JP2004038697A - 位置決め制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ロバスト制御の一手法である優れた特長を持つスライディングモード制御の実装を可能にする位置決め制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】線形フィードバック制御器とスライディングモード制御器とを並列に配置して制御対象を制御することで、外乱の中に含まれる低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器により抑制するとともに、残りの外乱の影響をスライディングモード制御器により抑制するという構成を基本構成とする。しかし、この2つの制御器を別個に設計するようにすると制御系が不安定となることが起こり得る。そこで、スライディングモード制御器に調整器として機能させる線形フィルタを直列結合するようにする。そして、この線形フィルタとして、スライディングモード制御器を線形等価制御器に置き換えることで構成される線形等価制御系を安定化させることを実現する特性のものを用いる。
【選択図】 図7
【解決手段】線形フィードバック制御器とスライディングモード制御器とを並列に配置して制御対象を制御することで、外乱の中に含まれる低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器により抑制するとともに、残りの外乱の影響をスライディングモード制御器により抑制するという構成を基本構成とする。しかし、この2つの制御器を別個に設計するようにすると制御系が不安定となることが起こり得る。そこで、スライディングモード制御器に調整器として機能させる線形フィルタを直列結合するようにする。そして、この線形フィルタとして、スライディングモード制御器を線形等価制御器に置き換えることで構成される線形等価制御系を安定化させることを実現する特性のものを用いる。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御装置に関し、特に、機械的な位置決めを行う制御対象を制御するときにあって、ロバスト制御の一手法である優れた特長を持つスライディングモード制御の実装を可能にする位置決め制御装置に関する。
【0002】
一般に、精密機構の位置決め精度を劣化させる要因には、機械共振の存在、摩擦による力外乱の混入、回転機構の偏心に伴う位置外乱の発生などがあり、さらに、これらの要因の特性が装置個体差によりばらつくことが制御装置側の対処をより難しくしている。
【0003】
2.5インチ磁気ディスク装置のVCM制御(ヘッド位置決め用に用意されるVoice Coil Motorの制御)を例にとると、最近の情報機器の装置軽量化に伴う機構剛性の不足から、2kHz付近に共振点が存在し、トルク外乱の影響は低域から高域まで約10kHzの広範囲に及ぶ。また、装置個体差の影響も大きく、上記の共振周波数には約15%ものばらつきがみられる場合がある。
【0004】
このような状況下で、帯域1kHz前後の制御性能が求められるが、従来の古典点なPID制御などのような制御手法では対応が難しいことから、最近ではロバスト制御と呼ばれる一連の新しい制御手法が注目を集めており、その適用事例が増加している。
【0005】
【従来の技術】
従来からよく使われているロバスト制御の手法として、H無限大制御がある。この制御手法は、上記のような精密位置決め制御系の課題を、低周波数域の外乱抑止及び高周波数域の機械共振回避という2つの問題として捉え、周波数領域でコントローラの特性を適正に調整するものである。
【0006】
しかし、この制御手法では、高周波数域の外乱への対処ができないこと、目標位置に位置決めする際の過渡応答特性の改善が別途必要になること、演算処理が複雑なためサンプル周期が大きくなり、その結果として制御性能の改善に制約が生ずることなどが問題とされてきた。
【0007】
そこで、H無限大制御の欠点を補うロバスト制御の他の方法として、スライディングモード制御の適用が考えられる。
【0008】
このスライディングモード制御は、図10に示す構成の制御系に対して外乱vが加わる場合において、図11に示すように、外乱抑止特性が周波数に依存しないという特長を持つ。
【0009】
すなわち、スライディングモード制御では、外乱vが入ってくる場合に、図11に示すように、周波数に関係なく切替遅れ時間Δtを乗算する形で、その外乱vが制御ループに入って現在位置yに反映されるようにモデリングされることから分かるように、外乱抑止特性が周波数に依存しないという特長を持つのである。
【0010】
これに対して、H無限大制御やPID制御を含む線形フィードバック制御の場合には、図12に示すように、外乱抑止特性が周波数に依存することになる。
【0011】
すなわち、PID制御を含む線形フィードバック制御(H無限大制御も同様)では、外乱vが入ってくる場合に、図12に示すように、周波数特性を持つ感度関数S(=1/(1+PCLN))を乗算する形で、その外乱vが制御ループに入って現在位置yに反映されるようにモデリングされることから分かるように、外乱抑止特性が周波数に依存することになる。
【0012】
さらに、スライディングモード制御は、目標値応答の過渡特性も優れており、簡単な演算で実装できるという長所もある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
スライディングモード制御では、図13に示すように、制御信号を一定出力値Kまたは−Kに切り替えて制御するという原理を用いており、これにより、図14に示すように、閉ループ制御系は、切替超平面(直線σ=0)をまたいでジグザグ動作しつつ、目標値である原点へと収束する。
【0014】
このように、スライディングモード制御では、制御信号を一定出力値Kまたは−Kに切り替えて制御するという原理を用いていることから、出力値Kが大きいとチャタリングが発生し、これが高周波域の機構共振を誘発するという大きな欠点を持つ。
