JP2004037794A - 投影用スクリーン - Google Patents
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Abstract
【課題】映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能な投影用スクリーンを提供する。
【解決手段】反射促進層2Bにおいて集光位置Pに向けて投影光L1を反射させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させる。反射促進層2Bにおいて反射された投影光L1が散乱層4において散乱されるのに対して、反射促進層2Bにおいて反射された外光などの余分な光は散乱層4においてほとんど散乱されなくなる。この投影光L1と外光との間の反射機構の相違を利用すれば、投影光L1の反射範囲が外光の反射範囲に対して極めて広くなるため、投影光L1の反射機構ならびに散乱機構の双方が適正に制御される。映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てが向上するため、プロジェクタシステムの使用時ごとに室内を暗くしなくても明瞭な映像を鑑賞可能となる。
【選択図】 図3
【解決手段】反射促進層2Bにおいて集光位置Pに向けて投影光L1を反射させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させる。反射促進層2Bにおいて反射された投影光L1が散乱層4において散乱されるのに対して、反射促進層2Bにおいて反射された外光などの余分な光は散乱層4においてほとんど散乱されなくなる。この投影光L1と外光との間の反射機構の相違を利用すれば、投影光L1の反射範囲が外光の反射範囲に対して極めて広くなるため、投影光L1の反射機構ならびに散乱機構の双方が適正に制御される。映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てが向上するため、プロジェクタシステムの使用時ごとに室内を暗くしなくても明瞭な映像を鑑賞可能となる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばプロジェクタなどの投影機から入射される投影光を利用して映像が投影される投影用スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、映画や会議用資料などを大型サイズで表示するための表示装置として、プロジェクタシステムが広く普及している。このプロジェクタシステムは、映像の投影手段としてのプロジェクタ(投影機)と、その投影対象としての投影用スクリーンとにより構成されている。プロジェクタは、投影用スクリーンと正対するように配置される。このプロジェクタシステムでは、プロジェクタにおいて、光源から生じた光が例えば液晶パネル製のシャッターを通過することにより所定の映像パターンに対応した投影光とされ、その投影光が投影用スクリーンに投影されることにより映像が表示される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プロジェクタシステムを使用して映像を鑑賞する場合には、例えば、映像のコントラストが問題となる。すなわち、投影用スクリーンに映像を投影する際、投影光だけでなく、この投影光以外の余分な光、例えば照明器具の光や室外の光(外光)なども投影用スクリーンに投影されるため、映像の明暗が曖昧になってしまうのである。この点を考慮し、プロジェクタシステムを使用する際には、コントラストの低下を誘発する余分な光の影響を抑制すべく、例えば、照明器具を消したり、カーテン(例えば遮光カーテン)を閉めたりして、室内を暗くしている。
【0004】
プロジェクタシステムの使用時におけるコントラストの問題を解決する手法としては、既にいくつかの提案がなされている。例えば、特願2002−070572号では、投影光が投影されることとなる一面(表面)に、投影光に含まれる特定波長の光のみを選択的に反射し、かつその特定波長以外の波長の光(すなわち余分な光)を透過させる反射層を設けると共に、背面に、反射層を透過した余分な光を吸収する吸収層を設けた投影用スクリーンについて開示されている。この投影用スクリーンによれば、スクリーン表面における余分な光の反射量が低下し、これにより余分な光の影響が抑制されるため、コントラストの向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、コントラストの向上が見込まれるものの、新たに視野角に関して問題を抱えることとなる。すなわち、投影用スクリーンの表面において投影光が反射される際、そのスクリーン表面がいわば鏡のように作用し、これにより投影光の反射方向が局所的に絞られてしまうため、映像を視認可能な範囲が狭められるのである。
【0005】
この視野角の問題を解決する手段としては、例えば、投影用スクリーンの表面に、さらに、投影光を散乱させるための散乱層を設ける手法が挙げられる。この投影用スクリーンによれば、反射層において反射された投影光が、さらに散乱層において散乱され、これにより投影光の反射範囲が広がるため、視野角の向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、視野角の向上が見込まれるものの、新たに映像の明度に関して問題を抱えることとなる。すなわち、プロジェクタから投影用スクリーンに入射された投影光が反射層に到達する前に散乱層において散乱され、これにより反射層において選択反射される投影光の光量が低下してしまうため、映像が全体的に暗くなってしまうのである。
【0006】
また、反射層において反射された投影光を散乱させる手法としては、上記した散乱層を設ける他にも、例えば、特許第3265632号に、半球状または半円柱状の複数の凹面鏡構造をなすように投影用スクリーンを構成する手法が挙げられる。この投影用スクリーンによれば、投影用スクリーンの表面(凹面鏡部)において反射された投影光が集光したのちに拡散することとなるため、視野角の向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、視野角の向上が見込まれるものの、投影光のみでなく余分な光も拡散されてしまうため、コントラストが低下してしまう。
