JP2004054420A - 製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置、関連分析方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents
製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置、関連分析方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】プロセス操業データ及び品質データを基に、正規化された操業データを基底ベクトルとする操業データ空間を複数の局所領域に分割し、各局所領域における重み関数を導出し、この重み関数を用いて局所領域近傍の外部データも取り込んだヒストグラムを作成する。このヒストグラムに基づいた累積度数を評価し、ある閾値以上の累積度数が得られた領域に対してのみ確率分布計算を行う。重み関数導出から、確率分布評価までの一連の処理を全ての局所領域に対して行うことで、各局所領域に相当する操業範囲での品質の評価を行い、更に操業条件の変更に対する品質の推移を分析する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置、関連分析方法及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関し、特に操業結果として品質が決まるプロセス全般において、複数の操業因子と品質の関連性を明らかにすることによって、品質不合の要因を解明し、望ましい品質を得るための操業条件を見出すために用いて好適な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、操業結果として品質が決まるプロセスにおいて、操業条件が品質に与える影響を解析する操業分析手法としては、単一の操業因子と品質との相関係数を用いて評価する相関解析法や、複数の操業因子を入力とし品質を出力とする重回帰モデルを作成して評価する方法が良く知られている。
【0003】
また、特開平6−304723号公報に開示された手法では、鉄鋼プロセスにおける鋳片のカーボン量等の物性値、鋳造巾等の操業値、冷却ゾーンの温度値等を操業因子とし、鋼板の表面欠陥を品質データとして多層神経回路網(Multi layer Neural Network)を用いた品質予測装置を学習させ、品質制御診断を行っている。
また、確率分布を用いた品質管理・予測手法としては、ランダムに発生する表面品質欠陥がポアソン分布に近似される性質を利用して、主に半導体製造分野において、表面欠陥発生平均個数から製品歩留まりを推定する手法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、相関係数や重回帰モデルを用いた方法では、分析対象である操業及び品質データは全ての操業範囲において単一の線形モデルで表現できるとの前提条件に基づいて相関係数や回帰モデルを導出して分析を行うため、非線形で、かつ様々な品質不合要因が存在するプロセスから得られる操業および品質データを解析する場合には、両者の関係を正しく捉えることができない問題があった。
【0005】
また、特開平6−304723号公報に開示された手法では、プロセス操業データとして、鋳片のカーボン量等の物性値、板幅等の連続鋳造操業値、各冷却ゾーン温度等を、また品質データとして、表面欠陥の有り・無しを入力している。しかし、実際の鉄鋼プロセスにおいては、表面欠陥の発生要因は多岐に渡り、人為的な製造条件の設定や表面欠陥の計測が困難な場合も多い。この場合、操業の結果として現れる品質データには、不確定性が含まれることになり、品質データを表面欠陥の有り・無しという2値表現で与えて、プロセス操業条件との関係を学習しても、十分に高い精度の学習結果を得ることができない問題があった。
【0006】
また、ごく簡単な工程の製造プロセスでは、表面結果をポアソン分布で近似することができるが、複雑化している現実の製造プロセスでは、表面欠陥の発生要因が多岐に渡り、ポアソン分布で示すことはできない。このような場合、プロセスの操業条件をいくつかの領域に分割し、分割された領域内では、ポアソン分布のような確率分布関数を用いて近似を行い、その操業範囲における品質情報を分析する手法が考えられる。しかしながら、例えば操業範囲の上下限域近傍のようなデータ数が比較的少ない領域では、確率分布計算に必要なデータ量が確保できない為に、品質情報が分析できないという問題があった。更に、現実の製造プロセスでは複数の操業因子に基づいて品質が決定されるため、上記のような操業条件の分割は、複数の操業因子に対して行わねばならない。