JP2004055787A - 直流リアクトル - Google Patents
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Abstract
【課題】小型で、軽量で、かつ安価な直流リアクトルを提供する。
【解決手段】1個以上のコイル3を巻回した2個以上のコア11、12を磁気的空隙2を介して対向させ、その磁気的空隙2の近傍に永久磁石4を配置させて構成される直流リアクトルにおいて、前記コアが積層させた二方向性電磁鋼板から成るものであり、かつE、T、CおよびI字状コアのうちの複数個の組み合わせから成るものとした。
【選択図】 図1
【解決手段】1個以上のコイル3を巻回した2個以上のコア11、12を磁気的空隙2を介して対向させ、その磁気的空隙2の近傍に永久磁石4を配置させて構成される直流リアクトルにおいて、前記コアが積層させた二方向性電磁鋼板から成るものであり、かつE、T、CおよびI字状コアのうちの複数個の組み合わせから成るものとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータ回路などに設ける直流リアクトルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の方向性電磁鋼板を用いたリアクトルとしては、例えば特開平11−40434号公報記載の一方向性珪素鋼板の圧延方向に沿ってコ字状に屈曲されたコアを用いたものがある。
また、従来の永久磁石を用いた直流リアクトルとしては、例えば特公昭46−37128号公報や特開平8−316049号公報などに記載の永久磁石のバイアス磁界を利用する可飽和リアクタ装置または直流リアクトルがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリアクトルにおいては、以下の問題点を有していた。
(1)無方向性電磁鋼板を用いる場合には、損失が大きくなることからコアの磁束密度を低くなるように設計する必要があり、リアクトルが大きくなる。
(2)一方向性電磁鋼板を用いる場合には、磁化容易磁化方向に垂直な方向に磁束が流れたときの損失が大きい。
(3)一方向性珪素鋼板の圧延方向に沿ってコ字状に屈曲されたコアを用いる場合には、コ字状に屈曲させる加工が難しく、製造に時間および費用がかかる。
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的は、永久磁石によるバイアス磁界を利用しても損失が大きくならない小型、軽量、安価な直流リアクトルおよびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の直流リアクトルは、複数個のコアを磁気的空隙を介して対向させ、その磁気的空隙近傍に永久磁石を配置させかつ前記複数個のコアのいずれか1つ以上に1個以上のコイルを巻回して成る直流リアクトルにおいて、前記コアが積層させた二方向性電磁鋼板から成るものであることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがE、T、CおよびI字状コアのうちの複数個の組み合わせから成るものであり、各コア中に流れる磁束の方向が積層させた二方向性電磁鋼板の磁化容易磁化方向と同じにすることを特徴とする。
【0005】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがE字状とI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがT字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがI字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが2個のC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが4個のI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが対向した磁気的空隙の中に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と平行な方向となるように前記永久磁石を配置したことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが対向した磁気的空隙の横に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と垂直な方向となるように前記永久磁石およびヨークを配置したことを特徴とする。
請求項10記載の直流リアクトルの製造方法の発明は、コア中に流れる磁束の方向を容易磁化方向と一致するように二方向性電磁鋼板を打ち抜き、これを積層してコアを形成し、このコアを2個以上対向させて、このコアに1個以上のコイルを巻回し、コアが対向して形成した磁気的空隙の近傍に永久磁石を配置することを特徴とする。
上記の構成および方法によれば、積層させた二方向性電磁鋼板をコアとして用いて、かつ、磁束の流れる方向を二方向性電磁鋼板の容易磁化方向と一致させることができるので、損失を大きくすることなく永久磁石によるバイアス磁界を利用することができ、直流リアクトルの小型化、軽量化、安価化が可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。
この直流リアクトルは、E字状に打ち抜き積層した二方向性電磁鋼板からなるコア11の中央の脚にコイル3を巻回し、同様に作製したI字状コア12と磁気的空隙2を介して対向させ、中央脚の磁気的空隙2に永久磁石4を配置して成るものである。
