JP2004039020A - 光ピックアップ装置及び光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】光源から出射された光束は光学素子53及び対物レンズ60を介して情報記録媒体15の記録面に集光され、記録面で反射され対物レンズ及び光学素子53を介した戻り光束は光検出器59で受光される。例えば情報記録媒体の基板を透過する光束に光学的位相差が付与される場合には、基板を透過する光束に付与される光学的位相差とは逆極性の位相差が光学素子を透過する光束に付与されるように、所定の電圧が光学素子に印加される。これにより、光学的位相差の誤差が少ない戻り光束が得られ、例えば偏光性分岐光学素子を介して戻り光束を分岐する場合であっても、光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が低下するのを防止できる。
【選択図】 図2
【解決手段】光源から出射された光束は光学素子53及び対物レンズ60を介して情報記録媒体15の記録面に集光され、記録面で反射され対物レンズ及び光学素子53を介した戻り光束は光検出器59で受光される。例えば情報記録媒体の基板を透過する光束に光学的位相差が付与される場合には、基板を透過する光束に付与される光学的位相差とは逆極性の位相差が光学素子を透過する光束に付与されるように、所定の電圧が光学素子に印加される。これにより、光学的位相差の誤差が少ない戻り光束が得られ、例えば偏光性分岐光学素子を介して戻り光束を分岐する場合であっても、光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が低下するのを防止できる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、情報記録媒体の記録面に光を照射し、その記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略述する)は、その機能が向上するに伴い、音楽や映像といったAV(Audio−Visual)情報を取り扱うことが可能となってきた。これらAV情報の情報量は非常に大きいために、記録媒体としてCD(compact disc)やDVD(digital versatile disc)などの大容量の光ディスクが注目されるようになり、その低価格化とともに、光ディスクをアクセスするためのドライブ装置として光ディスク装置がパソコンの周辺機器の一つとして普及するようになった。
【0003】
光ディスク装置では、スパイラル状又は同心円状のトラックが形成された光ディスクなどの情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して情報の記録又は消去を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置は、情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して光スポットを形成するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置として、光ピックアップ装置を備えている。
【0004】
一般的に光ピックアップ装置は、対物レンズを含み、光源から出射される光束を情報記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された受光素子などを備えている。この受光素子からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報(サーボ情報)などを含む信号が出力される。そして、光ディスク装置は、受光素子からの出力信号に基づいて、記録面の所定位置に所定形状の光スポットが形成されるように各種サーボ制御を行っている。
【0005】
通常光ピックアップ装置の光学系には、戻り光束を受光素子の受光方向に分岐するための分岐光学素子が含まれている。この分岐光学素子としては、分岐作用が入射する光束の偏光方向に依存しない無偏光性分岐光学素子と、入射する光束の偏光方向に応じて分岐作用が異なる偏光性分岐光学素子とがある。分岐光学素子が往路と復路の共通光路上に配置される場合に、無偏光性分岐光学素子では、光源から出射された光束もその一部が分岐されるため、情報記録媒体の記録面に照射される光量が減少し、高速記録への対応が困難となる。そこで、高速記録に対応した光ピックアップ装置では、分岐光学素子として偏光性分岐光学素子が多く用いられている。この場合には、光源から出射される光束の偏光方向に対して、例えばλ/4板などを用いて戻り光束の偏光方向をほぼ90度変更することにより、光源から出射された光束の殆どが偏光性分岐光学素子を透過し、戻り光束の大部分が偏光性分岐光学素子で分岐されるようにすることができる。すなわち、光利用効率が向上し、高速記録への対応が可能となる。
【0006】
また、一般に情報記録媒体では、透明の基板上に記録面が形成されており、対物レンズからの光束はその基板を透過して記録面に集光されるようになっている。そして、その基板は通常樹脂成形品であり、その大部分は生産性の点から、成形品と類似した形状のキャビティを有する成形用型(通常は金型)に溶融状態の樹脂を加圧しながら注入する射出成形法及びそれに類似する方法により製造されている。成形品が情報記録媒体のような円盤形状の場合には、キャビティの中央部(基板の回転中心部分に対応する部分)にダイレクトゲート(注入口)を持つラジアルフロータイプの成形用型を用いた成形方式(方案)が通常採用され、溶融樹脂はダイレクトゲートを介してキャビティの中央部から外周部に向かって流れていく。キャビティ内に注入された樹脂は、その温度及び冷却速度が一定ではないために、成形品に内部応力が残留したり、樹脂の密度が不均一となることがある。そこで、上記のようにして製造された情報記録媒体の基板は、光学的異方性を有する場合がある。例えば常光線に対する屈折率(常光線屈折率)と異常光線に対する屈折率(異常光線屈折率)とが異なる複屈折性を有する場合がある。このような複屈折性を有する情報記録媒体を、偏光性分岐光学素子が用いられている光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置でアクセスすると、光源から出射された光束と偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束との光学的位相差がπからずれてしまうこととなる。このために、偏光性分岐光学素子で分岐される戻り光束の光量が減少し、その結果受光素子から出力される信号の信号レベル及びS/N比が低下するという不都合があった。そして、最悪の場合、光源から出射された光束と偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束との光学的位相差が0となり、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束の殆どは分岐されず光源に戻ることとなる。その結果受光素子での受光量は殆ど0となり、ウォブル信号やサーボ信号の検出が不可能となる。
【0007】
さらに、情報記録媒体は複数のメーカーから供給されており、同一種類の情報記録媒体であっても、メーカーによって基板の複屈折の状況がそれぞれ異なっている。また、一例として図18(A)に示されるように、1枚の情報記録媒体においても情報記録媒体の回転中心からの距離によって基板の複屈折の状況は異なっている。この情報記録媒体を偏光性分岐光学素子が用いられている光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置でアクセスすると、一例として図18(B)に示されるように、情報記録媒体の回転中心からの距離によって受光素子での戻り光束の受光量が大きく変化し、その結果受光素子から出力される信号の信号レベル及びS/N比が不安定となるという不都合もあった。なお、図18(A)では、トラックの接線方向(タンジェンシャル方向)の屈折率がそれに直交する方向(ラジアル方向)の屈折率よりも小さい場合を正の複屈折としている。
【0008】
そこで、例えば特開2000−268398号公報(以下、「第1の公知例」という)には、液晶パネルを用いて情報記録媒体の基板の複屈折を補償する光ピックアップ装置が開示されている。この光ピックアップ装置は、液晶パネルを構成する液晶層内の液晶分子の配向方向を制御し、情報記録媒体の基板の複屈折を打ち消すために、光軸に垂直な面内の2方向に関して入射する光束の成分間に位相差を付与している。
【0009】
また、特開2000−306262号公報(以下、「第2の公知例」という)には、可変波長板を用いて情報記録媒体の基板の複屈折を補償する情報記録再生装置が開示されている。この情報記録再生装置は、基板の複屈折量に応じて、可変波長板で光束に付与する光学的位相差を電気的あるいは機械的に0から1/4波長まで変化させて、基板の複屈折を打ち消している。なお、第2の公知例では、可変波長板が上記第1の公知例と同様に液晶で構成されている場合について、実施の形態が説明されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各公知例では、情報記録媒体の基板の複屈折を補償する手段としていずれも液晶を利用しており、光源の発熱などにより液晶の温度が上昇する場合がある。特に情報の記録時には大きな電流を光源に流すため、ピックアップ装置の内部では温度が70℃近くまで上昇することもある。液晶は一般に温度特性が悪いため、安定して情報記録媒体の基板の複屈折を補償することが困難であるという不都合があった。また、液晶は光学レンズに比べて透過率が悪く、光源から出射された光束の光利用効率が低下するという不都合もあった。さらに、各公知例では、光束に付与する位相差を分子量の非常に大きい液晶分子の移動及び回転によって調整しているため、印加電圧の変化に対する応答性が悪く、追随できる周波数は30Hz程度であるという不都合があった。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を含み、通過する光束に所定の光学的位相差を付与する光学素子とを含み、前記記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置に導く光学系と;前記受光位置に配置された光検出器と;を備える光ピックアップ装置である。
【0014】
これによれば、光源から出射された光束は対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光され、記録面で反射された戻り光束は対物レンズ及び偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される。例えば情報記録媒体の基板が複屈折性を有する場合には、基板内では方向に応じて屈折率が異なるために、情報記録媒体に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差が付与され、更に記録面で反射された光束も基板を透過する際に光学的位相差が付与されることとなる。これらの光学的位相差により、例えば記録面で反射された戻り光束が偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される場合には、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は、予定していた所定の直線偏光の光束とはならず、光検出器で受光される戻り光束の光量が減少することとなる。そこで、例えば情報記録媒体の基板を透過する光束に付与される光学的位相差と逆極性の光学的位相差が光束に付与されるように、光学素子に所定の電圧を印加することにより、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は予定通りの所定の直線偏光の光束となる。従って、光検出器での受光量の減少を抑制することができ、光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が安定する。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、電気光学結晶は、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶であるために、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合に比べて、電気光学素子を光軸方向に薄くすることができる。これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することができる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、印加される電圧に応じた光学的位相差を入射される光束に付与する電気光学結晶を含む光学素子と、前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束の光路上に配置され、前記戻り光束をその光路上から分岐する偏光性分岐光学素子とを含む光学系と;前記偏光性分岐光学素子にて分岐された前記戻り光束を受光する第1の光検出器を含む光検出系と;前記光検出系の少なくとも1つの光検出器からの出力信号に基づいて、前記光学素子に印加する電圧を調整し、前記戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する位相差補正手段と;を備える光ピックアップ装置である。
【0016】
これによれば、光源から出射された光束は対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光され、記録面で反射された戻り光束は対物レンズ及び偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される。例えば情報記録媒体の基板が複屈折性を有する場合には、基板内では方向に応じて屈折率が異なるために、情報記録媒体に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差が付与され、更に記録面で反射された光束も基板を透過する際に光学的位相差が付与されることとなる。これらの光学的位相差により、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は、予定していた所定の直線偏光の光束とはならず、第1の光検出器で受光される戻り光束の光量が減少することとなる。本発明では、位相差補正手段により、光検出器のうちの少なくとも1つからの出力信号に基づいて戻り光束における光学的位相差の誤差を補正するのに最適な電圧が光学素子に印加される。例えば基板を透過する光束に付与される光学的位相差とは逆極性の光学的位相差が光学素子を透過する光束に付与されるように、第1の光検出器からの出力信号に基づいて、光学素子の印加電圧が調整される。それにより、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は予定通りの所定の直線偏光の光束となり、その戻り光束の殆どが第1の光検出器で受光され、第1の光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が向上する。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、温度変化や経時変化などにより光学系に起因する光学的位相差が変化しても精度良く補正することができるため、第1の光検出器から出力される信号の安定性を向上させることが可能となる。しかも、情報記録媒体へのアクセス中にフィードバック制御によって光学的位相差の誤差を補正しているため、情報記録媒体のメーカ間及び製造ロット間に複屈折の発生状況の違いがあっても、光学的位相差の誤差を精度良く補正することができる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することが可能となる。
【0017】
この場合において、請求項3に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。
【0018】
上記請求項2に記載の光ピックアップ装置において、請求項4に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光学系は、前記偏光性分岐光学素子と前記光源との間に配置された無偏光性分岐光学素子を更に含み、前記光検出系は、前記偏光性分岐光学素子を透過し、前記無偏光性分岐光学素子で分岐された前記戻り光束を受光する第2の光検出器を更に含むこととすることができる。
【0019】
この場合において、請求項5に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号と前記第2の光検出器からの出力信号との差信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。あるいは、請求項6に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第2の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以下となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。
【0020】
上記請求項2〜6に記載の各光ピックアップ装置において、請求項7に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光性分岐光学素子は、偏光ホログラム素子であることとすることができる。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。
【0021】
この場合において、請求項8に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光ホログラム素子は、前記第1の光検出器と一体化されていることとすることができる。かかる場合には、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0022】
上記請求項2〜8に記載の各光ピックアップ装置において、請求項9に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合に比べて、電気光学結晶を薄くすることができる。これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0023】
上記請求項2〜9に記載の各光ピックアップ装置において、請求項10に記載の光ピックアップ装置の如く、前記戻り光束における光学的位相差の誤差は、前記光学系に起因する誤差及び前記情報記録媒体の光学的異方性に起因する誤差のうちの少なくとも一方であることとすることができる。
【0024】
上記請求項1〜10に記載の各光ピックアップ装置において、請求項11に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、奇数次の電気光学効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。
【0025】
上記請求項1〜11に記載の各光ピックアップ装置において、請求項12に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、ポッケルス効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、印加電圧と光学的位相差(複屈折)量との関係は直線関係となる。
【0026】
上記請求項1〜12に記載の各光ピックアップ装置において、請求項13に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、シレナイト構造を有する酸化物の電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、低い印加電圧で大きな光学的位相差(複屈折)を発生させることができる。
【0027】
この場合において、請求項14に記載の光ピックアップ装置の如く、前記シレナイト構造を有する酸化物は、Bi12SiO20であることとすることができる。
【0028】
上記請求項1〜14に記載の各光ピックアップ装置において、請求項15に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、単結晶の電気光学結晶であることとすることができる。
【0029】
請求項16に記載の発明は、情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう光ディスク装置であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0030】
これによれば、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置を備えているために、光ピックアップ装置からの出力信号に基づいてサーボ信号を精度良く安定して検出することができる。従って、情報記録媒体に対して高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。なお、本明細書では、光ディスク装置は、情報の記録、再生、及び消去に光を利用するCDやDVDなどのドライブ装置だけでなく、一部に光を利用する光磁気ディスクなどのドライブ装置も含む。
