JP2004039259A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池10は、セパレータ58間に複数の電解質・電極接合体56を挟持している。セパレータ58は、互いに積層されて第2空間部S2を形成するプレート60、62を備え、前記第2空間部S2は、外側突起部66を介して燃料ガス通路67と酸化剤ガス通路82とに仕切られる。燃料ガス通路67は、燃料ガス導入口88を介して第1空間部S1側の燃料ガス供給流路94に連通する一方、酸化剤ガス通路82は、酸化剤ガス導入口78を介して前記第1空間部S1とは異なる第1空間部S1側の酸化剤ガス供給流路96に連通する。
【選択図】図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される円板状電解質・電極接合体が円板状セパレータ間に配設される燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、固体電解質型燃料電池(SOFC)は、電解質に酸化物イオン導電体、例えば、安定化ジルコニアを用いており、この電解質の両側にアノード電極およびカソード電極を対設して構成される単セル(電解質・電極接合体)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持することにより構成されている。この燃料電池は、通常、所定数だけ連続的に積層して燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
この種の燃料電池において、カソード電極に酸化剤ガス、例えば、主に酸素を含有するガスあるいは空気(以下、酸素含有ガスともいう)が供給されると、前記カソード電極と電解質との界面でこの酸化剤ガス中の酸素がイオン化(O2−)され、酸素イオンが電解質を通ってアノード電極側に移動する。その間に生じた電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギとして利用される。なお、アノード電極には、燃料ガス、例えば、主に水素を含有するガス(以下、水素含有ガスともいう)やCOが供給されているために、このアノード電極において、酸素イオン、電子および水素(またはCO)が反応して水(またはCO2 )が生成される。
【0004】
一般的に、固体電解質型燃料電池は、作動温度が800℃〜1000℃と高温であるため、高温の排熱を利用して燃料ガスの内部改質が可能であるとともに、例えば、ガスタービンを回して発電することができる。従って、固体電解質型燃料電池は、各種燃料電池の中でも、最も高い発電効率を示しており、ガスタービンとの組み合わせの他、車載用としての利用が望まれている。
【0005】
ところで、単セルとセパレータとの間には、アノード電極およびカソード電極に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスをシールするために、通常、ガラスリング等のシール部材が介装されている。このため、構成が複雑化するとともに、燃料電池全体が積層方向に大型化するという問題がある。特に、高温で使用される固体電解質型燃料電池では、シール部材が熱による影響を受け易く、所望のシール性を確保することが困難となっている。
【0006】
そこで、例えば、特開平11−16581号公報に開示されている固体酸化物型燃料電池が知られている。この従来技術では、図11に示すように、セパレータ1の両主面2a、2bに、複数のリブ状部材3a、3bが放射状に設けられている。セパレータ1の両主面2a、2bには、外周端部から中心部に達する溝4a、4bが所定の深さに形成されるとともに、前記溝4a、4bには、燃料ガス供給管5および酸化剤ガス供給管6が挿入されている。燃料ガス供給管5および酸化剤ガス供給管6は、先端を潰して扁平状に構成されており、セパレータ1に殆ど埋設した状態で配設されている。
【0007】
