JP2004056275A - 電力線搬送通信装置及び電力線搬送通信用フィルター - Google Patents

Abstract

【課題】電力線への送信電力と同調して、最適な次数の低域通過フィルターを選択し、さらに低域通過フィルターの消費電力効率を向上させる。
【解決手段】電力線搬送通信の送信回路において、次数を可変な低域通過フィルター６と、送信電力を可変な送信アンプ１を制御すると共に、低域通過フィルター６の次数可変信号を出力する制御回路５’を備える。この制御回路５’から出力される送信電力の制御に同期した次数可変信号により、効率的な低域通過フィルター６の次数を選択し、エイリアスの発生を抑制する。
【選択図】　　図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力線搬送通信装置に使用する半導体装置に内蔵されるデジタル変調方式の電力線搬送通信装置及び電力線搬送通信用フィルターに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来の使用帯域が１０〜４５０ＫＨｚの電力線搬送通信用装置においては、４５０ＫＨｚを超える高周波電圧に対し、４５０ＫＨｚを超え５ＭＨｚ以下で５６ｄＢμＶ、５ＭＨｚを超え３０ＭＨｚで６０ｄＢμＶを遵守し、高周波帯の不要輻射（ふくしゃ）がＡＭ／ＦＭ放送を始めとする電波通信に妨害を与えないよう、電波法施行則第４４条で規定されている。
【０００３】
しかし、スペクトラム拡散変調方式の電力線搬送通信のように、変調にサンプリング周波数ｆｓで量子化されたデジタル変調を使用する場合、サンプリング周波数に対し、実信号と対称に発生するエイリアス（折り返し信号）が、使用帯域の１０〜４５０ＫＨｚを超える高周波帯に発生する。そこで、電力線搬送通信装置には、デジタル変調回路に接続されるデジタルアナログ変換回路の後段には、時間連続のアナログフィルター（アンチエイリアスフィルター）を挿入し、エイリアスによる高周波電圧を電波法施行則第４４条の規定値以下まで抑え込めるよう設計される。
【０００４】
図６に示すように従来例の電力線搬送通信装置の送信回路は、固定利得の送信用増幅器（送信アンプ）１と、抵抗、コンデンサー、インダクターなどの受動部品で構成されるアンチエイリアスフィルター２と、デジタルアナログ変換回路（Ｄ／Ａコンバータ）３と、デジタルアナログ変換回路３に接続されたデジタル変調回路４と制御回路５を含む送信回路で構成されている。従来例のアンチエイリアスフィルター２は１種類に固定され、伝達関数の次数が６次〜８次の高次低域通過フィルターを使用していた。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の電力線搬送通信装置の送信回路は、従来例の図６に示すようにアンチエイリアスフィルター２を半導体装置に集積化する場合、使用帯域の１０〜４５０ＫＨｚでのインダクターの集積化が困難なため、受動部品で構成されたパッシブフィルターの高次低域通過フィルターを、オペアンプなどの能動素子により構成されるアクティブフィルターで構成する必要が生じる。しかし、次数の高いアクティブフィルターは消費電力が大きく、次数を上げれば上げるほど、能動素子の数が多くなり消費電力は増大するという問題があった。
【０００６】
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、高次低域通過フィルターを半導体装置に集積化する場合に、電力線への送信電力と同調して、最適な次数のフィルターを選択できるようにして、アンチエイリアスフィルターの消費電力の効率を向上させる電力線搬送通信装置及び電力線搬送通信用フィルターを提供することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明に係る請求項１に記載される電力線搬送通信装置は、電力線に接続された送信用利得可変型増幅器と、送信用利得可変型増幅器に接続され、次数を可変な低域通過フィルターと、低域通過フィルターに接続されたデジタルアナログ変換回路と、デジタルアナログ変換回路に接続されたデジタル変調回路とを有する送信回路を備え、送信回路において、送信用利得可変型増幅器の利得可変信号と同調して、制御回路からの次数可変信号に応じて低域通過フィルターの次数を可変とすることにより、デジタル変調信号で、実信号がサンプリング周波数で折り返されて発生するエイリアスを除去することを特徴とする。
【０００８】
また、請求項２に記載される電力線搬送通信装置は、請求項１の電力線搬送通信装置の送信回路に加え、電力線と接続された受信回路と、伝送状態を判定する伝送状態判定回路とを備え、送信回路において、送信用利得可変型増幅器の利得可変信号と同調して、低域通過フィルターの次数可変信号を、伝送状態の判定に応じて伝送態判定回路から出力することを特徴とする。
【０００９】
また、請求項３に記載される電力線搬送通信用フィルターは、請求項１または２記載の電力線搬送通信装置に用いる、送信用利得可変型増幅器に接続され、次数を可変かつ個別に電源オン／オフできる複数個の低域通過フィルターと、従属接続した複数個の低域通過フィルター間に挿入されて、入出力信号の経路を切り替えるスイッチとを備えたバイカッド型低域通過フィルターから成る電力線搬送通信用フィルターであって、次数可変信号によりスイッチを切り替えて、低域通過フィルターの従属接続段数の切り替えにより次数を可変し、かつ使用しない低域通過フィルターの電源を個別にオフすることを特徴とする。
【００１０】
前記構成によれば、送信電力可変信号に同期して低域通過フィルターの次数を可変とすることにより、エイリアスを除去すると共に、低消費電力とすることができる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【００１２】
図１は本発明の実施の形態１における電力線搬送通信の送信回路を示すブロック図である。ここで、前記従来例を示す図６において説明した構成部材に対応し実質的に同等の機能を有するものには同一の符号を付してこれを示し、以下の各図においても同様とする。また、図２（ａ），（ｂ）は本実施の形態１の動作を説明するアンチエイリアスフィルターの特性を示す図である。
【００１３】
