JP2004045362A - 蓄圧室を備えた磁性流体式三軸加速度計 - Google Patents

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Shozo Hirayama
平山 章三
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Abstract

[課題]  本発明の目的は、サイズモ系の構造を採用せずに1個の加速度計で3軸全方位に対して均等な計測能力を有し、かつ広範囲な測定を可能とする加速度計を提供することにある。
[解決手段] 磁性流体を用いた加速度計であって、球形の錘と、球形の錘を収納する球形の格納容器と、錘と格納容器の間に封入される磁性流体と、球形の錘と格納容器の一方または双方に配置された複数個の磁石と、球形の錘に加速度が加わったとき、錘の力を受けた磁性流体の押圧力を吸収し気体の圧力に転換する蓄圧室と、蓄圧室の圧力の変化を検出する複数個の圧力計とで構成される。
【選択図】  図1

Description

【0001】[発明の属する技術分野]
本発明は加速度計に関し、特に、構造物の振動計測への利用、交通機関の慣性誘導装置や移動走行記録装置への利用、コンピュータゲームなどに用いる3Dコントローラーや、ロボットやヘッドマウントディスプレイなどの3次元の動きを計測する装置への利用等が可能な三軸加速度計に関する。
【0002】[従来の技術]
従来の直線加速度を計測する加速度計は、サイズモ系と呼ばれる、ばね系にて錘の質量体を支持し、加速度を受けて変位する錘の変位量を検出する方式が主流であり、錘の変位量の検出法もピアゾ効果や静電容量の変化など電気的な方法で検出するものが中心である。
ばね系で支持する構造のため、ばねの支持軸の制約から、一軸ないし二軸の加速度計がほとんどである。三軸加速度計も開発されているが、サイズモ系の構造の為、感度に制約があるものが多い。これらの問題を解決する為、特許3311329号「磁性流体を用いた三軸加速度計」が提案されている。(以後先の提案という)
【0003】[発明が解決しようとする課題]
サイズモ系を用いる加速度計は次のような課題が存在する。
錘をばね系で支持しているため、感度の悪い軸が発生する。
さらに感度の良好な軸方向でも、ばねの反動により錘が振動する為、加速度による錘の変位と、ばねの反動による変位の判定が出来ず、連続的な計測が難しい場合が多い。
このため、錘の質量とばねの強度などにより、測定可能な加速度の範囲が、限定される。
これらの解決の為、先の提案では、錘は磁性流体により無接触支持する方法を提案している。これにより上記の問題はほぼ解決されたが反面、新たに下記問題が生じた。
【0004】
先の提案では、加速度による錘の変位を磁性流体の部分圧力に転換し、その発生部位の差圧を検出することにより加速度の大きさと方向を判定する構成となっている。
しかし先の提案では、容器内は磁力に拘束された磁性流体が充満した状態であるため、錘の変位量は微小なものとなることと、流体内部で圧力は急速に全体に伝播するため、複数の流体圧力計により、継続的に差圧を検知することが難しく、ごく初期段階の微小加速度の検出にとどまることとなる。
従って検出できる加速度がきわめて狭い範囲となる問題がある。
【0005】[課題を解決する為の手段]
従って、従来のサイズモ系の構造による欠点を克服する為に、先の提案の構成を採用しながら次の通りに構成を一部変更し、本発明の提案を行なう。
本発明による磁性流体を用いた三軸加速度計は、球形の錘と、前記球形の錘を格納する球形の格納容器と、前記錘と前記格納容器との間に封入される磁性流体と、前記磁性流体に磁力を及ぼす為に、前記錘と前記格納容器の一方又は双方に配置された複数個の磁石と、前記錘が加速度を受け、変位することにより前記磁性流体が受ける圧力を気圧として蓄える為に前記格納容器の内部に設けられる複数個の蓄圧室と、前記磁性流体の受ける力により発生する前記蓄圧室の圧力の変化を検出する複数個の圧力計、で構成されている。
【0006】
本発明では、磁性流体を用いた加速度計において広い測定範囲を有する加速度計を以下の通り提案する。
1.錘を球形とする。
2.この球形の錘を球形の格納容器に収納する。
3.球形の錘の表面、または格納容器の内壁面、または錘の表面と格納容器の内壁面双方に多数の磁石を配置し、錘と格納容器の間隙に略均等な磁場を発生させる。
4.格納容器内に、錘と共に磁性流体を封入することにより錘を格納容器内で無接触支持させる。
5.格納容器の中心を原点とする三軸(X,Y,Z軸)が交差する容器殻壁内部に所定の容積を持つ蓄圧室を各々設置する。
6.各蓄圧室の気圧の変化を計測する圧力計を各設置する。
7.各圧力計の測定値から加速度を計算する中央演算処理装置(CPU)を設置する。
【0007】
図3に従い本発明の原理の要点を説明する。なおX,X’,Y,Y’は蓄圧室と圧力計の設置軸と設置位置関係を表わす。
図3(ア)は加速度が加わる前の安定した状態を示す。錘1(又は容器3)に配置された磁石の磁力により錘は容器の中心に安定して浮遊している。磁性流体は各蓄圧室の所定水準水位にとどまっている。
図3(イ)はX方向から加速度Aが格納容器に働いた状態を示す。加速度AがX方向よりX’方向に向けて格納容器3に加わると、錘1は慣性の法則により慣性力Iが生じ、X方向に動こうとしX側の磁性流体2を押圧することとなる。磁性流体は錘1(又は容器3)に配置された磁石により、流動が拘束されているので、この押圧力によりXの蓄圧室内に侵入することとなる。このため蓄圧室内の液面を押し上げX蓄圧室内の気圧は上昇することとなる。
【0008】