【0015】
例えば、2.5インチ磁気ディスク装置のVCM(Voice Coil Motor)を制御する例で説明するならば、2kHz〜10kHzの共振の影響でサーボ系の安定化すら困難である。
【0016】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、精密な位置決め制御系に対して、上記のような優れた特長を持つスライディングモード制御の実装を可能にする新たな制御技術の提供を目的する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明では、外乱vの抑止に関連して、図1に示すように、制御対象P(制御対象1)を制御する制御器を、主に低周波数成分の外乱を抑止する制御器10と、高周波数成分も含むその他の外乱成分を抑止する制御器20との2つに分離するという構成を採る。
【0018】
そして、低周波数成分の外乱成分の抑止のために用意する制御器10を通常の線形フィードバック制御器C1 で構成するとともに、高周波数成分も含むその他の外乱成分の抑止のために用意する制御器20をスライディングモード制御器C2 で構成する。
【0019】
この構成に従って、本発明によれば、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響が線形フィードバック制御器C1(制御器10)の出力u1 によって抑制され、また、残りの高周波数成分を含む外乱の影響がスライディングモード制御器C2(制御器20)の出力u2 によって抑制されることになる。
【0020】
このように、本発明では、スライディングモード制御を従来の線形制御と並列に用いることで、スライディングモード制御器C2 の切替制御信号の大きさKを小さくすることができ、その結果、制御対象Pの共振の発生を防ぐことが可能になる。
【0021】
図1の構成に従って、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とをそれぞれ別個に設計すると、図1に示す並列構成の制御系が最悪不安定となることが起こり得る。
【0022】
そこで、本発明では、これから説明する考察に従って、図1に示す制御系を安定化する構成を実現するようにしている。
【0023】
先ず、図1に示すスライディングモード制御器C2 を線形解析可能なように、図2に示すように線形等価制御器C2eq に置き換える。
【0024】
ここで、線形等価制御器C2eq とは、制御器の出力が図13中の破線に示すように、本来の切替制御信号の代わりに連続信号で表すことができるようにとスライディングモード制御器C2 を伝達関数表現したものである。
【0025】
このとき、2種類の制御器C1,C2eq の組み合わせによる外乱vの抑止効果は、
S12=1/(1+P(C1 +C2eq ))
という感度関数S12で表される。
【0026】
一方、制御対象Pと線形フィードバック制御器C1 とからなる閉ループ系L1 (図2に示す破線で囲まれた閉ループ系)に着目すると、この閉ループ系L1 の感度関数は、
S1 =1/(1+PC1 )
と与えられる。
【0027】
これから、図2に示す制御系は、これと等価な図3に示す制御系に置き換えることができる。
【0028】
ここで、線形等価制御器C2eq を機能拡張し、図4に示すように、線形フィルタC3 と線形等価制御器C2eq との直列結合からなるC2eq ’
C2eq ’ =C3 C2eq
に置き換えることを考える。
【0029】
この線形フィルタC3 は、図4に示す線形等価制御系を安定化させるための調整器として機能させる。
【0030】
特に、線形フィルタC3 を、
C3 =1/S1 =1+PC1
のように設定することで、上述した感度関数S1 の逆数とした場合、図5に示すように、閉ループ内の要素S1 が線形フィルタC3 によりキャンセルされ、元々の図2に示す制御系は最終的に図6に示すものと等価となる。
【0031】
このとき、制御系全体の外乱抑止効果は、上述した
S12=1/(1+P(C1 +C2eq ))
の代わりに、
S12=S1 S2eq =1/(1+PC1 )(1+PC2eq )
と表される。
【0032】
したがって、線形フィードバック制御器C1,スライディングモード制御の線形等価制御器C2eq を、それぞれ単独で用いた場合の感度関数S1,S2eq が安定になるように設計すれば、その結果として、図2の制御系は安定となることが保証されることになる。
【0033】
最後に、図4に示す線形等価制御系を使って設計した線形フィルタC3(線形等価制御系であるので、一般的な手法により、それを安定化させる線形フィルタC3 を設計することができる)を用い、上述の線形等価制御系の場合と同様にして、図7に示すように、図1に示すスライディングモード制御器C2 を非線形制御器C2 ’(非線形制御器40)に置き換える。
【0034】
ここで、非線形制御器C2 ’ は、図4に示す線形等価制御系を使って設計した線形フィルタC3(線形フィルタ30)と、スライディングモード制御器C2(制御器20)との直列結合
C2 ’ =C3 C2
である。
【0035】
特に、線形フィルタC3 が、
C3 =1/S1 =1+PC1
で与えられる図5に示す場合には、
C2 ’ =(1+PC1 )C2
となり、非線形制御器C2 ’ を含む制御系は図8に示す構成になる。
【0036】
なお、スライディングモード制御器C2 は、制御対象Pに関してのスライディングモード制御の一般的な設計方法を用いて定めるものとする。
【0037】
以上に説明した考察をまとめると次のようになる。
【0038】
すなわち、本発明では、図1に示すように、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御することで、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制するという構成を基本構成とする。
