JP2004054492A - インナータイプタッチパネル、その製造方法及び表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、耐擦傷性、視認性を改善したインナータイプタッチパネルを簡便に提供することにある。
【解決手段】透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜2同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜5を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルであって、可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜2および偏光膜5を有する基材とを粘着剤層7を介して貼り合わせて可動基板を作成することを特徴とするインナータイプタッチパネル。
【選択図】図1
【解決手段】透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜2同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜5を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルであって、可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜2および偏光膜5を有する基材とを粘着剤層7を介して貼り合わせて可動基板を作成することを特徴とするインナータイプタッチパネル。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インナータイプタッチパネル、その製造方法及びそれを用いた液晶表示装置に関する。特に本発明は、高表面硬度と良好な視認性を有するインナータイプタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
タッチパネルには、抵抗膜方式、光学式、静電容量式、超音波式、および電磁誘導式等の方式がある。これらの中で、抵抗膜方式は、比較的低コストである、薄型軽量化が容易であるという特徴を有し、ディスプレイの表面に装着するだけで外部入力が可能となり、現在、特に携帯機器を中心にして広く用いられている。近年、携帯電話、情報携帯端末などの携帯機器の成長が著しく、太陽光のもとでの視認性、および薄型軽量が強く求められている。
抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜付き固定基板と押圧されて可動する透明導電膜付き可動基板が、透明導電膜同士が向かい合って空間を介して配置されたものである。押圧によって透明導電膜同士が接触した際の膜の抵抗値を検出することによって接触位置を検出する。通常、タッチパネルは、ディスプレイ表面に装着される。この場合、空気層が2層となり、各空気界面での反射による視認性の低下が著しく、さらに装置自体が厚くなるという問題点があった。
これに対して、特開平5−127822号公報、および月刊ディスプレイ1999年1月号69頁に偏光板と液晶セルの間に抵抗膜式タッチパネルの機能を挿入したインナータイプタッチパネルの提案がされている。この方式によれば、偏光板と位相差板とを組み合わせた円偏光板を液晶セルに対しタッチパネル部より外側(視認側)に配置することで、タッチパネル内部の界面反射が著しく低減され、視認性が向上する。しかしながら、インナータイプタッチパネルでは入力側表面に、偏光板の保護フイルムであるセルロースエステルフイルムが配置されるため、入力側表面の耐擦傷性、及び視認性は必ずしも十分とは言えなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐擦傷性、視認性を改善したインナータイプタッチパネルを簡便に提供することにある。さらには、耐擦傷性、視認性が改善されたインナータイプタッチパネルを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記構成の本発明により達成される。
1.透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルの製造方法であって、
可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜および偏光膜を有する基材とを粘着剤層を介して貼り合わせて可動基板を作成する工程を有することを特徴とするインナータイプタッチパネルの製造方法。
2.前記貼り合わせ工程がインラインで行われることを特徴とする上記1に記載のインナータイプタッチパネルの製造方法。
3.透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルであって、
可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜および偏光膜を有する基材とを粘着剤層を介して貼り合わせたことを特徴とするインナータイプタッチパネル。
4.粘着剤層の厚みが5〜50μmであることを特徴とする上記3に記載のインナータイプタッチパネル。
5.前記機能性を有するプラスチックフイルムが機能性層を積層してなることを特徴とする上記3または4に記載のインナータイプタッチパネル。
6.前記機能性層が鉛筆硬度2H以上のハードコート層であることを特徴とする上記5に記載のインナータイプタッチパネル。
7.前記機能性層が高屈折率層と低屈折率層とからなる反射防止層であることを特徴とする上記5または6に記載のインナータイプタッチパネル。
8.上記3〜7のいずれかに記載のインナータイプタッチパネルを用いた表示装置。
9.インナータイプタッチパネルが液晶表示装置の液晶セル上に配置されて用いられることを特徴とする上記8に記載の液晶表示装置。
【0005】
インナータイプタッチパネルの耐擦傷性、視認性の改善のため、機能性層を設けることが考えられ、偏光板の保護フイルムであるセルロースエステルフイルム上に機能性層を設けることが簡便である。しかし、機能性層として用いる素材によっては、保護フイルムとのなじみが悪い場合もある。
本発明は、そのような場合に特に有効で、機能性を有するあるいは機能性層を積層した基材フイルムであるプラスチックフイルムを積層することで、タッチパネルに耐擦傷性、視認性等の機能性を付加することが特徴で、プラスチックフイルムを貼り合せることで、本発明のタッチパネルは簡便に作製することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明のインナータイプタッチパネル(以下、単に「本発明のタッチパネル」とも言う)は、透明導電膜を備えた2枚の基板が透明導電膜が対向するように配置されてなるタッチパネル部を有する。2枚の基板のうち、表示素子に近い側の基板は固定基板で、対向するもう1枚の基板は可動基板である。また、本発明のタッチパネルは偏光膜を有し、表示装置において視認面上に配置されインナータイプタッチパネルとして使用される。さらに、可動基板上、好ましくは最表面に機能性を有するプラスチックフイルムが貼り合わされる。
プラスチックフイルムの可動基板との貼り合わせは、インラインで、具体的には偏光板作製の一連の工程中あるいはその工程に引き続き行われることが好ましい。即ち、偏光板は、偏光膜とセルロースエステルフイルムなどの保護フイルムや位相差板などと貼り合わされて作製されるが、この貼り合わせ工程と同時または直後に、プラスチックフイルムを貼り合せることが製造効率上好ましい。また、その際、透明導電膜が付与されることが、製造効率及び偏光板の性能上好ましい。
【0007】
機能性を有するプラスチックフイルムは、プラスチックフイルム自体が機能を有するものであってもよいし、プラスチックフイルムを基材としてその上に機能性層を有するものであってもよい。
機能性フイルムとしては、高硬度プラスチックフイルムや反射防止フイルムが挙げられる。機能性フイルム上にさらに下記の機能性層を積層してもよい。
機能性層としては、ハードコート層や反射防止層、さらに紫外線・赤外線吸収層、着色層、選択波長吸収性層、電磁波シールド層等の機能を有する層などがあげらる。これらの層は積層することができ、多機能を有する層とすることができる。
【0008】
本発明のインナータイプタッチパネルの一例が、図1の概略断面図として示されている。この図1に基づいてインナータイプタッチパネル構成の概略を説明するが、本発明のインナータイプタッチパネルはこの例に限定されない。
図1において、固定基板であるガラス基板1及び該ガラス基板1よりも視認側に設けられた可動基板である位相差板4に各々透明導電膜2が形成されており、かつこれら2枚の基板が透明導電膜同士が対向するように設置されタッチパネル部を構成している。この2つの透明導電膜間に若干の空間を形成するためのドットスペーサー3が設けられている。位相差板4上には偏光膜5が設けられ、偏光膜5上には透明保護フイルムが設けられている。この位相差板4、偏光膜5、および透明保護フイルム6で偏光板を構成している。透明保護フイルム6上には、粘着剤層7を介して、ハードコート層9を有する高硬度プラスチックフイルム8が貼り付けられている。
本発明では、さらに上記の高硬度プラスチックフイルム8のハードコート層9上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる高表面硬度の耐擦傷性に優れた反射防止層(図示せず)を設けることができる。
【0009】
(高硬度プラスチックフイルム)
本発明で用いるプラスチックフイルムは、鉛筆硬度が好ましくは2H以上であり、より好ましくは3H以上、さらに好ましくは4H以上である高硬度プラスチックフイルムであるのが望ましい。
高硬度プラスチックフイルムを形成する材料の例には、セルロースエステル(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート)、ポリアリレート(例、ビスフェノールAとフタル酸の縮合物)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ノルボルネン系樹脂(環状オレフィン共重合体)、ポリエーテルイミドおよびポリオキシエチレンが含まれる。ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが最も好ましい。該プラスチックフィルムは単層または2種類以上の重層にて構成されてもよく延伸されていることが好ましい。プラスチックフイルムの厚さは、5以上1000μm以下であることが好ましく、10以上500μm以下であることがさらに好ましく、30以上200μm以下であることが最も好ましい。
また、高硬度プラスチックフイルムには、表面処理を施してもよい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理を施したり、ウレタン系、ポリエステル系などのアンカーコーティング層を設けたり、シリカなどの無機質薄層などのアンダー層を設けたりすることができる。
【0010】
本発明では、高硬度プラスチックフイルムを得るために、上記で挙げたプラスチックフイルム基材上にハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層の形成には、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。ハードコート層としては、活性エネルギー線硬化性樹脂から形成された樹脂層が好ましい。
【0011】
上記熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のプレポリマーの架橋反応を利用するものが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂については、詳しく後述する。
【0012】
ハードコート層の鉛筆硬度は好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上、更に好ましくは4H以上である。またハードコート層を高硬度化するために、有機または無機微粒子などを混合しても構わない。更に鉛筆硬度向上のためには、ハードコート層の厚みを通常の3〜10μmよりも厚くすることが効果的であるが、ハードコート層の割れが生じやすい等、脆性破壊の問題が発生することがあるため、表面弾性率を4.5GPa以上9GPa以下の範囲、かつ表面弾性率とハードコート層厚みの三乗との積を30KPa・mm3以上700KPa・mm3以下の範囲に制御したハードコート層を用い、ハードコート層の硬度と脆性破壊を避けることとの両立を図ることも好ましい。また、硬度と脆性破壊を避けることとの両立を図るために、ハードコート層の膜厚を薄くし、プラスチックフイルムに無機粒子及び/または有機微粒子を混合したり、あるいはこれと共に多官能モノマーを混合して該モノマーを架橋すること等により、プラスチックフイルムの硬度を上げることも好ましい。この場合、該プラスチックフイルムの成分と無機粒子及び/または有機微粒子を混合し、さらには多官能モノマーを混合・架橋して高硬度層を形成し、これをプラスチックフイルム層に積層することがより好ましい。積層する方法としては、溶融による共押出による方法、共流延による方法、あるいは塗布による方法であっても構わない。
【0013】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化するための活性エネルギー線としては、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。活性エネルギー線の照射により形成される活性エネルギー線硬化樹脂層は、架橋しているポリマーを含んでもよい。架橋しているポリマーを含む活性エネルギー線硬化層は、活性エネルギー線硬化性樹脂、好ましくは多官能モノマーと重合開始剤を含む塗布液を上記のプラスチックフイルム上に塗布し、活性エネルギーの照射により多官能モノマーを重合させることにより形成できる。多官能性モノマーの官能基としては、エチレン性不飽和二重結合基が好ましい。
【0014】
上記多官能モノマーは、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルであることが好ましい。多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサノール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール、1,2,4−シクロヘキサノール、ポリウレタンポリオールおよびポリエステルポリオールが含まれる。これらの中では、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびポリウレタンポリオールが好ましい。二種類以上の多官能モノマーを併用してもよい。
【0015】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン、ジビニルスルホン、メチレンビスアクリルアミドおよびメタクリルアミド、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテルなどが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明では多官能モノマーとしてエチレン性不飽和基を有するモノマーに加えて、架橋性官能基を有する化合物を併用して高硬度化してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。開環重合性の架橋性官能基が好ましく、エポキシ基が特に好ましい。架橋性官能基を有する化合物はモノマーであってもポリマーであってもよい。
【0017】
前記エポキシ系化合物としては、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリル酸付加物等のエポキシエステルや、脂環式エポキシ等のモノマーおよびオリゴマーやその他、特開平11−209717号、同6−157819号等に記載の化合物が上げられる。架橋性官能基を有する化合物を加える場合は、多官能モノマー中、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0018】
ハードコート層としての活性エネルギー線硬化樹脂層に、無機微粒子を添加することで架橋収縮率を改良し、塗膜の硬度を上げることができる。無機微粒子としては硬度が高いものが好ましく、モース硬度が6以上の無機微粒子が好ましい。例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子が含まれる。
【0019】
これらの無機微粒子の平均粒子径は、1nm以上400nm以下、より好ましくは5nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下の微粒子を10質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上45質量%以下添加させる。1nm以下では分散が難しく凝集粒子ができ、400nm以上ではヘイズが大きくなり、どちらも透明性を落としてしまい好ましくない。
【0020】
無機微粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化層の全量の1以上99質量%以下であることが好ましく、10以上90質量%以下であることがより好ましく、20以上80質量%以下であることがさらに好ましく、40以上60質量%以下であることが最も好ましい。
【0021】
一般に無機微粒子はバインダーポリマー(活性エネルギー線硬化樹脂)との親和性が悪いため単に両者を混合するだけでは界面が破壊して、膜が割れやすく、耐傷性を改善することは困難である。無機微粒子とバインダーポリマーとの親和性を改良するため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面修飾剤(表面処理剤)で処理することができる。表面処理剤としては、一方で無機微粒子と結合を形成し、他方でバインダーポリマーと高い親和性を有するものであることが好ましい。
無機微粒子の金属原子と結合を生成し得る官能基を有する化合物としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド化合物や、リン酸、スルホン酸、カルボン酸基等のアニオン性基を有する化合物が好ましい。これらの化合物はまた、バインダーポリマーとは化学的に結合することが好ましく、末端にビニル性重合基等を導入したものが好適である。例えば、エチレン性不飽和基を重合性基および架橋性基として有するモノマーからバインダーポリマーを合成する場合は、金属アルコキシド化合物またはアニオン性基含有化合物の末端にエチレン性不飽和基を有していることが好ましい。
【0022】
以下に表面処理剤の具体例を挙げる。
有機金属化合物の表面処理剤例
a)シラン含有有機化合物
a−1 H2C=CHCOOC4H8OSi(OC4H9)3
a−2 (H2C=CHCOOC4H8O)2Si(OC4H9)2
a−3 (H2C=CHCOOC4H8O)3SiOC4H9
a−4 H2C=CHCOOC3H6OSi(OC4H9)3
a−5 (H2C=CHCOOC3H6O)2Si(OC4H9)2
a−6 (H2C=CHCOOC3H6O)3SiOC4H9
【0023】
b)アルミニウム含有有機化合物
b−1 H2C=CHCOOC4H8OAl(OC4H9)2
b−2 H2C=CHCOOC3H6OAl(OC3H7)2
