JP2004050634A - 軽量複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な工程により強化繊維に対する樹脂の含浸状態が良好で、しかも、基本的に接着状態に多くの課題があるポリオレフィン系樹脂を適用する場合においても、接着状態が良好な複合材料を得ること。
【解決手段】超高分子量ポリエチレン繊維等の高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊した状態で曲面ダイを通過させて、その後の直線ダイを通過させて、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することにより該有機繊維の表面が樹脂で実質的に覆われた複合材料とする。
【選択図】 図1
【解決手段】超高分子量ポリエチレン繊維等の高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊した状態で曲面ダイを通過させて、その後の直線ダイを通過させて、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することにより該有機繊維の表面が樹脂で実質的に覆われた複合材料とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、航空、建設、土木、安全用品など広く産業資材として好適な、強度・弾性率が高い新規な複合材料に関するものであり、特に軽量である繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(以下、FRTPと記す)には、射出成形用材料や、スタンピング成形、吐出圧縮成形などに用いられる不連続繊維強化によるものや、フィラメントワインディングや、織布とした後に圧縮成形をおこう連続繊維強化材などがあり、この様なFRTPの多くは、強化繊維に金属繊維、炭素繊維、そして、ガラス繊維などの無機繊維が用いられてきた。
金属繊維は高い強度と弾性率を有し、しかも再度溶融して利用できることから環境負荷も低く、加えて、電磁波シールド性に優れると云った機能を有する。しかし、金属で有るが故に、根本的に密度が大きく、重いという問題を有する。
炭素繊維は比較的高い強度と弾性率を有し、しかも焼却も容易であり、環境負荷も小さい。しかし、脆性破壊を起こしやすく、また、絶縁性に乏しいなどの課題を有しする。なお、密度は金属繊維に比して、小さいが、同様に重いと云う問題を有する。
【0003】
ガラス繊維は適度な強度と弾性率を有し、しかも、低コストであることから熱可塑性樹脂複合材料のみならず、後述の熱硬化製樹脂複合材料としても様々分野で用いられているる。しかし、脆性破壊を起こしやすく、また、再利用が困難で、しかも、焼却時にガラス質の灰が残り、環境負荷が大きいという問題点があり、更に、炭素繊維より密度が高く、重いと云う問題点を有する。
このような観点で密度の低いポリオレフィン系樹脂を溶融させ、その溶融樹脂に有機繊維を浸漬させてペレットを得ると云ったFRTPが特開2001−49012号公報に開示されているが、ポリオレフィン樹脂は接着性が悪いため、特に曲げ強度と曲げ弾性率に於いて所定の性能が得られないという課題がある。更に、また、WO96/30567には、融点より25℃以上高いポリエチレン樹脂が充填された直線上のダイ内に超高分子量ポリエチレンによる繊維を通過させて該樹脂を付与することで線条の疑似モノフィラメントを得ることが開示されている。
しかし、この方法ではダイを通過するときに樹脂が繊維間に充填されないため、樹脂を高温にしても繊維と樹脂が接着せず、これも所定の曲げ強度と曲げ弾性率が得られないという課題がある。
【0004】
これに対して、特表平11−510863号公報に溶媒中のポリエチレン樹脂に超高分子量ポリエチレンによる繊維を含浸して溶媒を除去することで非極性と考えられているオレフィン系樹脂を溶媒で膨潤させ、そこに同じ系の樹脂を絡ませることで接着性を改善するものが開示されている。
この方法により得られたFRTPは優れた物性を発現しうるが、工程が煩雑である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来のFRTPは、強化繊維に無機繊維を使用することで強度や弾性率に優れてはいるが重いなどの問題があり、また、有機繊維としてポリオレフィン系の樹脂や繊維を使用することで軽量化しても、繊維と樹脂の接着性が悪いため物性に問題がある。また、その接着性を改善する工程は煩雑であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は更に鋭意検討を行なった結果、簡易な工程により優れた物性を有し、また、軽量であるFRTPを見出した。
即ち本発明は、下記の構成からなる。
1.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維が開繊状態で樹脂に被覆されてなることを特徴とする複合材料。
2.有機繊維が強度20cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであることを特徴とする上記第1記載の複合材料。
3.有機繊維が超高分子量ポリエチレン繊維であることを特徴とする上記第1記載の複合材料。
