JP2004043648A - 廃プラスチック材の分離方法、廃プラスチック材の分離装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】難燃剤を含む廃プラスチックの処理、再利用のために、難燃剤成分と樹脂成分とを効率よく分離する。
【解決手段】難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する工程と、前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程とを備えた。また、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体を用いて湿式破砕処理することにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程を備えた。
【選択図】 なし
【解決手段】難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する工程と、前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程とを備えた。また、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体を用いて湿式破砕処理することにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程を備えた。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばテレビ、コンピュータなどのモニターの筐体に用いられている、難燃剤を含む廃プラスチックから、難燃剤とプラスチック成分とを分離、洗浄するための分離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、テレビ、コンピューターのモニターやビデオなどの筐体として、スチレン樹脂やABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、耐衝撃性を向上させたハイインパクトポリスチレン樹脂(ポリブタジエンとポリスチレンのブレンドなど)などの熱可塑性樹脂が一般的に用いられている。しかし、熱可塑性樹脂は、単体では燃焼性が高いという課題がある。従って火災時の延焼防止の観点から、難燃剤を樹脂に配合して難燃化した樹脂組成物が広く使用されている。ハロゲン化難燃剤は各種プラスチック樹脂に対して高い難燃効果を有しており、また価格も安いことから、世界的なレベルで使用されている。またハロゲン系難燃剤に三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤をさらに加えることによって、さらに難燃効果が増加すると言われ、特に臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組合わせで難燃性を保持させた樹脂が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら臭素系難燃剤とアンチモン系から成る難燃剤は、スチレン系樹脂を代表とする芳香族系樹脂に対して難燃効果に優れており、これまで家電製品の各種筐体や部品材料に多量に使用されてきた。このためこれら家電製品の廃棄と共に臭素系、アンチモン系難燃剤を含む樹脂組成物が大量に廃棄されることになる。
【0004】
一方、2001年4月より家電リサイクル法が施行され、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の4製品に関して適性リサイクル処理が始まった。当面のリサイクル率は50−60%前後であり、各製品中の比較的重量の占める割合の大きいガラスや金属などを積極的にリサイクル利用推進することによって当面の目標値をクリアする努力が行われている。
【0005】
一般に樹脂廃棄物の処理方法としては、焼却や埋め立てが中心であり、一部が加熱溶融などで再利用されているに過ぎない。埋立て処分場の逼迫を考えると廃プラスチックを焼却処分することが望まれるが、難燃性を含有する樹脂組成物はその付与された高度の難燃性のために焼却が困難であり、処理が困難になってきている。
【0006】
また環境問題に関する意識が高まり、ハロゲン化有機物の環境への有害性が指摘され、ハロゲン化有機物の使用は規制されつつある。現在、各使用メーカーはハロゲン系難燃剤から、リン系化合物などのハロゲン化有機物を含まない難燃剤への転換を検討しているが、リン系化合物はハロゲン化有機物と比較して、難燃性の付与程度が弱く、ハロゲン化有機物からの転換は、なかなか進まない現状にある。特にテレビ筐体として、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンから成る難燃剤を含んだポリスチレン(以下PSと称す)が主に利用されており、その廃プラスチックの処分方法の確立が望まれる。
【0007】
さらに近年は、石油化学由来の資源を再利用することが強く求められており、樹脂廃棄物の処理、再利用方法の確立が重要な課題となっている。
【0008】
そのような中で、我々は脱難燃剤化処理した後にマテリアルリサイクル可能な処理方法として、特開2001−151930号に臭素系難燃剤を抽出除去できる溶剤で処理する方法を提案してきた。
【0009】
しかしながら、難燃剤として含まれる三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤を、樹脂廃棄物から効果的に除去する方法は知られていなかった。
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みて提案されたものであって、臭素系難燃剤とともに含まれている三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤に対しても充分除去可能となる廃プラスチック材の分離方法、分離装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意研究を重ねた結果、破砕処理した後、あるいは破砕処理しながら酸と接触させることで、容易に難燃剤を除去し、樹脂を再生できる方法を見いだし、本発明を完成するに至った。また酸で処理した後の樹脂に関しても容易に洗浄できる方法も見いだした。
【0012】
このような第1の本発明(請求項1に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する工程と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程とを備えた廃プラスチック材の分離方法である。
【0013】
また、第2の本発明(請求項2に対応)は、前記破砕は、湿式破砕処理である第1の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0014】
また、第3の本発明(請求項3に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体を用いて湿式破砕処理することにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程を備えた廃プラスチック材の分離方法である。
【0015】
また、第4の本発明(請求項4に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う第2または第3の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0016】
また、第5の本発明(請求項5に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う第2または第3の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0017】
また、第6の本発明(請求項6に対応)は、前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤から選ばれる少なくとも1種を含む溶剤である第5の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0018】
