JP2004048201A - 無線中継方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータとして目標調整量への追従を決めて、干渉波をキャンセルすることにより、干渉波の除去精度を向上させる。
【解決手段】DSP19は、相関演算で得られた相関信号の相関値を、最大相関値を1として規格化し、その値を忘却係数として重み付け演算を行って出力信号を求め、その位相から180度シフトした信号を演算し、現在の干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める演算を行い、かつこの次の干渉抑圧信号を生成するように、ATT15c及びPS15bの調整を行い、さらにこの干渉抑圧信号を方向性結合器11で受信信号と結合させることで、干渉波をキャンセルする。
【選択図】 図1
【解決手段】DSP19は、相関演算で得られた相関信号の相関値を、最大相関値を1として規格化し、その値を忘却係数として重み付け演算を行って出力信号を求め、その位相から180度シフトした信号を演算し、現在の干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める演算を行い、かつこの次の干渉抑圧信号を生成するように、ATT15c及びPS15bの調整を行い、さらにこの干渉抑圧信号を方向性結合器11で受信信号と結合させることで、干渉波をキャンセルする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一方のアンテナから受信した希望波を増幅して他方のアンテナから送信することで希望波の中継を行う無線中継方法に関し、特にアンテナ間に回り込む干渉波を抑圧する無線中継方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の無線中継方式は、例えば移動体通信などの無線基地局と携帯電話の移動局間において、山岳地域や平野部であってもビル内あるいはトンネル内などの比較的電波の届きにくい場所で用いられている。このような無線中継装置には、符号分割多元接続方式あるいは符号分割多重方式を用いたリピータ装置があり、このリピータ装置は、基地局からの電波が届く、高台やビルの屋上に設置され、対基地局用の送受信アンテナと対移動局用の送受信アンテナを介して基地局と移動局間の希望波の無線中継を行っていた。通常、これらのアンテナは、一方のアンテナから中継送信された電波が他方のアンテナに再受信されないように、十分に離れた場所に設置することが必要となる。
【0003】
ところが、例えばビル影などの電波の届きにくい場所での対策として、リピータ装置をビルの屋上に設置することがあるが、このような場合には、対基地局用のアンテナと対移動局用のアンテナとを設置スペースの関係から近接した場所に設置したい状況が生じることがある。この状況には、一方のアンテナから送信された電波は、他方のアンテナに受信される、いわゆる電波の回り込みという現象が生じてしまう。このリピータ装置に再受信された電波(干渉波)は、希望波と同一周波数であるため、回り込んだ受信信号は、干渉信号となってリピータ装置の中継に影響を与え、希望波の伝送効率が低下する原因となる。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、従来では、干渉抑圧波を作成して回り込んでくる干渉波をキャンセルするものがあった。この干渉抑圧波を作成するのに必要な情報としては、干渉波伝搬路の位相や振幅の変化量が挙げられ、また干渉波の占有周波数帯域が広帯域の場合には、この干渉波の遅延量の情報も必要となっていた。
【0005】
このような同一周波数帯域のエコーキャンセラーでは、2つの方向性結合器間に希望波の中継を行う主線系が接続されるとともに、この方向性結合器間に別経路で、干渉波に対して同振幅、逆位相の干渉抑圧波を作成する干渉抑圧部が設けられている。この主線系および別経路には、相関演算器(以下、「DSP」という)が接続されており、このDSPは、一方のアンテナからの受信信号と他方のアンテナから送信される信号との相関演算を行って回り込み残差成分を検出し、その検出結果に基づいて干渉抑圧部が干渉抑圧波の位相、振幅の調整を行っている。
【0006】
すなわち、図6の複素ベクトルの図に示すように、各信号は、直交I,Q信号として表されており、DSPは、受信アンテナ側の方向性結合器の出力(希望波+回り込み干渉波+送信アンテナ側の方向性接合器と干渉抑圧部を介して出力される信号の合成)である直交I,Q信号と、送信アンテナ側の方向性結合器の出力(送信アンテナに出力される干渉波の元となる信号)である直交I,Q信号との複素相関を行うことで、主線系を通る残留相関信号(I,Q)を検出する。
【0007】
この調整は、通常フィードバック制御によって行われるため、その適応アルゴリズムでは、目標調整量への追従を決めるためのパラメータとして忘却係数を用いる。そして、このフィードバック制御では、忘却係数を小さく設定すると、目標値へ収束するのに時間がかかるが、より安定した制御が望め、またこの忘却係数を大きく設定すると、収束点に近づく時間は速くなるが、収束点に安定しにくくなるという特徴があった。
【0008】
そこで、従来では、干渉波伝搬路変動の大きさに合わせて最適な忘却係数を設定する方法があった。しかし、干渉波伝搬路変動は、装置を設置する場所の環境条件により大きく異なり、なかなか一律の忘却係数を決めることは難しいという実状があった。
【0009】
そこで、装置の起動時やキャンセル動作不良時など収束点に速く近づける時は、大きな値の忘却係数を用いて、収束点に近づいてきた時には、小さな忘却係数に切り替える方法が用いられていた。すなわち、図7のフローチャートに示すように、まず上記のように検出された残留相関信号の絶対値を相関値とする(ステップ101)。次に、この相関値と予め設定した閾値であるスレッショホルド値とを比較する(ステップ102)。
【0010】
そして、相関値がスレッショホルド値より大きい範囲の場合には、粗調整用の大きな忘却係数α1を選択し(ステップ103)、現在の干渉抑圧信号に残留相関信号の位相から180度シフトした値を用いて、次の干渉抑圧信号を生成していた(ステップ105)。
【0011】