4.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊し、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする複合材料の製造方法。
5.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊した状態で曲面ダイを通過させた後、直線ダイを通過させ、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする上記第4記載の複合材料の製造方法。
6.有機繊維の溶融もしくは軟化する温度より5〜25℃高い温度で0.1sec以上樹脂を付与することを特徴とする上記第4記載の複合材料の製造方法。
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明の複合材料に用いる強化繊維は一般に有機繊維と呼ばれるものであるが、高強度、高弾性率であることが必要である。その具体的な数値としては、強度が15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、より好ましくは強度が20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである有機繊維が高い強度と弾性率が得られるので良い。
この高強度、高弾性率の有機繊維としては高強度で耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れたポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラアラミド)繊維が知られている。また、最近、新しい高強度、高耐熱性、高弾性率の有機繊維として、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)やポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のポリベンザゾール(PBZ)繊維が挙げられる。但し、これらの繊維を選択すると、可能な限り軽量を求める場合、熱可塑性樹脂にポリオレフィン系の樹脂が必要となり、また、繊維含有率にも限度が生じる。従って、ポリオレフィン系の繊維が好ましく、更には、超高分子量ポリエチレン繊維を選択することが好ましい。なお、上記の繊維以外の有機繊維を必要に応じて組合わせることも可能である。
【0008】
本発明のFRTPに用いる熱可塑性樹脂は一般にエンジニアプラスチックと呼ばれるナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレートなども挙げられる。更に、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを適用することも可能であるが、軽量のため、ポリプロピレン、ポリエチレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂など、密度が1000kg/m3 に近いことが好ましい。
特に、強化繊維に超高分子量ポリエチレン繊維を選択した場合、FRTPを一体化する際に、該繊維の表面を僅かに溶融させるような状態にして、接着性を改善することが必要である。従って、同じオレフィン系の樹脂、あるいは、エチレンエチルアクリラート共重合体などが、融点が近くより好ましい。
【0009】
高強度、高弾性率の有機繊維を強化繊維として有効に活用するため、繊維表面を実質的に樹脂で覆い、一体化することが必要である。そのため、特許第2877052号公報などに記載しているように該有機繊維束を開繊させた状態で、これを維持して、溶融、あるいは、軟化した樹脂に浸漬して付与することが重要である。また、付与する樹脂の温度は該有機繊維が溶融、あるいは、軟化する温度より5〜25℃高い温度が良く、低い場合、該有機繊維の表面が適度に溶融状態にならず、高い場合、該有機繊維が溶断する。更に、該有機繊維が樹脂と接触する時間は長いほど良く、0.1sec以上が好ましく、1sec以上がより好ましい。但し、長すぎるとダイとの摩擦などで糸切れの頻度が増加するので該繊維の引張強度や該樹脂の特性を考慮して、条件を設定する必要がある。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例、ならびに、本文中、及び、実施例中の評価方法について記述する。
(1)複合材料の繊維含有率
繊維の供給量とFRTPの重量比より繊維(重量)含有率を求めた。
(2)含浸状態
任意に選択した断面を光学顕微鏡などで観察し、周囲長の50%以上が樹脂と接触した状態の強化繊維の含有量で示すもので、ここでは70%以上を良、70%未満のものを不良とした。
(3)表面状態
JIS K 7073「炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法」に準拠して、試験片III形において破断するまで引張試験を行なった後、破断面における該強化繊維の表面を電子顕微鏡で観察し、該強化繊維に対する樹脂の付着状態を確認した。
【0011】
(実施例1〜3)
高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にエチレンエチルアクリラート共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製エバフレックスEEA:A−702)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例1〜3のFRTPを得た。