【0007】
そこで、複数の凹面鏡構造をなす投影用スクリーンについては、各凹面鏡部間に位置する部分(投影用スクリーンの表面において凸状をなしている部分)に光吸収材を設け、投影用スクリーンと正対する方向以外の方向から入射される余分な光を光吸収剤において吸収することにより、凹面鏡部における余分な光の反射光量を低下させる改良も試みられている。この改良型の投影用スクリーンでは、視野角が凹面鏡部の曲率半径に依存し、すなわち、曲率半径が小さいほど光が拡散するため、視野角が広がることとなる。しかしながら、この改良型の投影用スクリーンでは、視野角を広げるために凹面鏡部の曲率半径を小さくすると、光の拡散傾向が顕著になるため、改良前の投影用スクリーンと同様にコントラストの低下を招いてしまう。
【0008】
これらのことから、従来の投影用スクリーンでは、投影光の反射機構ならびに散乱機構の双方を適正に制御することが困難であり、映像に関わるコントラスト、明度ならびに視野角のうちのいずれかの特性を向上させると他の特性が劣化してしまうため、これらの3つの特性の全てを向上させることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能な投影用スクリーンを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の投影用スクリーンは、投影光を利用して映像が投影されるものであり、所定の集光位置に向けて投影光を反射させる反射層と、集光位置に選択的に配置され、反射層において反射された投影光を散乱させる散乱層とを備えるようにしたものである。
【0011】
本発明の投影用スクリーンでは、反射層において所定の集光位置に向けて投影光が反射されたのち、その投影光が、集光位置に選択的に配置された散乱層において散乱される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成について説明する。図1は投影用スクリーンの断面構成を表し、図2は図1に示した投影用スクリーンの平面構成を表している。
【0014】
この投影用スクリーンは、プロジェクタと共に使用され、そのプロジェクタから入射される投影光を利用して映像が投影されるものであり、図1に示したように、基材1上に、反射層2と、埋込層3と、散乱層4を含む透過層5とがこの順に積層された構成をなしている。
【0015】
基材1は、主に、反射層2や透過層5などを1枚のスクリーン状に支持するものであり、例えば、ガラス繊維で補強されたプラスチックや合成繊維などにより構成されている。
【0016】
反射層2は、主に、投影用スクリーンに入射された投影光を反射させるものであり、例えば、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層された構成をなしている。
【0017】
反射支持層2Aは、反射促進層2Bを支持するためのものであり、例えば、成形が容易なプラスチックなどにより構成されている。この反射支持層2Aの一面(基材1に隣接する側と反対側の面)には、複数の凹面鏡部2Vがマトリックス状に設けられており、各凹面鏡部2Vは、投影光を所定の集光位置Pに反射し得る形状、例えば半球状をなしている。
【0018】
反射促進層2Bは、投影光の反射効率を高めるためのものであり、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2 O3 )や光輝性顔料が混在された樹脂などの高反射性材料により構成されている。この反射促進層2Bは、反射支持層2Aに設けられた凹面鏡部2Vに沿って、その凹面鏡部2Vを覆うように設けられている。
【0019】
埋込層3は、主に、反射層2と散乱層4とを互いに離間させるものであり、例えば、投影光を透過可能な透過性樹脂により構成されている。なお、反射層2と散乱層4との間の距離は、反射促進層2Bにおいて反射される投影光の集光距離に基づいて規定されている。ここでは、集光距離は、例えば、反射促進層2Bにおいて反射された投影光の焦点距離に相当する。
【0020】
散乱層4は、主に、反射層2において反射された投影光を散乱させるものであり、例えば、主に、ガラスやプラスチック製の微小粒(ビーズ)の集合体により構成されている。なお、散乱層4の構成材料は必ずしも微小粒の集合体に限られず、投影光を散乱させ得るものであれば他の材料でもよい。この散乱層4は、図2に示したように、集光位置Pに対応してマトリックス状に複数設けられている。ここでは、集光位置Pは、例えば、反射促進層2Bにおいて反射された投影光に基づく焦点位置に相当する。なお、図2では、透過層5の図示を省略している。
【0021】
透過層5は、主に、マトリックス状に点在するように複数の散乱層4を保持するものであり、例えば、投影光を透過可能な透過性樹脂により構成されている。
【0022】
次に、図3および図4を参照して、投影用スクリーンの投影機構について説明する。図3は投影光の反射機構を説明し、図4は外光の反射機構を説明するためのものであり、いずれも図1に対応している。なお、以下では、説明を簡略化するために、1組の反射促進層2Bおよび散乱層4における投影機構について言及するものとする。
【0023】
この投影用スクリーンでは、図示しないプロジェクタが正対された状態において、このプロジェクタから投影光L1が入射されると、図3に示したように、その投影光L1は、透過層5および埋込層3を透過して反射層2に到達し、反射支持層2Aの凹面鏡部2Vに設けられた反射促進層2Bにおいて反射されることにより集光位置Pに向かって集光したのち、その集光位置Pに配置されている散乱層4において散乱される。この投影光L1の散乱成分が、投影用スクリーンに投影された映像として鑑賞者に視認される。
【0024】
