JP2004058226A - 数値制御工作機械の手動送り制御装置及び手動送り制御方法 - Google Patents

数値制御工作機械の手動送り制御装置及び手動送り制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】数値制御工作機械に装備される手動送り制御装置において、操作上の煩雑さを解消して誤操作等の懸念を排除できるようにする。
【解決手段】手動送り制御装置10は、手動変位可能なハンドル部材12を有する入力部14と、ハンドル部材12の変位方向及び変位量に基づき操作信号を生成する信号発生部16と、信号発生部16からの操作信号を処理して作動指令を発する処理部18と、処理部18からの作動指令に従い、数値制御工作機械の可動構造体の送り運動を制御する駆動制御部20とを備える。入力部14は、ハンドル部材12の変位方向と操作対象の可動構造体22の送り方向との所定の方向対応関係を切り換える切換指示手段26を備える。処理部18は、切換指示手段26による方向対応関係の切換指示の有無に従い、可動構造体22の送り方向を決定し、決定した送り方向を作動指令で駆動制御部20に指令する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、数値制御工作機械に装備される手動送り制御装置に関する。本発明はまた、数値制御工作機械における手動送り制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
数値制御工作機械において、刃物台、主軸、テーブル等(本明細書で可動構造体と総称する)を、それぞれが属する制御軸に沿って任意に手動で送り運動させるための手動送り制御装置を備えたものは周知である。この種の手動送り制御装置は一般に、手動で回転操作可能なハンドル部材を有する入力部と、ハンドル部材の回転方向及び回転角度に基づきパルス信号を生成して出力する手動パルス発生器と、手動パルス発生器から出力されたパルス信号を処理して、可動構造体の送り運動に関連する作動指令を発する処理部と、処理部から発せられた作動指令に従い、可動構造体の送り運動を制御する駆動制御部とを備えて構成される。ここで、処理部及び駆動制御部は通常、数値制御装置(以下、NC装置と称する)が本質的に備える処理部及び駆動制御部からなり、したがって手動送り制御装置は、NC装置の様々な機能の1つである手動送り機能を専ら遂行するものと解釈できる。
【0003】
他方、数値制御工作機械では、工作機械の加工機能に対応して設定された固有の座標系において、個々の可動構造体が属する制御軸の記号及び正の向きが、例えばJIS等の規格で規定されている。また、数値制御工作機械における手動操作要素の操作方向と操作対象の運動方向との対応関係も、同様にJIS等で規定されている。これらの規定に準じて、上記した手動送り制御装置では、ハンドル部材の回転方向と操作対象である可動構造体の送り方向との対応関係が標準化されており、一般に、ハンドル部材を向かって時計方向に回転させたときに可動構造体がその制御軸の正方向に送り運動するようになっている。
【0004】
ところで、数値制御旋盤(以下、NC旋盤と称する)の分野では、棒状又は板状の被加工素材から一層複雑な形状の工作物を加工できるようにするために、回転工具を含む多種類の工具を刃物台に装備して、旋削加工に加え、フライス加工等の多様な自動加工を実施可能とする複合機械化が進められている。さらに、加工時間の短縮を図るべく、1つの旋盤機台に、それぞれが互いに異なる制御軸に沿って動作可能な1つ以上の主軸及び1つ以上の刃物台を集約的に搭載し、同一素材に対する異種(例えば外径削りと中ぐり)同時加工や、異なる素材に対する同時加工を実施できるようにした多機能型のNC旋盤が、種々提案されている。
【0005】
このような多機能型のNC旋盤において、前述した手動送り制御装置は例えば、刃物台に装着した工具の先端又は刃先を、主軸に把持した被加工素材の中心軸線に合致させるための工具位置合せ作業において、有効に利用されている。この工具位置合せ作業では、加工工程の開始に先立ち、当該加工工程で使用する工具を装着した刃物台を手動送り制御装置により低速で送り運動させて、当該工具の先端又は刃先を被加工素材の外周面の複数箇所に接触させ、それら接触箇所の位置データから被加工素材の中心軸線の位置を演算して確定する。加工工程では、確定した被加工素材の演算中心値を基準(すなわちワーク座標系の原点)として、刃物台上での工具の位置及び加工作業中の工具の先端移動位置に関する設定座標データをそれぞれ適宜補正し、工具を目標の経路に沿って移動させる。なお、本明細書における「工具の先端」又は「工具の刃先」という用語は、工具が加工工程に際して被加工素材に最初に接触する部位を示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の手動送り制御装置は、前述したように、ハンドル部材の回転方向と操作対象である可動構造体の送り方向との対応関係が予め定められているため、数値制御工作機械の構成によっては、ハンドル回転操作時に不都合が生じる場合がある。例えばNC旋盤において、1つの主軸に対し、1つの刃物台に複数の工具を異なる方向付けで装着でき、その結果、主軸に把持した被加工素材に工具先端を接近させるための刃物台の送り方向(すなわちハンドル部材の回転方向)が、工具の装着場所によって異なる方向となるような機械構成が存在する。
【0007】
例として図11に示すように、1つの刃物台R上で複数の工具Tを、主軸中心軸線Pの両側2列に互いの刃先を対向させて整列配置した構成では、それら工具Tの刃先を被加工素材Wに接近させる(矢印α)ための刃物台Rの送り方向が、第1列の工具T01〜T03と第2列の工具T11〜T13とについて、1つの制御軸(X軸)上で互いに逆方向(すなわち−X方向と+X方向)になる。また、図12に示すように、1つの刃物台R1上で複数の工具Tを、それぞれの刃先を主軸中心軸線Pに向けて直交2列に整列配置した構成では、それら工具Tの刃先を被加工素材Wに接近させる(矢印α)ための刃物台R1の送り方向が、第1列の工具T01〜T05と第2列の工具T11〜T13とについて、直交する2つの制御軸(X軸及びY軸)上でしかも互いに符号の異なる方向(すなわち−X方向と+Y方向)になる。なお、矢印αで示す工具刃先の素材接近方向を、本明細書では「径方向」と称する。
【0008】
さらに、図13(a)〜(d)に示すように、互いに同軸状に対向配置できる一対の主軸S1、S2を備え、それら主軸S1、S2に把持した被加工素材W1、W2のそれぞれを加工する複数の工具Tを1つの刃物台R2上で2列に整列配置した構成でも、同様の不都合が生じる。すなわちこの構成では、旋削加工時の両主軸の回転方向(主軸に向かって見た方向)が互いに同一(図では反時計方向)である場合に、それら工具Tの刃先を被加工素材W1、W2に接近させる(矢印β)ための刃物台R2の送り方向が、第1列の工具T21、…と第2列の工具T31、…とについて、1つの制御軸(Y軸)上で互いに逆方向(すなわち+Y方向と−Y方向)になる。また、他の制御軸(Z軸)上でも、それら工具Tの刃先を被加工素材W1、W2に接近させる(矢印γ)ための刃物台R2の送り方向は、互いに逆方向(すなわち+Z方向と−Z方向)になる。なお、矢印βで示す工具刃先の素材接近方向を、本明細書では「芯方向」と称する。
【0009】
これらの構成では、工具位置合せ作業のためにオペレータが手動送り制御装置を操作する際に、位置合せ対象工具の刃物台上での装着場所に応じて、刃物台を所望方向へ送り運動させるための手動送り制御装置のハンドル部材の回転方向を、時計方向と反時計方向とで適宜切り換えて操作しなければならなかった。特に図12に示す構成では、位置合せ対象工具の刃物台上での装着場所に応じて、刃物台に所要の送り運動を生じさせる制御軸をも適宜変更して指定する必要があった。
【0010】
ここで、NC旋盤のオペレータは一般に、例えば任意の工具を被加工素材に接近させるといった特定操作に関して、要求される刃物台の制御軸と送り方向(正負の符号)とを特定の組み合わせで記憶している。例えば図12の例では、工具Tを径方向(矢印α)へ移動するには、刃物台R1を−X方向へ送り運動させる必要があると慣例的に記憶しており、これを+Y方向へ送り運動させるのはオペレータにとって例外的操作となる。同様に、図13の例で工具Tを芯方向(矢印β)へ移動するには、刃物台R2を+Y方向へ送り運動させる必要があると慣例的に記憶しており、これを−Y方向へ送り運動させるのはオペレータにとって例外的操作となる。このように、上記したハンドル回転方向の切り換えや指定制御軸の変更は、ルーチンワークから逸脱する煩雑な操作であると一般に認識されている。そして、手動送り制御装置におけるこのような操作上の煩雑さは、オペレータにとってかなりの精神的負担であるため、不注意による誤操作の要因となる懸念が生じ、また、誤操作により工具と被加工素材との望ましくない干渉を引き起こす危惧がある。