また、第7の本発明(請求項7に対応)は、前記分離されたプラスチック成分を、水を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた第1から第6のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0019】
また、第8の本発明(請求項8に対応)は、前記分離されたプラスチック成分を、有機溶剤を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた第1から第6のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0020】
また、第9の本発明(請求項9に対応)は、前記プラスチック成分は、ポリスチレン構造を含むものである第1から第8のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0021】
また、第10の本発明(請求項10に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する破砕手段と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置である。
【0022】
また、第11の本発明(請求項11に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体内に配置するための容器と、
前記容器内にて前記液体を用いて前記廃プラスチック材を湿式破砕する湿式破砕手段と、
前記湿式粉砕処理された廃プラスチック材から、プラスチック成分と前記難燃剤とを分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置である。
【0023】
また、第12の本発明(請求項12に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う第11の本発明の廃プラスチック材の分離装置である。
【0024】
また、第13の本発明(請求項13に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う第11の本発明の廃プラスチック材の分離装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、難燃性樹脂組成物中に含まれている難燃剤、特に三酸化アンチモンや五酸化アンチモンを含む無機系難燃剤を除去、分離し、分離後の樹脂を洗浄する処理方法に関するものである。
【0026】
ここで説明する本発明の廃プラスチックとは、製造現場などでの工程内で生じた不要プラスチック材、プラスチック端材、あるいは家電製品の筐体などに用いられた後に回収された樹脂を含むものであり、PS,PP,ABS樹脂など、主に熱可塑性樹脂を含むものである。またアンチモン系難燃剤を含む樹脂であれば、テレビ以外の商品に使用されていた樹脂も本発明の廃プラスチックに含まれる。またこれらの廃プラスチックは、樹脂組成物の用いられる用途に合わせて、臭素系難燃剤やアンチモン系難燃剤の他に安定剤、着色剤、流動改質剤、離型剤、塗膜などの添加剤を含むものもあるが、特にどのような添加処理などを施されていても構わない。
【0027】
難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモジフェニルエーテルなどのフェニルエーテル系難燃剤や、テトラブロモビスフェノールA(TBA)をはじめとするビスフェノールA型の難燃剤、ヘキサブロモシクロドデカン、ビストリブロモフェノキシエタン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBAエポキシオリゴマーなどの臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸などの塩素系難燃剤、燐系難燃剤、窒素化合物を含む難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの無機系難燃剤が知られている。
【0028】
なお廃プラスチック組成物中に含有される難燃剤は単一種類のものでも複数種混合されていても良く、またその含有量がどの程度であってもよいが、本発明においては、少なくともアンチモン類を含んでいる必要がある。要求される難燃グレードによっても異なるが、一般的に、難燃剤は樹脂重量に対して10−20wt%混入される。
【0029】
これら難燃剤を含む廃プラスチックを破砕処理する方法においては、処理に要する時間、効率、コスト等とのかねあいも関係してくるが、粒系が1mm以下となる用に破砕処理することが重要である。より好ましくは500μm程度以下と考えられ、さらに好ましくは100μm以下である。これらの処理と粒系との関係として、粗破砕、破砕、粉砕、微粉砕処理などの言葉で表現される場合が多いが、本発明においては広い意味での破砕と解釈し、一般に言われている粉砕品、微粉砕品を用いてもいいことは説明するまでもない。
【0030】
また破砕された粒径にも依存するが、酸で処理する際に、加温しても構わない。
【0031】
本発明に用いる破砕処理法としては、乾式による方法の他に、水や有機溶剤を用いた湿式破砕方法も利用することができる。
【0032】
破砕を用いない酸による難燃剤樹脂の処理方法としては、特開平6−157812号に述べられているように、pHが5より強い強酸を共存させる方法が提案されている。が、事前に破砕処理などを行うことがないため、酸の樹脂中への含浸時間が長く、実施例によれば室温で一昼夜浸漬する必要がある。
【0033】
一方、本発明においては樹脂を破砕するため、酸と樹脂との接触表面積が大きくなり、室温でも瞬時に添加剤として含まれる難燃剤と反応し、その結果容易に除去することが可能となる。
【0034】
本発明の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸の他に、ギ酸、酢酸、酒石酸などを用いることができる。また、本発明において、酸と接触させるとは、難燃剤の成分と酸とが反応することを意味し、必ずしも100%の酸と樹脂とが物理的に接触することを意味するのではない。したがって、本発明の酸との接触を実現するために、酸の水溶液、もしくは他の溶媒との溶液、もしくは混合物の形態をとってもよい。
【0035】
乾式破砕でも充分効果は発揮できるが、さらに水などを流しながら湿式破砕処理することで、樹脂の粒系がさらに小さくなり、より酸との接触密度が大きくなるため、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0036】
また前記2つの方法が乾式破砕、湿式破砕後に酸と接触させる方法であるが、さらに好ましい処理方法として、酸水溶液を流しながら湿式破砕処理を行うことも可能で、この場合樹脂は破砕処理されながら酸とも接触するため、より迅速に難燃剤を除去することが可能となる。
【0037】
またある特定のアルコール系溶剤、グリコール系溶剤、あるいはグリコールエーテル系の有機溶剤を流しながら湿式破砕処理する場合には、樹脂と有機溶剤との相溶性が水よりもよく、樹脂への酸浸透性が速やかに生じるため、処理時間の短縮が可能となる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、あるいはトリプロピレングリコールブチルエーテルの少なくとも一種を主成分として含む溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、特開2001−151930号に提案した溶剤で、臭素系難燃剤と樹脂の分離、除去効果を有することが確かめられているものである。また経年樹脂劣化成分、例えば低分子量のPSなどは、粉砕処理することで、これらアルコール系やグリコール系などの溶剤にも可溶となり、分離することができる。
【0038】
さらに本発明の難燃剤を含む廃プラスチックの処理方法においては、上記酸処理により脱難燃化された樹脂に対して、容易に洗浄できる方法を提案している。つまり、酸で処理し脱難燃化された破砕樹脂を、さらにもう一度水あるいは有機溶剤で湿式破砕処理することで、樹脂に残存していた塩素や臭素、アンチモン分解成分などを容易に分離、洗浄することができ、この操作の後にろ過操作などを行うことが可能となる。粉砕なしでは充分に酸などを除去することができないので有用な処理方法である。