また、この相関値がスレッショホルド値より小さい範囲の場合には、微調整用の小さな忘却係数α2を選択し(ステップ104)、現在の干渉抑圧信号に残留相関信号の位相から180度シフトした値を用いて、次の干渉抑圧信号を生成していた(ステップ105)。すなわち、この忘却係数は、α1>α2となっていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、この忘却係数を切り替える判定条件によっては、伝搬路の変動によって発生する部分的な極小点に向かい、その結果、干渉波のキャンセルが最適点に収束せず、十分なキャンセル量が確保できなくなってしまうという問題点があった。このため、判定条件が複雑化してしまい、結局キャンセルが最適点に収束するのに時間がかかってしまうことがあった。
【0013】
この発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータとして目標調整量への追従を決めて、干渉波をキャンセルすることにより、干渉波の除去精度を向上することができる無線中継方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の請求項1では、第1のアンテナから受信された受信信号を遅延させた後に第2のアンテナから送信するとともに、前記第1のアンテナからの受信信号と前記第2のアンテナから送信される信号との相関演算を行い、該演算結果から前記アンテナ間を回り込む干渉信号を抑圧する干渉抑圧信号を生成する無線中継方法において、前記相関演算によって得られる相関信号を検知し、該得られた相関信号の絶対値を求め、該絶対値を相関値とする相関値算出工程と、前記求めた相関値を、所定の相関値を1として規格化し、その値を係数として求める係数算出工程と、前記相関信号を積分して複素数の出力信号を得る複素数算出工程と、前記得られた出力信号に前記係数で重み付けする重み付け工程と、前記重み付けされた出力信号を180度シフトした出力信号を求めるシフト工程と、前記シフトされた出力信号を前記干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める信号付加工程を含むことを特徴とする無線中継方法が提供される。
【0015】
この発明によれば、相関演算によって得られた相関信号の相関値を、予め定めた所定の相関値を1以下として規格化し、その値を目標調整量への追従を決めるためのパラメータである忘却係数として目標値の追従を行うことによって、干渉抑圧信号に重み付けを行い、アンテナ間を回りこむ干渉波をキャンセルする。
【0016】
この発明の請求項2では、上記発明において、前記係数算出工程では、最大相関値を前記所定の相関値に設定して、前記求めた相関値を1を超えない範囲で規格化することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、最大相関値を1として相関演算によって得られた相関信号の相関値を規格化することで、得られる相関値を、1を超えないパラメータとして忘却係数に設定する。
【0018】
この発明の請求項3では、上記発明において、前記係数算出工程では、前記求めた相関値を1から0の範囲内の値に規格化することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、例えば最大相関値を1として、かつ得られる相関値を1から0の範囲内の値に規格化することで、干渉が大きく残っている場合には、相関値が大きく検出されるので、忘却係数も1のほうに近づいて大きくなり、収束状態へ速く制御しようとし、次第に干渉が小さくなってくると、相関値は小さくなるので、それに合わせて忘却係数も0の方に近づいて小さな値になる。
【0020】
この発明の請求項4では、上記発明において、前記無線中継方法では、前記干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と同振幅になるように、可変減衰器を調整する減衰調整工程と、前記同振幅にされた干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と逆位相になるように可変位相器を調整する位相調整工程とをさらに含み、前記減衰調整工程および位相調整工程では、前記信号付加工程で求められた次の干渉抑圧信号を生成するように、前記可変減衰器及び可変位相器を調整する。
【0021】
この発明によれば、相関信号を積分して得られた出力信号の絶対値を求め、かつ規格化された忘却係数により重み付け演算を行うとともに、その位相から180度シフトした信号を演算し、現在の干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める演算を行うとともに、この求めた次の干渉抑圧信号を生成するように、可変減衰器及び可変位相器の調整を行う。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図1から図5の添付図面を参照して、この発明にかかる無線中継方法の好適な実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の一実施例の構成を示す構成図である。図において、この実施例は、例えば符号分割多元接続方式のように自己相関特性に特徴がある信号を用いた場合の構成例であり、増幅部12と方向性結合器13との間に遅延回路18を接続させ、受信信号に1チップ、例えば拡散符号速度が4Mchip/secの場合は250nsec以上の遅延量を与えて、受信信号と干渉信号の相関をなくしている。
【0024】
この他に、この実施例では、受信信号の入力を制限するスイッチ(SW)1と、送信信号の出力を制限するスイッチ(SW)2とを設け、相関演算器(DPS)19によってこれらSW1,2の切り替え制御を行っている。すなわち、DPS19は、図1に示すように、受信アンテナ10と方向性結合器11とを接続させるとともに、方向性結合器13と送信アンテナ16とを接続させるために、これらSW1,2をオン状態にする切り替え制御を行い、方向性結合器13から分岐された干渉参照信号(信号▲1▼)と、空間を回り込んだ方向性結合器11の出力信号(信号▲2▼)とを取り込む。さらに、DPS19は、この信号▲1▼と信号▲2▼との相関演算により、信号▲1▼に対する信号▲2▼の時間差Aを求める。
【0025】
また、このDPS19は、方向性結合器13と送信アンテナ16との接続を断にするために、SW2をオフ状態にする切り替え制御を行い、上述した信号▲1▼と、干渉抑圧部15を通過した方向性結合器11の出力信号(信号▲3▼)とを取り込む。さらに、DPS19は、この信号▲1▼と信号▲3▼との相関演算により、信号▲1▼に対する信号▲3▼の時間差Bを求める。
