JP2004052034A - ターゲットホルダ - Google Patents

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Takanobu Hashimoto
橋本 孝信
Kazutaka Kanda
神田 一隆
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Abstract

【課題】マグネトロンスパッタリング法において、簡単な構造で、水冷構造を得、さらに、ターゲットのエロージョンを均一化し、ターゲットの利用効率を高め、蒸発量の安定化を図る。
【解決手段】固体蒸発源となるターゲット1が取付られる取付面2aの背面11にターゲットの表面に磁界を発生するための蒸発用磁石30が配されているターゲットホルダ10に於いて、蒸発用磁石を永久磁石とし、蒸発用磁石に磁力を与えることにより位置を変更する移動用磁石8を設ける。ターゲットを冷却するための冷却液を流すことができる冷却空間部9内部に蒸発用磁石を移動可能に配置し、移動用磁石を冷却空間部の外側に設け蒸発用磁石の位置をターゲットの表面に対して平行方向又は垂直方向に変更する。蒸発用磁石にさらに補助用磁石を設け作動を確実にする。移動用磁石は、永久磁石、電磁石を用い、手動、電動で移動、又は電磁石の極性を変え変更する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ターゲット(固体蒸発源)背面への磁石の設置により、ターゲット表面近傍に磁界を発生させ、ターゲット表面にイオンを衝突させターゲット表面から叩き出された蒸着原子又は分子を基体上に堆積させて薄膜として形成するマグネトロンスパッタリング法に関し、ターゲットのエロージョンエリアの均一化、蒸発量の安定化、さらには、ターゲット及び磁石が設けられたマグネトロンスパッタリング用ターゲットホルダの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、固体を蒸発させて目的物の表面に被膜を形成する手段としてスパッタリングと呼ばれる方法が用いられている。この方法では、減圧下でターゲットに負の電圧を印加することにより、固体蒸発源近傍に生成された放電プラズマ中のイオンを固体蒸発源に入射させ、このときの衝突エネルギーで膜の原料となる固体を蒸発させる。固体蒸発源に入射させるイオン種としては、蒸発効率の良い希ガスイオンが選ばれ、一般には安価に入手できるアルゴンガスを用いて生成されるアルゴンイオンが用いられる。スパッタリング法では、1個の入射アルゴンイオンに対し、1個のオーダーの固体原子または分子が蒸発するので、蒸発速度は入射イオン数に比例する。イオンは放電プラズマ中で生成されるので、この入射イオン数を増し、蒸発速度を上げるためには、放電プラズマの強度を上げる必要がある。そこで、考えられたのがターゲット(固体蒸発源)の背面に磁石を配し、ターゲット近傍の空間に強い放電プラズマ領域を形成するマグネトロンスパッタリング法である。ターゲットの背面には一般に中心部とその外周部にNとSの極性を反対にしたSmCoやNeFeBなどの永久磁石が配される。
【0003】
マグネトロンスパッタリング法では従来のスパッタリング法に比べ、蒸発速度が改善された反面、固体蒸発源の蒸発の不均一性が問題となっている。蒸発によって浸食された領域はエロージョンエリアと呼ばれるが、エロージョンの不均一性が大きいと、部分的にターゲット上に、固体蒸発源がなくなる領域が現れ、ここでターゲットの利用限界に達するので、ターゲットの利用効率が低下する。また、反応性マグネトロンスパッタリング法の場合には、エロージョンが大きく進行すると、ターゲットからの蒸発速度が変化し、成膜された膜の化学量論比が変化するという問題もある。
【0004】
