JP2004055484A - 電子放出素子の製造方法、及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】カーボンナノチューブなどの炭素系針状物質を用いてエミッタを形成する場合に、炭素系針状物質の絡み合いや配向性の不均一によって高い発光効率が得られないことがある。
【解決手段】電子放出素子の製造方法として、絶縁基板3の一面上にカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6を順に積層する工程と、絶縁基板3上にカソード電極層4を部分的に露出する状態でゲートホール7を形成する工程と、ゲートホール7内のカソード電極層4上に複数の炭素系針状物質4によってエミッタ8を形成する工程と、絶縁基板3の裏面に電極層13を形成する工程と、高圧電源14を用いてカソード電極層4と電極層13の間に電圧を印加するとともに、ゲート電極層6にカソード電極層4と同じ電圧を印加することにより、絶縁基板3に対して複数の炭素系針状物質9をほぼ垂直に配向させる工程とを有する。
【選択図】 図6
【解決手段】電子放出素子の製造方法として、絶縁基板3の一面上にカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6を順に積層する工程と、絶縁基板3上にカソード電極層4を部分的に露出する状態でゲートホール7を形成する工程と、ゲートホール7内のカソード電極層4上に複数の炭素系針状物質4によってエミッタ8を形成する工程と、絶縁基板3の裏面に電極層13を形成する工程と、高圧電源14を用いてカソード電極層4と電極層13の間に電圧を印加するとともに、ゲート電極層6にカソード電極層4と同じ電圧を印加することにより、絶縁基板3に対して複数の炭素系針状物質9をほぼ垂直に配向させる工程とを有する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出型の電子放出素子の製造方法と、その電子放出素子を備える表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
図10は従来の表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図11はその概略斜視図である。図においては、カソード基板51とアノード基板52とが微小なギャップを介して対向状態に配置されている。カソード基板51とアノード基板52との間は真空状態に維持される。カソード基板51は、ベース基板53と、カソード電極層54と、抵抗層55と、絶縁層56と、ゲート電極層57、エミッタ58とを備えている。ゲート電極層57および絶縁層56にはゲートホール59が形成されている。また、ゲートホール59内にはコーン形状(略円錐形)のエミッタ58が形成されている。このエミッタ58はスピント型エミッタとも呼ばれる。一方、アノード基板52は、ベース基板60と、アノード電極層61と、蛍光体層62とを備えている。アノード電極層61はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるもので、蛍光体層62は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて配置したものである。
【0004】
ここで、上記構成の表示装置(FED)の製造プロセスについて簡単に説明する。先ず、カソード基板51を得るにあたっては、ベース基板53上に、カソード電極層54、抵抗層55、絶縁層56およびゲート電極層57を蒸着法によって順に積層する。次に、フォトプロセス(フォトレジスト塗布、パターニング、エッチング)を施して、ゲート電極層57および絶縁層56にゲートホール59を形成した後、フォトレジストを除去する。
【0005】
次いで、ベース基板53を回転させながら、その基板面に対して斜め方向からアルミニウムなどを蒸着させることにより、ゲート電極層57の表面とその開口縁部にのみアルミニウムからなる剥離層を形成する。続いて、剥離層の上からエミッタ材料となる金属、例えばモリブデンを堆積させる。これにより、ゲートホール59の開口径がモリブデンの堆積とともに徐々に小さくなり、最終的にゲートホール59が完全に閉じられる。その結果、ゲートホール59内にエミッタ材料(モリブデン)の堆積によってコーン形状のエミッタ58が形成される。その後、ゲート電極層57上の不要なエミッタ材料を剥離層とともにエッチングによって除去する。
【0006】
一方、アノード基板52を得るにあたっては、ベース基板60上にITO等のアノード電極層61を形成した後、蛍光体材料の塗布によって蛍光体層62を形成する。また、こうして得られたカソード基板51とアノード基板52とを、例えば0.2〜1.0mmのギャップで真空状態に封止する。以上の製造プロセスでは、エミッタ58とゲート電極層57との間の距離がサブミクロンレベルに制御されることから、それらの間に数十ボルトの電圧を印加することにより、エミッタ58の先端部に電界を集中させ、これに伴うトンネル効果によってエミッタ58から真空中に電子を放出させることができる。その際、抵抗層55は、例えばエミッタ58への放電電流が大きくなった場合に、抵抗による電圧降下の増大によってエミッタ58に作用する実効電圧を減少させ、逆に放電電流が小さくなった場合はエミッタ58に作用する実効電圧を増加させることにより、放電電流を安定化させる役目を果たす。
【0007】
ところで近年においては、電界放出型カソードの構成として、非常に鋭利な先端が無数に得られるカーボンナノチューブを用いたエミッタ構造が提案されている。一般にカーボンナノチューブは高いアスペクト比を有し、先端の曲率半径も非常に小さいため、高い発光効率を実現する電子放出源として注目されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブでエミッタを形成する手法の一つとして、カーボンナノチューブを他の材料に混ぜてペースト化し、これによって得られたペースト材料を印刷法等によってカソード電極層上に塗布する方法が知られている。しかしながら、この方法ではカーボンナノチューブが互いに絡まり合って束状になり、カーボンナノチューブの向きも不均一になるそのため、カーボンナノチューブの先端部に電界が集中しにくくなるとともに、電子の飛び出す方向がばらついてフォーカス特性の制御が困難になる。
【0009】
そこで、例えば特開2000−294119号公報には、カソード電極層に対してアノード電極層を正電位とした電圧を印加することにより、アノード電極層とカソード電極層との間に電界を発生させ、この電界の力によってカーボンナノチューブを垂直に配向させる技術が開示されている。しかしながら、この公報に開示された技術では、カーボンナノチューブを垂直に配向させるにあたって、真空中で電界を与えると電界放出が起こり、大気圧中で電界を与えると放電が起こる。そのため、カソード電極層とアノード電極の間に高い電圧を印加することができない。よって、カーボンナノチューブを垂直に配向しようとする力が弱く、十分な効果が得られない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子の製造方法は、絶縁基板の一面上にカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層を順に積層する第1工程と、絶縁基板上にカソード電極層を部分的に露出する状態でゲートホールを形成する第2工程と、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成する第3工程と、カソード電極層に電圧を印加することにより、絶縁基板に対して複数の炭素系針状物質をほぼ垂直に配向させる第4工程とを含むものである。
【0011】
上記電子放出素子の製造方法において、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、カソード電極層に電圧を印加することにより、ゲートホール内のカソード電極層上でエミッタを形成する複数の炭素系針状物質がカソード電極層とともに帯電し、この帯電による反発力によって各々の炭素系針状物質が絶縁基板に対してほぼ垂直に配向される。また、カソード電極層に電圧を印加した際の電気的な絶縁状態が絶縁基板によって確実に保持されるため、大気中で放電したり真空中で電界放出したりすることがない。よって、炭素系針状物質を垂直に配向させるにあたり、カソード電極層に高い電圧を印加することが可能となる。