【0011】
本発明の目的は、数値制御工作機械に装備される手動送り制御装置において、ハンドル部材の回転方向と操作対象である可動構造体の送り方向との所定の対応関係を、要求に応じて切り換えることができ、以って、操作上の煩雑さを解消して誤操作等の懸念を排除できる手動送り制御装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、数値制御工作機械に装備される手動送り制御装置において、要求される送り運動を制御する制御軸の軸名称とは異なる軸名称を指定して可動構造体を要求通りに送り運動させることができ、以って、操作上の煩雑さを解消して誤操作等の懸念を排除できる手動送り制御装置を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、数値制御工作機械における手動送り制御の操作上の煩雑さを解消して、誤操作等の懸念を排除できる手動送り制御方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、手動変位可能なハンドル部材を有する入力部と、ハンドル部材の変位方向及び変位量に基づき操作信号を生成して出力する信号発生部と、信号発生部から出力された操作信号を処理して作動指令を発する処理部と、処理部から発せられた作動指令に従い、数値制御工作機械に装備された可動構造体の送り運動を制御する駆動制御部とを具備する手動送り制御装置において、入力部は、ハンドル部材の変位方向と操作対象の可動構造体の送り方向との予め定めた方向対応関係を切り換えるための切換指示手段を備え、処理部は、切換指示手段による切換指示の有無に従い、操作信号を処理して可動構造体の送り方向を決定し、決定した送り方向を作動指令で駆動制御部に指令すること、を特徴とする手動送り制御装置を提供する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の手動送り制御装置において、操作対象の可動構造体が刃物台であり、入力部の切換指示手段は、刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部を指定する手段を有し、処理部は、切換指示手段で指定された工具装着部の属性から切換指示の有無を判断する手動送り制御装置を提供する。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の手動送り制御装置において、入力部は、切換指示手段による切換指示を有効にするための確認スイッチを備え、処理部は、切換指示が確認スイッチにより有効とされたときに方向対応関係を切り換える手動送り制御装置を提供する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、数値制御工作機械に設定された複数の制御軸の各々に関して可動構造体の送り運動を制御できる請求項1〜3のいずれか1項に記載の手動送り制御装置であって、入力部は、送り運動を制御するための指定制御軸を複数の制御軸から選択して指定する手段と、指定制御軸の名称を他の制御軸の名称と入れ替えるための入替指示手段とを備え、処理部は、入替指示手段による入替指示の有無に従って、指定制御軸の指定用名称を決定し、指定用名称で指定された指定制御軸に沿って可動構造体を送り運動させる手動送り制御装置を提供する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の手動送り制御装置において、操作対象の可動構造体が刃物台であり、入力部の入替指示手段は、刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部を指定する手段を有し、処理部は、入替指示手段で指定された工具装着部の属性から入替指示の有無を判断する手動送り制御装置を提供する。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の手動送り制御装置において、入力部は、入替指示手段による入替指示を有効にするための確認スイッチを備え、処理部は、入替指示が確認スイッチにより有効とされたときに、指定制御軸の名称を他の制御軸の名称と入れ替える手動送り制御装置を提供する。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の手動送り制御装置において、入力部の切換指示手段は、方向対応関係を随時に切り換え可能な切換スイッチを有する手動送り制御装置を提供する。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の手動送り制御装置において、ハンドル部材を所定方向へ変位させたときの可動構造体の予め定めた基準送り方向を表示する表示部をさらに具備し、処理部は、切換指示手段による切換指示に応答して基準送り方向を反転し、反転した基準送り方向を表示部に表示させる手動送り制御装置を提供する。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の手動送り制御装置において、表示部は、切換指示手段による切換指示を表示する手動送り制御装置を提供する。
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の手動送り制御装置において、表示部は、送り運動を制御するための指定制御軸の名称を表示する手動送り制御装置を提供する。
【0023】
請求項11に記載の発明は、数値制御工作機械に装備された可動構造体の手動送り運動を制御するための手動送り制御方法において、可動構造体に送り運動を生じさせる手動変位可能なハンドル部材であって、ハンドル部材の変位方向と可動構造体の送り方向とが予め定めた方向対応関係を有するハンドル部材を用意し、可動構造体の送り運動の種類に対応して、ハンドル部材の変位方向を特定の方向に定め、方向対応関係を切り換えて、特定の方向にハンドル部材を変位させたときに、可動構造体の送り方向を反転して可動構造体を送り運動させること、を特徴とする手動送り制御方法を提供する。
【0024】
請求項12に記載の発明は、可動構造体が刃物台である請求項11に記載の手動送り制御方法において、刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部の属性から、方向対応関係を切り換えるか否かを決定する手動送り制御方法を提供する。
【0025】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の手動送り制御方法において、工具装着部の属性が、複数の工具装着部に個別に付与されたツール番号である手動送り制御方法を提供する。
【0026】
請求項14に記載の発明は、数値制御工作機械に設定された複数の制御軸の各々に関して可動構造体の前記送り運動を制御する請求項11〜13のいずれか1項に記載の手動送り制御方法であって、可動構造体の送り運動の種類に応じて、送り運動を制御するための指定制御軸の名称を他の制御軸の名称と入れ替え、他の制御軸の名称で指定された指定制御軸に沿って可動構造体を送り運動させる手動送り制御方法を提供する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1に示すように、本発明に係る手動送り制御装置10は、手動変位可能なハンドル部材12を有する入力部14と、ハンドル部材12の変位方向及び変位量に基づき操作信号を生成して出力する信号発生部16と、信号発生部16から出力された操作信号を処理して作動指令を発する処理部18と、処理部18から発せられた作動指令に従い、数値制御工作機械に装備された可動構造体の送り運動を制御する駆動制御部20とを備える。
【0028】
ハンドル部材12は、一般には回転操作式のダイアル構造を有するが、揺動操作式のレバー構造や直動操作式のスライダ構造等、少なくとも二方向へ手動操作可能な種々の構成を有することができる。入力部14は、例えば数値制御工作機械に装備されるNC装置の入力部として構成できるが、NC装置から独立した構成を有していてもよい。入力部14には、ハンドル部材12以外にも、キー、押ボタン、トグル等の種々の操作要素を配備できる。信号発生部16は、一般には、ハンドル部材12の変位方向及び変位量に対応するパルス信号を生成する手動パルス発生器から構成されるが、他の信号発生回路を使用してもよい。手動パルス発生器においては、単位パルス当りのハンドル部材の変位量を適宜変更して設定することができる。
【0029】