図１に示すように、従来例を示す図６と比較して、電力線に接続された利得可変型の増幅器である送信アンプ１への送信電力可変信号入力、および低域通過フィルター６の次数を可変とする次数可変信号を出力する制御回路５’と、この次数可変信号に応じて次数を可変可能な低域通過フィルター６とを送信回路に設けて構成したものである。
【００１４】
そして、図２（ａ），（ｂ）に示すように、使用帯域が１０〜４５０ＫＨｚのスペクトラム拡散変調方式の電力線搬送通信で、ナイキスト周波数を９００ＫＨｚとすると、１倍サンプリングのシステムでは９００ＫＨｚを中心に、また、２倍オーバーサンプリングのシステムでは、１．８ＭＨｚを中心にエイリアスが発生する。このエイリアスの電力密度は、理想的なシステムでは実信号の電力密度と全く同じであり、現実のシステムで伝送路の高周波域での減衰や、デジタルアナログ変換回路（Ｄ／Ａコンバータ３）のアパーチャ効果等を考慮しても、実信号の電力密度に比例した電力密度をもっている。
【００１５】
一方、電波法施行則第４４条による規定は高周波電圧の絶対値で規定されている。したがって、図２（ａ）に示す本実施の形態１の説明にあるように、送信電力が小さい場合はエイリアスの電力密度は小さいため、電波法施行則第４４条の規定値である５６ｄＢμＶを超えるエイリアスの発生する周波数帯域が狭くアンチエイリアスフィルターの次数は低くてよい。
【００１６】
また、図２（ｂ）に示す送信電力が大きい場合には、エイリアスの電力密度も大きくなるため、電波法施行則第４４条の規定値である５６ｄＢμＶを超えるエイリアスの発生する周波数帯域が大きくなる。したがって、低域通過フィルター６の次数を上げてエイリアスを除去する必要が発生する。
【００１７】
そこで、図１の本実施の形態１の電力線搬送通信の送信回路では、この送信回路に、次数を可変な低域通過フィルター６と、送信電力を可変な送信アンプ１に同調して制御する制御回路５’により、この制御回路５’からの次数可変信号で効率的なアンチエイリアスフィルターの次数を選択して、エイリアスの発生を抑制する。
【００１８】
次に、図３に示す本発明の実施の形態２における電力線搬送通信の送受信回路は、実施の形態１を示す図１の送信回路に受信回路７と伝送状態判定回路８を備える。受信回路７と伝送状態判定回路８は、通信相手との伝送状態を受信エラーの数、送信相手からの信号等を用いて判定し、自己の送信電力を選択して送信アンプ１への送信電力可変信号を出力する。その際に、次数を可変な低域通過フィルター６の次数可変信号を同調して出力することで、送信回路のアンチエイリアスフィルターが最適な電力消費量で効果的にエイリアスの発生を抑え、高品質な通信を確立することができる。
【００１９】
次に、図４は本発明の実施の形態３における電力線搬送通信の送信回路を示すブロック図、図５（ａ），（ｂ），（ｃ）は本実施の形態３の動作を説明する各低域通過フィルターの特性を示す図である。本実施の形態３は前述の実施の形態１，２の次数可変型フィルターの実現方法である。図４に示すように、本実施の形態３のアンチエイリアスフィルターは、複数個の第１，第２低域通過フィルター９ａ，９ｂと、第２低域通過フィルター９ｂをパスできるようにしてバイカッド型フィルターの従属接続段数を変えることができるスイッチ１０を備え、複数個の低域通過フィルター９ａ，９ｂを個別にＯＮ／ＯＦＦできる機能をもっている。
【００２０】
いま、送信電力が小さくエイリアスの電力密度が小さいとき、アンチエイリアスフィルターの次数は低くする場合は、アンチエイリアスフィルターの第２低域通過フィルター９ｂをパスするようにスイッチ１０を切り替え、第２低域通過フィルター９ｂはＯＦＦし、第１低域通過フィルター９ａのみの特性にて、アンチエイリアスフィルターを構成する。
【００２１】
また、送信電力が大きくエイリアスの電力密度が大きいとき、アンチエイリアスフィルターの次数を高くする場合は、アンチエイリアスフィルターの第２低域通過フィルター９ｂをＯＮし、スイッチ１０を切り替えて、第１低域通過フィルター９ａと第２低域通過フィルター９ｂの従属接続のバイカッド型フィルターとして、アンチエイリアスフィルターを構成する。
【００２２】
以上の構成により、送信電力が大きくアンチエイリアスフィルターの次数が高い場合と比較して、送信電力が小さくアンチエイリアスフィルターの次数が低い場合には、スイッチ１０により切り替え、かつ電源をスイッチ１０’によりＯＦＦして、第２低域通過フィルター９ｂの消費電力を抑えることができる。
【００２３】
なお、図４に示す本実施の形態３では、２段の従属接続型のアンチエイリアスフィルターを示したが、複数段で他段階のアンチエイリアスフィルターを構成した場合には、さらに効果的に、アンチエイリアスフィルターでの消費電力を最適化することができる。
【００２４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電力線搬送通信用アンチエイリアスフィルターを半導体装置に集積化する場合に、アクティブフィルターで構成されるアンチエイリアスフィルターのエイリアス抑制効果と、アンチエイリアスフィルターで消費される電力を効率的に最適化し、半導体装置に集積化された高品質で低消費電力の電力線搬送通信装置及び電力線搬送通信用フィルターを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態１における電力線搬送通信の送信回路を示すブロック図
【図２】本実施の形態１の動作を説明する（ａ）は小送信電力時、（ｂ）は大送信電力時のアンチエイリアスフィルターの特性を示す図
【図３】本発明の実施の形態２における電力線搬送通信の送受信回路を示すブロック図
【図４】本発明の実施の形態３における電力線搬送通信の送信回路を示すブロック図
【図５】本実施の形態３の動作を説明する（ａ）は第１低域通過フィルター、（ｂ）は第２低域通過フィルター、（ｃ）は第１，第２低域通過フィルターの特性を示す図
【図６】従来例の電力線搬送通信装置の送信回路を示す図
【符号の説明】
１　送信アンプ
２　アンチエイリアスフィルター
３　Ｄ／Ａコンバータ
４　デジタル変調回路
５，５’　制御回路
６　低域通過フィルター
７　受信回路
８　伝送状態判定回路
９ａ　第１低域通過フィルター
９ｂ　第２低域通過フィルター
１０，１０’　スイッチ