【0012】
本発明に係る表示装置は、絶縁基板の一面上に順に積層されたカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層と、絶縁基板上にカソード電極層を部分的に露出する状態で形成されたゲートホールと、このゲートホール内でカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によって形成されたエミッタと、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加する電圧印加手段とを備えるものである。
【0013】
上記表示装置においては、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加することにより、ゲートホール内のカソード電極層上でエミッタを形成する複数の炭素系針状物質がカソード電極層とともに帯電し、この帯電による反発力によって各々の炭素系針状物質が絶縁基板に対してほぼ垂直に配向される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図2はその概略斜視図である。図においては、カソード基板1とアノード基板2とが微小なギャップを介して対向状態で配置されている。カソード基板とアノード基板2との間は真空状態に維持される。カソード基板1は、ガラス基板等の絶縁基板からなるベース基板3と、このベース基板3上に順に積層されたカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6と、ベース基板3上にカソード電極層4を部分的に露出する状態で形成されたゲートホール7と、このゲートホール7内のカソード電極層4上に形成されたエミッタ8とを備え、これらの構成要素によって電界放出型の電子放出素子が構成されている。
【0016】
上述した構成要素のうち、カソード電極層4は、図3に示すように、ベース基板3上で複数のカソードラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成され、ゲート電極層6はベース基板3上で上記カソードラインに交又する複数のゲートラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成されている。カソード電極層4とゲート電極層6の交叉部分は一つの画素を構成するものとなる。絶縁層5はカソード電極層4とゲート電極層6との間で電気的な絶縁作用をなすもので、それらの電極間に層状に形成されている。ゲートホール7は、絶縁層5およびゲート電極層6を貫通する状態で、カソード電極層4とゲート電極層6の交叉部分に複数個形成されている。ゲートホール7の孔形状は円形状となっている。
【0017】
エミッタ8は、ゲートホール7内でカソード電極層4上に形成されている。このエミッタ8は、カソード電極層4上で複数(多数)の炭素系針状物質9により形成されている。炭素系針状物質9としては、先鋭なエッジ部を有するカーボンナノチューブを用いることが望ましい。カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めた1層又は多層の円筒状をなすもので、直径が0.7〜50nm程度で長さが数μmの高いアスペクト比をもつ材料である。ただし、エミッタ材料として利用可能な微細な針状構造を有する物質であれば、カーボンナノチューブ以外のものを炭素系針状物質9として用いてもよい。
【0018】
一方、アノード基板2は、FEDの前面パネルを構成するもので、透明ガラス基板からなるベース基板10と、このベース基板10上に積層されたアノード電極層11および蛍光体層12を備えて構成されている。アノード電極層11はITO等の透明電極によって形成され、蛍光体層12は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて形成されている。
【0019】
上記構成からなる電子放出素子を備える表示装置において、アノード電極層11に高圧のアノード電圧を印加する一方、カソード電極層4にカソード電圧、ゲート電極層6に正のゲート電圧をそれぞれ印加すると、エミッタ8を形成する各々の炭素系針状物質9の先鋭なエッジ部(先端部)に電界が集中し、この電界集中に伴うトンネル効果によってエミッタ8から真空中に電子が放出される。こうして放出された電子は、アノード基板2のアノード電極11に引き寄せられて蛍光体層12に衝突する。これにより、電子が衝突した蛍光体層12の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
【0020】
図4は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の製造方法として、特に電子放出素子を構成するカソード基板1の製造プロセスを示すフローチャートである。
【0021】
[カソード電極層の形成工程;S1]
先ず、ベース基板3の表面にカソード電極層4を形成する。カソード電極層4を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。カソード電極層4の形成パターンはストライプ状であって、その形成方法としてはペースト状の電極材料を印刷により塗布する印刷法を採用することが簡便である。ただし、他の形成方法として、周知のフォトリソグラフィ工程によってカソード電極層4をストライプ状に形成してもよい。この場合の塗布方法としてはスピンコート法を用いることができる。
【0022】
[絶縁層の形成工程;S2]
次に、カソード電極層4を覆う状態でベース基板3上に絶縁層5を形成する。絶縁層5を構成する材料としては、SiO2(二酸化シリコン)などのように電気的に高い絶縁性を有する材料であれば、どのような材料を用いてもよい。絶縁層5はベース基板3の上面を全体的に覆うように層状に形成される。絶縁層5の形成方法としては、例えば、スピンコート法、印刷法、スパッタ法、蒸着法などのいわゆる成膜法を用いることができる。
【0023】
[ゲート電極層の形成工程;S3]
次いで、上述のように積層したベース基板3の絶縁層5上にゲート電極層6を形成する。ゲート電極層6を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。ゲート電極層6の形成パターンは、カソード電極層4にほぼ直交するストライプ状であって、その形成方法としては上記カソード電極層4の形成方法と同様の方法を用いることができる。これにより、図5(A)に示すように、ベース基板3上にカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6を順に積層した状態の構造体が得られる。
【0024】
[ゲートホールの形成工程;S4]
続いて、ゲート電極層6および絶縁層5の所定部位(カソード電極層4とゲート電極層6の各電極ラインが交叉する部分;1画素部分)を、所望するゲートホール7の配置に合わせて部分的にエッチングすることにより、図5(B)に示すように、カソード電極層4の一部を露出する状態でベース基板3上にゲートホール7を形成する。このゲートホール7は上記所定部位に複数形成される。エッチング方法としては、ウェット式、ドライ式のどちらを採用してもよい。
【0025】
[エミッタの形成工程;S5]
次いで、図5(C)に示すように、先ほど形成したゲートホール7内のカソード電極層4上に複数の炭素系針状物質9によってエミッタ8を形成する。エミッタ8の形成は、複数の炭素系針状物質9を混合したペースト材料(不図示)を用いて行う。具体的には、例えば、複数(多数)のカーボンナノチューブを感光性の有機バインダと混合し、これによって得られたペースト材料を印刷法等によりベース基板3の表面側の全面に塗布した後、フォトリソグラフィのマスキング技術を用いてゲートホール7内にペースト材料を選択的に残すことにより行う。
【0026】
[電極層の形成工程;S6]
次に、図6(A)に示すように、ベース基板3の裏面に電極層13を形成する。電極層13はベース基板3の裏面の全域にわたってベタ状に形成する。電極層13の形成手法としては、導電性ペーストをスピンコート方式で塗布する方法などを用いることができる。また、これ以外にも、導電フィルムやアルミニウム泊などの導電体をベース基板3の裏面に貼り付けたり押し当てたりする方法を用いることができる。
