JP2004043276A - 車両用窓構造 - Google Patents

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JP2004043276A JP2002349223A JP2002349223A JP2004043276A JP 2004043276 A JP2004043276 A JP 2004043276A JP 2002349223 A JP2002349223 A JP 2002349223A JP 2002349223 A JP2002349223 A JP 2002349223A JP 2004043276 A JP2004043276 A JP 2004043276A
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Kazuyuki Iguchi
井口 一行
Kazutaka Kamiya
神谷 和孝
Toshifumi Tsujino
辻野 敏文
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Abstract

【課題】カレット原料としてリサイクルすることが可能である着色膜付きガラス板を用いた車両用窓構造の提供を目的とする。
【解決手段】車両に設けられた開口部に、ガラス板を装着した車両用窓構造において、前記ガラス板は、少なくとも周辺部に酸化物を主成分とする着色膜が被覆されており、前記着色膜は、珪素酸化物、アルカリ金属酸化物および炭素を主成分とする微粒子を含んでなることを特徴とする車両用窓構造である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色膜付きガラス板を用いた車両用窓構造に関する。特に、カレットとしてガラス原料に用いることが可能な着色膜を用いた車両用窓構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ガラスにおいて、例えば接着剤によって車体に取り付けられるガラス板では、太陽光の紫外線による接着剤の劣化防止や美観のために、その周辺部分にセラミックカラーがコーティングされた着色膜付きガラス板が用いられている。
【0003】
このセラミックカラーには、Cr、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属イオンを基にした顔料が20質量%程度含まれている。通常のクリアーなフロートガラスでは遷移金属の量が1%未満であり、わずか数十ppm程度でも色調に影響を及ぼし、遷移金属が含まれていることが認識されてしまう。よって、セラミックカラーがコーティングされた部分を、再熔融してリサイクルすることは現状では不可能である。この部分は、その他の材料、例えば路盤材などに間接的にリサイクル材として使用するか、廃棄せざるを得ない。
【0004】
従来、セラミックカラーのガラス成分には、鉛を含むものもあったが、近年、地球環境保全のために、鉛の使用が制限されてきている。
【0005】
なお着色成分を含有する着色ガラスまたは着色膜付きガラスは、ごく少量であればカレット原料として、再利用することが可能である。特開2001−253731公報には、膜中の遷移金属量を制御することでリサイクルを可能にする技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、着色ガラスまたは着色膜中に遷移金属を多量に含む場合には、ガラスの光学特性への影響が大きくなるため、再熔融してリサイクルすることは不可能となる。このため、同じ材料としてリサイクルとして使用されるのではなく、その他の材料、例えば路盤材等に間接的にリサイクル材として使用されることになるか、廃棄せざるを得なかった。
【0007】
また、セラミックカラーのガラス成分には、従来、鉛を含むものもあったが、近年、地球環境保全のために、鉛の使用が制限されてきている。
【0008】
他方、新たな着色膜組成物も提案されつつあり、例えばガラス系着色膜組成物として、P系、アルカリ金属酸化物−ZnO−B−SiO系などの組成物が提案されている。
【0009】
系組成物としては、特開平7−69672号公報、特開平8−183632号公報や特開平9−208259号公報において、ガラス組成物やフリット組成物が開示されている。
【0010】
さらに、アルカリ金属酸化物−ZnO−B−SiO系組成物としては、特開平8−133784号公報において、セラミックカラー組成物が開示されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2001−253731公報
【特許文献2】
特開平7−69672号公報
【特許文献3】
特開平8−183632号公報
【特許文献4】
特開平9−208259号公報
【特許文献5】
特開平8−133784号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したそれぞれの組成物には、耐酸性や膨張係数の大きな相違などの問題点がある。上述のP系組成物では、P、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類酸化物などで構成されている。このため、その膨張係数の温度依存性が、基体として多く用いられるソーダライムシリカ組成のフロートガラスのそれと、比較して大きくなってしまう。このような膨張係数の差は、ガラス基体の加熱および冷却の際に歪みを生じさせ、着色膜およびガラスの強度の低下を引き起こす。
【0013】
また、上述のアルカリ金属酸化物−ZnO−B−SiO系組成物では、Bが10〜20%、ZnOが35〜45%含まれていることにより、耐酸性が低下している。
【0014】
これらのセラミックカラーが被覆された車両用窓ガラス基体は、鉛は含まれていないものの、上述のようにフロートガラスには基本的には含まれていないP、ZnO、Bなどが相当量含まれている。したがって、ソーダライムシリカ組成のフロートガラスにおけるカレット原料としての使用は困難である。