【0039】
一方プラスチックは、任意のものに適用可能であるが、特にスチレン系ポリマーにおいて有効である。スチレン系ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸、および耐衝撃性ハイインパクトポリスチレンなどからなるポリマーが挙げられる。
【0040】
上記スチレン系ポリマーは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。また他のポリマーとの混合品であっても良い。またスチレン系ポリマーの分子量も任意であるが、3,000−1,000,000程度が好ましい。
【0041】
また本発明で使用した溶剤に関しては、プラスチック成分と難燃剤の分解成分とを分離した後に、蒸留操作などを行うことで繰り返し使用が可能であり、使用量を抑えることができる。また樹脂を破砕処理しているので、より少量の酸を用いることでその効果を充分に発揮することが可能であることも本発明の大きな特徴である。
【0042】
このように本発明によれば、廃プラスチックの適正処理、回収、リサイクル処理ならびに溶剤使用量の削減化など、環境に配慮した形で処理を行うことができる。
【0043】
なお、本発明の廃プラスチック材の分離方法を実現するための分離装置を図1(a)に示す。図1(a)の分離装置は、酸を含む液体を蓄えている液体タンク1,2、液体タンク1,2と、分離容器10とを接続するための液体配管3と、液体配管3上に設けられた、切り替えバルブ4,ポンプ5およびヒータ6と、廃プラスチック材を破砕する微粉砕機7と、廃プラスチックを蓄えている廃樹脂タンク9と、微粉砕機7からの排出物を蓄積し、液体配管3を介して液体タンク1,2から酸の供給を受け、難燃剤とプラスチックとを分離する分離容器10とを備えている。なお、上記の構成において、微粉砕機7は、本発明の破砕手段に相当し、分離容器10は、本発明の分離手段に相当する。
【0044】
このような分離装置は、上記説明のマスコロイダとして微粉砕機7を用い、破砕した廃プラスチックを分離容器10に格納し、さらに液体タンク1,2から酸を含んだ液体を分離容器10に供給することにより、廃プラスチック材から難燃剤を分離する。
【0045】
このとき、分離容器10を加熱するようにしてもよい。また、微粉砕機7に水もしくは有機溶剤を供給して、湿式破砕を行うようにしてもよい。さらに微粉砕機7で湿式破砕を行う場合は、微粉砕機7を加熱するようにしてもよい。
【0046】
またさらに、図1(b)に示す構成としてもよい。分離装置は、酸を含む液体を蓄えている液体タンク1,2、液体タンク1,2と微粉砕機7とを接続するための液体配管3′と、液体配管3′上に設けられた、切り替えバルブ4,ポンプ5およびヒータ6と、微粉砕機7内を加熱するジャケット加熱器8と、廃プラスチックを蓄えている廃樹脂タンク9と、微粉砕機7からの排出物を、固体と液体とに分離する固液分離装置10′とを備えている。なお、上記の構成において、微粉砕機7は、本発明の容器および湿式破砕手段に相当し、固液分離装置10′は、本発明の分離手段に相当する。
【0047】
このような分離装置は、上記説明の微粉砕機7を用い、液体タンク1,2から酸を含んだ液体を供給することにより湿式破砕処理を行って、固液分離装置10′にて、廃プラスチック材から難燃剤を分離する。
【0048】
以下、本発明の分離方法の、各実施例について詳しく説明する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明である難燃剤を含む廃プラスチックの処理方法について、具体的に示す。
【0050】
(実施例1)
本実施例では本発明の廃プラスチック材である被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:テトラブロモビスフェノールA系難燃剤(12重量部)と三酸化アンチモン(4重量部)、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0051】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて破砕を行い、200μmの破砕物990gを得た。
【0052】
次に回収した樹脂を10%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0053】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、6.5%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.5%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。また樹脂組成物を破砕処理することで、極めて短時間、かつ低い酸濃度でも組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0054】
(実施例2)
本実施例では上記実施例1と同様の樹脂組成物を用い、水を用いて湿式破砕工程を行ったときの難燃剤除去率の変化について検討した。
【0055】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、水を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を950g得た。
【0056】
次に回収した樹脂を7%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、5.5%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.2%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。また樹脂組成物を湿式破砕処理することで、極めて短時間、かつ低い酸濃度でも組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0057】
(実施例3,4)
実施例1,2で用いた樹脂と同じものに対し、異なる酸を用いて処理を行った。
【0058】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、水を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を950g得た。
【0059】
次に回収した樹脂を70℃に加熱した10%硫酸水溶液(実施例3)中、及び50℃に加熱した35%酒石酸(実施例4)中に加え、10分間撹拌処理した。
その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0060】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
塩酸に比較して、高濃度かつ高温処理が必要であったが、短時間で組成物中の難燃剤を除去できることが明らかとなった。
【0062】
(実施例5)
実施例2〜4では、湿式破砕工程の後に酸と接触した場合の結果であるが、本実施例では、湿式破砕時に酸水溶液を用い、破砕化と脱難燃剤処理が同時に可能であるかを実施した。用いた樹脂は先の実施例で調整したものと同様である。
【0063】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、3%塩酸水溶液を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を850g得た。その後樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0064】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、6.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.9%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。実施例1−4で必要であった撹拌時間が不要となり、酸水溶液を共存させながら湿式破砕処理することで、さらに短時間、かつ低い酸濃度で組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0065】