【0031】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0032】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成が示されている。
【0033】
この図1に示される光ディスク装置20は、情報記録媒体としての光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、ROM39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0034】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置である。なお、この光ピックアップ装置23の構成等については後に詳述する。
【0035】
光ディスク15の記録面は所定の厚さの透明な基板上に形成されており、その基板を介して記録面にレーザ光が照射される。
【0036】
前記再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてウォブル信号、RF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28はウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28はRF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。
【0037】
前記サーボコントローラ33は、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する各種制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0038】
前記バッファマネージャ37は、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になるとCPU40に通知する。
【0039】
前記モータドライバ27は、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。
【0040】
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付与などを行ない、光ディスク15への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して、書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。
【0041】
前記レーザコントロール回路24は、エンコーダ25からの書き込みデータ及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23から出射されるレーザ光の出力を制御する。
【0042】
前記インターフェース38は、ホスト(例えばパソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
【0043】
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。そして、CPU40は、ROM39に格納されているプログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保存する。
【0044】
次に、前記光ピックアップ装置23の構成等について図2に基づいて説明する。光ピックアップ装置23は、図2に示されるように、光源ユニット51、コリメートレンズ52、偏光性分岐光学素子としての偏光ビームスプリッタ54、λ/4板55、光学素子としての電気光学素子53、対物レンズ60、検出レンズ58、光検出器としての受光器59、位相差調整回路61及び駆動系(フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ及びシークモータ(いずれも図示省略))などを備えている。
【0045】
前記光源ユニット51は、所定の波長の光束を発光する光源としての半導体レーザ(図示省略)を含んで構成されている。なお、本第1の実施形態では、光源ユニット51から出射される光束の最大強度出射方向を+Z方向とする。また、本第1の実施形態では、一例として光源ユニット51からは偏光ビームスプリッタ54の入射面に平行な偏光(P偏光)の光束が出射されるものとする。そして、この光源ユニット51の+Z側には、前記コリメートレンズ52が配置され、光源ユニット51から出射された光束を略平行光とする。
【0046】
前記偏光ビームスプリッタ54は、コリメートレンズ52の+Z側に配置されている。この偏光ビームスプリッタ54は、入射する光束の偏光方向に応じてその反射率が異なっている。本第1の実施形態では、一例としてP偏光の光束に対する反射率は小さく、S偏光の光束に対する反射率は大きくなるように、偏光ビームスプリッタ54が設定されているものする。すなわち、光源ユニット51から出射された光束の大部分は、偏光ビームスプリッタ54を透過することができる。また、光ディスク15の記録面で反射し対物レンズ60を介した戻り光束に含まれるS偏光成分は偏光ビームスプリッタ54で−X側に反射され、P偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過する。この偏光ビームスプリッタ54の+Z側には、前記λ/4板55が配置されている。
【0047】
偏光ビームスプリッタ54の−X側には、前記検出レンズ58が配置され、偏光ビームスプリッタ54で反射された戻り光束を集光する。この検出レンズ58で集光された戻り光束は前記受光器59で受光される。
【0048】
受光器59は、再生信号処理回路28にてRF信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを検出するのに最適な信号を出力するための複数の受光素子を含んで構成されている。
【0049】
前記電気光学素子53は、λ/4板55の+Z側に配置され、一例として図3(A)〜図3(C)に示されるように、縦型の電気光学効果を示す平板状の電気光学結晶ECと、該電気光学結晶ECの−Z側の面上に形成された電極53A及び+Z側の面上に形成された電極53Bとを備えている。各電極は酸化インジウム(In2O3)を主成分とし、二酸化スズ(SnO2)を10%程度混ぜた固溶体の透明の薄膜(ITO膜)で形成されている。従って、入射する光束の殆どは各電極を透過することができる。そして、各電極を介して電気光学結晶ECに電圧が印加されると、電気光学結晶EC内部にはZ軸方向に電界が形成されることとなる。
【0050】
本第1の実施形態では、電気光学結晶ECには、一例としてポッケルス効果(縦型の一次の電気光学効果)を示すBi12SiO20(BSO)の単結晶が用いられる。このBSOはシレナイト構造を有する酸化物であり、結晶点群23に属している。なお、BSO単結晶のポッケルス係数γ41は、5×10−12[m/V]である。
【0051】
電気光学結晶ECに電圧が印加されていない場合には、電気光学結晶ECが等方性の媒質であるため、一例として図4(A)に示されるように、X軸方向の屈折率(ここでは常光線屈折率)noと、Y軸方向の屈折率(ここでは異常光線屈折率)neとは互いに等しくなる。このような場合には、電気光学結晶ECを透過した光束には、その偏光方向に関係なく光学的位相差が生じることはない。
【0052】
一方、電気光学結晶ECに各電極を介して電圧が印加されると、電気光学結晶ECの内部でZ軸方向に一様な電界が発生し、その電界に比例した複屈折が電気光学結晶EC内部で一様に生じる。すなわち、一例として図4(B)に示されるように、常光線屈折率noと異常光線屈折率neとの間に違いが生じる。このような場合には、電気光学結晶ECを透過した光束には光学的位相差が付与されることとなる。例えばX軸方向に対して45゜傾いた偏光面を持つ直線偏光の光束が入射すると、その光束のX軸方向成分は常光線屈折率noによって電気光学結晶ECの内部での速度が支配され、Y軸方向成分は異常光線屈折率neによって電気光学結晶ECの内部での速度が支配される。そこで、電気光学結晶ECを透過した光束には、X軸方向とY軸方向に関して光学的位相差が生じることとなり、直線偏光から楕円偏光、円偏光と変化する。また、複屈折が生じた電気光学結晶ECに、直線偏光の光束をX軸方向又はY軸方向にその偏光面を合わせて入射すると、電気光学結晶ECを通過した光束は楕円偏光となる。電気光学結晶ECを透過した光束に生じる光学的位相差は、電気光学結晶ECにおける複屈折量に対応するために、電極53Aと電極53Bとを介して電気光学結晶ECに印加する電圧の大きさによって、電気光学結晶ECを透過した光束に付与される光学的位相差を制御することが可能となる。
【0053】
また、電気光学結晶ECがポッケルス効果を示す材料であるために、電気光学結晶ECを透過した光束に生じる光学的位相差Δθzは、次の(1)式で示されるように、電気光学結晶ECに印加される電圧Vzに比例する。ここで、λは入射する光束の波長、noは常光線屈折率である。
【0054】
Δθz=2π(no)3・γ41・Vz/λ ……(1)
【0055】
すなわち、一例として図5に示されるように、印加電圧と光学的位相差との相関関係は原点を通る直線で示される。BSO単結晶の常光線屈折率noは2.56であるので、例えば入射する光束の波長λが660nmの場合には、位相差Δθzと印加電圧Vzとの相関関係を示す直線の傾き(比例定数)は、8×10−4[V−1]となる。この場合に、例えばΔθzを半波長、すなわち位相をπだけ変化させるためには、約3.9kVの印加電圧が必要となる。
【0056】
電気光学結晶は電圧が印加されると分極により光学的異方性を示す。そして、その分極は原子レベルの分極であるため、電圧が印加されてから、それに対応する複屈折を生じるまでの応答時間はナノ秒以下である。しかしながら、平行平板に加工された電気光学結晶に電極を形成した電気光学素子の場合には、電気光学素子の形状に関係するキャパシタンス成分、位相差調整回路61の出力インピーダンス及び配線のインピーダンスなどの影響により、応答時間が遅延する。そこで、本第1の実施形態では、電気光学結晶の厚みや電極面積を最適化することによってキャパシタンス成分を減少させ、応答時間の遅延を抑制した。
【0057】
前記位相差調整回路61は、一例として図6に示されるように、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号(電流信号)を電圧信号に変換するためのI−V変換回路61a、該I−V変換回路61aからの各出力信号を加算する加算回路61b、受光器59での受光量が最大となるときの各受光素子からの出力信号の和信号に対応する信号を基準信号として生成する基準信号生成回路61c、加算回路61bからの出力信号S1と基準信号生成回路61cからの基準信号S2との差信号を求める減算器61d、この減算器61dの出力信号S3に基づいて電気光学素子53に印加する電圧を設定する印加電圧設定回路61eなどから構成されている。なお、電極53Bは0Vとなるように設定しても良い。
【0058】
また、基準信号生成回路61cは、一例として図7に示されるように、2つの入力信号を比較して、大きいほうの信号を出力する比較回路611、基準信号が格納されている不揮発メモリ613、及び基準信号を管理する基準信号管理回路612などから構成されている。比較回路611は加算回路61bからの出力信号S1と基準信号管理回路612からの出力信号S2とを比較し、大きいほうの信号を出力信号SMとして基準信号管理回路612に出力する。また、基準信号管理回路612は不揮発メモリ613に格納されている基準信号を出力信号S2として比較回路611及び減算器61dに出力する。
【0059】
基準信号管理回路612は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ613に格納されている基準信号をクリアするとともに、印加電圧設定回路61eに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路61eはテストモードに遷移すると、減算器61dからの出力信号S3に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路612は、所定のタイミングで比較回路611からの出力信号SMを不揮発メモリ613に格納するとともに、比較回路611に出力する。すなわち、加算回路61bからの出力信号S1のうちで最も大きい信号が不揮発メモリ613に格納されることとなる。印加電圧設定回路61eはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路612に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路612はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器59での戻り光束の受光量が最大となるときの加算回路61bからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。従って、減算器61dの出力信号S3は受光器59での受光量の減少量に対応する信号である。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路612に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路612は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ613に格納されている基準信号を更新することとなる。
【0060】
受光器59での受光量の減少量と戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器59での受光量の減少量と印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路61eを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されている。なお、本第1の実施形態では、一例として、次の(2)式が格納されているものとする。なお、Vaは電気光学素子53に印加される電圧、k1は比例定数(変換係数)である。
【0061】
Va=k1・S3 ……(2)
【0062】
上記のように構成される光ピックアップ装置23の作用を説明する。なお、ここでは、便宜上、例えば光学系を構成する各光学部品の加工精度、組立誤差、光軸のずれ及び傾きなどに起因する光学的位相差(以下、便宜上「光学系に起因する位相差」という)は極めて小さいものとする。また、λ/4板55における遅相軸方向と光ディスク15における遅相軸方向とは45°ずれているものとする。
【0063】
《光ディスクの基板の複屈折量が極めて小さい場合》
先ず光ディスク15の基板の複屈折量(以下「光ディスクの複屈折量」ともいう)が極めて小さい場合について説明する。なお、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vであるものとする。
【0064】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55で円偏光の光束とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が極めて小さいため、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差を付与されることなく、円偏光の光束が記録面に照射される。すなわち、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0065】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この光束は基板を透過する際に光学的位相差を付与されることなく、円偏光の戻り光束が対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた戻り光束は、電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0066】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して光源ユニット51に入射する光束は殆ど0である。
【0067】
位相差調整回路61は、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号をI−V変換回路61aにて電圧信号に変換した後、各電圧信号を加算回路61bにて加算する。加算回路61bからの出力信号S1は減算器61dにて基準信号S2と比較され、その比較結果は信号S3として印加電圧設定回路61eに入力される。ここでは、受光器59での受光量はほぼ最大値となるため、信号S3はほぼ0となる。従って、上記(2)式から明らかなように、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vのままとなる。
【0068】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差の誤差調整なし)》
次に、光ディスクの複屈折量が大きい場合について説明する。なお、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vであるものとする。
【0069】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)が付与され、楕円偏光となる。すなわち、所定の形状の光スポットは記録面に形成されない。
【0070】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの楕円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaが付与され、対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた戻り光束は電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55にて楕円度が異なる楕円偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ54に入射する戻り光束の光学的位相差は、誤差を含むこととなる。
【0071】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるS偏光成分は−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。光ディスクの複屈折量が小さい場合に比べて受光器59での受光量は低下する。
【0072】
一方、偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるP偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過し、光源ユニット51に入射する。そのため、半導体レーザでの発振が不安定となり、各種不都合を生じるおそれがある。
【0073】
位相差調整回路61は、各受光素子からの出力信号をI−V変換回路61aにて電圧信号に変換した後、各電圧信号を加算回路61bにて加算する。加算回路61bからの出力信号S1は減算器61dにて基準信号S2と比較され、その比較結果は信号S3として印加電圧設定回路61eに入力される。印加電圧設定回路61eは、上記(2)式に基づいて、印加電圧を設定するとともに各電極に出力する。これにより、光ディスクの複屈折によって付与される光学的位相差(以下「光ディスクに起因する位相差」ともいう)δaとは逆極性の光学的位相差−δaが電気光学素子53で付与されることとなる。
【0074】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差の誤差調整あり)》
上記のようにして設定された電圧が電気光学素子53に印加された場合について説明する。
【0075】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、上記設定された電圧が印加されているため、電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)が付与され、記録面に照射される。すなわち、光ディスクに起因する位相差(δa)は、電気光学素子53で付与された光学的位相差(−δa)と相殺される。従って、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0076】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaが付与され、対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、円偏光の光束としてλ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、光学的位相差の誤差が補正された戻り光束が偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0077】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して光源ユニット51に入射する光束は殆ど0となる。
【0078】
なお、上記説明では、わかりやすくするために光学系に起因する位相差は極めて小さいものとしたが、光学系に起因する位相差が大きい場合であっても同様にして電気光学素子53の印加電圧を調整することにより戻り光束における光学的位相差の誤差を補正することができる。また、光学系に起因する位相差及び光ディスクに起因する位相差がいずれも大きい場合であっても良い。