この場合、分割された領域1つ当たりのデータ数は、考慮すべき操業因子数の増加に対して指数的に減少する為、領域毎に行う確率分布計算の精度確保に必要なデータ数が得られないという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、複数の品質不合要因が存在し、かつ複数の操業因子に基づいて品質が決定されるプロセスの操業及び品質データの関連を解析できるようにすることを目的とする。特に、操業の範囲を分割して、各局所領域での品質情報を分析するに際して、データ数が比較的少ない操業領域においても、適切な分析ができるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の操業分析装置は、製造プロセスにおける操業および品質データを解析して、複数の操業因子と品質の関連性を分析する操業分析装置であって、プロセスの操業データ及び品質データを入力するデータ入力手段と、前記データ入力手段によって入力された操業データの全ての操業因子について、操業データを同一の範囲内に規格化するデータ正規化処理手段と、正規化されたプロセス操業データを基底ベクトルとする操業データ空間を複数の局所領域に分割する操業データ空間分割手段と、前記操業データ空間分割手段によって得られた各局所領域において、その局所領域に対する各データの重要度を決定する為の重み関数を導出する重み関数算出手段と、前記重み関数算出手段により導出した重み関数と、前記データ入力手段によって入力された操業および品質データとを用いて、各局所領域における品質データ値のヒストグラムを算出する度数分布算出手段と、前記度数分布算出手段によって得られたヒストグラムに基づいて各局所領域における累積度数を算出し、与えられた累積度数判定閾値との大小関係を評価する累積度数判定手段と、前記累積度数判定手段にて、累積度数が閾値以上と判定された局所領域に対して、前記度数分布算出手段により得られたヒストグラムに基づいて、各局所領域の確率分布を決定する確率分布計算手段と、前記重み関数算出手段から前記確率分布計算手段にて実行される一連の処理が、前記操業データ空間分割手段にて得られた全ての局所領域に対して行われたかを評価する反復回数判定手段と、解析結果を提示する為の解析結果表示手段を備えた点に特徴を有する。
【0009】
本発明の製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置の他の特徴とするところは、前記重み関数算出手段が、局所領域の重心に中心を持つ正規分布関数を用いて、局所領域に対する各データの重要度を決定するようにした点にある。
また、本発明の製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置の他の特徴とするところは、前記確率分布計算手段が、指数分布を表す確率密度関数を用いて、各局所領域の品質データ値の確率分布を近似処理するようにした点にある。
また、本発明の製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置の他の特徴とするところは、鉄鋼プロセスに適用され、前記品質データは、製品の表面及び内部欠陥の個数である点にある。
【0010】
本発明における操業分析方法は、製造プロセスにおける操業および品質データを解析して、複数の操業因子と品質の関連性を分析する操業分析方法であって、プロセスの操業データ及び品質データを入力するデータ入力工程と、前記データ入力工程によって入力された操業データの全ての操業因子について、操業データを同一の範囲内に規格化するデータ正規化処理工程と、正規化されたプロセス操業データを基底ベクトルとする操業データ空間を複数の局所領域に分割する操業データ空間分割工程と、前記操業データ空間分割工程によって得られた各局所領域において、その局所領域に対する各データの重要度を決定する為の重み関数を導出する重み関数算出工程と、前記重み関数算出工程により導出した重み関数と、前記データ入力工程によって入力された操業および品質データとを用いて、各局所領域における品質データ値のヒストグラムを算出する度数分布算出工程と、前記度数分布算出工程によって得られたヒストグラムに基づいて各局所領域における累積度数を算出し、与えられた累積度数判定閾値との大小関係を評価する累積度数判定工程と、前記累積度数判定工程にて、累積度数が閾値以上と判定された局所領域に対して、前記度数分布算出工程により得られたヒストグラムに基づいて、各局所領域の確率分布を決定する確率分布計算工程と、前記重み関数算出工程から前記確率分布計算工程にて実行される一連の処理が、前記操業データ空間分割工程にて得られた全ての局所領域に対して行われたかを評価する反復回数判定工程と、解析結果を提示する為の解析結果表示工程を実行する点に特徴を有する。