処理部18は、例えば数値制御工作機械に装備されるNC装置の処理部(CPU)として構成できるが、NC装置から独立した構成を有していてもよい。処理部18は、例えば手動パルス発生器からなる信号発生部16から出力されたパルス信号を処理して、操作対象の可動構造体22の送り運動に関連する作動指令を発する。駆動制御部20は、例えば数値制御工作機械に装備されるNC装置の駆動制御部として構成できるが、NC装置から独立した構成を有していてもよい。駆動制御部20は、可動構造体22を固有の制御軸に沿って送り運動させる駆動機構(例えばサーボモータ)24の動作を制御する。
【0030】
本発明の特徴的構成として、入力部14は、ハンドル部材12の変位方向と操作対象の可動構造体22の送り方向との予め定めた対応関係(以下、方向対応関係と称する)を切り換えるための切換指示手段26を備える。切換指示手段26は、後述するように、所期の目的を達成し得る様々な構成を有することができる。そして処理部18は、切換指示手段26による方向対応関係の切換指示の有無に従い、信号発生部16から出力された操作信号を処理して制御軸に沿った可動構造体22の送り方向を決定し、決定した送り方向を作動指令で駆動制御部20に指令する。
【0031】
このような特徴的構成を有する手動送り制御装置10を、前述した図12及び図13に示す機械構成を有するNC旋盤にそれぞれ適用した2つの実施形態として、以下に詳細に説明する。これらの実施形態では、手動送り制御装置10は、NC旋盤に搭載されるNC装置30(図2参照)の様々な機能の1つである手動送り機能を専ら遂行するものとして、NC装置30に組み込まれて構成される。なお、図12及び図13に示す機械構成を併せ持つ(すなわち1つの旋盤機台に2個の主軸S1、S2及び2個の刃物台R1、R2を集約的に搭載した)多機能型のNC旋盤に対しても、本発明に係る手動送り制御装置を適用できることは理解されよう。
【0032】
図12に示すNC旋盤は、回転軸線P1を有する主軸S1と、複数の工具Tを直交2列に整列配置して保持できる刃物台R1とを備える。主軸S1は、旋盤外部から供給された被加工素材W1を把持して回転する主要な(又は正面側の)主軸であり、正面主軸駆動機構(例えばビルトイン型ACサーボモータ)24a(図2)により回転駆動される。また主軸S1は、回転軸線P1に平行な制御軸に沿って送り運動可能な構成とすることもできる。刃物台R1は、複数の工具Tを、互いに直交する第1列と第2列とのそれぞれにくし歯状に保持できるものであり、主軸回転軸線P1に直交するとともに第1列の工具Tの整列方向に平行な制御軸(Y軸)、及び主軸回転軸線P1に直交するとともに第2列の工具Tの整列方向に平行な制御軸(X軸)に沿って、各軸駆動機構(例えばACサーボモータ、図示せず)によりそれぞれ送り運動できる。刃物台R1の第1列の工具Tは、それぞれにツール番号T01〜T05を付与された複数の工具装着部に固定的に装着される。同様に、第2列の工具Tは、それぞれにツール番号T11〜T13を付与された複数の工具装着部に固定的に装着される。
【0033】
また、図13に示すNC旋盤は、回転軸線P1を有する正面側の第1主軸S1と、複数の工具Tを平行2列に整列配置して保持できる刃物台R2と、第1主軸S1の回転軸線P1に平行な回転軸線P2を有して、第1主軸S1に同軸状に対向配置可能な第2主軸S2とを備える。第2主軸S2は、第1主軸S1から受け渡された一部加工済みの被加工素材W2を把持して回転する補助的な(又は背面側の)主軸であり、背面主軸駆動機構(例えばビルトイン型ACサーボモータ)24b(図2)により回転駆動される。また第2主軸S2は、回転軸線P2に平行な制御軸及びそれに直交する制御軸に沿ってそれぞれ送り運動可能な構成とすることもできる。刃物台R2は、複数の工具Tを、正面加工用の第1列と背面加工用の第2列とのそれぞれにくし歯状に保持できるものであり、第1主軸S1の回転軸線P1に平行な制御軸(Z軸)、Z軸に直交するとともに工具Tの整列方向に平行な制御軸(Y軸)並びにZ軸及びY軸の双方に直交する制御軸(X軸)に沿って、各軸駆動機構(例えばACサーボモータ)24c〜24e(図2)によりそれぞれ送り運動できる。刃物台R2の第1列の工具Tは、それぞれにツール番号T21、T22、…を付与された複数の工具装着部に固定的に装着される。同様に、第2列の工具Tは、それぞれにツール番号T31、T32、…を付与された複数の工具装着部に固定的に装着される。
【0034】
図2は、上記した各NC旋盤に搭載されるNC装置30を示す。前述したようにNC装置30は、NC旋盤で手動送り機能を遂行するための手動送り制御装置10を組み込んで備えるものであり、したがって、手動送り制御装置10に対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。NC装置30は、入力部14、表示制御部32、信号発生部16、処理部(CPU)18、記憶部(ROM34及びRAM36)並びに駆動制御部20を備える。
【0035】
入力部14には、手動送り制御装置10の切換指示手段26として機能する数値キー付きのキーボード26が付設される。キーボード26は、NC旋盤の主軸S1、S2及び刃物台R1、R2のそれぞれの動作を制御するために必要なデータ(工具の選択、工作品の形状寸法、主軸回転数、工具の送り速度等)や、それらデータを含む各工具Tに関する加工プログラム(すなわちブロック列)を入力するために使用できる。表示制御部32は、CRT(ブラウン管)やLCD(液晶ディスプレイ)等の表示部38に接続され、入力部14で入力されたデータや加工プログラムを表示部38に表示したり、対話方式として表示部38上でシミュレーションしながらの自動プログラミングを可能にしたりする。なお、入力部14、ハンドル部材(回転ダイヤル)12、キーボード26、表示制御部32、表示部38及び信号発生部(手動パルス発生器)16は、NC旋盤の機台に隣接して設置される操作盤40に搭載される。
【0036】
記憶部を構成するROM34には、主軸S1、S2及び刃物台R1、R2を駆動するための制御プログラムや、前述した方向対応関係等の既定データが、予め格納されている。またRAM36には、選択軸記憶領域、反転ツール番号記憶領域、刃物台種類記憶領域、軸入替ツール番号記憶領域等の、手動送り機能に関連する各種データの記憶領域が設けられている。さらに、入力部14で入力された複数の工具Tに関連する加工データやそれらを含む加工プログラムは、CPU18の指示によりROM34又はRAM36に格納される。CPU18は、ROM34又はRAM36に記憶した各種データや加工プログラム並びにROM34に格納された既定データや制御プログラムに基づいて、駆動制御部20に作動指令を出力する。駆動制御部20は、CPU18からの作動指令に従い、種々の駆動機構24をそれぞれに制御して、主軸S1、S2及び刃物台R1、R2をそれぞれに回転又は送り運動させる。
【0037】
NC装置30が、NC旋盤における所望の可動構造体22(主軸S1、S2及び刃物台R1、R2)の手動送り制御を実施する際には、CPU18は、入力部14のハンドル部材12の手動回転操作に基づき信号発生部16から出力された操作信号(パルス信号)を処理して、駆動制御部20に、送り方向、送り速度等のデータを含む作動指令を発する。このとき、必要に応じて、入力部14のキーボード26により、前述した既定データとしての方向対応関係を切り換えるための切換指示を入力する。そしてCPU18は、キーボード26のキー入力による切換指示の有無に従い、操作信号を処理して主軸S1、S2及び刃物台R1、R2の送り方向を決定し、決定した送り方向を作動指令で駆動制御部20に指令する。このような構成によれば、操作対象の可動構造体22を多様な所望方向へ送り運動させるためのハンドル部材12の回転操作方向を、オペレータが手動操作時にルーチンワークとして慣用している方向に統一することができる。それにより、操作上の煩雑さが排除され、誤操作が防止される。
【0038】
操作対象の可動構造体22が刃物台R1、R2である場合、キーボード26による方向対応関係の切換指示は、刃物台R1、R2に設定された複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具Tを装着した工具装着部を、そのツール番号でキー入力指定することにより行なわれる。CPU18は、キーボード26で指定された工具装着部の属性(この実施形態ではツール番号)から、後述するようにして切換指示の有無を判断する。また、入力部14のキーボード26では、操作対象の可動構造体22(主軸S1、S2及び刃物台R1、R2)の送り運動を制御するための制御軸を、可動構造体22が属する複数の制御軸(X軸、Y軸、Z軸)から選択してキー入力指定することもできる。なお、図示実施形態では、入力部14のハンドル部材12を向かって時計方向に回転したときに、操作対象の可動構造体22が指定制御軸の正方向へ送り運動するような動作上の対応関係が、既定の方向対応関係としてROM34に記憶されている。
【0039】