このとき、E字状およびI字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(a)および(b)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
ここで二方向性電磁鋼板について簡単に述べておく。
磁心材料に用いられる電磁鋼板は、使用時の損失が小さくかつ磁束密度が大きいことが要求される。通常、電磁機器の磁心には、渦電流の発生を抑止して鉄損を低く押さえるため、薄くした電磁鋼板を積層して使用する。その場合の磁化方向は板面に平行な方向である。方向性電磁鋼板は、さらに板面に平行な特定の方向、すなわち板の圧延方向に平行な方向に磁化した場合に、特に優れた磁気特性を示すが、それ以外の方向に磁化した場合には、無方向性電磁鋼板に比べると劣る。このため、方向性電磁鋼板は、板の圧延方向が常に磁化の方向と一致するように、組合わせて積層したり、巻鉄心としたりしている。
鉄の結晶には磁気的な異方性があり、鉄の単結晶のモデルを立方体とすれば、立方体の面に垂直な方向、すなわち<001>軸方向に磁化した時の磁気特性がもっとも優れている。方向性電磁鋼板は、それを構成する鉄の結晶粒のほとんどが圧延方向に<001>軸が平行で、板面に[110]面が平行な方向に揃っており、この[110]<001>方位は通常ゴス方位と呼ばれている。無方向性電磁鋼板は、通常の冷延鋼板とほぼ同じ製造条件で製造されるのに対し、方向性珪素鋼板の製造では、3%前後のSiを含む鋼を用い、冷間圧延後に通常の再結晶焼鈍をおこなってから、さらに高温で焼鈍される。その焼鈍の際に、インヒビターと称する硫化物や窒化物の助けを借りてゴス方位の結晶粒を選択的に成長させる、いわゆる二次再結晶をおこなわせることが必要になる。
方向性電磁鋼板は、圧延方向の磁気特性に優れているが、それ以外の方向では、鋼板を形成する鉄結晶の<001>軸がほとんどなく磁気特性は劣る。これに対して、圧延方向に<001>軸が平行で、かつ板面に[100]面が平行に揃っている結晶組織からなる鋼板は、圧延方向に対し平行方向および直角方向で、ともに磁気特性の優れたものとなる。このような、[100]<001>方位を有する電磁鋼板を二方向性電磁鋼板と呼んでいる。
【0007】
また、永久磁石4には、コアに流れる磁束の方向と同じ方向となるように図1に示したような着磁を施している。
比較例として、本発明の実施の形態の二方向性電磁鋼板を無方向性電磁鋼板とした直流リアクトルを作製した。これを比較例1とした。
第1の実施の形態と比較例1の直流リアクトルのインダクタンス特性を測定したが、第1の実施の形態の直流リアクトルのインダクタンスは、比較例1と比べるとより大きな電流でも低下することはなかった。また、コアの発熱量も少なく、直流リアクトル全体の損失も少なかった。
そこで、第1の実施の形態および比較例1が同じインダクタンス特性および発熱量となるように設計し、各々直流リアクトルを作製した。その結果、第1の実施の形態の直流リアクトルの重量は、比較例1と比較すると2割ほど軽量にできた。
【0008】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第2の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただしT字状コア13とC字状コア14を用い、永久磁石4は図2に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。T字状およびC字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(c)および(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第2の実施の形態の構成によれば、永久磁石4が主磁束に配置していないため減磁の恐れが少なく、第1の実施の形態に係る直流リアクトルと比べてもより高い電流や高温時でも使用することができた。
【0009】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第3の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただしE字状コア11の代わりにC字状コア14を用い、永久磁石4は図3に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。I字状およびC字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(b)および(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第3の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
【0010】
(第4の実施の形態)
図4は本発明の第4の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第4の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただし2個のC字状コア14を対向させて用い、永久磁石4は図4に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。
C字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第4の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
【0011】
(第5の実施の形態)