【0039】
しかし、この基本構成に従って、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とをそれぞれ別個に設計するようにすると、制御系が最悪不安定となることが起こり得る。
【0040】
そこで、本発明では、図7に示すように、図1に示すスライディングモード制御器C2 に、調整器として機能させる線形フィルタC3 を直列結合するようにする。
【0041】
そして、本発明では、この図7に示す制御系の安定化を実現するために、線形フィルタC3 として、スライディングモード制御器C2 を線形等価制御器C2eq に置き換えることで構成される、図4に示す線形等価制御系(但し、要素S1 については閉ループの外に出すようにしてもよい)を安定化させることを実現する特性を持つものを用いる。
【0042】
すなわち、図4に示す制御系は線形等価制御系であるので、一般的な手法により、それを安定化させる線形フィルタC3 を設計することができるので、そのようにして設計した線形フィルタC3 を、図7に示す制御系で用いる線形フィルタC3 として用いるのである。
【0043】
この構成に従って、本発明によれば、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制することを実現できるようになる。
【0044】
さらに、本発明では、図7に示す制御系の安定化を実現するために、スライディングモード制御器C2 を線形等価制御器C2eq に置き換えるときに、線形フィードバック制御器C1 と線形等価制御器C2eq との間の干渉を取り除き、その結果、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを互いに独立に調整することを可能にすべく、図7に示す制御系で用いる線形フィルタC3 として、図8に示すように、
C3 =1/S1 =1+PC1
を用いる。
【0045】
すなわち、この特性を持つ線形フィルタC3 を用いると、図5から分かるように、閉ループ内の要素S1 が線形フィルタC3 によりキャンセルされることで、図6に示すように、線形フィードバック制御器C1 と線形等価制御器C2eq とを互いに独立に調整できるようになり、その結果、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを互いに独立に調整できるようになる。
【0046】
この構成に従って、本発明によれば、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制することを実現できるようになる。
【0047】
このようにして、本発明によれば、スライディングモード制御の特長を包含しつつ、安定でかつ機械共振を誘発しない制御特性を実現できるようになるのである。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、磁気ディスク装置のVCM制御に適用した実施の形態に従って本発明を詳細に説明する。
【0049】
先ず、VCMのノミナルモデルを、
Pn =gn /s2
但し、gn は定数
という剛体モデルで近似する。
【0050】
このとき、この剛体モデルに対する状態方程式は、
dx/dt=Ax+Bu
y=Hx
但し、x:状態ベクトル
y:観測出力(磁気ヘッドの現在位置)
と表される。
【0051】
ここで、2行1列の状態ベクトルxと、2行2列の行列Aと、2行1列の行列Bと、1行2列の行列Hは、それぞれ
xt =〔x1 x2 〕 x1 :位置,x2 :速度
A =〔aij〕 a11=0,a12=1,a21=0,a22=0
Bt =〔0 gn 〕
H =〔1 0〕
と定義される。ここで、tは転置行列を意味する。
【0052】
次に、周波数域の外乱抑止特性を、
S1n=1/(1+Pn C1)
=s2 /(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)
の伝達関数モデルで与え、パラメータω1,ξ1 を選択することにより決定することにする。
【0053】
このとき、線形フィードバック制御器C1 は、
Pn =gn /s2
から、
C1 =(1/S1n−1)/Pn
=(2ξ1 ω1 s+ω1 2)/gn
のように逆算できる。
【0054】
一方、制御対象の状態変数表現である
dx/dt=Ax+Bu
から、スライディングモード制御器C2 を、
u2 =uNL+uL
uNL=K(ΨB)−1sgn(σ)
=K/gn sgn(σ)
uL =(ΨB)−1ΨAx
=Ψ1 /gn x2
但し、u2 :スライディングモード制御器C2 の出力
sgn(σ):σ≧のとき1,σ<0のとき−1
の式で構成する。
【0055】
ここで、パラメータKは、切り替え制御を行う際の出力の絶対値を表し、線形フィードバック制御器C1 で補償しきれない外乱成分の最大値に設定する。
【0056】
また、σは、設計パラメータΨ1 を含む定数ベクトルΨ
Ψ=〔Ψ1 1〕
を用い、
σ=Ψx=Ψ1 x1 +x2
で定義される。
【0057】
また、このとき、スライディングモード制御器C2 の線形等価制御信号u2eq が、
u2eq =(ΨB)−1ΨAx
=Ψ1 /gn x2
で与えられるため、線形等価制御器C2eq は、
C2eq =Ψ1 s/gn
となる。
【0058】
したがって、図4において「P=Pn , S1 =S1n」の近似を行えば、線形等価制御系が安定になるようにと、
Pn =gn /s2
S1n=s2 /(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)
C2eq =Ψ1 s/gn
から、適当な線形フィルタC3 を求めることができる。
【0059】
ここでは、線形フィルタC3 を制御対象PのノミナルモデルPn を用いて、
C3 =1/S1n=1+Pn C1
=(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)/s2
