JP2004052150A - 織機の往復運動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】織機の往復運動装置において駆動モータへの負荷を軽減させることにある。
【解決手段】織機の往復運動装置は、往復運動可能の被駆動体をこれ専用の駆動モータにより運動伝達機構を介して往復運動させ、被駆動体が往復運動の少なくとも一方の末端位置へ至る際に被駆動体に制動力を与える減速装置を運動伝達機構又は被駆動体に連結したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】織機の往復運動装置は、往復運動可能の被駆動体をこれ専用の駆動モータにより運動伝達機構を介して往復運動させ、被駆動体が往復運動の少なくとも一方の末端位置へ至る際に被駆動体に制動力を与える減速装置を運動伝達機構又は被駆動体に連結したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口装置や筬打ち装置等に用いることができる、織機の往復運動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
織機の往復運動装置の1つとして、複数の綜絖枠を有し、各綜絖枠を運動伝達機構を介して専用の駆動モータによって上下方向に往復運動させて経糸の開口の形成を繰り返し行う開口装置に用いられたものがある(特開平4−222248号公報)。
【0003】
このような往復運動装置では、綜絖枠の往復運動範囲の末端側で該綜絖枠の移動を迅速に減速させて移動方向を変更させるべく、大きな減速力を発生する大型の駆動モータを用いなければならず、したがって往復引導装置ひいては開口装置の消費電力が増大するという問題があった。
【0004】
他の往復運動装置に、綜絖枠を上下動させるための駆動源として、上記の開口装置のように駆動モータを用いる代わりに、空圧式のシリンダ装置を用いるものがある(実開平4−681号公報)。この往復運動装置は、シリンダの両端部に形成された空気供給口に交互に圧縮空気を供給することによって、ピストンに連結された綜絖枠を上下動させる。
【0005】
上記のシリンダ装置を用いた往復運動装置においては、ピストンの運動を往復運動の両端域で減速させるように、ピストンの一方の面とシリンダの一方の内端面に同極性の一対の磁石を対向させて設けると共に、ピストンの他方の面とシリンダの他方の内端面とに同極性の他の一対の磁石を対向させて設けている。
【0006】
しかし、上記のような往復運動装置では、ピストンの往復運動の両端域での運動はピストン及びシリンダに設けられた磁石により緩衝されるが、駆動源であるシリンダ装置への負荷は軽減されないという問題があった。
【0007】
織機の往復運動装置の他の1つとして、ばねのような弾性部材を綜絖枠又は筬に付随して設け、この弾性部材に運動エネルギーを蓄積することによって、駆動モータの付加を軽減させたものがある(特開平7−133546号公報、特開平8−100351号公報)。
【0008】
しかし、この装置では、往復運動の全範囲において弾性部材による弾性力が綜絖枠又は筬に作用するから、サージング現象の発生を避けることができず、したがって任意な回転数の対応することができない。
【0009】
【解決しようとする課題】
本発明の目的は、開口装置や筬打ち装置等に用いることができる、織機の往復運動装置において、駆動源としての駆動モータへの負荷を軽減させると共に、サージングのような共振現象の発生を防止することにある。
【0010】
【解決手段、作用、効果】
本発明に係る織機の往復運動装置は、往復運動可能の被駆動体を往復運動させる駆動力を発生する、前記被駆動体専用の駆動モータと、該駆動モータの駆動力を前記被駆動体に伝達する運動伝達機構と、前記運動伝達機構又は前記被駆動体に連結された減速装置であって、前記被駆動体が往復運動の少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を与える減速装置とを含む。
【0011】
被駆動体が少なくとも一方の末端位置へ至る際に、減速装置によって運動伝達機構又は被駆動体に制動力を与えるので、被駆動体を駆動させる駆動モータに必要な減速力が軽減され、駆動モータへの負荷が軽減される。したがって、小型の駆動モータを用いることができ、省電力化、省スペース化及び低コスト化を実現することができる。
【0012】
本発明において、「末端位置へ至る際に制動力を与える」とは、「末端位置近傍における往復運動時にのみ制動力を与える」ということである。すなわち、往復運動の両端の末端位置近傍を除いた往復運動範囲では制動力を与えず、例えば、上死点(又は、下死点)に向かう際に末端位置の近傍で少なくとも制動力を与え、上死点(又は、下死点)から離れる際にも末端位置の近傍でも制動力を与えてもよい」ということである。
【0013】
上記のように末端位置へ至る際に制動力を被駆動体に与え、往復運動範囲の中間領域においては制動力を与えないならば、駆動モータへの負荷が軽減するのみならず、サージングのような共振現象の発生が防止される。
【0014】
前記減速装置は、前記被駆動体の往復運動に連動するピストンと、該ピストンを往復運動可能に収容するシリンダとを有することができる。
【0015】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面にあって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記ピストンにより閉塞される位置に、少なくとも1つの吸排出穴を有してもよい。
【0016】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面に形成された少なくとも1つの吸排出穴と、該吸排出穴を開閉する開閉バルブであって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記吸排出穴を閉塞する開閉バルブとを有していてもよい。
【0017】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダ内の少なくとも一端部に配置されたばねを有していてもよい。
【0018】
前記駆動モータは前記被駆動体が往復運動の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を作用させるようにしてもよいし、前記ピストンは前記運動伝達機構に連結されていてもよい。また、前記被駆動体は綜絖枠又は筬としてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1を参照するに、開口装置10は、複数の綜絖12が互いにほぼ平行に上下方向に伸びるように織幅方向に間隔をおいて配置された綜絖枠14を駆動装置としての往復運動装置16に支持させ、綜絖枠14の左右の側部をガイド機構(図示せず。)に上下動可能に案内させている。
【0020】
綜絖枠14は、下部において往復運動装置16に連結されている。開口装置10は、複数の綜絖枠14を経糸の移動方向に所定の間隔をおいて組み付けていると共に、綜絖枠14毎に往復運動装置16を備えているが、図1においては、1組の綜絖枠14及び往復運動装置16のみを示している。
【0021】
往復運動装置16は、被駆動体としての綜絖枠専用の駆動モータ(記号「M」で示す。)18と、駆動モータ18に連結された運動変換機構20と、一端部において運動変換機構20に枢軸連結された連結棒22と、一端部において連結棒22の他端部に連結された揺動レバー24と、一端部において揺動レバー24の他端部に枢軸連結された連結桿26と、連結桿26の一端部及び揺動レバー24の他端部に枢軸連結された減速装置28とを備えている。
【0022】
往復運動装置16は、連結桿26の他端部において綜絖枠14の下部に枢軸連結されている。駆動モータ18は、図示の例では、主軸用のモータから独立した回転式のモータであり、また主軸と同期して回転駆動されて、綜絖枠14が往復運動の末端位置へ至る際に綜絖枠14に制動力を作用させるように制御される。
【0023】
運動変換機構20は、駆動モータ18の回転運動を往復直線運動に変換する機構であり、例えばカム、歯車、クランク等を用いて構成することができる。運動変換機構20の往復直線運動は、連結棒22に伝達されて、連結棒22を往復運動させる。連結棒22の他端部は、経糸の移動方向へ伸びる枢軸30によって揺動レバー24の一端部に枢動可能に連結されている。
【0024】
揺動レバー24の他端部は、経糸の移動方向へ伸びる枢軸32によって連結桿26の一端部に枢動可能に連結されている。揺動レバー24は、経糸の移動方向へ伸びる支持軸34に支持軸34の周りに揺動可能に支持されている。図示の例では、揺動レバー24は、V字状を有しており、またV字のほぼ角部において支持軸34に支持されている。
【0025】