【0027】
[電圧印加工程;S7]
続いて、図6(B)に示すように、ベース基板3の表面のカソード電極層4と同裏面の電極層13との間に高圧電源14を用いて電圧(高圧)を印加することにより、図6(C)に示すように、ベース基板3に対して複数の炭素系針状物質9をほぼ垂直に配向させる。印加電圧は、例えば10kV程度の高圧とする。このとき、カソード電極層4とゲート電極層6にそれぞれ同じ電圧を印加することにより、それらの電極層4,6を互いに同電位にする。また、カソード電極層4を構成する全てのカソードラインと、ゲート電極層6を構成する全てのゲートラインに対して、それぞれ同じ電圧を印加する。なお、ベース基板3の表裏面では、カソード電極層4およびゲート電極層6を正極、電極層13を負極として電圧を印加してもよいし、カソード電極層4およびゲート電極層6を負極、電極層13を正極として電圧を印加してもよい。
【0028】
このようにベース基板3の表裏面の電極層4,13間に電圧を印加することにより、ベース基板3の表面側では、カソード電極層4とその層上のエミッタ8に電荷が誘導される。すなわち、カソード電極層4を正極として高圧を印加すると正の電荷が誘導され、カソード電極層4を負極として高圧を印加すると負の電荷が誘導される。これに対して、カソード電極層4のエミッタ8は導電性の炭素系針状物質9によって形成されているため、カソード電極層4と各々の炭素系針状物質9は同じ極性で帯電した状態となる。
【0029】
そうすると、カソード電極層4と炭素系針状物質9の間に帯電による反発力が作用し、各々の炭素系針状物質9の間にも帯電による反発力が作用する。これにより、各々の炭素系針状物質9は、カソード電極層4から離間する方向(ベース基板3に対して垂直な方向)に力を受けると同時に、隣り合う炭素系針状物質9から離間する方向に力を受ける。その結果、エミッタ形成時には、図7(A)に示すように、各々の炭素系針状物質9が互いに絡み合ってその向きが不均一になっていたものが、上述のように電圧を印加することにより、図7(B)に示すように、各々の炭素系針状物質9が互いに分離した状態でベース基板3に対しほぼ垂直に配向された状態となる。そのため、炭素系針状物質9の先端に電界が集中しやすくなるとともに、電子の放出方向が垂直方向に沿って均一になるためフォーカス特性の制御が容易になる。
【0030】
また、ゲート電極層6にカソード電極層4と同じ電圧を印加しているため、ゲート電極層6も炭素系針状物質9と同じ極性で帯電した状態となる。そのため、ゲートホール7の側壁部の近傍で、ゲート電極層6と炭素系針状物質9との間にも帯電による反発力が作用する。この反発力により、ゲート電極層6と炭素系針状物質9との間に適度な離間距離を確保した状態で、各々の炭素系針状物質9を垂直に配向させることができる。
【0031】
さらに、高圧電源14が印加する電圧波形をパルス波形または交流波形とすることにより、その波形周波数に応じた物理的な微振動を炭素系針状物質9に加えることができる。これにより、一定レベルの電圧を印加する場合に比較して、炭素系針状物質9のからみをほぐす効力を高めることができる。ちなみに、印加電圧の波形周波数は10Hz〜1kHzの範囲が適当である。また、電圧を印加している時間は5分程度が適当である。
【0032】
また、電圧の印加に際しては、ベース基板3によって電気的な絶縁状態が保持されるため、大気中で電圧の印加を行っても放電する恐れはない。また、仮に真空中で電圧の印加を行ったとしても、炭素系針状物質9の先端部から電子が放出される閾値電圧(通常は1〜5V/μm)からすると、電界放出が起こる恐れは皆無である。よって、炭素系針状物質9を垂直に配向させる際に、従来よりも高い電圧(例えば10kV/mm以上の電圧)を印加することができるため、十分な効果が期待できる。
【0033】
[焼成工程;S8]
その後、エミッタ形成に用いたペースト材料を焼成することにより、複数の炭素系針状物質9をカソード電極層4上に固着させる。このように電圧の印加を行った後にペースト材料を焼成することにより、炭素系針状物質9の動きの自由度が高い状態で配向性を制御できるため、より好ましいものとなる。ただし、ペースト材料の焼成処理は、上記電圧印加工程;S7で電圧を印加している状態で行ってもよい。また、電圧の印加を行っている状態で仮焼成(換言すると炭素系針状物質の仮固定)を行い、その後、電圧の印加を終了してから本焼成(換言すると炭素系針状物質の本固定)を行ってもよい。仮焼成と本焼成の違いは、焼成温度や焼成時間などの処理条件の違いによる。すなわち、仮焼成とは、焼成温度を本焼成よりも低い条件としたり焼成時間を本焼成よりも短い条件とした焼成処理をいう。
【0034】
以上の製造プロセスによってカソード基板1が得られる。なお、電極層13については電圧の印加を行った後で除去してもよいが、最終的な製品形態(FEDの完成品)で動作上問題がなければ、そのまま残してもよい。また、電圧の印加によって炭素系針状物質9の向きを垂直に揃えるうえでは、必ずしも電極層13が必要ではない。この理由は、ベース基板3の表面側でカソード電極層4に電圧を印加するだけでも、上記同様にカソード電極層4と炭素系針状物質9を帯電させて、各々の炭素系針状物質9の向きを垂直に揃えることができるからである。したがって、電圧印加工程;S7の他の例として、図8に示すように、グランド(GND)に接地した高圧電源14によってカソード電極層4、好ましくはカソード電極層4とゲート電極層6の両方に電圧を印加するものとしてもよい。ただし、ベース基板3の裏面に広範囲(好ましくは全面ベタ状)に電極層13を形成し、この電極層13とカソード電極層4との間に電圧を印加した方が、ベース基板3の表面側に誘起される電荷量(帯電量)が増えて炭素系針状物質9を垂直に配向させるようとする力が強くなるため、より顕著な効果が期待できる。
【0035】
さらに、本発明の応用例として、上記電圧印加工程;S7と同様にカソード電極層4やゲート電極層6に電圧を印加する電圧印加機能を、最終製品形態の表示装置(FED)の付加的な機能として組み込むことも可能である。図9は本発明の応用例に係る表示装置の具体的な構成例を示す概略図である。図において、表示パネル100は、上記図1に示すカソード基板1とアノード基板2を対向状態に配置して真空状態に封止することにより得られるものである。表示パネル100内のカソード基板1上には、それぞれストライプ状をなすカソード電極層4とゲート電極層6が互いに交叉する状態に形成されている(図3参照)。
【0036】
表示パネル100にはカソードドライバ101とゲートドライバ102が接続されている。カソードドライバ101は、表示パネル100を駆動するにあたって、カソード電極層4の各々のカソードラインにカソード電圧(Vc)を選択的に印加するものである。このカソードドライバ101は、スイッチ回路103を介して表示パネル100内のカソード電極層4に接続されている。ゲートドライバ102は、ゲート電極層6の各々のゲートラインにゲート電圧(Vg)を選択的に印加するものである。このゲートドライバ102は、スイッチ回路104を介して表示パネル100内のゲート電極層6に接続されている。
【0037】
また、表示パネル100のアノード端子105にはオンオフ式のスイッチ106を介してアノード電圧(Va)印加用の高圧電源107が接続されている。アノード端子105は、アノード基板2のアノード電極層11(図1参照)に電気的に接続された端子である。高圧電源107は、表示パネル100を駆動するにあたって、アノード基板2のアノード電極層11に高圧のアノード電圧(Va)を印加するものである。高圧電源107とスイッチ回路103との間にはオンオフ式のスイッチ108が設けられ、高圧電源107とスイッチ回路104との間にもオンオフ式のスイッチ109が設けられている。スイッチ回路103,104およびスイッチ106,108,109の各スイッチング動作は、図示しない制御部によって個別に制御される。
【0038】