【0015】
そこで、本発明は以上の状況を鑑み、カレット原料としてリサイクルすることが可能である着色膜を用いた車両用窓構造の提供を目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、車両に設けられた開口部に、ガラス板を装着した車両用窓構造において、アルカリ金属酸化物および珪素酸化物、および炭素を主成分とする微粒子を含む着色膜を形成したガラス板は、カレットとしてリサイクルすることが可能となることを見出した。
【0017】
さらにこの着色膜は、遷移金属あるいは遷移金属化合物などを実質的に含まなくても遮光性を持つことができる、という特徴を有する。また着色膜にアルカリ酸化物を少なくとも2種類含ませることで、耐湿性を向上させることができる。このため、この着色膜は、硬質でしかも耐酸・耐アルカリ性を有している。
【0018】
またさらに、このような着色膜付きガラス板は、酸または水に接触させる脱アルカリ処理することにより、耐水性および耐湿性を向上させることが可能となる。
【0019】
すなわち、本発明は、請求項1に記載の発明として、
車両に設けられた開口部に、ガラス板を装着した車両用窓構造において、
前記ガラス板は、少なくとも周辺部に酸化物を主成分とする着色膜が被覆されており、
前記着色膜は、珪素酸化物、アルカリ金属酸化物および炭素を主成分とする微粒子を含んでなることを特徴とする車両用窓構造である。
【0020】
請求項2に記載の発明として、
前記着色膜は、質量%で表して、
珪素酸化物      40〜90%、
アルカリ金属酸化物 0.1〜25%、
微粒子         3〜45%
を含んでなる請求項1に記載の車両用窓構造である。
【0021】
請求項3に記載の発明として、
前記着色膜は、質量%で表して、
珪素酸化物     49〜73%、
アルカリ金属酸化物 10〜23%、
微粒子       16〜40%
を含んでなる請求項2に記載の車両用窓構造である。
【0022】
請求項4に記載の発明として、
前記着色膜は、質量%で表して、
珪素酸化物      54〜89%、
アルカリ金属酸化物 0.1〜 5%、
微粒子        10〜45%
を含んでなる請求項に2に記載の車両用窓構造である。
【0023】
請求項5に記載の発明として、
前記アルカリ金属酸化物が少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用窓構造である。
【0024】
請求項6に記載の発明として、
前記少なくとも2種のアルカリ金属酸化物が、ナトリウムと、カリウムおよびリチウムから選ばれる少なくとも1種とを含む請求項5に記載の車両用窓構造である。
【0025】
請求項7に記載の発明として、
前記着色膜が、質量%で表して、
NaO       1〜18%、
O        0〜18%、
LiO       0〜10%、
O+LiO 0.1〜19%、
SiO      40〜70%、
微粒子       15〜40%、
を含んでなる請求項5に記載の車両用窓構造である。
【0026】
請求項8に記載の発明として、
前記着色膜が、質量%で表して、
NaO       5〜15%、
O        0〜11%、
LiO       0〜 5%、
O+LiO   1〜12%、
SiO2      50〜70%、
微粒子      15〜35%、
を含んでなる請求項6に記載の車両用窓構造である。
【0027】
請求項9に記載の発明として、
前記着色膜が、着色成分として、遷移金属を実質的に含まれていない請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用窓構造である。
【0028】
請求項10に記載の発明として、
前記着色膜が、Ti,Zn,Zr,P,La,Co,Cu,Ni,Mn,SbおよびPbを実質的に含まない請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両用窓構造である。
【0029】
請求項11に記載の発明として、
前記微粒子が、カーボンブラック微粒子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両用窓構造である。
【0030】
本発明における着色膜において、アルカリ金属酸化物は1種類であってもよいが、2種類以上とすることが好ましい。アルカリ金属酸化物を2種類以上とすることで、耐湿性および化学的耐久性(耐酸性・耐アルカリ性)に優れ、硬質な着色膜を得ることができる。
【0031】
一般に混合アルカリ効果とよばれる現象は、アルカリの一部を他のアルカリで置換すると、アルカリの総量が一定であっても、その性質が加成則から大きくずれるというものである。この混合アルカリ効果により大きく変化する性質としては、耐水性,耐酸性,耐アルカリ性に代表される化学的耐久性、電気伝導度、拡散係数などが挙げられる。
【0032】
アモルファスでガラス質な着色膜において混合アルカリ効果を発現することにより、アルカリの易移動度が低下し、アルカリ溶出が抑制され、これにより耐湿性を改善できる。
【0033】
以下に、上記着色膜の好ましい態様と成分限定理由について説明する。以下の成分含有量は、質量%で表示したものである。
【0034】
まず、アルカリ金属酸化物が1種類のみのアルカリ金属を含む場合、このアルカリ金属はナトリウムとするとよい。
【0035】
NaOは、その含有量が1%未満では、着色膜の耐アルカリ性が低下し、また、熱膨張係数が小さくなりすぎることで、ガラスおよび着色膜の強度の低下を引き起こすため、好ましくない。より好ましい含有量は5%以上である。
【0036】
一方、NaOの含有量が18%を超えると、熱膨張係数が大きくなりすぎ、乾燥および焼成時における膜の収縮量が大きくなり、着色膜にクラックが発生しやすくなるため、好ましくない。より好ましい含有量は15%以下である。
【0037】