(実施例6〜9)
先の実施例で用いたと同様の樹脂組成物を使って、湿式破砕処理を、(実施例6)エチレングリコール(EG)、(実施例7)プロピレングリコール(PG)、(実施例8)ジプロピレングリコール(dPG)、(実施例9)ジプロピレングリコールメチルエーテル(dPGM)の4つの有機溶剤で処理した。その後樹脂を回収し、それぞれの液中に10%濃度に調整した塩酸溶液中で10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返しイソプロピルアルコールを用いて洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0066】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
これら溶剤を用いることによって、臭素系難燃剤もかなりの割合で除去可能であることと、さらに三酸化アンチモンも充分に除去できることがわかった。
【0068】
(実施例10〜13)
上記実施例6〜9で用いた溶剤に直接酸を混入した溶液を用いて破砕処理を行った。
【0069】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、それぞれ4種の溶剤に関して3%塩酸溶液を調整し、それらを用いて湿式破砕を行った。その後樹脂表面が中和されるまで繰り返しイソプロピルアルコール洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0070】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表3に示した。
【0071】
【表3】
これら溶剤を用いることによって、臭素系難燃剤もかなりの割合で除去可能であることと、さらに三酸化アンチモンも充分に除去できることがわかった。実施例6−9の場合と比べ破砕処理と酸との反応を同時に行えるため、単位時間あたりの処理量を増やすことができる。
【0072】
(実施例14)
本実施例では被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:デカブロモジフェニルエーテル(10重量部)、三酸化アンチモン3.5重量部、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0073】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち500gをスーパーマスコロイダーを用いて、3%塩酸水溶液を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を350g得た。その後、この回収した樹脂を水を用いながら湿式破砕処理した後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0074】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が10%であったのに対して、6.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値3.5%に対して、1.2%まで除去されていることを確認した。従来必要であった酸の中和処理の工程として、再度湿式破砕を行うことで洗浄が容易かつ短時間で行え、また組成物中の難燃剤も除去できていることがわかった。
【0075】
(実施例15)
本実施例では実施例14で用いたと同様の樹脂組成物を用いて検討を行った。
【0076】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、1%塩酸を含むdPGM溶液を調整し、これを用いて湿式破砕を行った。その後回収した樹脂をEG溶剤を用いながら湿式破砕処理した後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0077】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が10%であったのに対して、4.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値3.5%に対して、0.5%まで除去されていることを確認した。従来必要であった酸の中和処理の工程として、再度湿式破砕を行うことで洗浄が容易かつ短時間で行え、また組成物中の難燃剤も除去できていることがわかった。
【0078】
(実施例16〜20)
本実施例では被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:テトラブロモビスフェノールA系難燃剤(12重量部)と三酸化アンチモン(4重量部)、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0079】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕した後、プラスチック破砕機を用いて、1mm(実施例16)、500μm(実施例17)、250μm(実施例18)、100μm(実施例19)、50μm(実施例20)径の粒径のものを約100gずつ調整した。
【0080】
これらの樹脂をそれぞれ10%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0081】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表4に示した。
【0082】
【表4】
以上の検討結果から、粒径を小さくしていくほど、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃剤の除去率が高くなることがわかる。しかしながら、減少率は小さいが1mm程度の粒径でも少しは除去されていることがわかった。この粒径で用いる場合には処理時間を長くするなどの工夫が必要と思われる。
【0083】
【発明の効果】
以上のように、本発明の分離方法を用いることにより、今後大量に廃棄され、問題となると思われる、難燃剤入りの廃プラスチックに関して、難燃剤成分と樹脂成分とに容易に分離することが出来る。さらにこの様にして回収された樹脂を再利用することによって、廃棄物量削減を達成するとともに、再生に用いた溶剤も再使用できるために、昨今必要とされている環境問題解決の一助となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施の形態による廃プラスチック材の分離装置の構成を示す模式図
(b)本発明の実施の形態による廃プラスチック材の分離装置の他の構成を示す模式図
【符号の説明】
1,2 液体タンク
3、3′ 液体配管
4 切替バルブ
5 ポンプ
6 ヒータ
7 マスコロイダ
8 ジャケット加熱器
9 廃樹脂タンク
10 分離容器
10′ 固液分離装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばテレビ、コンピュータなどのモニターの筐体に用いられている、難燃剤を含む廃プラスチックから、難燃剤とプラスチック成分とを分離、洗浄するための分離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、テレビ、コンピューターのモニターやビデオなどの筐体として、スチレン樹脂やABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、耐衝撃性を向上させたハイインパクトポリスチレン樹脂(ポリブタジエンとポリスチレンのブレンドなど)などの熱可塑性樹脂が一般的に用いられている。しかし、熱可塑性樹脂は、単体では燃焼性が高いという課題がある。従って火災時の延焼防止の観点から、難燃剤を樹脂に配合して難燃化した樹脂組成物が広く使用されている。ハロゲン化難燃剤は各種プラスチック樹脂に対して高い難燃効果を有しており、また価格も安いことから、世界的なレベルで使用されている。またハロゲン系難燃剤に三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤をさらに加えることによって、さらに難燃効果が増加すると言われ、特に臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組合わせで難燃性を保持させた樹脂が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら臭素系難燃剤とアンチモン系から成る難燃剤は、スチレン系樹脂を代表とする芳香族系樹脂に対して難燃効果に優れており、これまで家電製品の各種筐体や部品材料に多量に使用されてきた。このためこれら家電製品の廃棄と共に臭素系、アンチモン系難燃剤を含む樹脂組成物が大量に廃棄されることになる。