図5は本発明の第5の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第5の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただし4個のI字状コア13を口形に対向させて用い、永久磁石4は図5に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。
I字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(b)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第5の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
したがって、本発明は、コアの形状や個数、コイルや磁石の位置や個数には依存しないことが分かった。
【0012】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、積層させた二方向性電磁鋼板をコアとして用いるので、損失を大きくすることなく永久磁石によるバイアス磁界を利用することができるため、小型、軽量、安価な直流リアクトルが得られる。
このことは、従来の無方向性電磁鋼板を用いた場合の損失が大きいという問題点を解消するものであり、直流リアクトルを搭載するインバータなどの小型、軽量、安価化など多大の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図6】本発明に用いるコアの形状と容易磁化方向の説明図である。
【符号の説明】
1.コア
11.E字状コア
12.I字状コア
13.T字状コア
14.C字状コア
2.磁気的空隙
3.コイル
4.永久磁石
5.ヨーク
6.容易磁化方向
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータ回路などに設ける直流リアクトルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の方向性電磁鋼板を用いたリアクトルとしては、例えば特開平11−40434号公報記載の一方向性珪素鋼板の圧延方向に沿ってコ字状に屈曲されたコアを用いたものがある。
また、従来の永久磁石を用いた直流リアクトルとしては、例えば特公昭46−37128号公報や特開平8−316049号公報などに記載の永久磁石のバイアス磁界を利用する可飽和リアクタ装置または直流リアクトルがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリアクトルにおいては、以下の問題点を有していた。
(1)無方向性電磁鋼板を用いる場合には、損失が大きくなることからコアの磁束密度を低くなるように設計する必要があり、リアクトルが大きくなる。
(2)一方向性電磁鋼板を用いる場合には、磁化容易磁化方向に垂直な方向に磁束が流れたときの損失が大きい。
(3)一方向性珪素鋼板の圧延方向に沿ってコ字状に屈曲されたコアを用いる場合には、コ字状に屈曲させる加工が難しく、製造に時間および費用がかかる。
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的は、永久磁石によるバイアス磁界を利用しても損失が大きくならない小型、軽量、安価な直流リアクトルおよびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の直流リアクトルは、複数個のコアを磁気的空隙を介して対向させ、その磁気的空隙近傍に永久磁石を配置させかつ前記複数個のコアのいずれか1つ以上に1個以上のコイルを巻回して成る直流リアクトルにおいて、前記コアが積層させた二方向性電磁鋼板から成るものであることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがE、T、CおよびI字状コアのうちの複数個の組み合わせから成るものであり、各コア中に流れる磁束の方向が積層させた二方向性電磁鋼板の磁化容易磁化方向と同じにすることを特徴とする。
【0005】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがE字状とI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがT字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアがI字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが2個のC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項2記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが4個のI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが対向した磁気的空隙の中に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と平行な方向となるように前記永久磁石を配置したことを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトルにおいて、前記コアが対向した磁気的空隙の横に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と垂直な方向となるように前記永久磁石およびヨークを配置したことを特徴とする。
請求項10記載の直流リアクトルの製造方法の発明は、コア中に流れる磁束の方向を容易磁化方向と一致するように二方向性電磁鋼板を打ち抜き、これを積層してコアを形成し、このコアを2個以上対向させて、このコアに1個以上のコイルを巻回し、コアが対向して形成した磁気的空隙の近傍に永久磁石を配置することを特徴とする。