【0011】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、上記操業と品質の関連分析装置における各手段として、コンピュータを機能させるプログラムを記録した点に特徴を有する。
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の他の特徴とするところは、上記操業と品質の関連分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した点に特徴を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置、関連分析方法、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体について説明する。
図1は、本実施の形態の製造プロセスにおける操業と品質の関連分析装置の構成を示す図である。同図の101はデータ入力部であり、操業分析装置には、製造プロセスにおける操業データと当該操業に対応した品質データが入力される。上記操業データは、例えば鉄鋼プロセスにおける連続鋳造工程の湯面変動量や熱延工程の加熱炉温度等であり、数値として与えられる。例えば、p個の操業因子u1、u2、...、upがN個のケースについて与えられた場合、入力操業データはN行p列の行列となる。また、上記品質データとは、例えば鉄鋼プロセスにおける自動車用鋼板コイル1本当りの表面欠陥個数等であり、数値として与えられる。操業データに対応してNケースの品質データが与えられた場合、入力品質データはN次元のベクトルとなる。
【0013】
102は、データ正規化処理部であり、操業因子の取りうる値の範囲が、p個の操業因子全てについて、同一となるよう規格化を行う。具体的には、例えば全ての操業因子について、値が0〜1の範囲となるように次式で正規化を行う方法がある。
uij′=(uij−uiの最小値)/(uiの最大値−uiの最小値) (1)
ここで、i=1...p、j=1...Nであり、uijは操業因子uiのj番目のデータ値を意味する。uijは正規化前の操業因子、uij′は正規化された操業因子である。
【0014】
103は、操業データ空間分割部である。N行p列の行列である入力操業データとN次元ベクトルである品質データが与えられた場合、線形代数理論より、品質データはu1〜upを基底とするp次元の操業データ空間に分布しているN個の点と見なすことができる。操業データ空間分割部では、正規化された操業データ空間を局所領域に分割する手段を有している。具体的な分割方法としては、p個の操業因子それぞれに対する分割数を指定する方法がある。或いは、データの偏りに応じて局所領域毎のデータ数が概ね等しくなるよう、各局所領域の範囲を決定しても良い。
【0015】
104は重み関数算出部であり、操業データ空間分割部103で求めた局所領域において、N個のデータの重要度を決定する重み関数を求める。重み関数は、局所領域の重心に近いデータを重要度が高いとして評価するためのもので、重心部で最大値1をとり、かつ0〜1の範囲をとる任意の関数を用いることができる。具体的には、例えば、式(2)で表現される局所領域iの重心に中心を持つ正規分布関数μiは重み関数として用いることができる。
【数1】
ここで、cijは局所領域の中心点、σijは正規分布関数の標準偏差である。図2には、1次元の操業データ空間を▲1▼〜▲4▼の4つの局所領域に分割した場合の例を示す。図には局所領域▲3▼に対する正規分布関数型重み関数のみを示しているが、他の局所領域についても同様の重み関数が算出される。
【0016】
105は、度数分布計算部であり、重み関数算出部104にて導出した重み関数と、データ入力部101にて入力された操業および品質データとを用いて、各局所領域における品質データ値のヒストグラムを算出する。図3は、ヒストグラムを求める処理の考え方を模式的にあらわしたものである。入力された品質データの最小値と最大値を求め、これと別途解析装置に入力されたパラメータ「度数分布の分割数Nd」より、ヒストグラムのNd個のメッシュを決定する。次に、各データについて、品質データ値を参照して、ヒストグラムのどのメッシュに属するかを決定し、更に当該データの操業条件{u1,u2,...up}を、例えば式(2)のような重み関数に代入して度数値を算出する。ここで重み関数は、0〜1の値をとり、かつ局所領域の重心で最大値1となるように定義されているため、局所領域の重心に位置するデータは度数1と評価され、それ以外のデータは、重心からの距離に基づいて0〜1の度数値であると評価される。データの該当するヒストグラムメッシュに重み関数より計算された度数値を加算し、更に、この処理を全てのデータに対して行うことで、局所領域iにおけるヒストグラムが作成される。このようにヒストグラムを計算する際に、局所領域内に存在するデータのみを用いるのではなく、その近傍に存在するデータも取り込むことで、確率分布計算部107での確率分布計算に必要なデータ数を増加させる効果を得ている。