そこで、このターゲットのエロージョンの不均一性を改善するため、いくつかの方法が考えられている。例えば、特開2001−59171号公報あるいは特開平6−136532号公報に示されるごとく、駆動装置を用いてターゲットの背面に設置される蒸発用の永久磁石ユニットを平行移動し、エロージョン領域を移動させる方法。あるいは、特公平6−86658号公報に示される如く、ターゲットの背面に置かれる蒸発用磁石として、永久磁石に換えて電磁石を用い、電磁石強度を調整することにより蒸発領域の制御を行う方法などがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の方法の場合には複雑な駆動機構を必要とするので高価になる。さらに、ターゲットの表面に平行な方向への移動は行われるが、表面に垂直な方向への移動はできないので、蒸発量の変動分を補正するためには別の手段による制御を行わなければならない。また、後者の場合には、特定の用途に対して適用される技術であり、電磁石位置が固定されるため、エロージョンの不均一性を改善する効果は小さいという問題があった。また、商業用の成膜装置の場合、高速で成膜するため、マグネトロンスパッタリングターゲットには大きなイオン電流を流すので、固体蒸発源の発熱が大きい。そこで、固体蒸発源の溶融を防止するため、ターゲットユニットには水冷機構が設けられるが、構造が複雑であり、また、水冷機構と蒸発用磁石とを効率良く配置するのが困難であった。
【0006】
本発明の課題は、かかる問題点に鑑みて、マグネトロンスパッタリング法において、従来より簡便な方法を用いてターゲットのエロージョンを均一化し、ターゲットの利用効率を高めるとともに、蒸発量の安定化を図ることである。さらには、簡単な水冷構造を得ることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、固体蒸発源となるターゲットが取付られる取付面を有し、前記取付面に取付られる前記ターゲットの背面に前記ターゲットの表面に磁界を発生するための蒸発用磁石が配されているターゲットホルダに於いて、前記蒸発用磁石は永久磁石であって、前記蒸発用磁石に磁力を与えることにより前記蒸発用磁石の位置を変更できる移動用磁石を備えたターゲットホルダを提供することにより前述の課題を解決した。
【0008】
即ち、ターゲットの背面に配したマグネトロンスパッタリング用の永久磁石から構成される蒸発用磁石を、移動用磁石を用いて、磁力を与え、移動用磁石と蒸発用磁石との吸引あるいは反発力を利用して蒸発用磁石の位置を移動させる。例えば、ターゲットホルダのケースは、SUS304などの非磁性型ステンレス鋼や銅合金などの非磁性体で製作し、マグネトロンスパッタリング装置の真空側にターゲットを取付け、ターゲットの背面のケース内に蒸発用磁石を移動可能に配置する。さらに、ケースの外側に移動用磁石を取付け固定する。ケース内の蒸発用磁石は移動用磁石の磁力により力を受けケース内を移動し、所定の位置に磁力による吸引又は反発力により固定される。移動用磁石を適宜配置することにより、蒸発用磁石の位置を変更できるので、蒸発用磁石を移動するための複雑な機構を必要とせず、ターゲットホルダの製作も容易である。なお、永久磁石はSmCoやNeFeB等の磁力が強い希土類磁石を使用するのがよい。また、蒸発用磁石は、大きなものは製作、取扱等が難しいので、多数の小型永久磁石を軟鋼などの磁性体、あるいはSUS304ステンレス等の非磁性体に固定して一体化するのがよい。
【0009】
蒸発用磁石を移動用磁石を用いて動かすためには、磁石同士はできる限り近接した方が好ましい。しかし、蒸発用永久磁石は、前述したように、構造物に取付配設するので、構造物の磁力特性、厚み等の影響がある。そこで、請求項2に記載の発明においては、前記蒸発用磁石の反前記ターゲット側に補助用永久磁石を設けた。これによれば、補助用磁石と移動用磁石をより近接して配置できるので、磁力を強くでき、動作が確実となる。また、補助用磁石の数も少なくてよい。また、補助用磁石間に軟鋼を配設することにより、強い磁力とすることができる。
【0010】