NC装置30は、入力部14に付随して、キーボード26のキー入力による方向対応関係の切換指示を意図的に有効又は無効にするための確認スイッチ42を、任意選択的に備えることができる。この場合、CPU18は、切換指示が確認スイッチ42により有効とされたときにのみ、前述した既定の方向対応関係を切り換えるように構成される。このような構成によれば、実際に可動構造体22を送り運動させる際のハンドル部材12と可動構造体22との動作上の方向対応関係が切り換わることに関し、オペレータに注意を喚起することができ、それにより、経験上予見される既定の方向対応関係に捕らわれてオペレータが誤操作してしまうことを未然に防止できる。また、切換指示(例えばツール番号の指定)に反して、オペレータが実際の方向対応関係の切り換えを要求しない場合には、確認スイッチ42により切換指示を無効にすることができる。なお、確認スイッチ42は、機械式スイッチとして操作盤40に搭載することもできるし、キーボード26のキー入力によりオンオフ指令する形式とすることもできる。
【0040】
入力部14のキーボード26はさらに、NC旋盤に装備された複数の制御軸X、Y、Zから選択して指定した指定制御軸の既定の名称(X、Y、Z)を、他の制御軸の既定名称と入れ替えるための入替指示手段としても機能することができる。この場合、CPU18は、キーボード26のキー入力による入替指示の有無に従って、指定制御軸の指定用名称を決定し、この指定用名称で指定された指定制御軸に沿って可動構造体を送り運動させる。このような構成によれば、操作対象の可動構造体22に所望の送り運動を生じさせるための制御軸が複数個存在する場合に、実際の指定制御軸の名称を、オペレータが手動操作時にルーチンワークとして慣用している1つの制御軸の名称に統一することができる。それにより、操作上の煩雑さが排除され、誤操作が防止される。
【0041】
この構成においても、操作対象の可動構造体22が刃物台R1、R2である場合には、キーボード26による軸名称の入替切換指示を、工具装着部のツール番号でキー入力指定することにより行なうことができる。CPU18は、キーボード26で指定された工具装着部の属性(この実施形態ではツール番号)から、後述するようにして入替指示の有無を判断する。また、前述した確認スイッチ42を、キーボード26のキー入力による軸名称の入替指示を意図的に有効又は無効にするためにも使用できる。この場合、CPU18は、入替指示が確認スイッチ42により有効とされたときにのみ、前述した既定の軸名称を入れ替える。このような構成によれば、実際に可動構造体22を送り運動させる際の制御軸の名称が入れ替わることに関し、オペレータに注意を喚起して誤操作を防止したり、入替指示(例えばツール番号の指定)に反して、オペレータが実際の軸名称の入れ替えを要求しないようにしたりすることができる。
【0042】
さらにNC装置30では、CPU18の指令により、表示制御部32が表示部38に、ハンドル部材12を所定方向へ回転させたときの可動構造体22(主軸S1、S2及び刃物台R1、R2)の送り方向(例えばハンドル部材12を時計方向へ回転させたときの制御軸の正方向)を、予め定めた基準送り方向として表示させることができる。この場合、CPU18は、キーボード26による切換指示に応答して、表示部38に表示される可動構造体22の基準送り方向を反転する指令を表示制御部32に発し、それにより表示制御部32が、可動構造体22の基準送り方向を反転して表示部38に表示させる。このような構成によれば、オペレータは、方向対応関係の切換指示の有無に関わらず、表示部38の画面を参照しながら、可動構造体22を所望方向に送るためのハンドル部材12の回転方向を、容易かつ正確に決定できるようになり、結果として誤操作を未然に防止できる。
【0043】
なお、表示部38は、手動送り操作対象の可動構造体22の見取図を、例えば装着工具Tや被加工素材W1、W2と共に模式図的に表示することができる。このとき、上記した基準送り方向は、可動構造体22の見取図の近傍に矢印で表示できる。また、キーボード26でキー入力されたツール番号や制御軸名称を表示したり、指定ツール番号に対応する工具Tを画面上で矢印により指示したりすることもできる。さらに表示部38は、前述した確認スイッチ42のON操作をオペレータに促すための対話型記述を画面表示することもできる。
【0044】
上記構成を有するNC装置30による手動送り制御方法を、図12及び図13に示すNC旋盤に関連する2つの実施形態について、図3〜図5のフローチャート及び図6〜図10の表示画面を参照して説明する。
【0045】
図12のNC旋盤に関連する実施形態においては、まずオペレータが、入力部14のキーボード26を使用して、刃物台R1に設定された複数の工具装着部(ツール番号T01〜T05、T11〜T13)のうち、手動送り動作を要求する工具Tを装着した工具装着部のツール番号を指定する。このとき、好ましくは表示部38に、CPU18の指令により、刃物台R1を模式図的に表示するとともに、刃物台R1に設定された全ての工具装着部のツール番号T01〜T05、T11〜T13、及び刃物台R1が属する全ての制御軸X、Yを表示しておく(図6)。それによりオペレータは、表示部38の画面を参照しながらツール番号を指定できる。CPU18は、この指定に従い、刃物台R1に設定されたそれら複数の工具装着部から指定ツール番号を選択する(ステップ101)。選択した指定ツール番号は、RAM36に記憶され、また表示部38に表示される。例として図6では、表示画面上でツール番号T11が選択されており、指定ツール番号T11に対応する工具Tが矢印44により指示されている。
【0046】
次にCPU18は、前回の手動送り作業(例えば工具位置合せ作業)において方向対応関係の切換指示や軸名称の入替指示があった場合を考慮し、RAM36に書き込まれた前回作業時のそれら切換指示及び入替指示の結果を削除して、方向対応関係及び軸名称を初期化する(ステップ102)。これによりCPU18は、前回作業の内容に関わらず、ROM34に既定データとして格納された方向対応関係及び軸名称を使用して、以降の処理を行なうことになる。
【0047】
RAM36には、予め反転ツール番号記憶領域に、ハンドル部材12の回転操作方向と操作対象の可動構造体22の送り方向との予め定めた対応関係(方向対応関係)を切り換える(すなわち反転する)ことが、慣例通りの手動操作を実現するために装着工具Tに要求される工具装着部のツール番号(図示実施形態ではT11〜T13)が、反転ツール番号として記憶されている。さらに、刃物台R1が属する2つの制御軸X、Yから選択した指定制御軸の既定の名称を他の制御軸の既定名称と入れ替えることが、慣例通りの手動操作を実現するために装着工具Tに要求される工具装着部のツール番号(図示実施形態ではT11〜T13)が、軸入替ツール番号として、RAM36の軸入替ツール番号記憶領域に予め記憶されている。
【0048】
そこでCPU18は、ステップ101で選択したツール番号が、RAM36に予め記憶した軸入替ツール番号に該当するか否かをまず判断し(ステップ103)、該当した場合はそれを軸名称の入替指示と認識してステップ104に進む。また、該当しない場合は、軸名称の入替指示が無いものと認識して、後述するステップ106に進む。なお、ステップ103における判断結果(軸入替ツール番号の該当の有無)は、RAM36の軸入替ツール番号記憶領域に、例えば該当した軸入替ツール番号をマークすることによって書き込むことができる。
【0049】
ステップ104は任意選択的ステップであり、CPU18は、任意選択的に装備した確認スイッチ42が、軸名称の入替指示を有効とするべくON操作されているか否かを判断する。このとき、例えば表示部38に、制御軸の名称の入れ替えをオペレータに承認させるための対話型記述46を画面表示することができる(図6)。この場合、オペレータは対話型記述46を読んで、確認スイッチ42をON操作するか否かを意思決定できる。確認スイッチ42がONのときは、CPU18は、ステップ103で認識した入替指示を有効にしてステップ105に進み、軸名称の入れ替えを行なう。また、OFFのときは、ステップ103で認識した入替指示を無効にして、軸名称の入れ替えを行なうことなくステップ106に進む。なお、確認スイッチ42を用いるこの判断ステップ104は、不要の場合には省略できる。
【0050】
ステップ105では、CPU18は、ステップ101で選択した指定ツール番号を参照して、当該工具装着部に装着した工具Tを所望方向(例えば被加工素材Wに径方向へ接近する方向)に移動するべく刃物台R1を送り運動させる制御軸の既定名称(径方向移動の場合はY軸)を、ROM34から読み出して、同じ手動操作(例えば工具Tを被加工素材Wに径方向へ接近させる手動操作)に慣用的に使用されている他の制御軸の既定名称(径方向移動の場合はX軸)に入れ替える。この軸名称の入替結果は、RAM36に記憶される。