Oおよび/またはLiOは、NaOと共存させることにより、着色膜に耐湿性と化学的耐久性を付与する。KOとLiOの合計量が0.1%未満では、耐水性および耐湿性の改善が十分ではない。この合計量は好ましくは1%以上である。
【0038】
OとLiOの合計量が19%を超えると、熱膨張係数が大きくなりすぎ、NaOと同様に、乾燥および焼成時における膜の収縮量が大きくなる。この結果、着色膜にクラックが発生しやすくなってしまう。KOとLiOの合計量は、好ましくは12%以下である
【0039】
各成分の含有量としては、KOの含有量は好ましくは18%以下、より好ましくは11%以下であり、LiOの含有量は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0040】
珪素酸化物は例えばSiOであり、SiOはガラス質皮膜ではネットワークフォーマーとなる。SiOが40%未満では着色膜の強度が低下し、さらに耐アルカリ性の低下も引き起こしてしまうので、40%以上が好ましい。より好ましくは50%以上である。
【0041】
一方SiOが70%を超えると、熱膨張係数が小さくなる。この結果、ソーダライムシリカ組成のガラスのそれとの差が大きくなる。またさらに、着色膜はガラスとは異なり、熱膨張起因による収縮のみではなく、水分蒸発による収縮をもたらす。水分蒸発による収縮はアルカリの存在で抑制され、熱膨張による収縮が支配的になるため、SiOは70%以下にすることが好ましい。
【0042】
炭素を主成分とする微粒子は、アルカリ金属酸化物および珪素酸化物に対する割合により、膜強度や耐アルカリ性に影響を及ぼす。したがって、この着色剤は、所定量を含有することが好ましい。具体的には15〜40%であることが好ましく、さらに好ましくは35%以下である。
【0043】
炭素を主成分とする微粒子としては、例えばカーボンブラックや炭素のみで構成される黒鉛(グラファイト)、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料を挙げることができる。特に微粒子の形態が好ましい。より好ましくは、カーボンブラック微粒子である。
【0044】
カーボンブラックは、製造法により異なる特性のものが種々製造されているが、どのカーボンブラックを使用してもよい。製造法の異なるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック,チャンネルブラック,ファーネスブラック,ケッチェンブラック(ライオン株式会社の商品名)を例示できる。
【0045】
カーボンブラックは、1000℃以上はもちろん、それに近い温度でも、酸素と反応して二酸化炭素となって揮発する。フロートガラスは通常原材料を1000℃以上に加熱して熔融さらに成形して製造されるので、この熔融プロセスにおいて、カーボンブラックは揮発してガラスの着色性に影響しない。このため、カーボンブラックはリサイクル性を考慮した場合、好ましい着色剤である。また、黒色を有するため、自動車用ガラスのセラミックカラーにも適している。
【0046】
なお本明細書において、「主成分」とは、50質量%以上を占める成分をいう。
【0047】
本発明における車両用窓構造の着色膜には、着色剤として、遷移金属を実質的に含まないことが好ましい。本発明によれば、遷移金属および遷移金属化合物を含有しなくても、十分な着色を有する着色膜を得ることが可能である。
【0048】
ガラスの着色に関わる遷移金属としては、Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Moなどが挙げられる。これらの酸化物、例えばCoO,Cr,CuO,NiO,MnOなどを数%含む着色膜付きガラス基体は、透明なガラスや異なる着色成分を有するガラスの原材料に含ませると、目標の光学特性(透明度や着色)を有するガラスを得ることが困難となる。
【0049】
なお、硫化カドミウム、硫化アンチモンは、ガラス中でコロイドとなり、ガラスを着色することがある。このため、着色膜には、これら元素や化合物を実質的に含ませないことが好ましい。
【0050】
さらに官許への影響を考慮して、鉛(Pb)および/または鉛化合物を実質的に含まないことが好ましい。
【0051】
なお、「実質的に含まない」とは、意図して含有させないことを意味し、原料などから意図せずに混入する不純物レベルの含有は許容する。具体的には、1質量%以下、好ましくは100ppm以下の範囲をいう。
【0052】
また、上述のように、着色膜にはアルカリ金属酸化物および着色剤が含まれるため、珪素酸化物だけで構成される膜よりその収縮量を低く押さえることができ、膜強度を向上させることができる。よって、重ね塗りしなくても厚膜を形成することが可能である。本発明における着色膜の好ましい膜厚は、1〜20μmである。
【0053】
アルカリ金属酸化物としては、酸化ナトリウムおよび/または酸化カリウムを挙げることができる。なお、本発明の着色膜をカレット原料として調合バッチに混入させる場合、着色膜中の酸化リチウムが、製造されるガラス物品の組成に影響を及ぼさない程度の量であれば、含まれていてもかまわない。
【0054】
着色膜形成用液組成物の塗布方法としては、特に限定されるものではないが、例えばディップコーティング法、フローコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り法、スクリーン印刷法、インクジェット法などの方法を例示することができる。
【0055】
なお、着色膜付きガラス板の製造方法は、さらに焼成工程に先立ち、前乾燥工程を含むことが好ましい。この前乾燥工程は、室温〜250℃の温度で乾燥を行うことが好ましく、乾燥時間は、必要に応じて24時間以内とするとよい。
【0056】
大気雰囲気下での250℃以上の乾燥は、炭素を主成分とする微粒子の燃焼を引き起こすため、好ましくない。乾燥が不十分な場合には、着色膜が発泡しやすく、また発泡に伴うクラックも生じやすくなる。室温乾燥のみの場合には、長時間の乾燥が必要になる。このとき雰囲気が高湿の場合には、着色膜に水を吸着しやすくなるため、短時間の乾燥が好ましい。