【0026】
そして、この求めた時間差Aと時間差Bの差A−Bが干渉波伝搬路の遅延量になるので、DPS19は、干渉抑圧部15の遅延回路15aをこの遅延量に制御する。すなわち、DPS19は、方向性結合器11からの入力ラインに対して時間をずらしながら信号を取り込むと、図3に示すように、ある時間で信号▲2▼と信号▲3▼のスペクトルが急峻に立ち上がって相関値が立つ。この信号▲2▼と信号▲3▼の時間差Tが干渉波伝搬路の遅延量になる。
【0027】
したがって、DPS19は、これら時間をモニタし、その時間差分(信号▲2▼の相関値が立った時間から信号▲3▼の相関値が立った時間の差)だけ、遅延回路15aを調整して、信号▲3▼を遅延させることで、干渉参照信号を生成する。そして、この干渉参照信号を方向性結合器11で受信信号に結合させることで、干渉信号をキャンセルする。
【0028】
なお、干渉抑圧部15は、この遅延回路15aと、可変位相器(PS)15bと、可変減衰器(ATT)15cとから構成されており、DPS19は、このPS15bおよびATT15cの設定を可変制御して、入力する干渉参照信号の位相や振幅が、干渉信号と逆位相、同振幅になるように調整している。この他に、DPS19は、増幅部12の利得の制御も行っている。
【0029】
また、DPS19は、方向性結合器11から分岐されて取り込まれた出力信号、すなわち希望波と信号▲2▼と信号▲3▼を合成し、この合成信号である直交I,Q信号を得るとともに、方向性結合器13から分岐されて取り込まれた出力信号、すなわち干渉波の元となる信号▲1▼である直交I,Q信号を得ている。このDPS19は、この合成信号である直行I,Q信号と、信号▲1▼である直交I,Q信号との複素相関を行って、主線系を通る残留相関信号を生成している(図5の複素ベクトル参照)。
【0030】
この場合、複素相関演算で得られる相関値は、キャンセル量が小さいとき、つまり回り込み干渉波がまだ大きい場合は大きくなり、また十分なキャンセル量が取れたとき、つまり回り込み干渉波がほとんどなくなった場合は小さくなる。そこで、この実施例では、所定の相関値を1以下の値として規格化し、この値を目標調整量への追従を決めるためのパラメータである忘却係数として設定する。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在する場合では、0.6/1.2/2.4のいずれか一つを1以下の値、例えば0.8で規格化することを示している。
【0031】
さらに特化すれば、最大の相関値を1以下の値として規格化し、この値を忘却係数として設定しても良い。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在する場合では、最大の2.4を1以下の値、例えば0.8で規格化することを示している。
【0032】
さらに特化すれば、この得られた相関値を1から0の範囲内の値に規格化するのが好ましい。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在し、かつ1.2を1で規格化した場合においても、2.4を1として忘却係数に設定する。つまり、1以上の忘却係数はすべて1とすることを示している。そして、この忘却係数を用いて干渉抑圧信号に重み付けを行うことで、回り込み干渉波をキャンセルしていくものである。
【0033】
すなわち、この実施例のDSP19では、干渉が大きく残っている場合には、相関値が大きく検出されるので、忘却係数も1に近い大きな値になり、収束状態へ速く制御しようと働く。そして、次第にキャンセル量が大きくなってくると、相関値も1の近辺の値から0の近辺の値にだんだん移行して小さくなるので、それに合わせて忘却係数も小さくなり、DSP19では、収束状態に徐々に近づくように制御しようと働き、極めの細かい安定した追従が行われるようになる。
【0034】
次に、このDSP19によるフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。図において、DSP19は、まずSW1,SW2をオン状態にするとともに、方向性結合器11,13間の主線系ラインに接続発振が起こらない程度に増幅部12の利得を下げて、ノイズなどの信号レベルの低い信号の通過を阻止する利得制御を行う。さらに、DSP19は、干渉抑圧部15のATT15cを最大減衰量として、ATT15cの信号通過を阻止する。
【0035】
この状態で、DSP19は、方向性結合器11から分岐された受信アンテナ10からの受信信号(希望波と空間を回り込んだ信号▲2▼)および方向性結合器13から分岐された干渉波の元となる信号▲1▼を取り込み(ステップ201)、この信号▲1▼と信号▲2▼との相関演算を行う。
【0036】
次に、DSP19は、SW2をオフ状態に切り替え制御して、干渉抑圧部15のATT15cの減衰量をゼロにして、ATT15cでの信号通過を可能にする。この状態で、方向性結合器13から分岐された信号▲1▼と、干渉抑圧部15を通過した方向性結合器11の信号▲3▼を取り込む(ステップ202)。そして、この信号▲1▼と信号▲3▼との相関演算を行う。ここで、DSP19は、例えばこの信号▲2▼の相関値が立った時間と信号▲3▼の相関が立った時間との時間差を求め、この時間差に基づいて遅延回路15aの遅延時間を設定している。
【0037】
さらに、DSP19は、方向性結合器11の出力、すなわち希望波と信号▲2▼と信号▲3▼の合成波である直交I,Q信号と、方向性結合器13の出力、すなわち干渉波の元となる信号▲1▼である直交I,Q信号との複素相関を行う(ステップ203)。そして、残留相関信号を検出し、その検出された残留相関信号の絶対値を相関値とする(ステップ204)。
【0038】
そして、この実施例では、取りうる最大相関値を1とし、得られた相関値を、1から0の範囲内で規格化して忘却係数μとする(ステップ205)。さらに、残留相関信号を180度シフトした出力信号を生成し、この出力信号に忘却係数で重み付けを行い、さらにこの出力信号を現在の干渉抑圧信号に加えることで次の干渉抑圧信号を生成する(ステップ206)。
【0039】