【0004】
一方、2001年4月より家電リサイクル法が施行され、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機の4製品に関して適性リサイクル処理が始まった。当面のリサイクル率は50−60%前後であり、各製品中の比較的重量の占める割合の大きいガラスや金属などを積極的にリサイクル利用推進することによって当面の目標値をクリアする努力が行われている。
【0005】
一般に樹脂廃棄物の処理方法としては、焼却や埋め立てが中心であり、一部が加熱溶融などで再利用されているに過ぎない。埋立て処分場の逼迫を考えると廃プラスチックを焼却処分することが望まれるが、難燃性を含有する樹脂組成物はその付与された高度の難燃性のために焼却が困難であり、処理が困難になってきている。
【0006】
また環境問題に関する意識が高まり、ハロゲン化有機物の環境への有害性が指摘され、ハロゲン化有機物の使用は規制されつつある。現在、各使用メーカーはハロゲン系難燃剤から、リン系化合物などのハロゲン化有機物を含まない難燃剤への転換を検討しているが、リン系化合物はハロゲン化有機物と比較して、難燃性の付与程度が弱く、ハロゲン化有機物からの転換は、なかなか進まない現状にある。特にテレビ筐体として、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンから成る難燃剤を含んだポリスチレン(以下PSと称す)が主に利用されており、その廃プラスチックの処分方法の確立が望まれる。
【0007】
さらに近年は、石油化学由来の資源を再利用することが強く求められており、樹脂廃棄物の処理、再利用方法の確立が重要な課題となっている。
【0008】
そのような中で、我々は脱難燃剤化処理した後にマテリアルリサイクル可能な処理方法として、特開2001−151930号に臭素系難燃剤を抽出除去できる溶剤で処理する方法を提案してきた。
【0009】
しかしながら、難燃剤として含まれる三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤を、樹脂廃棄物から効果的に除去する方法は知られていなかった。
【0010】
本発明は、このような状況を鑑みて提案されたものであって、臭素系難燃剤とともに含まれている三酸化アンチモンなどの無機系難燃剤に対しても充分除去可能となる廃プラスチック材の分離方法、分離装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意研究を重ねた結果、破砕処理した後、あるいは破砕処理しながら酸と接触させることで、容易に難燃剤を除去し、樹脂を再生できる方法を見いだし、本発明を完成するに至った。また酸で処理した後の樹脂に関しても容易に洗浄できる方法も見いだした。
【0012】
このような第1の本発明(請求項1に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する工程と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程とを備えた廃プラスチック材の分離方法である。
【0013】
また、第2の本発明(請求項2に対応)は、前記破砕は、湿式破砕処理である第1の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0014】
また、第3の本発明(請求項3に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体を用いて湿式破砕処理することにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程を備えた廃プラスチック材の分離方法である。
【0015】
また、第4の本発明(請求項4に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う第2または第3の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0016】
また、第5の本発明(請求項5に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う第2または第3の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0017】
また、第6の本発明(請求項6に対応)は、前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤から選ばれる少なくとも1種を含む溶剤である第5の本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0018】
また、第7の本発明(請求項7に対応)は、前記分離されたプラスチック成分を、水を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた第1から第6のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0019】
また、第8の本発明(請求項8に対応)は、前記分離されたプラスチック成分を、有機溶剤を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた第1から第6のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0020】
また、第9の本発明(請求項9に対応)は、前記プラスチック成分は、ポリスチレン構造を含むものである第1から第8のいずれかの本発明の廃プラスチック材の分離方法である。
【0021】
また、第10の本発明(請求項10に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する破砕手段と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置である。
【0022】
また、第11の本発明(請求項11に対応)は、難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体内に配置するための容器と、
前記容器内にて前記液体を用いて前記廃プラスチック材を湿式破砕する湿式破砕手段と、
前記湿式粉砕処理された廃プラスチック材から、プラスチック成分と前記難燃剤とを分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置である。
【0023】
また、第12の本発明(請求項12に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う第11の本発明の廃プラスチック材の分離装置である。
【0024】
また、第13の本発明(請求項13に対応)は、前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う第11の本発明の廃プラスチック材の分離装置である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明は、難燃性樹脂組成物中に含まれている難燃剤、特に三酸化アンチモンや五酸化アンチモンを含む無機系難燃剤を除去、分離し、分離後の樹脂を洗浄する処理方法に関するものである。
【0026】