【0057】
また前乾燥工程は、着色膜表面の凹凸を抑制すること、さらに塗布した組成物の平滑性を得る上で、室温による第1乾燥工程と、加熱しながらの第2乾燥工程からなることが好ましい。
【0058】
さらに、前乾燥工程後に、少なくとも500℃の温度で焼成を行うことが好ましい。またさらにこの焼成工程は、730℃を超える温度ではガラス基体の変形が顕著となるため、この温度以下で焼成するとよい。なお、焼成温度を500℃以上として、ガラス基体の曲げ加工および強化加工などを同時に行ってもよい。
【0059】
焼成時間は、微粒子の燃焼を抑制しながら膜の強度を向上させるために、500℃以上であれば80秒〜20分程度が、600℃以上であれば80秒から10分程度が、好ましい。もっとも、特にガラス基体の曲げ加工、強化加工などの加工を伴わない場合には、500℃以下で焼成して、あるいは乾燥のみにより自動車用窓構造の着色膜を製造してもよい。
【0060】
さらに、珪素酸化物、アルカリ金属酸化物および着色剤を含む着色膜は、耐水性および耐湿性に改善の余地があり、それらを向上させる目的で、酸または水に接触させる脱アルカリ処理することが好ましい。
【0061】
一般に、珪酸アルカリ金属を主成分とした薄膜を常温でガラス基板に形成すると、シロキシシラノール表面にアルカリ金属イオン、水酸化物イオンおよび水がランダムに吸着した状態となる。これを加熱すると、縮合反応が部分的に起こることで、高分子化し、シリカのネットワーク構造が形成される。
【0062】
このように生成した膜表面には、アルカリ金属および水酸基が存在しており、さらにそこに水が存在すると、アルカリ金属イオンが選択的に溶出して、膜表面を白華させる。これを防ぐために、着色膜表面を例えば酸溶液に接触させる処理を行うことで、アルカリ金属を減少除去させて、珪酸分子が重合および縮合による膜の不溶化を生じさせるとよい。これにより、着色膜の耐水性および耐湿性を、格段に向上させることができる。
【0063】
酸処理工程で使用する酸は、特に限定されないが、例えば、塩酸,硫酸,硝酸,フッ酸,リン酸などの、Arrhenius、Brφnsted−Lowry、Lewis、Cady & Elsey等で定義されている酸を挙げることができる。さらに処理方法は、特に限定されるものではなく、例えば酸溶液への浸漬、酸溶液で湿らした布での払拭などが挙げられる。
【0064】
また酸に接触させる代わりに、水に接触させてもよい。水の場合も基本的なメカニズムは酸で処理する場合と同様である。接触させる水としては、ガラス基体の汚すことがなければ、特に限定されることなく、水道水,蒸留水,イオン交換水などが挙げられる。処理方法としては、酸と同様に水への浸漬、水で湿らした布での払拭などが挙げられる。
【0065】
これらの処理前後に、NaOH,Ca(OH),Al(OH)などの塩基性溶液または水に接触させることが好ましい。さらに、着色膜表面の余分な水分は布などで拭き取ることが好ましい。
【0066】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0067】
(実施例1)
珪酸ナトリウム溶液(水ガラス3号、キシダ化学製、以下「水ガラス」ということがある)30g、コロイダルシリカ(PC500、日産化学工業製)20g、カーボンブラック(ライオンペースト W−311N LION製)50gを秤量し、撹拌した。このようにすることで、固形分がNaO:3%、SiO:13%、カーボン:8%となる着色膜形成用液組成物を得た。表1に液組成の固形分比を示した。
【0068】
この液組成物を、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板(100×100×2.1mm)の表面上にバーコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で40分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、このガラス基板を720℃に昇温した焼成炉に投入し、塗布した着色膜を90秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約9μmであった。表1に着色膜の組成および成膜条件を示した。
【0069】
得られた着色膜付きガラス基体の可視光線透過率および紫外線透過率を、分光光度計(島津製作所製 UVPC−3100)により測定した。その結果、可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、それぞれ0.1%以下であり、着色膜は、遮光性機能を有していることがわかった(表1参照)。
【0070】
また、本発明による着色膜の耐酸性および耐アルカリ(塩基)性を調べるために、以下の試験を行った。すなわち、0.1N硫酸(耐酸試験)および0.1N水酸化ナトリウム(耐アルカリ試験)溶液中に、着色膜付きガラス基体を24時間浸漬したときにおける、ガラス面および膜面の明度変化を、分光式色彩計(日本電色工業製 SE−2000)により測定した。
【0071】
その結果、耐酸試験および耐アルカリ試験において、着色膜面および未被覆のガラス面のいずれも、明度の変化はないことがわかった。つまり本発明による着色膜は、酸性およびアルカリ性に対して良好な耐久性を有していることがわかった。
【0072】
着色膜の硬度の評価は、テーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES 5150 ABRASER)を用い、着色膜付きガラス基体板に対して、500gの荷重で1000回摩耗輪を回転させて行い、試験前後で透過性の変化を測定した。その結果、本発明による着色膜は、試験前後でともに透過性に変化はなく、非常に硬度の高い膜であり、良好な耐摩耗性を有していることがわかった(表1参照)。
【0073】