つまり、DSP19は、図5のDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図に示すように、相関演算で得られた相関信号の相関値を、最大相関値を1として規格化し、その値を忘却係数として重み付け演算を行い、かつその位相から180度シフトした出力信号のベクトルを求め、さらにこの出力信号のベクトルを現在の干渉抑圧信号(抑圧波)のベクトルに物理的に合成して、次の干渉抑圧信号を求める。そして、DSP19は、この演算で得られた次の干渉抑圧信号(次の抑圧波)を生成するように、可変減衰器15cと可変位相器15bの制御を行う。このようにして生成された干渉抑圧信号は、干渉波伝搬路の遅延量に調整されて方向性結合器11に取り込まれ、ここで受信アンテナ10で受信された受信信号に結合させることで、干渉信号をキャンセルする。
【0040】
そして、この実施例では、得られる相関値は、キャンセル量が小さいとき、つまり干渉波がまだ大きい場合には相関値が大きくなるので、忘却係数も大きく規格化され、収束状態へ速く制御されることとなり、次第にキャンセル量が大きくなって、十分なキャンセル量がとれたとき、つまり干渉波がほとんどなくなった場合には相関値が小さくなるので、それに合わせて忘却係数も小さくなり、極めの細かい収束状態への制御へと変わり、より安定した追従が行われるようになる。
【0041】
このように、この実施例では、相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータに設定して目標調整量への追従を決めて、干渉抑制信号を生成し、この干渉抑制信号を干渉信号に結合させることでアンテナ間を回り込む干渉波をキャンセルするので、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0042】
この発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、この実施例では、最大相関値を1として、得られた相関値をこの最大相関値に基づいて規格化するが、この発明はこれに限らず、例えば所定の相関値を1として、得られた相関値をこの所定相関値に基づいて規格化することも可能である。
【0043】
また、実施例では、ATTの減衰量を制御して干渉抑圧部の干渉参照信号通過の有無を設定したが、この発明はこれに限らず、スイッチのオン/オフ制御によって信号通過の有無を設定しても良い。
【0044】
また、この発明の無線中継方法を用いる装置には、例えば図4の構成図に示すように、遅延回路18の代わりに、増幅部12と方向性結合器13間にスイッチ(SW)3を設けるとともに、このSW3を介して変調信号発振器(SG)21が方向性結合器13へ変調信号を出力する構成にすることも可能である。この場合には、外部からの受信信号の代わりに内部のSG21から出力される変調信号を用いて、各信号▲1▼〜▲3▼を出力させてこれら信号間での相関演算を行うとともに、これら信号▲1▼〜▲3▼に基づいて、DSP19が残留相関信号を生成することで、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、一般的に基地局と移動局間の無線中継に用いられる無線中継装置では、基地局側および移動局側の送受信共用のアンテナと、2つの方向性結合器間の主線系と、DSPと、干渉抑圧回路とを2組有し、サーキュレータによって一方のアンテナから受信された信号を別々の主線系を介して他方のアンテナから送信しているが、このような構成の無線中継装置にも、この発明の無線中継方法を用いることができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の請求項1では、相関演算によって得られた相関信号の相関値自体を予め定めた所定の相関値を1以下として規格化し、係数のパラメータとして目標調整量への追従を行うことによって、干渉抑圧信号の重み付けを行い、この干渉抑圧信号を受信された干渉信号に結合させるので、アンテナ間を回り込む干渉波のキャンセルを行い、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0047】
また、この発明の請求項2、3では、最大相関値を1として相関演算によって得られた相関値を規格化することで、得られる相関値を1を超えないパラメータ、好ましくは1から0の範囲内のパラメータとして忘却係数に設定するので、干渉が大きく残っている場合には、忘却係数も1のほうに近づいて大きくなり、収束状態へ速く制御しようとし、次第に干渉が小さくなってくると、忘却係数は0の方に近づいて小さな値になり、収束状態がきめ細かく追従制御されて、干渉波のキャンセルを行うことができ、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0048】
また、この発明の請求項4では、減衰調整工程および位相調整工程において、前記可変減衰器及び可変位相器を調整して、信号付加工程で求められた次の干渉抑圧信号を生成することができるので、この干渉抑圧信号を受信された干渉信号に結合させてアンテナ間を回り込む干渉波のキャンセルを行い、干渉波の除去精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の一実施例の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示したDSPによるフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示した信号▲2▼と信号▲3▼の遅延時間を示す相関特性の特性図である。
【図4】この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の他の実施例の構成を示す構成図である。
【図5】図1に示したDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図である。
【図6】従来例のDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図である。
【図7】従来のフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 受信アンテナ
11,13 方向性結合器
12 増幅部
15 干渉抑圧部
15a,18 遅延回路
15b 可変位相器
15c 可変減衰器
16 送信アンテナ
α1,α2,μ 忘却係数
【発明の属する技術分野】