ターゲットはプラズマにさらされ高温になるので、ターゲット及びターゲットホルダを冷却したい。そこで、請求項3に記載の発明においては、前記ターゲットホルダは、前記ターゲットを冷却するための冷却液を流すことができる冷却空間部を有し、前記蒸発用磁石が前記冷却空間部内で移動可能にされ、前記移動用磁石が前記ターゲットホルダの冷却空間部の外側の前記取付面とは離隔した位置に設けるのがよい。即ち、蒸発用磁石は移動用磁石によって直接接することなく移動固定可能であるので、蒸発用磁石を冷却空間部内で移動可能に配設しても、外部から容易に位置を変更できる。従って、冷却空間部をターゲットに近づけて配置でき、同時に、蒸発用磁石もターゲットに近接させることができる。なお、蒸発用磁石および付属する固定機構は、腐食を防止するため、ステンレス材を用いたり、メッキや塗膜などの防錆用の表面処理を施す。移動用の永久磁石や電磁石は冷却空間部の外部であるので、ターゲット用冷却水に関して、あえて防錆処理をする必要はない。
【0011】
また、請求項4に記載の発明においては、前記蒸発用磁石の位置を前記ターゲットの表面に対して平行方向又は垂直方向、又は平行方向及び垂直方向に変更可能した。水平方向への移動は、ターゲットのエロージョンの位置を変更し、不均一を解消する。特に、ターゲット表面に対して垂直方向にも移動できるようにしたことにより、ターゲットのエロージョンが進んでも安定した蒸発速度を維持するようにした。即ち、ターゲットがエロージョンを受けて減った場合に、ターゲット表面近傍の磁力線密度の変化による固体原料の蒸発速度の変化を少なくなる。そこで、ターゲットの表面の後退にあわせて蒸発用磁石の位置を後退させるもので、その後退量はターゲットの厚さの半分程度に設定される。このことにより、ターゲットのエロージョンが進んでも安定な蒸発速度を維持することができる。
【0012】
前記移動用磁石は、永久磁石又は電磁石のいずれか、又は、永久磁石及び電磁石の組合せから構成すればよい。移動用磁石の位置や極の方向を変えることにより、又は電磁石の極や強度を種々変化させることにより蒸発用磁石を他の位置へ移動固定できる(請求項5)。また、前記移動用磁石が手動または電動により移動可能とすればよい(請求項6)。さらに、前記移動用磁石は永久磁石が磁性体または非磁性体の磁石固定具に固定され、前記磁石固定具の配置を変更することにより前記蒸発用磁石の位置を変更可能にするとよい(請求項7)。例えば、蒸発用磁石の移動は、治具に固定された移動用永久磁石を用いて行い、蒸発用磁石の設置したい位置まで移動した後、移動用磁石は蒸発用磁石が動かないように適切な位置に固定される。この移動は手動、電動ともに簡単な機構で可能である。さらに、前記電磁石の極性を変えることにより前記蒸発用磁石の位置を変更できるようにしてもよい(請求項8)。電磁石を蒸発用磁石の側面方向および背面に設置し、その極性を変化させることにより蒸発用磁石の移動を行う。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態を示す水冷機構を備えたマグネトロンスパッタリング用ターゲットホルダのターゲット表面に垂直な方向の断面図、図2は、図1のA−A線断面図である。なお、図1は図2のB−B線断面を示している。図1において、固体蒸発源であるターゲット1が下側に図示されており、ターゲットホルダ10は平板状のターゲット1が取付られる取付面2aを有する中凹の箱形状の銅製のケース2と、ケース2の開口部2bを閉塞するSUS製の平板状の裏蓋5が設けられ、裏蓋5とケース2とはそれぞれの鍔2c,5aでシール12を介して図示しないボルトで固定されている。ケース2と裏蓋5とで冷却空間部9が形成されている。幅方向中央のほぼ両端に裏蓋2を貫通して冷却空間部9に開口する入口管6、出口管7が設けられている。入口管6は後述する板状の構造物4と干渉しないように、構造物に明けられた長円形の逃げ穴4aを貫通して入口管の先端6aがターゲット1側に近い位置になるようにされている。また、出口管7の先端7aは裏蓋5で開口し、さらに、板状の構造物4に明けられた長円形の戻り穴4bが明けられている。冷却水を入口管6より供給し、一部は構造物の裏蓋5側を通り、一部は構造物4のターゲット1側、戻り穴4bを通って、出口管7から排出することにより、ターゲット1の熱を除去し、後述する冷却空間部9に置かれた蒸発用磁石30を熱から守る。また、蒸発用磁石30は冷却空間部9でターゲット1に容易に近接した位置に配置できる。逃げ穴4a、戻り穴4bは冷却液の流体力等により蒸発用磁石が傾く等の影響を受けないような大きさにされる。