さらに本発明による着色膜形成用液組成物が、カレット原料としてガラス製造の際に再熔融された場合の影響を調べるために、高温熔融試験を行った。試験は、TG−DTA分析装置(リガク製 熱分析装置 TAS−100)を用い、1300℃まで10℃/分の加熱速度で前記液組成物を加熱した。
【0074】
熔融後の液組成物を目視により観察したところ、着色剤であるカーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。この結果、本発明による着色膜は、ガラス製造の際にカレット原料に含まれたとしても、当該ガラスの着色に影響しないことがわかった。
【0075】
【表1】
Figure 2004043276
【0076】
(実施例2)
珪酸ナトリウム溶液 30g、コロイダルシリカ 20g、カーボンブラック(ライオンペースト W−310A LION製) 50gを秤量し、撹拌した。このようにすることで、固形分がNaO:3%、SiO:13%、カーボン:9%となる液組成物を得た。
【0077】
この液組成物を洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板の表面上にスピンコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で30分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、このガラス基板を680℃に昇温した焼成炉に投入し、塗布した着色膜を120秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約5μmであった(表1参照)。
【0078】
得られた着色膜付きガラス基体の可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、それぞれ0.1%以下であり、遮光性機能を有していることがわかった。
【0079】
また実施例1と同様に、耐酸試験と耐アルカリ試験を行った。その結果、耐酸試験および耐アルカリ試験において、着色膜面および未被覆のガラス面いずれも、明度の変化のないことがわかった。
【0080】
さらに実施例1と同様に、膜の硬度の評価を行った。その結果、試験前後でともに透過性の変化がなく、硬度の非常に高い膜であることがわかった。
【0081】
またさらに、着色膜形成用液組成物の高温熔融し、着色剤の熔解性試験を行った。その結果、熔融後の液組成物において、カーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。
【0082】
(実施例3〜7)
表1に示す種々の膜組成を有する着色膜付きガラス基体を製造し、実施例1と同様にその特性を評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0083】
実施例3〜7の結果、いずれの着色膜付きガラス基体においても、可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、それぞれ0.1%以下であり、遮光性機能を有していることがわかった。
【0084】
またさらに、着色膜形成用液組成物の高温熔融した結果、熔融後の液組成物において、カーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。
【0085】
(実施例8)
珪酸ナトリウム溶液(水ガラス3号、キシダ化学製)30g、コロイダルシリカ(PC500、日産化学工業製)20g、カーボンブラック(ライオンペースト W−311N LION製)50gを秤量し、撹拌した。このようにすることで、固形分がNaO:3%、SiO:13%、カーボン:8%となる着色膜形成用液組成物を得た。
【0086】
この液組成物を、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板(150×150×2.1mm)の表面上にバーコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で10分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、このガラス基板を720℃に昇温した焼成炉に投入し、塗布した着色膜を120秒間焼成した。さらに、着色膜を被覆したガラスを0.1N硫酸に2時間浸漬して脱アルカリ処理を行った。つづいて、表面に残っている酸を水で洗浄し、余分な水分を布で拭き取った。なお、得られた着色膜の膜厚は約10μmであった。表2に酸処理後の膜組成を示した。
【0087】
得られた着色膜付きガラス基体の可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、それぞれ0.1%以下であり、着色膜の遮光性機能を有していることがわかった(表2参照)。
【0088】
耐酸試験および耐アルカリ試験の結果から、いずれも、着色膜面および未被覆のガラス面における明度は変化しないことがわかった。
【0089】
また、実施例1と同様に、膜の硬度の評価を行った。その結果、試験前後でともに透過性の変化がなく、硬度の非常に高い膜であることがわかった。
【0090】
さらに、着色膜形成用液組成物の高温熔融し、着色剤の熔解性試験を行った。その結果、熔融後の液組成物において、カーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。
【0091】
またさらに、耐湿性を確認するために、50℃、95%RHに保持した温湿度試験機(エタックエンジニアリング製 JLH−300)に、着色膜付きガラス基体を400時間、保持したときにおけるガラス面および膜面の明度変化を、分光式色彩計(日本電色工業製 SE−2000)により測定し、膜状態を目視にて観察した。その結果、ガラス面および膜面いずれも明度は変化せず、着色膜の剥離も生じなかった。
【0092】