【0017】
106は、累積度数判定部であり、度数分布計算部105で得られたヒストグラムの度数をすべてのメッシュに対して加算することで累積度数を計算し、別途入力された累積度数判定閾値と比較することで、その局所領域に、確率分布計算に必要なデータ数が存在するか判定する。
【0018】
107は、確率分布計算部であり、106の累積度数判定部で、累積度数が閾値以上と判定された局所領域に対して、確率分布計算を行う。この際、度数分布計算部105で求められたヒストグラムの形態に応じた確率分布近似関数を用い、既知の手法である最尤法を用いたフィッティングを行うことで、データノイズや測定外乱の影響を低減することができる。例えば、図4に示すような品質データ値が最小のメッシュでの度数が最も大きく、品質データ値の増加に対して指数関数的に度数が減少するヒストグラムの場合は、式(3)で表される指数分布によるフィッティングが有効である。
【数2】
ここで、eは自然対数の底、Mは品質データ値、kは指数分布のパラメータであり、kはヒストグラムのデータを用い、最尤法にて決定される。この最尤法によるフィッティングを行う際に、ヒストグラムの累積度数が少ないと十分な精度を得ることができないが、本発明によれば、度数分布計算部105において、局所領域近傍のデータも取り込んだヒストグラムを作成しているため、データ数を増加させる効果を得ている。
【0019】
108は、反復回数判定部であり、104から107までの一連の処理が、操業データ空間分割部103で得られた全ての局所領域に対して実行されたかを判定する。
109は、解析結果表示部であり、複数の操業因子における操業範囲の組合せ毎に得られる確率分布に基づいて、操業と品質の関連を分析するための情報を表示する。
【0020】
以上に述べた本実施の形態による操業分析装置によれば、操業因子空間を局所領域に分割し、局所領域毎に重み関数を導出し、各局所領域における品質データ値のヒストグラムの作成にあたっては、この重み関数を用いて局所領域近傍のデータも取り込むため、比較的データ数の少ない操業領域、例えば操業範囲の上下限域においても、精度良く品質情報の解析を行うことができる。また、複数の操業因子と品質の関連を分析する場合においても、操業因子数を増やすに伴い、分割された領域1つ当たりのデータ数が指数的に減少する問題を軽減し、確率分布計算の精度劣化を低減することができる。
【0021】
【実施例】
以下では、鉄鋼プロセスにおける熱延工程でのコイル先端部のクロップカット長(以下、クロップカット長と呼称)を操業因子とし、表面欠陥が発生したメッキ鋼板のコイル本数をパーセントで表した指標(以下、疵コイル本数と呼称)を品質データとした実施例について説明する。
【0022】
図5は、熱延工程の操業データベースから収集されたクロップカット長と疵コイル本数のデータの関連を散布図で表示したものである。但し、クロップカット長は、操業範囲が0〜1の間となるよう規格化してある。散布図からも明らかなように、データに含まれているノイズ、測定されたデータの偏りなどの影響で、両者の関係性を見出すことは難しい。両者の相関係数は、−0.11と小さく、殆ど相関がないことを示している。
【0023】
次に、操業範囲を分割し、クロップカット長が0〜0.2(局所領域▲1▼)、0.2〜0.4(局所領域▲2▼)、0.4〜0.6(局所領域▲3▼)、0.6〜0.8(局所領域▲4▼)、0.8〜1.0(局所領域▲5▼)の5つの領域について重み関数を導出し、疵コイル本数の度数分布を求めることとした。
重み関数には、式(4)で表される1次元の正規分布関数を用いるものとした。
【数3】
ここで、各局所領域iの標準偏差バーσiは、各局所領域の範囲Δiに応じて設定する為、別途入力したパラメータσkを用いて、式(5)で求めるものとした。また、ciは局所領域の重心座標であり、c1=0.1、c2=0.3、c3=0.5、c4=0.7、c5=0.9である。
【数4】
【0024】
図6は、パラメータσkが0.5及び1.0の場合について、局所領域▲1▼〜▲5▼における重み関数を図示したものである。σkを大きくすることによって、局所領域の中心からより遠方のデータも高い度数で評価する方向になっている。