のように設定する。
【0060】
一般に線形フィルタC3 の高周波域のゲイン特性はほぼ1となることから、
C3 =1/S1 =1+PC1
の代わりに、ノミナルモデルPn を使ったこの式で与えられるC3 を用いても良い近似となる場合が多く、制御系全体の安定性を確保できる。
【0061】
なお、
uL =Ψ1 /gn x2
σ=Ψx=Ψ1 x1 +x2
では、速度x2 を計算に用いているが、速度x2 は直接計測することができない。
【0062】
そこで、
x2 =dy/dt
の微分演算を行う必要がある。図9に、この点を考慮に入れた本発明に従う制御系の構成を図示する。
【0063】
(付記1)機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御装置において、上記制御対象を線形制御する線形制御器と、上記線形制御器に並列的に配置されて、上記制御対象をスライディングモード制御するスライディングモード制御器と調整器として機能させる線形フィルタとの直列結合で構成される非線形制御器とを備えることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0064】
(付記2)付記1記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換えることで構成される線形等価制御系が安定となることを実現するものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0065】
(付記3)付記1記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換える場合に、該線形等価制御器と上記線形制御器との間の干渉を取り除くことができるものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0066】
(付記4)付記3記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記制御対象と上記線形制御器とから構成される閉ループ系の持つ感度関数の逆数を示すものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0067】
(付記5)付記4記載の位置決め制御装置において、制御対象を近似するモデルを使って、上記感度関数の逆数の特性を示す線形フィルタを導出するように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0068】
(付記6)機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御方法において、上記制御対象を線形制御する線形制御器と、上記制御対象をスライディングモード制御するスライディングモード制御器と調整器として機能させる線形フィルタとの直列結合で構成される非線形制御器とを並列に配置して、制御対象を制御するように処理することを、特徴とする位置決め制御方法。
【0069】
(付記7)付記6記載の位置決め制御方法において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換えることで構成される線形等価制御系が安定となることを実現するものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御方法。
【0070】
(付記8)付記6記載の位置決め制御方法において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換える場合に、該線形等価制御器と上記線形制御器との間の干渉を取り除くことができるものを用いるように構成されることを、
特徴とする位置決め制御方法。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、線形フィードバック制御器とスライディングモード制御器とを並列に配置して制御対象を制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱の中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器により抑制することを実現できるようになる。
【0072】
このようにして、本発明によれば、スライディングモード制御の特長を包含しつつ、安定でかつ機械共振を誘発しない制御特性を実現できるようになるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の基本構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図3】本発明の基本構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図4】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図5】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図6】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図7】本発明の構成を示す図である。
【図8】本発明の構成を示す図である。
【図9】本発明の構成を示す図である。
【図10】制御系の説明図である。
【図11】スライディングモード制御の説明図である。
【図12】線形フィードバック制御の説明図である。
【図13】スライディングモード制御の説明図である。
【図14】スライディングモード制御の説明図である。
【符号の説明】
1 制御対象
10 制御器
20 制御器
30 線形フィルタ
40 非線形制御器
