JP2004049965A - 放射線を用いた物体の処理方法および該処理方法を用いた血液浄化用モジュールの製造方法 - Google Patents

放射線を用いた物体の処理方法および該処理方法を用いた血液浄化用モジュールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、被処理物の材質の変性、劣化を起こしにくい放射線処理法を提供し、さらに該処理方法を用いた血液浄化用モジュールの製造方法を提供することである。
【解決手段】炭酸ガスと水を共存させた環境下で物体に放射線照射することを特徴とする放射線を用いた物体の処理方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は放射線を用いた処理方法に関する。特に、人工腎臓などの医療用具の製造時に好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
医療用具を滅菌する代表的な方法としては、エチレンオキサイドガス法、高圧蒸気滅菌法、放射線滅菌法などがある。近年は残留毒性の少なさや簡便さの点から、高圧蒸気滅菌法や放射線滅菌法が多用されている。
【0003】
しかしながら、高圧蒸気滅菌法の適用は耐熱性にすぐれた膜および装置材料のものに限定される。また、放射線滅菌法も、放射線により変性、劣化しやすい材質を含んだものは不適当である。
【0004】
放射線照射により変性や劣化する例として、セルロースやセルロースアセテート類、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0005】
セルロースやセルロースアセテート類を分離膜素材に用いた場合、放射線照射により膜劣化が生じる。セルロースやセルロースアセテート類の放射線による膜劣化を防ぐために、分離膜装置内を実質的に乾燥状態にし、炭酸ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気下で放射線照射する方法(特公平3−10343)が開示されている。しかしながら、この方法では特に血液浄化用分離膜の場合は、実用に際しては分離膜内に気泡が残らないように丁寧に脱泡しなければならないため、多くの時間と手間がかかるという欠点がある。
【0006】
また、ポリスルホン系ポリマーは耐放射線性および耐熱性に優れているが、特に血液浄化用分離膜として使用されるときは、血液適合性を付与するためにポリビニルピロリドンなどの親水性高分子をブレンドして用いられている。分離膜にブレンドされているポリビニルピロリドンは、放射線照射により架橋し、不溶化する。不溶化することで、血液接触時にポリビニルピロリドンの血液への溶出を低減することができると考えられているが、ポリビニルピロリドンが架橋しすぎると、血液が膜表面に接触した際に血小板が活性化することが知られている(特開平9−323031)。特許2649224には、放射線に変性しやすいポリマーを用いた体液処理装置内に、フェニルサリチレートやピロ亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤を添加することで、その変性を防ぐことができると記載されている。しかしながらこの方法では、添加化合物の毒性が問題である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、材質の変性、劣化を起こしにくい放射線処理法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、炭酸ガスを溶解させた水に分離膜を浸漬、もしくは、湿潤させた状態で放射線照射することを特徴とする処理方法である。すなわち、本発明は、下記の(1)〜(15)の構成によって達成される。
(1)炭酸ガスと水を共存させた環境下で物体に放射線照射することを特徴とする放射線を用いた物体の処理方法。
(2)炭酸ガスを溶解させた水に物体を浸漬、もしくは、湿潤させた状態で該物体に放射線照射することを特徴とする放射線を用いた物体の処理方法。
(3)炭酸ガスを溶解させた水の遊離二酸化炭素濃度が50ppm以上であることを特徴とする2に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(4)該物体が分離膜であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(5)該分離膜がモジュールに内蔵されて処理されることを特徴とする(4)に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(6)該分離膜が中空糸膜であることを特徴とする(4)または(5)に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(7)該分離膜の素材がポリスルホン系ポリマーであることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(8)該分離膜の素材に0.1wt%以上の親水性高分子が含まれていることを特徴とする(4)〜(7)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(9)該分離膜の表面に15wt%以上の親水性高分子が含まれていることを特徴とする(4)〜(8)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(10)該分離膜の表面が中空糸膜の内表面であることを特徴とする(9)に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(11)該物体が血液浄化用モジュールであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(12)該物体が人工腎臓用モジュールであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
(13)(4)〜(10)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法により分離膜が処理されることを特徴とする分離膜の製造方法。
(14)血液浄化モジュールの製造方法であって、(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法を製造工程に含むことを特徴とする血液浄化モジュールの製造方法。