枢軸30と支持軸34とを結ぶ腕部36はほぼ上下方向に伸びており、枢軸32と支持軸34とを結ぶ腕部38はほぼ左右方向に伸びている。連結桿26は、略上下方向へ伸びており、上端部において綜絖枠14に枢軸連結されている。連結桿26と綜絖枠14とを連結する枢軸も、経糸の移動方向に伸びている。
【0026】
揺動レバー24は、連結棒22の往復直線運動によって支持軸34の周りに角度的往復運動(揺動)される。揺動レバー24の角度的往復運動によって、腕部36の枢軸30側の箇所は支持軸34を中心とする弧を描くように近似的に左右方向に往復動され、腕部38の枢軸32側の箇所は支持軸34を中心とする弧を描くように近似的に上下方向に往復動される。
【0027】
これにより、枢軸32で枢軸連結された連結桿26が近似的に上下方向に往復運動されるから、綜絖枠14は駆動モータ18の回転運動により上下方向へ往復移動される。
【0028】
減速装置28は、図示の例では、シリンダ40とピストン42とを備える、受動的に作動するシリンダ装置によって構成されている。シリンダ40の上部及び下部にそれぞれ吸排出穴44及び46が形成されている。
【0029】
ピストン42は、ピストンロッド48を介して連結桿26の下端部に枢軸的に連結されていると共に、ピストンロッド48、連結桿26及び枢軸32を介して揺動レバー24の腕部38に連結されている。しかし、ピストンロッド48は、揺動レバー24及び連結桿26のいずれか一方にのみ枢軸連結してもよい。ピストン42にはエアシール50が配置されている。このため、ピストン42は、揺動レバー24の揺動運動によってほぼ上下方向に往復運動される。
【0030】
吸排出穴44及び46は、それぞれ、ピストン42が上死点及び下死点よりやや下方側及び上方側に移動されたとき、ピストン42により閉鎖される位置に形成されている。
【0031】
具体的には、シリンダ40に吸排出穴44を形成する位置は、上死点に向けてのピストン42の移動によってピストン42が上死点に達する前にピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞する位置である。
【0032】
同様に、吸排出穴46の形成位置は、下死点に向けてのピストン42の移動によってピストン42が下死点に達する前にピストン42が吸排出穴46を完全に閉塞する位置である。
【0033】
このため、ピストン42は、これが上死点に向けて移動するとき上死点の手前の位置で上側の吸排出穴44を閉塞し、その後上死点に達するまでシリンダ40内の空間のうちピストン42より上方のいわゆる上方空間の空気を圧縮する。ピストン42は、また、これが下死点に向けて移動するとき、下死点の手前の位置で下側の吸排出穴46を閉塞し、その後下死点に達するまでシリンダ40内の空間のうちいわゆる下方空間の空気を圧縮する。
【0034】
吸排出穴44、46の寸法(例えば、穴が円形であるときの直径寸法)は、ピストン42とシリンダ40の上方内端面との間に存在する空気の量又は上方空間の容積、ピストン42とシリンダ40の下方内端面との間に存在する空気の量又は下方空間の容積は、シリンダ40やピストン42の大きさ、綜絖枠14の往復運動速度等の条件によって決められる。
【0035】
往復運動装置16において、駆動モータ18は、綜絖枠14に上下運動をさせるが、綜絖枠14が上死点及び下死点に到達する前の時点に綜絖枠14に制動を作用させて、綜絖枠の移動を減速させる。
【0036】
減速装置28も、綜絖枠14が上死点及び下死点に到達する前の時点にシリンダ40内の空気を圧縮することにより綜絖枠14に制動力を作用させて、綜絖枠14を減速させる。このため、減速装置28は、駆動モータ18による綜絖枠14への減速作用を補助する減速補助装置として作用する。
【0037】
上記の結果、駆動モータ18に必要な減速力が軽減され、駆動モータ18への負荷が軽減される。したがって、小型の駆動モータを用いることができ、省電力化、省スペース化及び低コスト化を実現することができる。
【0038】
ピストン42が下死点から吸排出穴44を閉塞するまでの間及び上死点から吸排出穴46を閉塞するまでの間、それぞれ、シリンダ40内の空気が吸排出穴44及び46から排出される。そのような空気は圧縮されている。
【0039】
それゆえに、吸排出穴44,46にホースを連結して、吸排出穴44,46から排出される空気を、冷却用、緯入れ用、緯入れされた緯糸の保持用、風綿除去用等、織機の他の機器で使用する圧縮空気として用いることが好ましい。そのようにすれば、より省電力化となる。
【0040】
次に、図2を参照して、開口装置10における往復運動装置16による綜絖枠14の駆動について説明する。
【0041】
図2(A)を参照するに、綜絖枠14が上死点に位置するとき、吸排出穴44はピストン42によって閉塞されている。図2(A)は、綜絖枠14が上死点に停止している状態又は上死点での停止を維持している状態を示す。
【0042】
次に、綜絖枠14を下方へ運動させるために、駆動モータ18が図示しない制御装置からの駆動信号によって回転されることにより、揺動レバー24が運動変換機構20及び連結棒22を介して図1において反時計方向に変位されて、連結桿26が下方へ移動される。
【0043】
シリンダ40の上方空間内の空気は、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉鎖したときから、ピストン42が上死点に達するまでの間に、圧縮される。そのような圧縮空気の一部は、ピストン42が上死点付近を移動している間に、シリンダ40とピストン42との間のわずかな隙間からピストン42の下方へ流出する。したがって、そのような漏洩空気量はわずかではあるが、そのような空気の漏洩により、シリンダ40の上方空間の空気圧が減少し、その上方空間の空気はピストン42の上昇にともなって膨張される。
【0044】
上記のような膨張途中の空気は、上向きの反力R1をピストン42に作用させる。空気膨張率はピストン42の上昇によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R1が増大して、ピストン42の上昇が抑制される。ピストン42に作用する上向きの反力R1は、綜絖枠14の上昇速度を抑制する制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0045】
図2(B)を参照するに、ピストン42は、連結桿26の下方への移動によって下方すなわち矢印Y1の方向への移動を開始する。これにより、吸排出穴44が開放され、またシリンダ40の上方空間に空気が吸排出穴44から流入すると共に、シリンダ40の下方空間の空気が吸排出穴46から排出される。
【0046】
ピストン42が吸排出穴44と吸排出穴46との間を移動している間、ピストン42に対する空気抵抗は実質的に生じず、ピストン42は下降を抑制されない。したがって、綜絖枠14は、下降を抑制されることなく、駆動モータ18の駆動力によって下方へ移動される。
【0047】
図2(C)を参照するに、ピストン42の下方への移動によって、ピストン42は、吸排出穴46を閉塞する位置に達する。ピストン42がさらに下死点に向けて移動されると、シリンダ40の下方空間内の空気は、吸排出穴46がピストン42によって閉塞されているから、吸排出穴46から排出されることなく、ピストン42によって圧縮される。
【0048】
シリンダ40の下方空間内の圧縮空気は、ピストン42の下降を抑制する上向きの反力R2をピストン42に作用させる。空気圧縮率は下死点に向けてのピストン42の移動によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R2が増大して、ピストン42の下方への移動は減速される。ピストン42に作用する上向きの反力R2は、綜絖枠14の下降速度を減速させる制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0049】
図2(D)を参照するに、綜絖枠14が下死点に達すると、ピストン42も下死点に達する。この時点においても、吸排出穴46はピストン42によって閉塞されている。
【0050】
図2(E)を参照するに、次いで、揺動レバー24が図1において反時計方向から時計方向に回転され始めることにより、ピストン42は上方すなわち矢印Y2の方向への移動を開始する。このとき、吸排出穴46が閉塞されているから、外部からの空気は吸排出穴46からシリンダ40内に流入しない。
【0051】
シリンダ40の下方空間内の圧縮空気の一部も、ピストン42が下死点付近を移動している間に、わずかではあるがシリンダ40とピストン42との間のわずかな隙間からピストン42の上方へ流出する。したがって、シリンダ40の下方空間の空気は、ピストン42の上昇にともなって膨張される。
【0052】