このような構成において、燃料ガス供給管5に供給される燃料ガスは、セパレータ1の主面2aの中心部に導出される一方、酸化剤ガス供給管6に供給される酸化剤ガスは、前記セパレータ1の主面2bの中心部に導出される。燃料ガスは、主面2a側に配置される電解質・電極接合体(図示せず)の中心部から外周側に沿って移動するとともに、酸化剤ガスは、主面2b側に配置される他の電解質・電極接合体(図示せず)の中心部から外周側に沿って移動する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、燃料ガス供給管5および酸化剤ガス供給管6をレイアウトするために、両主面2a、2bに外周端部から中心部に達する溝4a、4bが所定の深さに形成されている。このため、特に、セパレータ1には、熱応力により変形や破損が惹起し易くなるとともに、燃料ガス供給管5および酸化剤ガス供給管6の存在により電解質・電極接合体で化学反応が均一化されないという問題が指摘されている。また、多数のセルを積層して燃料電池スタックを構成すると、燃料ガス供給管5および酸化剤ガス供給管6の厚さにより前記燃料電池スタックが積層方向に長尺化してしまうという懸念がある。
【0009】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、供給管を用いることなく燃料ガスと酸化剤ガスとを分離しながら所望の発電性能を維持するとともに、シール構造を可及的に簡素化し、小型化および簡素化を図ることが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る燃料電池では、セパレータ間に電解質・電極接合体を配置する第1空間部が設けられるとともに、前記セパレータは、互いに積層されて第2空間部を形成する第1および第2プレートを備えている。第2空間部は、区画部を介してアノード電極に燃料ガスを供給するための燃料ガス通路と、カソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路とに仕切られている。
【0011】
このため、セパレータでは、区画部を介して燃料ガス通路と酸化剤ガス通路とをシールすることができ、専用のシール部材を使用する必要がない。従って、セパレータの簡素化および軽量化を図るとともに、積層方向の寸法を有効に短尺化することが可能になる。
【0012】
さらに、燃料ガス通路は、第1空間部に配置される電解質・電極接合体に燃料ガスを供給する燃料ガス導入口に連通する一方、酸化剤ガス通路は、前記第1空間部とは異なる第1空間部に配置される電解質・電極接合体に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス導入口に連通している。これにより、セパレータと電解質・電極接合体とのシール構造が可及的に簡素化され、シール部材を大幅に削減して構成の簡素化が容易に図られる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る燃料電池では、区画部が、第1または第2プレートに形成されて前記第2または第1プレートに接触する突起部を備えている。このため、セパレータ自体がシール機能を有するため、構成部品間で熱膨張差が惹起されることがなく、熱応力が良好に緩和される。しかも、簡単な構成で、確実なシール機構を有することができ、燃料ガスおよび酸化剤ガスを良好に供給することが可能になる。
【0014】
さらにまた、本発明の請求項3に係る燃料電池では、燃料ガス導入口が、第1空間部に配置される電解質・電極接合体の中心部に対応して設けられるとともに、酸化剤ガス導入口が、前記第1空間部とは異なる第1空間部に配置される電解質・電極接合体の中心部に対応して設けられている。
【0015】
従って、セパレータ間に配置されている電解質・電極接合体には、中心部から外周に向かって燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給される。これにより、電解質・電極接合体の温度分布が小さくなって熱応力による破損を回避するとともに、発電面全体における化学反応が均一化し、発電効率を高めることが可能になる。
【0016】
しかも、電解質・電極接合体に供給される燃料ガスの流量を均一化することができ、燃料ガスの利用率を高めることが可能になるとともに、全表面積を有効に利用して発電性能の向上が図られる。
【0017】
その上、電解質・電極接合体の中心部に燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給され、前記燃料ガスおよび酸化剤ガスが前記電解質・電極接合体の外周側に向かって放射状に移動する。そして、反応後の燃料ガスおよび酸化剤ガス(以下、排ガスともいう)は、電解質・電極接合体の周囲から混合して排出される。このため、電解質・電極接合体とセパレータとの間に、燃料ガスおよび酸化剤ガスと排ガスとのシール構造が不要になり、構成の簡素化が容易に図られる。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る燃料電池では、第1および第2プレートが、互いに対向して突出する第1および第2ボス部を備え、前記第1および第2ボス部間で電解質・電極接合体を挟持している。従って、第1および第2ボス部を介して電解質・電極接合体の保持が最小限の接触で行われ、前記電解質・電極接合体での化学反応を妨げることがない。