ここで説明する本発明の廃プラスチックとは、製造現場などでの工程内で生じた不要プラスチック材、プラスチック端材、あるいは家電製品の筐体などに用いられた後に回収された樹脂を含むものであり、PS,PP,ABS樹脂など、主に熱可塑性樹脂を含むものである。またアンチモン系難燃剤を含む樹脂であれば、テレビ以外の商品に使用されていた樹脂も本発明の廃プラスチックに含まれる。またこれらの廃プラスチックは、樹脂組成物の用いられる用途に合わせて、臭素系難燃剤やアンチモン系難燃剤の他に安定剤、着色剤、流動改質剤、離型剤、塗膜などの添加剤を含むものもあるが、特にどのような添加処理などを施されていても構わない。
【0027】
難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモジフェニルエーテルなどのフェニルエーテル系難燃剤や、テトラブロモビスフェノールA(TBA)をはじめとするビスフェノールA型の難燃剤、ヘキサブロモシクロドデカン、ビストリブロモフェノキシエタン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、TBAポリカーボネートオリゴマー、臭素化ポリスチレン、TBAエポキシオリゴマーなどの臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸などの塩素系難燃剤、燐系難燃剤、窒素化合物を含む難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの無機系難燃剤が知られている。
【0028】
なお廃プラスチック組成物中に含有される難燃剤は単一種類のものでも複数種混合されていても良く、またその含有量がどの程度であってもよいが、本発明においては、少なくともアンチモン類を含んでいる必要がある。要求される難燃グレードによっても異なるが、一般的に、難燃剤は樹脂重量に対して10−20wt%混入される。
【0029】
これら難燃剤を含む廃プラスチックを破砕処理する方法においては、処理に要する時間、効率、コスト等とのかねあいも関係してくるが、粒系が1mm以下となる用に破砕処理することが重要である。より好ましくは500μm程度以下と考えられ、さらに好ましくは100μm以下である。これらの処理と粒系との関係として、粗破砕、破砕、粉砕、微粉砕処理などの言葉で表現される場合が多いが、本発明においては広い意味での破砕と解釈し、一般に言われている粉砕品、微粉砕品を用いてもいいことは説明するまでもない。
【0030】
また破砕された粒径にも依存するが、酸で処理する際に、加温しても構わない。
【0031】
本発明に用いる破砕処理法としては、乾式による方法の他に、水や有機溶剤を用いた湿式破砕方法も利用することができる。
【0032】
破砕を用いない酸による難燃剤樹脂の処理方法としては、特開平6−157812号に述べられているように、pHが5より強い強酸を共存させる方法が提案されている。が、事前に破砕処理などを行うことがないため、酸の樹脂中への含浸時間が長く、実施例によれば室温で一昼夜浸漬する必要がある。
【0033】
一方、本発明においては樹脂を破砕するため、酸と樹脂との接触表面積が大きくなり、室温でも瞬時に添加剤として含まれる難燃剤と反応し、その結果容易に除去することが可能となる。
【0034】
本発明の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸の他に、ギ酸、酢酸、酒石酸などを用いることができる。また、本発明において、酸と接触させるとは、難燃剤の成分と酸とが反応することを意味し、必ずしも100%の酸と樹脂とが物理的に接触することを意味するのではない。したがって、本発明の酸との接触を実現するために、酸の水溶液、もしくは他の溶媒との溶液、もしくは混合物の形態をとってもよい。
【0035】
乾式破砕でも充分効果は発揮できるが、さらに水などを流しながら湿式破砕処理することで、樹脂の粒系がさらに小さくなり、より酸との接触密度が大きくなるため、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0036】
また前記2つの方法が乾式破砕、湿式破砕後に酸と接触させる方法であるが、さらに好ましい処理方法として、酸水溶液を流しながら湿式破砕処理を行うことも可能で、この場合樹脂は破砕処理されながら酸とも接触するため、より迅速に難燃剤を除去することが可能となる。
【0037】
またある特定のアルコール系溶剤、グリコール系溶剤、あるいはグリコールエーテル系の有機溶剤を流しながら湿式破砕処理する場合には、樹脂と有機溶剤との相溶性が水よりもよく、樹脂への酸浸透性が速やかに生じるため、処理時間の短縮が可能となる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル、あるいはトリプロピレングリコールブチルエーテルの少なくとも一種を主成分として含む溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、特開2001−151930号に提案した溶剤で、臭素系難燃剤と樹脂の分離、除去効果を有することが確かめられているものである。また経年樹脂劣化成分、例えば低分子量のPSなどは、粉砕処理することで、これらアルコール系やグリコール系などの溶剤にも可溶となり、分離することができる。
【0038】
さらに本発明の難燃剤を含む廃プラスチックの処理方法においては、上記酸処理により脱難燃化された樹脂に対して、容易に洗浄できる方法を提案している。つまり、酸で処理し脱難燃化された破砕樹脂を、さらにもう一度水あるいは有機溶剤で湿式破砕処理することで、樹脂に残存していた塩素や臭素、アンチモン分解成分などを容易に分離、洗浄することができ、この操作の後にろ過操作などを行うことが可能となる。粉砕なしでは充分に酸などを除去することができないので有用な処理方法である。
【0039】
一方プラスチックは、任意のものに適用可能であるが、特にスチレン系ポリマーにおいて有効である。スチレン系ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸、および耐衝撃性ハイインパクトポリスチレンなどからなるポリマーが挙げられる。
【0040】
上記スチレン系ポリマーは単独で用いても良いし、複数を混合して用いても良い。また他のポリマーとの混合品であっても良い。またスチレン系ポリマーの分子量も任意であるが、3,000−1,000,000程度が好ましい。
【0041】
また本発明で使用した溶剤に関しては、プラスチック成分と難燃剤の分解成分とを分離した後に、蒸留操作などを行うことで繰り返し使用が可能であり、使用量を抑えることができる。また樹脂を破砕処理しているので、より少量の酸を用いることでその効果を充分に発揮することが可能であることも本発明の大きな特徴である。
【0042】
このように本発明によれば、廃プラスチックの適正処理、回収、リサイクル処理ならびに溶剤使用量の削減化など、環境に配慮した形で処理を行うことができる。
【0043】
なお、本発明の廃プラスチック材の分離方法を実現するための分離装置を図1(a)に示す。図1(a)の分離装置は、酸を含む液体を蓄えている液体タンク1,2、液体タンク1,2と、分離容器10とを接続するための液体配管3と、液体配管3上に設けられた、切り替えバルブ4,ポンプ5およびヒータ6と、廃プラスチック材を破砕する微粉砕機7と、廃プラスチックを蓄えている廃樹脂タンク9と、微粉砕機7からの排出物を蓄積し、液体配管3を介して液体タンク1,2から酸の供給を受け、難燃剤とプラスチックとを分離する分離容器10とを備えている。なお、上記の構成において、微粉砕機7は、本発明の破砕手段に相当し、分離容器10は、本発明の分離手段に相当する。
【0044】
このような分離装置は、上記説明のマスコロイダとして微粉砕機7を用い、破砕した廃プラスチックを分離容器10に格納し、さらに液体タンク1,2から酸を含んだ液体を分離容器10に供給することにより、廃プラスチック材から難燃剤を分離する。
【0045】
このとき、分離容器10を加熱するようにしてもよい。また、微粉砕機7に水もしくは有機溶剤を供給して、湿式破砕を行うようにしてもよい。さらに微粉砕機7で湿式破砕を行う場合は、微粉砕機7を加熱するようにしてもよい。
【0046】
またさらに、図1(b)に示す構成としてもよい。分離装置は、酸を含む液体を蓄えている液体タンク1,2、液体タンク1,2と微粉砕機7とを接続するための液体配管3′と、液体配管3′上に設けられた、切り替えバルブ4,ポンプ5およびヒータ6と、微粉砕機7内を加熱するジャケット加熱器8と、廃プラスチックを蓄えている廃樹脂タンク9と、微粉砕機7からの排出物を、固体と液体とに分離する固液分離装置10′とを備えている。なお、上記の構成において、微粉砕機7は、本発明の容器および湿式破砕手段に相当し、固液分離装置10′は、本発明の分離手段に相当する。
