JP2004052927A - シールリング - Google Patents
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Abstract
【課題】長期使用に耐久することができる耐久性に優れたシールリングを提供する。
【解決手段】シールリング1は、一断面周りを一回りするスリット2が形成されている。このため、摩耗溝3,4,5,6が深くなっても、摩耗溝3,4,5,6内の密封流体のリーク経路(流路R1,R2,R3,R4)は常に確保でき、密封流体の一定のリークができるので、摩耗溝3,4,5,6内の密封流体のリークがなくなることによって摩耗の進行が加速してしまうことはなく、長期使用に耐久することができる。
【選択図】 図4
【解決手段】シールリング1は、一断面周りを一回りするスリット2が形成されている。このため、摩耗溝3,4,5,6が深くなっても、摩耗溝3,4,5,6内の密封流体のリーク経路(流路R1,R2,R3,R4)は常に確保でき、密封流体の一定のリークができるので、摩耗溝3,4,5,6内の密封流体のリークがなくなることによって摩耗の進行が加速してしまうことはなく、長期使用に耐久することができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、2部材間の環状隙間をシールするシールリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シールリングは、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、少なくともどちらかが相対的に回転するハウジングと軸等の2部材間の環状隙間をシールし、作動油の漏れを防止する。
【0003】
従来のシールリングとしては、樹脂材料による円環状のシールリングが使用される。図5にシールリング101の装着状態の半断面が示されている。
【0004】
シールリング101は、図5に示すようにピストン等の軸110に設けられた断面矩形の取付溝111に装着され、シリンダ等のハウジング112の軸孔113の内周面と軸110の外周面との間の環状隙間をシールしている。
【0005】
シールリング101は、断面矩形で、軸孔113の表面及び取付溝111の側壁面111aに接触する外周面101a及び側面101b、さらに反転装着時に側面101bの代わりに側壁面111aに接触する側面101cを3面のシール面として有する。
【0006】
そして、密封流体側から非密封流体側に向けて、図中矢印P方向に圧力がかかると、シールリング101は非密封流体側に押圧されるため、取付溝111の側壁面111a及び軸孔113の表面にそれぞれ押し付けられてシールを行う。
【0007】
このようなシールリング101では、例えば軸110がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、シールリング101と軸110との間の摺動部に噛み込んだ異物(鉄粉等のコンタミ)によって相対的な回転により軸110の取付溝111の側壁面111aを摩耗させてしまう。さらに、摺動部の温度が上昇すると、軟質材の物性が低下して摩耗しやすくなってしまう。
【0008】
この摩耗を低減するには摺動部からの異物の排出や、摺動部の温度上昇抑制が必要となるため、図6に示すように取付溝111の側壁面111aに押し付けられるシール面にスリット202を設けたシールリング201が提案されている。
【0009】
図6のシールリング201では、シール面のスリット202から密封流体を非密封流体側へ流路R5でリークさせることで、摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図6のシールリング201であっても、摩耗が完全になくなるわけではなく、経時的に取付溝111の側壁面111aが徐々に摩耗していく。
【0011】
そして、図7に示すように、摩耗により取付溝111の側壁面111aに形成される摩耗溝203がスリット202の深さ以上に深くなると、シールリング201のシール面のスリット202は摩耗溝203に塞がれてしまい、摩耗溝203内で密封流体のリークができなくなってしまう。このため、スリット202が摩耗溝203によって塞がれた後は摩耗溝203内の摩耗の進行が加速してしまい、長期使用に耐久することはできなかった。
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長期使用に耐久することができる耐久性に優れたシールリングを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のシールリングにあっては、
2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、
一断面周りを一回りする溝を形成したことを特徴とする。
【0014】
2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、前記シール面を含む全ての面の表面につながって形成された溝を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、2部材の少なくとも一方が軟質材であり、軟質材とシールリングとの摩耗によって摩耗溝が軟質材に形成されても、溝は摩耗溝以外の部分にまで通じているため摩耗溝で塞がれることがない。
【0016】
ここで、軟質材としては、2部材の少なくとも一方、又は2部材の両方であっても、溝は摩耗溝以外の部分にまで通じることができる。