【0079】
《記録処理》
次に、前述の光ディスク装置20を用いて、光ディスク15にデータを記録する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0080】
CPU40は、ホストから記録要求のコマンドを受信すると、指定された記録速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから記録要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。また、CPU40は、ホストから受信したデータをバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に蓄積する。
【0081】
位相差調整回路61は、前述の如くして電気光学素子53に印加する電圧を調整し、戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する。光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、再生信号処理回路28は、受光器59からの出力信号に基づいて、トラックエラー信号及びフォーカスエラー信号を検出し、サーボコントローラ33に出力する。
【0082】
サーボコントローラ33は、トラックエラー信号に基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のトラッキングアクチュエータを駆動し、トラックずれを補正する。また、サーボコントローラ33は、フォーカスエラー信号に基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のフォーカシングアクチュエータを駆動し、フォーカスずれを補正する。このようにして、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0083】
また、再生信号処理回路28は、受光器59からの出力信号に基づいてアドレス情報を取得し、CPU40に通知する。そして、CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、指定された書き込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するように光ピックアップ装置23のシークモータを制御する信号をモータドライバ27に出力する。
【0084】
CPU40は、バッファマネージャ37からバッファRAM34に蓄積されたデータ量が所定の値を超えたとの通知を受けると、エンコーダ25に書き込みデータの作成を指示する。また、CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が書き込み開始地点であると判断すると、エンコーダ25に通知する。そして、エンコーダ25は、レーザコントロール回路24及び光ピックアップ装置23を介して、書き込みデータを光ディスク15に記録する。
【0085】
《再生処理》
続いて前述した光ディスク装置20を用いて、光ディスク15に記録されているデータを再生する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0086】
CPU40は、ホストから再生要求のコマンドを受信すると、再生速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから再生要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして、上記記録処理の場合と同様にして、電気光学素子53に印加する電圧の調整、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、再生信号処理回路28は、上記記録処理の場合と同様にアドレス情報を検出し、CPU40に通知する。
【0087】
CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、指定された読み込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するようにシークモータを制御する信号をモータドライバ27に出力する。CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が読み込み開始地点であると判断すると、再生信号処理回路28に通知する。
【0088】
そして、再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいてRF信号を検出し、誤り訂正処理等を行った後、バッファRAM34に蓄積する。バッファマネージャ37は、バッファRAM34に蓄積された再生データがセクタデータとして揃ったときに、インターフェース38を介してホストに転送する。
【0089】
なお、記録処理及び再生処理が終了するまで、前述した電気光学素子53に印加する電圧の調整、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が随時行われる。
【0090】
以上の説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20では、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されている。また、位相差調整回路61によって位相差補正手段が実現されている。
【0091】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、位相差調整回路61は、受光器59からの出力信号に基づいて、受光器59での受光量が最大受光量とほぼ一致するように、電気光学素子53に印加する電圧を調整している。これにより、光学系に起因する位相差及び光ディスクに起因する位相差による戻り光束における光学的位相差の誤差が補正され、受光器59から出力される信号の信号レベル及びS/N比を向上させることができる。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差の誤差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、温度変化や経時変化などにより光学系に起因する位相差が変化しても精度良く光学的位相差の誤差を補正することができるため、受光器59から出力される信号の安定性を向上させることが可能となる。
【0092】
さらに、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、稼働中にフィードバック制御を行って光学的位相差の誤差を補正しているため、光ディスクのメーカ間及び製造ロット間に複屈折の発生状況の違いがあっても、光ディスク毎に光ディスクに起因する位相差による誤差を精度良く補正することができる。
【0093】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53では屈折率を変更する材料として電気光学結晶が用いられているために、100MHz以上の帯域特性を有する位相差調整回路61からの制御信号に追随することができ、ほぼリアルタイムで光学的位相差の誤差を補正することが可能となる。そこで、例えばDVDドライブ装置に用いられた場合には、10倍速程度の回転速度においても完全に追従して光学的位相差の誤差を補正することができる。また、記録面の場所(アドレス)によって複屈折量が異なる光ディスクに対しても精度良く光学的位相差の誤差を補正することが可能となる。
【0094】
さらに、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53では縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いているために、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶(光軸と電界印加方向が垂直)を用いた場合に比べて、電気光学結晶を光軸方向に薄く、面方向に広くすることができる.これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することができる。なお、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、電界印加方向と光軸方向とが直交しているので、各電極は光路を挟む位置に設置する必要がある。この場合には、各電極間の距離は、当然ながら光路中の光のビーム径より大きくしなければならないため、ビーム径を大きくしようとすると電極間距離が長くなる。一方、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、ビーム径を大きくしようとすると電気光学結晶の面積を大きくするだけで良く、電極間距離(ギャップ長)には影響を及ぼさない。従って、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、通常のハーフハイトの高さのピックアップ装置であっても、ビーム径を大きくとることが可能となり、その結果ワーキングディスタンスを大きくすることができる。
【0095】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53にポッケルス効果を示す電気光学結晶を用いているために、印加電圧と光学的位相差との関係は直線関係となる。また、電圧が印加されていないときには光学的位相差が0、すなわち等方性媒質となる。そこで、印加電圧の正負と光学的位相差の正負とを対応させることができる。従って、印加電圧と光学的位相差とは単純な比例関係を有することとなり、簡単な一次式で示すことができる。これにより、光学的位相差の誤差の補正が容易になり、例えば印加電圧設定回路に汎用の安価なリニアアンプなどを用いることができ、回路の単純化及び低コスト化を図ることができるとともに、補正の高速化を図ることが可能となる。
【0096】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学結晶としてシレナイト構造を有する酸化物を用いているために、低い印加電圧で大きな光学的位相差が発生する。従って、位相差調整回路61に大規模な昇圧回路を必要とせず、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。
【0097】
また、本第1の実施形態に係る光ディスク装置によると、再生信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを精度良く安定して検出することができるため、高速度でのアクセスを安定して行うことが可能となる。さらに、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化によって、光ディスク装置自体の小型化及び消費電力の低減も促進することができ、例えば携帯用として用いられる場合には、持ち運びが容易になるとともに、長時間の使用が可能となる。
【0098】
なお、上記第1の実施形態では、偏光ビームスプリッタ54を用いて戻り光束を受光器59側に分岐する場合について説明したが、これに限らず、偏光ビームスプリッタ54に代えて、例えば偏光ホログラム素子を用いても良い。これにより、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。さらに、この場合に、その偏光ホログラム素子と受光器59とを一体化しても良い。
【0099】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図8〜図10に基づいて説明する。
【0100】
この第2の実施形態は、一例として図8に示されるように、上記第1の実施形態におけるコリメートレンズ52と偏光ビームスプリッタ54との間に無偏光ビームスプリッタ70を配置した点に特徴を有する。
【0101】
さらに、無偏光ビームスプリッタ70で反射された戻り光束を集光するための集光レンズ71と、該集光レンズ71で集光された戻り光束を受光するための受光器72とが付与されている。
【0102】
そこで、上記第1の実施形態における位相差調整回路61の代わりに、受光器59及び受光器72からの出力信号に基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整する位相差調整回路62が用いられる。
【0103】
なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0104】
位相差調整回路62は、一例として図9に示されるように、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号及び受光器72からの出力信号を電圧信号に変換するためのI−V変換回路62a、該I−V変換回路62aにて電圧信号に変換された受光器59を構成する各受光素子からの出力信号を加算する加算回路62b、この加算回路62bからの出力信号S11とI−V変換回路62aにて電圧信号に変換された受光器72からの出力信号S12との差信号を求める減算器62d、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差が最大となるときの受光器59からの出力信号と受光器72からの出力信号との差信号に対応する信号を基準信号として生成する基準信号生成回路62c、減算器62dからの出力信号S13と基準信号生成回路62cからの出力信号S14との差信号を求める減算器62e、この減算器62eの出力信号S15に基づいて電気光学素子53に印加する電圧を設定する印加電圧設定回路62fなどから構成されている。
【0105】
また、基準信号生成回路62cは、一例として図10に示されるように、2つの入力信号を比較して、大きいほうの信号を出力する比較回路621、基準信号が格納されている不揮発メモリ623、及び基準信号を管理する基準信号管理回路622などから構成されている。比較回路621は減算器62dからの出力信号S13と基準信号管理回路622からの出力信号S14とを比較し、大きいほうの信号を出力信号SNとして基準信号管理回路622に出力する。また、基準信号管理回路622は不揮発メモリ623に格納されている基準信号を出力信号S14として比較回路621及び減算器62eに出力する。
【0106】
基準信号管理回路622は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ623に格納されている基準信号をクリアするとともに、印加電圧設定回路62fに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路62fはテストモードに遷移すると、減算器62eからの出力信号S15に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路622は、所定のタイミングで比較回路621からの出力信号SNを不揮発メモリ623に格納するとともに、比較回路621に出力する。すなわち、減算器62dからの出力信号S13のうちで最も大きい信号が不揮発メモリ623に格納されることとなる。印加電圧設定回路62fはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路622に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路622はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差が最大となるときの受光器59での戻り光束の受光量が最大となるときの減算器62dからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路622に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路622は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ623に格納されている基準信号を更新することとなる。
【0107】
受光器59での受光量と受光器72での受光量との差の減少量と、戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器59での受光量と受光器72での受光量との差の減少量と、印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路62fを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されている。なお、本第2の実施形態では、一例として、次の(3)式が格納されているものとする。なお、Vaは電気光学素子53に印加される電圧、k2は比例定数(変換係数)である。
【0108】
Va=k2・S3 ……(3)
【0109】
上記のようにして構成される光ピックアップ装置23の作用を説明する。なお、ここでは、上記第1の実施形態と同様に、光学系に起因する位相差は極めて小さいものとする。
【0110】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(光学的位相差の誤差調整なし)》先ず、光ディスクの複屈折量が大きく、印加電圧設定回路62fから出力される印加電圧が0Vの場合について説明する。
【0111】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55で円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)を生じ、楕円偏光の光束が記録面に照射される。所定の形状の光スポットは記録面に形成されない。
【0112】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの楕円偏光の光束となる。この光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaを生じ、楕円度が大きくなった楕円偏光の光束が対物レンズ60の入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。この光束は電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55では楕円度が変更され偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ54に入射する戻り光束の光学的位相差は、誤差を含むこととなる。
【0113】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるS偏光成分は−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路62及び再生信号処理回路28に出力する。光ディスクの複屈折量が小さい場合に比べて受光器59での受光量は低下する。
【0114】
一方、偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるP偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過し、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70で−X方向に反射された戻り光束は、検出レンズ71を介して受光器72で受光される。受光器72は受光量に応じた信号を位相差調整回路62に出力する。なお、無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は光源ユニット51に入射する。
【0115】
位相差調整回路62は、受光器59を構成する各受光素子及び受光器72からの出力信号をI−V変換回路62aにて電圧信号に変換した後、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号に対応する各電圧信号を加算回路62bにて加算する。加算回路62bからの出力信号S11は減算器62dにて受光器72からの出力信号に対応する電圧信号S12と比較され、その比較結果は信号S13として減算器62eに入力される。信号S13は減算器62eにて基準信号S14と比較され、その比較結果は信号S15として印加電圧設定回路62fに入力される。印加電圧設定回路62fは、上記(3)式に基づいて、電気光学素子53への印加電圧を設定するとともに、各電極に出力する。これにより、光ディスクに起因する位相差(δa)と逆極性の位相差(−δa)が電気光学素子53で付与されることとなる。
【0116】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差ずれ調整あり)》
次に、上記のようにして設定された電圧が電気光学素子53に印加された場合について説明する。