【0019】
さらに、本発明の請求項5に係る燃料電池では、第1および第2ボス部が、電解質・電極接合体の両面に燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給されることにより発生する電気エネルギを集電する集電体を構成している。これにより、各燃料電池で発生する電気エネルギを確実に集電することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の請求項6に係る燃料電池では、酸化剤ガス供給側の第1ボス部は、燃料ガス供給側の第2ボス部に比べて突出寸法が大きく構成されている。カソード電極に供給される酸化剤ガスは、アノード電極に供給される燃料ガスよりも流量が大きい。このため、第1ボス部を第2ボス部よりも大きく設定することにより、酸化剤ガスの圧力損失を抑えることができる。特に、燃料電池とガスタービンとを組み合わせた場合、酸化剤ガスの供給側にあるコンプレッサの加圧損失を低減することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池10が複数積層された燃料電池スタック12の概略斜視説明図であり、図2は、前記燃料電池スタック12の一部断面説明図である。
【0022】
燃料電池10は、固体電解質型燃料電池であり、設置用の他、車載用等の種々の用途に用いられている。本実施形態では、燃料電池スタック12の適用例として、例えば、ガスタービン14に組み込む構成が、図3に示されている。なお、図3では、ガスタービン14に組み込むために、図1および図2に示す燃料電池スタック12とは異なる形状とされているが、実質的な構成は同一である。
【0023】
ガスタービン14を構成するケーシング16内には、燃焼器18を中心にして、燃料電池スタック12が組み込まれており、この燃料電池スタック12の中央側から前記燃焼器18側の室20に排ガスが排出される。室20は、排ガスの流れ方向(矢印X方向)に向かって幅狭となり、その先端側外周部に熱交換器22が外装されている。室20の前端側にタービン(出力タービン)24が配設されており、このタービン24にコンプレッサ26および発電器28が同軸に連結されている。ガスタービン14は、全体として軸対称に構成されている。
【0024】
タービン24の排出通路30は、熱交換器22の第1通路32に連通するとともに、コンプレッサ26の供給通路34は、前記熱交換器22の第2通路36に連通する。第2通路36は、加熱エア導入通路38を介して燃料電池スタック12の外周部に連通している。
【0025】
図1に示すように、燃料電池スタック12は、外周波形円板状の複数の燃料電池10を矢印A方向に積層するとともに、その積層方向両端には、エンドプレート40a、40bが配置され、複数本、例えば、8本の締め付け用ボルト42を介して一体的に締め付け保持されている。燃料電池スタック12の中心部には、排ガス排出用の円形孔部(排出マニホールド)44がエンドプレート40bを底部として矢印A方向に形成される(図2参照)。
【0026】
この円形孔部44の周囲には、同心円上に複数、例えば、4つの燃料ガス供給連通孔46が、エンドプレート40aを底部としてエンドプレート40bから矢印A方向に形成される。エンドプレート40a、40bには、それぞれ出力端子48a、48bが設けられる。
【0027】
図4および図5に示すように、燃料電池10は、例えば、安定化ジルコニア等の酸化物イオン導電体で構成される電解質(電解質板)50の両面に、カソード電極52およびアノード電極54が設けられた電解質・電極接合体56を備える。電解質・電極接合体56は、比較的小径な円板状に形成される。
【0028】
複数個、例えば、16個の電解質・電極接合体56を挟んで一組のセパレータ58が配設されることにより、燃料電池10が構成される。セパレータ58間には第1空間部S1が設けられる。この第1空間部S1には、セパレータ58の中心部である円形孔部44と同心円上に8個の電解質・電極接合体56が配列される内周側配列層P1と、この内周側配列層P1の外周に8個の電解質・電極接合体56が配列される外周側配列層P2とが設けられる。
【0029】