【0017】
したがって、経時的に摩耗が進行しても、摩耗溝内で溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができ、長期使用しても、摩耗溝内のシールリングと軟質材との間の摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができる。
【0018】
一方、溝は、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されているものであるので、シールリングが反転装着されても溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができる。
【0019】
溝は、シールリングの表面で、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されるものであればよく、その形状、幅、深さ、本数等は適切なリーク量を得るように設定されるもので、それらは特に限定されない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
図1〜図4を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は実施の形態に係るシールリング1を示す図である。図2は図1に示すF部の部分拡大図である。図3は実施の形態に係るシールリング1の使用状態を示す半断面図である。図4は実施の形態に係るシールリング1の摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【0023】
シールリング1は、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、シリンダ等のハウジング12とピストン等の軸10の2部材間の環状隙間をシールし、作動油の漏れを防止するもので、図1(b)に示すように樹脂材料による円環状をしている。シールリング1は、ステップカットの合い口を有している。
【0024】
シールリング1は、図3に示すように軸10に設けられた断面矩形の取付溝11に装着され、ハウジング12の軸孔13の内周面と軸10の外周面との間の環状隙間をシールする。
【0025】
シールリング1は、断面矩形で、軸孔13の表面及び取付溝11の側壁面11aに接触する面をシール面として有する。即ち、シールリング1の外周面1a、側面1b及び反転装着時に側面1bの代わりに側壁面11aに接触する側面1cが3面のシール面となっている。また、シールリング1は、内周面1dを非シール面として有する。
【0026】
そして、本実施の形態のシールリング1は、一断面周りを一回りする溝としてのスリット2が形成されている。
【0027】
言い換えれば、スリット2は、図1(b)のF部を拡大して示す図2(a)及び図2(a)の矢視Dである図2(c)に示すように、3つのシール面である外周面1a及び両側面1b,1cを含む全ての面の表面につながって形成されたものである。
【0028】
即ち、本実施の形態でのスリット2は、シールリング1の外周面1a、両側面1b,1c及び内周面1dにつながって一回りしている。そのスリット2が形成された部分の断面を図2(b)に示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面である。図2(b)に示すようにスリット2の形成された断面は、スリット深さが一定でスリット2が一回りするので、他の部分よりもぐるりとひとまわり小さい断面を有するようになっている。
【0029】
なお、図2(a)に示すようにシールリング1の内周面1dのスリット2だけ溝底がR形状の丸溝となっているが、これはスリット2を機械加工で追加工する場合であるためにこのような形状となっている。よって、射出成形によってスリット2も同時に形成する場合等には、他の面と同様の角溝に形成できるものである。
【0030】
以上の構成のシールリング1は、図3に示すように、軸10の取付溝11に装着され、密封流体側の密封流体の矢印Pで示す圧力によって外周面1a及び側面1bが軸孔13及び側壁面11aに押し付けられてシールを行う。
【0031】
一方、シールリング1が反転して装着された場合には、外周面1a及び側面1cが軸孔13及び側壁面11aに押し付けられて同様にシールを行う。
【0032】
ここで、スリット2を設けることによって、密封流体側から非密封流体側への密封流体のリークが生じるため、軸孔13と外周面1aとの間及び側壁面11aと側面1bとの間には密封流体の膜が形成され、潤滑状態が良好となり、耐摩耗性が向上する。
【0033】
また、密封流体中に異物(コンタミ)が混入している場合に、異物がシールリング1と軸孔13又は側壁面11aとの間の摺動部に噛み込んだとしても、スリット2を通じて密封流体と伴に非密封流体側に排出される。
【0034】
さらに、シールリング1と軸孔13又は側壁面11aとの間の摺動部の温度が上昇しても、リークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができ、摺動部の温度は一定となり、相手軟質材の温度上昇による物性低下を防げる。
【0035】