この発明は、一方のアンテナから受信した希望波を増幅して他方のアンテナから送信することで希望波の中継を行う無線中継方法に関し、特にアンテナ間に回り込む干渉波を抑圧する無線中継方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の無線中継方式は、例えば移動体通信などの無線基地局と携帯電話の移動局間において、山岳地域や平野部であってもビル内あるいはトンネル内などの比較的電波の届きにくい場所で用いられている。このような無線中継装置には、符号分割多元接続方式あるいは符号分割多重方式を用いたリピータ装置があり、このリピータ装置は、基地局からの電波が届く、高台やビルの屋上に設置され、対基地局用の送受信アンテナと対移動局用の送受信アンテナを介して基地局と移動局間の希望波の無線中継を行っていた。通常、これらのアンテナは、一方のアンテナから中継送信された電波が他方のアンテナに再受信されないように、十分に離れた場所に設置することが必要となる。
【0003】
ところが、例えばビル影などの電波の届きにくい場所での対策として、リピータ装置をビルの屋上に設置することがあるが、このような場合には、対基地局用のアンテナと対移動局用のアンテナとを設置スペースの関係から近接した場所に設置したい状況が生じることがある。この状況には、一方のアンテナから送信された電波は、他方のアンテナに受信される、いわゆる電波の回り込みという現象が生じてしまう。このリピータ装置に再受信された電波(干渉波)は、希望波と同一周波数であるため、回り込んだ受信信号は、干渉信号となってリピータ装置の中継に影響を与え、希望波の伝送効率が低下する原因となる。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、従来では、干渉抑圧波を作成して回り込んでくる干渉波をキャンセルするものがあった。この干渉抑圧波を作成するのに必要な情報としては、干渉波伝搬路の位相や振幅の変化量が挙げられ、また干渉波の占有周波数帯域が広帯域の場合には、この干渉波の遅延量の情報も必要となっていた。
【0005】
このような同一周波数帯域のエコーキャンセラーでは、2つの方向性結合器間に希望波の中継を行う主線系が接続されるとともに、この方向性結合器間に別経路で、干渉波に対して同振幅、逆位相の干渉抑圧波を作成する干渉抑圧部が設けられている。この主線系および別経路には、相関演算器(以下、「DSP」という)が接続されており、このDSPは、一方のアンテナからの受信信号と他方のアンテナから送信される信号との相関演算を行って回り込み残差成分を検出し、その検出結果に基づいて干渉抑圧部が干渉抑圧波の位相、振幅の調整を行っている。
【0006】
すなわち、図6の複素ベクトルの図に示すように、各信号は、直交I,Q信号として表されており、DSPは、受信アンテナ側の方向性結合器の出力(希望波+回り込み干渉波+送信アンテナ側の方向性接合器と干渉抑圧部を介して出力される信号の合成)である直交I,Q信号と、送信アンテナ側の方向性結合器の出力(送信アンテナに出力される干渉波の元となる信号)である直交I,Q信号との複素相関を行うことで、主線系を通る残留相関信号(I,Q)を検出する。
【0007】
この調整は、通常フィードバック制御によって行われるため、その適応アルゴリズムでは、目標調整量への追従を決めるためのパラメータとして忘却係数を用いる。そして、このフィードバック制御では、忘却係数を小さく設定すると、目標値へ収束するのに時間がかかるが、より安定した制御が望め、またこの忘却係数を大きく設定すると、収束点に近づく時間は速くなるが、収束点に安定しにくくなるという特徴があった。
【0008】
そこで、従来では、干渉波伝搬路変動の大きさに合わせて最適な忘却係数を設定する方法があった。しかし、干渉波伝搬路変動は、装置を設置する場所の環境条件により大きく異なり、なかなか一律の忘却係数を決めることは難しいという実状があった。
【0009】
そこで、装置の起動時やキャンセル動作不良時など収束点に速く近づける時は、大きな値の忘却係数を用いて、収束点に近づいてきた時には、小さな忘却係数に切り替える方法が用いられていた。すなわち、図7のフローチャートに示すように、まず上記のように検出された残留相関信号の絶対値を相関値とする(ステップ101)。次に、この相関値と予め設定した閾値であるスレッショホルド値とを比較する(ステップ102)。
【0010】
そして、相関値がスレッショホルド値より大きい範囲の場合には、粗調整用の大きな忘却係数α1を選択し(ステップ103)、現在の干渉抑圧信号に残留相関信号の位相から180度シフトした値を用いて、次の干渉抑圧信号を生成していた(ステップ105)。
【0011】
また、この相関値がスレッショホルド値より小さい範囲の場合には、微調整用の小さな忘却係数α2を選択し(ステップ104)、現在の干渉抑圧信号に残留相関信号の位相から180度シフトした値を用いて、次の干渉抑圧信号を生成していた(ステップ105)。すなわち、この忘却係数は、α1>α2となっていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例では、この忘却係数を切り替える判定条件によっては、伝搬路の変動によって発生する部分的な極小点に向かい、その結果、干渉波のキャンセルが最適点に収束せず、十分なキャンセル量が確保できなくなってしまうという問題点があった。このため、判定条件が複雑化してしまい、結局キャンセルが最適点に収束するのに時間がかかってしまうことがあった。
【0013】
この発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータとして目標調整量への追従を決めて、干渉波をキャンセルすることにより、干渉波の除去精度を向上することができる無線中継方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の請求項1では、第1のアンテナから受信された受信信号を遅延させた後に第2のアンテナから送信するとともに、前記第1のアンテナからの受信信号と前記第2のアンテナから送信される信号との相関演算を行い、該演算結果から前記アンテナ間を回り込む干渉信号を抑圧する干渉抑圧信号を生成する無線中継方法において、前記相関演算によって得られる相関信号を検知し、該得られた相関信号の絶対値を求め、該絶対値を相関値とする相関値算出工程と、前記求めた相関値を、所定の相関値を1として規格化し、その値を係数として求める係数算出工程と、前記相関信号を積分して複素数の出力信号を得る複素数算出工程と、前記得られた出力信号に前記係数で重み付けする重み付け工程と、前記重み付けされた出力信号を180度シフトした出力信号を求めるシフト工程と、前記シフトされた出力信号を前記干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める信号付加工程を含むことを特徴とする無線中継方法が提供される。