【0012】
(比較例1〜3)
引取速度、曲面ダイ、ならびに、樹脂温度の変更以外は基本的には実施例1〜3と同様に、高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、ダイを通し、その際にエチレンエチルアクリラート共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製エバフレックスEEA:A−702)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、比較例1〜3のFRTPを得た。
【0013】
(実施例4)
高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にポリエチレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックLD:LF660H)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例4のFRTPを得た。
【0014】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維(東洋紡績(株)製)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にポリポロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックPP:MA03)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例5のFRTPを得た。
以上の実施例1〜5と比較例1〜3における素材、加工条件、ならびに、評価結果を表1に記載する。
【0015】
【表1】
【0016】
また、実施例ならびに比較例の加工について参考図を図1に記載する。
実施例1〜3は本発明の複合材料であり、加工の際に引取速度を変更することで樹脂との接触時間を変更したものである。何れも設定の繊維含有率63.8wt%に近いものが得られ、繊維表面に樹脂の付着が多く認められた。
実施例4も本発明の複合材料であり、実施例1に対して樹脂を変更したものである。これも設定の繊維含有率63.8wt%に近いものが得られていた。
実施例5も本発明の複合材料であり、強化繊維ならびに樹脂を変更したものである。これも設定の繊維含有率27.3wt%に近いものが得られ、繊維表面に樹脂の付着が多く認められた。
【0017】
比較例1は実施例1に対して引取速度を上げることで、樹脂との接触時間を短くしたものである。繊維含有率は設定63.8wt%に対して値が増加しており、樹脂の付着が減り、空隙が多いことが分かる。また、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
比較例2は実施例1に対して曲面ダイを使用せずに得たものである。繊維含有率は設定の63.8wt%に対して値が増加しており、空隙が多いことが分かる。また、樹脂の付着が減り、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
比較例3は実施例1に対して樹脂温度を変更して得たものである。比較例1〜2と同様に繊維含有率は設定の63.8wt%に対して値が増加しており、空隙が多いことが分かる。また、樹脂の付着が減り、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
【0018】
以上のように少なくとも1種類の高強度、高弾性率の有機繊維を含む繊維が開繊された状態で、該有機繊維が溶融、あるいは、軟化する温度状態にある樹脂中を通過させることで、該繊維の表面が該樹脂で実質的に覆われた複合材料は簡易な工程により良好な含浸状態が得られるとに共に繊維と樹脂の接着状態が良好である。また、基本的に接着状態に課題があるポリオレフィン系樹脂を適用する場合、密度が小さいためより軽量の複合材料が得られる。
【0019】
このような複合材料は光ファイバーやワイヤーハーネスなどを補強する補強材として、海洋や湖などで使用するロープ、自転車のスポークやテニスのガットなどの素材、ジオテキスタイル用の線材、ヨット、カヌー、グライダーなどのレジャースポーツ用品のラインなどに適用することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によると、簡易な工程により強化繊維に対する樹脂の含浸状態が良好で、しかも、基本的に接着状態に課題があるポリオレフィン系樹脂を適用する場合においても、接着状態が良好な複合材料を提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用する実施例の一形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 予備開繊ローラー
2 曲面ダイ
3 直線ダイ
4 引取ローラー
5 樹脂の圧入方向
6 糸道