上記の構成および方法によれば、積層させた二方向性電磁鋼板をコアとして用いて、かつ、磁束の流れる方向を二方向性電磁鋼板の容易磁化方向と一致させることができるので、損失を大きくすることなく永久磁石によるバイアス磁界を利用することができ、直流リアクトルの小型化、軽量化、安価化が可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。
この直流リアクトルは、E字状に打ち抜き積層した二方向性電磁鋼板からなるコア11の中央の脚にコイル3を巻回し、同様に作製したI字状コア12と磁気的空隙2を介して対向させ、中央脚の磁気的空隙2に永久磁石4を配置して成るものである。
このとき、E字状およびI字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(a)および(b)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
ここで二方向性電磁鋼板について簡単に述べておく。
磁心材料に用いられる電磁鋼板は、使用時の損失が小さくかつ磁束密度が大きいことが要求される。通常、電磁機器の磁心には、渦電流の発生を抑止して鉄損を低く押さえるため、薄くした電磁鋼板を積層して使用する。その場合の磁化方向は板面に平行な方向である。方向性電磁鋼板は、さらに板面に平行な特定の方向、すなわち板の圧延方向に平行な方向に磁化した場合に、特に優れた磁気特性を示すが、それ以外の方向に磁化した場合には、無方向性電磁鋼板に比べると劣る。このため、方向性電磁鋼板は、板の圧延方向が常に磁化の方向と一致するように、組合わせて積層したり、巻鉄心としたりしている。
鉄の結晶には磁気的な異方性があり、鉄の単結晶のモデルを立方体とすれば、立方体の面に垂直な方向、すなわち<001>軸方向に磁化した時の磁気特性がもっとも優れている。方向性電磁鋼板は、それを構成する鉄の結晶粒のほとんどが圧延方向に<001>軸が平行で、板面に[110]面が平行な方向に揃っており、この[110]<001>方位は通常ゴス方位と呼ばれている。無方向性電磁鋼板は、通常の冷延鋼板とほぼ同じ製造条件で製造されるのに対し、方向性珪素鋼板の製造では、3%前後のSiを含む鋼を用い、冷間圧延後に通常の再結晶焼鈍をおこなってから、さらに高温で焼鈍される。その焼鈍の際に、インヒビターと称する硫化物や窒化物の助けを借りてゴス方位の結晶粒を選択的に成長させる、いわゆる二次再結晶をおこなわせることが必要になる。
方向性電磁鋼板は、圧延方向の磁気特性に優れているが、それ以外の方向では、鋼板を形成する鉄結晶の<001>軸がほとんどなく磁気特性は劣る。これに対して、圧延方向に<001>軸が平行で、かつ板面に[100]面が平行に揃っている結晶組織からなる鋼板は、圧延方向に対し平行方向および直角方向で、ともに磁気特性の優れたものとなる。このような、[100]<001>方位を有する電磁鋼板を二方向性電磁鋼板と呼んでいる。
【0007】
また、永久磁石4には、コアに流れる磁束の方向と同じ方向となるように図1に示したような着磁を施している。
比較例として、本発明の実施の形態の二方向性電磁鋼板を無方向性電磁鋼板とした直流リアクトルを作製した。これを比較例1とした。
第1の実施の形態と比較例1の直流リアクトルのインダクタンス特性を測定したが、第1の実施の形態の直流リアクトルのインダクタンスは、比較例1と比べるとより大きな電流でも低下することはなかった。また、コアの発熱量も少なく、直流リアクトル全体の損失も少なかった。
そこで、第1の実施の形態および比較例1が同じインダクタンス特性および発熱量となるように設計し、各々直流リアクトルを作製した。その結果、第1の実施の形態の直流リアクトルの重量は、比較例1と比較すると2割ほど軽量にできた。
【0008】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第2の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただしT字状コア13とC字状コア14を用い、永久磁石4は図2に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。T字状およびC字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(c)および(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第2の実施の形態の構成によれば、永久磁石4が主磁束に配置していないため減磁の恐れが少なく、第1の実施の形態に係る直流リアクトルと比べてもより高い電流や高温時でも使用することができた。
【0009】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第3の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただしE字状コア11の代わりにC字状コア14を用い、永久磁石4は図3に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。I字状およびC字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(b)および(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第3の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
【0010】
(第4の実施の形態)