次に、シールリング1を使用し、経時的に徐々に摩耗が生じて摩耗溝が形成された場合について、図4を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、例えば軸10がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により取付溝11の側壁面11aに形成される摩耗溝3がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の内周面1dから側面1bに通じる流路R1を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝3内の側面1bに対して行われている。
【0037】
図4(b)は、例えばハウジング12がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により軸孔13に形成される摩耗溝4がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の側面1cから外周面1aを経て側面1bに通じる流路R2を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝4内の外周面1aに対して行われている。
【0038】
図4(c)は、例えば軸10及びハウジング12がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により取付溝11の側壁面11a及び軸孔13に同時に形成される摩耗溝5,6がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の内周面1dから側面1bに通じる流路R3及び側面1cから外周面1aを経て側面1bに通じる流路R4を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝5,6内の側面1b及び外周面1aに対して行われている。
【0039】
以上、図4に示すように、摩耗溝が深くなっても、摩耗溝内の密封流体のリーク経路は常に確保でき、密封流体の一定のリークができるので、摩耗溝内の密封流体のリークがなくなることによって摩耗の進行が加速してしまうことはなく、長期使用に耐久することができる。
【0040】
なお、側面1b,1cの両方に同じスリット2が形成されているので、反転装着しても上記の機能に問題はなく、シールリング1の装着に注意する必要がなくなり、装着が容易に行える。
【0041】
また、溝としてのスリット2の形状、幅、深さ、本数等は、適切なリーク量を得るように設定される(リークスペックに応じる)もので、それらは特に限定されない。スリット2は、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されるものであればよく、その断面もシールリング1の輪に対しての直角断面に限られるものではなく、斜断面等の周りを一回りするものでもよい。
【0042】
溝としてのスリット2の断面形状としては、例えば、角溝、丸溝、V字形溝、5角形溝等が採用できる。また、そのスリット2の縁は、Rや面取りしてあることで、摺動に際し角が邪魔とならず悪影響を及ぼさないのでより好ましい。
【0043】
本発明を適用するシールリングは、ステップカットの合い口を有するものに限られず、エンドレスリングや、例えばストレートカット、バイアスカット、特殊ステップカット等のカット形状の合い口を有するものでも適用できる。
【0044】
本発明を適用するシールリングを構成する材料としては、熱可塑性のポリアミド樹脂等の耐熱性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を適用することができる。ここで、耐熱樹脂としては、例えば、ポリシアノアリールエーテル系樹脂(PEN),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂,芳香族系熱可塑性ポリイミド樹脂,ポリアミド4−6系樹脂,ポリフェニレンサルファイド系樹脂,ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等の耐熱性,耐燃性,耐薬品性に優れ、優れた機械的性質を示す樹脂が挙げられる。また、充填材は、材料の機械的強度の向上、耐摩耗性の向上、低摩擦特性の付与等を目的に配合されるものであり、特に限定するものではない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、経時的に摩耗が進行しても、摩耗溝内で溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができ、長期使用しても、摩耗溝内のシールリングと軟質材との間の摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るシールリングを示す図である。
【図2】実施の形態に係るシールリングの要部を拡大して示す図である。
【図3】実施の形態に係るシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図4】実施の形態に係るシールリングの摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【図5】従来技術のシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図6】従来技術のシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図7】従来技術のシールリングの摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【符号の説明】