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、航空、建設、土木、安全用品など広く産業資材として好適な、強度・弾性率が高い新規な複合材料に関するものであり、特に軽量である繊維強化熱可塑性樹脂複合材料を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から繊維強化熱可塑性樹脂複合材料(以下、FRTPと記す)には、射出成形用材料や、スタンピング成形、吐出圧縮成形などに用いられる不連続繊維強化によるものや、フィラメントワインディングや、織布とした後に圧縮成形をおこう連続繊維強化材などがあり、この様なFRTPの多くは、強化繊維に金属繊維、炭素繊維、そして、ガラス繊維などの無機繊維が用いられてきた。
金属繊維は高い強度と弾性率を有し、しかも再度溶融して利用できることから環境負荷も低く、加えて、電磁波シールド性に優れると云った機能を有する。しかし、金属で有るが故に、根本的に密度が大きく、重いという問題を有する。
炭素繊維は比較的高い強度と弾性率を有し、しかも焼却も容易であり、環境負荷も小さい。しかし、脆性破壊を起こしやすく、また、絶縁性に乏しいなどの課題を有しする。なお、密度は金属繊維に比して、小さいが、同様に重いと云う問題を有する。
【0003】
ガラス繊維は適度な強度と弾性率を有し、しかも、低コストであることから熱可塑性樹脂複合材料のみならず、後述の熱硬化製樹脂複合材料としても様々分野で用いられているる。しかし、脆性破壊を起こしやすく、また、再利用が困難で、しかも、焼却時にガラス質の灰が残り、環境負荷が大きいという問題点があり、更に、炭素繊維より密度が高く、重いと云う問題点を有する。
このような観点で密度の低いポリオレフィン系樹脂を溶融させ、その溶融樹脂に有機繊維を浸漬させてペレットを得ると云ったFRTPが特開2001−49012号公報に開示されているが、ポリオレフィン樹脂は接着性が悪いため、特に曲げ強度と曲げ弾性率に於いて所定の性能が得られないという課題がある。更に、また、WO96/30567には、融点より25℃以上高いポリエチレン樹脂が充填された直線上のダイ内に超高分子量ポリエチレンによる繊維を通過させて該樹脂を付与することで線条の疑似モノフィラメントを得ることが開示されている。
しかし、この方法ではダイを通過するときに樹脂が繊維間に充填されないため、樹脂を高温にしても繊維と樹脂が接着せず、これも所定の曲げ強度と曲げ弾性率が得られないという課題がある。
【0004】
これに対して、特表平11−510863号公報に溶媒中のポリエチレン樹脂に超高分子量ポリエチレンによる繊維を含浸して溶媒を除去することで非極性と考えられているオレフィン系樹脂を溶媒で膨潤させ、そこに同じ系の樹脂を絡ませることで接着性を改善するものが開示されている。
この方法により得られたFRTPは優れた物性を発現しうるが、工程が煩雑である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来のFRTPは、強化繊維に無機繊維を使用することで強度や弾性率に優れてはいるが重いなどの問題があり、また、有機繊維としてポリオレフィン系の樹脂や繊維を使用することで軽量化しても、繊維と樹脂の接着性が悪いため物性に問題がある。また、その接着性を改善する工程は煩雑であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は更に鋭意検討を行なった結果、簡易な工程により優れた物性を有し、また、軽量であるFRTPを見出した。
即ち本発明は、下記の構成からなる。
1.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維が開繊状態で樹脂に被覆されてなることを特徴とする複合材料。
2.有機繊維が強度20cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであることを特徴とする上記第1記載の複合材料。
3.有機繊維が超高分子量ポリエチレン繊維であることを特徴とする上記第1記載の複合材料。
4.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊し、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする複合材料の製造方法。
5.高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊した状態で曲面ダイを通過させた後、直線ダイを通過させ、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする上記第4記載の複合材料の製造方法。
6.有機繊維の溶融もしくは軟化する温度より5〜25℃高い温度で0.1sec以上樹脂を付与することを特徴とする上記第4記載の複合材料の製造方法。
【0007】
以下、本発明を詳述する。
本発明の複合材料に用いる強化繊維は一般に有機繊維と呼ばれるものであるが、高強度、高弾性率であることが必要である。その具体的な数値としては、強度が15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、より好ましくは強度が20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである有機繊維が高い強度と弾性率が得られるので良い。