b−3 H2C=CHCOOC2H4OAl(OC2H5)2
b−4 H2C=CHCOOC2H4OC2H4OAl(OC2H4OC2H5)2
b−5 H2C=C(CH3)COOC4H8OAl(OC4H9)2
b−6 H2C=CHCOOC4H8OAl(OC4H9)OC4H8COOCH=CH2
b−7 H2C=CHCOOC2H4OAl{O(1,4−ph)}2
【0024】
c)ジルコニウム含有有機化合物
c−1 H2C=CHCOOC4H8OZr(OC4H9)3
c−2 H2C=CHCOOC3H7OZr(OC3H7)3
c−3 H2C=CHCOOC2H4OZr(OC2H5)3
c−4 H2C=C(CH3)COOC4H8OZr(OC4H9)3
c−5 {CH2=C(CH3)COO}2Zr(OC4H9)2
【0025】
d)チタニウム含有有機化合物
d−1 {H2C=C(CH3)COO}3TiOC2H4OC2H4OCH3
d−2 Ti{OCH2C(CH2OC2H4CH=CH2)2C2H5}4
d−3 H2C=CHCOOC4H8OTi(OC4H9)3
d−4 H2C=CHCOOC3H7OTi(OC3H7)3
d−5 H2C=CHCOOC2H4OTi(OC2H5)3
d−6 H2C=CHCOOSiOTi(OSiCH3)3
d−7 H2C=C(CH3)COOC4H8OTi(OC4H9)2
【0026】
アニオン性官能基含有表面処理剤例
e)リン酸基含有有機化合物
e−1 H2C=C(CH3)COOC2H4OPO(OH)2
e−2 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−3 H2C=CHCOOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−4 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−5 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPOCl2
e−6 H2C=C(CH3)COOC2H4CH{OPO(OH)2)2
e−7 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(ONa)2
e−8 H2C=CHCOOC2H4OCO(1,4−ph)C5H10OPO(OH)2
e−9 (H2C=C(CH3)COO)2CHC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
【0027】
f)スルホン酸基含有有機化合物例
f−1 H2C=C(CH3)COOC2H4OSO3H
f−2 H2C=C(CH3)COOC3H6SO3H
f−3 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OSO3H
f−4 H2C=CHCOOC2H4OCOC5H10OSO3H
f−5 H2C=CHCOOC12H24(1,4−ph)SO3H
f−6 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OSO3Na
【0028】
g)カルボン酸基含有有機化合物例
g−1 H2C=CHCOO(C5H10COO)2H
g−2 H2C=CHCOOC5H10COOH
g−3 H2C=CHCOOC2H4OCO(1,2−ph)COOH
g−4 H2C=CHCOO(C2H4COO)2H
g−5 H2C=C(CH3)COOC5H10COOH
g−6 H2C=CHCOOC2H4COOH
ここでphはフェニル基を示す。
【0029】
これらの無機微粒子の表面処理は、溶液中でなされることが好ましい。表面処理剤を溶解した溶液に無機微粒子を添加し、超音波、スターラー、ホモジナイザー、ディゾルバー、サンドグラインダーを用いて、撹拌、分散することが好ましい。
【0030】
表面処理剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0031】
表面修飾した無機微粒子溶液に、上記の多官能モノマーと光重合開始剤を加え活性エネルギー線硬化塗布液とすることができる。
【0032】
光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類が含まれる。特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が挙げられる。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントンが含まれる。また、架橋性官能基を有する化合物を併用する場合には、光カチオン性重合開始剤を併用することが好ましく、好ましい光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウムなどのオニウム塩が挙げられる。これらの具体例としては特開平11−209717号、同6−157819号等に記載の化合物が挙げられる。
【0033】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
光重合反応は、活性エネルギー線硬化層の塗布および乾燥後、紫外線照射により実施することが好ましい。
【0034】
本発明の高硬度のプラスチックフイルムの作製は、透明基材フイルム上に活性エネルギー線硬化性塗料をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法等の公知の薄膜形成方法で形成、乾燥、活性エネルギー線照射してハードコート層を形成することにより作製することができる。
【0035】
本発明の高硬度フイルムの耐擦傷性の評価方法としては、鉛筆硬度評価法、微小硬度計による表面硬度測定法、テンシロンによる弾性率測定法等が挙げられるが、JIS K5400で規定する鉛筆硬度評価方法が好ましい。
【0036】
本発明では、上記の高硬度プラスチックフイルムのハードコート層上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる高表面硬度の耐擦傷性に優れた反射防止層を設けることができる。
【0037】
上記低屈折率層および高屈折率層は、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂を主体とする層であることが好ましく、特に高屈折率層は活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と金属酸化物微粒子からなる層であることが好ましい。活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂としては、同一分子内に2個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂が好ましい。具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ポリイソシアネート硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られる多官能のウレタンアクリレート、ポリエポキシ硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート(メタアクリレート)の反応によって得られる多官能のエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0038】
金属酸化物微粒子としては、平均粒子サイズが100nm以下、好ましくは50nm以下の二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などの屈折率が1.6より大きいものが挙げられる。屈折率が大きい二酸化チタンが添加量が少なくでき好ましい。
【0039】
無機微粒子と硬化樹脂との親和性を増すため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面処理剤で処理することが好ましく、表面処理剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機微粒子に吸着しうる官能基と、他方で活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と高い親和性を有するものが好ましい。
無機微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド硬化性樹脂や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面処理剤が好ましい。さらに硬化樹脂との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和基が好ましい。
本発明において好ましい金属酸化物微粒子の表面処理剤は、金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和基を同一分子内に有する硬化性樹脂やカルボン酸等のアニオン性基を有するアクリル酸共重合ポリマー等である。
【0040】
これら表面修飾剤の代表例として以下の不飽和二重結合含有のカップリング剤や、リン酸基含有有機硬化性樹脂、硫酸基含有有機硬化性樹脂、カルボン酸基含有有機硬化性樹脂等が挙げられる。
S−1 H2C=C(X)COOC3H6Si(OCH3)3
S−2 H2C=C(X)COOC2H4OTi(OC2H5)3
S−3 H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
S−4 (H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10O)2POOH
S−5 H2C=C(X)COOC2H4OSO3H
S−6 H2C=C(X)COO(C5H10COO)2H
S−7 H2C=C(X)COOC5H10COOH
(X=H、あるいはCH3を表す)
【0041】
これらの無機微粒子の表面処理は、溶液中でなされることが好ましい。無機微粒子を機械的に微細分散するときに、一緒に表面処理剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散したあとに表面処理剤を添加して攪拌するか、さらには無機微粒子を微細分散する前に表面処理を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でも良い。
表面処理剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0042】
本発明において高屈折率層の硬化には、活性エネルギー線として、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが用いられる。その中でも紫外線を用いてラジカルを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。
【0043】
紫外線によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤が使用できる。また上記で挙げたように通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども紫外線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0044】
重合開始剤は、単独でも複数開始剤を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の添加量としては、高屈折率層を形成するための硬化性組成物中に含まれる硬化性樹脂の総質量に対し、0.1乃至15質量%の範囲で使用することが好ましく、1乃至10質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0045】
これらの活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と金属酸化物微粒子からなる高屈折率層の屈折率は1.6以上、更に1.65以上が好ましく、低屈折率層の屈折率よりも0.2以上大きいことが好ましい。
【0046】
低屈折率層には、高屈折率層に使用する活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と同様の硬化性樹脂を使用することができる。使用する樹脂の硬化後の屈折率は、1.6以下が好ましく、金属酸化物微粒子としては屈折率の小さな二酸化ケイ素が好ましい。
低屈折率層の屈折率は1.45以上1.6以下であることが好ましく、1.45以上1.55以下であることがより好ましい。
【0047】
これらの高屈折率層と低屈折率層は、それぞれ厚み50〜100nmの範囲で塗布され、反射防止の効果を大きくするために光学距離(屈折率×厚み)を観測波長の4分の1にすることが好ましい。
本発明では、高屈折率層と低屈折率層は、ハードコート層上に上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布液を、高屈折率層、低屈折率層の順にスピナー法、グラビア法、ワイヤーバー法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、活性エネルギー線照射して、硬化させることにより作製することができる。
【0048】
上記低屈折率層と高屈折率層とからなる反射防止層の反射率(正反射率)は、3.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
上記反射防止層の防汚性を向上させるために、低屈折率層にフッ素および/またはケイ素を含有する硬化樹脂を含有させたり、低屈折率層上にフッ素および/またはケイ素を含有する硬化樹脂を含有する層を設けることもできる。
低屈折率層に含有される上記硬化樹脂は、硬化前の硬化性樹脂として例を挙げれば、公知のフッ素含有硬化性樹脂やケイ素含有硬化性樹脂、さらにはフッ素含有ブロックとケイ素含有ブロックを有する硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、低屈折率層を主として構成する硬化樹脂および/または金属酸化物等と、相溶性の良いセグメントとフッ素および/またはケイ素を含有するセグメントとを有する硬化性樹脂が好ましく、その硬化物を低屈折率層が含有することで、表面にフッ素あるいはケイ素を偏在させることができる。
【0050】
フッ素および/またはケイ素を含有する硬化性樹脂としては、フッ素あるいはケイ素を含有するモノマーと他の親水性あるいは親油性のモノマーとのブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体が挙げられる。
上記フッ素含有モノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、パーフルオロアルキルスルホンアミドエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアミドエチルアクリレート等に代表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
ケイ素含有モノマーとしては、ポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸等の反応によるシロキサン基を有するモノマーが挙げられる。
上記親水性あるいは親油性のモノマーとしては、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、末端に水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸のエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0051】
市販の硬化性樹脂としては、パーフルオロアルキル鎖のミクロドメイン構造を有するアクリル系オリゴマーのデフェンサMCF−300、312、323等、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマーのメガファックF−170、F−173、F−175等、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマーのメガファックF−171等(大日本インキ化学(株)製)や、表面移行性に優れたセグメントと樹脂に相溶するセグメントよりなるビニルモノマーのブロックポリマーであるフッ化アルキル系のモディパーF−200、220、600、820等、シリコン系のモディパーFS−700、710等(日本油脂(株)製)が挙げられる。
【0052】
低屈折率層の上に防汚性の層を設けるには、既に述べたことであるが、フッ素および/またはケイ素を含有した低表面エネルギー性の硬化性樹脂が好ましく、具体的には、特開昭57−34526号、特開平2−19801号、特開平3−17901号公報等に記載のフッ化炭化水素基を含有するシリコン硬化性樹脂、フッ化炭化水素基含有ポリマー等が挙げられる。
【0053】
(粘着剤)
本発明では、上記の高硬度プラスチックフイルムなどの機能性フイルムは、粘着剤により、タッチパネル部の視認側基板上、好ましくは偏光板の保護フイルム上に貼り合わすことができる。
本発明の粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものである。本発明における粘着剤層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化することで得ることができる。アクリル系共重合体が最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性や耐久性などに優れて好ましい。
粘着剤層の厚みは、適度な粘着力と粘弾性を発現させるために、その厚さとしては好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μm、特に好ましくは10〜30μmである。厚すぎると動作性の低下やヘイズ上昇など視認性の低下が起こり、薄すぎるとタッチの際に透明基材が剥離する可能性がある。
【0054】
(位相差板)
本発明では、位相差板として、公知の位相差板を用いることができる。例えばポリオレフィン系樹脂を一軸延伸したもの(WO―00/6584号公報、特開2002−48919号公報)、ノルボルネン系樹脂(特許第3019741号、特開2001−194527号公報、特開2001−42130号公報)やセルロース誘導体(特開2001−91743号公報)を用いることができる。特に位相差板としては、下記のように延伸、レターデーション添加剤の添加等によりレターデーションを調整したセルロースエステルが好ましい。
この位相差板の一方または、両方に吸湿を防止するバリア層などの機能層を設けても構わない。また本位相差板は延伸されていることが好ましく、空中、水中または水蒸気中で延伸しても構わない。またレターデーションを調整するため、少なくとも1種類以上のレターデーション調整剤を添加しても構わない。
【0055】
(偏光板(偏光膜)およびタッチパネル用基板)