【0014】
冷却空間部9の内部、即ち、ターゲット1が取付られる取付面2aの背面11(これはターゲット1の背面でもある)にはSmCo製の磁石3が置かれている。磁石3は磁石の分割片がSUS304製の板状の構造物4に接着され一体となり、蒸発用磁石30を構成する。蒸発用磁石30は冷却空間部9内でターゲット1に対し、前後(図1で上下)方向(図1の矢印21)、図2に示すように幅(図2で上下)方向(図2の矢印22)に移動可能にされているが、長手方向(図1、2で左右方向)両端にも磁石3dが設けられケース2の長手方向壁面13に摺動可能に接しており、長手方向には移動しない。図2に示すように、蒸発用磁石30は、両端の磁石3dに、さらに中心部長手方向に伸びる磁石列3aと中心部の磁石列に対称に配置された外周部長手方向に伸びる2本の磁石列3b,3cが設けられ、ターゲット1に向かって、中心部と外周部との磁石列のNSの極性が反対になるように配置されマグネトロンスパッタリング用磁石を構成している。一方、板状の構造物4を挟んで構造物磁石列3b,3cの反ターゲット側に補助用磁石3eがそれぞれ2個ずつ計4個が離隔して設けられている。補助用磁石間及び、中心部の磁石列3aの反ターゲット側には強磁性体の軟鋼ブロック17が設けられ、リブを形成し、永久磁石等が構造物4に接着され蒸発用磁石として一体となっている。図1、2では磁石列3aはN極、磁石列3b、3c、3d、3eはS極が手前(ターゲット1側)にくるように示してある。
【0015】
一方、図1に示すように、裏蓋5を介してSmCo製の移動用磁石8が置かれている。この例では移動用磁石8はSUS304製ステンレス鋼板の磁石固定具8aの両面にそれぞれ極方向を合わせた4個の磁石8′が設けられている。図では下方がS極、上方がN極の例を示している。また、移動用磁石8′のピッチは蒸発用磁石30の外周部の磁石列3b,3cの背面側に配設された4個の補助用磁石3eのピッチと同一にされている。従って、移動用磁石8の極性と、補助用磁石3eの極性により、移動用磁石と補助用磁石(即ち蒸発用磁石)との間に吸着又は反発力が発生するようにされている。そこで、移動用磁石8を幅方向移動あるいは前後面反転することにより、磁石同士の吸着と反発の相互作用を利用して蒸発用磁石30の位置を変えることができる。磁石同士の反発力を利用した場合には蒸発用磁石30はターゲット1側に移動し、吸引力を利用した場合には蒸発用磁石はターゲットから離れる方向に移動する。図1の状態では移動用磁石8はN極が蒸発用磁石30に対応しており、補助用磁石3eはターゲット側がS極とされ、移動用磁石側がN極となるので、互いに反発して、蒸発用磁石30はターゲット側に付勢される。
【0016】
さらに、詳述すると、図3は図1のC−C線断面を示し、移動用磁石8及び蒸発用磁石30(補助用磁石3e)の極性による位置変化を示す模式図であり、(a)は図1、2に示す状態、(b)は蒸発用磁石が図2の幅方向反対側に寄った状態、(c)は図2の状態で蒸発用磁石をターゲット1から遠ざけた状態、(d)は蒸発用磁石が図2の幅方向反対側に寄り、蒸発用磁石をターゲットから遠ざけた状態を示している。なお、図1、2で説明した部分については同符号を図3(a)に付し、説明の一部を省略する。図1乃至図3(a)の状態を作るためには、まず、図で見てN極を下向きにした移動用磁石8を右側から近づけて蒸発用磁石30の補助用磁石3eのN極と反発させながら左方向へ移動させ、蒸発用磁石30がケース2の壁面14に到達した位置で移動用磁石8を固定することにより、蒸発用磁石を固定する。同様に図3(b)の状態を作るためには、まず、図で見てN極を下向きにした移動用磁石8を左側から近づけて蒸発用磁石30の補助用磁石3eのN極と反発させながら右方向へ移動させ、蒸発用磁石30がケース2の壁面15に到達した位置で移動用磁石8を固定させて、蒸発用磁石を固定する。