【0051】
オペレータは、上記ステップ102〜105が終わると(実質的にはツール番号の指定に続けて)、キーボード26により、刃物台R1が属する制御軸X、Yのうち、指定ツール番号の工具装着部に装着した工具Tを所望方向(例えば被加工素材Wに径方向へ接近する方向)に移動させるための刃物台R1の制御軸を指定する。このときオペレータは、指定ツール番号に関わらず、当該手動操作(例えば工具Tを被加工素材Wに径方向へ接近させる手動操作)に慣用的に使用されている制御軸の名称(径方向移動の場合はX軸)で、実際に操作する制御軸(径方向移動の場合はY軸)を指定できる。CPU18は、この指定用名称による軸指定に従い、刃物台R1が属する制御軸X、Yから実際の指定制御軸を選択する(ステップ106)。選択した指定制御軸は、RAM36に記憶され、また表示部38に表示される。例として図6では、表示画面上で指定用名称としてのX軸(実際の指定制御軸はY軸)が選択されている。
【0052】
続いてCPU18は、ステップ101で選択したツール番号が、RAM36に予め記憶した反転ツール番号に該当するか否かを判断し(ステップ107)、該当した場合はそれを方向対応関係の切換指示と認識してステップ108に進む。また、該当しない場合は、方向対応関係の切換指示が無いものと認識して、後述するステップ111に進む。なお、ステップ107における判断結果(反転ツール番号の該当の有無)は、RAM36の反転ツール番号記憶領域に、例えば該当した反転ツール番号をマークすることによって書き込むことができる。
【0053】
ステップ108は任意選択的ステップであり、CPU18は、任意選択的に装備した確認スイッチ42が、方向対応関係の切換指示を有効とするべくON操作されているか否かを判断する。このとき、例えば表示部38に、指定制御軸(指定用名称で記述)に関する方向対応関係の切り換えをオペレータに承認させるための対話型記述48を画面表示することができる(図7)。この場合、オペレータは、対話型記述48を読んで、確認スイッチ42をON操作するか否かを意思決定できる。確認スイッチ42がONのときは、CPU18は、ステップ107で認識した切換指示を有効にしてステップ109に進み、方向対応関係の切り換えを行なう。また、OFFのときは、ステップ107で認識した切換指示を無効にして、方向対応関係の切り換えを行なうことなくステップ111に進む。なお、確認スイッチ42を用いるこの判断ステップ108は、不要の場合には省略できる。
【0054】
ステップ109では、CPU18は、ステップ101で選択した指定ツール番号とステップ106で選択した指定制御軸とを参照して、当該工具装着部を有する刃物台R1に関連する前述した既定の方向対応関係(ハンドル部材12を時計方向に回転したときに刃物台R1が指定制御軸の正方向へ送り運動する関係)を、ROM34から読み出して、その方向対応関係を切り換える(すなわち、ハンドル部材12を時計方向に回転したときに刃物台R1が指定制御軸の負方向へ送り運動するように反転させる)。この方向対応関係の切換結果は、RAM36に記憶される。
【0055】
そして、ステップ110で、CPU18は表示制御部32に指令を発し、ハンドル部材12を時計方向へ回転したときの刃物台R1の、方向対応関係切換後の基準送り方向を、指定制御軸に関連して表示部38に画面表示させる。例として図7では、実際の指定制御軸であるY軸に関する方向対応関係切換後の刃物台R1の基準送り方向(すなわち+Y方向)が、軸名称をX軸に入れ替えた状態で、刃物台R1の模式図的表示の近傍に矢印50で画面表示されている(+Xと併記されている)。この表示ステップは任意選択的ステップであるが、これによりオペレータは、表示部38の画面を参照しながら、手動送り対象工具Tを所望方向(例えば被加工素材Wに径方向へ接近させる方向)に送るためにはハンドル部材12を時計方向及び反時計方向のいずれに回せばよいかを、容易かつ正確に判断できるようになる。
【0056】
他方、ステップ107で方向対応関係の切換指示が無いと認識した(すなわちツール番号T01〜T05が選択されている)場合、及びステップ108で切換指示を無効にした(すなわち確認スイッチ42がOFFになっている)場合は、ステップ111で、CPU18が表示制御部32に指令を発し、ハンドル部材12を時計方向へ回転したときの刃物台R1の、既定の方向対応関係による基準送り方向を、指定制御軸に関連して表示部38に画面表示させる。例として図8に示すように、ステップ101でツール番号T04を選択した場合、オペレータが慣例通りに指定した制御軸であるX軸(指定用名称もX軸)に関する既定の方向対応関係での刃物台R1の基準送り方向(すなわち+X方向)が、そのままの軸名称で、刃物台R1の模式図的表示の近傍に矢印50で画面表示されている(+Xと併記されている)。
【0057】
ステップ109で方向対応関係を切り換えた後、オペレータは、所望によりステップ110で表示部38に表示した刃物台R1の指定制御軸(指定用名称)に関する基準送り方向を参照しながら、ハンドル部材12を回転操作する。そこでCPU18は、ステップ112で、信号発生部16から出力されたパルス信号に基づいて、ハンドル部材12が時計方向に回転したか否かを判断する。そして、ハンドル部材12が時計方向に回転していた場合は、ステップ113でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(径方向移動の場合はY軸駆動機構)を作動させ、刃物台R1を実際の指定制御軸(径方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時の送り方向とは逆のマイナス方向(径方向移動の場合は−Y方向)へ送り運動させる。また、ステップ112でハンドル部材12が時計方向に回転していない(すなわち反時計方向へ回転している)と判断した場合は、ステップ114でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(径方向移動の場合はY軸駆動機構)を作動させ、刃物台R1を実際の指定制御軸(径方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時の送り方向とは逆のプラス方向(径方向移動の場合は+Y方向)へ送り運動させる。
【0058】
図7に示す例では、表示部38で+Xと表示されている矢印の向きは、実際の指定制御軸における−Y方向を示すものであるから、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R1を−X方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を反時計方向へ回転操作すると、刃物台R1は実際には+Y方向へ送り運動することになる。その結果、ツール番号T11の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材Wに径方向へ接近させるように移動する。また、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R1を+X方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を時計方向へ回転操作すると、刃物台R1は実際には−Y方向へ送り運動することになる。その結果、ツール番号T11の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材Wから径方向へ離反させるように移動する。最後にステップ115でCPU18は、手動送り制御を終了させるか否かを判断し、終了させない場合はステップ112に戻って、刃物台R1の送り運動を繰り返す。
【0059】
他方、ステップ107又は108で方向対応関係を切り換えない判断を下した場合は、オペレータは、所望によりステップ111で表示部38に表示した刃物台R1の指定制御軸に関する基準送り方向を参照しながら、ハンドル部材12を回転操作する。そこでCPU18は、ステップ116で、信号発生部16から出力されたパルス信号に基づいて、ハンドル部材12が時計方向に回転したか否かを判断する。そして、ハンドル部材12が時計方向に回転していた場合は、ステップ117でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(径方向移動の場合はX軸駆動機構)を作動させ、刃物台R1を指定制御軸(径方向移動の場合はX軸)上で、既定の方向対応関係における通常時のプラス方向(径方向移動の場合は+X方向)へ送り運動させる。他方、ステップ116でハンドル部材12が時計方向に回転していない(すなわち反時計方向へ回転している)と判断した場合は、ステップ118でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(径方向移動の場合はX軸駆動機構)を作動させ、刃物台R1を指定制御軸(径方向移動の場合はX軸)上で、既定の方向対応関係における通常時のマイナス方向(径方向移動の場合は−X方向)へ送り運動させる。