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護フイルムからなる。保護フイルムとしては、通常、セルロースエステルフイルムが好ましく用いられている。一方の保護フイルムとして、上記のようなセルロースエステルフイルムからなる位相差板を用い、他方の保護フイルムとして、セルロースエステルフイルムを用いて貼り合わせをしてもよいし、両側ともセルロースエステルフイルムを用いて貼り合わせを行った後に位相差板を粘着剤で貼り合わせてもよい。本発明では、位相差板とは反対側に位置する保護フイルムの表面上に、セルロースエステルフイルムより表面硬度の大きいプラスチックフイルムまたは、プラスチックフイルムにハードコート層を設けたフイルムを粘着剤にて貼り合わせることにより、タッチパネル用上部基板を作製することが好ましい。またハードコート層の上部には反射防止層や防汚層などの機能層を設けることが好ましい。反射防止層の反射率は、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
位相差板の遅相軸と偏光膜の透過軸の関係が適用される液晶表示装置の種類により異なるが、本発明の反射型液晶表示装置の場合は、実質的に45度となるように配置することが好ましい。
【0056】
(タッチパネル部)
本発明でタッチパネル部は、表示素子に近い側の固定基板と、対向する可動基板とを有する。固定基板と可動基板の対向面に、それぞれ透明導電膜を備えている。固定基板及び可動基板は、表示品質を高めるため、透明な光学材料で形成されていることが好ましく、特に本構成のタッチパネルの場合は、複屈折の小さな透明基板を用いることが好ましい。
固定基板に用いられる材料としては、例えば、ガラス、非晶性フイルム、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル、環状オレフィンなどのポリマーフィルムなどが挙げられる。
また、可動基板としては、本発明では位相差板を用いることが好ましく、さらに前述してように偏光膜を組み込んで作製したタッチパネル用基板を用いることが好ましい。しかし、本発明に用いられる位相差板は、タッチパネルとは別に設けても構わないし、固定基板、可動基板のどちらか、または、両方に用いても構わない。セルロースエステルからなる位相差板は、可動基板として用いることが特に好ましい。
2枚の基板それぞれに設けられた透明導電膜の間にはギャップが形成される。ギャップ間には通常空気層が存在するが、オプティカル・マッチングを取るために透明電極と屈折率の近い液体を充填させることもできる。また、透明導電膜の基板側にアンダーコート層、または、基板と反対側にオーバーコート層を付与し、光反射を低減させることもできる。スティッキング性をなくし、耐久性を改善するために、透明導電膜表面は粗面化されていてもよい。
ギャップ間にはスペーサを設けることができる。スペーサとしては、ドット状スペーサや、固定基板と可動基板との周辺部に設けた貼合せ材などが用いられる。ドット状スペーサとしては、例えば0.005〜1.0mm程度の高さのものが好ましい。
【0057】
タッチパネルによるデータ入力位置検出の方式は、デジタル式(マトリクス式)、アナログ式のどちらでも用いることができる。
デジタル式(マトリクス式)では、固定基板の透明導電膜(例えばX列)と可動基板の透明導電膜(例えばY列)とによりマトリクスを形成し、押圧による透明導電膜同士の接触位置に対応して、データ位置を検出することができる。
アナログ式では、例えば、固定基板のX軸方向の両端部、および、可動基板のY軸方向の両端部に電極を形成し、押圧により透明電極同士が接触し、接触位置により生じるX方向、Y方向の抵抗値を検出することによって、データ入力位置を検出することができる。
本発明においては、タッチパネルは表示素子とともに用いられることが好ましいが、タッチパネル部が表示部とは別々になっていても構わないし、両者が一体となっていても構わない。
【0058】
(透明導電膜)
本発明のタッチパネルに用いる透明導電膜としては、表面抵抗率は、2000Ω/□以下であることが好ましく、1000Ω/□以下であることがさらに好ましい。さらに好ましくは100Ω/□以上900Ω/□以下である。
【0059】
上記表面抵抗率の透明導電膜は、基板表面に導電性微粒子分散物、金属アルコキシド溶液などを塗布することによって設けても構わないし、基板形成用溶液と共に導電性微粒子分散物、金属アルコキシド溶液などを共流延することによって設けても構わない。また、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法などの真空成膜法によっても、大気圧での気相成長法によって透明導電膜を形成しても構わない。これらの方法のなかで、好ましくはスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、特に好ましくはスパッタリング法である。また、これらの方法を併用することも可能である。
透明導電膜は、基板の片面のみに設けても構わないし、両面に設けても構わない。
【0060】
導電性微粒子分散物の塗布液としては、金属微粒子、金属酸化物微粒子、及び金属窒化物微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を含有する塗布液が用いられる。
上記金属微粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等の金属あるいはこれらの合金の微粒子が挙げられる。なかでも、銀及び銀の合金の微粒子が好ましく、特には耐候性の観点から、パラジウムと銀の合金が好ましい。パラジウムと銀の合金の場合にパラジウムの含有量は、5〜30質量%が好ましい。パラジウム含有量が少ないと耐候性が悪く、パラジウム含有量が多くなると導電性が低下する。
金属微粒子の作成方法としては、低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を鉄(II)、ヒドラジン、ボロンハイドライド、ヒドロキシエチルアミン等のアミン等の還元剤で還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。
金属酸化物の微粒子としては、In2O3系(Snなどドープ品含む)、SnO2系(F、Sbなどドープ品含む)、ZnO系(Al、Gaなどのドープ品含む)、TiO2、Al2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5、及びこれらの複合品などの微粒子が挙げられる。
金属窒化物の微粒子としては、TiNなどの微粒子が挙げられる。
【0061】
これら導電性微粒子の平均粒径は、1.0〜700nmが好ましく、2.0〜300nmが更に好ましく、5.0〜100nmが最も好ましい。粒径が大きすぎると、導電性微粒子による光の吸収が大きくなり、このために粒子層の光透過率が低下すると同時にヘイズが大きくなり、また、これら導電性微粒子の平均粒径が1.0nm未満の場合には、微粒子の分散が困難になること、微粒子層の表面抵抗が急激に大きくなることなどのため、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する導電膜(導電性微粒子層)を得ることができない。
【0062】
導電性微粒子層は、導電性微粒子を水を主体とする溶液あるいは有機溶剤等に分散した塗料を基材に塗布して形成することができる。
塗布する前に、基材に、表面処理や下塗りを施すことができる。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられる。下塗り層の素材としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル等の共重合体或いはラテックス、ゼラチン等の水溶性ポリマーなどが挙げられるが特に限定はされない。
導電性微粒子の分散安定化のためには、水を主体とする溶液が好ましく、水と混合できる溶剤としてはエチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールが好ましい。
導電性微粒子の塗布量としては、10乃至1000mg/m2が好ましく、20乃至500mg/m2がさらに好ましく、50〜150mg/m2が最も好ましい。塗布量が少ないと導電性に劣り、塗布量が多いと光透過性に劣る。
【0063】
透明導電膜は、バインダーを含有していてもよいし、バインダーを含有せずに実質的に導電性微粒子のみから形成されていてもよい。
バインダーを用いる場合、素材は特に限定されないが、親水性バインダー、疎水性バインダー、あるいは、ラテックスを用いることができる。親水性バインダーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。疎水性バインダーとしては、セルロースエステル(例えば、ニトロセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、メチルセルロース)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアクリレートなどを含むビニル系ポリマー、ポリアミド、ポリエステルなどのポリマーである。
【0064】
透明導電性膜の導電性や光透過性の向上のため、熱処理や水処理することができる。熱処理温度は、ポリマーフィルムの耐熱性によるが、150℃以下が好ましく、より好ましくは100℃から150℃の範囲である。150℃以上ではポリマーフィルムの熱による変形が起こりやすく、100℃未満では熱処理の効果が発現し難く、熱処理時間が長くなる。
【0065】
熱処理の方法は、ウェッブ状態で加熱ゾーンを通しながら処理することが均一な処理ができて好ましい。加熱ゾーンの長さと搬送速度で滞在時間を調節することができる。またロール状のフイルムを恒温槽中で加熱することも可能であるが、熱伝導のバラツキを考慮した時間設定が必要になる。
【0066】
また、熱処理に先立ち、透明導電性層膜を水洗等の水処理をすることで熱処理をさらに効率良くすることができる。水洗等の水処理は、通常の塗布方式による水だけの塗布、具体的にはディップコート塗布、ワイヤーバーによる水の塗布等があり、他にはスプレーやシャワーで水を透明導電性層に掛ける方法がある。透明導電性層に水をかけた後、過剰の水は必要に応じて、ワイヤーバー、ロッドバーで掻き取ったり、エアーナイフで掻き取ることができる。
【0067】
これらの水処理により、熱処理後の透明導電性層の表面抵抗をさらに低下させることができ、加えて透過率の増加、透過スペクトルの平坦化、反射防止層を積層した後の反射率の低下に対する効果が顕著になる。
【0068】
透明導電膜を形成するための真空成膜法としては、「透明導電膜の新展開」シーエムシー、澤田 豊監修=月刊ディスプレイ」1999年9月号に記載の方法を用いることができる。
成膜する金属酸化物としてはIn2O3系(Snなどドープ品、ITO含む)、SnO2系(F、Sbなどドープ品含む)、ZnO系(Al、Gaなどのドープ品含む)またはこれらの複合品In2O3−ZnO系などが挙げられる。金属窒化物としてはTiNなどが挙げられる。また、銀などと共に成膜しても良い。
【0069】
スパッタリング法などでポリマーフィルム上に成膜する際にはその表面をフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、プロピレン系樹脂、ビニル系樹脂などの高分子や、SiO2,TiO2,ZrO2,SnO2などの無機物でコートすることが好ましい。また、高分子中に無機微粒子を分散してコートすることも好ましい。
コートする膜厚としては2nm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは2nm以上50μm以下であり、特に好ましくは2nm以上10μm以下である。
スパッタリング法により酸化インジウムを主として含む膜を製膜する場合には、インジウムを主成分とする金属ターゲット、または酸化インジウムを主成分とする焼結体であるターゲットを用いた反応性スパッタリングを行うことができる。反応の制御上、後者が好ましい。特に好ましくは酸化スズを含有する酸化インジウムであり、酸化スズを1質量%から20質量%含むのが望ましく、3質量%から12質量%含むのが特に望ましい。反応性スパッタリング法においてはスパッタリングガスとしては、アルゴンなどの不活性ガスを用い、反応性ガスとしては酸素を用いる。また、酸素の流量を制御する方法としてはプラズマエミッションモニター法で行うことが好ましい。放電形式には特に規定しないが、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ、1対のターゲット間にAC電圧を印加する方法などが好ましい。成膜時の基板の温度は特に規定はないが、基板のガラス転移点以下で可能な範囲で加熱した方が膜強度は向上する傾向がある。
【0070】
透明導電膜が付与された基材の光透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0071】
透明導電膜の厚みは、ITOを用いた場合を例にとると、5〜200nmがよく、好ましくは7〜150nm、更に好ましくは10nm〜30nmである。透明導電膜は、全面を電極として用いる場合と、全面電極形成後にレジスト形成およびエッチングを行ってパターン加工して用いる場合がある。
【0072】
タッチパネル部を構成する2枚の基板のうち固定基板としては、前記したようなガラス基板を用い、ガラス基板に透明導電膜を備えたフイルムを貼り合わせてもよいし、ガラス基板の代わりに透明導電膜を備えたポリマーフイルムを直接用いてもよい。また、これ以外にも、透明導電性を有する適当なシートであってもよい。
可動基板には基板の少なくとも一方の面に透明導電膜を設けることが特に好ましい。勿論、透明導電膜を形成したフイルムを基板に貼り合わせてもよい。また、本発明のインナータイプタッチパネルは可動基板が偏光膜を有するので、偏光性能上、透明導電膜の付与は偏光板作製の一連の工程で行うことが好ましい。
【0073】
(液晶表示装置)
本発明のタッチパネルは、液晶表示装置の液晶セルの上に設置され、インナータイプタッチパネルとして使用されるが、液晶表示装置以外にも、様々な表示装置と組み合わせて用いることができる。例えば、カソードレイチューブ(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、無機ELデバイス、有機ELデバイスなどである。本発明のタッチパネルは、位相差板や円偏光板を用いているので、これら表示装置の外光の反射を低減することができる。この表示装置の中では、液晶表示装置の他に、無機EL、有機ELと組み合わせて用いるのが好ましい。
【0074】
液晶表示装置に用いられる液晶モードは特に限定されないが、TN(twisted nematic )型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Aligned Nematic)型、OCB(Optically Compensated bend)型、ECB(Electrically controlled birefringence)型、VA(Vertically Aligned)型または、GH(Guest Host)型であることが好ましい。
TN型液晶セルのツイスト角は、40乃至100゜であることが好ましく、50乃至90゜であることがさらに好ましく、60乃至80゜であることが最も好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至0.5μmであることが好ましく、0.2乃至0.4μmであることがさらに好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
反射型液晶表示装置は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。ノーマリーホワイトモードの方が好ましい。
【0075】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
(プラスチックフイルムの作製)
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の作成
テレフタル酸ジメチルエステル80部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン4水和物0.029部、三酸化アンチモン0.028部を加え、撹拌しながら200℃に加熱した。副生するメタノールを除去しつつ235℃まで昇温した。メタノールの副生が終了後トリメチルリン酸0.03部を添加し、285℃に昇温しながら0.3Torrに減圧し固有粘度0.62のPETを重合した。その後、ヌードル状に熔融押出しし、カッターで切断し、ペレット状のポリエチレンテレフタレートを得た。作製したポリエチレンテレフタレートは130℃で1時間真空乾燥を行った。
なお、固有粘度は以下の方法で測定した。
▲1▼フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比:60/40)にポリエチレンテレフタレートを溶解し、0.2g/dl、0.6g/dl、1.0g/dlの溶液を作成する。
▲2▼これを20℃において、ウベローデ粘度計を用いて測定する。
▲3▼濃度に対し粘度をプロットし、濃度=0に外挿した粘度を固有粘度とする。
【0077】
(2)プラスチックフイルムの製膜
上記方法で作製したペレットを押出し機を用い300℃で熔融し、5μmのメッシュフィルタ−で濾過した後、Tダイ(マルチマニホールドダイ)から50℃の静電印加したキャスティングドラム上に押し出し、これをMD延伸(倍率3.5倍、105℃)、TD延伸(4.0倍、110℃)、熱固定(245℃)、熱緩和を行い、プラスチックフイルムを作製した。フイルム総厚は100μmであった。
【0078】
(3)プラスチックフイルムのコロナ処理
コロナ放電処理はピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、プラスチックフイルムを20m/分で処理した。このとき処理は、0.375KV・A・分/m2の処理とした。処理時の放電周波数は、9.6KHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは、1.6mmで行った。
【0079】
(4)下塗り液の調製および塗布
下記素材を使用し、コロナ処理されたプラスチックフイルムとハードコート層の密着性を付与させるための下塗り液を調製し、塗布を実施した。
これらの下塗り液を、バーコーターを用いて7ml/m2になるように塗布し、搬送しつつ加熱ゾーンにて160℃で5分間加熱乾燥した。巻き取り直前で冷却ローラーにて30℃以下に冷却し、作成した下塗り付きプラスチックフイルムを巻き取った。
【0080】
(ハードコート層)
(ハードコート用素材の作製)
(開環重合性基含有化合物Aの合成)
メチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、グリシジルメタクリレート(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、開環重合性基含有化合物Aを45g得た。
【0081】
(無機架橋微粒子分散液の調製)
セラミックコートのベッセルに各試薬を以下の量を計量した。
メチルイソブチルケトン 234g
アニオン性官能基含有表面処理剤 S−6(X=H) 36g
H2C=C(X)COO(C5H10COO)2H
アルミナC(日本アエロジル(株)社製 平均粒径:13nm) 180g
上記混合液をサンドミル(1/4Gのサンドミル)にて1600rpm、10時間微細分散した。メディアは1mmφのジルコニアビーズを1400g用いた。分散後、ビーズを分離し、表面修飾した無機架橋微粒子分散液を得た。
【0082】
(ハードコート液の調製)
エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物Aとラジカル重合開始剤(イルガキュア184(チバガイギー社製))とカチオン重合開始剤(UVI−6990(ユニオンカーバイド日本(株)製)をメチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン混合溶液(1/1)に溶解後、無機架橋微粒子分散液の混合液を添加し、30分間攪拌し、ハードコート液を作製した。なお、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の種類は表1記載の組み合わせで選択し、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物および架橋微粒子の混合比は表1記載の比率になるように調整した。
重合開始剤は、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の総質量に対し、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤を2.9%ずつ添加した。なお、開環重合性基含有化合物を含まない場合はラジカル重合開始剤のみを5.8%添加した。
【0083】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
上記にて作製した下塗り層付きプラスチックフイルムを用い、その表面にグロー放電処理した後、上記にて作製したハードコート液を表1記載の膜厚になるようにワイヤーバーで塗布、120℃で2分乾燥し、750mJ/cm2の紫外線照射後、120℃、10分加熱することによって、ハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
【0084】
(保護フイルムの作製)
室温において、平均酢化度59.7%のセルロースアセテート120重量部、トリフェニレンホスフェート9.36重量部、ビフェニルジフェニルホスフェート4.68重量部、メチレンクロリド538.2重量部、メタノール46.8重量部を混合して溶液(ドープ)を作製した。得られたドープを、ステンレス製バンド上に流延し、自己支持性を持つまでフイルムを乾燥した後バンドから剥ぎ取った。このフイルムを120℃、30分乾燥した。
このようにして得られたフイルムの厚みは102μmであった。
【0085】
(位相差板の作製)
室温において、平均酢化度59.5%のセルロースエステル100重量部、トリフェニルホスフェート7.8重量部、ビフェニルジフェニルホスフェート3.9重量部、下記のレターデーション上昇剤1.32重量部、メチレンクロリド587.69重量部、メタノール50.85重量部を混合して、溶液(ドープ)を調製した。
【0086】
【化1】
【0087】
得られたドープを、製膜バンド上に流延し、室温で1分間乾燥後、45℃で5分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースエステルフイルムをバンドから剥離し、120℃で10分間乾燥した後、130℃で流延方向とは平行な方向に実倍で1.34倍に延伸した。延伸方向と垂直な方向は、自由に収縮できるようにした。延伸後、120℃で30分間乾燥した後、延伸フイルムを取り出した。延伸後の溶剤残留量は0.1質量%であった。
得られたポリマーフィルムフィルム(PF−1)の厚さは、113μmであり、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長450nm、550nmおよび590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、それぞれ、125.2nm、137.8nmおよび141.1nmであった。従って、このセルロースエステルフイルムは、広い波長領域でλ/4を達成していた。
さらに、アッベ屈折率計による屈折率測定と、レターデーションの角度依存性の測定から、波長550nmにおける面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを求め、(nx−nz)/(nx−ny)の値を計算したところ、1.48であった。
【0088】
(透明導電膜付き位相差板の形成)
上記位相差板を巻取り型のスパッタリング装置にセットして、真空槽を1.2mPaの圧力まで排気した後、Ar+O2混合ガス(O2=1.5%)を導入し、圧力を0.25Paに調整した後、基板温度を120℃、投入電力密度1W/cm2にて、DCスパッタリングを行い、厚み21nmのIn2O3系の透明導電膜を形成した。
このようにして得られた透明導電膜付き位相差フイルムの透明導電膜側の表面抵抗率を、4端子法にて測定した結果、406Ω/□であり、光の透過率は88%であった。
得られた透明導電膜付き位相差板についてエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長450nm、550nm、および590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、それぞれ、125.2nm、137.8nm、141.1nmであった。したがって、透明導電膜を付けてもなお広い波長領域でλ/4を達成していた。
さらに、アッベ屈折率計による屈折率測定と、レターデーションの角度依存性の測定から、波長550nmにおける面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを求め、(nx−nz)/(nx−ny)の値を計算したところ、1.48であった。
【0089】
(可動基板の作製)
透明導電膜付き位相差板の透明導電膜を設けていない側に偏光膜及び保護フイルムをこの順序で貼り付けた。位相差板の延伸方向(遅相軸方向と平行)と偏光膜の透過軸方向とのなす角は45°とした。続けて更に先に作製した、ハードコート付きプラスチックフイルムをハードコート層が観察者側を向くように保護フイルムに粘着剤で貼り付けた。このようにして、可動基板を作製した。
なお、ここで偏光膜は、厚さ75μmのPVAフイルム(平均重合度約1700、ケン化度99.9%以上)に一軸延伸を施し(延伸倍率5倍)、緊張状態を保ったまま、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液(ヨウ素/ヨウ化カリウム/水=6/7.5/100(重量比))に300秒浸漬した。25℃の純水で20秒水洗した後、50℃で乾燥してPVA系偏光膜を得た。
【0090】
(タッチパネルの作製)
片面の表面抵抗率が400Ω/□の透明導電膜(ITO)が付いた0.7mm厚みのガラス板を用意し、表面に1mmピッチのドットスペーサーと両端部に銀電極を印刷した。また、上記可動基板である透明導電膜付き位相差板面の両端に銀電極を印刷し、それぞれ、上記透明導電ガラス板と、透明導電膜同士が対向するように接着し、同時にフレキシブル電極を取り付けた。この際、両基板の周囲に100μm厚の絶縁性貼り合せ剤を挟んだ。このようにしてタッチパネルを作製した。
【0091】
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した、タッチパネル付き反射型液晶表示装置(パワーザウルスMI−C1、シャープ(株)製)に設けられているタッチパネル部を取り外し、偏光板と位相差板を剥がし、上記で作製したタッチパネルを取り付けた。
【0092】
以上作製したハードコート付きフイルムの透過率、ヘイズ及び鉛筆硬度;タッチパネルの動作性;タッチパネルの反射率(白表示と黒表示)及びコントラストの評価を下記する方法で評価した。
結果を表1に示した。なお、表1におけるDPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)である。
【0093】
[実施例2]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0094】
[実施例3]
(ハードコート層塗布液(h−1)の調製)
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)をメチルエチルケトンに50質量%濃度になるように溶解した溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295;大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6重量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、ハードコート層塗布液を作製した。
【0095】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
表1に記載のプラスチックフイルムをグロー放電処理した後、上記のハードコート層塗布液を表1の添加比率、膜厚になるようにワイヤーバーで塗布・乾燥し、紫外線照射しハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0096】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0097】
[実施例4]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例3と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0098】
[実施例5]
(ハードコート層用塗布液h−2の調整)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)306重量部を、16重量部のメチルエチルケトンと220重量部のシクロヘキサノンの混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5重量部を加え、溶解するまで攪拌した後に、450重量部のMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%のSiO2ゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)を添加し、撹拌して混合物を得、孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過してハードコート層用塗布液h−2を調製した。
【0099】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
実施例1にて作製したプラスチックフイルムをグロー放電処理した後、上記のハードコート層塗布液を表1の添加比率、膜厚になるようにワイヤーバーで塗布・乾燥し、紫外線照射しハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
【0100】
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0101】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0102】
[実施例6]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で、各評価を実施し、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0103】
[実施例7]
(1)高屈折率層塗布液の調製
二酸化チタン微粒子(TTO−55B、石原産業(株)製)30.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(アロニクスM−5300東亞合成(株)製)4.5質量部およびシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散し、質量平均径55nmの二酸化チタン分散液を調製した。前記二酸化チタン分散物にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製)と、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製、モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーの合計量に対し5%)とを混合し、高屈折率層の屈折率が1.85になるように調整した。
【0104】
(2)低屈折率層塗布液の調製
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA、日本化薬(株)製)60質量部、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)2質量部、メガファック531A(C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCH=CH2、大日本インキ化学工業(株)製)9質量g、およびメチルエチルケトンを混合、攪拌して、低屈折率層の塗布液を調製した。
屈折率の調整は、二酸化ケイ素微粒子(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)30.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(アロニクスM−5300東亞合成(株)製)4.5質量部およびシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散調整した、質量平均径12nmの二酸化ケイ素微粒子分散液を添加して行った。
【0105】
(3)防汚性反射防止層付きハードコートフィルムの形成
実施例1で使用したハードコート層を塗設後、高屈折率層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥膜厚が75nmになるように塗布、乾燥、紫外線照射し、さらに、高屈折率層の上に、上記低屈折率層塗布液を乾燥膜厚が90nmになるように塗布、乾燥、紫外線照射し反射防止層を形成した反射防止層付きハードコートフィルムを得た。
【0106】
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
【0107】
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0108】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0109】
[比較例1]
ハードコート層を設けずPETのみからなるプラスチックフイルムを粘着剤で貼り付けた点以外は、実施例1と同様の方法で各評価を実施し、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。
【0110】
[比較例2]
TN型液晶セルを使用したタッチパネル付き反射型液晶表示装置(パワーザウルスMI−C1、シャープ(株)製)にて、それぞれの項目について評価を行った。なお、フイルムの透過率、ヘイズ、鉛筆硬度については、表面のハードコート付きプラスチックフイルムを上記装置から剥がし、評価を行った。結果を表1に示した。
【0111】
(評価方法)
・ハードコート付きフイルムの透過率、ヘイズの評価
ハードコート付きプラスチックフイルムの透過率、ヘイズの測定は、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0112】
・鉛筆硬度の評価
ハードコート付きプラスチックフイルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、JIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回繰り返し、傷が全く認められなかった最大硬度をフイルムの硬度とした。なお、JIS K5400で定義される傷は▲1▼塗膜の破れ、▲2▼塗膜のすり傷であり、▲3▼塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、ここでは、▲3▼塗膜のへこみも含めて傷と判断した。
【0113】
・タッチパネルの動作性確認および光学特性(反射率及びコントラスト)の評価タッチパネル付き反射型液晶表示装置の動作確認を行った。評価は下記の2段階表示とした。
良好:ポリアセタールペン((株)パイロット製ぺんとぴあ)により、タッチパネル表示部にタッチし、応答する
不良:ポリアセタールペンにより、タッチパネル表示部にタッチし、応答しない
また、測定機(CM−2002 ミノルタ(株)製)を用いて、黒表示反射率、白表示反射率を測定し、コントラスト(白表示反射率/黒表示反射率)を算出した。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示される結果から、本発明のタッチパネルは良好な動作性及びコントラストを有しつつ、高硬度であり、優れた耐擦傷性を有することが明らかである。
【0116】
[比較例3]
実施例1と同様に作製した、ハードコート付きプラスチックフイルムをハードコート層が観察者側を向くように保護フイルムに粘着剤である日本化薬(株)製AGR−100を2μmの厚みに塗布し、その後は実施例1と同様に貼り付け、可動基板を作製した。
評価については、動作性以外の項目は実施例1と同等であったが、動作性については粘着剤の厚みが薄かったために、数回のタッチで基材同士が剥がれてしまい、良好な動作性を得ることができなかった。
【0117】
[参考例]
透明導電膜の付与を偏光膜作製後に行う例。
サンリッツ(株)製スーパーハイコントラストクラスHLC−5618(偏光度:99.99%)に対して、実施例1の透明導電膜の付与条件と同様な処理で透明導電膜を付与したところ、処理した製品の偏光度は99.92%と、偏光度の低下が見られた。
【0118】
【発明の効果】
本発明のインナータイプタッチパネルは、良好な動作性及びコントラストを有しつつ、高硬度であり、優れた耐擦傷性を有する。また、このインナータイプタッチパネルを備えた液晶表示装置は、良好な動作性を有し、コントラストが良好で視認性に優れ、耐擦傷性に優れる。
また、本発明のインナータイプタッチパネルは、例えば表面側の保護フイルムとして通常のセルロースエステルフイルムを用いて偏光板を作製したのち、高硬度プラスチックフイルムを粘着剤で貼り合わせるプロセスにより製造することができるので、偏光板作製時における水抜けの問題が回避でき、通常の偏光板作製工程をそのまま使用できるといった利点があり、良好な表面硬度を有するインナータイプタッチパネルを簡単に作製することができるとともに、該プラスチックフィルムの最表面に反射防止層を設けることにより、視認性の良好なインナータイプタッチパネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインナータイプタッチパネルの一例の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 透明導電膜
3 ドットスペーサー
4 位相差板
5 偏光膜
6 透明保護フイルム
7 粘着剤層
8 高硬度プラスチックフイルム
9 ハードコート層
【発明の属する技術分野】
本発明は、インナータイプタッチパネル、その製造方法及びそれを用いた液晶表示装置に関する。特に本発明は、高表面硬度と良好な視認性を有するインナータイプタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