上記構成の表示装置において、表示パネル100で画像の表示を実行しているモード(以下、表示実行モードという)では、図示しない制御部の制御処理にしたがって次のようなスイッチング動作が行われる。すなわち、スイッチ回路103は、カソード電極層4とカソードドライバ101を電気的に接続するようにスイッチング動作し、スイッチ回路104は、ゲート電極層6とゲートドライバ102を電気的に接続するようにスイッチング動作する。また、スイッチ106は、高圧電源107とアノード端子105を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)し、スイッチ108は、高圧電源107とスイッチ回路103の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)し、スイッチ109は、高圧電源107とスイッチ回路104の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)する。
【0039】
これにより、カソード電極層4の各カソードラインにはカソードドライバ101によってカソード電圧(Vc)が選択的に印加される。また、ゲート電極層6の各ゲートラインにはゲートドライバ102によってゲート電圧(Vg)が選択的に印加される。これにより、表示パネル100上においては、それぞれ電圧が印加されたカソードラインとゲートラインの交叉部分で、エミッタからの電子の放出により蛍光体が発光し、この蛍光体の発光によって画像が表示される。
【0040】
一方、表示パネル100で画像の表示を停止しているモード(以下、表示停止モードという)では、図示しない制御部の制御処理にしたがって次のようなスイッチング動作が行われる。すなわち、スイッチ回路103は、カソード電極層4とカソードドライバ101の電気的な接続を断つようにスイッチング動作し、スイッチ回路104は、ゲート電極層6とゲートドライバ102の電気的な接続を断つようにスイッチング動作する。また、スイッチ106は、高圧電源107とアノード端子105の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)し、スイッチ108は、高圧電源107とスイッチ回路103を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)し、スイッチ109は、高圧電源107とスイッチ回路104を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)する。
【0041】
これにより、表示パネル100内のカソード電極層(全てのカソードライン)4は、スイッチ回路103およびスイッチ108を介して高圧電源107に電気的に接続された状態となり、表示パネル100内のゲート電極層(全てのゲートライン)6は、スイッチ回路104およびスイッチ109を介して高圧電源107と電気的に接続された状態となる。その結果、カソード電極層4とゲート電極層6の双方に対して、高圧電源107からアノード電圧(Va)を印加することが可能となる。アノード電圧(Va)は、表示実行モード時(通常動作時)に印加されるカソード電圧(Vc)やゲート電圧(Vg)よりも格段に高い電圧(一般的には10kV程度の電圧)となる。
【0042】
ここで、表示停止モードとは、例えば、表示パネル100に画像を表示している状態(表示実行モードで動作している状態)で表示装置の電源ボタンがユーザによりオフ操作されたときに、表示実行モードから移行するモードである。具体的には、表示装置の主電源が完全に切れていないスタンバイモードなどが表示停止モードの一形態に該当する。
【0043】
このように表示停止モードでカソード電極層4とゲート電極層6にそれぞれ高圧のアノード電圧(Va)を印加することにより、上記電圧印加工程;S7と同様の原理(帯電による反発力)で複数の炭素系針状物質9を垂直に配向させることができる。また、電圧の印加方式として、例えばスイッチ108,109のオンオフ動作により電圧波形をパルス状波形(または交流波形)とすることにより、炭素系針状物質9に物理的な微振動を与えることができる。さらに、上記図6(B)に示すように、ベース基板3の裏面に電極層13を形成し、この電極層13とカソード電極層4との間にアノード電圧を印加し得る構成を採用することにより、先述した場合と同様に電荷量(帯電量)の増加によって顕著な効果を得ることができる。
【0044】
ちなみに、表示停止モードで適用されるスイッチング状態(カソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧を印加した状態)は、カソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧を印加してからの経過時間(例えば、タイマーによって計測した経過時間)が予め設定された基準時間に到達した場合、あるいは上記経過時間が上記基準時間に到達する前にユーザによって電源のオン操作が行われた場合に自動的に解除される。
【0045】
このように最終製品形態の表示装置(FED)の構成として、表示停止モードでカソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧Vaを印加する手段を備えた構成を採用することにより、製品出荷後においても、アノード電圧の印加によって炭素系針状物質9を垂直に配向させ、かつこの配向状態を長期間にわたって維持することができる。そのため、炭素系針状物質9の傾きや倒れによる発光状態の経時変化を防止することができる。また、アノード電圧印加用として設けられる高圧電源17を兼用することにより、実質的にスイッチ機能の追加だけで容易に対応可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る電子放出素子の製造方法によれば、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、カソード電極層に電圧を印加することにより、絶縁基板上での帯電による反発力を利用して複数の炭素系針状物質を垂直に配向させるため、大気中での放電や真空中での電界放出を招くことなく、炭素系針状物質の配向性を向上させることができる。その結果、低い駆動電圧でより多くの電子を放出可能な電子放出素子が得られる。
【0047】
また、本発明に係る表示装置によれば、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加することにより、絶縁基板上での帯電による反発力を利用して複数の炭素系針状物質を垂直に配向させることができる。これにより、炭素系針状物質の傾きや倒れを自動的に補正し、長期にわたって高効率でかつ均一な発光状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その1)である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その2)である。
【図7】電圧印加前後の炭素系針状物質の状態を示す図である。
【図8】電圧印加工程の他の例を示す図である。
【図9】本発明の応用例に係る表示装置の構成例を示す概略図である。
【図10】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図11】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…カソード基板、2…アノード基板、3…ベース基板、4…カソード電極層、5…絶縁層、6…ゲート電極層、7…ゲートホール、8…エミッタ、9…炭素系針状物質、10…ベース基板、11…アノード電極層、12…蛍光体層、13…電極層、14…高圧電源、100…表示パネル、101…カソードドライバ、102…ゲートドライバ、103,104…スイッチ回路、105…アノード端子、106,108,109…スイッチ、107…高圧電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出型の電子放出素子の製造方法と、その電子放出素子を備える表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