【0015】
この発明によれば、相関演算によって得られた相関信号の相関値を、予め定めた所定の相関値を1以下として規格化し、その値を目標調整量への追従を決めるためのパラメータである忘却係数として目標値の追従を行うことによって、干渉抑圧信号に重み付けを行い、アンテナ間を回りこむ干渉波をキャンセルする。
【0016】
この発明の請求項2では、上記発明において、前記係数算出工程では、最大相関値を前記所定の相関値に設定して、前記求めた相関値を1を超えない範囲で規格化することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、最大相関値を1として相関演算によって得られた相関信号の相関値を規格化することで、得られる相関値を、1を超えないパラメータとして忘却係数に設定する。
【0018】
この発明の請求項3では、上記発明において、前記係数算出工程では、前記求めた相関値を1から0の範囲内の値に規格化することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、例えば最大相関値を1として、かつ得られる相関値を1から0の範囲内の値に規格化することで、干渉が大きく残っている場合には、相関値が大きく検出されるので、忘却係数も1のほうに近づいて大きくなり、収束状態へ速く制御しようとし、次第に干渉が小さくなってくると、相関値は小さくなるので、それに合わせて忘却係数も0の方に近づいて小さな値になる。
【0020】
この発明の請求項4では、上記発明において、前記無線中継方法では、前記干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と同振幅になるように、可変減衰器を調整する減衰調整工程と、前記同振幅にされた干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と逆位相になるように可変位相器を調整する位相調整工程とをさらに含み、前記減衰調整工程および位相調整工程では、前記信号付加工程で求められた次の干渉抑圧信号を生成するように、前記可変減衰器及び可変位相器を調整する。
【0021】
この発明によれば、相関信号を積分して得られた出力信号の絶対値を求め、かつ規格化された忘却係数により重み付け演算を行うとともに、その位相から180度シフトした信号を演算し、現在の干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める演算を行うとともに、この求めた次の干渉抑圧信号を生成するように、可変減衰器及び可変位相器の調整を行う。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図1から図5の添付図面を参照して、この発明にかかる無線中継方法の好適な実施の形態を説明する。
【0023】
図1は、この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の一実施例の構成を示す構成図である。図において、この実施例は、例えば符号分割多元接続方式のように自己相関特性に特徴がある信号を用いた場合の構成例であり、増幅部12と方向性結合器13との間に遅延回路18を接続させ、受信信号に1チップ、例えば拡散符号速度が4Mchip/secの場合は250nsec以上の遅延量を与えて、受信信号と干渉信号の相関をなくしている。
【0024】
この他に、この実施例では、受信信号の入力を制限するスイッチ(SW)1と、送信信号の出力を制限するスイッチ(SW)2とを設け、相関演算器(DPS)19によってこれらSW1,2の切り替え制御を行っている。すなわち、DPS19は、図1に示すように、受信アンテナ10と方向性結合器11とを接続させるとともに、方向性結合器13と送信アンテナ16とを接続させるために、これらSW1,2をオン状態にする切り替え制御を行い、方向性結合器13から分岐された干渉参照信号(信号▲1▼)と、空間を回り込んだ方向性結合器11の出力信号(信号▲2▼)とを取り込む。さらに、DPS19は、この信号▲1▼と信号▲2▼との相関演算により、信号▲1▼に対する信号▲2▼の時間差Aを求める。
【0025】
また、このDPS19は、方向性結合器13と送信アンテナ16との接続を断にするために、SW2をオフ状態にする切り替え制御を行い、上述した信号▲1▼と、干渉抑圧部15を通過した方向性結合器11の出力信号(信号▲3▼)とを取り込む。さらに、DPS19は、この信号▲1▼と信号▲3▼との相関演算により、信号▲1▼に対する信号▲3▼の時間差Bを求める。
【0026】
そして、この求めた時間差Aと時間差Bの差A−Bが干渉波伝搬路の遅延量になるので、DPS19は、干渉抑圧部15の遅延回路15aをこの遅延量に制御する。すなわち、DPS19は、方向性結合器11からの入力ラインに対して時間をずらしながら信号を取り込むと、図3に示すように、ある時間で信号▲2▼と信号▲3▼のスペクトルが急峻に立ち上がって相関値が立つ。この信号▲2▼と信号▲3▼の時間差Tが干渉波伝搬路の遅延量になる。
【0027】
したがって、DPS19は、これら時間をモニタし、その時間差分(信号▲2▼の相関値が立った時間から信号▲3▼の相関値が立った時間の差)だけ、遅延回路15aを調整して、信号▲3▼を遅延させることで、干渉参照信号を生成する。そして、この干渉参照信号を方向性結合器11で受信信号に結合させることで、干渉信号をキャンセルする。
【0028】
なお、干渉抑圧部15は、この遅延回路15aと、可変位相器(PS)15bと、可変減衰器(ATT)15cとから構成されており、DPS19は、このPS15bおよびATT15cの設定を可変制御して、入力する干渉参照信号の位相や振幅が、干渉信号と逆位相、同振幅になるように調整している。この他に、DPS19は、増幅部12の利得の制御も行っている。
【0029】
また、DPS19は、方向性結合器11から分岐されて取り込まれた出力信号、すなわち希望波と信号▲2▼と信号▲3▼を合成し、この合成信号である直交I,Q信号を得るとともに、方向性結合器13から分岐されて取り込まれた出力信号、すなわち干渉波の元となる信号▲1▼である直交I,Q信号を得ている。このDPS19は、この合成信号である直行I,Q信号と、信号▲1▼である直交I,Q信号との複素相関を行って、主線系を通る残留相関信号を生成している(図5の複素ベクトル参照)。