セパレータ58は、互いに積層されて第2空間部S2を形成する複数枚、例えば、2枚のプレート60、62を備える。プレート60、62は、例えば、ステンレス合金等の板金で構成されており、それぞれ波形外周部60a、62aを設けている。
【0030】
図6乃至図8に示すように、プレート60は、円形孔部44に沿って周回する内側突起部(区画部)64がプレート62側に膨出成形されるとともに、各燃料ガス供給連通孔46の周囲には、前記プレート62から離間する方向に突出する凹部65が形成される。プレート60には、内側突起部64と同心円上に外側突起部(区画部)66が設けられるとともに、前記内側突起部64と前記外側突起部66との間には、燃料ガス供給連通孔46に連通する燃料ガス通路67が形成される。
【0031】
外側突起部66は、それぞれ半径外方向に所定の距離だけ突出する複数の第1壁部68および第2壁部70を交互に設けている。第1壁部68は、先端を結ぶ仮想円が内周側配列層P1の中心線を形成し、この内周側配列層P1に沿って8個の電解質・電極接合体56が配列される。第1壁部68間に第2壁部70が設けられ、前記第2壁部70の先端を通る仮想円により外周側配列層P2の中心線が形成される。この外周側配列層P2の中心線に沿って8個の電解質・電極接合体56が配列される。
【0032】
第1壁部68および第2壁部70の先端側周囲には、それぞれ3個の酸化剤ガス導入口78がプレート60の面方向に貫通して形成される。プレート60には、第1空間部S1に内周側配列層P1および外周側配列層P2に沿って配列される各電解質・電極接合体56側に突出し、各電解質・電極接合体56に接する第1ボス部80が膨出成形される。
【0033】
プレート60とプレート62との間には、内側突起部64と外側突起部66との間に対応して燃料ガス通路67が形成されるとともに、前記外側突起部66の外方に対応して酸化剤ガス通路82が形成される。この酸化剤ガス通路82は、プレート60に形成された酸化剤ガス導入口78に連通する。酸化剤ガス導入口78は、内周側配列層P1および外周側配列層P2の中心線上に設けられており、上記の第1空間部S1とは異なる第1空間部S1に前記内周側配列層P1および前記外周側配列層P2に沿って配列される各電解質・電極接合体56のカソード電極52の中心部に対応して開口している。
【0034】
図6、図7および図9に示すように、プレート62は、燃料ガス供給連通孔46の周囲にプレート60から離間する方向に突出する凸部84が成形される。プレート62には、内周側配列層P1および外周側配列層P2に沿って配置される各電解質・電極接合体56側に突出して前記電解質・電極接合体56に接する第2ボス部86が設けられる。第2ボス部86は、第1ボス部80よりも径方向および高さ方向の寸法が小さく設定されている。
【0035】
プレート62には、プレート60に成形された第1および第2壁部68、70の先端部内側に連通する燃料ガス導入口88が貫通形成される。燃料ガス導入口88は、酸化剤ガス導入口78と同様に、内周側配列層P1および外周側配列層P2に配列される各電解質・電極接合体56のアノード電極54側の中心部に対応して開口している。
【0036】
セパレータ58には、燃料ガス供給連通孔46をシールするための絶縁シール90が設けられる。この絶縁シール90は、例えば、セラミックスの板材を配置する、あるいはセラミックスをプレート60または62に溶射することにより構成される。プレート60、62の波形外周部60a、62aは、互いに離間する方向に膨出成形されており(図6参照)、前記波形外周部60aまたは前記波形外周部62aには、セラミックス等の絶縁シール92が介装あるいは溶射により設けられる。
【0037】
図5および図6に示すように、一方のセパレータ58を構成するプレート60と他方のセパレータ58を構成するプレート62とにより、電解質・電極接合体56が挟持される。具体的には、電解質・電極接合体56を挟んで互いに対向するプレート60、62には、第1ボス部80および第2ボス部86が膨出成形されており、前記第1ボス部80と前記第2ボス部86とによって前記電解質・電極接合体56が挟持される。
【0038】
図10に示すように、電解質・電極接合体56と一方のセパレータ58を構成するプレート62との間には、燃料ガス通路67から燃料ガス導入口88を介して連通する燃料ガス供給流路94が形成される。電解質・電極接合体56と他方のセパレータ58を構成するプレート60との間には、酸化剤ガス通路82から酸化剤ガス導入口78を介して連通する酸化剤ガス供給流路96が形成される。燃料ガス供給流路94および酸化剤ガス供給流路96は、第2ボス部86および第1ボス部80の高さ寸法に応じて各開口寸法が設定されている。酸化剤ガスの流速が燃料ガスの流速よりも大きいために、第1ボス部80が第2ボス部86よりも大きな寸法に設定されている。