1 シールリング
1a 外周面
1b,1c 側面
1d 内周面
2 スリット
3,4,5,6 摩耗溝
10 軸
11 取付溝
11a 側壁面
12 ハウジング
13 軸孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、2部材間の環状隙間をシールするシールリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シールリングは、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、少なくともどちらかが相対的に回転するハウジングと軸等の2部材間の環状隙間をシールし、作動油の漏れを防止する。
【0003】
従来のシールリングとしては、樹脂材料による円環状のシールリングが使用される。図5にシールリング101の装着状態の半断面が示されている。
【0004】
シールリング101は、図5に示すようにピストン等の軸110に設けられた断面矩形の取付溝111に装着され、シリンダ等のハウジング112の軸孔113の内周面と軸110の外周面との間の環状隙間をシールしている。
【0005】
シールリング101は、断面矩形で、軸孔113の表面及び取付溝111の側壁面111aに接触する外周面101a及び側面101b、さらに反転装着時に側面101bの代わりに側壁面111aに接触する側面101cを3面のシール面として有する。
【0006】
そして、密封流体側から非密封流体側に向けて、図中矢印P方向に圧力がかかると、シールリング101は非密封流体側に押圧されるため、取付溝111の側壁面111a及び軸孔113の表面にそれぞれ押し付けられてシールを行う。
【0007】
このようなシールリング101では、例えば軸110がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、シールリング101と軸110との間の摺動部に噛み込んだ異物(鉄粉等のコンタミ)によって相対的な回転により軸110の取付溝111の側壁面111aを摩耗させてしまう。さらに、摺動部の温度が上昇すると、軟質材の物性が低下して摩耗しやすくなってしまう。
【0008】
この摩耗を低減するには摺動部からの異物の排出や、摺動部の温度上昇抑制が必要となるため、図6に示すように取付溝111の側壁面111aに押し付けられるシール面にスリット202を設けたシールリング201が提案されている。
【0009】
図6のシールリング201では、シール面のスリット202から密封流体を非密封流体側へ流路R5でリークさせることで、摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行っている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図6のシールリング201であっても、摩耗が完全になくなるわけではなく、経時的に取付溝111の側壁面111aが徐々に摩耗していく。
【0011】
そして、図7に示すように、摩耗により取付溝111の側壁面111aに形成される摩耗溝203がスリット202の深さ以上に深くなると、シールリング201のシール面のスリット202は摩耗溝203に塞がれてしまい、摩耗溝203内で密封流体のリークができなくなってしまう。このため、スリット202が摩耗溝203によって塞がれた後は摩耗溝203内の摩耗の進行が加速してしまい、長期使用に耐久することはできなかった。
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、長期使用に耐久することができる耐久性に優れたシールリングを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のシールリングにあっては、
2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、
一断面周りを一回りする溝を形成したことを特徴とする。
【0014】
2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、前記シール面を含む全ての面の表面につながって形成された溝を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、2部材の少なくとも一方が軟質材であり、軟質材とシールリングとの摩耗によって摩耗溝が軟質材に形成されても、溝は摩耗溝以外の部分にまで通じているため摩耗溝で塞がれることがない。
【0016】
ここで、軟質材としては、2部材の少なくとも一方、又は2部材の両方であっても、溝は摩耗溝以外の部分にまで通じることができる。
【0017】
したがって、経時的に摩耗が進行しても、摩耗溝内で溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができ、長期使用しても、摩耗溝内のシールリングと軟質材との間の摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができる。
【0018】
一方、溝は、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されているものであるので、シールリングが反転装着されても溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができる。
【0019】