【0060】
図8に示す例では、表示部38で+Xと表示されている矢印の向きは実際の指定制御軸の正方向を示すから、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R1を−X方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を反時計方向へ回転操作すれば、刃物台R1はその通りに−X方向へ送り運動する。その結果、ツール番号T04の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材Wに径方向へ接近させるように移動する。また、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R1を+X方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を時計方向へ回転操作すれば、刃物台R1はその通りに+X方向へ送り運動する。その結果、ツール番号T04の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材Wから径方向へ離反させるように移動する。最後にステップ119でCPU18は、手動送り制御を終了させるか否かを判断し、終了させない場合はステップ116に戻って、刃物台R1の送り運動を繰り返す。
【0061】
このように、図12に示す機械構成を有するNC旋盤においては、ツール番号T0番台の工具装着部とT10番台の工具装着部とで、それぞれに装着した工具Tに被加工素材Wに対し同じ動作を遂行させるための刃物台R1の送り制御軸が異なるから、従来の手動送り制御装置の構成では、ツール番号T10番台の工具Tを被加工素材Wに径方向αへ接近させようとする際に、Y軸を指定した上でハンドル部材12を時計方向へ回転して刃物台R1を+Y方向へ送り運動させなければならなかった。しかし、刃物台R1に装着した工具Tを被加工素材Wに接近させるという作業自体は、通常、オペレータがルーチンワークとして、X軸を指定した上でハンドル部材12を反時計方向へ回転操作して刃物台R1を−X方向へ送り運動させるものと記憶しているので、Y軸指定でしかもハンドル部材を時計方向へ回転操作することが、ルーチンワークから逸脱する煩雑な操作と認識されていた。
【0062】
これに対し、本発明に係るNC装置30すなわち手動送り制御装置10によれば、オペレータが最初にツール番号を指定するだけで、T0番台の工具装着部に装着した工具TとT10番台の工具装着部に装着した工具Tとのいずれに対しても、刃物台R1の送り運動に使用する制御軸の名称を当該送り運動に慣用されている制御軸の名称に統一して指定でき、しかも、ハンドル部材12の回転操作方向を当該送り運動に慣用されている回転操作方向に統一して手動操作できる。したがってオペレータは、刃物台R1上の所望の工具Tを被加工素材Wに径方向αへ接近させようとする際に、当該工具Tの工具装着部がT0番台であるかT10番台であるかに関わらず、ルーチンワークとして記憶している通りに、X軸を指定した上でハンドル部材12を反時計方向へ回転操作して刃物台R1を−X方向へ送り運動させればよいことになる。その結果、操作上の煩雑さが解消され、誤操作やそれに伴う工具と被加工素材との望ましくない干渉等の懸念が未然に排除される。
【0063】
図13のNC旋盤に関連する実施形態においても、NC装置30は、図3〜図5に示すフローチャートに従って、以下のように手動送り制御を遂行する。まずオペレータが、入力部14のキーボード26を使用して、刃物台R2に設定された複数の工具装着部(ツール番号T21、T22、…、T31、T32、…)のうち、手動送り動作を要求する工具Tを装着した工具装着部のツール番号を指定する。このとき、好ましくは表示部38に、CPU18の指令により、刃物台R2を模式図的に表示するとともに、刃物台R2に設定された全ての工具装着部のツール番号T21、T22、…、T31、T32、…、及び刃物台R2が属する全ての制御軸X、Y、Zを表示しておく(図9)。それによりオペレータは、表示部38の画面を参照しながらツール番号を指定できる。CPU18は、この指定に従い、刃物台R2に設定されたそれら複数の工具装着部から指定ツール番号を選択する(ステップ101)。選択した指定ツール番号は、RAM36に記憶され、また表示部38に表示される。例として図9では、表示画面上でツール番号T31が選択されており、指定ツール番号T31に対応する工具Tが矢印44により指示されている。
【0064】
次にCPU18は、ステップ102における方向対応関係及び軸名称の初期化を経て、軸入替ツール番号の判断ステップ103に進む。ここでRAM36には、予め反転ツール番号記憶領域に、ハンドル部材12の回転操作方向と操作対象の可動構造体22の送り方向との予め定めた対応関係(方向対応関係)を切り換える(すなわち反転する)ことが、慣例通りの手動操作を実現するために装着工具Tに要求される工具装着部のツール番号(図示実施形態ではT31、T32、…)が、反転ツール番号として記憶されている。他方、この実施形態では、刃物台R2が属する3つの制御軸X、Y、Zから選択した指定制御軸の既定の名称を他の制御軸の既定名称と入れ替えることが、慣例通りの手動操作を実現するために装着工具Tに要求される工具装着部のツール番号(軸入替ツール番号)は存在しない。
【0065】
そこでCPU18は、ステップ101で選択したツール番号が、RAM36に予め記憶した軸入替ツール番号に該当するか否かを判断する(ステップ103)が、例外無く該当しないので、軸名称の入替指示が無いものと認識してステップ106に進む。オペレータはそこで、キーボード26により、刃物台R2が属する制御軸X、Y、Zのうち、指定ツール番号の工具装着部に装着した工具Tを所望方向(例えば背面加工用の工具Tを被加工素材W2に芯方向へ接近させる方向)に移動させるための刃物台R2の制御軸を指定する。このときオペレータは、指定ツール番号に関わらず、当該手動操作(例えば工具Tを被加工素材W1又はW2に芯方向へ接近させる手動操作)に慣用的に使用されている制御軸(芯方向移動の場合はY軸)をそのまま指定できる。CPU18は、この軸指定に従い、刃物台R2が属する制御軸X、Y、Zから指定制御軸を選択する(ステップ106)。選択した指定制御軸は、RAM36に記憶され、また表示部38に表示される。例として図9では、表示画面上で実際の制御軸であるY軸が選択されている。
【0066】
続いてCPU18は、ステップ101で選択したツール番号が、RAM36に予め記憶した反転ツール番号に該当するか否かを判断し(ステップ107)、該当した場合はそれを方向対応関係の切換指示と認識してステップ108に進む。また、該当しない場合は、方向対応関係の切換指示が無いものと認識してステップ111に進む。なお、ステップ107における判断結果(反転ツール番号の該当の有無)は、RAM36の反転ツール番号記憶領域に、例えば該当した反転ツール番号をマークすることによって書き込むことができる。
【0067】
次にCPU18は、任意選択的ステップ108において、確認スイッチ42がON操作されているか否かを判断する。このとき表示部38には、指定制御軸に関する方向対応関係の切り換えをオペレータに承認させるための対話型記述48を画面表示することができる(図9)。確認スイッチ42がONのときは、CPU18は、ステップ107で認識した切換指示を有効にしてステップ109に進み、方向対応関係の切り換えを行なう。また、OFFのときは、ステップ107で認識した切換指示を無効にして、方向対応関係の切り換えを行なうことなくステップ111に進む。
【0068】
ステップ109では、CPU18は、ステップ101で選択した指定ツール番号とステップ106で選択した指定制御軸とを参照して、当該工具装着部を有する刃物台R2に関連する前述した既定の方向対応関係(ハンドル部材12を時計方向に回転したときに刃物台R2が指定制御軸の正方向へ送り運動する関係)を、ROM34から読み出して、その方向対応関係を切り換える(すなわち、ハンドル部材12を時計方向に回転したときに刃物台R2が指定制御軸の負方向へ送り運動するように反転させる)。この方向対応関係の切換結果は、RAM36に記憶される。
【0069】