上記結果を踏まえてさらに、ウレタンシーラント接着性を確認するために、着色膜付きガラス基体にガラス用プライマー(横浜ゴム製)を塗布し、5分保持した後、ウインドシールド用接着剤(横浜ゴム製)を塗布した。さらに、接着剤を硬化させるために72時間放置し試験片とした。試験片は、それぞれの条件で硬化または老化させ、剥離試験により評価した。それぞれの条件は、以下の通りである。
【0093】
(A)室温に144時間放置し硬化させた(以下室温硬化)。
(B)80℃の高温槽に240時間放置後、標準状態で24時間保持した(以下加熱老化)。
(C)60℃の水中に240時間浸漬後、20℃の水で1時間冷却した(以下水浸漬老化)。
【0094】
いずれの条件においても、接着剤の凝集破壊が確認され、ウレタン接着性での良好な結果が得られた。
【0095】
【表2】
Figure 2004043276
Figure 2004043276
【0096】
(実施例9〜10)
表3に示す種々の膜組成を有する着色膜付きガラス基体を製造し、実施例7と同様にその特性を評価した。その結果も併せて表2に示す。
【0097】
実施例9〜10の結果、いずれの着色膜付きガラス基体においても、可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、それぞれ0.1%以下であり、遮光性機能を有していることがわかった。
【0098】
またさらに、着色膜形成用液組成物の高温熔融した結果、熔融後の液組成物において、カーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。
【0099】
上記結果を踏まえてさらに、ウレタン接着性を確認した結果、剥離試験において、接着剤の凝集破壊が観察され、良好な接着性を有していることがわかった。
【0100】
(実施例11)
珪酸ナトリウム溶液 30g、コロイダルシリカ 20g、カーボンブラック50gを秤量し、撹拌した。このようにすることで、固形分がNaO:3%、SiO:13%、カーボン:8%となる液組成物を得た。
【0101】
この液組成物を、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成の自動車用窓ガラス板の表面上にバーコータにて塗布し、室温で1分乾燥させた後、190℃で5分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、このガラス基板を730℃に昇温した焼成炉に投入し、この着色膜を120秒間焼成し、プレスによりガラスを曲げた後、風冷強化を行った。
【0102】
本発明による着色膜付き車両用強化窓ガラスは、プレス成型時にプレス型へ付着することなく、また強化工程での冷却割れも発生することなく、所望する曲面形状に成形できることが確認できた。
【0103】
(実施例12)
珪酸ナトリウム溶液 30g、コロイダルシリカ 20g、カーボンブラック50gを秤量し、撹拌した。このようにすることで、固形分がNaO:3%、SiO:13%、カーボン:8%となる液組成物を得た。
【0104】
この液組成物を、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成の自動車用窓ガラス板の表面上にバーコータにて塗布し、室温にて1分乾燥させた後、190℃で2分30秒間乾燥炉にて乾燥させた。その後、このガラス基板を730℃に昇温した焼成炉に投入し、この着色膜を120秒間焼成し、プレスによりガラスを曲げた後、風冷強化を行った。
【0105】
本発明による着色膜付き車両用強化窓ガラスは、プレス成型時にプレス型へ付着することなく、また強化工程での冷却割れも発生することなく、所望する曲面形状に成形できることが確認できた。
【0106】
以上の結果をまとめると、本発明による着色膜形成用液組成物により形成したセラミックカラーは、可視光線透過率および紫外線透過率が、全波長域において、0.1%以下である。このため、十分な遮光性機能を有していることがわかった。
【0107】
さらに高温熔融し、着色剤の熔解性試験において、熔融後の液組成物が透明であることが確認されたことから、本発明による着色膜付き車両用強化窓ガラスを、ガラス製造に際してカレット原料として再利用できることが明らかになった。
【0108】
また、さらに着色膜付きガラス基体を酸で処理することにより耐湿性試験において、膜の剥離を発生させず、かつ試験前後での色調も変化しないことが明らかになった。
【0109】
上記結果を踏まえてさらに、ウレタン接着性試験において、室温老化、加熱硬化、水浸漬老化のいずれの条件でも接着剤の凝集破壊が確認され、接着性に対する性能を有していることが明らかになった。
【0110】
本発明による着色膜付きガラス基体は、プレス成型や風冷強化工程に適用可能なことがわかった。
【0111】
(実施例13)
珪酸ナトリウム溶液(水ガラス3号、キシダ化学製)23g、珪酸カリウム溶液(スノーテックスK、日産化学工業製)8g、コロイダルシリカ(PC500、日産化学工業製)29g、カーボンブラック(ライオンペースト W−311N LION製)40gを秤量し、撹拌することで、着色膜形成用液組成物を得た。液組成の固形分の成分比を表3に示した。
【0112】
この液組成物を、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板(150×150×2.1mm)の表面上にバーコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で10分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、720℃に昇温した焼成炉にて90秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約7μmであった。表3に着色膜の組成および成膜条件を示した。
【0113】
得られた着色膜付きガラス基体の可視光線透過率および紫外線透過率を、分光光度計(島津製作所製 UVPC−3100)により測定した。その結果、可視光線〜紫外線のすべての波長域において、各透過率は0.1%以下であり、着色膜は、遮光性機能を有していることがわかった(表3参照)。