【0047】
このような分離装置は、上記説明の微粉砕機7を用い、液体タンク1,2から酸を含んだ液体を供給することにより湿式破砕処理を行って、固液分離装置10′にて、廃プラスチック材から難燃剤を分離する。
【0048】
以下、本発明の分離方法の、各実施例について詳しく説明する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明である難燃剤を含む廃プラスチックの処理方法について、具体的に示す。
【0050】
(実施例1)
本実施例では本発明の廃プラスチック材である被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:テトラブロモビスフェノールA系難燃剤(12重量部)と三酸化アンチモン(4重量部)、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0051】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダー(増幸産業株式会社製)を用いて破砕を行い、200μmの破砕物990gを得た。
【0052】
次に回収した樹脂を10%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0053】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、6.5%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.5%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。また樹脂組成物を破砕処理することで、極めて短時間、かつ低い酸濃度でも組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0054】
(実施例2)
本実施例では上記実施例1と同様の樹脂組成物を用い、水を用いて湿式破砕工程を行ったときの難燃剤除去率の変化について検討した。
【0055】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、水を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を950g得た。
【0056】
次に回収した樹脂を7%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、5.5%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.2%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。また樹脂組成物を湿式破砕処理することで、極めて短時間、かつ低い酸濃度でも組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0057】
(実施例3,4)
実施例1,2で用いた樹脂と同じものに対し、異なる酸を用いて処理を行った。
【0058】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、水を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を950g得た。
【0059】
次に回収した樹脂を70℃に加熱した10%硫酸水溶液(実施例3)中、及び50℃に加熱した35%酒石酸(実施例4)中に加え、10分間撹拌処理した。
その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0060】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
塩酸に比較して、高濃度かつ高温処理が必要であったが、短時間で組成物中の難燃剤を除去できることが明らかとなった。
【0062】
(実施例5)
実施例2〜4では、湿式破砕工程の後に酸と接触した場合の結果であるが、本実施例では、湿式破砕時に酸水溶液を用い、破砕化と脱難燃剤処理が同時に可能であるかを実施した。用いた樹脂は先の実施例で調整したものと同様である。
【0063】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、3%塩酸水溶液を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を850g得た。その後樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0064】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が12%であったのに対して、6.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値4%に対して、0.9%まで除去されていることを確認した。臭素系難燃剤の除去率は高くないが、アンチモン系難燃剤に関してはこの方法により充分対応可能であることがわかった。実施例1−4で必要であった撹拌時間が不要となり、酸水溶液を共存させながら湿式破砕処理することで、さらに短時間、かつ低い酸濃度で組成物中の難燃剤を除去できることがわかった。
【0065】
(実施例6〜9)
先の実施例で用いたと同様の樹脂組成物を使って、湿式破砕処理を、(実施例6)エチレングリコール(EG)、(実施例7)プロピレングリコール(PG)、(実施例8)ジプロピレングリコール(dPG)、(実施例9)ジプロピレングリコールメチルエーテル(dPGM)の4つの有機溶剤で処理した。その後樹脂を回収し、それぞれの液中に10%濃度に調整した塩酸溶液中で10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返しイソプロピルアルコールを用いて洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0066】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
これら溶剤を用いることによって、臭素系難燃剤もかなりの割合で除去可能であることと、さらに三酸化アンチモンも充分に除去できることがわかった。
【0068】
(実施例10〜13)
上記実施例6〜9で用いた溶剤に直接酸を混入した溶液を用いて破砕処理を行った。
【0069】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、それぞれ4種の溶剤に関して3%塩酸溶液を調整し、それらを用いて湿式破砕を行った。その後樹脂表面が中和されるまで繰り返しイソプロピルアルコール洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0070】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表3に示した。
【0071】
【表3】
これら溶剤を用いることによって、臭素系難燃剤もかなりの割合で除去可能であることと、さらに三酸化アンチモンも充分に除去できることがわかった。実施例6−9の場合と比べ破砕処理と酸との反応を同時に行えるため、単位時間あたりの処理量を増やすことができる。
【0072】
(実施例14)
本実施例では被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:デカブロモジフェニルエーテル(10重量部)、三酸化アンチモン3.5重量部、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0073】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち500gをスーパーマスコロイダーを用いて、3%塩酸水溶液を用いながら破砕を行い、80μm以下の破砕物を350g得た。その後、この回収した樹脂を水を用いながら湿式破砕処理した後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0074】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が10%であったのに対して、6.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値3.5%に対して、1.2%まで除去されていることを確認した。従来必要であった酸の中和処理の工程として、再度湿式破砕を行うことで洗浄が容易かつ短時間で行え、また組成物中の難燃剤も除去できていることがわかった。