一方、投影光L1以外の余分な光として、例えば外光L2が投影用スクリーンに入射されると、その外光L2は、投影光L1とは異なり、散乱層4においてほとんど散乱されない。すなわち、図4に示したように、外光L2は、主に、投影用スクリーンと正対する方向以外の方向から入射される。この外光L2は、透過層5および埋込層3を透過したのち、反射促進層2Bにおいて集光位置Pに向かって反射されずに、集光位置P以外の方向へ向かって反射される。なお、この反射機構は外光L2に限らず、照明器具の光等についても同様である。
【0025】
次に、図1〜図3ならびに図5〜図7を参照して、投影用スクリーンの製造方法について簡単に説明する。図5〜図7は、投影用スクリーンの製造工程を説明するためのものである。なお、投影用スクリーンの構成要素の材質については既に詳述したので、以下では、その説明について随時省略する。
【0026】
投影用スクリーンを製造する際には、まず、基材1上に溶融プラスチックを射出し、その溶融プラスチックを、凹面鏡部2Vに対応した複数の凸部を有する金型(図示せず)を使用して成形することにより、図5に示したように、基材1上に、一面に複数の凹面鏡部2Vが設けられた反射支持層2Aを形成する。
【0027】
続いて、蒸着法や塗布法を使用して、凹面鏡部2Vを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層されてなる反射層2を形成する。
【0028】
続いて、反射層2上に、各凹面鏡部2Vを埋め込むように埋込層3を形成する。この埋込層3を形成する際には、上記したように、反射層2と後工程において形成される散乱層4との間の距離が、反射促進層2Bにおいて反射されることとなる投影光の集光距離(焦点距離)に対応するように、その形成厚みを調整する。
【0029】
続いて、埋込層3の表面に、例えばガラスビーズが混在された紫外線硬化型の光硬化性樹脂を塗布することにより、前駆散乱層4Zを形成する。この前駆散乱層4Zは、後工程において光硬化されることにより散乱層4となる前準備層である。
【0030】
続いて、図6に示したように、完成後の投影用スクリーンに投影光L1が入射される場合(図3参照)と同様の条件下で全体に紫外光L3を照射し、この紫外光L3を反射促進層2Bで反射させることにより、その反射成分を利用して前駆散乱層4Zを選択的に硬化する。この硬化処理により、反射促進層2Bにおいて各凹面鏡部2Vごとに反射された紫外光L3が集光位置Pに集光され、各集光位置Pごとに前駆散乱層4Zが選択的に硬化されることにより、前駆散乱層4Z中に複数の散乱層4が形成される。なお、散乱層4を形成する際には、前駆散乱層4Zを選択的に硬化し得るように紫外光L3の光量を調整すると共に、散乱層4の目標形成領域以外の領域において前駆散乱層4Zが硬化される前(硬化処理が過剰進行する前)に紫外光L3の照射を中断するようにする。
【0031】
続いて、散乱層4の周辺に残存した未硬化の前駆散乱層4Zを除去する。これにより、図7に示したように、埋込層3上に、複数の散乱層4が点在して残存する。
【0032】
最後に、散乱層4の周囲に透過層5を形成し、この透過層5に複数の散乱層4を保持させることにより、図1および図2に示したように、投影用スクリーンが完成する。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係る投影用スクリーンでは、反射層2において集光位置Pに向けて投影光L1を反射集光させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させるようにしたので、以下の理由により、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることができる。
【0034】
すなわち、この投影用スクリーンでは、上記にて「投影用スクリーンの投影機構」として詳述したように、投影光L1と外光L2との間の反射機構の相違に基づき、反射促進層2Bにおいて反射された投影光L1が散乱層4において散乱されるのに対して(図3参照)、反射促進層2Bにおいて反射された外光L2は散乱層4においてほとんど散乱されない(図4参照)。この場合には、投影光L1が多方向へ向けて散乱反射されるのに対して、外光L2は特定の方向へ局所的に反射されることとなり、すなわち投影光L1の反射範囲が外光L2の反射範囲に対して極めて広くなる。これにより、投影光L1を利用した映像の投影時に、第1に、鑑賞者の視野範囲内において、その鑑賞者に映像として視認される投影光L1の光量に対して外光L2の光量が少なくなるため、コントラストの低下が防止される。第2に、投影用スクリーンに入射された投影光L1のほぼ全てが反射促進層2Bにおいて反射されたのちに散乱層4において散乱されることとなり、投影光L1の反射ロスおよび散乱ロスが少なくなるため、鑑賞者に映像として視認される投影光L1の光量が確保され、これにより映像の明度が確保される。第3に、投影光L1の反射範囲が極めて広くなる点に基づき、映像を視認可能な範囲が広がるため、視野角が確保される。したがって、本実施の形態では、上記「従来の技術」の項において説明した一連の従来の投影用スクリーンとは異なり、光の反射機構ならびに散乱機構の双方が適正に制御されるため、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能となるのである。これにより、本実施の形態に係る投影用スクリーンを使用すれば、プロジェクタシステムの使用時ごとに室内を暗くしなくても、明瞭な映像を鑑賞することができる。
【0035】
なお、この投影用スクリーンでは、外光L2の一部が反射促進層2Bに到達する前に散乱層4において散乱されたり、または反射促進層2Bにおいて反射された外光L2の一部が散乱層4において散乱されることもあり得るが、透過層5の占有面積に対して散乱層4の占有面積が小さく、散乱層4における投影光L1の散乱量に対して外光L2の散乱量は極僅かとなるため、外光L2の散乱現象が映像特性に及ぼす影響は小さいものと考えられる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させ得る点に基づき、投影用スクリーンと共に使用されるプロジェクタの消費電力ならびに寿命の観点においても利点を得ることができる。その理由は、以下の通りである。
【0037】