【0114】
また、本発明による着色膜の耐酸性および耐アルカリ(塩基)性を調べるために、以下の試験を行った。すなわち、0.1N硫酸(耐酸試験)および0.1N水酸化ナトリウム(耐アルカリ試験)溶液中に、着色膜付きガラス基体を24時間浸漬したときにおけるガラス面および膜面の明度変化を、分光式色彩計(日本電色工業製 SE−2000)により測定した。
【0115】
その結果、耐酸試験および耐アルカリ試験において、着色膜面および未被覆のガラス面のいずれも、明度の変化はないことがわかった。つまり本発明による着色膜は、酸性およびアルカリ性に対して良好な耐性を有していることがわかった。
【0116】
着色膜の硬度の評価は、テーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES 5150 ABRASER)を用い、着色膜付きガラス基体板に対して、500gの荷重で1000回摩耗輪を回転させて行い、試験前後で透過性の変化を測定した。その結果、本発明による着色膜は、試験前後でともに透過性に変化はなく、非常に硬度の高い膜であり、良好な耐摩耗性を有していることがわかった(表3参照)。
【0117】
さらに本発明による着色膜形成用液組成物が、カレット原料としてガラス製造の際に再熔融された場合の影響を調べるために、高温熔融試験を行った。試験は、TG−DTA分析装置(リガク製 熱分析装置 TAS−100)を用い、1300℃まで10℃/分の加熱速度で前記液組成物を加熱した。
【0118】
熔融後の液組成物を目視により観察したところ、着色剤であるカーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。この結果、本発明による着色膜は、ガラス製造の際にカレット原料に含まれたとしても、当該ガラスの着色に影響しないことがわかった。
【0119】
またさらに、耐湿性を確認するために、50℃、95%RHに保持した温湿度試験機(エタックエンジニアリング製 JLH−300)に、着色膜付きガラス基体を400時間、保持したときにおけるガラス面および膜面の明度変化を、分光式色彩計(日本電色工業製 SE−2000)により測定し、膜状態を目視にて観察した。その結果、ガラス面および膜面いずれも明度は変化せず、着色膜の剥離も生じなかった。
【0120】
(実施例14)
珪酸ナトリウム溶液 10g、珪酸カリウム 17g、コロイダルシリカ 33g、カーボンブラック 40gを秤量し、撹拌することで、分散液を得た。この分散液を洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板の表面上にスピンコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で30分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、720℃に昇温した焼成炉にて120秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約5μmであった(表3参照)。
【0121】
(実施例15)
珪酸ナトリウム溶液 23g、珪酸カリウム 8g、コロイダルシリカ 29g、カーボンブラック(ライオンペースト W−310A、LION製)40gを秤量し、撹拌することで、分散液を得た。この分散液を洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板の表面上にバーコータにて塗布し、室温で5分乾燥させた後、190℃で10分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、620℃に昇温した焼成炉にて600秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約4μmであった(表3参照)。
【0122】
(実施例16)
珪酸ナトリウム溶液 29g、珪酸リチウム(LSS35、日産化学工業製)7g、コロイダルシリカ 24g、カーボンブラック(ライオンペースト W−311N、LION製)40gを秤量し、撹拌することで、分散液を得た。この分散液を洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス組成のガラス基板の表面上にバーコータにて塗布し、室温で10分乾燥させた後、190℃で15分間乾燥炉にて乾燥させた。その後、720℃に昇温した焼成炉にて90秒間焼成した。なお、得られた着色膜の膜厚は約8μmであった(表3参照)。
【0123】
得られた着色膜付きガラス基体の可視光線透過率および紫外線透過率は、これらすべての波長域において、各透過率は0.1%以下であり、遮光性機能を有していることがわかった。
【0124】
また実施例13と同様に、耐酸試験と耐アルカリ試験を行った。その結果、耐酸試験、耐アルカリ試験ともに、着色膜面および未被覆のガラス面いずれも、明度の変化のないことがわかった。
【0125】
さらに実施例13と同様に、膜の硬度の評価を行った。その結果、試験前後でともに透過性の変化がなく、硬度の非常に高い膜であることがわかった。
【0126】
またさらに、着色膜形成用液組成物の高温熔融し、着色剤の高温熔融試験を行った。その結果、熔融後の液組成物において、カーボンは燃焼して消失しており、液組成物は透明であることが確認された。
【0127】
さらに実施例13と同様に、耐湿性試験を行った。その結果、ガラス面および膜面いずれも明度変化はなく、剥離も生じなかった。
【0128】
(実施例17〜19)
表1に示す種々の膜組成を有する着色膜付きガラス基体を製造し、実施例1〜4と同様にその特性を評価した。その結果も併せて表1に示す。
【0129】
【表3】
Figure 2004043276
Figure 2004043276
Figure 2004043276