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御装置に関し、特に、機械的な位置決めを行う制御対象を制御するときにあって、ロバスト制御の一手法である優れた特長を持つスライディングモード制御の実装を可能にする位置決め制御装置に関する。
【0002】
一般に、精密機構の位置決め精度を劣化させる要因には、機械共振の存在、摩擦による力外乱の混入、回転機構の偏心に伴う位置外乱の発生などがあり、さらに、これらの要因の特性が装置個体差によりばらつくことが制御装置側の対処をより難しくしている。
【0003】
2.5インチ磁気ディスク装置のVCM制御(ヘッド位置決め用に用意されるVoice Coil Motorの制御)を例にとると、最近の情報機器の装置軽量化に伴う機構剛性の不足から、2kHz付近に共振点が存在し、トルク外乱の影響は低域から高域まで約10kHzの広範囲に及ぶ。また、装置個体差の影響も大きく、上記の共振周波数には約15%ものばらつきがみられる場合がある。
【0004】
このような状況下で、帯域1kHz前後の制御性能が求められるが、従来の古典点なPID制御などのような制御手法では対応が難しいことから、最近ではロバスト制御と呼ばれる一連の新しい制御手法が注目を集めており、その適用事例が増加している。
【0005】
【従来の技術】
従来からよく使われているロバスト制御の手法として、H無限大制御がある。この制御手法は、上記のような精密位置決め制御系の課題を、低周波数域の外乱抑止及び高周波数域の機械共振回避という2つの問題として捉え、周波数領域でコントローラの特性を適正に調整するものである。
【0006】
しかし、この制御手法では、高周波数域の外乱への対処ができないこと、目標位置に位置決めする際の過渡応答特性の改善が別途必要になること、演算処理が複雑なためサンプル周期が大きくなり、その結果として制御性能の改善に制約が生ずることなどが問題とされてきた。
【0007】
そこで、H無限大制御の欠点を補うロバスト制御の他の方法として、スライディングモード制御の適用が考えられる。
【0008】
このスライディングモード制御は、図10に示す構成の制御系に対して外乱vが加わる場合において、図11に示すように、外乱抑止特性が周波数に依存しないという特長を持つ。
【0009】
すなわち、スライディングモード制御では、外乱vが入ってくる場合に、図11に示すように、周波数に関係なく切替遅れ時間Δtを乗算する形で、その外乱vが制御ループに入って現在位置yに反映されるようにモデリングされることから分かるように、外乱抑止特性が周波数に依存しないという特長を持つのである。
【0010】
これに対して、H無限大制御やPID制御を含む線形フィードバック制御の場合には、図12に示すように、外乱抑止特性が周波数に依存することになる。
【0011】
すなわち、PID制御を含む線形フィードバック制御(H無限大制御も同様)では、外乱vが入ってくる場合に、図12に示すように、周波数特性を持つ感度関数S(=1/(1+PCLN))を乗算する形で、その外乱vが制御ループに入って現在位置yに反映されるようにモデリングされることから分かるように、外乱抑止特性が周波数に依存することになる。
【0012】
さらに、スライディングモード制御は、目標値応答の過渡特性も優れており、簡単な演算で実装できるという長所もある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
スライディングモード制御では、図13に示すように、制御信号を一定出力値Kまたは−Kに切り替えて制御するという原理を用いており、これにより、図14に示すように、閉ループ制御系は、切替超平面(直線σ=0)をまたいでジグザグ動作しつつ、目標値である原点へと収束する。
【0014】
このように、スライディングモード制御では、制御信号を一定出力値Kまたは−Kに切り替えて制御するという原理を用いていることから、出力値Kが大きいとチャタリングが発生し、これが高周波域の機構共振を誘発するという大きな欠点を持つ。
【0015】
例えば、2.5インチ磁気ディスク装置のVCM(Voice Coil Motor)を制御する例で説明するならば、2kHz〜10kHzの共振の影響でサーボ系の安定化すら困難である。
【0016】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、精密な位置決め制御系に対して、上記のような優れた特長を持つスライディングモード制御の実装を可能にする新たな制御技術の提供を目的する。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明では、外乱vの抑止に関連して、図1に示すように、制御対象P(制御対象1)を制御する制御器を、主に低周波数成分の外乱を抑止する制御器10と、高周波数成分も含むその他の外乱成分を抑止する制御器20との2つに分離するという構成を採る。
【0018】
そして、低周波数成分の外乱成分の抑止のために用意する制御器10を通常の線形フィードバック制御器C1 で構成するとともに、高周波数成分も含むその他の外乱成分の抑止のために用意する制御器20をスライディングモード制御器C2 で構成する。
【0019】
この構成に従って、本発明によれば、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響が線形フィードバック制御器C1(制御器10)の出力u1 によって抑制され、また、残りの高周波数成分を含む外乱の影響がスライディングモード制御器C2(制御器20)の出力u2 によって抑制されることになる。
【0020】
このように、本発明では、スライディングモード制御を従来の線形制御と並列に用いることで、スライディングモード制御器C2 の切替制御信号の大きさKを小さくすることができ、その結果、制御対象Pの共振の発生を防ぐことが可能になる。
【0021】
図1の構成に従って、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とをそれぞれ別個に設計すると、図1に示す並列構成の制御系が最悪不安定となることが起こり得る。