すなわち、例えば、映像の明度が不十分な場合には、不足している明度を補うために、プロジェクタの出力(例えば投影光L1の光量)を増加させることが考えられる。しかしながら、プロジェクタを高出力化すると、消費電力が大きくなると共に、光源などの備品の寿命が短くなってしまう。これに対して、本実施の形態では、プロジェクタの出力を増加させることなく明度が確保されるため、プロジェクタの低消費電力化ならびに長寿命化を図ることが可能になるのである。
【0038】
なお、本実施の形態では、反射支持層2Aに設けられた凹面鏡部2Vが半球状をなすようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、半球状をなす場合と同様に、集光位置P(焦点位置)に集光するように投影光L1を反射可能であれば、例えば、放物曲面状でもよいし、あるいは非球面状であってもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、半球状をなす凹面鏡部2Vに対応して複数の散乱層4が各集光位置P(焦点位置)に点在するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図8に示したように、所定の集光ラインNに集光されるように凹面鏡部2Vを半円柱状に構成した場合には、その集光ラインNに対応して各散乱層4をライン状に設けるようにしてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、投影光L1の反射効率を高めるために、反射促進層2Bの構成材料としてアルミナなどの高反射性材料を用いるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上記「従来の技術」の項において例示した特願2002−070572号に開示されている材料、すなわち投影光L1に含まれる特定波長の光のみを選択的に反射し、かつその特定波長以外の波長の光を透過(または吸収)させる材料を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、前駆散乱層4Zを形成したのち、その前駆散乱層4Zを選択的に光硬化させることにより複数の散乱層4を形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、パターン成膜技術を使用して、各焦点位置Pに複数の散乱層4を直接形成するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、凹面鏡部2Vに対応した複数の凸部を有する金型を使用して、複数の凹面鏡部2Vが設けられた反射支持層2Aを形成したのち、各凹面鏡部2Vを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層された反射層2を構成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図9に示したように、複数の凹部を有する金型を使用して、複数の凸面鏡部2Xが設けられた透過性の反射支持層2Aを形成したのち、各凸面鏡部2Xを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射促進層2B上に反射支持層2Aが積層された反射層2を構成するようにしてもよい。この場合の投影用スクリーンは、基材1上に、埋込層3と、反射層2(反射促進層2B/反射支持層2A)と、散乱層4を含む透過層5とがこの順に積層された構成となる。
【0043】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。具体的には、投影用スクリーンの構成や機能に関する詳細は、必ずしも上記実施の形態において説明したものに限られるものではなく、反射層2において集光位置Pに向けて投影光L1を反射させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させることにより、投影光L1と外光L2との間の反射機構の相違を利用して映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の投影用スクリーンによれば、反射層において集光位置に向けて投影光を反射させたのち、その集光位置に選択的に配置された散乱層において投影光を散乱させるようにしたので、投影光と外光との間の反射機構の相違に基づき、反射層において反射された投影光が散乱層において散乱されるのに対して、反射層において反射された外光は散乱層においてほとんど散乱されなくなる。したがって、投影光の反射範囲が外光の反射範囲に対して極めて広くなり、これにより投影光の反射機構ならびに散乱機構の双方を適正に制御可能となるため、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの平面構成を表す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンにおける投影光の反射機構を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンにおける外光の反射機構を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの製造工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に示した工程に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成に関する変形例を表す平面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…反射層、2A…反射支持層、2B…反射促進層、2V…凹面鏡部、2X…凸面鏡部、3…埋込層、4…散乱層、4Z…前駆散乱層、5…透過層、L1…投影光、L2…外光、L3…紫外光、N…集光ライン、P…集光位置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばプロジェクタなどの投影機から入射される投影光を利用して映像が投影される投影用スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、映画や会議用資料などを大型サイズで表示するための表示装置として、プロジェクタシステムが広く普及している。このプロジェクタシステムは、映像の投影手段としてのプロジェクタ(投影機)と、その投影対象としての投影用スクリーンとにより構成されている。プロジェクタは、投影用スクリーンと正対するように配置される。このプロジェクタシステムでは、プロジェクタにおいて、光源から生じた光が例えば液晶パネル製のシャッターを通過することにより所定の映像パターンに対応した投影光とされ、その投影光が投影用スクリーンに投影されることにより映像が表示される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