(15)人工腎臓用モジュールの製造方法であって、(1)〜(3)のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法を製造工程に含むことを特徴とする人工腎臓モジュールの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の方法では、物体に炭酸ガスと水が共存する環境下で放射線照射されるが、物体を、炭酸ガスを溶解させた水に浸漬、もしくは、湿潤させた状態で放射線照射を行うことが好ましい。ここでいう炭酸ガスと水が共存する環境下とは、照射される物体が炭酸ガスおよび水に接触している状態をいい、物体とは、放射線照射されるものをいい、特に放射線照射による変性を抑えたいものをさす。本発明に係る方法は、例えば、分離膜や分離膜を内蔵したモジュールなどに対して好適に用いられ、特に、血液浄化用モジュールや人工腎臓用モジュールを放射線滅菌する際に好適に用いられる。
【0010】
また、ここでいう湿潤状態とは、物体を浸漬させていた水溶液を除去し、かつ乾燥させない状態のことを言う。特に限定されるものではないが、物体の乾燥状態に対して1重量%以上の水分を含んでいることが好ましい。また、物体が微細構造を有する分離膜である場合は、その空孔部分に炭酸ガス溶解水が充満されていることがのぞましい。
【0011】
放射線はα線、β線、γ線、X線、紫外線、電子線などが用いられるが、特にγ線は、浸透性が高いため、膜を組み込んだ装置の状態でも滅菌が可能であり、好適に用いられる。吸収線量は10〜50kGy程度が好ましい。この際、吸収線量は線量測定ラベルをモジュールの側面に貼り付けるなどの方法で測定することができる。
【0012】
放射線照射前の遊離炭酸ガス濃度は50ppm未満であると、膜の変性、劣化を効果的に抑制しにくいので、50ppm以上であることが好ましい。
【0013】
遊離炭酸ガス濃度は、水に溶解しているものが炭酸ガスのみの場合は、pHや、全無機炭素濃度から算出できる。pHからの算出式は以下によって導かれる。
【0014】
CO + HO → H + HCO  (1)
HCO  → H + HCO 2− (2)
(1)式の平衡定数pK=6.35(25℃)、(2)式の平衡定数K=10.33(25℃)である。したがって、K<<Kから、(2)の平衡は無視できる。そこで、炭酸ガス濃度は以下の式で近似することができる。
【0015】
=[H][HCO ]/[CO]=[H/[CO
[CO]=[H/K
全無機炭素濃度の場合は、塩酸などの強酸を滴下し、発生した炭酸ガスの濃度を測定すればよい。
【0016】
本発明に係る方法に用いられる炭酸ガスを溶解させた水に、他の抗酸化剤を溶解させるのは好ましい態様である。ただし、血液浄化用途に用いる際は、その安全性を考慮する必要があるため、毒性の低いものが好適に用いられる。
【0017】
炭酸ガスと水を共存させた環境下で物体に放射線照射するための具体的な手段については特に限定しないが、簡便な方法の例として、密閉容器に被処理物である物体と炭酸ガスと水を充填し、放射線を照射することが挙げられる。例えば、人工腎臓の製品のようなモジュール形態のものに、炭酸ガスと水を充填し、放射線を照射することは、滅菌処理とかねることができるため、好ましい方法である。
【0018】
分離膜の形態は特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜などの形態で用いられる。
【0019】
本発明の分離膜となる素材は、特に限定しないが、医療用に用いられている素材が好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、セルロース系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリウレタンなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、膜に成形したときの膜性能に優れているため、好適に用いられる。
【0020】
本発明で用いられるポリスルホンは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)、(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。
【0021】
【化1】
Figure 2004049965
【0022】
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンP−1700、P−3500(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。又、本発明で用いられるポリスルホンは上記式(1)及び/又は(2)で表される繰り返し単位のみからなるポリマーが好適ではあるが、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合していても良い。特に限定するものではないが、他の共重合モノマーは10重量%以下であることが好ましい。また、ポリスルホンは疎水性の高分子であるため、血液と接触するような場合は、その接触面を親水性化することが好ましい。親水化の方法としては、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどのポリスルホン系高分子との相溶性に優れる親水性高分子を分離膜の製膜原液に添加したり、血液との接触面を親水性の化合物でコーティングすることにより達成できる。
【0023】