溝は、シールリングの表面で、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されるものであればよく、その形状、幅、深さ、本数等は適切なリーク量を得るように設定されるもので、それらは特に限定されない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
図1〜図4を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1は実施の形態に係るシールリング1を示す図である。図2は図1に示すF部の部分拡大図である。図3は実施の形態に係るシールリング1の使用状態を示す半断面図である。図4は実施の形態に係るシールリング1の摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【0023】
シールリング1は、例えば自動車の自動変速機等の油圧装置に用いられ、シリンダ等のハウジング12とピストン等の軸10の2部材間の環状隙間をシールし、作動油の漏れを防止するもので、図1(b)に示すように樹脂材料による円環状をしている。シールリング1は、ステップカットの合い口を有している。
【0024】
シールリング1は、図3に示すように軸10に設けられた断面矩形の取付溝11に装着され、ハウジング12の軸孔13の内周面と軸10の外周面との間の環状隙間をシールする。
【0025】
シールリング1は、断面矩形で、軸孔13の表面及び取付溝11の側壁面11aに接触する面をシール面として有する。即ち、シールリング1の外周面1a、側面1b及び反転装着時に側面1bの代わりに側壁面11aに接触する側面1cが3面のシール面となっている。また、シールリング1は、内周面1dを非シール面として有する。
【0026】
そして、本実施の形態のシールリング1は、一断面周りを一回りする溝としてのスリット2が形成されている。
【0027】
言い換えれば、スリット2は、図1(b)のF部を拡大して示す図2(a)及び図2(a)の矢視Dである図2(c)に示すように、3つのシール面である外周面1a及び両側面1b,1cを含む全ての面の表面につながって形成されたものである。
【0028】
即ち、本実施の形態でのスリット2は、シールリング1の外周面1a、両側面1b,1c及び内周面1dにつながって一回りしている。そのスリット2が形成された部分の断面を図2(b)に示す。図2(b)は、図2(a)のA−A断面である。図2(b)に示すようにスリット2の形成された断面は、スリット深さが一定でスリット2が一回りするので、他の部分よりもぐるりとひとまわり小さい断面を有するようになっている。
【0029】
なお、図2(a)に示すようにシールリング1の内周面1dのスリット2だけ溝底がR形状の丸溝となっているが、これはスリット2を機械加工で追加工する場合であるためにこのような形状となっている。よって、射出成形によってスリット2も同時に形成する場合等には、他の面と同様の角溝に形成できるものである。
【0030】
以上の構成のシールリング1は、図3に示すように、軸10の取付溝11に装着され、密封流体側の密封流体の矢印Pで示す圧力によって外周面1a及び側面1bが軸孔13及び側壁面11aに押し付けられてシールを行う。
【0031】
一方、シールリング1が反転して装着された場合には、外周面1a及び側面1cが軸孔13及び側壁面11aに押し付けられて同様にシールを行う。
【0032】
ここで、スリット2を設けることによって、密封流体側から非密封流体側への密封流体のリークが生じるため、軸孔13と外周面1aとの間及び側壁面11aと側面1bとの間には密封流体の膜が形成され、潤滑状態が良好となり、耐摩耗性が向上する。
【0033】
また、密封流体中に異物(コンタミ)が混入している場合に、異物がシールリング1と軸孔13又は側壁面11aとの間の摺動部に噛み込んだとしても、スリット2を通じて密封流体と伴に非密封流体側に排出される。
【0034】
さらに、シールリング1と軸孔13又は側壁面11aとの間の摺動部の温度が上昇しても、リークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができ、摺動部の温度は一定となり、相手軟質材の温度上昇による物性低下を防げる。
【0035】
次に、シールリング1を使用し、経時的に徐々に摩耗が生じて摩耗溝が形成された場合について、図4を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、例えば軸10がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により取付溝11の側壁面11aに形成される摩耗溝3がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の内周面1dから側面1bに通じる流路R1を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝3内の側面1bに対して行われている。
【0037】
図4(b)は、例えばハウジング12がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により軸孔13に形成される摩耗溝4がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の側面1cから外周面1aを経て側面1bに通じる流路R2を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝4内の外周面1aに対して行われている。