タッチパネルには、抵抗膜方式、光学式、静電容量式、超音波式、および電磁誘導式等の方式がある。これらの中で、抵抗膜方式は、比較的低コストである、薄型軽量化が容易であるという特徴を有し、ディスプレイの表面に装着するだけで外部入力が可能となり、現在、特に携帯機器を中心にして広く用いられている。近年、携帯電話、情報携帯端末などの携帯機器の成長が著しく、太陽光のもとでの視認性、および薄型軽量が強く求められている。
抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電膜付き固定基板と押圧されて可動する透明導電膜付き可動基板が、透明導電膜同士が向かい合って空間を介して配置されたものである。押圧によって透明導電膜同士が接触した際の膜の抵抗値を検出することによって接触位置を検出する。通常、タッチパネルは、ディスプレイ表面に装着される。この場合、空気層が2層となり、各空気界面での反射による視認性の低下が著しく、さらに装置自体が厚くなるという問題点があった。
これに対して、特開平5−127822号公報、および月刊ディスプレイ1999年1月号69頁に偏光板と液晶セルの間に抵抗膜式タッチパネルの機能を挿入したインナータイプタッチパネルの提案がされている。この方式によれば、偏光板と位相差板とを組み合わせた円偏光板を液晶セルに対しタッチパネル部より外側(視認側)に配置することで、タッチパネル内部の界面反射が著しく低減され、視認性が向上する。しかしながら、インナータイプタッチパネルでは入力側表面に、偏光板の保護フイルムであるセルロースエステルフイルムが配置されるため、入力側表面の耐擦傷性、及び視認性は必ずしも十分とは言えなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐擦傷性、視認性を改善したインナータイプタッチパネルを簡便に提供することにある。さらには、耐擦傷性、視認性が改善されたインナータイプタッチパネルを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記構成の本発明により達成される。
1.透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルの製造方法であって、
可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜および偏光膜を有する基材とを粘着剤層を介して貼り合わせて可動基板を作成する工程を有することを特徴とするインナータイプタッチパネルの製造方法。
2.前記貼り合わせ工程がインラインで行われることを特徴とする上記1に記載のインナータイプタッチパネルの製造方法。
3.透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルであって、
可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜および偏光膜を有する基材とを粘着剤層を介して貼り合わせたことを特徴とするインナータイプタッチパネル。
4.粘着剤層の厚みが5〜50μmであることを特徴とする上記3に記載のインナータイプタッチパネル。
5.前記機能性を有するプラスチックフイルムが機能性層を積層してなることを特徴とする上記3または4に記載のインナータイプタッチパネル。
6.前記機能性層が鉛筆硬度2H以上のハードコート層であることを特徴とする上記5に記載のインナータイプタッチパネル。
7.前記機能性層が高屈折率層と低屈折率層とからなる反射防止層であることを特徴とする上記5または6に記載のインナータイプタッチパネル。
8.上記3〜7のいずれかに記載のインナータイプタッチパネルを用いた表示装置。
9.インナータイプタッチパネルが液晶表示装置の液晶セル上に配置されて用いられることを特徴とする上記8に記載の液晶表示装置。
【0005】
インナータイプタッチパネルの耐擦傷性、視認性の改善のため、機能性層を設けることが考えられ、偏光板の保護フイルムであるセルロースエステルフイルム上に機能性層を設けることが簡便である。しかし、機能性層として用いる素材によっては、保護フイルムとのなじみが悪い場合もある。
本発明は、そのような場合に特に有効で、機能性を有するあるいは機能性層を積層した基材フイルムであるプラスチックフイルムを積層することで、タッチパネルに耐擦傷性、視認性等の機能性を付加することが特徴で、プラスチックフイルムを貼り合せることで、本発明のタッチパネルは簡便に作製することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明のインナータイプタッチパネル(以下、単に「本発明のタッチパネル」とも言う)は、透明導電膜を備えた2枚の基板が透明導電膜が対向するように配置されてなるタッチパネル部を有する。2枚の基板のうち、表示素子に近い側の基板は固定基板で、対向するもう1枚の基板は可動基板である。また、本発明のタッチパネルは偏光膜を有し、表示装置において視認面上に配置されインナータイプタッチパネルとして使用される。さらに、可動基板上、好ましくは最表面に機能性を有するプラスチックフイルムが貼り合わされる。
プラスチックフイルムの可動基板との貼り合わせは、インラインで、具体的には偏光板作製の一連の工程中あるいはその工程に引き続き行われることが好ましい。即ち、偏光板は、偏光膜とセルロースエステルフイルムなどの保護フイルムや位相差板などと貼り合わされて作製されるが、この貼り合わせ工程と同時または直後に、プラスチックフイルムを貼り合せることが製造効率上好ましい。また、その際、透明導電膜が付与されることが、製造効率及び偏光板の性能上好ましい。
【0007】
機能性を有するプラスチックフイルムは、プラスチックフイルム自体が機能を有するものであってもよいし、プラスチックフイルムを基材としてその上に機能性層を有するものであってもよい。
機能性フイルムとしては、高硬度プラスチックフイルムや反射防止フイルムが挙げられる。機能性フイルム上にさらに下記の機能性層を積層してもよい。
機能性層としては、ハードコート層や反射防止層、さらに紫外線・赤外線吸収層、着色層、選択波長吸収性層、電磁波シールド層等の機能を有する層などがあげらる。これらの層は積層することができ、多機能を有する層とすることができる。
【0008】
本発明のインナータイプタッチパネルの一例が、図1の概略断面図として示されている。この図1に基づいてインナータイプタッチパネル構成の概略を説明するが、本発明のインナータイプタッチパネルはこの例に限定されない。
図1において、固定基板であるガラス基板1及び該ガラス基板1よりも視認側に設けられた可動基板である位相差板4に各々透明導電膜2が形成されており、かつこれら2枚の基板が透明導電膜同士が対向するように設置されタッチパネル部を構成している。この2つの透明導電膜間に若干の空間を形成するためのドットスペーサー3が設けられている。位相差板4上には偏光膜5が設けられ、偏光膜5上には透明保護フイルムが設けられている。この位相差板4、偏光膜5、および透明保護フイルム6で偏光板を構成している。透明保護フイルム6上には、粘着剤層7を介して、ハードコート層9を有する高硬度プラスチックフイルム8が貼り付けられている。
本発明では、さらに上記の高硬度プラスチックフイルム8のハードコート層9上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる高表面硬度の耐擦傷性に優れた反射防止層(図示せず)を設けることができる。
【0009】
(高硬度プラスチックフイルム)
本発明で用いるプラスチックフイルムは、鉛筆硬度が好ましくは2H以上であり、より好ましくは3H以上、さらに好ましくは4H以上である高硬度プラスチックフイルムであるのが望ましい。
高硬度プラスチックフイルムを形成する材料の例には、セルロースエステル(例、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート)、ポリアリレート(例、ビスフェノールAとフタル酸の縮合物)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン)、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ノルボルネン系樹脂(環状オレフィン共重合体)、ポリエーテルイミドおよびポリオキシエチレンが含まれる。ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが最も好ましい。該プラスチックフィルムは単層または2種類以上の重層にて構成されてもよく延伸されていることが好ましい。プラスチックフイルムの厚さは、5以上1000μm以下であることが好ましく、10以上500μm以下であることがさらに好ましく、30以上200μm以下であることが最も好ましい。
また、高硬度プラスチックフイルムには、表面処理を施してもよい。具体的方法としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理を施したり、ウレタン系、ポリエステル系などのアンカーコーティング層を設けたり、シリカなどの無機質薄層などのアンダー層を設けたりすることができる。
【0010】
本発明では、高硬度プラスチックフイルムを得るために、上記で挙げたプラスチックフイルム基材上にハードコート層を設けることが好ましい。ハードコート層の形成には、硬化性樹脂を用いることができる。硬化性樹脂として、熱硬化性樹脂及び活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。ハードコート層としては、活性エネルギー線硬化性樹脂から形成された樹脂層が好ましい。
【0011】
上記熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等のプレポリマーの架橋反応を利用するものが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂については、詳しく後述する。
【0012】
ハードコート層の鉛筆硬度は好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上、更に好ましくは4H以上である。またハードコート層を高硬度化するために、有機または無機微粒子などを混合しても構わない。更に鉛筆硬度向上のためには、ハードコート層の厚みを通常の3〜10μmよりも厚くすることが効果的であるが、ハードコート層の割れが生じやすい等、脆性破壊の問題が発生することがあるため、表面弾性率を4.5GPa以上9GPa以下の範囲、かつ表面弾性率とハードコート層厚みの三乗との積を30KPa・mm3以上700KPa・mm3以下の範囲に制御したハードコート層を用い、ハードコート層の硬度と脆性破壊を避けることとの両立を図ることも好ましい。また、硬度と脆性破壊を避けることとの両立を図るために、ハードコート層の膜厚を薄くし、プラスチックフイルムに無機粒子及び/または有機微粒子を混合したり、あるいはこれと共に多官能モノマーを混合して該モノマーを架橋すること等により、プラスチックフイルムの硬度を上げることも好ましい。この場合、該プラスチックフイルムの成分と無機粒子及び/または有機微粒子を混合し、さらには多官能モノマーを混合・架橋して高硬度層を形成し、これをプラスチックフイルム層に積層することがより好ましい。積層する方法としては、溶融による共押出による方法、共流延による方法、あるいは塗布による方法であっても構わない。
【0013】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂を硬化するための活性エネルギー線としては、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線等が挙げられるが、紫外線が好ましい。活性エネルギー線の照射により形成される活性エネルギー線硬化樹脂層は、架橋しているポリマーを含んでもよい。架橋しているポリマーを含む活性エネルギー線硬化層は、活性エネルギー線硬化性樹脂、好ましくは多官能モノマーと重合開始剤を含む塗布液を上記のプラスチックフイルム上に塗布し、活性エネルギーの照射により多官能モノマーを重合させることにより形成できる。多官能性モノマーの官能基としては、エチレン性不飽和二重結合基が好ましい。
【0014】
上記多官能モノマーは、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルであることが好ましい。多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,4−シクロヘキサノール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール、1,2,4−シクロヘキサノール、ポリウレタンポリオールおよびポリエステルポリオールが含まれる。これらの中では、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびポリウレタンポリオールが好ましい。二種類以上の多官能モノマーを併用してもよい。
【0015】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン、ジビニルスルホン、メチレンビスアクリルアミドおよびメタクリルアミド、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテルなどが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0016】
本発明では多官能モノマーとしてエチレン性不飽和基を有するモノマーに加えて、架橋性官能基を有する化合物を併用して高硬度化してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。開環重合性の架橋性官能基が好ましく、エポキシ基が特に好ましい。架橋性官能基を有する化合物はモノマーであってもポリマーであってもよい。
【0017】
前記エポキシ系化合物としては、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールA−ジエポキシ−アクリル酸付加物等のエポキシエステルや、脂環式エポキシ等のモノマーおよびオリゴマーやその他、特開平11−209717号、同6−157819号等に記載の化合物が上げられる。架橋性官能基を有する化合物を加える場合は、多官能モノマー中、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
【0018】
ハードコート層としての活性エネルギー線硬化樹脂層に、無機微粒子を添加することで架橋収縮率を改良し、塗膜の硬度を上げることができる。無機微粒子としては硬度が高いものが好ましく、モース硬度が6以上の無機微粒子が好ましい。例えば、二酸化ケイ素粒子、二酸チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子が含まれる。
【0019】
これらの無機微粒子の平均粒子径は、1nm以上400nm以下、より好ましくは5nm以上200nm以下、さらに好ましくは10nm以上100nm以下の微粒子を10質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上45質量%以下添加させる。1nm以下では分散が難しく凝集粒子ができ、400nm以上ではヘイズが大きくなり、どちらも透明性を落としてしまい好ましくない。
【0020】
無機微粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化層の全量の1以上99質量%以下であることが好ましく、10以上90質量%以下であることがより好ましく、20以上80質量%以下であることがさらに好ましく、40以上60質量%以下であることが最も好ましい。
【0021】
一般に無機微粒子はバインダーポリマー(活性エネルギー線硬化樹脂)との親和性が悪いため単に両者を混合するだけでは界面が破壊して、膜が割れやすく、耐傷性を改善することは困難である。無機微粒子とバインダーポリマーとの親和性を改良するため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面修飾剤(表面処理剤)で処理することができる。表面処理剤としては、一方で無機微粒子と結合を形成し、他方でバインダーポリマーと高い親和性を有するものであることが好ましい。
無機微粒子の金属原子と結合を生成し得る官能基を有する化合物としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド化合物や、リン酸、スルホン酸、カルボン酸基等のアニオン性基を有する化合物が好ましい。これらの化合物はまた、バインダーポリマーとは化学的に結合することが好ましく、末端にビニル性重合基等を導入したものが好適である。例えば、エチレン性不飽和基を重合性基および架橋性基として有するモノマーからバインダーポリマーを合成する場合は、金属アルコキシド化合物またはアニオン性基含有化合物の末端にエチレン性不飽和基を有していることが好ましい。
【0022】
以下に表面処理剤の具体例を挙げる。
有機金属化合物の表面処理剤例
a)シラン含有有機化合物
a−1 H2C=CHCOOC4H8OSi(OC4H9)3
a−2 (H2C=CHCOOC4H8O)2Si(OC4H9)2
a−3 (H2C=CHCOOC4H8O)3SiOC4H9
a−4 H2C=CHCOOC3H6OSi(OC4H9)3
a−5 (H2C=CHCOOC3H6O)2Si(OC4H9)2
a−6 (H2C=CHCOOC3H6O)3SiOC4H9
【0023】
b)アルミニウム含有有機化合物
b−1 H2C=CHCOOC4H8OAl(OC4H9)2
b−2 H2C=CHCOOC3H6OAl(OC3H7)2
b−3 H2C=CHCOOC2H4OAl(OC2H5)2
b−4 H2C=CHCOOC2H4OC2H4OAl(OC2H4OC2H5)2
b−5 H2C=C(CH3)COOC4H8OAl(OC4H9)2
b−6 H2C=CHCOOC4H8OAl(OC4H9)OC4H8COOCH=CH2
b−7 H2C=CHCOOC2H4OAl{O(1,4−ph)}2
【0024】
c)ジルコニウム含有有機化合物
c−1 H2C=CHCOOC4H8OZr(OC4H9)3
c−2 H2C=CHCOOC3H7OZr(OC3H7)3
c−3 H2C=CHCOOC2H4OZr(OC2H5)3
c−4 H2C=C(CH3)COOC4H8OZr(OC4H9)3
c−5 {CH2=C(CH3)COO}2Zr(OC4H9)2
【0025】
d)チタニウム含有有機化合物
d−1 {H2C=C(CH3)COO}3TiOC2H4OC2H4OCH3
d−2 Ti{OCH2C(CH2OC2H4CH=CH2)2C2H5}4
d−3 H2C=CHCOOC4H8OTi(OC4H9)3
d−4 H2C=CHCOOC3H7OTi(OC3H7)3
d−5 H2C=CHCOOC2H4OTi(OC2H5)3
d−6 H2C=CHCOOSiOTi(OSiCH3)3
d−7 H2C=C(CH3)COOC4H8OTi(OC4H9)2
【0026】
アニオン性官能基含有表面処理剤例
e)リン酸基含有有機化合物
e−1 H2C=C(CH3)COOC2H4OPO(OH)2
e−2 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−3 H2C=CHCOOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−4 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