【0030】
この場合、複素相関演算で得られる相関値は、キャンセル量が小さいとき、つまり回り込み干渉波がまだ大きい場合は大きくなり、また十分なキャンセル量が取れたとき、つまり回り込み干渉波がほとんどなくなった場合は小さくなる。そこで、この実施例では、所定の相関値を1以下の値として規格化し、この値を目標調整量への追従を決めるためのパラメータである忘却係数として設定する。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在する場合では、0.6/1.2/2.4のいずれか一つを1以下の値、例えば0.8で規格化することを示している。
【0031】
さらに特化すれば、最大の相関値を1以下の値として規格化し、この値を忘却係数として設定しても良い。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在する場合では、最大の2.4を1以下の値、例えば0.8で規格化することを示している。
【0032】
さらに特化すれば、この得られた相関値を1から0の範囲内の値に規格化するのが好ましい。具体例としては、相関値として0.6/1.2/2.4が存在し、かつ1.2を1で規格化した場合においても、2.4を1として忘却係数に設定する。つまり、1以上の忘却係数はすべて1とすることを示している。そして、この忘却係数を用いて干渉抑圧信号に重み付けを行うことで、回り込み干渉波をキャンセルしていくものである。
【0033】
すなわち、この実施例のDSP19では、干渉が大きく残っている場合には、相関値が大きく検出されるので、忘却係数も1に近い大きな値になり、収束状態へ速く制御しようと働く。そして、次第にキャンセル量が大きくなってくると、相関値も1の近辺の値から0の近辺の値にだんだん移行して小さくなるので、それに合わせて忘却係数も小さくなり、DSP19では、収束状態に徐々に近づくように制御しようと働き、極めの細かい安定した追従が行われるようになる。
【0034】
次に、このDSP19によるフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を図2のフローチャートに基づいて説明する。図において、DSP19は、まずSW1,SW2をオン状態にするとともに、方向性結合器11,13間の主線系ラインに接続発振が起こらない程度に増幅部12の利得を下げて、ノイズなどの信号レベルの低い信号の通過を阻止する利得制御を行う。さらに、DSP19は、干渉抑圧部15のATT15cを最大減衰量として、ATT15cの信号通過を阻止する。
【0035】
この状態で、DSP19は、方向性結合器11から分岐された受信アンテナ10からの受信信号(希望波と空間を回り込んだ信号▲2▼)および方向性結合器13から分岐された干渉波の元となる信号▲1▼を取り込み(ステップ201)、この信号▲1▼と信号▲2▼との相関演算を行う。
【0036】
次に、DSP19は、SW2をオフ状態に切り替え制御して、干渉抑圧部15のATT15cの減衰量をゼロにして、ATT15cでの信号通過を可能にする。この状態で、方向性結合器13から分岐された信号▲1▼と、干渉抑圧部15を通過した方向性結合器11の信号▲3▼を取り込む(ステップ202)。そして、この信号▲1▼と信号▲3▼との相関演算を行う。ここで、DSP19は、例えばこの信号▲2▼の相関値が立った時間と信号▲3▼の相関が立った時間との時間差を求め、この時間差に基づいて遅延回路15aの遅延時間を設定している。
【0037】
さらに、DSP19は、方向性結合器11の出力、すなわち希望波と信号▲2▼と信号▲3▼の合成波である直交I,Q信号と、方向性結合器13の出力、すなわち干渉波の元となる信号▲1▼である直交I,Q信号との複素相関を行う(ステップ203)。そして、残留相関信号を検出し、その検出された残留相関信号の絶対値を相関値とする(ステップ204)。
【0038】
そして、この実施例では、取りうる最大相関値を1とし、得られた相関値を、1から0の範囲内で規格化して忘却係数μとする(ステップ205)。さらに、残留相関信号を180度シフトした出力信号を生成し、この出力信号に忘却係数で重み付けを行い、さらにこの出力信号を現在の干渉抑圧信号に加えることで次の干渉抑圧信号を生成する(ステップ206)。
【0039】
つまり、DSP19は、図5のDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図に示すように、相関演算で得られた相関信号の相関値を、最大相関値を1として規格化し、その値を忘却係数として重み付け演算を行い、かつその位相から180度シフトした出力信号のベクトルを求め、さらにこの出力信号のベクトルを現在の干渉抑圧信号(抑圧波)のベクトルに物理的に合成して、次の干渉抑圧信号を求める。そして、DSP19は、この演算で得られた次の干渉抑圧信号(次の抑圧波)を生成するように、可変減衰器15cと可変位相器15bの制御を行う。このようにして生成された干渉抑圧信号は、干渉波伝搬路の遅延量に調整されて方向性結合器11に取り込まれ、ここで受信アンテナ10で受信された受信信号に結合させることで、干渉信号をキャンセルする。
【0040】
そして、この実施例では、得られる相関値は、キャンセル量が小さいとき、つまり干渉波がまだ大きい場合には相関値が大きくなるので、忘却係数も大きく規格化され、収束状態へ速く制御されることとなり、次第にキャンセル量が大きくなって、十分なキャンセル量がとれたとき、つまり干渉波がほとんどなくなった場合には相関値が小さくなるので、それに合わせて忘却係数も小さくなり、極めの細かい収束状態への制御へと変わり、より安定した追従が行われるようになる。
【0041】
このように、この実施例では、相関演算で得られた相関値自体を忘却係数のパラメータに設定して目標調整量への追従を決めて、干渉抑制信号を生成し、この干渉抑制信号を干渉信号に結合させることでアンテナ間を回り込む干渉波をキャンセルするので、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0042】