【0117】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差δaを生じ、記録面に照射される。すなわち、光ディスクに起因する位相差(δa)は、電気光学素子53で付与された位相差(−δa)と相殺される。従って、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0118】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaを生じ、楕円偏光の光束となって対物レンズ60の入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、円偏光の光束としてλ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)となり、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、光学的位相差の誤差が補正された戻り光束が偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0119】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路62及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して無偏光ビームスプリッタ70に入射する光量は殆ど0である。
【0120】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態に係る光ディスク装置20では、位相差調整回路62によって位相差補正手段が実現されている。また、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。
【0121】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、位相差調整回路62は、受光器59及び受光器72からの出力信号に基づいて、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差がほぼ最大となるように、電気光学素子53に印加する電圧を調整している。これにより、光学系及び光ディスクに起因する位相差による戻り光束における光学的位相差の誤差が補正され、受光器59から出力される信号の信号レベル及びS/N比を向上させることが可能となるため、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることができる。なお、光学系及び光ディスクに起因する位相差の検出精度は上記第1の実施形態よりも高い。
【0122】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置によると、再生信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを精度良く安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0123】
なお、上記第2の実施形態では、受光器72からの出力信号と受光器59からの出力信号に基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整する場合について説明したが、これに限らず、例えば図11に示されるように、受光器72からの出力信号のみに基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整しても良い。この場合には、位相差調整回路62の代わりに位相差調整回路63が用いられることとなる。
【0124】
この位相差調整回路63は、一例として図12に示されるように、受光器72からの出力信号を電圧信号に変換するためのI−V変換回路63a、受光器72での受光量が最小となるときの受光器72からの出力信号とほぼ同レベルの基準信号を生成する基準信号生成回路63b、I−V変換回路63aからの出力信号S21と基準信号生成回路63bからの出力信号S22との差信号を求める減算器63c、この減算器63cの出力信号S23に基づいて電極53Aに印加する電圧を設定する印加電圧設定回路63dなどから構成されている。
【0125】
また、基準信号生成回路663bは、一例として図13に示されるように、2つの入力信号を比較して、小さいほうの信号を出力する比較回路631、基準信号が格納されている不揮発メモリ633、及び基準信号を管理する基準信号管理回路632などから構成されている。比較回路631はI−V変換回路63aからの出力信号S21と基準信号管理回路632からの出力信号S22とを比較し、小さいほうの信号を出力信号SLとして基準信号管理回路632に出力する。また、基準信号管理回路632は不揮発メモリ633に格納されている基準信号を出力信号S22として比較回路631及び減算器63cに出力する。
【0126】
基準信号管理回路632は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ633に格納されている基準信号に所定の大きな値を初期値としてセットするとともに、印加電圧設定回路63dに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路63dはテストモードに遷移すると、減算器63cからの出力信号S23に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路632は、所定のタイミングで比較回路631からの出力信号SLを不揮発メモリ633に格納するとともに、比較回路631に出力する。すなわち、I−V変換回路63aからの出力信号S21のうちで最も小さい信号が不揮発メモリ633に格納されることとなる。印加電圧設定回路63dはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路632に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路632はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器72での受光量が最小となるときのI−V変換回路63aからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路632に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路632は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ633に格納されている基準信号を更新することとなる。なお、受光器72での受光量の増加量と戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器72での受光量の増加量と印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路63dを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されることとなる。
【0127】
さらに、上記第2の実施形態では、戻り光束を分岐する分岐光学素子としてビームスプリッタ(偏光ビームスプリッタ54、無偏光ビームスプリッタ70)を用いる場合について説明したが、これに限らず、例えばホログラム素子を用いても良い。一例として図14に示されるように、偏光ビームスプリッタ54に代えて偏光ホログラム素子85を、無偏光ビームスプリッタ70に代えて無偏光ホログラム素子86を用いても良い。そして、偏光ホログラム素子85と無偏光ホログラム素子86とを一体化しても良い。この場合には、偏光ホログラム素子85及び無偏光ホログラム素子86をそれぞれ個別の基板上に形成した後に、それらを貼り合わせて一体化しても良いが、偏光ホログラム素子85及び無偏光ホログラム素子86を同一基板の一側及び他側にそれぞれ形成しても良い。また、偏光ホログラム素子85、無偏光ホログラム素子86、受光器59、及び受光器72を一体化しても良い。さらに、一例として図15(A)及び図15(B)に示されるように、それらと半導体レーザ91aとを一体化し、受発光モジュール91としても良い。これにより、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。また、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。なお、偏光ビームスプリッタ54及び無偏光ビームスプリッタ70のいずれか一方に代えて、ホログラム素子を用いても良い。この場合に、ホログラム素子と対応する受光器とを一体化しても良い。
【0128】
なお、上記各実施形態では、電気光学結晶として、一次の電気光学効果を示す材料を用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば一次を除く奇数次の電気光学効果を示す材料であっても良い。一次の電気光学効果を示す材料と同様な効果を得ることができるからである。また、偶数次の電気光学効果を示す材料を用いても良い。但し、電気光学結晶として、高次の電気光学効果を示す材料を用いる場合には、一例として図16に示されるように、印加電圧と光学的位相差との相関関係は簡単な一次式で示すことができなくなり、電気光学結晶の印加電圧の制御が複雑化する。
【0129】
また、上記各実施形態では、電気光学結晶として、Bi12SiO20(BSO)の単結晶を用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、縦型の奇数次の電気光学効果を示す材料として、結晶点群3mのLiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、 結晶点群42mのNH4H2PO4(ADP:燐酸二水素アンモニウム)、KH2PO4(KDP:燐酸二水素カリウム)、結晶点群32のα水晶(SiO2)、結晶点群23のBi12GeO20(BGO)、結晶点群43mのZnS、ZnTe、Bi4Ge3O12などの中心対称性を持たない電気光学結晶を用いても良い。特に、BGOは、BSOと同様に電気光学係数(ポッケルス係数γ41)が10−12m/V以上と大きいため、低い印加電圧で大きな光学的位相差を発生させることができる。また、電気光学結晶は単結晶に限らず多結晶であっても良い。但し、単結晶のほうが光束の透過率が高くなる。
【0130】
なお、上記各実施形態において、電気光学素子53に代えて、例えば電歪素子、光弾性素子、ファラデー素子、及びカーセルなどを用いても良い。
【0131】
なお、上記各実施形態では、各電極が矩形形状(図3参照)を有する場合について説明したが、これに限らず、例えば図17(A)〜図17(C)に示されるように、円形状の電極53A’及び53B’が設けられた電気光学素子53’を用いても良い。
【0132】
なお、上記各実施形態では、位相差調整回路の加算回路において、受光器59からの出力信号の全てが加算される場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば受光器59を構成する特定の受光素子からの出力信号を加算信号に代えて用いても良い。
【0133】
さらに、上記各実施形態では、各電極にITO膜を用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。また、電極の一部分が透明であっても良い。要するに入射光束の大部分が透過可能であれば良い。
【0134】
また、上記各実施形態において、電極53Bの代わりにアルミニウム蒸着膜からなる不透明電極を用いても良い。この場合には、電気光学素子は反射型となり、入射光束は電気光学結晶内を往復するため、付与すべき光学的位相差が同じであっても、透明な電極を用いる場合に比べて印加電圧を1/2とすることができる。なお、この場合には、一部の光学部品の配置を変更する必要がある。
【0135】
また、上記各実施形態では、光ディスクがロードされたときに基準信号を求める場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば戻り光束における光学的位相差の誤差の補正が不十分な場合に、新たに基準信号を求め、不揮発メモリの内容を更新しても良い。
【0136】
さらに、上記各実施形態では、不揮発メモリに記録される基準信号が1つの場合について説明したが、これに限らず、例えばベンダ毎に基準信号を不揮発メモリに記録しておき、ロードされた光ディスクに対応した基準信号を使用しても良い。この場合には、ロードされた光ディスクのベンダ情報がCPU40から基準信号生成回路に通知される。また、基準信号を求めたときに、その日付も同時に不揮発メモリに記録しておき、一定期間が経過したときに新たに基準信号を求め、不揮発メモリの内容を更新しても良い。
【0137】
なお、上記各実施形態では、各電極に印加する電圧を設定するための近似式が印加電圧設定回路の不揮発メモリに格納されている場合について説明したが、これに限らず、例えば変換係数のみが不揮発メモリに格納されていても良い。
【0138】
なお、上記各実施形態では、情報の記録及び再生が可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが可能な光ディスク装置であれば良い。
【0139】
なお、上記各実施形態では、光源として半導体レーザを用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0140】
また、上記各実施形態では、光ディスクとして、CD、DVD及び光磁気ディスクなど、光を利用して情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが行われる情報記録媒体を用いることができる。
【0141】
なお、上記各実施形態において、CPU40によるプログラムに従う処理によって実現した処理装置の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは処理装置の全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0142】
さらに、上記各実施形態では、基準信号生成回路及び印加電圧設定回路は、それぞれ個別に不揮発メモリを備える場合について説明したが、これに限らず、例えば共通の不揮発メモリを備えても良い。
【0143】
なお、上記各実施形態において、光ディスク15に代えて、例えば基板の複屈折量が極めて小さい光ディスクあるいは反射ミラーなどを用いることにより、光学系に起因する位相差のみを求めることができる。そして、その光学系に起因する位相差による、戻り光束における光学的位相差の誤差を補正するために電気光学素子に印加する電圧を、予めオフセット電圧としても良い。
【0144】
また、上記実施形態に係る光ディスク装置は、ホストと同一の筐体内に配置される、いわゆる内蔵タイプであっても良いし、ホストとは別の筐体内に配置される、いわゆる外付けタイプであっても良い。
【0145】
なお、上記各実施形態では、光源が1つの場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば波長が405nmの光束を出射する光源、波長が650nmの光束を出射する光源及び波長が780nmの光束を出射する光源のうち少なくとも2つの光源を備えていても良い。
【0146】
また、上記各実施形態では、位相差調整回路が光ピックアップ装置に設けられた場合について説明したが、これに限らず、例えば位相差調整回路と同様な回路を再生信号処理回路28に付与しても良い。この場合には、再生信号処理回路28から電気光学素子への印加電圧が供給されることとなる。
【0147】
また、上記各実施形態では、アクセス中にフィードバック制御により戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する場合について説明したが、これに限らず、例えば光ディスクに起因する位相差があまり変化しない場合などには、予め計測された光学的位相差に基づいて、設定された電圧を電気光学素子に印加し、アクセス中の印加電圧を固定値としても良い。この場合には、位相差調整回路の代わりに所定の電圧を電気光学素子に印加するためのドライバを用いることができる。
【0148】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光ピックアップ装置によれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することができるという効果がある。
【0149】
また、本発明に係る光ディスク装置によれば、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、それぞれ図2における電気光学素子の構成を説明するための図である。
【図4】図4(A)は電圧が印加されていない場合の電気光学素子における屈折率(常光線屈折率no、異常光線屈折率ne)を説明するための図であり、図4(B)は電圧が印加されている場合の電気光学素子における屈折率を説明するための図である
【図5】電気光学素子における印加電圧と光学的位相差との関係を説明するための図である。
【図6】図2における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図6における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図9】図8における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図10】図9における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】図8における受光器72からの出力信号のみに基づいて電気光学素子を制御する場合を説明するための図である。
【図12】図11における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図13】図12における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図14】図8におけるビームスプリッタ(偏光ビームスプリッタ及び無偏光ビームスプリッタ)に代えてホログラム素子(偏光ホログラム素子及び無偏光ホログラム素子)を用いた例を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれホログラム素子、受光器、及び半導体レーザを一体化した例を説明するための図である。
【図16】電気光学結晶が高次の電気光学効果を示す場合の印加電圧と光学的位相差との関係を説明するための図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、それぞれ電極の変形例を説明するための図である。
【図18】図18(A)は、CD−ROMの基板における複屈折の発生状況の一例を説明するための図であり、図18(B)は、そのCD−ROMからの戻り光束のうち光検出器で受光される受光量の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
15…光ディスク(情報記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部)、40…CPU(処理装置の一部)、53,53‘…電気光学素子(光学素子)、53A,53B,53A’,53B‘…電極、54…偏光ビームスプリッタ(偏光性分岐光学素子)、59…受光器(第1の光検出器)、60…対物レンズ、61,62,63,64…位相差調整回路(位相差補正手段)、70…無偏光ビームスプリッタ(無偏光性分岐光学素子)、72…受光器(第2の光検出器)、EC…電気光学結晶。
【発明の属する技術分野】
本発明は光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、情報記録媒体の記録面に光を照射し、その記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略述する)は、その機能が向上するに伴い、音楽や映像といったAV(Audio−Visual)情報を取り扱うことが可能となってきた。これらAV情報の情報量は非常に大きいために、記録媒体としてCD(compact disc)やDVD(digital versatile disc)などの大容量の光ディスクが注目されるようになり、その低価格化とともに、光ディスクをアクセスするためのドライブ装置として光ディスク装置がパソコンの周辺機器の一つとして普及するようになった。
【0003】
光ディスク装置では、スパイラル状又は同心円状のトラックが形成された光ディスクなどの情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して情報の記録又は消去を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置は、情報記録媒体の記録面にレーザ光を照射して光スポットを形成するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置として、光ピックアップ装置を備えている。
【0004】
一般的に光ピックアップ装置は、対物レンズを含み、光源から出射される光束を情報記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された受光素子などを備えている。この受光素子からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報(サーボ情報)などを含む信号が出力される。そして、光ディスク装置は、受光素子からの出力信号に基づいて、記録面の所定位置に所定形状の光スポットが形成されるように各種サーボ制御を行っている。
【0005】