e−5 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPOCl2
e−6 H2C=C(CH3)COOC2H4CH{OPO(OH)2)2
e−7 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OPO(ONa)2
e−8 H2C=CHCOOC2H4OCO(1,4−ph)C5H10OPO(OH)2
e−9 (H2C=C(CH3)COO)2CHC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
【0027】
f)スルホン酸基含有有機化合物例
f−1 H2C=C(CH3)COOC2H4OSO3H
f−2 H2C=C(CH3)COOC3H6SO3H
f−3 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OSO3H
f−4 H2C=CHCOOC2H4OCOC5H10OSO3H
f−5 H2C=CHCOOC12H24(1,4−ph)SO3H
f−6 H2C=C(CH3)COOC2H4OCOC5H10OSO3Na
【0028】
g)カルボン酸基含有有機化合物例
g−1 H2C=CHCOO(C5H10COO)2H
g−2 H2C=CHCOOC5H10COOH
g−3 H2C=CHCOOC2H4OCO(1,2−ph)COOH
g−4 H2C=CHCOO(C2H4COO)2H
g−5 H2C=C(CH3)COOC5H10COOH
g−6 H2C=CHCOOC2H4COOH
ここでphはフェニル基を示す。
【0029】
これらの無機微粒子の表面処理は、溶液中でなされることが好ましい。表面処理剤を溶解した溶液に無機微粒子を添加し、超音波、スターラー、ホモジナイザー、ディゾルバー、サンドグラインダーを用いて、撹拌、分散することが好ましい。
【0030】
表面処理剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0031】
表面修飾した無機微粒子溶液に、上記の多官能モノマーと光重合開始剤を加え活性エネルギー線硬化塗布液とすることができる。
【0032】
光重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類が含まれる。特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が挙げられる。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントンが含まれる。また、架橋性官能基を有する化合物を併用する場合には、光カチオン性重合開始剤を併用することが好ましく、好ましい光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウムなどのオニウム塩が挙げられる。これらの具体例としては特開平11−209717号、同6−157819号等に記載の化合物が挙げられる。
【0033】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1乃至15質量部の範囲で使用することが好ましく、1乃至10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
光重合反応は、活性エネルギー線硬化層の塗布および乾燥後、紫外線照射により実施することが好ましい。
【0034】
本発明の高硬度のプラスチックフイルムの作製は、透明基材フイルム上に活性エネルギー線硬化性塗料をディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法等の公知の薄膜形成方法で形成、乾燥、活性エネルギー線照射してハードコート層を形成することにより作製することができる。
【0035】
本発明の高硬度フイルムの耐擦傷性の評価方法としては、鉛筆硬度評価法、微小硬度計による表面硬度測定法、テンシロンによる弾性率測定法等が挙げられるが、JIS K5400で規定する鉛筆硬度評価方法が好ましい。
【0036】
本発明では、上記の高硬度プラスチックフイルムのハードコート層上に、低屈折率層と高屈折率層とからなる高表面硬度の耐擦傷性に優れた反射防止層を設けることができる。
【0037】
上記低屈折率層および高屈折率層は、活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂を主体とする層であることが好ましく、特に高屈折率層は活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と金属酸化物微粒子からなる層であることが好ましい。活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂としては、同一分子内に2個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂が好ましい。具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−へキサンジオールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ポリイソシアネート硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートの反応によって得られる多官能のウレタンアクリレート、ポリエポキシ硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート(メタアクリレート)の反応によって得られる多官能のエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0038】
金属酸化物微粒子としては、平均粒子サイズが100nm以下、好ましくは50nm以下の二酸化チタン(例、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子などの屈折率が1.6より大きいものが挙げられる。屈折率が大きい二酸化チタンが添加量が少なくでき好ましい。
【0039】
無機微粒子と硬化樹脂との親和性を増すため、無機微粒子表面を有機セグメントを含む表面処理剤で処理することが好ましく、表面処理剤は、無機微粒子と結合を形成するか無機微粒子に吸着しうる官能基と、他方で活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と高い親和性を有するものが好ましい。
無機微粒子に結合もしくは吸着し得る官能基を有する表面修飾剤としては、シラン、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム等の金属アルコキシド硬化性樹脂や、リン酸基、硫酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等のアニオン性基を有する表面処理剤が好ましい。さらに硬化樹脂との親和性の高い官能基としては単に有機成分と親水性を合わせただけのものでもよいが、有機成分と化学的に結合しうる官能基が好ましく、特にエチレン性不飽和基が好ましい。
本発明において好ましい金属酸化物微粒子の表面処理剤は、金属アルコキシドもしくはアニオン性基とエチレン性不飽和基を同一分子内に有する硬化性樹脂やカルボン酸等のアニオン性基を有するアクリル酸共重合ポリマー等である。
【0040】
これら表面修飾剤の代表例として以下の不飽和二重結合含有のカップリング剤や、リン酸基含有有機硬化性樹脂、硫酸基含有有機硬化性樹脂、カルボン酸基含有有機硬化性樹脂等が挙げられる。
S−1 H2C=C(X)COOC3H6Si(OCH3)3
S−2 H2C=C(X)COOC2H4OTi(OC2H5)3
S−3 H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10OPO(OH)2
S−4 (H2C=C(X)COOC2H4OCOC5H10O)2POOH
S−5 H2C=C(X)COOC2H4OSO3H
S−6 H2C=C(X)COO(C5H10COO)2H
S−7 H2C=C(X)COOC5H10COOH
(X=H、あるいはCH3を表す)
【0041】
これらの無機微粒子の表面処理は、溶液中でなされることが好ましい。無機微粒子を機械的に微細分散するときに、一緒に表面処理剤を存在させるか、または無機微粒子を微細分散したあとに表面処理剤を添加して攪拌するか、さらには無機微粒子を微細分散する前に表面処理を行って(必要により、加温、乾燥した後に加熱、またはpH変更を行う)、そのあとで微細分散を行う方法でも良い。
表面処理剤を溶解する溶液としては、極性の大きな有機溶剤が好ましい。具体的には、アルコール、ケトン、エステル等の公知の溶剤が挙げられる。
【0042】
本発明において高屈折率層の硬化には、活性エネルギー線として、放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線などが用いられる。その中でも紫外線を用いてラジカルを発生させる重合開始剤を添加し、紫外線により硬化させる方法が特に好ましい。
【0043】
紫外線によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのケトン、ベンゾイルベンゾエート、ベンゾイン類、α−アシロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン等の公知のラジカル発生剤が使用できる。また上記で挙げたように通常、光酸発生剤として用いられるスルホニウム塩やヨードニウム塩なども紫外線照射によりラジカル発生剤として作用するため、本発明ではこれらを単独で用いてもよい。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、およびチオキサントン誘導体等が含まれる。
【0044】
重合開始剤は、単独でも複数開始剤を組み合わせて用いてもよい。重合開始剤の添加量としては、高屈折率層を形成するための硬化性組成物中に含まれる硬化性樹脂の総質量に対し、0.1乃至15質量%の範囲で使用することが好ましく、1乃至10質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0045】
これらの活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と金属酸化物微粒子からなる高屈折率層の屈折率は1.6以上、更に1.65以上が好ましく、低屈折率層の屈折率よりも0.2以上大きいことが好ましい。
【0046】
低屈折率層には、高屈折率層に使用する活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性樹脂と同様の硬化性樹脂を使用することができる。使用する樹脂の硬化後の屈折率は、1.6以下が好ましく、金属酸化物微粒子としては屈折率の小さな二酸化ケイ素が好ましい。
低屈折率層の屈折率は1.45以上1.6以下であることが好ましく、1.45以上1.55以下であることがより好ましい。
【0047】
これらの高屈折率層と低屈折率層は、それぞれ厚み50〜100nmの範囲で塗布され、反射防止の効果を大きくするために光学距離(屈折率×厚み)を観測波長の4分の1にすることが好ましい。
本発明では、高屈折率層と低屈折率層は、ハードコート層上に上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布液を、高屈折率層、低屈折率層の順にスピナー法、グラビア法、ワイヤーバー法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、活性エネルギー線照射して、硬化させることにより作製することができる。
【0048】
上記低屈折率層と高屈折率層とからなる反射防止層の反射率(正反射率)は、3.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
上記反射防止層の防汚性を向上させるために、低屈折率層にフッ素および/またはケイ素を含有する硬化樹脂を含有させたり、低屈折率層上にフッ素および/またはケイ素を含有する硬化樹脂を含有する層を設けることもできる。
低屈折率層に含有される上記硬化樹脂は、硬化前の硬化性樹脂として例を挙げれば、公知のフッ素含有硬化性樹脂やケイ素含有硬化性樹脂、さらにはフッ素含有ブロックとケイ素含有ブロックを有する硬化性樹脂が挙げられる。なかでも、低屈折率層を主として構成する硬化樹脂および/または金属酸化物等と、相溶性の良いセグメントとフッ素および/またはケイ素を含有するセグメントとを有する硬化性樹脂が好ましく、その硬化物を低屈折率層が含有することで、表面にフッ素あるいはケイ素を偏在させることができる。
【0050】
フッ素および/またはケイ素を含有する硬化性樹脂としては、フッ素あるいはケイ素を含有するモノマーと他の親水性あるいは親油性のモノマーとのブロック共重合体、あるいはグラフト共重合体が挙げられる。
上記フッ素含有モノマーとしては、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、パーフルオロアルキルスルホンアミドエチルアクリレート、パーフルオロアルキルアミドエチルアクリレート等に代表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
ケイ素含有モノマーとしては、ポリジメチルシロキサンと(メタ)アクリル酸等の反応によるシロキサン基を有するモノマーが挙げられる。
上記親水性あるいは親油性のモノマーとしては、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、末端に水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸のエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0051】
市販の硬化性樹脂としては、パーフルオロアルキル鎖のミクロドメイン構造を有するアクリル系オリゴマーのデフェンサMCF−300、312、323等、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマーのメガファックF−170、F−173、F−175等、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマーのメガファックF−171等(大日本インキ化学(株)製)や、表面移行性に優れたセグメントと樹脂に相溶するセグメントよりなるビニルモノマーのブロックポリマーであるフッ化アルキル系のモディパーF−200、220、600、820等、シリコン系のモディパーFS−700、710等(日本油脂(株)製)が挙げられる。
【0052】
低屈折率層の上に防汚性の層を設けるには、既に述べたことであるが、フッ素および/またはケイ素を含有した低表面エネルギー性の硬化性樹脂が好ましく、具体的には、特開昭57−34526号、特開平2−19801号、特開平3−17901号公報等に記載のフッ化炭化水素基を含有するシリコン硬化性樹脂、フッ化炭化水素基含有ポリマー等が挙げられる。
【0053】
(粘着剤)
本発明では、上記の高硬度プラスチックフイルムなどの機能性フイルムは、粘着剤により、タッチパネル部の視認側基板上、好ましくは偏光板の保護フイルム上に貼り合わすことができる。
本発明の粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものである。本発明における粘着剤層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化することで得ることができる。アクリル系共重合体が最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性や耐久性などに優れて好ましい。
粘着剤層の厚みは、適度な粘着力と粘弾性を発現させるために、その厚さとしては好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μm、特に好ましくは10〜30μmである。厚すぎると動作性の低下やヘイズ上昇など視認性の低下が起こり、薄すぎるとタッチの際に透明基材が剥離する可能性がある。
【0054】
(位相差板)
本発明では、位相差板として、公知の位相差板を用いることができる。例えばポリオレフィン系樹脂を一軸延伸したもの(WO―00/6584号公報、特開2002−48919号公報)、ノルボルネン系樹脂(特許第3019741号、特開2001−194527号公報、特開2001−42130号公報)やセルロース誘導体(特開2001−91743号公報)を用いることができる。特に位相差板としては、下記のように延伸、レターデーション添加剤の添加等によりレターデーションを調整したセルロースエステルが好ましい。
この位相差板の一方または、両方に吸湿を防止するバリア層などの機能層を設けても構わない。また本位相差板は延伸されていることが好ましく、空中、水中または水蒸気中で延伸しても構わない。またレターデーションを調整するため、少なくとも1種類以上のレターデーション調整剤を添加しても構わない。
【0055】
(偏光板(偏光膜)およびタッチパネル用基板)
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護フイルムからなる。保護フイルムとしては、通常、セルロースエステルフイルムが好ましく用いられている。一方の保護フイルムとして、上記のようなセルロースエステルフイルムからなる位相差板を用い、他方の保護フイルムとして、セルロースエステルフイルムを用いて貼り合わせをしてもよいし、両側ともセルロースエステルフイルムを用いて貼り合わせを行った後に位相差板を粘着剤で貼り合わせてもよい。本発明では、位相差板とは反対側に位置する保護フイルムの表面上に、セルロースエステルフイルムより表面硬度の大きいプラスチックフイルムまたは、プラスチックフイルムにハードコート層を設けたフイルムを粘着剤にて貼り合わせることにより、タッチパネル用上部基板を作製することが好ましい。またハードコート層の上部には反射防止層や防汚層などの機能層を設けることが好ましい。反射防止層の反射率は、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。
位相差板の遅相軸と偏光膜の透過軸の関係が適用される液晶表示装置の種類により異なるが、本発明の反射型液晶表示装置の場合は、実質的に45度となるように配置することが好ましい。
【0056】
(タッチパネル部)
本発明でタッチパネル部は、表示素子に近い側の固定基板と、対向する可動基板とを有する。固定基板と可動基板の対向面に、それぞれ透明導電膜を備えている。固定基板及び可動基板は、表示品質を高めるため、透明な光学材料で形成されていることが好ましく、特に本構成のタッチパネルの場合は、複屈折の小さな透明基板を用いることが好ましい。
固定基板に用いられる材料としては、例えば、ガラス、非晶性フイルム、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル、環状オレフィンなどのポリマーフィルムなどが挙げられる。
また、可動基板としては、本発明では位相差板を用いることが好ましく、さらに前述してように偏光膜を組み込んで作製したタッチパネル用基板を用いることが好ましい。しかし、本発明に用いられる位相差板は、タッチパネルとは別に設けても構わないし、固定基板、可動基板のどちらか、または、両方に用いても構わない。セルロースエステルからなる位相差板は、可動基板として用いることが特に好ましい。