この高強度、高弾性率の有機繊維としては高強度で耐熱性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れたポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラアラミド)繊維が知られている。また、最近、新しい高強度、高耐熱性、高弾性率の有機繊維として、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)やポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のポリベンザゾール(PBZ)繊維が挙げられる。但し、これらの繊維を選択すると、可能な限り軽量を求める場合、熱可塑性樹脂にポリオレフィン系の樹脂が必要となり、また、繊維含有率にも限度が生じる。従って、ポリオレフィン系の繊維が好ましく、更には、超高分子量ポリエチレン繊維を選択することが好ましい。なお、上記の繊維以外の有機繊維を必要に応じて組合わせることも可能である。
【0008】
本発明のFRTPに用いる熱可塑性樹脂は一般にエンジニアプラスチックと呼ばれるナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレートなども挙げられる。更に、スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどを適用することも可能であるが、軽量のため、ポリプロピレン、ポリエチレンなどに代表されるポリオレフィン系樹脂など、密度が1000kg/m3 に近いことが好ましい。
特に、強化繊維に超高分子量ポリエチレン繊維を選択した場合、FRTPを一体化する際に、該繊維の表面を僅かに溶融させるような状態にして、接着性を改善することが必要である。従って、同じオレフィン系の樹脂、あるいは、エチレンエチルアクリラート共重合体などが、融点が近くより好ましい。
【0009】
高強度、高弾性率の有機繊維を強化繊維として有効に活用するため、繊維表面を実質的に樹脂で覆い、一体化することが必要である。そのため、特許第2877052号公報などに記載しているように該有機繊維束を開繊させた状態で、これを維持して、溶融、あるいは、軟化した樹脂に浸漬して付与することが重要である。また、付与する樹脂の温度は該有機繊維が溶融、あるいは、軟化する温度より5〜25℃高い温度が良く、低い場合、該有機繊維の表面が適度に溶融状態にならず、高い場合、該有機繊維が溶断する。更に、該有機繊維が樹脂と接触する時間は長いほど良く、0.1sec以上が好ましく、1sec以上がより好ましい。但し、長すぎるとダイとの摩擦などで糸切れの頻度が増加するので該繊維の引張強度や該樹脂の特性を考慮して、条件を設定する必要がある。
【0010】
【実施例】
以下に本発明の実施例、ならびに、本文中、及び、実施例中の評価方法について記述する。
(1)複合材料の繊維含有率
繊維の供給量とFRTPの重量比より繊維(重量)含有率を求めた。
(2)含浸状態
任意に選択した断面を光学顕微鏡などで観察し、周囲長の50%以上が樹脂と接触した状態の強化繊維の含有量で示すもので、ここでは70%以上を良、70%未満のものを不良とした。
(3)表面状態
JIS K 7073「炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法」に準拠して、試験片III形において破断するまで引張試験を行なった後、破断面における該強化繊維の表面を電子顕微鏡で観察し、該強化繊維に対する樹脂の付着状態を確認した。
【0011】
(実施例1〜3)
高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にエチレンエチルアクリラート共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製エバフレックスEEA:A−702)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例1〜3のFRTPを得た。
【0012】
(比較例1〜3)
引取速度、曲面ダイ、ならびに、樹脂温度の変更以外は基本的には実施例1〜3と同様に、高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、ダイを通し、その際にエチレンエチルアクリラート共重合樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製エバフレックスEEA:A−702)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、比較例1〜3のFRTPを得た。
【0013】
(実施例4)
高分子量ポリエチレン繊維(東洋紡績(株)製ダイニーマ:SK60)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にポリエチレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックLD:LF660H)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例4のFRTPを得た。
【0014】
(実施例5)
ポリエチレンテレフタレート樹脂繊維(東洋紡績(株)製)を開繊バーにて充分開繊した後、曲面ダイと直線ダイを通し、その際にポリポロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックPP:MA03)を付与し、更に、直線ダイ出口に設置したダイス(孔φ0.6mm)を通すことで、実施例5のFRTPを得た。