放射線照射によって変性、劣化しやすい材質のものとして、相当量の照射線量、例えば、滅菌に必要な照射線量が当てられた際に、イオン、励起分子、ラジカルなどを生成し、主鎖の切断、鎖間の架橋および側鎖グループの分解を起こす高分子化合物などがあげられる。具体的には、セルロースやセルロースアセテート類などの放射線崩壊型高分子や、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどの放射線架橋型高分子などが挙げられる。分離膜中にセルロースやセルロースアセテート類などの放射線崩壊型高分子がある場合、放射線照射により、膜が劣化することがある。ここでいう、膜の劣化とは膜の耐圧性の低下や、膜の分離能の低下など分離膜としての機能の低下をいう。また、分離膜が血液浄化用分離膜として使用され、分離膜中にポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどの親水性高分子でかつ放射線架橋型高分子がある場合、放射線照射により、膜の血液適合性が低下することがある。ポリビニルピロリドンなどの親水性高分子は、血液との接触面において、膨潤した水和ゲル層を形成し、凝固関連タンパク質等の付着を抑制していると考えられている。これら親水性高分子が架橋しすぎると、ゲルの水和度が減少し、膜の血液適合性が低下すると考えられる。ゲルの水和度は、ゲルの含水率によってあらわすことができる。ゲルの含水率は下記式で示される。
【0024】
ゲル含水率(%)=(水で膨潤したゲル重量―乾燥したゲル重量)÷水で膨潤したゲル重量×100
例えば、ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンからなる中空糸膜の場合、以下の方法で中空糸中のゲル含水率を測定することができる。
【0025】
25kGyでγ線照射した中空糸を凍結し、12時間室温にて減圧乾燥する。このとき、加熱すると中空糸中のポリビニルピロリドンが熱架橋する可能性があるため、中空糸の乾燥において、熱乾燥してはならない。乾燥した中空糸1gをN,N−ジメチルアセトアミド50mlに入れ、25℃、5時間充分な撹拌を行う。γ線照射による架橋等によって、N,N−ジメチルアセトアミドに不溶のゲルが残る。このN,N−ジメチルアセトアミドに不溶のゲルを濾過し、さらに、N,N−ジメチルアセトアミドで充分洗浄し、N,N−ジメチルアセトアミド可溶分を取り除く。その後、ゲル中のN,N−ジメチルアセトアミドを取り除くために、純水で充分洗浄する。得られた不溶分に付着している水を切り、水に膨潤した状態での重量を測定し、その不溶分を105℃で16時間乾燥し、再び重量を測定する。これらの値を上記数式に代入し、中空糸中のゲル含水率を求めることができる。
【0026】
最近、人工腎臓として、市販されているポリスルホン膜は親水性の高分子であるポリビニルピロリドンが含まれていることが多く、本発明を膜重量に対して、0.1wt%以上のポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系膜もしくは、膜の表面、中空糸膜の場合には内表面に1wt%以上のポリビニルピロリドンを含むポリスルホン系膜に適用することにより安全でかつ優れた血液適合性のものを得ることができる。また、ポリビニルピロリドンのような親水性高分子は、血液と接触する膜表面にあれば、血液適合性が達成される。
【0027】
表面の親水性高分子量はX線光電子分光(ESCA)によって決定される。例えば、ポリスルホンとポリビニルピロリドンからなる材料の場合、表面のポリビニルピロリドン量は、ESCAの測定により得た、C1s、N1s、S2pスペクトルの面積強度より、装置付属の相対感度係数を用いて窒素の表面量(A)と硫黄の表面量(B)を求め、
表面ポリビニルピロリドン量(wt%)=A×100/(A×111+B×442)
より算出できる。X線の入射角に対する検出器の角度を変えることによって、検出深さを変えることができる。90度にて測定を行った際の親水性高分子が表面に15wt%以上存在すれば、良好な血液適合性が得られるため好ましい。特に人工腎臓に用いられる中空糸膜の場合は、中空糸膜内部を血液が流れるため、中空糸内表面に親水性高分子が存在すればよい。
【0028】
本発明の血液浄化用モジュールとは、血液を体外に循環させる際に、吸着や濾過、拡散によって血中の老廃物や有害物質を取り除く機能を有したモジュールのことをいい、人工腎臓や外毒素吸着カラムなどがある。
【0029】
また、人工腎臓用モジュールとしては、コイル型、平板型、中空糸型があるが、処理効率などの点から、現在では中空糸型が広く普及している。
【0030】
血液浄化用モジュールに内蔵される分離膜の形態は特に限定されるものではなく、平膜、中空糸膜などの形態で用いられる。しかし、処理効率すなわち血液と接触する表面積の確保などを考慮すると中空糸膜型であることが好ましい。
【0031】
血液浄化用モジュールの製造方法としては、その用途により、種々の方法が知られているが、大まかな工程としては、血液浄化用の分離膜の製造工程と、その分離膜をモジュールに組み込むという工程にわけることができる。本発明にかかる放射線を用いた物体の処理方法は、分離膜の製造工程に用いても良いし、モジュールに組み込まれた後に用いても良い。
【0032】
本発明にかかる人工腎臓用モジュールの製造方法の一態様例を示す。
【0033】
人工腎臓用モジュールに内蔵される中空糸膜の製造方法としては、一方法としてつぎのような方法がある。すなわち、ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)を良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および良溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。この際、乾式部の湿度が影響を与えるために、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を速め、孔径拡大し、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を減らすことも可能である。ただし、相対湿度が高すぎると外表面での原液凝固が支配的になり、かえって孔径が小さくなり、結果として透析の際の透過・拡散抵抗を増大する傾向がある。そのため、相対湿度としては60〜90%が好適である。また、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を基本とする組成からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
【0034】
中空糸膜モジュールの製造方法としては、特に限定されないが、一例を示すと次の通りである。まず、中空糸膜を必要な長さに切断し、必要本数を束ねた後、筒状ケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
【0035】