【0039】
図6に示すように、燃料ガス通路67は、同一のセパレータ58を構成するプレート60、62間に形成されて中心部側に設けられた燃料ガス供給連通孔46に連通する。酸化剤ガス通路82は、燃料ガス通路67と同一の面上に形成されており、同一のセパレータ58を構成するプレート60、62の波形外周部60a、62a間を介して外部に開放されている。
【0040】
各セパレータ58は、積層方向(矢印A方向)に沿って第1および第2ボス部80、86が電解質・電極接合体56を挟持することにより、集電体として機能するとともに、前記プレート60の外側突起部66が前記プレート62に接触することにより、各燃料電池10が矢印A方向に沿って電気的に直列に接続されている。
【0041】
図1および図2に示すように、上記のように構成される燃料電池10が矢印A方向に積層されて、その積層方向両端にエンドプレート40a、40bが配置される。エンドプレート40a、40bには、プレート60、62の波形外周部60a、62aが内方に湾曲する部分に対応して孔部100a、100bが形成される。孔部100a、100bには、絶縁材102a、102bが装着されており、締め付け用ボルト42がこの絶縁材102a、102bに挿入されて端部にナット104が螺合することにより、積層されている各燃料電池10に所望の締め付け力が付与されている。
【0042】
このように構成される燃料電池スタック12の動作について、以下に説明する。
【0043】
まず、燃料電池10を組み付ける際には、セパレータ58を構成するプレート60、62が接合される。具体的には、図6に示すように、プレート60に一体成形されている外側突起部66がプレート62にろう付けにより固定されるとともに、リング状の絶縁シール90が燃料ガス供給連通孔46を周回して前記プレート60または前記プレート62に、例えば、溶射等によって設けられる。一方、プレート60の波形外周部60aまたはプレート62の波形外周部62aの端面に、波形状の絶縁シール92が、例えば、溶射によって設けられる。
【0044】
これにより、セパレータ58が構成され、プレート60、62間には、同一面上に位置して燃料ガス通路67と酸化剤ガス通路82とが形成される。さらに、燃料ガス通路67が燃料ガス供給連通孔46に連通する一方、酸化剤ガス通路82がそれぞれの波形外周部60a、62a間から外部に開放されている。
【0045】
次いで、セパレータ58間に電解質・電極接合体56が挟持される。図4および図5に示すように、各セパレータ58は、互いに対向する面、すなわち、プレート60、62間に内周側配列層P1に対応して8個の電解質・電極接合体56が配置されるとともに、外周側配列層P2に沿って8個の電解質・電極接合体56が配置される。各電解質・電極接合体56の配置位置には、互いに近接する方向に突出して第1および第2ボス部80、86が形成されており、前記第1および第2ボス部80、86によって前記電解質・電極接合体56が挟持される。
【0046】
このため、図10に示すように、電解質・電極接合体56のカソード電極52とプレート60との間には、酸化剤ガス導入口78を介して酸化剤ガス通路82に連通する酸化剤ガス供給流路96が形成される。一方、電解質・電極接合体56のアノード電極54とプレート62との間には、燃料ガス導入口88を介して燃料ガス通路67に連通する燃料ガス供給流路94が形成される。さらに、セパレータ58間には、反応後の燃料ガスおよび酸化剤ガスを混合し、排ガスとして円形孔部44に導くための排出通路106が形成される。
【0047】
上記のように組み付けられた燃料電池10が矢印A方向に積層されて、燃料電池スタック12が組み立てられる(図1および図2参照)。
【0048】
そこで、燃料電池スタック12を構成するエンドプレート40bの燃料ガス供給連通孔46に燃料ガス(例えば、水素含有ガス)が供給されるとともに、前記燃料電池スタック12の外周側から加圧された酸化剤ガスである酸素含有ガス(以下、空気ともいう)が供給される。燃料ガス供給連通孔46に供給された燃料ガスは、積層方向(矢印A方向)に移動しながら、各燃料電池10を構成するセパレータ58内の燃料ガス通路67に導入される(図6参照)。
【0049】