この発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、この実施例では、最大相関値を1として、得られた相関値をこの最大相関値に基づいて規格化するが、この発明はこれに限らず、例えば所定の相関値を1として、得られた相関値をこの所定相関値に基づいて規格化することも可能である。
【0043】
また、実施例では、ATTの減衰量を制御して干渉抑圧部の干渉参照信号通過の有無を設定したが、この発明はこれに限らず、スイッチのオン/オフ制御によって信号通過の有無を設定しても良い。
【0044】
また、この発明の無線中継方法を用いる装置には、例えば図4の構成図に示すように、遅延回路18の代わりに、増幅部12と方向性結合器13間にスイッチ(SW)3を設けるとともに、このSW3を介して変調信号発振器(SG)21が方向性結合器13へ変調信号を出力する構成にすることも可能である。この場合には、外部からの受信信号の代わりに内部のSG21から出力される変調信号を用いて、各信号▲1▼〜▲3▼を出力させてこれら信号間での相関演算を行うとともに、これら信号▲1▼〜▲3▼に基づいて、DSP19が残留相関信号を生成することで、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、一般的に基地局と移動局間の無線中継に用いられる無線中継装置では、基地局側および移動局側の送受信共用のアンテナと、2つの方向性結合器間の主線系と、DSPと、干渉抑圧回路とを2組有し、サーキュレータによって一方のアンテナから受信された信号を別々の主線系を介して他方のアンテナから送信しているが、このような構成の無線中継装置にも、この発明の無線中継方法を用いることができる。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の請求項1では、相関演算によって得られた相関信号の相関値自体を予め定めた所定の相関値を1以下として規格化し、係数のパラメータとして目標調整量への追従を行うことによって、干渉抑圧信号の重み付けを行い、この干渉抑圧信号を受信された干渉信号に結合させるので、アンテナ間を回り込む干渉波のキャンセルを行い、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0047】
また、この発明の請求項2、3では、最大相関値を1として相関演算によって得られた相関値を規格化することで、得られる相関値を1を超えないパラメータ、好ましくは1から0の範囲内のパラメータとして忘却係数に設定するので、干渉が大きく残っている場合には、忘却係数も1のほうに近づいて大きくなり、収束状態へ速く制御しようとし、次第に干渉が小さくなってくると、忘却係数は0の方に近づいて小さな値になり、収束状態がきめ細かく追従制御されて、干渉波のキャンセルを行うことができ、干渉波の除去精度を向上することができる。
【0048】
また、この発明の請求項4では、減衰調整工程および位相調整工程において、前記可変減衰器及び可変位相器を調整して、信号付加工程で求められた次の干渉抑圧信号を生成することができるので、この干渉抑圧信号を受信された干渉信号に結合させてアンテナ間を回り込む干渉波のキャンセルを行い、干渉波の除去精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の一実施例の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示したDSPによるフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図1に示した信号▲2▼と信号▲3▼の遅延時間を示す相関特性の特性図である。
【図4】この発明にかかる無線中継方法を用いた無線中継装置の他の実施例の構成を示す構成図である。
【図5】図1に示したDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図である。
【図6】従来例のDSPで演算される各信号の複素ベクトルを示すベクトル図である。
【図7】従来のフィードバック制御アルゴリズムを用いたエコーキャンセルの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
10 受信アンテナ
11,13 方向性結合器
12 増幅部
15 干渉抑圧部
15a,18 遅延回路
15b 可変位相器
15c 可変減衰器
16 送信アンテナ
α1,α2,μ 忘却係数
Claims (4)
- 第1のアンテナから受信された受信信号を遅延させた後に第2のアンテナから送信するとともに、前記第1のアンテナからの受信信号と前記第2のアンテナから送信される信号との相関演算を行い、該演算結果から前記アンテナ間を回り込む干渉信号を抑圧する干渉抑圧信号を生成する無線中継方法において、
前記相関演算によって得られる相関信号を検知し、該得られた相関信号の絶対値を求め、該絶対値を相関値とする相関値算出工程と、
前記求めた相関値を、所定の相関値を1以下として規格化し、その値を係数として求める係数算出工程と、
前記相関信号を積分して複素数の出力信号を得る複素数算出工程と、
前記得られた出力信号に前記係数で重み付けする重み付け工程と、
前記重み付けされた出力信号を180度シフトした出力信号を求めるシフト工程と、
前記シフトされた出力信号を前記干渉抑圧信号に加えて次の干渉抑圧信号を求める信号付加工程とを含むことを特徴とする無線中継方法。 - 前記係数算出工程では、最大相関値を前記所定の相関値に設定して、前記求めた相関値を1を超えない範囲で規格化することを特徴とする請求項1に記載の無線中継方法。
- 前記係数算出工程では、前記求めた相関値を1から0の範囲内の値に規格化することを特徴とする請求項1または2に記載の無線中継方法。
- 前記無線中継方法では、前記干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と同振幅になるように、可変減衰器を調整する減衰調整工程と、
前記同振幅にされた干渉抑圧信号が、前記干渉信号成分を含む前記受信信号と逆位相になるように可変位相器を調整する位相調整工程とをさらに含み、
前記減衰調整工程および位相調整工程では、前記信号付加工程で求められた次の干渉抑圧信号を生成するように、前記可変減衰器及び可変位相器を調整することを特徴とする請求項1〜3の少なくとも一つに記載の無線中継方法。
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