プロジェクタシステムを使用して映像を鑑賞する場合には、例えば、映像のコントラストが問題となる。すなわち、投影用スクリーンに映像を投影する際、投影光だけでなく、この投影光以外の余分な光、例えば照明器具の光や室外の光(外光)なども投影用スクリーンに投影されるため、映像の明暗が曖昧になってしまうのである。この点を考慮し、プロジェクタシステムを使用する際には、コントラストの低下を誘発する余分な光の影響を抑制すべく、例えば、照明器具を消したり、カーテン(例えば遮光カーテン)を閉めたりして、室内を暗くしている。
【0004】
プロジェクタシステムの使用時におけるコントラストの問題を解決する手法としては、既にいくつかの提案がなされている。例えば、特願2002−070572号では、投影光が投影されることとなる一面(表面)に、投影光に含まれる特定波長の光のみを選択的に反射し、かつその特定波長以外の波長の光(すなわち余分な光)を透過させる反射層を設けると共に、背面に、反射層を透過した余分な光を吸収する吸収層を設けた投影用スクリーンについて開示されている。この投影用スクリーンによれば、スクリーン表面における余分な光の反射量が低下し、これにより余分な光の影響が抑制されるため、コントラストの向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、コントラストの向上が見込まれるものの、新たに視野角に関して問題を抱えることとなる。すなわち、投影用スクリーンの表面において投影光が反射される際、そのスクリーン表面がいわば鏡のように作用し、これにより投影光の反射方向が局所的に絞られてしまうため、映像を視認可能な範囲が狭められるのである。
【0005】
この視野角の問題を解決する手段としては、例えば、投影用スクリーンの表面に、さらに、投影光を散乱させるための散乱層を設ける手法が挙げられる。この投影用スクリーンによれば、反射層において反射された投影光が、さらに散乱層において散乱され、これにより投影光の反射範囲が広がるため、視野角の向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、視野角の向上が見込まれるものの、新たに映像の明度に関して問題を抱えることとなる。すなわち、プロジェクタから投影用スクリーンに入射された投影光が反射層に到達する前に散乱層において散乱され、これにより反射層において選択反射される投影光の光量が低下してしまうため、映像が全体的に暗くなってしまうのである。
【0006】
また、反射層において反射された投影光を散乱させる手法としては、上記した散乱層を設ける他にも、例えば、特許第3265632号に、半球状または半円柱状の複数の凹面鏡構造をなすように投影用スクリーンを構成する手法が挙げられる。この投影用スクリーンによれば、投影用スクリーンの表面(凹面鏡部)において反射された投影光が集光したのちに拡散することとなるため、視野角の向上が見込まれる。しかしながら、この投影用スクリーンでは、視野角の向上が見込まれるものの、投影光のみでなく余分な光も拡散されてしまうため、コントラストが低下してしまう。
【0007】
そこで、複数の凹面鏡構造をなす投影用スクリーンについては、各凹面鏡部間に位置する部分(投影用スクリーンの表面において凸状をなしている部分)に光吸収材を設け、投影用スクリーンと正対する方向以外の方向から入射される余分な光を光吸収剤において吸収することにより、凹面鏡部における余分な光の反射光量を低下させる改良も試みられている。この改良型の投影用スクリーンでは、視野角が凹面鏡部の曲率半径に依存し、すなわち、曲率半径が小さいほど光が拡散するため、視野角が広がることとなる。しかしながら、この改良型の投影用スクリーンでは、視野角を広げるために凹面鏡部の曲率半径を小さくすると、光の拡散傾向が顕著になるため、改良前の投影用スクリーンと同様にコントラストの低下を招いてしまう。
【0008】
これらのことから、従来の投影用スクリーンでは、投影光の反射機構ならびに散乱機構の双方を適正に制御することが困難であり、映像に関わるコントラスト、明度ならびに視野角のうちのいずれかの特性を向上させると他の特性が劣化してしまうため、これらの3つの特性の全てを向上させることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能な投影用スクリーンを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の投影用スクリーンは、投影光を利用して映像が投影されるものであり、所定の集光位置に向けて投影光を反射させる反射層と、集光位置に選択的に配置され、反射層において反射された投影光を散乱させる散乱層とを備えるようにしたものである。
【0011】
本発明の投影用スクリーンでは、反射層において所定の集光位置に向けて投影光が反射されたのち、その投影光が、集光位置に選択的に配置された散乱層において散乱される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成について説明する。図1は投影用スクリーンの断面構成を表し、図2は図1に示した投影用スクリーンの平面構成を表している。
【0014】