図10は従来の表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図11はその概略斜視図である。図においては、カソード基板51とアノード基板52とが微小なギャップを介して対向状態に配置されている。カソード基板51とアノード基板52との間は真空状態に維持される。カソード基板51は、ベース基板53と、カソード電極層54と、抵抗層55と、絶縁層56と、ゲート電極層57、エミッタ58とを備えている。ゲート電極層57および絶縁層56にはゲートホール59が形成されている。また、ゲートホール59内にはコーン形状(略円錐形)のエミッタ58が形成されている。このエミッタ58はスピント型エミッタとも呼ばれる。一方、アノード基板52は、ベース基板60と、アノード電極層61と、蛍光体層62とを備えている。アノード電極層61はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるもので、蛍光体層62は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて配置したものである。
【0004】
ここで、上記構成の表示装置(FED)の製造プロセスについて簡単に説明する。先ず、カソード基板51を得るにあたっては、ベース基板53上に、カソード電極層54、抵抗層55、絶縁層56およびゲート電極層57を蒸着法によって順に積層する。次に、フォトプロセス(フォトレジスト塗布、パターニング、エッチング)を施して、ゲート電極層57および絶縁層56にゲートホール59を形成した後、フォトレジストを除去する。
【0005】
次いで、ベース基板53を回転させながら、その基板面に対して斜め方向からアルミニウムなどを蒸着させることにより、ゲート電極層57の表面とその開口縁部にのみアルミニウムからなる剥離層を形成する。続いて、剥離層の上からエミッタ材料となる金属、例えばモリブデンを堆積させる。これにより、ゲートホール59の開口径がモリブデンの堆積とともに徐々に小さくなり、最終的にゲートホール59が完全に閉じられる。その結果、ゲートホール59内にエミッタ材料(モリブデン)の堆積によってコーン形状のエミッタ58が形成される。その後、ゲート電極層57上の不要なエミッタ材料を剥離層とともにエッチングによって除去する。
【0006】
一方、アノード基板52を得るにあたっては、ベース基板60上にITO等のアノード電極層61を形成した後、蛍光体材料の塗布によって蛍光体層62を形成する。また、こうして得られたカソード基板51とアノード基板52とを、例えば0.2〜1.0mmのギャップで真空状態に封止する。以上の製造プロセスでは、エミッタ58とゲート電極層57との間の距離がサブミクロンレベルに制御されることから、それらの間に数十ボルトの電圧を印加することにより、エミッタ58の先端部に電界を集中させ、これに伴うトンネル効果によってエミッタ58から真空中に電子を放出させることができる。その際、抵抗層55は、例えばエミッタ58への放電電流が大きくなった場合に、抵抗による電圧降下の増大によってエミッタ58に作用する実効電圧を減少させ、逆に放電電流が小さくなった場合はエミッタ58に作用する実効電圧を増加させることにより、放電電流を安定化させる役目を果たす。
【0007】
ところで近年においては、電界放出型カソードの構成として、非常に鋭利な先端が無数に得られるカーボンナノチューブを用いたエミッタ構造が提案されている。一般にカーボンナノチューブは高いアスペクト比を有し、先端の曲率半径も非常に小さいため、高い発光効率を実現する電子放出源として注目されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブでエミッタを形成する手法の一つとして、カーボンナノチューブを他の材料に混ぜてペースト化し、これによって得られたペースト材料を印刷法等によってカソード電極層上に塗布する方法が知られている。しかしながら、この方法ではカーボンナノチューブが互いに絡まり合って束状になり、カーボンナノチューブの向きも不均一になるそのため、カーボンナノチューブの先端部に電界が集中しにくくなるとともに、電子の飛び出す方向がばらついてフォーカス特性の制御が困難になる。
【0009】
そこで、例えば特開2000−294119号公報には、カソード電極層に対してアノード電極層を正電位とした電圧を印加することにより、アノード電極層とカソード電極層との間に電界を発生させ、この電界の力によってカーボンナノチューブを垂直に配向させる技術が開示されている。しかしながら、この公報に開示された技術では、カーボンナノチューブを垂直に配向させるにあたって、真空中で電界を与えると電界放出が起こり、大気圧中で電界を与えると放電が起こる。そのため、カソード電極層とアノード電極の間に高い電圧を印加することができない。よって、カーボンナノチューブを垂直に配向しようとする力が弱く、十分な効果が得られない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子の製造方法は、絶縁基板の一面上にカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層を順に積層する第1工程と、絶縁基板上にカソード電極層を部分的に露出する状態でゲートホールを形成する第2工程と、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成する第3工程と、カソード電極層に電圧を印加することにより、絶縁基板に対して複数の炭素系針状物質をほぼ垂直に配向させる第4工程とを含むものである。
【0011】
上記電子放出素子の製造方法において、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、カソード電極層に電圧を印加することにより、ゲートホール内のカソード電極層上でエミッタを形成する複数の炭素系針状物質がカソード電極層とともに帯電し、この帯電による反発力によって各々の炭素系針状物質が絶縁基板に対してほぼ垂直に配向される。また、カソード電極層に電圧を印加した際の電気的な絶縁状態が絶縁基板によって確実に保持されるため、大気中で放電したり真空中で電界放出したりすることがない。よって、炭素系針状物質を垂直に配向させるにあたり、カソード電極層に高い電圧を印加することが可能となる。
【0012】
本発明に係る表示装置は、絶縁基板の一面上に順に積層されたカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層と、絶縁基板上にカソード電極層を部分的に露出する状態で形成されたゲートホールと、このゲートホール内でカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によって形成されたエミッタと、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加する電圧印加手段とを備えるものである。
【0013】
上記表示装置においては、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加することにより、ゲートホール内のカソード電極層上でエミッタを形成する複数の炭素系針状物質がカソード電極層とともに帯電し、この帯電による反発力によって各々の炭素系針状物質が絶縁基板に対してほぼ垂直に配向される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図2はその概略斜視図である。図においては、カソード基板1とアノード基板2とが微小なギャップを介して対向状態で配置されている。カソード基板とアノード基板2との間は真空状態に維持される。カソード基板1は、ガラス基板等の絶縁基板からなるベース基板3と、このベース基板3上に順に積層されたカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6と、ベース基板3上にカソード電極層4を部分的に露出する状態で形成されたゲートホール7と、このゲートホール7内のカソード電極層4上に形成されたエミッタ8とを備え、これらの構成要素によって電界放出型の電子放出素子が構成されている。
【0016】
上述した構成要素のうち、カソード電極層4は、図3に示すように、ベース基板3上で複数のカソードラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成され、ゲート電極層6はベース基板3上で上記カソードラインに交又する複数のゲートラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成されている。カソード電極層4とゲート電極層6の交叉部分は一つの画素を構成するものとなる。絶縁層5はカソード電極層4とゲート電極層6との間で電気的な絶縁作用をなすもので、それらの電極間に層状に形成されている。ゲートホール7は、絶縁層5およびゲート電極層6を貫通する状態で、カソード電極層4とゲート電極層6の交叉部分に複数個形成されている。ゲートホール7の孔形状は円形状となっている。