2枚の基板それぞれに設けられた透明導電膜の間にはギャップが形成される。ギャップ間には通常空気層が存在するが、オプティカル・マッチングを取るために透明電極と屈折率の近い液体を充填させることもできる。また、透明導電膜の基板側にアンダーコート層、または、基板と反対側にオーバーコート層を付与し、光反射を低減させることもできる。スティッキング性をなくし、耐久性を改善するために、透明導電膜表面は粗面化されていてもよい。
ギャップ間にはスペーサを設けることができる。スペーサとしては、ドット状スペーサや、固定基板と可動基板との周辺部に設けた貼合せ材などが用いられる。ドット状スペーサとしては、例えば0.005〜1.0mm程度の高さのものが好ましい。
【0057】
タッチパネルによるデータ入力位置検出の方式は、デジタル式(マトリクス式)、アナログ式のどちらでも用いることができる。
デジタル式(マトリクス式)では、固定基板の透明導電膜(例えばX列)と可動基板の透明導電膜(例えばY列)とによりマトリクスを形成し、押圧による透明導電膜同士の接触位置に対応して、データ位置を検出することができる。
アナログ式では、例えば、固定基板のX軸方向の両端部、および、可動基板のY軸方向の両端部に電極を形成し、押圧により透明電極同士が接触し、接触位置により生じるX方向、Y方向の抵抗値を検出することによって、データ入力位置を検出することができる。
本発明においては、タッチパネルは表示素子とともに用いられることが好ましいが、タッチパネル部が表示部とは別々になっていても構わないし、両者が一体となっていても構わない。
【0058】
(透明導電膜)
本発明のタッチパネルに用いる透明導電膜としては、表面抵抗率は、2000Ω/□以下であることが好ましく、1000Ω/□以下であることがさらに好ましい。さらに好ましくは100Ω/□以上900Ω/□以下である。
【0059】
上記表面抵抗率の透明導電膜は、基板表面に導電性微粒子分散物、金属アルコキシド溶液などを塗布することによって設けても構わないし、基板形成用溶液と共に導電性微粒子分散物、金属アルコキシド溶液などを共流延することによって設けても構わない。また、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法などの真空成膜法によっても、大気圧での気相成長法によって透明導電膜を形成しても構わない。これらの方法のなかで、好ましくはスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、特に好ましくはスパッタリング法である。また、これらの方法を併用することも可能である。
透明導電膜は、基板の片面のみに設けても構わないし、両面に設けても構わない。
【0060】
導電性微粒子分散物の塗布液としては、金属微粒子、金属酸化物微粒子、及び金属窒化物微粒子から選択される少なくとも1種の微粒子を含有する塗布液が用いられる。
上記金属微粒子としては、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、パラジウム、プラチナ等の金属あるいはこれらの合金の微粒子が挙げられる。なかでも、銀及び銀の合金の微粒子が好ましく、特には耐候性の観点から、パラジウムと銀の合金が好ましい。パラジウムと銀の合金の場合にパラジウムの含有量は、5〜30質量%が好ましい。パラジウム含有量が少ないと耐候性が悪く、パラジウム含有量が多くなると導電性が低下する。
金属微粒子の作成方法としては、低真空蒸発法による微粒子の作製方法や金属塩の水溶液を鉄(II)、ヒドラジン、ボロンハイドライド、ヒドロキシエチルアミン等のアミン等の還元剤で還元する金属コロイド作製方法が挙げられる。
金属酸化物の微粒子としては、In2O3系(Snなどドープ品含む)、SnO2系(F、Sbなどドープ品含む)、ZnO系(Al、Gaなどのドープ品含む)、TiO2、Al2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5、及びこれらの複合品などの微粒子が挙げられる。
金属窒化物の微粒子としては、TiNなどの微粒子が挙げられる。
【0061】
これら導電性微粒子の平均粒径は、1.0〜700nmが好ましく、2.0〜300nmが更に好ましく、5.0〜100nmが最も好ましい。粒径が大きすぎると、導電性微粒子による光の吸収が大きくなり、このために粒子層の光透過率が低下すると同時にヘイズが大きくなり、また、これら導電性微粒子の平均粒径が1.0nm未満の場合には、微粒子の分散が困難になること、微粒子層の表面抵抗が急激に大きくなることなどのため、本発明の目的を達成しうる程度の低抵抗値を有する導電膜(導電性微粒子層)を得ることができない。
【0062】
導電性微粒子層は、導電性微粒子を水を主体とする溶液あるいは有機溶剤等に分散した塗料を基材に塗布して形成することができる。
塗布する前に、基材に、表面処理や下塗りを施すことができる。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられる。下塗り層の素材としては塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル等の共重合体或いはラテックス、ゼラチン等の水溶性ポリマーなどが挙げられるが特に限定はされない。
導電性微粒子の分散安定化のためには、水を主体とする溶液が好ましく、水と混合できる溶剤としてはエチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコールが好ましい。
導電性微粒子の塗布量としては、10乃至1000mg/m2が好ましく、20乃至500mg/m2がさらに好ましく、50〜150mg/m2が最も好ましい。塗布量が少ないと導電性に劣り、塗布量が多いと光透過性に劣る。
【0063】
透明導電膜は、バインダーを含有していてもよいし、バインダーを含有せずに実質的に導電性微粒子のみから形成されていてもよい。
バインダーを用いる場合、素材は特に限定されないが、親水性バインダー、疎水性バインダー、あるいは、ラテックスを用いることができる。親水性バインダーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどである。疎水性バインダーとしては、セルロースエステル(例えば、ニトロセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、メチルセルロース)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルアクリレートなどを含むビニル系ポリマー、ポリアミド、ポリエステルなどのポリマーである。
【0064】
透明導電性膜の導電性や光透過性の向上のため、熱処理や水処理することができる。熱処理温度は、ポリマーフィルムの耐熱性によるが、150℃以下が好ましく、より好ましくは100℃から150℃の範囲である。150℃以上ではポリマーフィルムの熱による変形が起こりやすく、100℃未満では熱処理の効果が発現し難く、熱処理時間が長くなる。
【0065】
熱処理の方法は、ウェッブ状態で加熱ゾーンを通しながら処理することが均一な処理ができて好ましい。加熱ゾーンの長さと搬送速度で滞在時間を調節することができる。またロール状のフイルムを恒温槽中で加熱することも可能であるが、熱伝導のバラツキを考慮した時間設定が必要になる。
【0066】
また、熱処理に先立ち、透明導電性層膜を水洗等の水処理をすることで熱処理をさらに効率良くすることができる。水洗等の水処理は、通常の塗布方式による水だけの塗布、具体的にはディップコート塗布、ワイヤーバーによる水の塗布等があり、他にはスプレーやシャワーで水を透明導電性層に掛ける方法がある。透明導電性層に水をかけた後、過剰の水は必要に応じて、ワイヤーバー、ロッドバーで掻き取ったり、エアーナイフで掻き取ることができる。
【0067】
これらの水処理により、熱処理後の透明導電性層の表面抵抗をさらに低下させることができ、加えて透過率の増加、透過スペクトルの平坦化、反射防止層を積層した後の反射率の低下に対する効果が顕著になる。
【0068】
透明導電膜を形成するための真空成膜法としては、「透明導電膜の新展開」シーエムシー、澤田 豊監修=月刊ディスプレイ」1999年9月号に記載の方法を用いることができる。
成膜する金属酸化物としてはIn2O3系(Snなどドープ品、ITO含む)、SnO2系(F、Sbなどドープ品含む)、ZnO系(Al、Gaなどのドープ品含む)またはこれらの複合品In2O3−ZnO系などが挙げられる。金属窒化物としてはTiNなどが挙げられる。また、銀などと共に成膜しても良い。
【0069】
スパッタリング法などでポリマーフィルム上に成膜する際にはその表面をフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、プロピレン系樹脂、ビニル系樹脂などの高分子や、SiO2,TiO2,ZrO2,SnO2などの無機物でコートすることが好ましい。また、高分子中に無機微粒子を分散してコートすることも好ましい。
コートする膜厚としては2nm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは2nm以上50μm以下であり、特に好ましくは2nm以上10μm以下である。
スパッタリング法により酸化インジウムを主として含む膜を製膜する場合には、インジウムを主成分とする金属ターゲット、または酸化インジウムを主成分とする焼結体であるターゲットを用いた反応性スパッタリングを行うことができる。反応の制御上、後者が好ましい。特に好ましくは酸化スズを含有する酸化インジウムであり、酸化スズを1質量%から20質量%含むのが望ましく、3質量%から12質量%含むのが特に望ましい。反応性スパッタリング法においてはスパッタリングガスとしては、アルゴンなどの不活性ガスを用い、反応性ガスとしては酸素を用いる。また、酸素の流量を制御する方法としてはプラズマエミッションモニター法で行うことが好ましい。放電形式には特に規定しないが、DCマグネトロンスパッタ、RFマグネトロンスパッタ、1対のターゲット間にAC電圧を印加する方法などが好ましい。成膜時の基板の温度は特に規定はないが、基板のガラス転移点以下で可能な範囲で加熱した方が膜強度は向上する傾向がある。
【0070】
透明導電膜が付与された基材の光透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
【0071】
透明導電膜の厚みは、ITOを用いた場合を例にとると、5〜200nmがよく、好ましくは7〜150nm、更に好ましくは10nm〜30nmである。透明導電膜は、全面を電極として用いる場合と、全面電極形成後にレジスト形成およびエッチングを行ってパターン加工して用いる場合がある。
【0072】
タッチパネル部を構成する2枚の基板のうち固定基板としては、前記したようなガラス基板を用い、ガラス基板に透明導電膜を備えたフイルムを貼り合わせてもよいし、ガラス基板の代わりに透明導電膜を備えたポリマーフイルムを直接用いてもよい。また、これ以外にも、透明導電性を有する適当なシートであってもよい。
可動基板には基板の少なくとも一方の面に透明導電膜を設けることが特に好ましい。勿論、透明導電膜を形成したフイルムを基板に貼り合わせてもよい。また、本発明のインナータイプタッチパネルは可動基板が偏光膜を有するので、偏光性能上、透明導電膜の付与は偏光板作製の一連の工程で行うことが好ましい。
【0073】
(液晶表示装置)
本発明のタッチパネルは、液晶表示装置の液晶セルの上に設置され、インナータイプタッチパネルとして使用されるが、液晶表示装置以外にも、様々な表示装置と組み合わせて用いることができる。例えば、カソードレイチューブ(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、フィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、無機ELデバイス、有機ELデバイスなどである。本発明のタッチパネルは、位相差板や円偏光板を用いているので、これら表示装置の外光の反射を低減することができる。この表示装置の中では、液晶表示装置の他に、無機EL、有機ELと組み合わせて用いるのが好ましい。
【0074】
液晶表示装置に用いられる液晶モードは特に限定されないが、TN(twisted nematic )型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Aligned Nematic)型、OCB(Optically Compensated bend)型、ECB(Electrically controlled birefringence)型、VA(Vertically Aligned)型または、GH(Guest Host)型であることが好ましい。
TN型液晶セルのツイスト角は、40乃至100゜であることが好ましく、50乃至90゜であることがさらに好ましく、60乃至80゜であることが最も好ましい。液晶層の屈折率異方性(Δn)と液晶層の厚み(d)との積(Δnd)の値は、0.1乃至0.5μmであることが好ましく、0.2乃至0.4μmであることがさらに好ましい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
反射型液晶表示装置は、印加電圧が低い時に明表示、高い時に暗表示であるノーマリーホワイトモードでも、印加電圧が低い時に暗表示、高い時に明表示であるノーマリーブラックモードでも用いることができる。ノーマリーホワイトモードの方が好ましい。
【0075】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
(プラスチックフイルムの作製)
(1)ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の作成
テレフタル酸ジメチルエステル80部、エチレングリコール58部、酢酸マンガン4水和物0.029部、三酸化アンチモン0.028部を加え、撹拌しながら200℃に加熱した。副生するメタノールを除去しつつ235℃まで昇温した。メタノールの副生が終了後トリメチルリン酸0.03部を添加し、285℃に昇温しながら0.3Torrに減圧し固有粘度0.62のPETを重合した。その後、ヌードル状に熔融押出しし、カッターで切断し、ペレット状のポリエチレンテレフタレートを得た。作製したポリエチレンテレフタレートは130℃で1時間真空乾燥を行った。
なお、固有粘度は以下の方法で測定した。
▲1▼フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒(重量比:60/40)にポリエチレンテレフタレートを溶解し、0.2g/dl、0.6g/dl、1.0g/dlの溶液を作成する。
▲2▼これを20℃において、ウベローデ粘度計を用いて測定する。
▲3▼濃度に対し粘度をプロットし、濃度=0に外挿した粘度を固有粘度とする。
【0077】
(2)プラスチックフイルムの製膜
上記方法で作製したペレットを押出し機を用い300℃で熔融し、5μmのメッシュフィルタ−で濾過した後、Tダイ(マルチマニホールドダイ)から50℃の静電印加したキャスティングドラム上に押し出し、これをMD延伸(倍率3.5倍、105℃)、TD延伸(4.0倍、110℃)、熱固定(245℃)、熱緩和を行い、プラスチックフイルムを作製した。フイルム総厚は100μmであった。
【0078】
(3)プラスチックフイルムのコロナ処理
コロナ放電処理はピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、プラスチックフイルムを20m/分で処理した。このとき処理は、0.375KV・A・分/m2の処理とした。処理時の放電周波数は、9.6KHz、電極と誘電体ロールのギャップクリアランスは、1.6mmで行った。
【0079】
(4)下塗り液の調製および塗布
下記素材を使用し、コロナ処理されたプラスチックフイルムとハードコート層の密着性を付与させるための下塗り液を調製し、塗布を実施した。
これらの下塗り液を、バーコーターを用いて7ml/m2になるように塗布し、搬送しつつ加熱ゾーンにて160℃で5分間加熱乾燥した。巻き取り直前で冷却ローラーにて30℃以下に冷却し、作成した下塗り付きプラスチックフイルムを巻き取った。
【0080】
(ハードコート層)
(ハードコート用素材の作製)
(開環重合性基含有化合物Aの合成)
メチルエチルケトン(MEK)275mlを窒素気流下、60℃で1時間攪拌後、V−65(和光純薬製重合開始剤)0.5gをMEK8.3mlに溶解したものを全量添加した。その後、グリシジルメタクリレート(50g)を2時間かけて滴下し、滴下終了後、V−65(0.5g)のMEK(8.3ml)溶液を添加し、2時間反応させた。その後、反応温度を80℃として2時間反応させ、反応終了後、室温まで冷却させた。得られた反応溶液をヘキサン10Lに1時間かけて滴下し、沈殿物を35℃、8時間減圧乾燥し、開環重合性基含有化合物Aを45g得た。
【0081】
(無機架橋微粒子分散液の調製)
セラミックコートのベッセルに各試薬を以下の量を計量した。
メチルイソブチルケトン 234g
アニオン性官能基含有表面処理剤 S−6(X=H) 36g
H2C=C(X)COO(C5H10COO)2H
アルミナC(日本アエロジル(株)社製 平均粒径:13nm) 180g
上記混合液をサンドミル(1/4Gのサンドミル)にて1600rpm、10時間微細分散した。メディアは1mmφのジルコニアビーズを1400g用いた。分散後、ビーズを分離し、表面修飾した無機架橋微粒子分散液を得た。
【0082】
(ハードコート液の調製)
エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物Aとラジカル重合開始剤(イルガキュア184(チバガイギー社製))とカチオン重合開始剤(UVI−6990(ユニオンカーバイド日本(株)製)をメチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン混合溶液(1/1)に溶解後、無機架橋微粒子分散液の混合液を添加し、30分間攪拌し、ハードコート液を作製した。なお、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の種類は表1記載の組み合わせで選択し、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物および架橋微粒子の混合比は表1記載の比率になるように調整した。
重合開始剤は、エチレン性不飽和基含有化合物と開環重合性基含有化合物の総質量に対し、ラジカル重合開始剤とカチオン重合開始剤を2.9%ずつ添加した。なお、開環重合性基含有化合物を含まない場合はラジカル重合開始剤のみを5.8%添加した。
【0083】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
上記にて作製した下塗り層付きプラスチックフイルムを用い、その表面にグロー放電処理した後、上記にて作製したハードコート液を表1記載の膜厚になるようにワイヤーバーで塗布、120℃で2分乾燥し、750mJ/cm2の紫外線照射後、120℃、10分加熱することによって、ハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
【0084】
(保護フイルムの作製)