通常光ピックアップ装置の光学系には、戻り光束を受光素子の受光方向に分岐するための分岐光学素子が含まれている。この分岐光学素子としては、分岐作用が入射する光束の偏光方向に依存しない無偏光性分岐光学素子と、入射する光束の偏光方向に応じて分岐作用が異なる偏光性分岐光学素子とがある。分岐光学素子が往路と復路の共通光路上に配置される場合に、無偏光性分岐光学素子では、光源から出射された光束もその一部が分岐されるため、情報記録媒体の記録面に照射される光量が減少し、高速記録への対応が困難となる。そこで、高速記録に対応した光ピックアップ装置では、分岐光学素子として偏光性分岐光学素子が多く用いられている。この場合には、光源から出射される光束の偏光方向に対して、例えばλ/4板などを用いて戻り光束の偏光方向をほぼ90度変更することにより、光源から出射された光束の殆どが偏光性分岐光学素子を透過し、戻り光束の大部分が偏光性分岐光学素子で分岐されるようにすることができる。すなわち、光利用効率が向上し、高速記録への対応が可能となる。
【0006】
また、一般に情報記録媒体では、透明の基板上に記録面が形成されており、対物レンズからの光束はその基板を透過して記録面に集光されるようになっている。そして、その基板は通常樹脂成形品であり、その大部分は生産性の点から、成形品と類似した形状のキャビティを有する成形用型(通常は金型)に溶融状態の樹脂を加圧しながら注入する射出成形法及びそれに類似する方法により製造されている。成形品が情報記録媒体のような円盤形状の場合には、キャビティの中央部(基板の回転中心部分に対応する部分)にダイレクトゲート(注入口)を持つラジアルフロータイプの成形用型を用いた成形方式(方案)が通常採用され、溶融樹脂はダイレクトゲートを介してキャビティの中央部から外周部に向かって流れていく。キャビティ内に注入された樹脂は、その温度及び冷却速度が一定ではないために、成形品に内部応力が残留したり、樹脂の密度が不均一となることがある。そこで、上記のようにして製造された情報記録媒体の基板は、光学的異方性を有する場合がある。例えば常光線に対する屈折率(常光線屈折率)と異常光線に対する屈折率(異常光線屈折率)とが異なる複屈折性を有する場合がある。このような複屈折性を有する情報記録媒体を、偏光性分岐光学素子が用いられている光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置でアクセスすると、光源から出射された光束と偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束との光学的位相差がπからずれてしまうこととなる。このために、偏光性分岐光学素子で分岐される戻り光束の光量が減少し、その結果受光素子から出力される信号の信号レベル及びS/N比が低下するという不都合があった。そして、最悪の場合、光源から出射された光束と偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束との光学的位相差が0となり、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束の殆どは分岐されず光源に戻ることとなる。その結果受光素子での受光量は殆ど0となり、ウォブル信号やサーボ信号の検出が不可能となる。
【0007】
さらに、情報記録媒体は複数のメーカーから供給されており、同一種類の情報記録媒体であっても、メーカーによって基板の複屈折の状況がそれぞれ異なっている。また、一例として図18(A)に示されるように、1枚の情報記録媒体においても情報記録媒体の回転中心からの距離によって基板の複屈折の状況は異なっている。この情報記録媒体を偏光性分岐光学素子が用いられている光ピックアップ装置を搭載した光ディスク装置でアクセスすると、一例として図18(B)に示されるように、情報記録媒体の回転中心からの距離によって受光素子での戻り光束の受光量が大きく変化し、その結果受光素子から出力される信号の信号レベル及びS/N比が不安定となるという不都合もあった。なお、図18(A)では、トラックの接線方向(タンジェンシャル方向)の屈折率がそれに直交する方向(ラジアル方向)の屈折率よりも小さい場合を正の複屈折としている。
【0008】
そこで、例えば特開2000−268398号公報(以下、「第1の公知例」という)には、液晶パネルを用いて情報記録媒体の基板の複屈折を補償する光ピックアップ装置が開示されている。この光ピックアップ装置は、液晶パネルを構成する液晶層内の液晶分子の配向方向を制御し、情報記録媒体の基板の複屈折を打ち消すために、光軸に垂直な面内の2方向に関して入射する光束の成分間に位相差を付与している。
【0009】
また、特開2000−306262号公報(以下、「第2の公知例」という)には、可変波長板を用いて情報記録媒体の基板の複屈折を補償する情報記録再生装置が開示されている。この情報記録再生装置は、基板の複屈折量に応じて、可変波長板で光束に付与する光学的位相差を電気的あるいは機械的に0から1/4波長まで変化させて、基板の複屈折を打ち消している。なお、第2の公知例では、可変波長板が上記第1の公知例と同様に液晶で構成されている場合について、実施の形態が説明されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各公知例では、情報記録媒体の基板の複屈折を補償する手段としていずれも液晶を利用しており、光源の発熱などにより液晶の温度が上昇する場合がある。特に情報の記録時には大きな電流を光源に流すため、ピックアップ装置の内部では温度が70℃近くまで上昇することもある。液晶は一般に温度特性が悪いため、安定して情報記録媒体の基板の複屈折を補償することが困難であるという不都合があった。また、液晶は光学レンズに比べて透過率が悪く、光源から出射された光束の光利用効率が低下するという不都合もあった。さらに、各公知例では、光束に付与する位相差を分子量の非常に大きい液晶分子の移動及び回転によって調整しているため、印加電圧の変化に対する応答性が悪く、追随できる周波数は30Hz程度であるという不都合があった。
【0011】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することができる光ピックアップ装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を含み、通過する光束に所定の光学的位相差を付与する光学素子とを含み、前記記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置に導く光学系と;前記受光位置に配置された光検出器と;を備える光ピックアップ装置である。
【0014】
これによれば、光源から出射された光束は対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光され、記録面で反射された戻り光束は対物レンズ及び偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される。例えば情報記録媒体の基板が複屈折性を有する場合には、基板内では方向に応じて屈折率が異なるために、情報記録媒体に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差が付与され、更に記録面で反射された光束も基板を透過する際に光学的位相差が付与されることとなる。これらの光学的位相差により、例えば記録面で反射された戻り光束が偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される場合には、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は、予定していた所定の直線偏光の光束とはならず、光検出器で受光される戻り光束の光量が減少することとなる。そこで、例えば情報記録媒体の基板を透過する光束に付与される光学的位相差と逆極性の光学的位相差が光束に付与されるように、光学素子に所定の電圧を印加することにより、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は予定通りの所定の直線偏光の光束となる。従って、光検出器での受光量の減少を抑制することができ、光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が安定する。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、電気光学結晶は、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶であるために、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合に比べて、電気光学素子を光軸方向に薄くすることができる。これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することができる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、光源と;前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、印加される電圧に応じた光学的位相差を入射される光束に付与する電気光学結晶を含む光学素子と、前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束の光路上に配置され、前記戻り光束をその光路上から分岐する偏光性分岐光学素子とを含む光学系と;前記偏光性分岐光学素子にて分岐された前記戻り光束を受光する第1の光検出器を含む光検出系と;前記光検出系の少なくとも1つの光検出器からの出力信号に基づいて、前記光学素子に印加する電圧を調整し、前記戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する位相差補正手段と;を備える光ピックアップ装置である。
【0016】
これによれば、光源から出射された光束は対物レンズを介して情報記録媒体の記録面に集光され、記録面で反射された戻り光束は対物レンズ及び偏光性分岐光学素子を介して光検出器で受光される。例えば情報記録媒体の基板が複屈折性を有する場合には、基板内では方向に応じて屈折率が異なるために、情報記録媒体に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差が付与され、更に記録面で反射された光束も基板を透過する際に光学的位相差が付与されることとなる。これらの光学的位相差により、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は、予定していた所定の直線偏光の光束とはならず、第1の光検出器で受光される戻り光束の光量が減少することとなる。本発明では、位相差補正手段により、光検出器のうちの少なくとも1つからの出力信号に基づいて戻り光束における光学的位相差の誤差を補正するのに最適な電圧が光学素子に印加される。例えば基板を透過する光束に付与される光学的位相差とは逆極性の光学的位相差が光学素子を透過する光束に付与されるように、第1の光検出器からの出力信号に基づいて、光学素子の印加電圧が調整される。それにより、偏光性分岐光学素子に入射する戻り光束は予定通りの所定の直線偏光の光束となり、その戻り光束の殆どが第1の光検出器で受光され、第1の光検出器から出力される信号の信号レベル及びS/N比が向上する。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、温度変化や経時変化などにより光学系に起因する光学的位相差が変化しても精度良く補正することができるため、第1の光検出器から出力される信号の安定性を向上させることが可能となる。しかも、情報記録媒体へのアクセス中にフィードバック制御によって光学的位相差の誤差を補正しているため、情報記録媒体のメーカ間及び製造ロット間に複屈折の発生状況の違いがあっても、光学的位相差の誤差を精度良く補正することができる。従って、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することが可能となる。
【0017】
この場合において、請求項3に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。
【0018】
上記請求項2に記載の光ピックアップ装置において、請求項4に記載の光ピックアップ装置の如く、前記光学系は、前記偏光性分岐光学素子と前記光源との間に配置された無偏光性分岐光学素子を更に含み、前記光検出系は、前記偏光性分岐光学素子を透過し、前記無偏光性分岐光学素子で分岐された前記戻り光束を受光する第2の光検出器を更に含むこととすることができる。
【0019】
この場合において、請求項5に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号と前記第2の光検出器からの出力信号との差信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。あるいは、請求項6に記載の光ピックアップ装置の如く、前記位相差補正手段は、前記第2の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以下となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することとすることができる。
【0020】
上記請求項2〜6に記載の各光ピックアップ装置において、請求項7に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光性分岐光学素子は、偏光ホログラム素子であることとすることができる。かかる場合には、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。
【0021】
この場合において、請求項8に記載の光ピックアップ装置の如く、前記偏光ホログラム素子は、前記第1の光検出器と一体化されていることとすることができる。かかる場合には、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。
【0022】
上記請求項2〜8に記載の各光ピックアップ装置において、請求項9に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合に比べて、電気光学結晶を薄くすることができる。これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することが可能となる。
【0023】
上記請求項2〜9に記載の各光ピックアップ装置において、請求項10に記載の光ピックアップ装置の如く、前記戻り光束における光学的位相差の誤差は、前記光学系に起因する誤差及び前記情報記録媒体の光学的異方性に起因する誤差のうちの少なくとも一方であることとすることができる。
【0024】
上記請求項1〜10に記載の各光ピックアップ装置において、請求項11に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、奇数次の電気光学効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。
【0025】
上記請求項1〜11に記載の各光ピックアップ装置において、請求項12に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、ポッケルス効果を示す電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、印加電圧と光学的位相差(複屈折)量との関係は直線関係となる。
【0026】
上記請求項1〜12に記載の各光ピックアップ装置において、請求項13に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、シレナイト構造を有する酸化物の電気光学結晶であることとすることができる。かかる場合には、低い印加電圧で大きな光学的位相差(複屈折)を発生させることができる。
【0027】
この場合において、請求項14に記載の光ピックアップ装置の如く、前記シレナイト構造を有する酸化物は、Bi12SiO20であることとすることができる。
【0028】
上記請求項1〜14に記載の各光ピックアップ装置において、請求項15に記載の光ピックアップ装置の如く、前記電気光学結晶は、単結晶の電気光学結晶であることとすることができる。
【0029】
請求項16に記載の発明は、情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう光ディスク装置であって、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0030】
これによれば、請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置を備えているために、光ピックアップ装置からの出力信号に基づいてサーボ信号を精度良く安定して検出することができる。従って、情報記録媒体に対して高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことが可能となる。なお、本明細書では、光ディスク装置は、情報の記録、再生、及び消去に光を利用するCDやDVDなどのドライブ装置だけでなく、一部に光を利用する光磁気ディスクなどのドライブ装置も含む。
【0031】
【発明の実施の形態】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
【0032】
図1には、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成が示されている。
【0033】
この図1に示される光ディスク装置20は、情報記録媒体としての光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、ROM39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0034】
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15のスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するための装置である。なお、この光ピックアップ装置23の構成等については後に詳述する。
【0035】
光ディスク15の記録面は所定の厚さの透明な基板上に形成されており、その基板を介して記録面にレーザ光が照射される。
【0036】
前記再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23からの出力信号に基づいてウォブル信号、RF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28はウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28はRF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。
【0037】
前記サーボコントローラ33は、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する各種制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0038】
前記バッファマネージャ37は、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になるとCPU40に通知する。
【0039】
前記モータドライバ27は、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。
【0040】
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付与などを行ない、光ディスク15への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して、書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。
【0041】
前記レーザコントロール回路24は、エンコーダ25からの書き込みデータ及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23から出射されるレーザ光の出力を制御する。
【0042】
前記インターフェース38は、ホスト(例えばパソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
【0043】
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。そして、CPU40は、ROM39に格納されているプログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保存する。
【0044】
次に、前記光ピックアップ装置23の構成等について図2に基づいて説明する。光ピックアップ装置23は、図2に示されるように、光源ユニット51、コリメートレンズ52、偏光性分岐光学素子としての偏光ビームスプリッタ54、λ/4板55、光学素子としての電気光学素子53、対物レンズ60、検出レンズ58、光検出器としての受光器59、位相差調整回路61及び駆動系(フォーカシングアクチュエータ、トラッキングアクチュエータ及びシークモータ(いずれも図示省略))などを備えている。
【0045】