【0017】
エミッタ8は、ゲートホール7内でカソード電極層4上に形成されている。このエミッタ8は、カソード電極層4上で複数(多数)の炭素系針状物質9により形成されている。炭素系針状物質9としては、先鋭なエッジ部を有するカーボンナノチューブを用いることが望ましい。カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めた1層又は多層の円筒状をなすもので、直径が0.7〜50nm程度で長さが数μmの高いアスペクト比をもつ材料である。ただし、エミッタ材料として利用可能な微細な針状構造を有する物質であれば、カーボンナノチューブ以外のものを炭素系針状物質9として用いてもよい。
【0018】
一方、アノード基板2は、FEDの前面パネルを構成するもので、透明ガラス基板からなるベース基板10と、このベース基板10上に積層されたアノード電極層11および蛍光体層12を備えて構成されている。アノード電極層11はITO等の透明電極によって形成され、蛍光体層12は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて形成されている。
【0019】
上記構成からなる電子放出素子を備える表示装置において、アノード電極層11に高圧のアノード電圧を印加する一方、カソード電極層4にカソード電圧、ゲート電極層6に正のゲート電圧をそれぞれ印加すると、エミッタ8を形成する各々の炭素系針状物質9の先鋭なエッジ部(先端部)に電界が集中し、この電界集中に伴うトンネル効果によってエミッタ8から真空中に電子が放出される。こうして放出された電子は、アノード基板2のアノード電極11に引き寄せられて蛍光体層12に衝突する。これにより、電子が衝突した蛍光体層12の蛍光体が励起されて発光し、画像が表示される。
【0020】
図4は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の製造方法として、特に電子放出素子を構成するカソード基板1の製造プロセスを示すフローチャートである。
【0021】
[カソード電極層の形成工程;S1]
先ず、ベース基板3の表面にカソード電極層4を形成する。カソード電極層4を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。カソード電極層4の形成パターンはストライプ状であって、その形成方法としてはペースト状の電極材料を印刷により塗布する印刷法を採用することが簡便である。ただし、他の形成方法として、周知のフォトリソグラフィ工程によってカソード電極層4をストライプ状に形成してもよい。この場合の塗布方法としてはスピンコート法を用いることができる。
【0022】
[絶縁層の形成工程;S2]
次に、カソード電極層4を覆う状態でベース基板3上に絶縁層5を形成する。絶縁層5を構成する材料としては、SiO2(二酸化シリコン)などのように電気的に高い絶縁性を有する材料であれば、どのような材料を用いてもよい。絶縁層5はベース基板3の上面を全体的に覆うように層状に形成される。絶縁層5の形成方法としては、例えば、スピンコート法、印刷法、スパッタ法、蒸着法などのいわゆる成膜法を用いることができる。
【0023】
[ゲート電極層の形成工程;S3]
次いで、上述のように積層したベース基板3の絶縁層5上にゲート電極層6を形成する。ゲート電極層6を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。ゲート電極層6の形成パターンは、カソード電極層4にほぼ直交するストライプ状であって、その形成方法としては上記カソード電極層4の形成方法と同様の方法を用いることができる。これにより、図5(A)に示すように、ベース基板3上にカソード電極層4、絶縁層5およびゲート電極層6を順に積層した状態の構造体が得られる。
【0024】
[ゲートホールの形成工程;S4]
続いて、ゲート電極層6および絶縁層5の所定部位(カソード電極層4とゲート電極層6の各電極ラインが交叉する部分;1画素部分)を、所望するゲートホール7の配置に合わせて部分的にエッチングすることにより、図5(B)に示すように、カソード電極層4の一部を露出する状態でベース基板3上にゲートホール7を形成する。このゲートホール7は上記所定部位に複数形成される。エッチング方法としては、ウェット式、ドライ式のどちらを採用してもよい。
【0025】
[エミッタの形成工程;S5]
次いで、図5(C)に示すように、先ほど形成したゲートホール7内のカソード電極層4上に複数の炭素系針状物質9によってエミッタ8を形成する。エミッタ8の形成は、複数の炭素系針状物質9を混合したペースト材料(不図示)を用いて行う。具体的には、例えば、複数(多数)のカーボンナノチューブを感光性の有機バインダと混合し、これによって得られたペースト材料を印刷法等によりベース基板3の表面側の全面に塗布した後、フォトリソグラフィのマスキング技術を用いてゲートホール7内にペースト材料を選択的に残すことにより行う。
【0026】
[電極層の形成工程;S6]
次に、図6(A)に示すように、ベース基板3の裏面に電極層13を形成する。電極層13はベース基板3の裏面の全域にわたってベタ状に形成する。電極層13の形成手法としては、導電性ペーストをスピンコート方式で塗布する方法などを用いることができる。また、これ以外にも、導電フィルムやアルミニウム泊などの導電体をベース基板3の裏面に貼り付けたり押し当てたりする方法を用いることができる。
【0027】
[電圧印加工程;S7]
続いて、図6(B)に示すように、ベース基板3の表面のカソード電極層4と同裏面の電極層13との間に高圧電源14を用いて電圧(高圧)を印加することにより、図6(C)に示すように、ベース基板3に対して複数の炭素系針状物質9をほぼ垂直に配向させる。印加電圧は、例えば10kV程度の高圧とする。このとき、カソード電極層4とゲート電極層6にそれぞれ同じ電圧を印加することにより、それらの電極層4,6を互いに同電位にする。また、カソード電極層4を構成する全てのカソードラインと、ゲート電極層6を構成する全てのゲートラインに対して、それぞれ同じ電圧を印加する。なお、ベース基板3の表裏面では、カソード電極層4およびゲート電極層6を正極、電極層13を負極として電圧を印加してもよいし、カソード電極層4およびゲート電極層6を負極、電極層13を正極として電圧を印加してもよい。
【0028】
このようにベース基板3の表裏面の電極層4,13間に電圧を印加することにより、ベース基板3の表面側では、カソード電極層4とその層上のエミッタ8に電荷が誘導される。すなわち、カソード電極層4を正極として高圧を印加すると正の電荷が誘導され、カソード電極層4を負極として高圧を印加すると負の電荷が誘導される。これに対して、カソード電極層4のエミッタ8は導電性の炭素系針状物質9によって形成されているため、カソード電極層4と各々の炭素系針状物質9は同じ極性で帯電した状態となる。
【0029】
そうすると、カソード電極層4と炭素系針状物質9の間に帯電による反発力が作用し、各々の炭素系針状物質9の間にも帯電による反発力が作用する。これにより、各々の炭素系針状物質9は、カソード電極層4から離間する方向(ベース基板3に対して垂直な方向)に力を受けると同時に、隣り合う炭素系針状物質9から離間する方向に力を受ける。その結果、エミッタ形成時には、図7(A)に示すように、各々の炭素系針状物質9が互いに絡み合ってその向きが不均一になっていたものが、上述のように電圧を印加することにより、図7(B)に示すように、各々の炭素系針状物質9が互いに分離した状態でベース基板3に対しほぼ垂直に配向された状態となる。そのため、炭素系針状物質9の先端に電界が集中しやすくなるとともに、電子の放出方向が垂直方向に沿って均一になるためフォーカス特性の制御が容易になる。
【0030】