この投影用スクリーンは、プロジェクタと共に使用され、そのプロジェクタから入射される投影光を利用して映像が投影されるものであり、図1に示したように、基材1上に、反射層2と、埋込層3と、散乱層4を含む透過層5とがこの順に積層された構成をなしている。
【0015】
基材1は、主に、反射層2や透過層5などを1枚のスクリーン状に支持するものであり、例えば、ガラス繊維で補強されたプラスチックや合成繊維などにより構成されている。
【0016】
反射層2は、主に、投影用スクリーンに入射された投影光を反射させるものであり、例えば、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層された構成をなしている。
【0017】
反射支持層2Aは、反射促進層2Bを支持するためのものであり、例えば、成形が容易なプラスチックなどにより構成されている。この反射支持層2Aの一面(基材1に隣接する側と反対側の面)には、複数の凹面鏡部2Vがマトリックス状に設けられており、各凹面鏡部2Vは、投影光を所定の集光位置Pに反射し得る形状、例えば半球状をなしている。
【0018】
反射促進層2Bは、投影光の反射効率を高めるためのものであり、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2 O3 )や光輝性顔料が混在された樹脂などの高反射性材料により構成されている。この反射促進層2Bは、反射支持層2Aに設けられた凹面鏡部2Vに沿って、その凹面鏡部2Vを覆うように設けられている。
【0019】
埋込層3は、主に、反射層2と散乱層4とを互いに離間させるものであり、例えば、投影光を透過可能な透過性樹脂により構成されている。なお、反射層2と散乱層4との間の距離は、反射促進層2Bにおいて反射される投影光の集光距離に基づいて規定されている。ここでは、集光距離は、例えば、反射促進層2Bにおいて反射された投影光の焦点距離に相当する。
【0020】
散乱層4は、主に、反射層2において反射された投影光を散乱させるものであり、例えば、主に、ガラスやプラスチック製の微小粒(ビーズ)の集合体により構成されている。なお、散乱層4の構成材料は必ずしも微小粒の集合体に限られず、投影光を散乱させ得るものであれば他の材料でもよい。この散乱層4は、図2に示したように、集光位置Pに対応してマトリックス状に複数設けられている。ここでは、集光位置Pは、例えば、反射促進層2Bにおいて反射された投影光に基づく焦点位置に相当する。なお、図2では、透過層5の図示を省略している。
【0021】
透過層5は、主に、マトリックス状に点在するように複数の散乱層4を保持するものであり、例えば、投影光を透過可能な透過性樹脂により構成されている。
【0022】
次に、図3および図4を参照して、投影用スクリーンの投影機構について説明する。図3は投影光の反射機構を説明し、図4は外光の反射機構を説明するためのものであり、いずれも図1に対応している。なお、以下では、説明を簡略化するために、1組の反射促進層2Bおよび散乱層4における投影機構について言及するものとする。
【0023】
この投影用スクリーンでは、図示しないプロジェクタが正対された状態において、このプロジェクタから投影光L1が入射されると、図3に示したように、その投影光L1は、透過層5および埋込層3を透過して反射層2に到達し、反射支持層2Aの凹面鏡部2Vに設けられた反射促進層2Bにおいて反射されることにより集光位置Pに向かって集光したのち、その集光位置Pに配置されている散乱層4において散乱される。この投影光L1の散乱成分が、投影用スクリーンに投影された映像として鑑賞者に視認される。
【0024】
一方、投影光L1以外の余分な光として、例えば外光L2が投影用スクリーンに入射されると、その外光L2は、投影光L1とは異なり、散乱層4においてほとんど散乱されない。すなわち、図4に示したように、外光L2は、主に、投影用スクリーンと正対する方向以外の方向から入射される。この外光L2は、透過層5および埋込層3を透過したのち、反射促進層2Bにおいて集光位置Pに向かって反射されずに、集光位置P以外の方向へ向かって反射される。なお、この反射機構は外光L2に限らず、照明器具の光等についても同様である。
【0025】
次に、図1〜図3ならびに図5〜図7を参照して、投影用スクリーンの製造方法について簡単に説明する。図5〜図7は、投影用スクリーンの製造工程を説明するためのものである。なお、投影用スクリーンの構成要素の材質については既に詳述したので、以下では、その説明について随時省略する。
【0026】
投影用スクリーンを製造する際には、まず、基材1上に溶融プラスチックを射出し、その溶融プラスチックを、凹面鏡部2Vに対応した複数の凸部を有する金型(図示せず)を使用して成形することにより、図5に示したように、基材1上に、一面に複数の凹面鏡部2Vが設けられた反射支持層2Aを形成する。
【0027】
続いて、蒸着法や塗布法を使用して、凹面鏡部2Vを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層されてなる反射層2を形成する。
【0028】
続いて、反射層2上に、各凹面鏡部2Vを埋め込むように埋込層3を形成する。この埋込層3を形成する際には、上記したように、反射層2と後工程において形成される散乱層4との間の距離が、反射促進層2Bにおいて反射されることとなる投影光の集光距離(焦点距離)に対応するように、その形成厚みを調整する。
【0029】
続いて、埋込層3の表面に、例えばガラスビーズが混在された紫外線硬化型の光硬化性樹脂を塗布することにより、前駆散乱層4Zを形成する。この前駆散乱層4Zは、後工程において光硬化されることにより散乱層4となる前準備層である。
【0030】
続いて、図6に示したように、完成後の投影用スクリーンに投影光L1が入射される場合(図3参照)と同様の条件下で全体に紫外光L3を照射し、この紫外光L3を反射促進層2Bで反射させることにより、その反射成分を利用して前駆散乱層4Zを選択的に硬化する。この硬化処理により、反射促進層2Bにおいて各凹面鏡部2Vごとに反射された紫外光L3が集光位置Pに集光され、各集光位置Pごとに前駆散乱層4Zが選択的に硬化されることにより、前駆散乱層4Z中に複数の散乱層4が形成される。なお、散乱層4を形成する際には、前駆散乱層4Zを選択的に硬化し得るように紫外光L3の光量を調整すると共に、散乱層4の目標形成領域以外の領域において前駆散乱層4Zが硬化される前(硬化処理が過剰進行する前)に紫外光L3の照射を中断するようにする。