前記光源ユニット51は、所定の波長の光束を発光する光源としての半導体レーザ(図示省略)を含んで構成されている。なお、本第1の実施形態では、光源ユニット51から出射される光束の最大強度出射方向を+Z方向とする。また、本第1の実施形態では、一例として光源ユニット51からは偏光ビームスプリッタ54の入射面に平行な偏光(P偏光)の光束が出射されるものとする。そして、この光源ユニット51の+Z側には、前記コリメートレンズ52が配置され、光源ユニット51から出射された光束を略平行光とする。
【0046】
前記偏光ビームスプリッタ54は、コリメートレンズ52の+Z側に配置されている。この偏光ビームスプリッタ54は、入射する光束の偏光方向に応じてその反射率が異なっている。本第1の実施形態では、一例としてP偏光の光束に対する反射率は小さく、S偏光の光束に対する反射率は大きくなるように、偏光ビームスプリッタ54が設定されているものする。すなわち、光源ユニット51から出射された光束の大部分は、偏光ビームスプリッタ54を透過することができる。また、光ディスク15の記録面で反射し対物レンズ60を介した戻り光束に含まれるS偏光成分は偏光ビームスプリッタ54で−X側に反射され、P偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過する。この偏光ビームスプリッタ54の+Z側には、前記λ/4板55が配置されている。
【0047】
偏光ビームスプリッタ54の−X側には、前記検出レンズ58が配置され、偏光ビームスプリッタ54で反射された戻り光束を集光する。この検出レンズ58で集光された戻り光束は前記受光器59で受光される。
【0048】
受光器59は、再生信号処理回路28にてRF信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを検出するのに最適な信号を出力するための複数の受光素子を含んで構成されている。
【0049】
前記電気光学素子53は、λ/4板55の+Z側に配置され、一例として図3(A)〜図3(C)に示されるように、縦型の電気光学効果を示す平板状の電気光学結晶ECと、該電気光学結晶ECの−Z側の面上に形成された電極53A及び+Z側の面上に形成された電極53Bとを備えている。各電極は酸化インジウム(In2O3)を主成分とし、二酸化スズ(SnO2)を10%程度混ぜた固溶体の透明の薄膜(ITO膜)で形成されている。従って、入射する光束の殆どは各電極を透過することができる。そして、各電極を介して電気光学結晶ECに電圧が印加されると、電気光学結晶EC内部にはZ軸方向に電界が形成されることとなる。
【0050】
本第1の実施形態では、電気光学結晶ECには、一例としてポッケルス効果(縦型の一次の電気光学効果)を示すBi12SiO20(BSO)の単結晶が用いられる。このBSOはシレナイト構造を有する酸化物であり、結晶点群23に属している。なお、BSO単結晶のポッケルス係数γ41は、5×10−12[m/V]である。
【0051】
電気光学結晶ECに電圧が印加されていない場合には、電気光学結晶ECが等方性の媒質であるため、一例として図4(A)に示されるように、X軸方向の屈折率(ここでは常光線屈折率)noと、Y軸方向の屈折率(ここでは異常光線屈折率)neとは互いに等しくなる。このような場合には、電気光学結晶ECを透過した光束には、その偏光方向に関係なく光学的位相差が生じることはない。
【0052】
一方、電気光学結晶ECに各電極を介して電圧が印加されると、電気光学結晶ECの内部でZ軸方向に一様な電界が発生し、その電界に比例した複屈折が電気光学結晶EC内部で一様に生じる。すなわち、一例として図4(B)に示されるように、常光線屈折率noと異常光線屈折率neとの間に違いが生じる。このような場合には、電気光学結晶ECを透過した光束には光学的位相差が付与されることとなる。例えばX軸方向に対して45゜傾いた偏光面を持つ直線偏光の光束が入射すると、その光束のX軸方向成分は常光線屈折率noによって電気光学結晶ECの内部での速度が支配され、Y軸方向成分は異常光線屈折率neによって電気光学結晶ECの内部での速度が支配される。そこで、電気光学結晶ECを透過した光束には、X軸方向とY軸方向に関して光学的位相差が生じることとなり、直線偏光から楕円偏光、円偏光と変化する。また、複屈折が生じた電気光学結晶ECに、直線偏光の光束をX軸方向又はY軸方向にその偏光面を合わせて入射すると、電気光学結晶ECを通過した光束は楕円偏光となる。電気光学結晶ECを透過した光束に生じる光学的位相差は、電気光学結晶ECにおける複屈折量に対応するために、電極53Aと電極53Bとを介して電気光学結晶ECに印加する電圧の大きさによって、電気光学結晶ECを透過した光束に付与される光学的位相差を制御することが可能となる。
【0053】
また、電気光学結晶ECがポッケルス効果を示す材料であるために、電気光学結晶ECを透過した光束に生じる光学的位相差Δθzは、次の(1)式で示されるように、電気光学結晶ECに印加される電圧Vzに比例する。ここで、λは入射する光束の波長、noは常光線屈折率である。
【0054】
Δθz=2π(no)3・γ41・Vz/λ ……(1)
【0055】
すなわち、一例として図5に示されるように、印加電圧と光学的位相差との相関関係は原点を通る直線で示される。BSO単結晶の常光線屈折率noは2.56であるので、例えば入射する光束の波長λが660nmの場合には、位相差Δθzと印加電圧Vzとの相関関係を示す直線の傾き(比例定数)は、8×10−4[V−1]となる。この場合に、例えばΔθzを半波長、すなわち位相をπだけ変化させるためには、約3.9kVの印加電圧が必要となる。
【0056】
電気光学結晶は電圧が印加されると分極により光学的異方性を示す。そして、その分極は原子レベルの分極であるため、電圧が印加されてから、それに対応する複屈折を生じるまでの応答時間はナノ秒以下である。しかしながら、平行平板に加工された電気光学結晶に電極を形成した電気光学素子の場合には、電気光学素子の形状に関係するキャパシタンス成分、位相差調整回路61の出力インピーダンス及び配線のインピーダンスなどの影響により、応答時間が遅延する。そこで、本第1の実施形態では、電気光学結晶の厚みや電極面積を最適化することによってキャパシタンス成分を減少させ、応答時間の遅延を抑制した。
【0057】
前記位相差調整回路61は、一例として図6に示されるように、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号(電流信号)を電圧信号に変換するためのI−V変換回路61a、該I−V変換回路61aからの各出力信号を加算する加算回路61b、受光器59での受光量が最大となるときの各受光素子からの出力信号の和信号に対応する信号を基準信号として生成する基準信号生成回路61c、加算回路61bからの出力信号S1と基準信号生成回路61cからの基準信号S2との差信号を求める減算器61d、この減算器61dの出力信号S3に基づいて電気光学素子53に印加する電圧を設定する印加電圧設定回路61eなどから構成されている。なお、電極53Bは0Vとなるように設定しても良い。
【0058】
また、基準信号生成回路61cは、一例として図7に示されるように、2つの入力信号を比較して、大きいほうの信号を出力する比較回路611、基準信号が格納されている不揮発メモリ613、及び基準信号を管理する基準信号管理回路612などから構成されている。比較回路611は加算回路61bからの出力信号S1と基準信号管理回路612からの出力信号S2とを比較し、大きいほうの信号を出力信号SMとして基準信号管理回路612に出力する。また、基準信号管理回路612は不揮発メモリ613に格納されている基準信号を出力信号S2として比較回路611及び減算器61dに出力する。
【0059】
基準信号管理回路612は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ613に格納されている基準信号をクリアするとともに、印加電圧設定回路61eに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路61eはテストモードに遷移すると、減算器61dからの出力信号S3に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路612は、所定のタイミングで比較回路611からの出力信号SMを不揮発メモリ613に格納するとともに、比較回路611に出力する。すなわち、加算回路61bからの出力信号S1のうちで最も大きい信号が不揮発メモリ613に格納されることとなる。印加電圧設定回路61eはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路612に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路612はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器59での戻り光束の受光量が最大となるときの加算回路61bからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。従って、減算器61dの出力信号S3は受光器59での受光量の減少量に対応する信号である。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路612に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路612は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ613に格納されている基準信号を更新することとなる。
【0060】
受光器59での受光量の減少量と戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器59での受光量の減少量と印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路61eを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されている。なお、本第1の実施形態では、一例として、次の(2)式が格納されているものとする。なお、Vaは電気光学素子53に印加される電圧、k1は比例定数(変換係数)である。
【0061】
Va=k1・S3 ……(2)
【0062】
上記のように構成される光ピックアップ装置23の作用を説明する。なお、ここでは、便宜上、例えば光学系を構成する各光学部品の加工精度、組立誤差、光軸のずれ及び傾きなどに起因する光学的位相差(以下、便宜上「光学系に起因する位相差」という)は極めて小さいものとする。また、λ/4板55における遅相軸方向と光ディスク15における遅相軸方向とは45°ずれているものとする。
【0063】
《光ディスクの基板の複屈折量が極めて小さい場合》
先ず光ディスク15の基板の複屈折量(以下「光ディスクの複屈折量」ともいう)が極めて小さい場合について説明する。なお、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vであるものとする。
【0064】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55で円偏光の光束とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が極めて小さいため、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差を付与されることなく、円偏光の光束が記録面に照射される。すなわち、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0065】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この光束は基板を透過する際に光学的位相差を付与されることなく、円偏光の戻り光束が対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた戻り光束は、電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0066】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して光源ユニット51に入射する光束は殆ど0である。
【0067】
位相差調整回路61は、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号をI−V変換回路61aにて電圧信号に変換した後、各電圧信号を加算回路61bにて加算する。加算回路61bからの出力信号S1は減算器61dにて基準信号S2と比較され、その比較結果は信号S3として印加電圧設定回路61eに入力される。ここでは、受光器59での受光量はほぼ最大値となるため、信号S3はほぼ0となる。従って、上記(2)式から明らかなように、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vのままとなる。
【0068】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差の誤差調整なし)》
次に、光ディスクの複屈折量が大きい場合について説明する。なお、印加電圧設定回路61eから出力される印加電圧は0Vであるものとする。
【0069】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)が付与され、楕円偏光となる。すなわち、所定の形状の光スポットは記録面に形成されない。
【0070】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの楕円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaが付与され、対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた戻り光束は電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55にて楕円度が異なる楕円偏光に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ54に入射する戻り光束の光学的位相差は、誤差を含むこととなる。
【0071】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるS偏光成分は−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。光ディスクの複屈折量が小さい場合に比べて受光器59での受光量は低下する。
【0072】
一方、偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるP偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過し、光源ユニット51に入射する。そのため、半導体レーザでの発振が不安定となり、各種不都合を生じるおそれがある。
【0073】
位相差調整回路61は、各受光素子からの出力信号をI−V変換回路61aにて電圧信号に変換した後、各電圧信号を加算回路61bにて加算する。加算回路61bからの出力信号S1は減算器61dにて基準信号S2と比較され、その比較結果は信号S3として印加電圧設定回路61eに入力される。印加電圧設定回路61eは、上記(2)式に基づいて、印加電圧を設定するとともに各電極に出力する。これにより、光ディスクの複屈折によって付与される光学的位相差(以下「光ディスクに起因する位相差」ともいう)δaとは逆極性の光学的位相差−δaが電気光学素子53で付与されることとなる。
【0074】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差の誤差調整あり)》
上記のようにして設定された電圧が電気光学素子53に印加された場合について説明する。
【0075】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、上記設定された電圧が印加されているため、電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)が付与され、記録面に照射される。すなわち、光ディスクに起因する位相差(δa)は、電気光学素子53で付与された光学的位相差(−δa)と相殺される。従って、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0076】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaが付与され、対物レンズ60に入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、円偏光の光束としてλ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)に変換され、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、光学的位相差の誤差が補正された戻り光束が偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0077】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路61及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して光源ユニット51に入射する光束は殆ど0となる。
【0078】
なお、上記説明では、わかりやすくするために光学系に起因する位相差は極めて小さいものとしたが、光学系に起因する位相差が大きい場合であっても同様にして電気光学素子53の印加電圧を調整することにより戻り光束における光学的位相差の誤差を補正することができる。また、光学系に起因する位相差及び光ディスクに起因する位相差がいずれも大きい場合であっても良い。
【0079】
《記録処理》
次に、前述の光ディスク装置20を用いて、光ディスク15にデータを記録する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0080】
CPU40は、ホストから記録要求のコマンドを受信すると、指定された記録速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから記録要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。また、CPU40は、ホストから受信したデータをバッファマネージャ37を介してバッファRAM34に蓄積する。
【0081】
位相差調整回路61は、前述の如くして電気光学素子53に印加する電圧を調整し、戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する。光ディスク15の回転が所定の線速度に達すると、再生信号処理回路28は、受光器59からの出力信号に基づいて、トラックエラー信号及びフォーカスエラー信号を検出し、サーボコントローラ33に出力する。
【0082】
サーボコントローラ33は、トラックエラー信号に基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のトラッキングアクチュエータを駆動し、トラックずれを補正する。また、サーボコントローラ33は、フォーカスエラー信号に基づいて、モータドライバ27を介して光ピックアップ装置23のフォーカシングアクチュエータを駆動し、フォーカスずれを補正する。このようにして、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。
【0083】
また、再生信号処理回路28は、受光器59からの出力信号に基づいてアドレス情報を取得し、CPU40に通知する。そして、CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、指定された書き込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するように光ピックアップ装置23のシークモータを制御する信号をモータドライバ27に出力する。
【0084】
CPU40は、バッファマネージャ37からバッファRAM34に蓄積されたデータ量が所定の値を超えたとの通知を受けると、エンコーダ25に書き込みデータの作成を指示する。また、CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が書き込み開始地点であると判断すると、エンコーダ25に通知する。そして、エンコーダ25は、レーザコントロール回路24及び光ピックアップ装置23を介して、書き込みデータを光ディスク15に記録する。
【0085】
《再生処理》
続いて前述した光ディスク装置20を用いて、光ディスク15に記録されているデータを再生する場合の処理動作について簡単に説明する。
【0086】
CPU40は、ホストから再生要求のコマンドを受信すると、再生速度に基づいてスピンドルモータ22の回転を制御するための制御信号をモータドライバ27に出力するとともに、ホストから再生要求のコマンドを受信した旨を再生信号処理回路28に通知する。そして、上記記録処理の場合と同様にして、電気光学素子53に印加する電圧の調整、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、再生信号処理回路28は、上記記録処理の場合と同様にアドレス情報を検出し、CPU40に通知する。
【0087】
CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、指定された読み込み開始地点に光ピックアップ装置23が位置するようにシークモータを制御する信号をモータドライバ27に出力する。CPU40は、再生信号処理回路28からのアドレス情報に基づいて、光ピックアップ装置23の位置が読み込み開始地点であると判断すると、再生信号処理回路28に通知する。
【0088】
そして、再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号に基づいてRF信号を検出し、誤り訂正処理等を行った後、バッファRAM34に蓄積する。バッファマネージャ37は、バッファRAM34に蓄積された再生データがセクタデータとして揃ったときに、インターフェース38を介してホストに転送する。
【0089】
なお、記録処理及び再生処理が終了するまで、前述した電気光学素子53に印加する電圧の調整、対物レンズ60のトラッキング制御及びフォーカス制御が随時行われる。
【0090】
以上の説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る光ディスク装置20では、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されている。また、位相差調整回路61によって位相差補正手段が実現されている。
【0091】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、位相差調整回路61は、受光器59からの出力信号に基づいて、受光器59での受光量が最大受光量とほぼ一致するように、電気光学素子53に印加する電圧を調整している。これにより、光学系に起因する位相差及び光ディスクに起因する位相差による戻り光束における光学的位相差の誤差が補正され、受光器59から出力される信号の信号レベル及びS/N比を向上させることができる。また、各光学部品を組み付けた後に、光学的位相差の誤差を補正することができるため、各光学部品の組み付け作業及び調整作業が容易となり、作業コストを削減することが可能となる。さらに、各光学部品の選定が容易となり、安価な汎用部品を用いることができるため、部品コストの削減及び歩留まりの向上が可能となる。また、温度変化や経時変化などにより光学系に起因する位相差が変化しても精度良く光学的位相差の誤差を補正することができるため、受光器59から出力される信号の安定性を向上させることが可能となる。
【0092】
さらに、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、稼働中にフィードバック制御を行って光学的位相差の誤差を補正しているため、光ディスクのメーカ間及び製造ロット間に複屈折の発生状況の違いがあっても、光ディスク毎に光ディスクに起因する位相差による誤差を精度良く補正することができる。
【0093】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53では屈折率を変更する材料として電気光学結晶が用いられているために、100MHz以上の帯域特性を有する位相差調整回路61からの制御信号に追随することができ、ほぼリアルタイムで光学的位相差の誤差を補正することが可能となる。そこで、例えばDVDドライブ装置に用いられた場合には、10倍速程度の回転速度においても完全に追従して光学的位相差の誤差を補正することができる。また、記録面の場所(アドレス)によって複屈折量が異なる光ディスクに対しても精度良く光学的位相差の誤差を補正することが可能となる。
【0094】
さらに、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53では縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いているために、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶(光軸と電界印加方向が垂直)を用いた場合に比べて、電気光学結晶を光軸方向に薄く、面方向に広くすることができる.これにより、光源から対物レンズまでの距離を短くすることが可能となり、各光学部品の配置の自由度が増すとともに、ピックアップ装置を小型化することができる。なお、横型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、電界印加方向と光軸方向とが直交しているので、各電極は光路を挟む位置に設置する必要がある。この場合には、各電極間の距離は、当然ながら光路中の光のビーム径より大きくしなければならないため、ビーム径を大きくしようとすると電極間距離が長くなる。一方、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、ビーム径を大きくしようとすると電気光学結晶の面積を大きくするだけで良く、電極間距離(ギャップ長)には影響を及ぼさない。従って、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を用いた場合には、通常のハーフハイトの高さのピックアップ装置であっても、ビーム径を大きくとることが可能となり、その結果ワーキングディスタンスを大きくすることができる。
【0095】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学素子53にポッケルス効果を示す電気光学結晶を用いているために、印加電圧と光学的位相差との関係は直線関係となる。また、電圧が印加されていないときには光学的位相差が0、すなわち等方性媒質となる。そこで、印加電圧の正負と光学的位相差の正負とを対応させることができる。従って、印加電圧と光学的位相差とは単純な比例関係を有することとなり、簡単な一次式で示すことができる。これにより、光学的位相差の誤差の補正が容易になり、例えば印加電圧設定回路に汎用の安価なリニアアンプなどを用いることができ、回路の単純化及び低コスト化を図ることができるとともに、補正の高速化を図ることが可能となる。
【0096】
また、本第1の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、電気光学結晶としてシレナイト構造を有する酸化物を用いているために、低い印加電圧で大きな光学的位相差が発生する。従って、位相差調整回路61に大規模な昇圧回路を必要とせず、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。
【0097】
また、本第1の実施形態に係る光ディスク装置によると、再生信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを精度良く安定して検出することができるため、高速度でのアクセスを安定して行うことが可能となる。さらに、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化によって、光ディスク装置自体の小型化及び消費電力の低減も促進することができ、例えば携帯用として用いられる場合には、持ち運びが容易になるとともに、長時間の使用が可能となる。
【0098】
なお、上記第1の実施形態では、偏光ビームスプリッタ54を用いて戻り光束を受光器59側に分岐する場合について説明したが、これに限らず、偏光ビームスプリッタ54に代えて、例えば偏光ホログラム素子を用いても良い。これにより、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。さらに、この場合に、その偏光ホログラム素子と受光器59とを一体化しても良い。
【0099】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を図8〜図10に基づいて説明する。
【0100】
この第2の実施形態は、一例として図8に示されるように、上記第1の実施形態におけるコリメートレンズ52と偏光ビームスプリッタ54との間に無偏光ビームスプリッタ70を配置した点に特徴を有する。
【0101】
さらに、無偏光ビームスプリッタ70で反射された戻り光束を集光するための集光レンズ71と、該集光レンズ71で集光された戻り光束を受光するための受光器72とが付与されている。
【0102】
そこで、上記第1の実施形態における位相差調整回路61の代わりに、受光器59及び受光器72からの出力信号に基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整する位相差調整回路62が用いられる。
【0103】
なお、その他の光ピックアップ装置及び光ディスク装置の構成などは、上記第1の実施形態と同様である。従って、以下においては、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明するとともに、上記第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
【0104】
位相差調整回路62は、一例として図9に示されるように、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号及び受光器72からの出力信号を電圧信号に変換するためのI−V変換回路62a、該I−V変換回路62aにて電圧信号に変換された受光器59を構成する各受光素子からの出力信号を加算する加算回路62b、この加算回路62bからの出力信号S11とI−V変換回路62aにて電圧信号に変換された受光器72からの出力信号S12との差信号を求める減算器62d、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差が最大となるときの受光器59からの出力信号と受光器72からの出力信号との差信号に対応する信号を基準信号として生成する基準信号生成回路62c、減算器62dからの出力信号S13と基準信号生成回路62cからの出力信号S14との差信号を求める減算器62e、この減算器62eの出力信号S15に基づいて電気光学素子53に印加する電圧を設定する印加電圧設定回路62fなどから構成されている。
【0105】
また、基準信号生成回路62cは、一例として図10に示されるように、2つの入力信号を比較して、大きいほうの信号を出力する比較回路621、基準信号が格納されている不揮発メモリ623、及び基準信号を管理する基準信号管理回路622などから構成されている。比較回路621は減算器62dからの出力信号S13と基準信号管理回路622からの出力信号S14とを比較し、大きいほうの信号を出力信号SNとして基準信号管理回路622に出力する。また、基準信号管理回路622は不揮発メモリ623に格納されている基準信号を出力信号S14として比較回路621及び減算器62eに出力する。
【0106】
基準信号管理回路622は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ623に格納されている基準信号をクリアするとともに、印加電圧設定回路62fに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路62fはテストモードに遷移すると、減算器62eからの出力信号S15に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路622は、所定のタイミングで比較回路621からの出力信号SNを不揮発メモリ623に格納するとともに、比較回路621に出力する。すなわち、減算器62dからの出力信号S13のうちで最も大きい信号が不揮発メモリ623に格納されることとなる。印加電圧設定回路62fはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路622に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路622はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差が最大となるときの受光器59での戻り光束の受光量が最大となるときの減算器62dからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路622に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路622は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ623に格納されている基準信号を更新することとなる。
【0107】
受光器59での受光量と受光器72での受光量との差の減少量と、戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器59での受光量と受光器72での受光量との差の減少量と、印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路62fを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されている。なお、本第2の実施形態では、一例として、次の(3)式が格納されているものとする。なお、Vaは電気光学素子53に印加される電圧、k2は比例定数(変換係数)である。
【0108】
Va=k2・S3 ……(3)
【0109】
上記のようにして構成される光ピックアップ装置23の作用を説明する。なお、ここでは、上記第1の実施形態と同様に、光学系に起因する位相差は極めて小さいものとする。
【0110】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(光学的位相差の誤差調整なし)》先ず、光ディスクの複屈折量が大きく、印加電圧設定回路62fから出力される印加電圧が0Vの場合について説明する。
【0111】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55で円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、印加電圧が0Vであるため、電気光学素子53に入射した光束はそのまま透過し、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスクの複屈折量が大きいので、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差(ここではδaとする)を生じ、楕円偏光の光束が記録面に照射される。所定の形状の光スポットは記録面に形成されない。
【0112】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの楕円偏光の光束となる。この光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaを生じ、楕円度が大きくなった楕円偏光の光束が対物レンズ60の入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。この光束は電気光学素子53をそのまま透過し、λ/4板55に入射する。λ/4板55では楕円度が変更され偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、偏光ビームスプリッタ54に入射する戻り光束の光学的位相差は、誤差を含むこととなる。
【0113】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるS偏光成分は−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路62及び再生信号処理回路28に出力する。光ディスクの複屈折量が小さい場合に比べて受光器59での受光量は低下する。
【0114】
一方、偏光ビームスプリッタ54に入射した光束に含まれるP偏光成分は偏光ビームスプリッタ54を透過し、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70で−X方向に反射された戻り光束は、検出レンズ71を介して受光器72で受光される。受光器72は受光量に応じた信号を位相差調整回路62に出力する。なお、無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は光源ユニット51に入射する。
【0115】
位相差調整回路62は、受光器59を構成する各受光素子及び受光器72からの出力信号をI−V変換回路62aにて電圧信号に変換した後、受光器59を構成する各受光素子からの出力信号に対応する各電圧信号を加算回路62bにて加算する。加算回路62bからの出力信号S11は減算器62dにて受光器72からの出力信号に対応する電圧信号S12と比較され、その比較結果は信号S13として減算器62eに入力される。信号S13は減算器62eにて基準信号S14と比較され、その比較結果は信号S15として印加電圧設定回路62fに入力される。印加電圧設定回路62fは、上記(3)式に基づいて、電気光学素子53への印加電圧を設定するとともに、各電極に出力する。これにより、光ディスクに起因する位相差(δa)と逆極性の位相差(−δa)が電気光学素子53で付与されることとなる。
【0116】
《光ディスクの基板の複屈折量が大きい場合(位相差ずれ調整あり)》
次に、上記のようにして設定された電圧が電気光学素子53に印加された場合について説明する。
【0117】
光源ユニット51から+Z方向に出射された直線偏光(ここではP偏光)の光束は、コリメートレンズ52で略平行光となった後、無偏光ビームスプリッタ70に入射する。無偏光ビームスプリッタ70を透過した光束は、偏光ビームスプリッタ54に入射する。この光束の大部分は偏光ビームスプリッタ54をそのまま透過し、λ/4板55にて円偏光とされた後、電気光学素子53に入射する。ここでは、電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、対物レンズ60を介して光ディスク15に照射される。ここでは、光ディスク15に照射された光束は基板を透過する際に光学的位相差δaを生じ、記録面に照射される。すなわち、光ディスクに起因する位相差(δa)は、電気光学素子53で付与された位相差(−δa)と相殺される。従って、所定の形状の光スポットが記録面に形成される。
【0118】
光ディスク15の記録面にて反射した戻り光束は、往路とは反対回りの円偏光の光束となる。この戻り光束は基板を透過する際に再度光学的位相差δaを生じ、楕円偏光の光束となって対物レンズ60の入射する。対物レンズ60で再び略平行光とされた光束は電気光学素子53に入射する。電気光学素子53に入射した光束は−δaの光学的位相差が付与され、円偏光の光束としてλ/4板55に入射する。この戻り光束はλ/4板55で円偏光から直線偏光(ここではS偏光)となり、偏光ビームスプリッタ54に入射する。すなわち、光学的位相差の誤差が補正された戻り光束が偏光ビームスプリッタ54に入射する。
【0119】
偏光ビームスプリッタ54に入射した光束は、その殆どが−X方向に反射され、検出レンズ58を介して受光器59で受光される。受光器59を構成する各受光素子は、受光量に応じた信号をそれぞれ位相差調整回路62及び再生信号処理回路28に出力する。なお、偏光ビームスプリッタ54を透過して無偏光ビームスプリッタ70に入射する光量は殆ど0である。
【0120】
以上の説明から明らかなように、本第2の実施形態に係る光ディスク装置20では、位相差調整回路62によって位相差補正手段が実現されている。また、上記第1の実施形態と同様に、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって処理装置が実現されており、上記第1の実施形態と同様にして、記録処理及び再生処理が行われる。
【0121】
以上説明したように、本第2の実施形態に係る光ピックアップ装置によると、位相差調整回路62は、受光器59及び受光器72からの出力信号に基づいて、受光器59での受光量と受光器72での受光量との差がほぼ最大となるように、電気光学素子53に印加する電圧を調整している。これにより、光学系及び光ディスクに起因する位相差による戻り光束における光学的位相差の誤差が補正され、受光器59から出力される信号の信号レベル及びS/N比を向上させることが可能となるため、上記第1の実施形態に係る光ピックアップ装置と同様な効果を得ることができる。なお、光学系及び光ディスクに起因する位相差の検出精度は上記第1の実施形態よりも高い。
【0122】
また、本第2の実施形態に係る光ディスク装置によると、再生信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを精度良く安定して検出することができるため、上記第1の実施形態に係る光ディスク装置と同様な効果を得ることが可能となる。
【0123】
なお、上記第2の実施形態では、受光器72からの出力信号と受光器59からの出力信号に基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整する場合について説明したが、これに限らず、例えば図11に示されるように、受光器72からの出力信号のみに基づいて電気光学素子53の印加電圧を調整しても良い。この場合には、位相差調整回路62の代わりに位相差調整回路63が用いられることとなる。
【0124】
この位相差調整回路63は、一例として図12に示されるように、受光器72からの出力信号を電圧信号に変換するためのI−V変換回路63a、受光器72での受光量が最小となるときの受光器72からの出力信号とほぼ同レベルの基準信号を生成する基準信号生成回路63b、I−V変換回路63aからの出力信号S21と基準信号生成回路63bからの出力信号S22との差信号を求める減算器63c、この減算器63cの出力信号S23に基づいて電極53Aに印加する電圧を設定する印加電圧設定回路63dなどから構成されている。