上記のようにして得られた中空糸膜モジュール内を炭酸ガス水で充填し、もしくは湿潤させた状態で、γ線照射し人工腎臓用モジュールとするが、中空糸膜を炭酸ガス水に浸漬または湿潤させて、γ線照射したのち、モジュールに組み込み、人工腎臓用モジュールとしてもよい。
【0036】
以下に、実施例および参考例により本発明方法を具体的に説明する。ただし、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
1.ミニモジュールの作成
ポリスルホン(テイジンアモコ社製ユーデルP−3500)18部、ポリビニルピロリドン(BASF社製K30)9部をN,N−ジメチルアセトアミド72部、水1部に加え、90℃14時間加熱溶解した。この製膜原液を外径0.3mm、内径0.2mmのオリフィス型二重円筒型口金より吐出し芯液としてジメチルアセトアミド58部、水42部からなる溶液を吐出させ、乾式長350mmを通過した後、水100%の凝固浴に導き中空糸を得た。得られた中空糸の透水性は700ml/m/hr/mmHg、元素分析を用いて窒素を分析することにより求めたPVP量は5wt%、XPSにて、励起X線:monochromatic Al K α1,2線(1486.6eV)、X線径:1mm、X線出力:10kV 20mA、光電子脱出角度:90°の条件で、中空糸内表面の窒素を分析することにより求めたPVP量は30wt%であった。得られた中空糸膜を70本束ね、中空糸中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をガラス管モジュールケースに固定し、ミニモジュールを作成した。
【0038】
2.実施例1
1.で作製したミニモジュールに遊離炭酸ガス濃度が400ppmである水溶液を充填して、25kGyにてγ線照射した。該ミニモジュールの直径は約7mm、長さは12cmであった。この中空糸から得られたゲル含水率は97.7%であった。
【0039】
3.実施例2
1.で作製したミニモジュールに遊離炭酸ガス濃度が100ppmである水溶液を充填して、25kGyにてγ線照射した。この中空糸から得られたゲル含水率は96.5%であった。
【0040】
4.比較例1
1.で作製したミニモジュールに脱気した水(遊離炭酸ガス濃度1ppm以下)を充填して、25kGyにてγ線照射した。この中空糸から得られたゲル含水率は95.0%であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明の物体の処理方法および製造方法は、血液浄化器などの用途に用いられ、特に放射線照射による膜の変性や劣化を抑制することができるという効果を有する。特に、血液浄化器に分離膜が使用され、分離膜中にポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールなどの親水性高分子でかつ放射線架橋型高分子がある場合、本発明にかかる処理方法により、膜の血液適合性が低下を抑えることができる。ポリビニルピロリドンなどの親水性高分子は、血液との接触面において、膨潤した水和ゲル層を形成し、凝固関連タンパク質等の付着を抑制していると考えられており、これら親水性高分子が架橋しすぎると、ゲルの水和度(ゲル含水率)が減少し、膜の血液適合性が低下すると考えられるが、本発明にかかる処理方法ならびに製造方法によれば、ゲル水和度の減少を抑制することができる。

Claims (15)

  1. 炭酸ガスと水を共存させた環境下で物体に放射線照射することを特徴とする放射線を用いた物体の処理方法。
  2. 炭酸ガスを溶解させた水に物体を浸漬、もしくは、湿潤させた状態で該物体に放射線照射することを特徴とする放射線を用いた物体の処理方法。
  3. 炭酸ガスを溶解させた水の遊離二酸化炭素濃度が50ppm以上であることを特徴とする請求項2に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  4. 該物体が分離膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  5. 該分離膜がモジュールに内蔵されて処理されることを特徴とする請求項4に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  6. 該分離膜が中空糸膜であることを特徴とする請求項4または5に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  7. 該分離膜の素材がポリスルホン系ポリマーであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  8. 該分離膜の素材に0.1wt%以上の親水性高分子が含まれていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  9. 該分離膜の表面に15wt%以上の親水性高分子が含まれていることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  10. 該分離膜の表面が中空糸膜の内表面であることを特徴とする請求項9に記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  11. 該物体が血液浄化用モジュールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  12. 該物体が人工腎臓用モジュールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法。
  13. 請求項4〜10のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法により分離膜が処理されることを特徴とする分離膜の製造方法。
  14. 血液浄化モジュールの製造方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法を製造工程に含むことを特徴とする血液浄化モジュールの製造方法。
  15. 人工腎臓用モジュールの製造方法であって、請求項1〜3のいずれかに記載の放射線を用いた物体の処理方法を製造工程に含むことを特徴とする人工腎臓モジュールの製造方法。
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