【0022】
そこで、本発明では、これから説明する考察に従って、図1に示す制御系を安定化する構成を実現するようにしている。
【0023】
先ず、図1に示すスライディングモード制御器C2 を線形解析可能なように、図2に示すように線形等価制御器C2eq に置き換える。
【0024】
ここで、線形等価制御器C2eq とは、制御器の出力が図13中の破線に示すように、本来の切替制御信号の代わりに連続信号で表すことができるようにとスライディングモード制御器C2 を伝達関数表現したものである。
【0025】
このとき、2種類の制御器C1,C2eq の組み合わせによる外乱vの抑止効果は、
S12=1/(1+P(C1 +C2eq ))
という感度関数S12で表される。
【0026】
一方、制御対象Pと線形フィードバック制御器C1 とからなる閉ループ系L1 (図2に示す破線で囲まれた閉ループ系)に着目すると、この閉ループ系L1 の感度関数は、
S1 =1/(1+PC1 )
と与えられる。
【0027】
これから、図2に示す制御系は、これと等価な図3に示す制御系に置き換えることができる。
【0028】
ここで、線形等価制御器C2eq を機能拡張し、図4に示すように、線形フィルタC3 と線形等価制御器C2eq との直列結合からなるC2eq ’
C2eq ’ =C3 C2eq
に置き換えることを考える。
【0029】
この線形フィルタC3 は、図4に示す線形等価制御系を安定化させるための調整器として機能させる。
【0030】
特に、線形フィルタC3 を、
C3 =1/S1 =1+PC1
のように設定することで、上述した感度関数S1 の逆数とした場合、図5に示すように、閉ループ内の要素S1 が線形フィルタC3 によりキャンセルされ、元々の図2に示す制御系は最終的に図6に示すものと等価となる。
【0031】
このとき、制御系全体の外乱抑止効果は、上述した
S12=1/(1+P(C1 +C2eq ))
の代わりに、
S12=S1 S2eq =1/(1+PC1 )(1+PC2eq )
と表される。
【0032】
したがって、線形フィードバック制御器C1,スライディングモード制御の線形等価制御器C2eq を、それぞれ単独で用いた場合の感度関数S1,S2eq が安定になるように設計すれば、その結果として、図2の制御系は安定となることが保証されることになる。
【0033】
最後に、図4に示す線形等価制御系を使って設計した線形フィルタC3(線形等価制御系であるので、一般的な手法により、それを安定化させる線形フィルタC3 を設計することができる)を用い、上述の線形等価制御系の場合と同様にして、図7に示すように、図1に示すスライディングモード制御器C2 を非線形制御器C2 ’(非線形制御器40)に置き換える。
【0034】
ここで、非線形制御器C2 ’ は、図4に示す線形等価制御系を使って設計した線形フィルタC3(線形フィルタ30)と、スライディングモード制御器C2(制御器20)との直列結合
C2 ’ =C3 C2
である。
【0035】
特に、線形フィルタC3 が、
C3 =1/S1 =1+PC1
で与えられる図5に示す場合には、
C2 ’ =(1+PC1 )C2
となり、非線形制御器C2 ’ を含む制御系は図8に示す構成になる。
【0036】
なお、スライディングモード制御器C2 は、制御対象Pに関してのスライディングモード制御の一般的な設計方法を用いて定めるものとする。
【0037】
以上に説明した考察をまとめると次のようになる。
【0038】
すなわち、本発明では、図1に示すように、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御することで、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制するという構成を基本構成とする。
【0039】
しかし、この基本構成に従って、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とをそれぞれ別個に設計するようにすると、制御系が最悪不安定となることが起こり得る。
【0040】
そこで、本発明では、図7に示すように、図1に示すスライディングモード制御器C2 に、調整器として機能させる線形フィルタC3 を直列結合するようにする。
【0041】
そして、本発明では、この図7に示す制御系の安定化を実現するために、線形フィルタC3 として、スライディングモード制御器C2 を線形等価制御器C2eq に置き換えることで構成される、図4に示す線形等価制御系(但し、要素S1 については閉ループの外に出すようにしてもよい)を安定化させることを実現する特性を持つものを用いる。
【0042】
すなわち、図4に示す制御系は線形等価制御系であるので、一般的な手法により、それを安定化させる線形フィルタC3 を設計することができるので、そのようにして設計した線形フィルタC3 を、図7に示す制御系で用いる線形フィルタC3 として用いるのである。
【0043】
この構成に従って、本発明によれば、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制することを実現できるようになる。
【0044】
さらに、本発明では、図7に示す制御系の安定化を実現するために、スライディングモード制御器C2 を線形等価制御器C2eq に置き換えるときに、線形フィードバック制御器C1 と線形等価制御器C2eq との間の干渉を取り除き、その結果、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを互いに独立に調整することを可能にすべく、図7に示す制御系で用いる線形フィルタC3 として、図8に示すように、
C3 =1/S1 =1+PC1
を用いる。
【0045】