【0125】
また、基準信号生成回路663bは、一例として図13に示されるように、2つの入力信号を比較して、小さいほうの信号を出力する比較回路631、基準信号が格納されている不揮発メモリ633、及び基準信号を管理する基準信号管理回路632などから構成されている。比較回路631はI−V変換回路63aからの出力信号S21と基準信号管理回路632からの出力信号S22とを比較し、小さいほうの信号を出力信号SLとして基準信号管理回路632に出力する。また、基準信号管理回路632は不揮発メモリ633に格納されている基準信号を出力信号S22として比較回路631及び減算器63cに出力する。
【0126】
基準信号管理回路632は、例えば光ディスク15が光ディスク装置20にロードされ、CPU40から基準信号の更新要求が入力されると、不揮発メモリ633に格納されている基準信号に所定の大きな値を初期値としてセットするとともに、印加電圧設定回路63dに対してテストモードへの遷移要求を出力する。印加電圧設定回路63dはテストモードに遷移すると、減算器63cからの出力信号S23に関係なく、電気光学素子53に印加する電圧を所定の範囲内で所定のステップで徐々に変化させる。そして、基準信号管理回路632は、所定のタイミングで比較回路631からの出力信号SLを不揮発メモリ633に格納するとともに、比較回路631に出力する。すなわち、I−V変換回路63aからの出力信号S21のうちで最も小さい信号が不揮発メモリ633に格納されることとなる。印加電圧設定回路63dはテストモードでの処理が終了すると、テスト終了を基準信号管理回路632に通知するとともに稼動モードに戻る。基準信号管理回路632はテスト終了通知を受けると、基準信号の更新を禁止し、基準信号の更新終了をCPU40に通知する。これにより、受光器72での受光量が最小となるときのI−V変換回路63aからの出力信号とほぼ等しい信号が基準信号となる。なお、CPU40は、基準信号の更新要求の代わりに、基準信号に関する情報を基準信号管理回路632に通知しても良い。この場合には、基準信号管理回路632は、基準信号に関する情報に基づいて不揮発メモリ633に格納されている基準信号を更新することとなる。なお、受光器72での受光量の増加量と戻り光束における光学的位相差の誤差との相関関係は予め実験的に求められ、その相関関係と上記(1)式とに基づいて受光器72での受光量の増加量と印加電圧との相関関係を示す近似式が算出され、印加電圧設定回路63dを構成する不揮発メモリ(図示省略)に格納されることとなる。
【0127】
さらに、上記第2の実施形態では、戻り光束を分岐する分岐光学素子としてビームスプリッタ(偏光ビームスプリッタ54、無偏光ビームスプリッタ70)を用いる場合について説明したが、これに限らず、例えばホログラム素子を用いても良い。一例として図14に示されるように、偏光ビームスプリッタ54に代えて偏光ホログラム素子85を、無偏光ビームスプリッタ70に代えて無偏光ホログラム素子86を用いても良い。そして、偏光ホログラム素子85と無偏光ホログラム素子86とを一体化しても良い。この場合には、偏光ホログラム素子85及び無偏光ホログラム素子86をそれぞれ個別の基板上に形成した後に、それらを貼り合わせて一体化しても良いが、偏光ホログラム素子85及び無偏光ホログラム素子86を同一基板の一側及び他側にそれぞれ形成しても良い。また、偏光ホログラム素子85、無偏光ホログラム素子86、受光器59、及び受光器72を一体化しても良い。さらに、一例として図15(A)及び図15(B)に示されるように、それらと半導体レーザ91aとを一体化し、受発光モジュール91としても良い。これにより、光ピックアップ装置の小型化及び軽量化を促進することができる。また、組み付け時の構成部品の数が減少し、組み付け作業及び調整作業を簡略化することができ、作業コストを削減することが可能となる。なお、偏光ビームスプリッタ54及び無偏光ビームスプリッタ70のいずれか一方に代えて、ホログラム素子を用いても良い。この場合に、ホログラム素子と対応する受光器とを一体化しても良い。
【0128】
なお、上記各実施形態では、電気光学結晶として、一次の電気光学効果を示す材料を用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば一次を除く奇数次の電気光学効果を示す材料であっても良い。一次の電気光学効果を示す材料と同様な効果を得ることができるからである。また、偶数次の電気光学効果を示す材料を用いても良い。但し、電気光学結晶として、高次の電気光学効果を示す材料を用いる場合には、一例として図16に示されるように、印加電圧と光学的位相差との相関関係は簡単な一次式で示すことができなくなり、電気光学結晶の印加電圧の制御が複雑化する。
【0129】
また、上記各実施形態では、電気光学結晶として、Bi12SiO20(BSO)の単結晶を用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、縦型の奇数次の電気光学効果を示す材料として、結晶点群3mのLiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、 結晶点群42mのNH4H2PO4(ADP:燐酸二水素アンモニウム)、KH2PO4(KDP:燐酸二水素カリウム)、結晶点群32のα水晶(SiO2)、結晶点群23のBi12GeO20(BGO)、結晶点群43mのZnS、ZnTe、Bi4Ge3O12などの中心対称性を持たない電気光学結晶を用いても良い。特に、BGOは、BSOと同様に電気光学係数(ポッケルス係数γ41)が10−12m/V以上と大きいため、低い印加電圧で大きな光学的位相差を発生させることができる。また、電気光学結晶は単結晶に限らず多結晶であっても良い。但し、単結晶のほうが光束の透過率が高くなる。
【0130】
なお、上記各実施形態において、電気光学素子53に代えて、例えば電歪素子、光弾性素子、ファラデー素子、及びカーセルなどを用いても良い。
【0131】
なお、上記各実施形態では、各電極が矩形形状(図3参照)を有する場合について説明したが、これに限らず、例えば図17(A)〜図17(C)に示されるように、円形状の電極53A’及び53B’が設けられた電気光学素子53’を用いても良い。
【0132】
なお、上記各実施形態では、位相差調整回路の加算回路において、受光器59からの出力信号の全てが加算される場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば受光器59を構成する特定の受光素子からの出力信号を加算信号に代えて用いても良い。
【0133】
さらに、上記各実施形態では、各電極にITO膜を用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。また、電極の一部分が透明であっても良い。要するに入射光束の大部分が透過可能であれば良い。
【0134】
また、上記各実施形態において、電極53Bの代わりにアルミニウム蒸着膜からなる不透明電極を用いても良い。この場合には、電気光学素子は反射型となり、入射光束は電気光学結晶内を往復するため、付与すべき光学的位相差が同じであっても、透明な電極を用いる場合に比べて印加電圧を1/2とすることができる。なお、この場合には、一部の光学部品の配置を変更する必要がある。
【0135】
また、上記各実施形態では、光ディスクがロードされたときに基準信号を求める場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば戻り光束における光学的位相差の誤差の補正が不十分な場合に、新たに基準信号を求め、不揮発メモリの内容を更新しても良い。
【0136】
さらに、上記各実施形態では、不揮発メモリに記録される基準信号が1つの場合について説明したが、これに限らず、例えばベンダ毎に基準信号を不揮発メモリに記録しておき、ロードされた光ディスクに対応した基準信号を使用しても良い。この場合には、ロードされた光ディスクのベンダ情報がCPU40から基準信号生成回路に通知される。また、基準信号を求めたときに、その日付も同時に不揮発メモリに記録しておき、一定期間が経過したときに新たに基準信号を求め、不揮発メモリの内容を更新しても良い。
【0137】
なお、上記各実施形態では、各電極に印加する電圧を設定するための近似式が印加電圧設定回路の不揮発メモリに格納されている場合について説明したが、これに限らず、例えば変換係数のみが不揮発メモリに格納されていても良い。
【0138】
なお、上記各実施形態では、情報の記録及び再生が可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが可能な光ディスク装置であれば良い。
【0139】
なお、上記各実施形態では、光源として半導体レーザを用いる場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0140】
また、上記各実施形態では、光ディスクとして、CD、DVD及び光磁気ディスクなど、光を利用して情報の記録、再生及び消去のうち少なくとも1つが行われる情報記録媒体を用いることができる。
【0141】
なお、上記各実施形態において、CPU40によるプログラムに従う処理によって実現した処理装置の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは処理装置の全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0142】
さらに、上記各実施形態では、基準信号生成回路及び印加電圧設定回路は、それぞれ個別に不揮発メモリを備える場合について説明したが、これに限らず、例えば共通の不揮発メモリを備えても良い。
【0143】
なお、上記各実施形態において、光ディスク15に代えて、例えば基板の複屈折量が極めて小さい光ディスクあるいは反射ミラーなどを用いることにより、光学系に起因する位相差のみを求めることができる。そして、その光学系に起因する位相差による、戻り光束における光学的位相差の誤差を補正するために電気光学素子に印加する電圧を、予めオフセット電圧としても良い。
【0144】
また、上記実施形態に係る光ディスク装置は、ホストと同一の筐体内に配置される、いわゆる内蔵タイプであっても良いし、ホストとは別の筐体内に配置される、いわゆる外付けタイプであっても良い。
【0145】
なお、上記各実施形態では、光源が1つの場合について説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば波長が405nmの光束を出射する光源、波長が650nmの光束を出射する光源及び波長が780nmの光束を出射する光源のうち少なくとも2つの光源を備えていても良い。
【0146】
また、上記各実施形態では、位相差調整回路が光ピックアップ装置に設けられた場合について説明したが、これに限らず、例えば位相差調整回路と同様な回路を再生信号処理回路28に付与しても良い。この場合には、再生信号処理回路28から電気光学素子への印加電圧が供給されることとなる。
【0147】
また、上記各実施形態では、アクセス中にフィードバック制御により戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する場合について説明したが、これに限らず、例えば光ディスクに起因する位相差があまり変化しない場合などには、予め計測された光学的位相差に基づいて、設定された電圧を電気光学素子に印加し、アクセス中の印加電圧を固定値としても良い。この場合には、位相差調整回路の代わりに所定の電圧を電気光学素子に印加するためのドライバを用いることができる。
【0148】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る光ピックアップ装置によれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御に必要な情報などを含む信号を精度良く安定して出力することができるという効果がある。
【0149】
また、本発明に係る光ディスク装置によれば、情報記録媒体への高速度でのアクセスを精度良く安定して行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、それぞれ図2における電気光学素子の構成を説明するための図である。
【図4】図4(A)は電圧が印加されていない場合の電気光学素子における屈折率(常光線屈折率no、異常光線屈折率ne)を説明するための図であり、図4(B)は電圧が印加されている場合の電気光学素子における屈折率を説明するための図である
【図5】電気光学素子における印加電圧と光学的位相差との関係を説明するための図である。
【図6】図2における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図6における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係る光ピックアップ装置の構成を説明するための図である。
【図9】図8における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図10】図9における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】図8における受光器72からの出力信号のみに基づいて電気光学素子を制御する場合を説明するための図である。
【図12】図11における位相差調整回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図13】図12における基準信号生成回路の構成を説明するためのブロック図である。
【図14】図8におけるビームスプリッタ(偏光ビームスプリッタ及び無偏光ビームスプリッタ)に代えてホログラム素子(偏光ホログラム素子及び無偏光ホログラム素子)を用いた例を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は、それぞれホログラム素子、受光器、及び半導体レーザを一体化した例を説明するための図である。
【図16】電気光学結晶が高次の電気光学効果を示す場合の印加電圧と光学的位相差との関係を説明するための図である。
【図17】図17(A)〜図17(C)は、それぞれ電極の変形例を説明するための図である。
【図18】図18(A)は、CD−ROMの基板における複屈折の発生状況の一例を説明するための図であり、図18(B)は、そのCD−ROMからの戻り光束のうち光検出器で受光される受光量の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
15…光ディスク(情報記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部)、40…CPU(処理装置の一部)、53,53‘…電気光学素子(光学素子)、53A,53B,53A’,53B‘…電極、54…偏光ビームスプリッタ(偏光性分岐光学素子)、59…受光器(第1の光検出器)、60…対物レンズ、61,62,63,64…位相差調整回路(位相差補正手段)、70…無偏光ビームスプリッタ(無偏光性分岐光学素子)、72…受光器(第2の光検出器)、EC…電気光学結晶。
Claims (16)
- 情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、
光源と;
前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶を含み、通過する光束に所定の光学的位相差を付与する光学素子とを含み、前記記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置に導く光学系と;
前記受光位置に配置された光検出器と;を備える光ピックアップ装置。 - 情報記録媒体の記録面に光を照射し、前記記録面からの反射光を受光する光ピックアップ装置であって、
光源と;
前記光源から出射される光束を前記記録面に集光する対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間の光路上に配置され、印加される電圧に応じた光学的位相差を入射される光束に付与する電気光学結晶を含む光学素子と、前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束の光路上に配置され、前記戻り光束をその光路上から分岐する偏光性分岐光学素子とを含む光学系と;
前記偏光性分岐光学素子にて分岐された前記戻り光束を受光する第1の光検出器を含む光検出系と;
前記光検出系の少なくとも1つの光検出器からの出力信号に基づいて、前記光学素子に印加する電圧を調整し、前記戻り光束における光学的位相差の誤差を補正する位相差補正手段と;を備える光ピックアップ装置。 - 前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。
- 前記光学系は、前記偏光性分岐光学素子と前記光源との間に配置された無偏光性分岐光学素子を更に含み、
前記光検出系は、前記偏光性分岐光学素子を透過し、前記無偏光性分岐光学素子で分岐された前記戻り光束を受光する第2の光検出器を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップ装置。 - 前記位相差補正手段は、前記第1の光検出器からの出力信号と前記第2の光検出器からの出力信号との差信号が所定の信号レベル以上となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
- 前記位相差補正手段は、前記第2の光検出器からの出力信号が所定の信号レベル以下となるように、前記光学素子に印加する電圧を調整することを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
- 前記偏光性分岐光学素子は、偏光ホログラム素子であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記偏光ホログラム素子は、前記第1の光検出器と一体化されていることを特徴とする請求項7に記載の光ピックアップ装置。
- 前記電気光学結晶は、縦型の電気光学効果を示す電気光学結晶であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記戻り光束における光学的位相差の誤差は、前記光学系に起因する誤差及び前記情報記録媒体の光学的異方性に起因する誤差の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記電気光学結晶は、奇数次の電気光学効果を示す電気光学結晶であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記電気光学結晶は、ポッケルス効果を示す電気光学結晶であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記電気光学結晶板は、シレナイト構造を有する酸化物の電気光学結晶であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記シレナイト構造を有する酸化物は、Bi12SiO20であることを特徴とする請求項13に記載の光ピックアップ装置。
- 前記電気光学結晶は、単結晶の電気光学結晶であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置。
- 情報記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう光ディスク装置であって、
請求項1〜15のいずれか一項に記載の光ピックアップ装置と;
前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも1つを行なう処理装置と;を備える光ディスク装置。
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002190852A Pending JP2004039020A (ja) | 2002-06-28 | 2002-06-28 | 光ピックアップ装置及び光ディスク装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004039020A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020162458A1 (ja) * | 2019-02-05 | 2020-08-13 | 株式会社デンソー | 偏光状態制御装置及びコンピュータが読取可能な記録媒体 |
-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002190852A patent/JP2004039020A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020162458A1 (ja) * | 2019-02-05 | 2020-08-13 | 株式会社デンソー | 偏光状態制御装置及びコンピュータが読取可能な記録媒体 |
JP2020126174A (ja) * | 2019-02-05 | 2020-08-20 | 株式会社豊田中央研究所 | 偏光状態制御装置及びプログラム |
JP7188756B2 (ja) | 2019-02-05 | 2022-12-13 | 株式会社豊田中央研究所 | 偏光状態制御装置及びプログラム |
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