また、図3(c)の状態を作るためには、まず、図で見てS極を下向きにした移動用磁石8を蒸発用磁石30へ近づけて補助用磁石3eのN極と裏蓋5を介して吸着させながら左方向へ移動させ、蒸発用磁石30がケース2の壁面14に到達した位置で移動用磁石8を固定させ、蒸発用磁石を固定する。同様に、図3(d)の状態を作るためには、まず、図で見てS極を下向きにした移動用磁石8を蒸発用磁石30へ近づけて補助用磁石3eのN極と裏蓋5を介して吸着させながら右方向へ移動させ、蒸発用磁石30がケース2の壁面15に到達した位置で移動用磁石8を固定させ、蒸発用磁石を固定する。なお、移動用磁石の移動は小型なものであれば手作業で容易に行え、また、固定は単にボルトで裏蓋5に固定する簡単な構造でよい。
【0017】
この動作を順次行うことによって、ターゲットのエロージョンエリアの均一化と安定な蒸発速度を確保することができる。即ち、図2に示される蒸発用磁石30はターゲットホルダのケース2の片側に寄っているが、使用によりターゲット1のエロージョンが進んだ後は、図3(b)(d)に示すように反対の側へ移動する。エロージョンの起こる領域は中心部の永久磁石3aと外周部の磁石3b、3cの間にあるので、次の使用でエロージョン域が平均化されることになる。さらに、図3の(c)(d)ではターゲット1から蒸発用磁石30を遠ざけ、ターゲットのエロージョンが進んでも安定な蒸発速度を確保できる。なお、図3の符号16は長手方向に伸びるケース2のリブであり、銅製のケースの強度を確保するためのもので、蒸発用磁石30の移動に差し支えない位置に設けられている。
【0018】
【実施例】
前述した本発明のターゲットホルダを用いて実施した結果について説明する。図4は本発明のターゲットホルダを用いたマグネトロンスパッタリング装置の反応容器部の概略構成図を示す。この装置は本発明者等が別途出願した特開2000−38663号公報で公開したもので、図1、2に示したターゲットホルダ10を長手方向が縦(図4でみて紙面に垂直方向)になるように配置する。さらに、隣り合う2枚のターゲット1,1の表面が幅方向で傾斜角α=120゜傾斜して配置された傾斜ターゲット型マグネトロンスパッタリング装置を構成しており、2対で合計4個のターゲットホルダ10及びターゲット1を備えている。図4において、31は真空室(反応室)、33は扉、34は薄膜が積層される基体が置かれる回転テーブルであり、矢印方向に回転し、積層される薄膜の均一化等をはかる。35は基体を加熱する加熱ヒータ、36はシャッターであり、基体加熱時及びターゲット活性時にはターゲット1とテーブル34の間を遮断し、テーブル上の基体への不純物の蒸着を防ぐ。また、イオンボンバード時及び蒸着時には加熱ヒータ35とターゲット1、テーブル34間を遮断し、加熱ヒータへの膜の蒸着を防ぐ。37はプラズマの発生を補助する電磁石であり、プラズマ領域の拡大、プラズマの安定化を行う。その他、公知のマグネトロンスパッタリング装置と同様であるので説明を省略する。ターゲットとして厚さ5mmのTiターゲットを用い、スパッタリング用ガスとしてAr(アルゴン)ガス、反応ガスとしてN(窒素)ガスを流し、同一条件で繰り返しTiN膜被覆処理を行うことにより、基体へ積層された膜厚の変化を調べ、ターゲットの利用限界を調査した。被覆処理は真空引き、ヒータによるワーク加熱、アルゴンボンバードによる試験片表面のスパッタリングクリーニング、TiN被覆処理、冷却の順に行った。ターゲットを消耗させる時間すなわちTiN被覆処理の時間は2時間一定とした。ターゲット1個あたりに印加する電流は4.5A一定とし、定電流モードで運転した。ターゲット1個にかける電力は3kWにも達するので、ターゲットの過熱を防止するためターゲットホルダには冷却水を流した。
【0019】
試験は蒸発用磁石30の配置を図3に示した合計4位置選んで行った。第一回目の蒸発用磁石30は図3(a)の如く配置した。この配置にて繰り返し被覆試験を20チャージまで行い、膜厚の変化を調べた。第1チャージ目のTiN膜の膜厚は5.6μmであり、最初の4チャージ目までは膜厚がわずかに上昇し、その後減少に転じた。そして、16チャージ目で1チャージ目の膜厚より30%薄くなり、色調も金色から濃い金色へと変化し始めた。そこで、16チャージ目を第一回目の蒸発用磁石配置での固体蒸発源の利用限界とした。