そして、ステップ110で、CPU18は表示制御部32に指令を発し、ハンドル部材12を時計方向へ回転したときの刃物台R2の、方向対応関係切換後の基準送り方向を、指定制御軸に関連して表示部38に画面表示させる。例として図9では、指定制御軸であるY軸に関する方向対応関係切換後の刃物台R2の基準送り方向(すなわち+Y方向)が、刃物台R2の模式図的表示(背面加工用のツール番号T31、T32、…を併記)の近傍に矢印50で画面表示されている(+Yと併記されている)。この表示ステップは任意選択的ステップであるが、これによりオペレータは、表示部38の画面を参照しながら、手動送り対象工具Tを所望方向(例えば背面側の被加工素材W2に芯方向へ接近させる方向)に送るためにはハンドル部材12を時計方向及び反時計方向のいずれに回せばよいかを、容易かつ正確に判断できるようになる。
【0070】
他方、ステップ107で方向対応関係の切換指示が無いと認識した(すなわちツール番号T21、T22、…が選択されている)場合、及びステップ108で切換指示を無効にした(すなわち確認スイッチ42がOFFになっている)場合は、ステップ111で、CPU18が表示制御部32に指令を発し、ハンドル部材12を時計方向へ回転したときの刃物台R2の、既定の方向対応関係による基準送り方向を、指定制御軸に関連して表示部38に画面表示させる。例として図10に示すように、ステップ101でツール番号T21を選択した場合、指定制御軸であるY軸に関する既定の方向対応関係での刃物台R2の基準送り方向(すなわち+Y方向)が、刃物台R2の模式図的表示(正面加工用のツール番号T21、T22、…を併記)の近傍に矢印50で画面表示されている(+Yと併記されている)。
【0071】
ステップ109で方向対応関係を切り換えた後、オペレータは、所望によりステップ110で表示部38に表示した刃物台R2の指定制御軸に関する基準送り方向を参照しながら、ハンドル部材12を回転操作する。そこでCPU18は、ステップ112で、ハンドル部材12が時計方向に回転したか否かを判断し、時計方向に回転していた場合はステップ113で、駆動制御部20を介して駆動機構24(芯方向移動の場合はY軸駆動機構24d)を作動させて、刃物台R2を指定制御軸(芯方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時の送り方向とは逆のマイナス方向(芯方向移動の場合は−Y方向)へ送り運動させる。また、ステップ112でハンドル部材12が時計方向に回転していない(すなわち反時計方向へ回転している)と判断した場合は、ステップ114でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(芯方向移動の場合はY軸駆動機構24d)を作動させ、刃物台R2を指定制御軸(芯方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時の送り方向とは逆のプラス方向(芯方向移動の場合は+Y方向)へ送り運動させる。
【0072】
図9に示す例では、表示部38で+Yと表示されている矢印の向きは、実際の指定制御軸における−Y方向を示すものであるから、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R2を+Y方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を時計方向へ回転操作すると、刃物台R2は実際には−Y方向へ送り運動することになる。その結果、ツール番号T31の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材W2に芯方向へ接近させるように移動する。また、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R2を−Y方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を反時計方向へ回転操作すると、刃物台R2は実際には+Y方向へ送り運動することになる。その結果、ツール番号T31の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材W2から芯方向へ離反させるように移動する。最後にステップ115でCPU18は、手動送り制御を終了させるか否かを判断し、終了させない場合はステップ112に戻って、刃物台R2の送り運動を繰り返す。
【0073】
他方、ステップ107又は108で方向対応関係を切り換えない判断を下した場合は、オペレータは、所望によりステップ111で表示部38に表示した刃物台R2の指定制御軸に関する基準送り方向を参照しながら、ハンドル部材12を回転操作する。そこでCPU18は、ステップ116でハンドル部材12が時計方向に回転したか否かを判断し、時計方向に回転していた場合はステップ117で、駆動制御部20を介して駆動機構24(芯方向移動の場合はY軸駆動機構24d)を作動させ、刃物台R2を指定制御軸(芯方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時のプラス方向(芯方向移動の場合は+Y方向)へ送り運動させる。他方、ステップ116でハンドル部材12が時計方向に回転していない(すなわち反時計方向へ回転している)と判断した場合は、ステップ118でCPU18は、駆動制御部20を介して駆動機構24(芯方向移動の場合はY軸駆動機構24d)を作動させ、刃物台R2を指定制御軸(芯方向移動の場合はY軸)上で、既定の方向対応関係における通常時のマイナス方向(芯方向移動の場合は−Y方向)へ送り運動させる。
【0074】
図10に示す例では、表示部38で+Yと表示されている矢印の向きは実際の指定制御軸の正方向を示すから、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R2を+Y方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を時計方向へ回転操作すれば、刃物台R2はその通りに+Y方向へ送り運動する。その結果、ツール番号T21の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材W1に芯方向へ接近させるように移動する。また、オペレータが表示部38を参照しながら、刃物台R2を−Y方向へ送り運動させようとしてハンドル部材12を反時計方向へ回転操作すれば、刃物台R2はその通りに−Y方向へ送り運動する。その結果、ツール番号T21の工具Tは要求通りに、刃先を被加工素材W1から芯方向へ離反させるように移動する。最後にステップ119でCPU18は、手動送り制御を終了させるか否かを判断し、終了させない場合はステップ116に戻って、刃物台R2の送り運動を繰り返す。
【0075】
このように、図13に示す機械構成を有するNC旋盤においては、ツール番号T20番台の工具装着部とツール番号T30番台の工具装着部とで、それぞれに装着した工具Tに被加工素材W1、W2に対し同じ動作を遂行させるための刃物台R2の送り方向が逆であるから、従来の手動送り制御装置の構成では、ツール番号T30番台の工具Tを被加工素材W2に芯方向βへ接近させようとする際に、ハンドル部材12を反時計方向へ回転して刃物台R2を−Y方向へ送り運動させなければならなかった(図13(d))。しかし、刃物台R2に装着した工具Tを被加工素材W1、W2に芯方向βへ接近させるという作業自体は、通常、オペレータがルーチンワークとして、Y軸を指定した上でハンドル部材12を時計方向へ回転操作して刃物台R2を+Y方向へ送り運動させるものと記憶しているので、意図的にハンドル部材を反時計方向へ回転操作することが、ルーチンワークから逸脱する煩雑な操作と認識されていた。
【0076】
これに対し、本発明に係るNC装置30すなわち手動送り制御装置10によれば、オペレータがツール番号と制御軸とを指定するだけで、正面加工用のT20番台の工具装着部に装着した工具Tと背面加工用のT30番台の工具装着部に装着した工具Tとのいずれに対しても、刃物台R2を送り運動させるためのハンドル部材12の回転操作方向を当該送り運動に慣用されている回転操作方向に統一して手動操作できる。したがってオペレータは、刃物台R2上の所望の工具Tを被加工素材W1、W2に芯方向βへ接近させようとする際に、当該工具Tの工具装着部がT20番台であるかT30番台であるかに関わらず、ルーチンワークとして記憶している通りに、Y軸を指定した上でハンドル部材12を時計方向へ回転操作して刃物台R2を+Y方向へ送り運動させればよいことになる。その結果、操作上の煩雑さが解消され、誤操作やそれに伴う工具と被加工素材との望ましくない干渉等の懸念が未然に排除される。
【0077】
上記した実施形態はいずれも、手動送り制御装置10の入力部14の切換指示手段及び入替指示手段として、NC装置30に装備されたキーボード26によるキー入力指示機能を採用している。この構成では、操作対象の可動構造体22が刃物台R1、R2である場合に、手動送り動作を要求する工具Tを装着した工具装着部のツール番号をキー入力指定することにより、切換指示の有無をNC装置30のCPU18に判断させることができる。これに対し、操作対象の可動構造体22が主軸S1、S2である場合や、オペレータがツール番号(すなわち工具T)によらず任意に切換指示や入替指示を出したい場合には、入力部14の切換指示手段及び入替指示手段として、方向対応関係の切り換えや軸名称の入れ替えを随時に指示できる切換スイッチ52(図2)を備えることが有利である。