【0031】
続いて、散乱層4の周辺に残存した未硬化の前駆散乱層4Zを除去する。これにより、図7に示したように、埋込層3上に、複数の散乱層4が点在して残存する。
【0032】
最後に、散乱層4の周囲に透過層5を形成し、この透過層5に複数の散乱層4を保持させることにより、図1および図2に示したように、投影用スクリーンが完成する。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態に係る投影用スクリーンでは、反射層2において集光位置Pに向けて投影光L1を反射集光させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させるようにしたので、以下の理由により、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることができる。
【0034】
すなわち、この投影用スクリーンでは、上記にて「投影用スクリーンの投影機構」として詳述したように、投影光L1と外光L2との間の反射機構の相違に基づき、反射促進層2Bにおいて反射された投影光L1が散乱層4において散乱されるのに対して(図3参照)、反射促進層2Bにおいて反射された外光L2は散乱層4においてほとんど散乱されない(図4参照)。この場合には、投影光L1が多方向へ向けて散乱反射されるのに対して、外光L2は特定の方向へ局所的に反射されることとなり、すなわち投影光L1の反射範囲が外光L2の反射範囲に対して極めて広くなる。これにより、投影光L1を利用した映像の投影時に、第1に、鑑賞者の視野範囲内において、その鑑賞者に映像として視認される投影光L1の光量に対して外光L2の光量が少なくなるため、コントラストの低下が防止される。第2に、投影用スクリーンに入射された投影光L1のほぼ全てが反射促進層2Bにおいて反射されたのちに散乱層4において散乱されることとなり、投影光L1の反射ロスおよび散乱ロスが少なくなるため、鑑賞者に映像として視認される投影光L1の光量が確保され、これにより映像の明度が確保される。第3に、投影光L1の反射範囲が極めて広くなる点に基づき、映像を視認可能な範囲が広がるため、視野角が確保される。したがって、本実施の形態では、上記「従来の技術」の項において説明した一連の従来の投影用スクリーンとは異なり、光の反射機構ならびに散乱機構の双方が適正に制御されるため、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能となるのである。これにより、本実施の形態に係る投影用スクリーンを使用すれば、プロジェクタシステムの使用時ごとに室内を暗くしなくても、明瞭な映像を鑑賞することができる。
【0035】
なお、この投影用スクリーンでは、外光L2の一部が反射促進層2Bに到達する前に散乱層4において散乱されたり、または反射促進層2Bにおいて反射された外光L2の一部が散乱層4において散乱されることもあり得るが、透過層5の占有面積に対して散乱層4の占有面積が小さく、散乱層4における投影光L1の散乱量に対して外光L2の散乱量は極僅かとなるため、外光L2の散乱現象が映像特性に及ぼす影響は小さいものと考えられる。
【0036】
さらに、本実施の形態では、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させ得る点に基づき、投影用スクリーンと共に使用されるプロジェクタの消費電力ならびに寿命の観点においても利点を得ることができる。その理由は、以下の通りである。
【0037】
すなわち、例えば、映像の明度が不十分な場合には、不足している明度を補うために、プロジェクタの出力(例えば投影光L1の光量)を増加させることが考えられる。しかしながら、プロジェクタを高出力化すると、消費電力が大きくなると共に、光源などの備品の寿命が短くなってしまう。これに対して、本実施の形態では、プロジェクタの出力を増加させることなく明度が確保されるため、プロジェクタの低消費電力化ならびに長寿命化を図ることが可能になるのである。
【0038】
なお、本実施の形態では、反射支持層2Aに設けられた凹面鏡部2Vが半球状をなすようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、半球状をなす場合と同様に、集光位置P(焦点位置)に集光するように投影光L1を反射可能であれば、例えば、放物曲面状でもよいし、あるいは非球面状であってもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、半球状をなす凹面鏡部2Vに対応して複数の散乱層4が各集光位置P(焦点位置)に点在するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図8に示したように、所定の集光ラインNに集光されるように凹面鏡部2Vを半円柱状に構成した場合には、その集光ラインNに対応して各散乱層4をライン状に設けるようにしてもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、投影光L1の反射効率を高めるために、反射促進層2Bの構成材料としてアルミナなどの高反射性材料を用いるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上記「従来の技術」の項において例示した特願2002−070572号に開示されている材料、すなわち投影光L1に含まれる特定波長の光のみを選択的に反射し、かつその特定波長以外の波長の光を透過(または吸収)させる材料を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、前駆散乱層4Zを形成したのち、その前駆散乱層4Zを選択的に光硬化させることにより複数の散乱層4を形成