室温において、平均酢化度59.7%のセルロースアセテート120重量部、トリフェニレンホスフェート9.36重量部、ビフェニルジフェニルホスフェート4.68重量部、メチレンクロリド538.2重量部、メタノール46.8重量部を混合して溶液(ドープ)を作製した。得られたドープを、ステンレス製バンド上に流延し、自己支持性を持つまでフイルムを乾燥した後バンドから剥ぎ取った。このフイルムを120℃、30分乾燥した。
このようにして得られたフイルムの厚みは102μmであった。
【0085】
(位相差板の作製)
室温において、平均酢化度59.5%のセルロースエステル100重量部、トリフェニルホスフェート7.8重量部、ビフェニルジフェニルホスフェート3.9重量部、下記のレターデーション上昇剤1.32重量部、メチレンクロリド587.69重量部、メタノール50.85重量部を混合して、溶液(ドープ)を調製した。
【0086】
【化1】
【0087】
得られたドープを、製膜バンド上に流延し、室温で1分間乾燥後、45℃で5分間乾燥させた。乾燥後の溶剤残留量は30質量%であった。セルロースエステルフイルムをバンドから剥離し、120℃で10分間乾燥した後、130℃で流延方向とは平行な方向に実倍で1.34倍に延伸した。延伸方向と垂直な方向は、自由に収縮できるようにした。延伸後、120℃で30分間乾燥した後、延伸フイルムを取り出した。延伸後の溶剤残留量は0.1質量%であった。
得られたポリマーフィルムフィルム(PF−1)の厚さは、113μmであり、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長450nm、550nmおよび590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、それぞれ、125.2nm、137.8nmおよび141.1nmであった。従って、このセルロースエステルフイルムは、広い波長領域でλ/4を達成していた。
さらに、アッベ屈折率計による屈折率測定と、レターデーションの角度依存性の測定から、波長550nmにおける面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを求め、(nx−nz)/(nx−ny)の値を計算したところ、1.48であった。
【0088】
(透明導電膜付き位相差板の形成)
上記位相差板を巻取り型のスパッタリング装置にセットして、真空槽を1.2mPaの圧力まで排気した後、Ar+O2混合ガス(O2=1.5%)を導入し、圧力を0.25Paに調整した後、基板温度を120℃、投入電力密度1W/cm2にて、DCスパッタリングを行い、厚み21nmのIn2O3系の透明導電膜を形成した。
このようにして得られた透明導電膜付き位相差フイルムの透明導電膜側の表面抵抗率を、4端子法にて測定した結果、406Ω/□であり、光の透過率は88%であった。
得られた透明導電膜付き位相差板についてエリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長450nm、550nm、および590nmにおけるレターデーション値(Re)を測定したところ、それぞれ、125.2nm、137.8nm、141.1nmであった。したがって、透明導電膜を付けてもなお広い波長領域でλ/4を達成していた。
さらに、アッベ屈折率計による屈折率測定と、レターデーションの角度依存性の測定から、波長550nmにおける面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを求め、(nx−nz)/(nx−ny)の値を計算したところ、1.48であった。
【0089】
(可動基板の作製)
透明導電膜付き位相差板の透明導電膜を設けていない側に偏光膜及び保護フイルムをこの順序で貼り付けた。位相差板の延伸方向(遅相軸方向と平行)と偏光膜の透過軸方向とのなす角は45°とした。続けて更に先に作製した、ハードコート付きプラスチックフイルムをハードコート層が観察者側を向くように保護フイルムに粘着剤で貼り付けた。このようにして、可動基板を作製した。
なお、ここで偏光膜は、厚さ75μmのPVAフイルム(平均重合度約1700、ケン化度99.9%以上)に一軸延伸を施し(延伸倍率5倍)、緊張状態を保ったまま、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液(ヨウ素/ヨウ化カリウム/水=6/7.5/100(重量比))に300秒浸漬した。25℃の純水で20秒水洗した後、50℃で乾燥してPVA系偏光膜を得た。
【0090】
(タッチパネルの作製)
片面の表面抵抗率が400Ω/□の透明導電膜(ITO)が付いた0.7mm厚みのガラス板を用意し、表面に1mmピッチのドットスペーサーと両端部に銀電極を印刷した。また、上記可動基板である透明導電膜付き位相差板面の両端に銀電極を印刷し、それぞれ、上記透明導電ガラス板と、透明導電膜同士が対向するように接着し、同時にフレキシブル電極を取り付けた。この際、両基板の周囲に100μm厚の絶縁性貼り合せ剤を挟んだ。このようにしてタッチパネルを作製した。
【0091】
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
TN型液晶セルを使用した、タッチパネル付き反射型液晶表示装置(パワーザウルスMI−C1、シャープ(株)製)に設けられているタッチパネル部を取り外し、偏光板と位相差板を剥がし、上記で作製したタッチパネルを取り付けた。
【0092】
以上作製したハードコート付きフイルムの透過率、ヘイズ及び鉛筆硬度;タッチパネルの動作性;タッチパネルの反射率(白表示と黒表示)及びコントラストの評価を下記する方法で評価した。
結果を表1に示した。なお、表1におけるDPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)である。
【0093】
[実施例2]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0094】
[実施例3]
(ハードコート層塗布液(h−1)の調製)
メチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレートを溶解させ、熱重合開始剤を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得たポリグリシジルメタクリレート(ポリスチレン換算分子量は12,000)をメチルエチルケトンに50質量%濃度になるように溶解した溶液100質量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295;大阪有機化学工業(株)製)150質量部と光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)6重量部と光カチオン重合開始剤(ロードシル2074、ローディア社製)6質量部を30質量部のメチルイソブチルケトンに溶解したものを撹拌しながら混合し、ハードコート層塗布液を作製した。
【0095】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
表1に記載のプラスチックフイルムをグロー放電処理した後、上記のハードコート層塗布液を表1の添加比率、膜厚になるようにワイヤーバーで塗布・乾燥し、紫外線照射しハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0096】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0097】
[実施例4]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例3と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0098】
[実施例5]
(ハードコート層用塗布液h−2の調整)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)306重量部を、16重量部のメチルエチルケトンと220重量部のシクロヘキサノンの混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5重量部を加え、溶解するまで攪拌した後に、450重量部のMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30質量%のSiO2ゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)を添加し、撹拌して混合物を得、孔径3μmのポリプロピレン製フィルター(PPE−03)で濾過してハードコート層用塗布液h−2を調製した。
【0099】
(ハードコート付きプラスチックフイルムの作製)
実施例1にて作製したプラスチックフイルムをグロー放電処理した後、上記のハードコート層塗布液を表1の添加比率、膜厚になるようにワイヤーバーで塗布・乾燥し、紫外線照射しハードコート付きプラスチックフイルムを作製した。
【0100】
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0101】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0102】
[実施例6]
ハードコート層の膜厚を表1の通りに変更する以外は、実施例1と同様の方法で、各評価を実施し、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0103】
[実施例7]
(1)高屈折率層塗布液の調製
二酸化チタン微粒子(TTO−55B、石原産業(株)製)30.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(アロニクスM−5300東亞合成(株)製)4.5質量部およびシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散し、質量平均径55nmの二酸化チタン分散液を調製した。前記二酸化チタン分散物にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、日本化薬(株)製)と、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製、モノマーの合計量(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アニオン性モノマーおよびカチオン性モノマーの合計量に対し5%)とを混合し、高屈折率層の屈折率が1.85になるように調整した。
【0104】
(2)低屈折率層塗布液の調製
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA、日本化薬(株)製)60質量部、光ラジカル重合開始剤(イルガキュア184、チバガイギー社製)2質量部、メガファック531A(C8F17SO2N(C3H7)CH2CH2OCOCH=CH2、大日本インキ化学工業(株)製)9質量g、およびメチルエチルケトンを混合、攪拌して、低屈折率層の塗布液を調製した。
屈折率の調整は、二酸化ケイ素微粒子(アエロジル200、日本アエロジル(株)製)30.0質量部、カルボン酸基含有モノマー(アロニクスM−5300東亞合成(株)製)4.5質量部およびシクロヘキサノン65.5質量部を、サンドグラインダーミルにより分散調整した、質量平均径12nmの二酸化ケイ素微粒子分散液を添加して行った。
【0105】
(3)防汚性反射防止層付きハードコートフィルムの形成
実施例1で使用したハードコート層を塗設後、高屈折率層塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥膜厚が75nmになるように塗布、乾燥、紫外線照射し、さらに、高屈折率層の上に、上記低屈折率層塗布液を乾燥膜厚が90nmになるように塗布、乾燥、紫外線照射し反射防止層を形成した反射防止層付きハードコートフィルムを得た。
【0106】
(透明導電膜付き位相差板の作製)
実施例1にて作製した位相差板に、実施例1と同様の方法で透明導電膜を付与し、透明導電膜付き位相差板を作製した。
【0107】
(可動基板の作製)
実施例1と同様の方法で、可動基板を作製した。
(タッチパネルの作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネルを作製した。
(タッチパネル付き反射型液晶表示装置の作製)
実施例1と同様の方法で、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。
【0108】
実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。結果を表1に示した。
【0109】
[比較例1]
ハードコート層を設けずPETのみからなるプラスチックフイルムを粘着剤で貼り付けた点以外は、実施例1と同様の方法で各評価を実施し、タッチパネル付き反射型液晶表示装置を作製した。実施例1と同様にそれぞれの項目について評価を行った。
【0110】
[比較例2]
TN型液晶セルを使用したタッチパネル付き反射型液晶表示装置(パワーザウルスMI−C1、シャープ(株)製)にて、それぞれの項目について評価を行った。なお、フイルムの透過率、ヘイズ、鉛筆硬度については、表面のハードコート付きプラスチックフイルムを上記装置から剥がし、評価を行った。結果を表1に示した。
【0111】
(評価方法)
・ハードコート付きフイルムの透過率、ヘイズの評価
ハードコート付きプラスチックフイルムの透過率、ヘイズの測定は、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0112】
・鉛筆硬度の評価
ハードコート付きプラスチックフイルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間放置した後、JIS S6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い、1kgのおもりを用いて各硬度の鉛筆で引っ掻きを5回繰り返し、傷が全く認められなかった最大硬度をフイルムの硬度とした。なお、JIS K5400で定義される傷は▲1▼塗膜の破れ、▲2▼塗膜のすり傷であり、▲3▼塗膜のへこみは対象としないと記載されているが、ここでは、▲3▼塗膜のへこみも含めて傷と判断した。
【0113】
・タッチパネルの動作性確認および光学特性(反射率及びコントラスト)の評価タッチパネル付き反射型液晶表示装置の動作確認を行った。評価は下記の2段階表示とした。
良好:ポリアセタールペン((株)パイロット製ぺんとぴあ)により、タッチパネル表示部にタッチし、応答する
不良:ポリアセタールペンにより、タッチパネル表示部にタッチし、応答しない
また、測定機(CM−2002 ミノルタ(株)製)を用いて、黒表示反射率、白表示反射率を測定し、コントラスト(白表示反射率/黒表示反射率)を算出した。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示される結果から、本発明のタッチパネルは良好な動作性及びコントラストを有しつつ、高硬度であり、優れた耐擦傷性を有することが明らかである。
【0116】
[比較例3]
実施例1と同様に作製した、ハードコート付きプラスチックフイルムをハードコート層が観察者側を向くように保護フイルムに粘着剤である日本化薬(株)製AGR−100を2μmの厚みに塗布し、その後は実施例1と同様に貼り付け、可動基板を作製した。
評価については、動作性以外の項目は実施例1と同等であったが、動作性については粘着剤の厚みが薄かったために、数回のタッチで基材同士が剥がれてしまい、良好な動作性を得ることができなかった。
【0117】
[参考例]
透明導電膜の付与を偏光膜作製後に行う例。
サンリッツ(株)製スーパーハイコントラストクラスHLC−5618(偏光度:99.99%)に対して、実施例1の透明導電膜の付与条件と同様な処理で透明導電膜を付与したところ、処理した製品の偏光度は99.92%と、偏光度の低下が見られた。
【0118】
【発明の効果】
本発明のインナータイプタッチパネルは、良好な動作性及びコントラストを有しつつ、高硬度であり、優れた耐擦傷性を有する。また、このインナータイプタッチパネルを備えた液晶表示装置は、良好な動作性を有し、コントラストが良好で視認性に優れ、耐擦傷性に優れる。
また、本発明のインナータイプタッチパネルは、例えば表面側の保護フイルムとして通常のセルロースエステルフイルムを用いて偏光板を作製したのち、高硬度プラスチックフイルムを粘着剤で貼り合わせるプロセスにより製造することができるので、偏光板作製時における水抜けの問題が回避でき、通常の偏光板作製工程をそのまま使用できるといった利点があり、良好な表面硬度を有するインナータイプタッチパネルを簡単に作製することができるとともに、該プラスチックフィルムの最表面に反射防止層を設けることにより、視認性の良好なインナータイプタッチパネルおよび液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインナータイプタッチパネルの一例の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス基板
2 透明導電膜
3 ドットスペーサー
4 位相差板
5 偏光膜
6 透明保護フイルム
7 粘着剤層
8 高硬度プラスチックフイルム
9 ハードコート層
Claims (3)
- 透明導電膜付き基板2枚を透明導電膜同士が対向するように配置してなるタッチパネルの可動基板が偏光膜を有し、かつ表示装置の視認面上に配置されて用いられるインナータイプタッチパネルの製造方法であって、
可動基板の視認側基材に機能性を有するプラスチックフイルムを用い、該プラスチックフイルムと透明導電膜および偏光膜を有する基材とを粘着剤層を介して貼り合わせて可動基板を作成する工程を有することを特徴とするインナータイプタッチパネルの製造方法。 - 請求項1の製造方法で製造されたインナータイプタッチパネル。
- 請求項2に記載のインナータイプタッチパネルを用いた表示装置。
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JP2002209613A JP2004054492A (ja) | 2002-07-18 | 2002-07-18 | インナータイプタッチパネル、その製造方法及び表示装置 |
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Cited By (4)
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JP2008047028A (ja) * | 2006-08-21 | 2008-02-28 | Fujitsu Component Ltd | 透明導電ポリマ膜を用いたタッチパネルとその製造方法 |
CN100442083C (zh) * | 2004-10-06 | 2008-12-10 | 日东电工株式会社 | 透明导电性膜及触摸屏 |
JPWO2010044229A1 (ja) * | 2008-10-15 | 2012-03-15 | 三菱樹脂株式会社 | 透明粘着シートおよび画像表示装置 |
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-
2002
- 2002-07-18 JP JP2002209613A patent/JP2004054492A/ja active Pending
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