図5に示すように、燃料ガスは、外側突起部66を構成する第1および第2壁部68、70に沿って移動し、前記第1および第2壁部68、70の先端部から燃料ガス導入口88を介して燃料ガス供給流路94に導入される。燃料ガス導入口88は、各電解質・電極接合体56のアノード電極54の中心部に対応して設けられており、前記燃料ガス供給流路94に導入された前記燃料ガスは、前記アノード電極54の中心部から外周に向かって流動する(図10参照)。
【0050】
一方、各燃料電池10の外周側から供給される酸化剤ガスは、各セパレータ58のプレート60、62間に形成されている酸化剤ガス通路82に供給される。この酸化剤ガス通路82に供給された酸化剤ガスは、酸化剤ガス導入口78から酸化剤ガス供給流路96に導入され、電解質・電極接合体56のカソード電極52の中心部から外周に沿って流動する(図5および図10参照)。
【0051】
従って、各電解質・電極接合体56では、アノード電極54の中心部から外周に向かって燃料ガスが供給されるとともに、カソード電極52の中心部から外周に向かって酸化剤ガスが供給される。その際、酸素イオンが電解質50を通ってアノード電極54に移動し、化学反応により発電が行われる。
【0052】
本実施形態では、各電解質・電極接合体56は、第1および第2ボス部80、86により挟持されており、前記第1および第2ボス部80、86が集電体として機能する。このため、各燃料電池10で発生する電気エネルギを確実に集電することができるとともに、前記燃料電池10が矢印A方向(積層方向)に電気的に直列に接続されて出力端子48a、48b間に出力を取り出すことが可能になる。
【0053】
さらに、第1および第2ボス部80、86を介して電解質・電極接合体56の保持が最小限の接触で行われるため、前記電解質・電極接合体56での化学反応を妨げることがない。
【0054】
しかも、酸化剤ガス供給側の第1ボス部80は、燃料ガス供給側の第2ボス部86に比べて突出寸法が大きく構成されている(図10参照)。酸化剤ガス供給流路96に供給される酸化剤ガスは、燃料ガス供給流路94に供給される燃料ガスよりも流量が大きいため、第1ボス部を第2ボス部よりも大きく設定することにより、前記酸化剤ガス供給流路96の流量を増加しても酸化剤ガスの圧力損失を抑えることができる。これは、特に、燃料電池10とガスタービン14とを組み合わせた場合に有効である。
【0055】
一方、各電解質・電極接合体56の外周に移動した反応後の燃料ガスおよび酸化剤ガス(排ガス)は、セパレータ58間に形成される排出通路106を介して前記セパレータ58の中心部側に移動する。セパレータ58の中心部には、排ガスマニホールドを構成する円形孔部44が形成されており、排ガスがこの円形孔部44から外部に排出される。これにより、セパレータ58を介して燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給マニホールドと排出マニホールドとを設けることができ、特別な部品を取り付ける必要がなく、燃料電池スタック12の構成を有効に簡素化することが可能になる。しかも、排ガスがセパレータ58の中心部である円形孔部44に向かって排出されるため、複数の電解質・電極接合体56からの排ガスの流れに乱れが生じ難くなり、流量が一定となり易い。
【0056】
この場合、本実施形態では、セパレータ58が2枚のプレート60、62を備えており、前記プレート60、62間に第2空間部S2が形成されるとともに、前記第2空間部S2は、区画部である外側突起部66を介して燃料ガス通路67と酸化剤ガス通路82とに仕切られている。
【0057】
従って、外側突起部66が燃料ガス通路67と酸化剤ガス通路82とのシール機能を有し、専用のシール部材が不要になる。このため、燃料電池10のシール構造が有効に簡素化されるとともに、前記燃料電池10全体の積層方向の寸法を良好に短尺化することができるという効果が得られる。
【0058】
さらに、外側突起部66がプレート60に一体的に成形されている。これにより、セパレータ58自体がシール機能を有するため、構成部品間で熱膨張差が惹起されることがなく、熱応力が良好に緩和される。しかも、簡単な構成で、確実なシール機構を有することができ、燃料ガスおよび酸化剤ガスを良好に供給することが可能になる。
【0059】
さらにまた、燃料ガス通路67は、第1空間部S1に配置される電解質・電極接合体56に燃料ガスを供給する燃料ガス導入口88に連通する一方、酸化剤ガス通路82は、前記第1空間部S1とは異なる第1空間部S1に配置される電解質・電極接合体56に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス導入口78に連通している。このため、従来の供給管等の付加的なシール部材が大幅に削減され、セパレータ58と電解質・電極接合体56とのシール構造が可及的に簡素化されることで、構成の簡素化が容易に図られるとともに、積層方向の寸法を有効に短尺化することができるという利点がある。