【0020】
次いで移動用磁石8を図3(b)のように移動し、第一回目の配置と同じ条件でTiN被覆処理を繰り返した。膜厚は第一回目の蒸発用磁石配置と同様な変化を示し、15チャージ付近で当初の70%にまで減少した。ここで、移動用磁石8をN極とS極を反対にした配置とし、図3(c)に示したように、蒸発用磁石30をTiターゲット1から離す方向へ移動した。この配置にて同様に蒸発試験を繰り返したところ、膜厚は前2回目までの配置と同様な傾向をたどった。また、図3(d)に示す配置が最後となるが、ここでも前3回目までの配置と同様な傾向が得られた。蒸発用磁石30の1種類の配置で2時間の被覆工程を15〜16回行えるが、これによるTiターゲットの最大エロージョン深さは約2.4mmであった。蒸発用磁石30を移動しない場合にはこれでターゲット交換となるが、本発明の方法によれば、これを4回繰り返すことができるので、板厚が5mmという比較的薄いターゲットでも通常の4倍まで使うことができた。
【0021】
なお、本実施例では、蒸発用磁石の移動を永久磁石を用いた例で示したが、これを電磁石にて代用することも特別に難しいことでないことは言うまでもない。移動用磁石とその磁力を受ける蒸発用磁石側の磁石片の組合せも、実施の形態では4個の組合せの補助用磁石を示したが、ターゲットのサイズに応じて適宜変更すればよい。また、構造物4は軟鋼等の強磁性体、SUS等の非磁性体、さらには、プラスチックス材料等の使用も可能である。なお、軟鋼等、冷却液に腐蝕されやすいものはクロムメッキ等を施す必要がある。また、磁力線の作用、耐食性、材料強度、磁石接着性などを考え併せるとSUS等の非磁性体の使用が望ましい。また、実施の形態では、蒸発用磁石の位置が4位置のものについて述べたが、さらに、長手方向へ移動できるようにしたり、面積の広い固体蒸発源を持つターゲットホルダを用いて、移動用磁石の動かし方を変えることにより、移動位置を複数箇所設定する方法、あるいは連続的に移動する方法などが選択できる等発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に応用できることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明においては、ターゲットの背面に蒸発用磁石を配してなるマグネトロンスパッタリング用ターゲットホルダにおいて、蒸発用磁石と移動用磁石との磁力を利用して、移動用磁石を適宜配置することにより、蒸発用磁石の位置を変更でき、蒸発用磁石を移動するための複雑な機構を必要とせず、ターゲットホルダの製作も容易であるので、従来に比べて非常に簡便な機構でターゲットの位置を制御できるものとなった(請求項1)。さらに、蒸発用磁石の反ターゲット側に補助用永久磁石を設け、補助用磁石と移動用磁石を近接して配置したので、より確実に蒸発用磁石の変更が可能となった(請求項2)。
【0023】
さらに、冷却液を流すことができる冷却空間部内に蒸発用磁石を移動可能に配設し、蒸発用磁石を移動用磁石によって外部から容易に位置を変更できるようにしたので、簡単で水漏れの原因となる箇所も少なく、使いやすい水冷構造とすることができる。さらに、冷却空間部及び蒸発用磁石の両者をターゲットに近づけて配置できるので、冷却能力が高く、蒸発用磁石の磁界の効率を高めるものとなった(請求項3)。
【0024】
蒸発用磁石の位置をターゲット表面に対し水平方向へ変更でき、ターゲットのエロージョンの位置を変更し、不均一を解消できるので、ターゲットの利用効率を高めるものとなった。さらに、ターゲット表面に対して垂直方向にも移動でき、ターゲットのエロージョンが進んでも安定した蒸発速度を維持するので、安定した蒸発量を得られ、安定した膜質が得られるものとなった。実施例ではターゲット寿命は、水平方向移動で従来の2倍、垂直方向で従来の2倍、合わせて従来の4倍の寿命を得るものとなった(請求項4)。
【0025】