【0078】
この構成では、CPU18は、切換スイッチ42がON操作されたときに、方向対応関係の切換指示や軸名称の入替指示が有ったものと判断して、図3〜図5のフローチャートのステップ102、105、109、110、112〜115を適宜遂行する。なお、切換スイッチ52は、機械式スイッチとして操作盤40に搭載することもできるし、キーボード26のキー入力によりオンオフ指令する形式とすることもできる。
【0079】
以上、本発明の幾つかの好適な実施形態を説明したが、本発明はそれら実施形態に限定されず、特許請求の範囲の開示内で様々な変更及び修正を為し得るものである。例えば、本発明に係る手動送り制御装置及び手動送り制御方法は、NC旋盤以外の種々の数値制御工作機械にも適用できるものである。
【0080】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、数値制御工作機械に装備される手動送り制御装置において、ハンドル部材の回転方向と操作対象である可動構造体の送り方向との所定の対応関係を、要求に応じて切り換えることが可能になる。また、要求される送り運動を制御する制御軸の軸名称とは異なる軸名称を指定して、可動構造体を要求通りに送り運動させることが可能になる。したがって本発明によれば、数値制御工作機械における手動送り制御の操作上の煩雑さを解消して、誤操作等の懸念を排除できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る手動送り制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の手動送り制御装置を組み込んだ本発明の一実施形態によるNC装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2のNC装置による手動送り制御フローの一部分を示す。
【図4】図2のNC装置による手動送り制御フローの他部分を示す。
【図5】図2のNC装置による手動送り制御フローのさらに他部分を示す。
【図6】図2のNC装置における表示部の表示画面の一例を示す。
【図7】図2のNC装置における表示部の表示画面の他の例を示す。
【図8】図2のNC装置における表示部の表示画面のさらに他の例を示す。
【図9】図2のNC装置における表示部の表示画面のさらに他の例を示す。
【図10】図2のNC装置における表示部の表示画面のさらに他の例を示す。
【図11】図1の手動送り制御装置によって手動送り制御可能な刃物台の概略図である。
【図12】図1の手動送り制御装置によって手動送り制御可能な他の刃物台の概略図である。
【図13】図1の手動送り制御装置によって手動送り制御可能なさらに他の刃物台を、(a)〜(d)の各方向から示す概略図である。
【符号の説明】
10…手動送り制御装置
12…ハンドル部材
14…入力部
16…信号発生部
18…処理部
20…駆動制御部
22…可動構造体
24…駆動機構
26…切換指示手段
30…NC装置
32…表示制御部
38…表示部
42…確認スイッチ
52…切換スイッチ

Claims (14)

  1. 手動変位可能なハンドル部材を有する入力部と、該ハンドル部材の変位方向及び変位量に基づき操作信号を生成して出力する信号発生部と、該信号発生部から出力された該操作信号を処理して作動指令を発する処理部と、該処理部から発せられた該作動指令に従い、数値制御工作機械に装備された可動構造体の送り運動を制御する駆動制御部とを具備する手動送り制御装置において、
    前記入力部は、前記ハンドル部材の変位方向と操作対象の前記可動構造体の送り方向との予め定めた方向対応関係を切り換えるための切換指示手段を備え、
    前記処理部は、前記切換指示手段による切換指示の有無に従い、前記操作信号を処理して前記可動構造体の送り方向を決定し、決定した該送り方向を前記作動指令で前記駆動制御部に指令すること、
    を特徴とする手動送り制御装置。
  2. 操作対象の前記可動構造体が刃物台であり、前記入力部の前記切換指示手段は、該刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部を指定する手段を有し、前記処理部は、該切換指示手段で指定された該工具装着部の属性から前記切換指示の有無を判断する請求項1に記載の手動送り制御装置。
  3. 前記入力部は、前記切換指示手段による前記切換指示を有効にするための確認スイッチを備え、前記処理部は、該切換指示が該確認スイッチにより有効とされたときに前記方向対応関係を切り換える請求項1又は2に記載の手動送り制御装置。
  4. 数値制御工作機械に設定された複数の制御軸の各々に関して前記可動構造体の前記送り運動を制御できる請求項1〜3のいずれか1項に記載の手動送り制御装置であって、前記入力部は、該送り運動を制御するための指定制御軸を該複数の制御軸から選択して指定する手段と、該指定制御軸の名称を他の該制御軸の名称と入れ替えるための入替指示手段とを備え、前記処理部は、該入替指示手段による入替指示の有無に従って、該指定制御軸の指定用名称を決定し、該指定用名称で指定された該指定制御軸に沿って該可動構造体を送り運動させる手動送り制御装置。
  5. 操作対象の前記可動構造体が刃物台であり、前記入力部の前記入替指示手段は、該刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部を指定する手段を有し、前記処理部は、該入替指示手段で指定された該工具装着部の属性から前記入替指示の有無を判断する請求項4に記載の手動送り制御装置。
  6. 前記入力部は、前記入替指示手段による前記入替指示を有効にするための確認スイッチを備え、前記処理部は、該入替指示が該確認スイッチにより有効とされたときに、前記指定制御軸の名称を前記他の制御軸の名称と入れ替える請求項4又は5に記載の手動送り制御装置。
  7. 前記入力部の前記切換指示手段は、前記方向対応関係を随時に切り換え可能な切換スイッチを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の手動送り制御装置。
  8. 前記ハンドル部材を所定方向へ変位させたときの前記可動構造体の予め定めた基準送り方向を表示する表示部をさらに具備し、前記処理部は、前記切換指示手段による前記切換指示に応答して該基準送り方向を反転し、該反転した基準送り方向を該表示部に表示させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の手動送り制御装置。
  9. 前記表示部は、前記切換指示手段による前記切換指示を表示する請求項8に記載の手動送り制御装置。
  10. 前記表示部は、前記送り運動を制御するための指定制御軸の名称を表示する請求項8又は9に記載の手動送り制御装置。
  11. 数値制御工作機械に装備された可動構造体の手動送り運動を制御するための手動送り制御方法において、
    可動構造体に送り運動を生じさせる手動変位可能なハンドル部材であって、該ハンドル部材の変位方向と該可動構造体の送り方向とが予め定めた方向対応関係を有するハンドル部材を用意し、
    前記可動構造体の送り運動の種類に対応して、前記ハンドル部材の前記変位方向を特定の方向に定め、
    前記方向対応関係を切り換えて、前記特定の方向に前記ハンドル部材を変位させたときに、前記可動構造体の前記送り方向を反転して該可動構造体を送り運動させること、
    を特徴とする手動送り制御方法。
  12. 前記可動構造体が刃物台である請求項11に記載の手動送り制御方法において、該刃物台に設けられた複数の工具装着部のうち、手動送り動作を要求する工具を装着した工具装着部の属性から、前記方向対応関係を切り換えるか否かを決定する手動送り制御方法。
  13. 前記工具装着部の属性が、前記複数の工具装着部に個別に付与されたツール番号である請求項12に記載の手動送り制御方法。
  14. 数値制御工作機械に設定された複数の制御軸の各々に関して前記可動構造体の前記送り運動を制御する請求項11〜13のいずれか1項に記載の手動送り制御方法であって、該可動構造体の該送り運動の種類に応じて、該送り運動を制御するための指定制御軸の名称を他の制御軸の名称と入れ替え、該他の制御軸の名称で指定された該指定制御軸に沿って該可動構造体を送り運動させる手動送り制御方法。
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