上記のような膨張途中の空気は、下向きの反力R3をピストン42に作用させる。空気膨張率はピストン42の上昇によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R3が増大して、ピストン42の上昇が抑制される。ピストン42に作用する下向きの反力R3は、綜絖枠14の上昇速度を抑制する制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0053】
図2(F)を参照するに、ピストン42がさらに上方に移動すると、吸排出穴46が開放されて、外部の空気が吸排出穴46からシリンダ40の下方空間内に流入し、シリンダ40の上方空間の空気が吸排出穴44から外部に排出される。
【0054】
ピストン42が吸排出穴46と吸排出穴44との間を移動している間も、空気抵抗はピストン42に対して実質的に作用せず、ピストン42は上昇を抑制されない。したがって、綜絖枠14は、上昇を抑制されることなく、駆動モータ18の駆動力によって上方へ移動される。
【0055】
その後、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞すると、シリンダ40の上方空間内の空気がピストン42のさらなる上昇にともなって圧縮される。これにより、図示してはいないが、下向きの反力R4がピストン42に作用するから、その反力R4も綜絖枠14の上昇を抑制する制動力として綜絖枠14に作用する。
【0056】
綜絖枠14に作用する制動力は、制動力R1,R2,R3又はR4と、駆動モータ18による制動力との合成である。このため、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R1,R2,R3又はR4の分だけ小さくなる。
【0057】
このことから、駆動モータ18は、綜絖枠14の上下死点付近における移動速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。このため、往復運動装置16によれば、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0058】
図1及び図2に示す実施例においては、外部の空気が吸排出穴44及び46を経て連続的に吸排出されるから、減速装置28内で発生した熱がシリンダ40内に蓄積されない。したがって、減速装置28の温度上昇が抑制される。
【0059】
また、減速装置28から排出された空気を他の用途、例えば冷却や緯入れ等に用いることができ、熱エネルギーを有効に利することができる。
【0060】
減速装置28は、従来のシリンダ装置に吸排出穴54、56を形成するのみでよいので、構造が簡単であり、コストの増大が最小限になる。
【0061】
図3を参照するに、減速装置52は、綜絖枠14が上死点に位置するときにピストン42が上死点に位置し、また、綜絖枠14が下死点に位置するときにピストン42は下死点に位置するように、シリンダ40及びピストン42の大きさが予め決められる。
【0062】
減速装置52においては、吸排出穴44は上死点よりやや下方に位置するピストン42によって完全に開放される位置に形成されており、吸排出穴46は下死点よりやや上方に位置するピストン42によって完全に開放される位置に形成されている。また、減速装置52は、吸排出穴44及び46をそれぞれ開閉する開閉バルブ54及び56を備えている。
【0063】
減速装置52において、ピストン42は駆動モータ18の回転にともなって上下方向に往復移動され、ピストン42の往復移動と同期して開閉バルブ54,56が開閉される。
【0064】
先ず、図3(A)に示すように、ピストン42は、吸排出穴44及び46を閉塞しない上死点にあるとき、吸排出穴44及び46は、ピストン42によって閉塞されてはいないが、開閉バルブ54及び56によって閉塞されている。
【0065】
このため、シリンダ40の上方空間内の空気は膨張され、シリンダ40の下方空間内の空気が圧縮される。その結果、空気の膨張による上向きの反力R11と、空気の圧縮による上向きの反力R12とがピストンに作用する。それらの反力R11及びR12が、綜絖枠14の下降を抑制する制動力として綜絖枠14に作用する。
【0066】
次いで、ピストン42が下降を始めると、図3(B)に示すように、開閉バルブ54が吸排出穴44を開放することにより、シリンダ40の下方空間内の空気がピストン42の下降にともなって吸排出穴44から外部に排出される。
【0067】
開閉バルブ54が吸排出穴44を開放するまでの間に、ピストン42より上方の空間内の空気が膨張されることに起因する上向きの反力R11がピストンに作用し、その反力R11は綜絖枠14の下降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0068】
次いで、図3(C)に示すように、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞する位置にさらに下降されると、開閉バルブ54が閉じられて、吸排出穴44が閉塞される。
【0069】
これにより、ピストン42のさらなる下降により、シリンダ40の上方空間内の空気が膨張されることに起因する反力R11に加えて、ピストン42より下方の空間内の空気がピストン42により圧縮されることに起因する反力R13がピストン42に作用し、それらの反力R11,R13は綜絖枠14の下降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0070】
ピストン42は、図3(D)に示すように、吸排出穴44及び46を閉塞する下死点まで下降された後、上昇を開始する。図3(C)に示す反力R11及びR13は、ピストン42が下死点に下降されるまで、発生する。
【0071】
ピストン42の上昇開始により、シリンダ40の上方空間内の空気が圧縮されることに起因する下向きの反力R14がピストンに作用すると共に、シリンダ40の下方空間内の空気がピストン42により膨張されることに起因する下向きの反力R15がピストン42に作用し、それらの反力R14及びR15は綜絖枠14の上降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0072】
次いで、図3(E)に示すように、ピストン42が吸排出穴46を開放する位置に移動されると、開閉バルブ56が作動されて吸排出穴46を開放する。これにより、外部の空気が吸排出穴46からシリンダ40の下方空間内に流入する。
【0073】
しかし、シリンダ40の上方空間内の空気はその後のピストン42の上昇にともなってさらに圧縮される。このときの空気のさらなる圧縮により、下向きの反力R14はピストン42に作用し続け、したがって反力R14は綜絖枠14の上降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用し続ける。
【0074】
次いで、図3(F)に示すように、ピストン42が吸排出穴44を閉塞する上死点位置に移動されると、開閉バルブ56が吸排出穴46を閉塞する。
【0075】
その後、ピストン42は、図3(A)に示す上死点から下降を再開される。
【0076】
開閉弁54及び56がそれぞれ対応する吸排出穴44及び46を開放している間においては、ピストン42の下降及び上昇は実質的に抑制されない。
【0077】
ピストン42が図3(F)に示す位置から上死点を経て開閉バルブ54が吸排出穴44を開放する図3(B)に示す位置に下降するまでの期間を図4において「圧縮、膨張状態」として示す。
【0078】
同様に、ピストン42が図3(C)に示す位置から下死点を経て開閉バルブ56が吸排出穴46を開放する図3(E)に示す位置に移動するまでの期間を図4において「膨張、圧縮状態」として示す。
【0079】
これに対し、ピストン42が図3(B)に示す位置と図3(C)に示す位置とに移動するまでの期間と、ピストン42が図3(E)に示す位置と図3(F)に示す位置とに移動するまでの期間とを図4において「実質的に無圧状態」として示す。
【0080】
減速装置52によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R11,R12,R13R14又はR15の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、綜絖枠の上下死点付近における速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0081】
減速装置52においては、上下方向におけるピストン42の位置に対する開閉バルブ54及び56の開閉のタイミングを任意に設定してもよい。そのようにすれば、図2に示す減速装置28と比較して、外部から内空気の吸排出を能動的に行うことができる利点を有する。したがって、綜絖枠14を効率よく上下動させることができる。
【0082】
図5を参照するに、減速装置60は、吸排出穴44及び46や開閉弁54及び56の代わりに、圧縮コイルばね62及び64をそれぞれシリンダ40の上方空間及び下方空間に配置している。この例においては、シリンダ40とピストン42との間は、空気の流通を許す隙間を有している。