移動用磁石は永久磁石及び電磁石を用い移動用磁石の位置や極の方向を変えることにより、蒸発用磁石を他の位置へ移動固定できるので、構造や操作も簡単である(請求項5)。また、移動用磁石は手動または電動により移動可能であり、試験から量産まで応用が広い(請求項6)。さらに、移動用磁石を永久磁石を磁石固定具に固定し、磁石固定具の配置を変更して蒸発用磁石の位置を変更する場合は構造も簡単で、取扱も容易である(請求項7)。さらに、電磁石の極性を変えることにより蒸発用磁石の位置を変更できるので、蒸発用磁石の複雑な位置制御も可能である(請求項8)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す水冷機構を備えたマグネトロンスパッタリング用ターゲットホルダのターゲット表面に垂直な方向の断面図であり、図2のB−B線断面を示している。
【図2】本発明の図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の図1のC−C線断面を示し、移動用磁石及び蒸発用磁石の極性による位置変化を示す模式図であり、(a)は図1、2に示す状態、(b)は蒸発用磁石が図2の幅方向反対側に寄った状態、(c)は図2の状態で蒸発用磁石をターゲット1から遠ざけた状態、(d)は蒸発用磁石が図2の幅方向反対側に寄り、蒸発用磁石をターゲットから遠ざけた状態を示し模式図である。
【図4】本発明のターゲットホルダを用いたマグネトロンスパッタリング装置の反応容器部の概略構成図である。
【符号の説明】
1  ターゲット(固体蒸発源)
2a 取付面
3e 補助用磁石
8′ 永久磁石
8a 磁石固定具
8  移動用磁石
9  冷却空間部
10 ターゲットホルダ
11 取付面の背面(ターゲットの背面)
30 蒸発用磁石

Claims (8)

  1. 固体蒸発源となるターゲットが取付られる取付面を有し、前記取付面に取付られる前記ターゲットの背面に前記ターゲットの表面に磁界を発生するための蒸発用磁石が配されているターゲットホルダに於いて、前記蒸発用磁石は永久磁石であって、前記蒸発用磁石に磁力を与えることにより前記蒸発用磁石の位置を変更できる移動用磁石を備えたことを特徴とするターゲットホルダ。
  2. 前記蒸発用磁石の反前記ターゲット側に補助用永久磁石が設けられていることを特徴とする請求項1記載のターゲットホルダ。
  3. 前記ターゲットホルダは、前記ターゲットを冷却するための冷却液を流すことができる冷却空間部を有し、前記蒸発用磁石が前記冷却空間部内で移動可能にされ、前記移動用磁石が前記ターゲットホルダの冷却空間部の外側の前記取付面とは離隔した位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のターゲットホルダ。
  4. 前記蒸発用磁石の位置を前記ターゲットの表面に対して平行方向又は垂直方向、又は平行方向及び垂直方向に変更可能にされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載のターゲットホルダ。
  5. 前記移動用磁石は永久磁石又は電磁石のいずれか、又は、永久磁石及び電磁石の組合せから構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のターゲットホルダ。
  6. 前記移動用磁石が手動または電動により移動可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のターゲットホルダ。
  7. 前記移動用磁石は永久磁石が磁性体または非磁性体の磁石固定具に固定され、前記磁石固定具の配置を変更することにより前記蒸発用磁石の位置を変更可能にされていることを特徴とする請求項6に記載のターゲットホルダ。
  8. 前記ターゲットホルダの側面および背面に電磁石からなる前記移動用磁石を配し、前記電磁石の極性を変えることにより前記蒸発用磁石の位置を変更できるようにされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のターゲットホルダ。
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