また、ゲート電極層6にカソード電極層4と同じ電圧を印加しているため、ゲート電極層6も炭素系針状物質9と同じ極性で帯電した状態となる。そのため、ゲートホール7の側壁部の近傍で、ゲート電極層6と炭素系針状物質9との間にも帯電による反発力が作用する。この反発力により、ゲート電極層6と炭素系針状物質9との間に適度な離間距離を確保した状態で、各々の炭素系針状物質9を垂直に配向させることができる。
【0031】
さらに、高圧電源14が印加する電圧波形をパルス波形または交流波形とすることにより、その波形周波数に応じた物理的な微振動を炭素系針状物質9に加えることができる。これにより、一定レベルの電圧を印加する場合に比較して、炭素系針状物質9のからみをほぐす効力を高めることができる。ちなみに、印加電圧の波形周波数は10Hz〜1kHzの範囲が適当である。また、電圧を印加している時間は5分程度が適当である。
【0032】
また、電圧の印加に際しては、ベース基板3によって電気的な絶縁状態が保持されるため、大気中で電圧の印加を行っても放電する恐れはない。また、仮に真空中で電圧の印加を行ったとしても、炭素系針状物質9の先端部から電子が放出される閾値電圧(通常は1〜5V/μm)からすると、電界放出が起こる恐れは皆無である。よって、炭素系針状物質9を垂直に配向させる際に、従来よりも高い電圧(例えば10kV/mm以上の電圧)を印加することができるため、十分な効果が期待できる。
【0033】
[焼成工程;S8]
その後、エミッタ形成に用いたペースト材料を焼成することにより、複数の炭素系針状物質9をカソード電極層4上に固着させる。このように電圧の印加を行った後にペースト材料を焼成することにより、炭素系針状物質9の動きの自由度が高い状態で配向性を制御できるため、より好ましいものとなる。ただし、ペースト材料の焼成処理は、上記電圧印加工程;S7で電圧を印加している状態で行ってもよい。また、電圧の印加を行っている状態で仮焼成(換言すると炭素系針状物質の仮固定)を行い、その後、電圧の印加を終了してから本焼成(換言すると炭素系針状物質の本固定)を行ってもよい。仮焼成と本焼成の違いは、焼成温度や焼成時間などの処理条件の違いによる。すなわち、仮焼成とは、焼成温度を本焼成よりも低い条件としたり焼成時間を本焼成よりも短い条件とした焼成処理をいう。
【0034】
以上の製造プロセスによってカソード基板1が得られる。なお、電極層13については電圧の印加を行った後で除去してもよいが、最終的な製品形態(FEDの完成品)で動作上問題がなければ、そのまま残してもよい。また、電圧の印加によって炭素系針状物質9の向きを垂直に揃えるうえでは、必ずしも電極層13が必要ではない。この理由は、ベース基板3の表面側でカソード電極層4に電圧を印加するだけでも、上記同様にカソード電極層4と炭素系針状物質9を帯電させて、各々の炭素系針状物質9の向きを垂直に揃えることができるからである。したがって、電圧印加工程;S7の他の例として、図8に示すように、グランド(GND)に接地した高圧電源14によってカソード電極層4、好ましくはカソード電極層4とゲート電極層6の両方に電圧を印加するものとしてもよい。ただし、ベース基板3の裏面に広範囲(好ましくは全面ベタ状)に電極層13を形成し、この電極層13とカソード電極層4との間に電圧を印加した方が、ベース基板3の表面側に誘起される電荷量(帯電量)が増えて炭素系針状物質9を垂直に配向させるようとする力が強くなるため、より顕著な効果が期待できる。
【0035】
さらに、本発明の応用例として、上記電圧印加工程;S7と同様にカソード電極層4やゲート電極層6に電圧を印加する電圧印加機能を、最終製品形態の表示装置(FED)の付加的な機能として組み込むことも可能である。図9は本発明の応用例に係る表示装置の具体的な構成例を示す概略図である。図において、表示パネル100は、上記図1に示すカソード基板1とアノード基板2を対向状態に配置して真空状態に封止することにより得られるものである。表示パネル100内のカソード基板1上には、それぞれストライプ状をなすカソード電極層4とゲート電極層6が互いに交叉する状態に形成されている(図3参照)。
【0036】
表示パネル100にはカソードドライバ101とゲートドライバ102が接続されている。カソードドライバ101は、表示パネル100を駆動するにあたって、カソード電極層4の各々のカソードラインにカソード電圧(Vc)を選択的に印加するものである。このカソードドライバ101は、スイッチ回路103を介して表示パネル100内のカソード電極層4に接続されている。ゲートドライバ102は、ゲート電極層6の各々のゲートラインにゲート電圧(Vg)を選択的に印加するものである。このゲートドライバ102は、スイッチ回路104を介して表示パネル100内のゲート電極層6に接続されている。
【0037】
また、表示パネル100のアノード端子105にはオンオフ式のスイッチ106を介してアノード電圧(Va)印加用の高圧電源107が接続されている。アノード端子105は、アノード基板2のアノード電極層11(図1参照)に電気的に接続された端子である。高圧電源107は、表示パネル100を駆動するにあたって、アノード基板2のアノード電極層11に高圧のアノード電圧(Va)を印加するものである。高圧電源107とスイッチ回路103との間にはオンオフ式のスイッチ108が設けられ、高圧電源107とスイッチ回路104との間にもオンオフ式のスイッチ109が設けられている。スイッチ回路103,104およびスイッチ106,108,109の各スイッチング動作は、図示しない制御部によって個別に制御される。
【0038】
上記構成の表示装置において、表示パネル100で画像の表示を実行しているモード(以下、表示実行モードという)では、図示しない制御部の制御処理にしたがって次のようなスイッチング動作が行われる。すなわち、スイッチ回路103は、カソード電極層4とカソードドライバ101を電気的に接続するようにスイッチング動作し、スイッチ回路104は、ゲート電極層6とゲートドライバ102を電気的に接続するようにスイッチング動作する。また、スイッチ106は、高圧電源107とアノード端子105を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)し、スイッチ108は、高圧電源107とスイッチ回路103の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)し、スイッチ109は、高圧電源107とスイッチ回路104の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)する。
【0039】
これにより、カソード電極層4の各カソードラインにはカソードドライバ101によってカソード電圧(Vc)が選択的に印加される。また、ゲート電極層6の各ゲートラインにはゲートドライバ102によってゲート電圧(Vg)が選択的に印加される。これにより、表示パネル100上においては、それぞれ電圧が印加されたカソードラインとゲートラインの交叉部分で、エミッタからの電子の放出により蛍光体が発光し、この蛍光体の発光によって画像が表示される。
【0040】
一方、表示パネル100で画像の表示を停止しているモード(以下、表示停止モードという)では、図示しない制御部の制御処理にしたがって次のようなスイッチング動作が行われる。すなわち、スイッチ回路103は、カソード電極層4とカソードドライバ101の電気的な接続を断つようにスイッチング動作し、スイッチ回路104は、ゲート電極層6とゲートドライバ102の電気的な接続を断つようにスイッチング動作する。また、スイッチ106は、高圧電源107とアノード端子105の電気的な接続を断つようにスイッチング動作(スイッチオフ)し、スイッチ108は、高圧電源107とスイッチ回路103を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)し、スイッチ109は、高圧電源107とスイッチ回路104を電気的に接続するようにスイッチング動作(スイッチオン)する。
【0041】
これにより、表示パネル100内のカソード電極層(全てのカソードライン)4は、スイッチ回路103およびスイッチ108を介して高圧電源107に電気的に接続された状態となり、表示パネル100内のゲート電極層(全てのゲートライン)6は、スイッチ回路104およびスイッチ109を介して高圧電源107と電気的に接続された状態となる。その結果、カソード電極層4とゲート電極層6の双方に対して、高圧電源107からアノード電圧(Va)を印加することが可能となる。アノード電圧(Va)は、表示実行モード時(通常動作時)に印加されるカソード電圧(Vc)やゲート電圧(Vg)よりも格段に高い電圧(一般的には10kV程度の電圧)となる。