すなわち、この特性を持つ線形フィルタC3 を用いると、図5から分かるように、閉ループ内の要素S1 が線形フィルタC3 によりキャンセルされることで、図6に示すように、線形フィードバック制御器C1 と線形等価制御器C2eq とを互いに独立に調整できるようになり、その結果、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを互いに独立に調整できるようになる。
【0046】
この構成に従って、本発明によれば、線形フィードバック制御器C1 とスライディングモード制御器C2 とを並列に配置して制御対象Pを制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱vの中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器C1 により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器C2 により抑制することを実現できるようになる。
【0047】
このようにして、本発明によれば、スライディングモード制御の特長を包含しつつ、安定でかつ機械共振を誘発しない制御特性を実現できるようになるのである。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、磁気ディスク装置のVCM制御に適用した実施の形態に従って本発明を詳細に説明する。
【0049】
先ず、VCMのノミナルモデルを、
Pn =gn /s2
但し、gn は定数
という剛体モデルで近似する。
【0050】
このとき、この剛体モデルに対する状態方程式は、
dx/dt=Ax+Bu
y=Hx
但し、x:状態ベクトル
y:観測出力(磁気ヘッドの現在位置)
と表される。
【0051】
ここで、2行1列の状態ベクトルxと、2行2列の行列Aと、2行1列の行列Bと、1行2列の行列Hは、それぞれ
xt =〔x1 x2 〕 x1 :位置,x2 :速度
A =〔aij〕 a11=0,a12=1,a21=0,a22=0
Bt =〔0 gn 〕
H =〔1 0〕
と定義される。ここで、tは転置行列を意味する。
【0052】
次に、周波数域の外乱抑止特性を、
S1n=1/(1+Pn C1)
=s2 /(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)
の伝達関数モデルで与え、パラメータω1,ξ1 を選択することにより決定することにする。
【0053】
このとき、線形フィードバック制御器C1 は、
Pn =gn /s2
から、
C1 =(1/S1n−1)/Pn
=(2ξ1 ω1 s+ω1 2)/gn
のように逆算できる。
【0054】
一方、制御対象の状態変数表現である
dx/dt=Ax+Bu
から、スライディングモード制御器C2 を、
u2 =uNL+uL
uNL=K(ΨB)−1sgn(σ)
=K/gn sgn(σ)
uL =(ΨB)−1ΨAx
=Ψ1 /gn x2
但し、u2 :スライディングモード制御器C2 の出力
sgn(σ):σ≧のとき1,σ<0のとき−1
の式で構成する。
【0055】
ここで、パラメータKは、切り替え制御を行う際の出力の絶対値を表し、線形フィードバック制御器C1 で補償しきれない外乱成分の最大値に設定する。
【0056】
また、σは、設計パラメータΨ1 を含む定数ベクトルΨ
Ψ=〔Ψ1 1〕
を用い、
σ=Ψx=Ψ1 x1 +x2
で定義される。
【0057】
また、このとき、スライディングモード制御器C2 の線形等価制御信号u2eq が、
u2eq =(ΨB)−1ΨAx
=Ψ1 /gn x2
で与えられるため、線形等価制御器C2eq は、
C2eq =Ψ1 s/gn
となる。
【0058】
したがって、図4において「P=Pn , S1 =S1n」の近似を行えば、線形等価制御系が安定になるようにと、
Pn =gn /s2
S1n=s2 /(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)
C2eq =Ψ1 s/gn
から、適当な線形フィルタC3 を求めることができる。
【0059】
ここでは、線形フィルタC3 を制御対象PのノミナルモデルPn を用いて、
C3 =1/S1n=1+Pn C1
=(s2 +2ξ1 ω1 s+ω1 2)/s2
のように設定する。
【0060】
一般に線形フィルタC3 の高周波域のゲイン特性はほぼ1となることから、
C3 =1/S1 =1+PC1
の代わりに、ノミナルモデルPn を使ったこの式で与えられるC3 を用いても良い近似となる場合が多く、制御系全体の安定性を確保できる。
【0061】
なお、
uL =Ψ1 /gn x2
σ=Ψx=Ψ1 x1 +x2
では、速度x2 を計算に用いているが、速度x2 は直接計測することができない。
【0062】
そこで、
x2 =dy/dt
の微分演算を行う必要がある。図9に、この点を考慮に入れた本発明に従う制御系の構成を図示する。
【0063】
(付記1)機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御装置において、上記制御対象を線形制御する線形制御器と、上記線形制御器に並列的に配置されて、上記制御対象をスライディングモード制御するスライディングモード制御器と調整器として機能させる線形フィルタとの直列結合で構成される非線形制御器とを備えることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0064】
(付記2)付記1記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換えることで構成される線形等価制御系が安定となることを実現するものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0065】