以上の実施例1〜5と比較例1〜3における素材、加工条件、ならびに、評価結果を表1に記載する。
【0015】
【表1】
【0016】
また、実施例ならびに比較例の加工について参考図を図1に記載する。
実施例1〜3は本発明の複合材料であり、加工の際に引取速度を変更することで樹脂との接触時間を変更したものである。何れも設定の繊維含有率63.8wt%に近いものが得られ、繊維表面に樹脂の付着が多く認められた。
実施例4も本発明の複合材料であり、実施例1に対して樹脂を変更したものである。これも設定の繊維含有率63.8wt%に近いものが得られていた。
実施例5も本発明の複合材料であり、強化繊維ならびに樹脂を変更したものである。これも設定の繊維含有率27.3wt%に近いものが得られ、繊維表面に樹脂の付着が多く認められた。
【0017】
比較例1は実施例1に対して引取速度を上げることで、樹脂との接触時間を短くしたものである。繊維含有率は設定63.8wt%に対して値が増加しており、樹脂の付着が減り、空隙が多いことが分かる。また、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
比較例2は実施例1に対して曲面ダイを使用せずに得たものである。繊維含有率は設定の63.8wt%に対して値が増加しており、空隙が多いことが分かる。また、樹脂の付着が減り、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
比較例3は実施例1に対して樹脂温度を変更して得たものである。比較例1〜2と同様に繊維含有率は設定の63.8wt%に対して値が増加しており、空隙が多いことが分かる。また、樹脂の付着が減り、含浸状態からも繊維の間に樹脂が入っていないことが分かる。更に、繊維表面に樹脂の付着はほとんど認められなかった。
【0018】
以上のように少なくとも1種類の高強度、高弾性率の有機繊維を含む繊維が開繊された状態で、該有機繊維が溶融、あるいは、軟化する温度状態にある樹脂中を通過させることで、該繊維の表面が該樹脂で実質的に覆われた複合材料は簡易な工程により良好な含浸状態が得られるとに共に繊維と樹脂の接着状態が良好である。また、基本的に接着状態に課題があるポリオレフィン系樹脂を適用する場合、密度が小さいためより軽量の複合材料が得られる。
【0019】
このような複合材料は光ファイバーやワイヤーハーネスなどを補強する補強材として、海洋や湖などで使用するロープ、自転車のスポークやテニスのガットなどの素材、ジオテキスタイル用の線材、ヨット、カヌー、グライダーなどのレジャースポーツ用品のラインなどに適用することができる。
【0020】
【発明の効果】
本発明によると、簡易な工程により強化繊維に対する樹脂の含浸状態が良好で、しかも、基本的に接着状態に課題があるポリオレフィン系樹脂を適用する場合においても、接着状態が良好な複合材料を提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に適用する実施例の一形態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 予備開繊ローラー
2 曲面ダイ
3 直線ダイ
4 引取ローラー
5 樹脂の圧入方向
6 糸道
Claims (6)
- 高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維が開繊状態で樹脂に被覆されてなることを特徴とする複合材料。
- 有機繊維が強度20cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであることを特徴とする請求項1記載の複合材料。
- 有機繊維が超高分子量ポリエチレン繊維であることを特徴とする請求項1記載の複合材料。
- 高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊し、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする複合材料の製造方法。
- 高強度高弾性率の有機繊維を含む繊維を含む繊維を開繊した状態で曲面ダイを通過させた後、直線ダイを通過させ、次いで前記有機繊維の溶融もしくは軟化する温度以上で樹脂を付与することを特徴とする請求項4記載の複合材料の製造方法。
- 有機繊維の溶融もしくは軟化する温度より5〜25℃高い温度で0.1sec以上樹脂を付与することを特徴とする請求項4記載の複合材料の製造方法。
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JP2002211520A JP2004050634A (ja) | 2002-07-19 | 2002-07-19 | 軽量複合材料及びその製造方法 |
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JP2014065904A (ja) * | 2012-09-06 | 2014-04-17 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 射出成形体、及び射出成形体を製造する方法 |
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2002
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