【0060】
また、本実施形態では、燃料ガス通路67および酸化剤ガス通路82の出口である燃料ガス導入口88および酸化剤ガス導入口78が、各電解質・電極接合体56のそれぞれの中心部に対応して設けられている(図10参照)。従って、電解質・電極接合体56の中心部から外周に向かって燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給されるため、各電解質・電極接合体56の温度分布が小さくなって、熱応力による破損を回避するとともに、発電面全体における化学反応が均一化する。
【0061】
しかも、各電解質・電極接合体56に供給される燃料ガスの流量を均一化することができ、燃料ガスの利用率を高めることが可能になるとともに、全表面積を有効に利用して発電性能の向上が図られるという効果が得られる。
【0062】
その上、電解質・電極接合体56の中心部に、それぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスが供給され、前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスが前記電解質・電極接合体56の外周側に向かって放射状に移動している。これにより、電解質・電極接合体56とセパレータ58との間には、燃料ガスと酸化剤ガスとのシール構造が不要になり、構成の簡素化が容易に図られるという利点がある。
【0063】
次に、燃料電池スタック12を、図3に示すガスタービン14に組み込んだ場合の動作について、概略的に説明する。
【0064】
図3に示すように、このガスタービン14では、始動時に燃焼器18が駆動されてタービン24が回転され、コンプレッサ26および発電器28が駆動される。コンプレッサ26の駆動によって外気が供給通路34に導入され、高圧かつ所定温度(例えば、200℃)になった空気が熱交換器22の第2通路36に送られる。
【0065】
この熱交換器22の第1通路32には、反応後の燃料ガスおよび酸化剤ガスである高温の排ガスが供給されており、熱交換器22の第2通路36に導入された空気が加熱される。この加熱された空気は、加熱エア導入通路38を通って燃料電池スタック12を構成する各燃料電池10の外周部に導入される。このため、燃料電池10で発電が行われ、反応後の燃料ガスおよび酸化剤ガスである排ガスが、ケーシング16内の室20に排出される。
【0066】
その際、固体電解質型燃料電池である燃料電池10から排出される排ガスは、800℃〜1000℃の高温となっており、この排ガスがタービン24を回転させて発電器28による発電が行われるとともに、熱交換器22に送られて吸入される外部空気の加熱を行うことができる。これにより、燃焼器18を使用する必要がなく、燃料電池スタック12から排出される排ガスを用いてタービン24を回転させることが可能になる。
【0067】
しかも、排ガスが800℃〜1000℃と高温となっており、燃料電池スタック12に供給される燃料の内部改質を行うことができる。従って、燃料として、例えば、天然ガスやブタン、あるいはガソリン系等の種々の燃料を使用して内部改質を行うことが可能になる。
【0068】
なお、本実施形態では、燃料電池スタック12をガスタービン14に組み込んで使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、燃料電池スタック12を車載用として使用することも可能である。
【0069】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池では、セパレータを構成する第1および第2プレート間に第2空間部が形成されるとともに、前記第2空間部が、区画部を介してアノード電極に燃料ガスを供給するための燃料ガス通路と、カソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路とに仕切られている。
【0070】
このため、セパレータでは、区画部を介して燃料ガス通路と酸化剤ガス通路とをシールすることができ、専用のシール部材を使用する必要がない。従って、セパレータの簡素化および軽量化を図るとともに、積層方向の寸法を有効に短尺化することが可能になる。