【0083】
図示の例では、コイルばね62及び64は、それぞれ、シリンダ40の上方内端面及び下方内端面に取り付けられている。しかし、コイルばね62及び64をそれぞれピストン42の上面及び下面に取り付けてもよい。
【0084】
ピストン42の上死点はピストン42が上側の圧縮コイルばね62をシリンダ40の上方内端面と共同して圧縮する位置とされており、ピストン42の下死点はピストン42が下側の圧縮コイルばね64をシリンダ40の下方内端面と共同して圧縮する位置とされている。
【0085】
減速装置60も、綜絖枠14が上死点に位置するときにピストン42が上死点に位置し、また、綜絖枠14が下死点に位置するときにピストン42は下死点に位置するように、シリンダ40及びピストン42の大きさが予め決められる。さらに、ピストン42は駆動モータ18の回転にともなって上下方向に往復移動される。
【0086】
図5(A)を参照するに、上下コイルばね62及び64を圧縮しない状態で下降又は上昇されている間は、ピストン42にはコイルばね62及び64による反発力は作用しない。したがって、この間は、減速装置60による制動力が綜絖枠14には作用しない。
【0087】
図5(B)を参照するに、ピストン42が下方のコイルばね64を圧縮する状態に下降されると、コイルばね64の反発力R21が上向きに作用する。この反発力R21は、下死点に向けて移動する綜絖枠14に制動力となって作用する。
【0088】
同様に、図5(C)を参照するに、ピストン42が上方のコイルばね62を圧縮する状態に上降されると、コイルばね62の反発力R22が下向きに作用する。この反発力R22は、上死点に向けて移動する綜絖枠14に制動力となって作用する。
【0089】
コイルばね62及び64による反発力R22及びR21は、シリンダ40に対するピストン42の位置が上死点及び下死点に近いほど大きい。
【0090】
減速装置60によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R21又はR22の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、綜絖枠の上下死点に向かう速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0091】
図6を参照するに、この実施例においては、ピストン42の往復運動の方向が左右方向になるように減速装置28を配置し、T字又はY字状の揺動レバー24を用い、ピストンロッド64を揺動レバー24の第3の腕部62の枢軸66によって連結させている点を除いて、図1に示す実施例と同様に作用し、同様の効果を生じる。
【0092】
図7を参照するに、この実施例は、複数の往復運動装置を用いる場合において、それぞれが往復運動装置に個々に対応された複数の駆動モータ18を共通のモータ制御装置68で制御する。
【0093】
モータ制御装置68は、図示しない同期制御装置によって織機の主軸モータ(図示せず。)と同期して回転されて各綜絖枠14に所定の上下運動特性を与えるために各駆動モータ18を制御する。前記「所定の上下運動特性」とは、末端位置での停止や末端位置での停止状態の維持(ドウェル)、末端位置での低速運動のことをいう。
【0094】
各エンコーダ(記号「EN」で示す。)70は、対応する駆動モータ18に接続されて、その駆動モータ18の回転角度を検出する。エンコーダ70で検出された回転角度は、開閉バルブの開閉制御用の制御装置72に送られる。制御装置72は、入力した回転角度に基づいて対応する開閉バルブ54a,56a,54b,56b,・・・,54n,56nの開閉を制御する。
【0095】
上記の実施例は、いずれも、減速装置による制動力を、運動伝達機構を介して綜絖枠に作用させているが、図8に示すように減速装置による制動力を被駆動体としての綜絖枠18に直接作用させてもよい。
【0096】
図8を参照するに、筬打ち装置80はこれに適用された往復運動装置82を用いている。減速装置84は、シリンダ40のほぼ中央に吸入穴86と排出穴88とを形成し、ピストンロッド48を被駆動体としての筬90の下端部から伸びる連結棒92に枢軸連結している。
【0097】
筬打ち装置80は、複数の筬羽を備えた筬90をこれの下端部において揺動アーム94の上端部に連結し、揺動アーム94の下端部を揺動軸96に取り付けている。揺動軸96は、駆動モータ18とこれの回転運動を直線往復運動に変換する運動変換機構98とにより揺動軸96の軸線を中心に揺動されて、筬90に揺動運動をさせる。
【0098】
減速装置84において、ピストン42は、筬90が織前に最も近い先進位置にあるとき左端位置となり、筬90が織前から最も遠い後退位置にあるとき右端位置となるように往復移動される。
【0099】
減速装置84において、ピストン42が吸入穴86及び排出穴88を閉鎖した状態で移動している間は、シリンダ40の内部空間のうち、ピストン42より左方のいわゆる左方空間内の空気及びピストン42より右方のいわゆる右方空間内の空気のいずれか一方を圧縮し、他方を膨張させる。
【0100】
しかし、ピストン42が吸入穴86及び排出穴88を開放した状態で移動している間は、シリンダ40の左方空間及び右方空間のいずれか一方の空気を圧縮し、他方の空気の排出を許す。
【0101】
シリンダ40の右方空間及び左方空間の空気が圧縮又は膨張する際、右向き又は左向きの反力が生じる。それらの反力は右端位置又は左端位置付近における筬90の移動速度を減じる制動力として、筬90に作用する。
【0102】
したがって、減速装置84によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、筬90に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも減速装置84による制動力の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、筬90の右端位置又は左端位置に向かう速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0103】
本発明は、綜絖枠及び筬以外の被駆動装置、例えば緯糸に制動力を作用させる制動片の往復運動装置にも適用することができる。
【0104】
上記実施例は、いずれも、シリンダ装置を減速装置として用いているが、シリンダ装置以外の装置を減速装置として用いてもよい。また、減速装置を、駆動モータ18による制動力の補助の制動力を発生する減速補助装置として用いているが、本発明は駆動モータ18により被駆動体に制動力を作用させない場合にも適用することができる。
【0105】
図1及び図6に示す綜絖枠に対して減速装置を設ける場合、図9に示すように、綜絖枠14及び駆動モータ18にそれぞれ連結される腕部36及び38に対する減速装置28に連結される腕部62の角度を隣り合う綜絖枠の揺動レバー24の間で異なる値とすることにより、隣り合う綜絖枠の減速装置の位置を支持軸34の周りに適宜な角度ずらせてもよい。
【0106】
そのようにすれば、綜絖枠ひいては減速装置の配置ピッチを小さくして、複数の往復運動装置を小ピッチに配置することができる。
【0107】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る往復運動装置の一実施例を開口装置に用いた例を示す図である。
【図2】図1に示す往復運動装置で用いる減速装置の一実施例の動作を示す図である。
【図3】減速装置の他の実施例の動作を示す図である。
【図4】図3に示す動作における開閉バルブの開閉タイミングとピストンの振幅との関係を示す図である。
【図5】減速装置のさらに他の実施例の動作を示す図である。
【図6】本発明に係る往復運動装置の他の実施例を示す図である。
【図7】図3に示す実施例における開閉バルブの制御回路の一実施例を示す図である。
【図8】本発明に係る往復運動装置のさらに他の実施例を筬打ち装置に用いた例を示す図である。
【図9】揺動レバーの枢軸線の周りにおける隣り合う減速装置の配置関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 開口装置
12 綜絖
14 綜絖枠
16 往復運動装置
18 駆動モータ
20,98 運動変換機構
22,92 連結棒
24 揺動レバー
26 連結桿
28,52,60,84 減速装置
40 シリンダ
42 ピストン
44,46 吸排出穴
54,56 開閉バルブ
62,64 圧縮コイルばね
90 筬
94 揺動アーム
96 揺動軸
【発明の属する技術分野】
本発明は、開口装置や筬打ち装置等に用いることができる、織機の往復運動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
織機の往復運動装置の1つとして、複数の綜絖枠を有し、各綜絖枠を運動伝達機構を介して専用の駆動モータによって上下方向に往復運動させて経糸の開口の形成を繰り返し行う開口装置に用いられたものがある(特開平4−222248号公報)。