(付記3)付記1記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換える場合に、該線形等価制御器と上記線形制御器との間の干渉を取り除くことができるものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0066】
(付記4)付記3記載の位置決め制御装置において、上記線形フィルタの特性として、上記制御対象と上記線形制御器とから構成される閉ループ系の持つ感度関数の逆数を示すものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0067】
(付記5)付記4記載の位置決め制御装置において、制御対象を近似するモデルを使って、上記感度関数の逆数の特性を示す線形フィルタを導出するように構成されることを、特徴とする位置決め制御装置。
【0068】
(付記6)機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御方法において、上記制御対象を線形制御する線形制御器と、上記制御対象をスライディングモード制御するスライディングモード制御器と調整器として機能させる線形フィルタとの直列結合で構成される非線形制御器とを並列に配置して、制御対象を制御するように処理することを、特徴とする位置決め制御方法。
【0069】
(付記7)付記6記載の位置決め制御方法において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換えることで構成される線形等価制御系が安定となることを実現するものを用いるように構成されることを、特徴とする位置決め制御方法。
【0070】
(付記8)付記6記載の位置決め制御方法において、上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換える場合に、該線形等価制御器と上記線形制御器との間の干渉を取り除くことができるものを用いるように構成されることを、
特徴とする位置決め制御方法。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、線形フィードバック制御器とスライディングモード制御器とを並列に配置して制御対象を制御するときに、安定な制御を実現しつつ、外乱の中に含まれる絶対値の大きな低周波数成分の影響を線形フィードバック制御器により抑制するとともに、残りの高周波数成分を含む外乱の影響をスライディングモード制御器により抑制することを実現できるようになる。
【0072】
このようにして、本発明によれば、スライディングモード制御の特長を包含しつつ、安定でかつ機械共振を誘発しない制御特性を実現できるようになるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の基本構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図3】本発明の基本構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図4】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図5】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図6】本発明の構成に対応する線形等価制御系を示す図である。
【図7】本発明の構成を示す図である。
【図8】本発明の構成を示す図である。
【図9】本発明の構成を示す図である。
【図10】制御系の説明図である。
【図11】スライディングモード制御の説明図である。
【図12】線形フィードバック制御の説明図である。
【図13】スライディングモード制御の説明図である。
【図14】スライディングモード制御の説明図である。
【符号の説明】
1 制御対象
10 制御器
20 制御器
30 線形フィルタ
40 非線形制御器
Claims (5)
- 機械的な位置決めを行う制御対象を制御する位置決め制御装置において、
上記制御対象を線形制御する線形制御器と、
上記線形制御器に並列的に配置されて、上記制御対象をスライディングモード制御するスライディングモード制御器と調整器として機能させる線形フィルタとの直列結合で構成される非線形制御器とを備えることを、
特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項1記載の位置決め制御装置において、
上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換えることで構成される線形等価制御系が安定となることを実現するものを用いるように構成されることを、
特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項1記載の位置決め制御装置において、
上記線形フィルタの特性として、上記スライディングモード制御器をそれの等価表現となる線形等価制御器で置き換える場合に、該線形等価制御器と上記線形制御器との間の干渉を取り除くことができるものを用いるように構成されることを、
特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項3記載の位置決め制御装置において、
上記線形フィルタの特性として、上記制御対象と上記線形制御器とから構成される閉ループ系の持つ感度関数の逆数を示すものを用いるように構成されることを、
特徴とする位置決め制御装置。 - 請求項4記載の位置決め制御装置において、
制御対象を近似するモデルを使って、上記感度関数の逆数の特性を示す線形フィルタを導出するように構成されることを、
特徴とする位置決め制御装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
- 2002-07-05 JP JP2002196640A patent/JP2004038697A/ja not_active Withdrawn
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