【0075】
(実施例15)
本実施例では実施例14で用いたと同様の樹脂組成物を用いて検討を行った。
【0076】
まず被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕し、このうち1Kgをスーパーマスコロイダーを用いて、1%塩酸を含むdPGM溶液を調整し、これを用いて湿式破砕を行った。その後回収した樹脂をEG溶剤を用いながら湿式破砕処理した後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0077】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量をGPCで測定したところ、樹脂組成物の全重量に対する初期難燃剤重量が10%であったのに対して、4.0%まで減少していることがわかった。また三酸化アンチモンの残存量を蛍光X線分析によって定量評価したところ、初期値3.5%に対して、0.5%まで除去されていることを確認した。従来必要であった酸の中和処理の工程として、再度湿式破砕を行うことで洗浄が容易かつ短時間で行え、また組成物中の難燃剤も除去できていることがわかった。
【0078】
(実施例16〜20)
本実施例では被処理用廃プラスチックとして、難燃剤成分:テトラブロモビスフェノールA系難燃剤(12重量部)と三酸化アンチモン(4重量部)、樹脂成分:ポリスチレンからなる樹脂組成物(樹脂の重量平均分子量35,000)を用意し、この樹脂組成物中に含まれる難燃剤成分と樹脂成分の分離を行った。
【0079】
まず前記被処理用樹脂組成物を5mm角程度のブロック状に粗破砕した後、プラスチック破砕機を用いて、1mm(実施例16)、500μm(実施例17)、250μm(実施例18)、100μm(実施例19)、50μm(実施例20)径の粒径のものを約100gずつ調整した。
【0080】
これらの樹脂をそれぞれ10%塩酸水溶液中に加え、10分間撹拌処理した。その後樹脂成分を取出し、樹脂表面が中和されるまで繰り返し水洗浄を行った後、ろ過することによって乾燥樹脂を得た。
【0081】
樹脂成分中に残存する臭素系難燃剤重量、三酸化アンチモン重量を先と同様に評価した結果を表4に示した。
【0082】
【表4】
以上の検討結果から、粒径を小さくしていくほど、臭素系難燃剤、アンチモン系難燃剤の除去率が高くなることがわかる。しかしながら、減少率は小さいが1mm程度の粒径でも少しは除去されていることがわかった。この粒径で用いる場合には処理時間を長くするなどの工夫が必要と思われる。
【0083】
【発明の効果】
以上のように、本発明の分離方法を用いることにより、今後大量に廃棄され、問題となると思われる、難燃剤入りの廃プラスチックに関して、難燃剤成分と樹脂成分とに容易に分離することが出来る。さらにこの様にして回収された樹脂を再利用することによって、廃棄物量削減を達成するとともに、再生に用いた溶剤も再使用できるために、昨今必要とされている環境問題解決の一助となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の実施の形態による廃プラスチック材の分離装置の構成を示す模式図
(b)本発明の実施の形態による廃プラスチック材の分離装置の他の構成を示す模式図
【符号の説明】
1,2 液体タンク
3、3′ 液体配管
4 切替バルブ
5 ポンプ
6 ヒータ
7 マスコロイダ
8 ジャケット加熱器
9 廃樹脂タンク
10 分離容器
10′ 固液分離装置
Claims (13)
- 難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する工程と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程とを備えた廃プラスチック材の分離方法。 - 前記破砕は、湿式破砕処理である請求項1に記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体を用いて湿式破砕処理することにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する工程を備えた廃プラスチック材の分離方法。
- 前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う請求項2または3に記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う請求項2または3に記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 前記有機溶剤が、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤から選ばれる少なくとも1種を含む溶剤である請求項5に記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 前記分離されたプラスチック成分を、水を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた請求項1から6のいずれかに記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 前記分離されたプラスチック成分を、有機溶剤を用いながらさらに湿式破砕処理することにより洗浄を行う工程をさらに備えた請求項1から6のいずれかに記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 前記プラスチック成分は、ポリスチレン構造を含むものである請求項1から8のいずれかに記載の廃プラスチック材の分離方法。
- 難燃剤を含む廃プラスチック材を破砕する破砕手段と、
前記破砕された廃プラスチック材を、酸と接触させることにより、プラスチック成分と前記難燃剤とに分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置。 - 難燃剤を含む廃プラスチック材を、少なくとも酸を含んだ液体内に配置するための容器と、
前記容器内にて前記液体を用いて前記廃プラスチック材を湿式破砕する湿式破砕手段と、
前記湿式粉砕処理された廃プラスチック材から、プラスチック成分と前記難燃剤とを分離する分離手段とを備えた廃プラスチック材の分離装置。 - 前記湿式破砕処理を、酸水溶液を用いて行う請求項11に記載の廃プラスチック材の分離装置。
- 前記湿式破砕処理を、酸を含んだ有機溶剤を用いて行う請求項11に記載の廃プラスチック材の分離装置。
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JP2002203378A JP2004043648A (ja) | 2002-07-12 | 2002-07-12 | 廃プラスチック材の分離方法、廃プラスチック材の分離装置 |
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JP2022505818A (ja) * | 2018-10-26 | 2022-01-14 | ポリスタイバート インコーポレイテッド | ポリスチレン廃棄物および/またはポリスチレンコポリマー廃棄物を再生するためのプロセス |
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2002
- 2002-07-12 JP JP2002203378A patent/JP2004043648A/ja active Pending
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