【0003】
このような往復運動装置では、綜絖枠の往復運動範囲の末端側で該綜絖枠の移動を迅速に減速させて移動方向を変更させるべく、大きな減速力を発生する大型の駆動モータを用いなければならず、したがって往復引導装置ひいては開口装置の消費電力が増大するという問題があった。
【0004】
他の往復運動装置に、綜絖枠を上下動させるための駆動源として、上記の開口装置のように駆動モータを用いる代わりに、空圧式のシリンダ装置を用いるものがある(実開平4−681号公報)。この往復運動装置は、シリンダの両端部に形成された空気供給口に交互に圧縮空気を供給することによって、ピストンに連結された綜絖枠を上下動させる。
【0005】
上記のシリンダ装置を用いた往復運動装置においては、ピストンの運動を往復運動の両端域で減速させるように、ピストンの一方の面とシリンダの一方の内端面に同極性の一対の磁石を対向させて設けると共に、ピストンの他方の面とシリンダの他方の内端面とに同極性の他の一対の磁石を対向させて設けている。
【0006】
しかし、上記のような往復運動装置では、ピストンの往復運動の両端域での運動はピストン及びシリンダに設けられた磁石により緩衝されるが、駆動源であるシリンダ装置への負荷は軽減されないという問題があった。
【0007】
織機の往復運動装置の他の1つとして、ばねのような弾性部材を綜絖枠又は筬に付随して設け、この弾性部材に運動エネルギーを蓄積することによって、駆動モータの付加を軽減させたものがある(特開平7−133546号公報、特開平8−100351号公報)。
【0008】
しかし、この装置では、往復運動の全範囲において弾性部材による弾性力が綜絖枠又は筬に作用するから、サージング現象の発生を避けることができず、したがって任意な回転数の対応することができない。
【0009】
【解決しようとする課題】
本発明の目的は、開口装置や筬打ち装置等に用いることができる、織機の往復運動装置において、駆動源としての駆動モータへの負荷を軽減させると共に、サージングのような共振現象の発生を防止することにある。
【0010】
【解決手段、作用、効果】
本発明に係る織機の往復運動装置は、往復運動可能の被駆動体を往復運動させる駆動力を発生する、前記被駆動体専用の駆動モータと、該駆動モータの駆動力を前記被駆動体に伝達する運動伝達機構と、前記運動伝達機構又は前記被駆動体に連結された減速装置であって、前記被駆動体が往復運動の少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を与える減速装置とを含む。
【0011】
被駆動体が少なくとも一方の末端位置へ至る際に、減速装置によって運動伝達機構又は被駆動体に制動力を与えるので、被駆動体を駆動させる駆動モータに必要な減速力が軽減され、駆動モータへの負荷が軽減される。したがって、小型の駆動モータを用いることができ、省電力化、省スペース化及び低コスト化を実現することができる。
【0012】
本発明において、「末端位置へ至る際に制動力を与える」とは、「末端位置近傍における往復運動時にのみ制動力を与える」ということである。すなわち、往復運動の両端の末端位置近傍を除いた往復運動範囲では制動力を与えず、例えば、上死点(又は、下死点)に向かう際に末端位置の近傍で少なくとも制動力を与え、上死点(又は、下死点)から離れる際にも末端位置の近傍でも制動力を与えてもよい」ということである。
【0013】
上記のように末端位置へ至る際に制動力を被駆動体に与え、往復運動範囲の中間領域においては制動力を与えないならば、駆動モータへの負荷が軽減するのみならず、サージングのような共振現象の発生が防止される。
【0014】
前記減速装置は、前記被駆動体の往復運動に連動するピストンと、該ピストンを往復運動可能に収容するシリンダとを有することができる。
【0015】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面にあって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記ピストンにより閉塞される位置に、少なくとも1つの吸排出穴を有してもよい。
【0016】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面に形成された少なくとも1つの吸排出穴と、該吸排出穴を開閉する開閉バルブであって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記吸排出穴を閉塞する開閉バルブとを有していてもよい。
【0017】
前記減速装置は、さらに、前記シリンダ内の少なくとも一端部に配置されたばねを有していてもよい。
【0018】
前記駆動モータは前記被駆動体が往復運動の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を作用させるようにしてもよいし、前記ピストンは前記運動伝達機構に連結されていてもよい。また、前記被駆動体は綜絖枠又は筬としてもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1を参照するに、開口装置10は、複数の綜絖12が互いにほぼ平行に上下方向に伸びるように織幅方向に間隔をおいて配置された綜絖枠14を駆動装置としての往復運動装置16に支持させ、綜絖枠14の左右の側部をガイド機構(図示せず。)に上下動可能に案内させている。
【0020】
綜絖枠14は、下部において往復運動装置16に連結されている。開口装置10は、複数の綜絖枠14を経糸の移動方向に所定の間隔をおいて組み付けていると共に、綜絖枠14毎に往復運動装置16を備えているが、図1においては、1組の綜絖枠14及び往復運動装置16のみを示している。
【0021】
往復運動装置16は、被駆動体としての綜絖枠専用の駆動モータ(記号「M」で示す。)18と、駆動モータ18に連結された運動変換機構20と、一端部において運動変換機構20に枢軸連結された連結棒22と、一端部において連結棒22の他端部に連結された揺動レバー24と、一端部において揺動レバー24の他端部に枢軸連結された連結桿26と、連結桿26の一端部及び揺動レバー24の他端部に枢軸連結された減速装置28とを備えている。
【0022】
往復運動装置16は、連結桿26の他端部において綜絖枠14の下部に枢軸連結されている。駆動モータ18は、図示の例では、主軸用のモータから独立した回転式のモータであり、また主軸と同期して回転駆動されて、綜絖枠14が往復運動の末端位置へ至る際に綜絖枠14に制動力を作用させるように制御される。
【0023】
運動変換機構20は、駆動モータ18の回転運動を往復直線運動に変換する機構であり、例えばカム、歯車、クランク等を用いて構成することができる。運動変換機構20の往復直線運動は、連結棒22に伝達されて、連結棒22を往復運動させる。連結棒22の他端部は、経糸の移動方向へ伸びる枢軸30によって揺動レバー24の一端部に枢動可能に連結されている。
【0024】
揺動レバー24の他端部は、経糸の移動方向へ伸びる枢軸32によって連結桿26の一端部に枢動可能に連結されている。揺動レバー24は、経糸の移動方向へ伸びる支持軸34に支持軸34の周りに揺動可能に支持されている。図示の例では、揺動レバー24は、V字状を有しており、またV字のほぼ角部において支持軸34に支持されている。
【0025】
枢軸30と支持軸34とを結ぶ腕部36はほぼ上下方向に伸びており、枢軸32と支持軸34とを結ぶ腕部38はほぼ左右方向に伸びている。連結桿26は、略上下方向へ伸びており、上端部において綜絖枠14に枢軸連結されている。連結桿26と綜絖枠14とを連結する枢軸も、経糸の移動方向に伸びている。
【0026】
揺動レバー24は、連結棒22の往復直線運動によって支持軸34の周りに角度的往復運動(揺動)される。揺動レバー24の角度的往復運動によって、腕部36の枢軸30側の箇所は支持軸34を中心とする弧を描くように近似的に左右方向に往復動され、腕部38の枢軸32側の箇所は支持軸34を中心とする弧を描くように近似的に上下方向に往復動される。
【0027】
これにより、枢軸32で枢軸連結された連結桿26が近似的に上下方向に往復運動されるから、綜絖枠14は駆動モータ18の回転運動により上下方向へ往復移動される。
【0028】
減速装置28は、図示の例では、シリンダ40とピストン42とを備える、受動的に作動するシリンダ装置によって構成されている。シリンダ40の上部及び下部にそれぞれ吸排出穴44及び46が形成されている。
【0029】
ピストン42は、ピストンロッド48を介して連結桿26の下端部に枢軸的に連結されていると共に、ピストンロッド48、連結桿26及び枢軸32を介して揺動レバー24の腕部38に連結されている。しかし、ピストンロッド48は、揺動レバー24及び連結桿26のいずれか一方にのみ枢軸連結してもよい。ピストン42にはエアシール50が配置されている。このため、ピストン42は、揺動レバー24の揺動運動によってほぼ上下方向に往復運動される。