【0130】
実施例13〜19の結果をまとめると、可視光線透過率および紫外線透過率が、全波長域において、0.1%以下である。このため、十分な遮光性機能を有していることがわかった。
【0131】
また、耐酸および耐アルカリ試験において、ガラス面および膜面いずれも試験前後での変化がなく、剥離等も生じないことがわかった。
【0132】
耐摩耗試験においては、試験後でも遮蔽性を有しており、透過部が見られず、高い硬度の着色膜であることが確認された。
【0133】
さらに高温熔融し、着色剤の高温熔融試験において、熔融後の液組成物が透明であることが確認されたことから、本発明による着色膜付きガラス基体を、ガラス製造に際してカレット原料として再利用できることが明らかになった。
【0134】
またさらに、耐湿性試験において、ガラス面および膜面いずれも試験前後での変化がなく、剥離等も生じないことがわかり、混合アルカリ効果により耐湿性および耐水性の向上が可能であることがわかった。
【0135】
(比較例1〜2)
比較例として、珪酸アルカリ塩を含まず、珪素酸化物および着色剤だけで構成される着色膜形成用液組成物を用いて、着色膜付きガラス基体を作製した。その組成および作製条件を表4に示した。
【0136】
【表4】
Figure 2004043276
【0137】
比較例1および2では、いずれも焼成後着色膜にクラックが無数に発生してしまい、着色膜付き車両用窓ガラスとして成立しなかった。
【0138】
(具体例)
図1、2および3に、本発明による自動車用窓構造に適用した着色膜付きガラス板の例を示す。
【0139】
図1は固定窓ガラス板の断面図である。また図2は、着色膜付きウインドシールドガラス(合わせガラス)の断面図である。さらに図3にウインドシールドガラスの正面図を示した。
【0140】
【発明の効果】
本発明によれば、車両用窓ガラスの着色膜を、アルカリ金属酸化物と珪素酸化物および着色剤で構成することにより、カレット原料として再利用することができる、という優れた効果を奏する。
【0141】
本発明の着色膜付きガラス板は、可視光線透過率および紫外線透過率が、全波長域において、0.1%以下である。このため、十分な遮光性機能を有している。またこの着色膜は、遷移金属あるいは遷移金属化合物などを実質的に含まなくても、硬質でしかも耐酸・耐アルカリ性を有する着色膜である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による着色膜付きの自動車の固定窓ガラス板の断面図である。
【図2】本発明による着色膜付きの自動車用ウインドシールドガラスの断面図である。
【図3】自動車用ウインドシールドガラスの正面図である。
【符号の説明】
1、3:ガラス板
2:着色膜
4:中間膜

Claims (11)

  1. 車両に設けられた開口部に、ガラス板を装着した車両用窓構造において、
    前記ガラス板は、少なくとも周辺部に酸化物を主成分とする着色膜が被覆されており、
    前記着色膜は、珪素酸化物、アルカリ金属酸化物および炭素を主成分とする微粒子を含んでなることを特徴とする車両用窓構造。
  2. 前記着色膜は、質量%で表して、
    珪素酸化物      40〜90%、
    アルカリ金属酸化物 0.1〜25%、
    微粒子         3〜45%
    を含んでなる請求項1に記載の車両用窓構造。
  3. 前記着色膜は、質量%で表して、
    珪素酸化物     49〜73%、
    アルカリ金属酸化物 10〜23%、
    微粒子       16〜40%
    を含んでなる請求項2に記載の車両用窓構造。
  4. 前記着色膜は、質量%で表して、
    珪素酸化物      54〜89%、
    アルカリ金属酸化物 0.1〜 5%、
    微粒子        10〜45%
    を含んでなる請求項2に記載の車両用窓構造。
  5. 前記アルカリ金属酸化物が少なくとも2種のアルカリ金属酸化物を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用窓構造。
  6. 前記少なくとも2種のアルカリ金属酸化物が、ナトリウムと、カリウムおよびリチウムから選ばれる少なくとも1種とを含む請求項5に記載の車両用窓構造。
  7. 前記着色膜が、質量%で表して、
    NaO       1〜18%、
    O        0〜18%、
    LiO       0〜10%、
    O+LiO 0.1〜19%、
    SiO      40〜70%、
    微粒子       15〜40%、
    を含んでなる請求項5に記載の車両用窓構造。
  8. 前記着色膜が、質量%で表して、
    NaO       5〜15%、
    O        0〜11%、
    LiO       0〜 5%、
    O+LiO   1〜12%、
    SiO2      50〜70%、
    微粒子      15〜35%、
    を含んでなる請求項6に記載の車両用窓構造。
  9. 前記着色膜が、着色成分として、遷移金属を実質的に含まれていない請求項1〜8のいずれか1項に記載の車両用窓構造。
  10. 前記着色膜が、Ti,Zn,Zr,P,La,Co,Cu,Ni,Mn,SbおよびPbを実質的に含まない請求項1〜9のいずれか1項に記載の車両用窓構造。
  11. 前記微粒子が、カーボンブラック微粒子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の車両用窓構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012505817A (ja) * 2008-10-20 2012-03-08 エージーシー グラス ユーロップ 改良された耐薬品性を有するガラス物品

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