【0071】
さらに、燃料ガス通路は、第1空間部に配置される電解質・電極接合体に燃料ガスを供給する燃料ガス導入口に連通する一方、酸化剤ガス通路は、前記第1空間部とは異なる第1空間部に配置される電解質・電極接合体に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス導入口に連通している。これにより、セパレータと電解質・電極接合体とのシール構造が可及的に簡素化され、シール部材を大幅に削減して構成の簡素化が容易に図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池が複数積層された燃料電池スタックの概略斜視説明図である。
【図2】前記燃料電池スタックの一部断面説明図である。
【図3】前記燃料電池スタックを組み込むガスタービンの概略構成を示す断面説明図である。
【図4】前記燃料電池の分解斜視図である。
【図5】前記燃料電池の動作を示す一部分解斜視説明図である。
【図6】前記燃料電池スタックの一部省略断面図である。
【図7】前記燃料電池を構成するセパレータの分解斜視説明図である。
【図8】前記セパレータを構成する一方のプレートの正面説明図である。
【図9】前記セパレータを構成する他方のプレートの正面説明図である。
【図10】前記燃料電池の動作説明図である。
【図11】従来技術に係る燃料電池の斜視説明図である。
【符号の説明】
10…燃料電池 12…燃料電池スタック
14…ガスタービン 18…燃焼器
22…熱交換器 24…タービン
26…コンプレッサ 28…発電器
50…電解質 52…カソード電極
54…アノード電極 56…電解質・電極接合体
58…セパレータ 60、62…プレート
60a、62a…波形外周部 64…内側突起部
66…外側突起部 67…燃料ガス通路
78…酸化剤ガス導入口 80、86…ボス部
82…酸化剤ガス通路 88…燃料ガス導入口
94…燃料ガス供給流路 96…酸化剤ガス供給流路
Claims (6)
- 電解質をアノード電極とカソード電極とで挟んで構成される電解質・電極接合体がセパレータ間に配設される燃料電池であって、
前記セパレータ間には、前記電解質・電極接合体が配置される第1空間部が設けられ、
前記セパレータは、互いに積層されて第2空間部を形成する第1および第2プレートを備えるとともに、
前記第2空間部は、区画部を介して前記アノード電極に燃料ガスを供給するための燃料ガス通路と、前記カソード電極に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス通路とに仕切られており、
前記燃料ガス通路は、前記第1空間部に配置される前記電解質・電極接合体に前記燃料ガスを供給する燃料ガス導入口に連通する一方、
前記酸化剤ガス通路は、前記第1空間部とは異なる第1空間部に配置される前記電解質・電極接合体に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス導入口に連通することを特徴とする燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池において、前記区画部は、前記第1または第2プレートに形成されて前記第2または第1プレートに接触する突起部を備えることを特徴とする燃料電池。
- 請求項1記載の燃料電池において、前記燃料ガス導入口は、前記第1空間部に配置される前記電解質・電極接合体の中心部に対応して設けられるとともに、
前記酸化剤ガス導入口は、前記第1空間部とは異なる第1空間部に配置される前記電解質・電極接合体の中心部に対応して設けられることを特徴とする燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池において、前記第1および第2プレートは、互いに対向して突出する第1および第2ボス部を備え、
前記第1および第2ボス部間で前記電解質・電極接合体を挟持することを特徴とする燃料電池。 - 請求項4記載の燃料電池において、前記第1および第2ボス部は、前記電解質・電極接合体の両面に前記燃料ガスおよび前記酸化剤ガスが供給されることにより発生する電気エネルギを集電する集電体を構成することを特徴とする燃料電池。
- 請求項4または5記載の燃料電池において、前記酸化剤ガス供給側の前記第1ボス部は、前記燃料ガス供給側の第2ボス部に比べて突出寸法が大きく設定されることを特徴とする燃料電池。
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