極酸化処理皮膜のアルミニウムのOH基と封孔処理浴中の金属の水和酸化物を主体とした化合物とが乾燥時に縮合反応を生じ、異種金属との強固な結合と緻密な皮膜層の形成と酸化皮膜の内部応力に対する緩衝作用によるものと考えられる。また、陽極酸化処理においてゾルを含む方がより特性が向上するのは、明らかではないが、封孔処理に対して、より効果的な吸着作用を及ぼすものと考えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を表1〜表3に基づいて説明する。
表1に示すアルミニウム素材を用いて前処理を施した後、陽極酸化処理を施した。また、表1の処理を施した後、表2に示す本発明の封孔処理を施した。表1と表2に示す陽極酸化処理と封孔処理を施した本発明の実施例1〜26および比較例1〜10を表3に示した。
【0021】
上記のようにして得られた試料は下記に示す方法において外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性などを評価した。結果を表3に示した。
外観・・・クラックの発生の程度を目視観察した
○ : クラックの発生なし
△ : わずかに発生
× : クラック発生
耐食性・・・JISZ2371の塩水噴霧試験により白錆の発生の程度を目視観察した。
○ : 白錆の発生なし
△ : わずかに白錆発生
× : 白錆発生
耐熱性・・・150℃、200℃、250℃の温度に加熱して、クラックの有無を目視観察した。
◎ : 250℃クラックの発生なし
○ : 200℃クラックの発生なし
△ : 200℃わずかにクラックの発生
× : 150℃クラック発生
耐摩耗性・・・JISH8682の砂落し摩耗性試験
表3の特性評価にみられるように、本発明の実施例1〜26は比較例1〜10に比較して、外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性のいずれの特性についても優れた特性を示した。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
以上に示すように、本発明の陽極酸化処理と封孔処理によって得られたアルミニウム材は従来のアルミニウム材よりも外観、耐食性、耐熱性、および耐摩耗性が優れ、陽極酸化処理皮膜層にクラックの発生が生じにくいことが判明した。
【0026】
【発明の効果】
本発明は、アルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、次いで封孔処理層を設けた金属の酸化物を主成分とした処理層で被覆されたアルミニウム材であり、耐食性、耐摩耗性に優れている。また、200℃の加熱処理を行っても、処理被膜層にクラックの発生は認められず、耐熱性を必要とする用途への適用が可能である。本発明においては、クラックの発生を抑制するためには浴中に金属酸化物ゾルの添加が効果的であり、他の添加剤を併用することにより、多くの特性を付与することが可能である。
Claims (7)
- アルミニウム表面に陽極酸化処理を施し、次いでその表面に金属の水和物あるいは水和酸化物の1種以上を主成分としたゾルからなる処理浴中で電解処理、浸せき処理、あるいはこれらを併用して封孔処理を施したことを特徴とするアルミニウムの表面処理法。
- 陽極酸化処理において、陽極酸化処理浴中に金属の水和物、水和酸化物からなるゾルを含むことを特徴とするアルミニウムの表面処理法。
- 陽極酸化処理法および封孔処理の金属の水和物あるいは水和酸化物の金属は、アルミニウム、シリコン、亜鉛、錫、クロム、モリブデン、ニッケル、コバルト、銅、チタン、ジルコン、イットリウム、アンチモン、インジュム、カルシウム、ゲルマニウム、ストロンチュウム、バナジウム、タンタル、ネオジム、マグネシウム、バリウムを含むことを特徴とする請求項1〜請求項2記載のアルミニウムの表面処理法。
- 封孔処理の処理浴中に不溶性あるいは難溶性の有機化合物あるいは無機化合物の1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載のアルミニウムの表面処理法。
- 有機化合物の処理浴中に、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、フッ素系、メラミン系、ウレタン系、オレフィン系、塩化ビニル系、シリコン系などの樹脂粉末あるいは樹脂エマルジョンを含むことを特徴とする請求項4記載のアルミニウムの表面処理法。
- 無機化合物の処理浴中に炭素、炭化物、窒化物、硼化物を含むことを特徴とする請求項4記載のアルミニウムの表面処理法。
- 請求項1〜請求項6記載の処理方法によって処理された金属酸化物、金属水和酸化物を主成分とした表面処理層あるいは金属、金属の酸化物、金属の水和酸化物を主成分とした表面処理層からなるアルミニウム材。
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