図4は本発明の第4の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第4の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただし2個のC字状コア14を対向させて用い、永久磁石4は図4に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。
C字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(d)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第4の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
【0011】
(第5の実施の形態)
図5は本発明の第5の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図を示している。第5の実施の形態に係る直流リアクトルは、第1の実施の形態と同様にして作製されるが、ただし4個のI字状コア13を口形に対向させて用い、永久磁石4は図5に示したように着磁を施し、かつヨーク5を配置して成るものである。
I字状の二方向性電磁鋼板は、図6の(b)に示したような容易磁化方向6となるように打ち抜いている。
第5の実施の形態の構成によっても二方向性電磁鋼板の利用効果が大きいことが確認できた。
したがって、本発明は、コアの形状や個数、コイルや磁石の位置や個数には依存しないことが分かった。
【0012】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、積層させた二方向性電磁鋼板をコアとして用いるので、損失を大きくすることなく永久磁石によるバイアス磁界を利用することができるため、小型、軽量、安価な直流リアクトルが得られる。
このことは、従来の無方向性電磁鋼板を用いた場合の損失が大きいという問題点を解消するものであり、直流リアクトルを搭載するインバータなどの小型、軽量、安価化など多大の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る直流リアクトルの正断面図である。
【図6】本発明に用いるコアの形状と容易磁化方向の説明図である。
【符号の説明】
1.コア
11.E字状コア
12.I字状コア
13.T字状コア
14.C字状コア
2.磁気的空隙
3.コイル
4.永久磁石
5.ヨーク
6.容易磁化方向
Claims (10)
- 複数個のコアを磁気的空隙を介して対向させ、その磁気的空隙近傍に永久磁石を配置させかつ前記複数個のコアのいずれか1つ以上に1個以上のコイルを巻回して成る直流リアクトルにおいて、前記コアが積層させた二方向性電磁鋼板から成るものであることを特徴とする直流リアクトル。
- 前記コアがE、T、CおよびI字状コアのうちの複数個の組み合わせから成るものであり、各コア中に流れる磁束の方向が積層させた二方向性電磁鋼板の磁化容易磁化方向と同じにすることを特徴とする請求項1記載の直流リアクトル。
- 前記コアがE字状とI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2記載の直流リアクトル。
- 前記コアがT字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2記載の直流リアクトル。
- 前記コアがI字状とC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2記載の直流リアクトル。
- 前記コアが2個のC字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2記載の直流リアクトル。
- 前記コアが4個のI字状の積層させた二方向性電磁鋼板を組み合わせたものであることを特徴とする請求項2記載の直流リアクトル。
- 前記コアが対向した磁気的空隙の中に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と平行な方向となるように前記永久磁石を配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトル。
- 前記コアが対向した磁気的空隙の横に永久磁石の磁化方向がコア中に流れる磁束の方向と垂直な方向となるように前記永久磁石およびヨークを配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の直流リアクトル。
- 前記コア中に流れる磁束の方向を容易磁化方向と一致するように二方向性電磁鋼板を打ち抜き、これを積層してコアを形成し、このコアを2個以上対向させ、1個以上のコイルを前記コアに巻回し、該コアが対向して形成した磁気的空隙の近傍に永久磁石を配置することを特徴とする直流リアクトルの製造方法。
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JP2019537248A (ja) * | 2016-09-30 | 2019-12-19 | アペラム | カットアンドスタックタイプトランス用のトランスコアおよびそれを備えるトランス |
KR20200100622A (ko) * | 2017-10-26 | 2020-08-26 | 브이디엘 인에이블링 테크놀로지스 그룹 비.브이. | 자기 베어링 조립체뿐만 아니라 하나 이상의 이러한 자기 베어링 조립체를 구현하는 선형 가이드웨이 조립체 |
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2002
- 2002-07-19 JP JP2002210578A patent/JP2004055787A/ja not_active Abandoned
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