【0038】
図4(c)は、例えば軸10及びハウジング12がアルミニウム合金等の軟質材であるような場合に、摩耗により取付溝11の側壁面11a及び軸孔13に同時に形成される摩耗溝5,6がスリット2の深さ以上に深くなった状態を示している。この状態でも、スリット2はシールリング1の内周面1dから側面1bに通じる流路R3及び側面1cから外周面1aを経て側面1bに通じる流路R4を形成しているので、密封流体のリークは常に摩耗溝5,6内の側面1b及び外周面1aに対して行われている。
【0039】
以上、図4に示すように、摩耗溝が深くなっても、摩耗溝内の密封流体のリーク経路は常に確保でき、密封流体の一定のリークができるので、摩耗溝内の密封流体のリークがなくなることによって摩耗の進行が加速してしまうことはなく、長期使用に耐久することができる。
【0040】
なお、側面1b,1cの両方に同じスリット2が形成されているので、反転装着しても上記の機能に問題はなく、シールリング1の装着に注意する必要がなくなり、装着が容易に行える。
【0041】
また、溝としてのスリット2の形状、幅、深さ、本数等は、適切なリーク量を得るように設定される(リークスペックに応じる)もので、それらは特に限定されない。スリット2は、一断面周りを一回りする、或いはシール面を含む全ての面の表面につながって形成されるものであればよく、その断面もシールリング1の輪に対しての直角断面に限られるものではなく、斜断面等の周りを一回りするものでもよい。
【0042】
溝としてのスリット2の断面形状としては、例えば、角溝、丸溝、V字形溝、5角形溝等が採用できる。また、そのスリット2の縁は、Rや面取りしてあることで、摺動に際し角が邪魔とならず悪影響を及ぼさないのでより好ましい。
【0043】
本発明を適用するシールリングは、ステップカットの合い口を有するものに限られず、エンドレスリングや、例えばストレートカット、バイアスカット、特殊ステップカット等のカット形状の合い口を有するものでも適用できる。
【0044】
本発明を適用するシールリングを構成する材料としては、熱可塑性のポリアミド樹脂等の耐熱性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を適用することができる。ここで、耐熱樹脂としては、例えば、ポリシアノアリールエーテル系樹脂(PEN),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の芳香族ポリエーテルケトン樹脂,芳香族系熱可塑性ポリイミド樹脂,ポリアミド4−6系樹脂,ポリフェニレンサルファイド系樹脂,ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等の耐熱性,耐燃性,耐薬品性に優れ、優れた機械的性質を示す樹脂が挙げられる。また、充填材は、材料の機械的強度の向上、耐摩耗性の向上、低摩擦特性の付与等を目的に配合されるものであり、特に限定するものではない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、経時的に摩耗が進行しても、摩耗溝内で溝を通じて密封流体側から非密封流体側へ密封流体を常にリークすることができ、長期使用しても、摩耗溝内のシールリングと軟質材との間の摺動部から異物を排出しかつリークさせる密封流体に摺動部の熱を吸収させて冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るシールリングを示す図である。
【図2】実施の形態に係るシールリングの要部を拡大して示す図である。
【図3】実施の形態に係るシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図4】実施の形態に係るシールリングの摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【図5】従来技術のシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図6】従来技術のシールリングの使用状態を示す半断面図である。
【図7】従来技術のシールリングの摩耗溝形成後の使用状態を示す半断面図である。
【符号の説明】
1 シールリング
1a 外周面
1b,1c 側面
1d 内周面
2 スリット
3,4,5,6 摩耗溝
10 軸
11 取付溝
11a 側壁面
12 ハウジング
13 軸孔
Claims (2)
- 2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、
一断面周りを一回りする溝を形成したことを特徴とするシールリング。 - 2部材間の環状隙間をシールするために、2部材の内一方の部材に対向して2部材の内他方の部材に形成された環状の取付溝に装着され、前記一方の部材の表面及び前記取付溝の側壁面に接触するシール面を有するシールリングにおいて、前記シール面を含む全ての面の表面につながって形成された溝を設けたことを特徴とするシールリング。
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2002
- 2002-07-22 JP JP2002212270A patent/JP2004052927A/ja active Pending
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