反対に対極に位置するX’側の磁性流体は、錘の変位によりX方向に引き寄せられる為、X’蓄圧室内より流出することとなる。このため蓄圧室内の当初の液面を低下させ、X’蓄圧室内の気圧は低下することとなる。
このX−X’の差圧は、加速度Aの大きさにほぼ比例的に発生すると考えられるので、この差圧を計測すると加速度の大きさが判定できることとなる。
なお本事例は加速度がX−X’軸に沿って発生した事例である為Y−Y’軸の磁性流体には押圧力も吸引力も働かない。このため液面は変化しないので、Y,Y’の蓄圧室の圧力変化は起こらない。
【0009】
一般に任意の加速度に対する圧力の変化反映度合いは、蓄圧室の設置軸と加速度の入力軸の角度差による投影値となることが予想される。
図4に示す通り、容器の中心を原点とするXYZ三軸上に設置された圧力計X−X’,Y−Y’,Z−Z’の各差圧及び正負の値を計算すると、入力した加速度Aの方向と大きさを計算できることとなる。
【0010】
以下に本発明の一実施形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明による一実施形態としての蓄圧室を有する三軸加速度計の要部構成図であり、図2は図1の蓄圧室部分の拡大図、図3は本発明の原理を解説する模式図であり、図4は加速度Aの方向と各圧力計の計測値の関係を解説する説明図、図5は錘に磁石を配置した場合の磁力線の分布イメージ図である。
これら図中、1は錘、1aは磁石、1bは錘の中心部の空洞、2は磁性流体、3は格納容器、3aは磁石、3bは蓄圧室、3cは導管部、3dは導管部用磁石、4は圧力センサ、4aはダイアフラム、4bは圧力検知管、5はCPU、6はハウジングケース、7は磁力線、Aは加速度、Iは慣性力である。
【0011】
本事例は磁石を錘に配置した事例である。磁石はNS極交互に、周密に配置される。これにより図5の通り球面に磁力線のネットが構成される。
磁石はこの他格納容器内側に配置する場合も考えられる。いずれも錘を均等に無接触支持する為であり、球面全体に均等に磁力が配置されるように考慮される必要がある。磁性流体は各蓄圧室の所定の液面位置まで侵入した状態を保つように量的に調整される。磁性流体は磁力に拘束されるため原則的には、所定量以上蓄圧室内に流入することはない。しかし、衝撃などの外力や、磁気の弱い部分より蓄圧室内に飛散又は流入することも考えられる。また逆に蓄圧室内の気体が、気泡として磁性流体内に混入する可能性もある。
【0012】
これらが計測誤差の原因となることが考えられるので、本実施例においては蓄圧室と格納容器内との間の磁性流体の移動が的確に行なわれるように、格納室から蓄圧室への導入部に導管部3cが設計されている。導管部3cはやや狭隘に作られ導管部用磁石3dの磁力により安定拘束される構造となる。蓄圧室には、圧力計4から圧力検知管4bが挿入設置され蓄圧室3bの内部圧力を測定する構造となっている。
圧力計4はダイアフラム式気圧センサであり測定結果をCPU5に送る。CPUでは対極に位置する圧力計からの数値により当該軸の差圧を算出する。さらに各軸の差圧を総合し、加速度の大きさと方向を計算することとなる。
【0013】
なお本発明の構成では、磁性流体は完全密閉状態で使用されるため、劣化の危険は少ないが、温度上昇により、格納容器内及び蓄圧室内の圧力上昇が懸念される。このため、蓄圧室とは別に圧力回避手段として、より大きな容積を有するリリーフ蓄圧室を別に設置することも考えられる。
なお、錘の中央部には浮力調整の為、必要に応じ、空洞1bが設けられる。
【0014】[発明の効果]
以上説明した通り、本発明によれば、先の提案の欠点を改善し、三次元方向の任意の速度を、磁性流体を介在させた気体圧力の変化として測定するようにしたので、錘の大きさや、磁力、気圧室の容積や圧力計の感度、などにより自由な設計が可能で、幅広い加速度に対応できる加速度計を開発できる。
従って構造体の振動計測や、ヘッドマウントディスプレイ用の3Dセンサ、交通機関の慣性移動記録装置などへの利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施形態としての三軸加速度計の構成図(断面図)である。
【図2】図1による三軸加速度計の蓄圧室部分の拡大図である。
【図3】本発明の原理を説明する模式解説図である。
(ア)は静止状態を示す図。  (イ)は加速度入力時の状態を示す図。
【図4】本発明による加速度入力と各圧力計の測定値関係の模式解説図である。
【図5】本発明による磁石を配置された錘表面の磁力線の分布イメージ図である。
【符号の説明】
1  錘               A  加速度
1a 磁石              I  慣性力
1b 中心部の空洞
2  磁性流体
3  格納容器
3a 磁石
3b 蓄圧室
3c 導管部
3d 導管部用磁石
4  圧力センサ
4a ダイアフラム
4b 圧力検知管
5  CPU
6  ハウジングケース
7  磁力線

Claims (1)

  1. 磁性流体を用いた加速度計であって、
    球形の錘と、
    前記球形の錘を収納する球形の格納容器と、
    前記錘と前記格納容器との間に封入される磁性流体と、
    前記磁性流体に磁力を及ぼす為に、前記錘と前記格納容器の一方又は双方に配置された複数個の磁石と、
    前記錘が加速度を受け、変位することにより前記磁性流体が受ける圧力を気圧に変換する、前記格納容器の内部に設けられる複数個の蓄圧室と、
    前記蓄圧室の圧力の変化を検出する複数個の圧力計と、
    を具備する三軸加速度計。
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