【0030】
吸排出穴44及び46は、それぞれ、ピストン42が上死点及び下死点よりやや下方側及び上方側に移動されたとき、ピストン42により閉鎖される位置に形成されている。
【0031】
具体的には、シリンダ40に吸排出穴44を形成する位置は、上死点に向けてのピストン42の移動によってピストン42が上死点に達する前にピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞する位置である。
【0032】
同様に、吸排出穴46の形成位置は、下死点に向けてのピストン42の移動によってピストン42が下死点に達する前にピストン42が吸排出穴46を完全に閉塞する位置である。
【0033】
このため、ピストン42は、これが上死点に向けて移動するとき上死点の手前の位置で上側の吸排出穴44を閉塞し、その後上死点に達するまでシリンダ40内の空間のうちピストン42より上方のいわゆる上方空間の空気を圧縮する。ピストン42は、また、これが下死点に向けて移動するとき、下死点の手前の位置で下側の吸排出穴46を閉塞し、その後下死点に達するまでシリンダ40内の空間のうちいわゆる下方空間の空気を圧縮する。
【0034】
吸排出穴44、46の寸法(例えば、穴が円形であるときの直径寸法)は、ピストン42とシリンダ40の上方内端面との間に存在する空気の量又は上方空間の容積、ピストン42とシリンダ40の下方内端面との間に存在する空気の量又は下方空間の容積は、シリンダ40やピストン42の大きさ、綜絖枠14の往復運動速度等の条件によって決められる。
【0035】
往復運動装置16において、駆動モータ18は、綜絖枠14に上下運動をさせるが、綜絖枠14が上死点及び下死点に到達する前の時点に綜絖枠14に制動を作用させて、綜絖枠の移動を減速させる。
【0036】
減速装置28も、綜絖枠14が上死点及び下死点に到達する前の時点にシリンダ40内の空気を圧縮することにより綜絖枠14に制動力を作用させて、綜絖枠14を減速させる。このため、減速装置28は、駆動モータ18による綜絖枠14への減速作用を補助する減速補助装置として作用する。
【0037】
上記の結果、駆動モータ18に必要な減速力が軽減され、駆動モータ18への負荷が軽減される。したがって、小型の駆動モータを用いることができ、省電力化、省スペース化及び低コスト化を実現することができる。
【0038】
ピストン42が下死点から吸排出穴44を閉塞するまでの間及び上死点から吸排出穴46を閉塞するまでの間、それぞれ、シリンダ40内の空気が吸排出穴44及び46から排出される。そのような空気は圧縮されている。
【0039】
それゆえに、吸排出穴44,46にホースを連結して、吸排出穴44,46から排出される空気を、冷却用、緯入れ用、緯入れされた緯糸の保持用、風綿除去用等、織機の他の機器で使用する圧縮空気として用いることが好ましい。そのようにすれば、より省電力化となる。
【0040】
次に、図2を参照して、開口装置10における往復運動装置16による綜絖枠14の駆動について説明する。
【0041】
図2(A)を参照するに、綜絖枠14が上死点に位置するとき、吸排出穴44はピストン42によって閉塞されている。図2(A)は、綜絖枠14が上死点に停止している状態又は上死点での停止を維持している状態を示す。
【0042】
次に、綜絖枠14を下方へ運動させるために、駆動モータ18が図示しない制御装置からの駆動信号によって回転されることにより、揺動レバー24が運動変換機構20及び連結棒22を介して図1において反時計方向に変位されて、連結桿26が下方へ移動される。
【0043】
シリンダ40の上方空間内の空気は、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉鎖したときから、ピストン42が上死点に達するまでの間に、圧縮される。そのような圧縮空気の一部は、ピストン42が上死点付近を移動している間に、シリンダ40とピストン42との間のわずかな隙間からピストン42の下方へ流出する。したがって、そのような漏洩空気量はわずかではあるが、そのような空気の漏洩により、シリンダ40の上方空間の空気圧が減少し、その上方空間の空気はピストン42の上昇にともなって膨張される。
【0044】
上記のような膨張途中の空気は、上向きの反力R1をピストン42に作用させる。空気膨張率はピストン42の上昇によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R1が増大して、ピストン42の上昇が抑制される。ピストン42に作用する上向きの反力R1は、綜絖枠14の上昇速度を抑制する制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0045】
図2(B)を参照するに、ピストン42は、連結桿26の下方への移動によって下方すなわち矢印Y1の方向への移動を開始する。これにより、吸排出穴44が開放され、またシリンダ40の上方空間に空気が吸排出穴44から流入すると共に、シリンダ40の下方空間の空気が吸排出穴46から排出される。
【0046】
ピストン42が吸排出穴44と吸排出穴46との間を移動している間、ピストン42に対する空気抵抗は実質的に生じず、ピストン42は下降を抑制されない。したがって、綜絖枠14は、下降を抑制されることなく、駆動モータ18の駆動力によって下方へ移動される。
【0047】
図2(C)を参照するに、ピストン42の下方への移動によって、ピストン42は、吸排出穴46を閉塞する位置に達する。ピストン42がさらに下死点に向けて移動されると、シリンダ40の下方空間内の空気は、吸排出穴46がピストン42によって閉塞されているから、吸排出穴46から排出されることなく、ピストン42によって圧縮される。
【0048】
シリンダ40の下方空間内の圧縮空気は、ピストン42の下降を抑制する上向きの反力R2をピストン42に作用させる。空気圧縮率は下死点に向けてのピストン42の移動によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R2が増大して、ピストン42の下方への移動は減速される。ピストン42に作用する上向きの反力R2は、綜絖枠14の下降速度を減速させる制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0049】
図2(D)を参照するに、綜絖枠14が下死点に達すると、ピストン42も下死点に達する。この時点においても、吸排出穴46はピストン42によって閉塞されている。
【0050】
図2(E)を参照するに、次いで、揺動レバー24が図1において反時計方向から時計方向に回転され始めることにより、ピストン42は上方すなわち矢印Y2の方向への移動を開始する。このとき、吸排出穴46が閉塞されているから、外部からの空気は吸排出穴46からシリンダ40内に流入しない。
【0051】
シリンダ40の下方空間内の圧縮空気の一部も、ピストン42が下死点付近を移動している間に、わずかではあるがシリンダ40とピストン42との間のわずかな隙間からピストン42の上方へ流出する。したがって、シリンダ40の下方空間の空気は、ピストン42の上昇にともなって膨張される。
【0052】
上記のような膨張途中の空気は、下向きの反力R3をピストン42に作用させる。空気膨張率はピストン42の上昇によって増大し、それによりピストン42に作用する反力R3が増大して、ピストン42の上昇が抑制される。ピストン42に作用する下向きの反力R3は、綜絖枠14の上昇速度を抑制する制動力として、綜絖枠14に作用する。
【0053】
図2(F)を参照するに、ピストン42がさらに上方に移動すると、吸排出穴46が開放されて、外部の空気が吸排出穴46からシリンダ40の下方空間内に流入し、シリンダ40の上方空間の空気が吸排出穴44から外部に排出される。
【0054】
ピストン42が吸排出穴46と吸排出穴44との間を移動している間も、空気抵抗はピストン42に対して実質的に作用せず、ピストン42は上昇を抑制されない。したがって、綜絖枠14は、上昇を抑制されることなく、駆動モータ18の駆動力によって上方へ移動される。
【0055】
その後、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞すると、シリンダ40の上方空間内の空気がピストン42のさらなる上昇にともなって圧縮される。これにより、図示してはいないが、下向きの反力R4がピストン42に作用するから、その反力R4も綜絖枠14の上昇を抑制する制動力として綜絖枠14に作用する。
【0056】
綜絖枠14に作用する制動力は、制動力R1,R2,R3又はR4と、駆動モータ18による制動力との合成である。このため、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R1,R2,R3又はR4の分だけ小さくなる。