【0025】
表1は、重み関数と入力された疵コイル本数データを用いて求めたヒストグラムの累積度数を、各局所領域毎に評価したものである。表には、σkが0.5及び1.0の場合に加え、重み関数を用いず、局所領域内部の点のみをカウントした結果も併記してある。重み関数を用いない場合には、領域▲1▼及び領域▲5▼のデータ点数(=累積度数)が、それぞれ8及び3と少ない。経験的には、累積度数が10未満では、確率分布計算のフィッティングに際してデータ数が十分でなく、測定誤差や外乱の影響を受けやすくなる。一方、重み関数を用いて、局所領域近傍の外部データも考慮したヒストグラムとすることにより、累積度数が増加し、領域▲1▼及び領域▲5▼でも、精度評価の目安であるデータ点数10個が確保できるようになっている。
【0026】
【表1】
【0027】
各局所領域のヒストグラムを評価したところ、累積度数が10以上の領域では、図4の指数関数的な変化をしていた為、式(3)の指数分布関数を仮定してフィッティングを行い、パラメータkを算出した。
本実施例のように、ヒストグラムが指数分布で表される場合、ある累積確率Pcに相当する疵コイル本数Npcは、次式(6)で表される。
Npc={−ln(1−Pc)}k (6)
ここでは、各局所領域において、80%の確率で発生する疵コイル本数の最大値を一例として考える。これは、上式(6)において、Pc=0.8となる疵コイル本数に相当する。
【0028】
図7は、各局所領域毎にPc=0.8となる疵コイル本数を求め、操業条件であるクロップカット長に対してプロットしたものである。通常、累積度数が10未満の操業範囲は評価しないが、ここでは比較のため少ないデータ点数の領域も確率分布計算を行い、図にプロットしている。
図7のσk=1の場合の特性曲線より、クロップカット長を大きくした場合に、疵コイル本数が低減する傾向があることが見て取れる。重み関数を用いない場合には、操業の上下限域の計算精度が悪く、正確な傾向を得ることはできないが、本実施例の操業と品質の関連分析装置を用いることで、データ数が少ない領域でも明確な操業と品質の関連を見出すことが可能である。
この結果を利用して、クロップカット長の操業条件をカット量が増加するよう変更した結果、疵コイル本数の発生量が低減し、歩留まり向上、製品手入れの省力化、納期遅れの回避などの効果を得ることができた。
【0029】
なお、今回の実施例では、コンピュータ上のプログラムとして分析装置を実現したが、演算装置、メモリ等を組み合わせたハードウェアによって構成されるものであっても良い。
また、本発明の操業と品質の関連分析装置は、複数の機器から構成されるものであっても、一つの機器から構成されるものであっても良い。
【0030】
また、上述した実施の形態は、コンピュータのCPU或いはMPU、RAM、ROM等で構成されるものであり、RAMやROMに記録されたプログラムが動作することで実施される。したがって、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体は本発明の範疇に含まれる。
【0031】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、操業データ空間の分割を行い、各局所領域の品質データ値のヒストグラムを作成する際に、局所領域内に存在するデータのみを用いるのではなく、重み関数を用いて、その近傍に存在するデータも取り込むことにより、複数の操業因子の組合せと品質の関係を精度良く分析することができる。従って、その解析結果を利用して、高品質な製品を得るための適切な操業範囲を見出したり、あるプロセス操業範囲における製品の品質を予測したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本形態の操業と品質の関連分析装置の構成を示す図である。
【図2】1次元の操業因子空間を4つに分割した例における重み関数の様子を示す図である。
【図3】重み関数に基づいてヒストグラムを求める処理の考え方を模式的に示す図である。
【図4】品質データの度数ヒストグラムを示す図である。
【図5】熱延工程でのコイル先端クロップカット長と表面欠陥発生コイルの本数パーセントの関連を示す散布図である。
【図6】分割された操業データ空間の各局所領域における重み関数の例を示す図である。
【図7】本発明によって求めた熱延工程でのコイル先端クロップカット長と表面欠陥発生コイルの本数パーセントの関連を示す図である。
【符号の説明】
101:データ入力部
102:データ正規化処理部
103:操業データ空間分割部
104:重み関数算出部