Claims (3)

1. 電力線に接続された送信用利得可変型増幅器と、前記送信用利得可変型増幅器に接続され、次数を可変な低域通過フィルターと、前記低域通過フィルターに接続されたデジタルアナログ変換回路と、前記デジタルアナログ変換回路に接続されたデジタル変調回路とを有する送信回路を備え、
   前記送信回路において、前記送信用利得可変型増幅器の利得可変信号と同調して、制御回路からの次数可変信号に応じて前記低域通過フィルターの次数を可変とすることにより、デジタル変調信号で、実信号がサンプリング周波数で折り返されて発生するエイリアスを除去することを特徴とする電力線搬送通信装置。
2. 電力線に接続された送信用利得可変型増幅器と、前記送信用利得可変型増幅器に接続され、次数を可変な低域通過フィルターと、前記低域通過フィルターに接続されたデジタルアナログ変換回路と、前記デジタルアナログ変換回路に接続されたデジタル変調回路とを有する送信回路と、
   電力線と接続された受信回路と、伝送状態を判定する伝送状態判定回路とを備え、
   前記送信回路において、送信用利得可変型増幅器の利得可変信号と同調して、低域通過フィルターの次数可変信号を、伝送状態の判定に応じて前記伝送態判定回路から出力することを特徴とする電力線搬送通信装置。
3. 請求項１または２記載の電力線搬送通信装置に用いる送信用利得可変型増幅器に接続され、次数を可変かつ個別に電源オン／オフできる複数個の低域通過フィルターと、従属接続した複数個の前記低域通過フィルター間に挿入されて、入出力信号の経路を切り替えるスイッチとを備えたバイカッド型低域通過フィルターから成る電力線搬送通信用フィルターであって、
   次数可変信号により前記スイッチを切り替えて、前記低域通過フィルターの従属接続段数の切り替えにより次数を可変し、かつ使用しない前記低域通過フィルターの電源を個別にオフすることを特徴とする電力線搬送通信用フィルター。

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