【0057】
このことから、駆動モータ18は、綜絖枠14の上下死点付近における移動速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。このため、往復運動装置16によれば、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0058】
図1及び図2に示す実施例においては、外部の空気が吸排出穴44及び46を経て連続的に吸排出されるから、減速装置28内で発生した熱がシリンダ40内に蓄積されない。したがって、減速装置28の温度上昇が抑制される。
【0059】
また、減速装置28から排出された空気を他の用途、例えば冷却や緯入れ等に用いることができ、熱エネルギーを有効に利することができる。
【0060】
減速装置28は、従来のシリンダ装置に吸排出穴54、56を形成するのみでよいので、構造が簡単であり、コストの増大が最小限になる。
【0061】
図3を参照するに、減速装置52は、綜絖枠14が上死点に位置するときにピストン42が上死点に位置し、また、綜絖枠14が下死点に位置するときにピストン42は下死点に位置するように、シリンダ40及びピストン42の大きさが予め決められる。
【0062】
減速装置52においては、吸排出穴44は上死点よりやや下方に位置するピストン42によって完全に開放される位置に形成されており、吸排出穴46は下死点よりやや上方に位置するピストン42によって完全に開放される位置に形成されている。また、減速装置52は、吸排出穴44及び46をそれぞれ開閉する開閉バルブ54及び56を備えている。
【0063】
減速装置52において、ピストン42は駆動モータ18の回転にともなって上下方向に往復移動され、ピストン42の往復移動と同期して開閉バルブ54,56が開閉される。
【0064】
先ず、図3(A)に示すように、ピストン42は、吸排出穴44及び46を閉塞しない上死点にあるとき、吸排出穴44及び46は、ピストン42によって閉塞されてはいないが、開閉バルブ54及び56によって閉塞されている。
【0065】
このため、シリンダ40の上方空間内の空気は膨張され、シリンダ40の下方空間内の空気が圧縮される。その結果、空気の膨張による上向きの反力R11と、空気の圧縮による上向きの反力R12とがピストンに作用する。それらの反力R11及びR12が、綜絖枠14の下降を抑制する制動力として綜絖枠14に作用する。
【0066】
次いで、ピストン42が下降を始めると、図3(B)に示すように、開閉バルブ54が吸排出穴44を開放することにより、シリンダ40の下方空間内の空気がピストン42の下降にともなって吸排出穴44から外部に排出される。
【0067】
開閉バルブ54が吸排出穴44を開放するまでの間に、ピストン42より上方の空間内の空気が膨張されることに起因する上向きの反力R11がピストンに作用し、その反力R11は綜絖枠14の下降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0068】
次いで、図3(C)に示すように、ピストン42が吸排出穴44を完全に閉塞する位置にさらに下降されると、開閉バルブ54が閉じられて、吸排出穴44が閉塞される。
【0069】
これにより、ピストン42のさらなる下降により、シリンダ40の上方空間内の空気が膨張されることに起因する反力R11に加えて、ピストン42より下方の空間内の空気がピストン42により圧縮されることに起因する反力R13がピストン42に作用し、それらの反力R11,R13は綜絖枠14の下降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0070】
ピストン42は、図3(D)に示すように、吸排出穴44及び46を閉塞する下死点まで下降された後、上昇を開始する。図3(C)に示す反力R11及びR13は、ピストン42が下死点に下降されるまで、発生する。
【0071】
ピストン42の上昇開始により、シリンダ40の上方空間内の空気が圧縮されることに起因する下向きの反力R14がピストンに作用すると共に、シリンダ40の下方空間内の空気がピストン42により膨張されることに起因する下向きの反力R15がピストン42に作用し、それらの反力R14及びR15は綜絖枠14の上降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用する。
【0072】
次いで、図3(E)に示すように、ピストン42が吸排出穴46を開放する位置に移動されると、開閉バルブ56が作動されて吸排出穴46を開放する。これにより、外部の空気が吸排出穴46からシリンダ40の下方空間内に流入する。
【0073】
しかし、シリンダ40の上方空間内の空気はその後のピストン42の上昇にともなってさらに圧縮される。このときの空気のさらなる圧縮により、下向きの反力R14はピストン42に作用し続け、したがって反力R14は綜絖枠14の上降を抑制する制動力となって綜絖枠14に作用し続ける。
【0074】
次いで、図3(F)に示すように、ピストン42が吸排出穴44を閉塞する上死点位置に移動されると、開閉バルブ56が吸排出穴46を閉塞する。
【0075】
その後、ピストン42は、図3(A)に示す上死点から下降を再開される。
【0076】
開閉弁54及び56がそれぞれ対応する吸排出穴44及び46を開放している間においては、ピストン42の下降及び上昇は実質的に抑制されない。
【0077】
ピストン42が図3(F)に示す位置から上死点を経て開閉バルブ54が吸排出穴44を開放する図3(B)に示す位置に下降するまでの期間を図4において「圧縮、膨張状態」として示す。
【0078】
同様に、ピストン42が図3(C)に示す位置から下死点を経て開閉バルブ56が吸排出穴46を開放する図3(E)に示す位置に移動するまでの期間を図4において「膨張、圧縮状態」として示す。
【0079】
これに対し、ピストン42が図3(B)に示す位置と図3(C)に示す位置とに移動するまでの期間と、ピストン42が図3(E)に示す位置と図3(F)に示す位置とに移動するまでの期間とを図4において「実質的に無圧状態」として示す。
【0080】
減速装置52によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R11,R12,R13R14又はR15の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、綜絖枠の上下死点付近における速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0081】
減速装置52においては、上下方向におけるピストン42の位置に対する開閉バルブ54及び56の開閉のタイミングを任意に設定してもよい。そのようにすれば、図2に示す減速装置28と比較して、外部から内空気の吸排出を能動的に行うことができる利点を有する。したがって、綜絖枠14を効率よく上下動させることができる。
【0082】
図5を参照するに、減速装置60は、吸排出穴44及び46や開閉弁54及び56の代わりに、圧縮コイルばね62及び64をそれぞれシリンダ40の上方空間及び下方空間に配置している。この例においては、シリンダ40とピストン42との間は、空気の流通を許す隙間を有している。
【0083】
図示の例では、コイルばね62及び64は、それぞれ、シリンダ40の上方内端面及び下方内端面に取り付けられている。しかし、コイルばね62及び64をそれぞれピストン42の上面及び下面に取り付けてもよい。
【0084】
ピストン42の上死点はピストン42が上側の圧縮コイルばね62をシリンダ40の上方内端面と共同して圧縮する位置とされており、ピストン42の下死点はピストン42が下側の圧縮コイルばね64をシリンダ40の下方内端面と共同して圧縮する位置とされている。
【0085】
減速装置60も、綜絖枠14が上死点に位置するときにピストン42が上死点に位置し、また、綜絖枠14が下死点に位置するときにピストン42は下死点に位置するように、シリンダ40及びピストン42の大きさが予め決められる。さらに、ピストン42は駆動モータ18の回転にともなって上下方向に往復移動される。
【0086】
図5(A)を参照するに、上下コイルばね62及び64を圧縮しない状態で下降又は上昇されている間は、ピストン42にはコイルばね62及び64による反発力は作用しない。したがって、この間は、減速装置60による制動力が綜絖枠14には作用しない。
【0087】
図5(B)を参照するに、ピストン42が下方のコイルばね64を圧縮する状態に下降されると、コイルばね64の反発力R21が上向きに作用する。この反発力R21は、下死点に向けて移動する綜絖枠14に制動力となって作用する。
【0088】
同様に、図5(C)を参照するに、ピストン42が上方のコイルばね62を圧縮する状態に上降されると、コイルばね62の反発力R22が下向きに作用する。この反発力R22は、上死点に向けて移動する綜絖枠14に制動力となって作用する。