【0042】
ここで、表示停止モードとは、例えば、表示パネル100に画像を表示している状態(表示実行モードで動作している状態)で表示装置の電源ボタンがユーザによりオフ操作されたときに、表示実行モードから移行するモードである。具体的には、表示装置の主電源が完全に切れていないスタンバイモードなどが表示停止モードの一形態に該当する。
【0043】
このように表示停止モードでカソード電極層4とゲート電極層6にそれぞれ高圧のアノード電圧(Va)を印加することにより、上記電圧印加工程;S7と同様の原理(帯電による反発力)で複数の炭素系針状物質9を垂直に配向させることができる。また、電圧の印加方式として、例えばスイッチ108,109のオンオフ動作により電圧波形をパルス状波形(または交流波形)とすることにより、炭素系針状物質9に物理的な微振動を与えることができる。さらに、上記図6(B)に示すように、ベース基板3の裏面に電極層13を形成し、この電極層13とカソード電極層4との間にアノード電圧を印加し得る構成を採用することにより、先述した場合と同様に電荷量(帯電量)の増加によって顕著な効果を得ることができる。
【0044】
ちなみに、表示停止モードで適用されるスイッチング状態(カソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧を印加した状態)は、カソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧を印加してからの経過時間(例えば、タイマーによって計測した経過時間)が予め設定された基準時間に到達した場合、あるいは上記経過時間が上記基準時間に到達する前にユーザによって電源のオン操作が行われた場合に自動的に解除される。
【0045】
このように最終製品形態の表示装置(FED)の構成として、表示停止モードでカソード電極層4とゲート電極層6にアノード電圧Vaを印加する手段を備えた構成を採用することにより、製品出荷後においても、アノード電圧の印加によって炭素系針状物質9を垂直に配向させ、かつこの配向状態を長期間にわたって維持することができる。そのため、炭素系針状物質9の傾きや倒れによる発光状態の経時変化を防止することができる。また、アノード電圧印加用として設けられる高圧電源17を兼用することにより、実質的にスイッチ機能の追加だけで容易に対応可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る電子放出素子の製造方法によれば、ゲートホール内のカソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、カソード電極層に電圧を印加することにより、絶縁基板上での帯電による反発力を利用して複数の炭素系針状物質を垂直に配向させるため、大気中での放電や真空中での電界放出を招くことなく、炭素系針状物質の配向性を向上させることができる。その結果、低い駆動電圧でより多くの電子を放出可能な電子放出素子が得られる。
【0047】
また、本発明に係る表示装置によれば、表示停止モードにおいてカソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加することにより、絶縁基板上での帯電による反発力を利用して複数の炭素系針状物質を垂直に配向させることができる。これにより、炭素系針状物質の傾きや倒れを自動的に補正し、長期にわたって高効率でかつ均一な発光状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その1)である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その2)である。
【図7】電圧印加前後の炭素系針状物質の状態を示す図である。
【図8】電圧印加工程の他の例を示す図である。
【図9】本発明の応用例に係る表示装置の構成例を示す概略図である。
【図10】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図11】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1…カソード基板、2…アノード基板、3…ベース基板、4…カソード電極層、5…絶縁層、6…ゲート電極層、7…ゲートホール、8…エミッタ、9…炭素系針状物質、10…ベース基板、11…アノード電極層、12…蛍光体層、13…電極層、14…高圧電源、100…表示パネル、101…カソードドライバ、102…ゲートドライバ、103,104…スイッチ回路、105…アノード端子、106,108,109…スイッチ、107…高圧電源
Claims (9)
- 絶縁基板の一面上にカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層を順に積層する第1工程と、
前記絶縁基板上に前記カソード電極層を部分的に露出する状態でゲートホールを形成する第2工程と、
前記ゲートホール内の前記カソード電極層上に複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成する第3工程と、
前記カソード電極層に電圧を印加することにより、前記絶縁基板に対して前記複数の炭素系針状物質をほぼ垂直に配向させる第4工程と
を含むことを特徴とする電子放出素子の製造方法。 - 前記第4工程において、前記カソード電極層と前記ゲート電極層にそれぞれ同じ電圧を印加する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第4工程において、前記絶縁基板の他面に電極層を形成し、この電極層と前記カソード電極層との間に電圧を印加する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第3工程において、前記複数の炭素系針状物質を混合したペースト材料を用いてエミッタを形成するとともに、
前記第4工程において、前記カソード電極層に電圧を印加した状態または電圧を印加した後で、前記ペースト材料の焼成を行う
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第3工程において、前記複数の炭素系針状物質を混合したペースト材料を用いてエミッタを形成するとともに、
前記第4工程において、前記カソード電極層に電圧を印加した状態で前記ペースト材料の仮焼成を行うとともに、前記電圧を印加した後で前記ペースト材料の本焼成を行う
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第4工程において、前記カソード電極層に印加する電圧の波形をパルス状波形または交流波形とする
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 絶縁基板の一面上に順に積層されたカソード電極層、絶縁層およびゲート電極層と、
前記絶縁基板上に前記カソード電極層を部分的に露出する状態で形成されたゲートホールと、
前記ゲートホール内で前記カソード電極層上に複数の炭素系針状物質によって形成されたエミッタと、
表示停止モードにおいて前記カソード電極層に表示実行モード時よりも高い電圧を印加する電圧印加手段と
を備えることを特徴とする表示装置。 - 前記電圧印加手段は、前記表示停止モードにおいて前記カソード電極層と前記ゲート電極層にそれぞれ同じ電圧を印加する
ことを特徴とする請求項7記載の表示装置。 - 前記絶縁基板の他面に形成された電極層を有し、
前記電圧印加手段は、前記表示停止モードにおいて前記カソード電極層と前記電極層との間に電圧を印加する
ことを特徴とする請求項7記載の表示装置。
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- 2002-07-24 JP JP2002214836A patent/JP2004055484A/ja active Pending
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