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、パターン成膜技術を使用して、各焦点位置Pに複数の散乱層4を直接形成するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施の形態では、凹面鏡部2Vに対応した複数の凸部を有する金型を使用して、複数の凹面鏡部2Vが設けられた反射支持層2Aを形成したのち、各凹面鏡部2Vを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射支持層2A上に反射促進層2Bが積層された反射層2を構成するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図9に示したように、複数の凹部を有する金型を使用して、複数の凸面鏡部2Xが設けられた透過性の反射支持層2Aを形成したのち、各凸面鏡部2Xを覆うように反射促進層2Bを形成することにより、反射促進層2B上に反射支持層2Aが積層された反射層2を構成するようにしてもよい。この場合の投影用スクリーンは、基材1上に、埋込層3と、反射層2(反射促進層2B/反射支持層2A)と、散乱層4を含む透過層5とがこの順に積層された構成となる。
【0043】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。具体的には、投影用スクリーンの構成や機能に関する詳細は、必ずしも上記実施の形態において説明したものに限られるものではなく、反射層2において集光位置Pに向けて投影光L1を反射させたのち、その集光位置Pに選択的に配置された散乱層4において投影光L1を散乱させることにより、投影光L1と外光L2との間の反射機構の相違を利用して映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の投影用スクリーンによれば、反射層において集光位置に向けて投影光を反射させたのち、その集光位置に選択的に配置された散乱層において投影光を散乱させるようにしたので、投影光と外光との間の反射機構の相違に基づき、反射層において反射された投影光が散乱層において散乱されるのに対して、反射層において反射された外光は散乱層においてほとんど散乱されなくなる。したがって、投影光の反射範囲が外光の反射範囲に対して極めて広くなり、これにより投影光の反射機構ならびに散乱機構の双方を適正に制御可能となるため、映像のコントラスト、明度ならびに視野角の全てを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した投影用スクリーンの平面構成を表す平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンにおける投影光の反射機構を説明するための断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンにおける外光の反射機構を説明するための断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの製造工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に示した工程に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成に関する変形例を表す平面図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る投影用スクリーンの構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…反射層、2A…反射支持層、2B…反射促進層、2V…凹面鏡部、2X…凸面鏡部、3…埋込層、4…散乱層、4Z…前駆散乱層、5…透過層、L1…投影光、L2…外光、L3…紫外光、N…集光ライン、P…集光位置。
Claims (5)
- 投影光を利用して映像が投影される投影用スクリーンであって、
所定の集光位置に向けて前記投影光を反射させる反射層と、
前記集光位置に選択的に配置され、前記反射層において反射された前記投影光を散乱させる散乱層と
を備えたことを特徴とする投影用スクリーン。 - 前記投影光が、前記反射層と正対する方向から入射され、
前記反射層は、前記正対する方向以外の方向から入射される光を、前記集光位置以外の方向へ向けて反射させるものである
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記反射層は、前記投影光の反射効率を高めるための反射促進層を含んで構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記反射層が、所定の焦点に集光することとなるように前記投影光を反射させるものであり、
前記散乱層は、前記焦点の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。 - 前記反射層が、所定の集光ラインに集光することとなるように前記投影光を反射させるものであり、
前記散乱層は、前記集光ラインに対応してライン状に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の投影用スクリーン。
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Cited By (2)
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JP2007525710A (ja) * | 2004-02-27 | 2007-09-06 | ボーズ・コーポレーション | ディスプレイスクリーン |
CN102033408A (zh) * | 2009-09-24 | 2011-04-27 | 精工爱普生株式会社 | 屏幕 |
-
2002
- 2002-07-03 JP JP2002194188A patent/JP2004037794A/ja active Pending
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