【0089】
コイルばね62及び64による反発力R22及びR21は、シリンダ40に対するピストン42の位置が上死点及び下死点に近いほど大きい。
【0090】
減速装置60によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、綜絖枠14に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも制動力R21又はR22の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、綜絖枠の上下死点に向かう速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0091】
図6を参照するに、この実施例においては、ピストン42の往復運動の方向が左右方向になるように減速装置28を配置し、T字又はY字状の揺動レバー24を用い、ピストンロッド64を揺動レバー24の第3の腕部62の枢軸66によって連結させている点を除いて、図1に示す実施例と同様に作用し、同様の効果を生じる。
【0092】
図7を参照するに、この実施例は、複数の往復運動装置を用いる場合において、それぞれが往復運動装置に個々に対応された複数の駆動モータ18を共通のモータ制御装置68で制御する。
【0093】
モータ制御装置68は、図示しない同期制御装置によって織機の主軸モータ(図示せず。)と同期して回転されて各綜絖枠14に所定の上下運動特性を与えるために各駆動モータ18を制御する。前記「所定の上下運動特性」とは、末端位置での停止や末端位置での停止状態の維持(ドウェル)、末端位置での低速運動のことをいう。
【0094】
各エンコーダ(記号「EN」で示す。)70は、対応する駆動モータ18に接続されて、その駆動モータ18の回転角度を検出する。エンコーダ70で検出された回転角度は、開閉バルブの開閉制御用の制御装置72に送られる。制御装置72は、入力した回転角度に基づいて対応する開閉バルブ54a,56a,54b,56b,・・・,54n,56nの開閉を制御する。
【0095】
上記の実施例は、いずれも、減速装置による制動力を、運動伝達機構を介して綜絖枠に作用させているが、図8に示すように減速装置による制動力を被駆動体としての綜絖枠18に直接作用させてもよい。
【0096】
図8を参照するに、筬打ち装置80はこれに適用された往復運動装置82を用いている。減速装置84は、シリンダ40のほぼ中央に吸入穴86と排出穴88とを形成し、ピストンロッド48を被駆動体としての筬90の下端部から伸びる連結棒92に枢軸連結している。
【0097】
筬打ち装置80は、複数の筬羽を備えた筬90をこれの下端部において揺動アーム94の上端部に連結し、揺動アーム94の下端部を揺動軸96に取り付けている。揺動軸96は、駆動モータ18とこれの回転運動を直線往復運動に変換する運動変換機構98とにより揺動軸96の軸線を中心に揺動されて、筬90に揺動運動をさせる。
【0098】
減速装置84において、ピストン42は、筬90が織前に最も近い先進位置にあるとき左端位置となり、筬90が織前から最も遠い後退位置にあるとき右端位置となるように往復移動される。
【0099】
減速装置84において、ピストン42が吸入穴86及び排出穴88を閉鎖した状態で移動している間は、シリンダ40の内部空間のうち、ピストン42より左方のいわゆる左方空間内の空気及びピストン42より右方のいわゆる右方空間内の空気のいずれか一方を圧縮し、他方を膨張させる。
【0100】
しかし、ピストン42が吸入穴86及び排出穴88を開放した状態で移動している間は、シリンダ40の左方空間及び右方空間のいずれか一方の空気を圧縮し、他方の空気の排出を許す。
【0101】
シリンダ40の右方空間及び左方空間の空気が圧縮又は膨張する際、右向き又は左向きの反力が生じる。それらの反力は右端位置又は左端位置付近における筬90の移動速度を減じる制動力として、筬90に作用する。
【0102】
したがって、減速装置84によっても、駆動モータ18で発生すべき制動力は、筬90に作用させる制動力を駆動モータ18でのみ発生する場合に比べ、少なくとも減速装置84による制動力の分だけ小さくなるから、駆動モータ18は、筬90の右端位置又は左端位置に向かう速度を減速させる制動力を駆動モータ18のみで発生する場合と比べて、より小さな制動力を発生する構成とすることができる。その結果、駆動モータ18で発生すべき制動力を小さくすることができるから、駆動モータ18に作用する負荷が小さくなる。
【0103】
本発明は、綜絖枠及び筬以外の被駆動装置、例えば緯糸に制動力を作用させる制動片の往復運動装置にも適用することができる。
【0104】
上記実施例は、いずれも、シリンダ装置を減速装置として用いているが、シリンダ装置以外の装置を減速装置として用いてもよい。また、減速装置を、駆動モータ18による制動力の補助の制動力を発生する減速補助装置として用いているが、本発明は駆動モータ18により被駆動体に制動力を作用させない場合にも適用することができる。
【0105】
図1及び図6に示す綜絖枠に対して減速装置を設ける場合、図9に示すように、綜絖枠14及び駆動モータ18にそれぞれ連結される腕部36及び38に対する減速装置28に連結される腕部62の角度を隣り合う綜絖枠の揺動レバー24の間で異なる値とすることにより、隣り合う綜絖枠の減速装置の位置を支持軸34の周りに適宜な角度ずらせてもよい。
【0106】
そのようにすれば、綜絖枠ひいては減速装置の配置ピッチを小さくして、複数の往復運動装置を小ピッチに配置することができる。
【0107】
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る往復運動装置の一実施例を開口装置に用いた例を示す図である。
【図2】図1に示す往復運動装置で用いる減速装置の一実施例の動作を示す図である。
【図3】減速装置の他の実施例の動作を示す図である。
【図4】図3に示す動作における開閉バルブの開閉タイミングとピストンの振幅との関係を示す図である。
【図5】減速装置のさらに他の実施例の動作を示す図である。
【図6】本発明に係る往復運動装置の他の実施例を示す図である。
【図7】図3に示す実施例における開閉バルブの制御回路の一実施例を示す図である。
【図8】本発明に係る往復運動装置のさらに他の実施例を筬打ち装置に用いた例を示す図である。
【図9】揺動レバーの枢軸線の周りにおける隣り合う減速装置の配置関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 開口装置
12 綜絖
14 綜絖枠
16 往復運動装置
18 駆動モータ
20,98 運動変換機構
22,92 連結棒
24 揺動レバー
26 連結桿
28,52,60,84 減速装置
40 シリンダ
42 ピストン
44,46 吸排出穴
54,56 開閉バルブ
62,64 圧縮コイルばね
90 筬
94 揺動アーム
96 揺動軸
Claims (8)
- 往復運動可能の被駆動体を往復運動させる駆動力を発生する、前記被駆動体専用の駆動モータと、
該駆動モータの駆動力を前記被駆動体に伝達する運動伝達機構と、
前記運動伝達機構又は前記被駆動体に連結された減速装置であって、前記被駆動体が往復運動の少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を与える減速装置とを含む、織機の往復運動装置。 - 前記減速装置は、前記被駆動体の往復運動に連動するピストンと、該ピストンを往復運動可能に収容するシリンダとを有する、請求項1に記載の装置。
- 前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面にあって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記ピストンにより閉塞される位置に、少なくとも1つの吸排出穴を有する、請求項2に記載の装置。
- 前記減速装置は、さらに、前記シリンダの側面に形成された少なくとも1つの吸排出穴と、該吸排出穴を開閉する開閉バルブであって、前記ピストンが前記シリンダの少なくとも一方の末端位置へ至る際に前記吸排出穴を閉塞する開閉バルブとを有する、請求項2に記載の装置。
- 前記減速装置は、さらに、前記シリンダ内の少なくとも一端部に配置されたばねを有する、請求項2に記載の装置。
- 前記駆動モータは、前記被駆動体が往復運動の末端位置へ至る際に前記被駆動体に制動力を作用させる、請求項2から4のいずれか1項に記載の装置。
- 前記ピストンは前記運動伝達機構に連結されている、請求項2から6のいずれか1項に記載の装置。
- 前記被駆動体は、綜絖枠又は筬である、請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
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