105:度数分布計算部
106:累積度数判定部
107:確率分布計算部
108:反復回数判定部
109:解析結果表示部
Claims (7)
- 製造プロセスにおける操業および品質データを解析して、複数の操業因子と品質の関連性を分析する操業分析装置であって、
プロセスの操業データ及び品質データを入力するデータ入力手段と、
前記データ入力手段によって入力された操業データの全ての操業因子について、操業データを同一の範囲内に規格化するデータ正規化処理手段と、
正規化されたプロセス操業データを基底ベクトルとする操業データ空間を複数の局所領域に分割する操業データ空間分割手段と、
前記操業データ空間分割手段によって得られた各局所領域において、その局所領域に対する各データの重要度を決定する為の重み関数を導出する重み関数算出手段と、
前記重み関数算出手段により導出した重み関数と、前記データ入力手段によって入力された操業および品質データとを用いて、各局所領域における品質データ値のヒストグラムを算出する度数分布算出手段と、
前記度数分布算出手段によって得られたヒストグラムに基づいて各局所領域における累積度数を算出し、与えられた累積度数判定閾値との大小関係を判定する累積度数判定手段と、
前記累積度数判定手段にて、累積度数が閾値以上と判定された局所領域に対して、前記度数分布算出手段により得られたヒストグラムに基づいて、各局所領域の確率分布を決定する確率分布計算手段と、
前記重み関数算出手段から前記確率分布計算手段にて実行される一連の処理が、前記操業データ空間分割手段にて得られた全ての局所領域に対して行われたかを判定する反復回数判定手段と、
解析結果を提示する為の解析結果表示手段を備えたことを特徴とする操業と品質の関連分析装置。 - 前記重み関数算出手段が、局所領域の重心に中心を持つ正規分布関数を用いて、局所領域に対する各データの重要度を決定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の操業と品質の関連分析装置。
- 前記確率分布計算手段が、指数分布を表す確率密度関数を用いて、各局所領域の品質データ値の確率分布を近似処理するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の操業と品質の関連分析装置。
- 鉄鋼プロセスに適用され、前記品質データは、製品の表面及び内部欠陥の個数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の操業と品質の関連分析装置。
- 製造プロセスにおける操業および品質データを解析して、複数の操業因子と品質の関連性を分析する操業分析方法であって、
プロセスの操業データ及び品質データを入力するデータ入力工程と、
前記データ入力工程によって入力された操業データの全ての操業因子について、操業データを同一の範囲内に規格化するデータ正規化処理工程と、
正規化されたプロセス操業データを基底ベクトルとする操業データ空間を複数の局所領域に分割する操業データ空間分割工程と、
前記操業データ空間分割工程によって得られた各局所領域において、その局所領域に対する各データの重要度を決定する為の重み関数を導出する重み関数算出工程と、
前記重み関数算出工程により導出した重み関数と、前記データ入力工程によって入力された操業および品質データとを用いて、各局所領域における品質データ値のヒストグラムを算出する度数分布算出工程と、
前記度数分布算出工程によって得られたヒストグラムに基づいて各局所領域における累積度数を算出し、与えられた累積度数判定閾値との大小関係を判定する累積度数判定工程と、
前記累積度数判定工程にて、累積度数が閾値以上と判定された局所領域に対して、前記度数分布算出工程により得られたヒストグラムに基づいて、各局所領域の確率分布を決定する確率分布計算工程と、
前記重み関数算出工程から前記確率分布計算工程にて実行される一連の処理が、前記操業データ空間分割工程にて得られた全ての局所領域に対して行われたかを判定する反復回数判定工程と、
解析結果を提示する為の解析結果表示工程を備えたことを特徴とする操業と品質の関連分析方法。 - 請求項1〜4のいずれか1項記載の操業と品質の関連分析装置における各手段として、コンピュータを機能させるプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
- 請求項5記載の操業と品質の関連分析方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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