JP2004037212A - ディファレンシャル測位装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】移動局41,42は、複数のGPS衛星11〜14の測位用信号についての誤差補正データと、どのGPS衛星についての補正データであるかを示すPRNマスクを含む補正情報とをSBAS衛星20から受信し、補正情報に含まれているPRNマスクを記憶しておき、測位開始直後からそのPRNマスクを用いてディファレンシャル測位を行う。また電離層遅延補正データは、移動局から利用可能なGPS衛星11〜14からの電波が通過する電離層貫通点が存在する範囲についてのみ記憶する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、GPSなどの測位システムの増強を図る補正情報放送用衛星からの信号を受信して測位を行う、ディファレンシャル測位装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
GPSやGLONASSなどの測位システムの測位精度の向上や安全性の向上を目的として衛星設置増強システム(SBAS:Satellite Based AugmentationSystem )が運営され始めている。この衛星設置増強システムは、ディファレンシャル測位のための誤差補正情報を静止衛星(以下、「SBAS衛星」という。)を用いて放送する広域システムであり、次のように米国・欧州・日本が略世界を三分して3つのシステムを分担する形となっている。
【0003】
(1)米国連邦航空局(FAA):WAAS(Wide Area Augmentation System )
(2)欧州:EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay System)
(3)日本国土交通省:MSAS(MTSAT Based Augmentation System )
このシステムをGPS受信機で利用すると、DGPS測位が可能になり、高精度な測位結果が得られる。また、GPS衛星から受信点までの観測距離に含まれる電離層での電波伝搬遅延誤差を補正するために、SBASでは、その補正データを全世界2192点のグリッドに分けて放送している。この電離層遅延補正値を用いて電離層による遅延分の補正を行えば、より高精度な測位が可能となる。さらに、GPSのシステムに異常があった場合に、SBASによりそれが検知され、その情報がGPS受信機に伝えられるので、異常による影響を最小限に抑えることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記SBASを利用してDGPS測位を行うには、SBAS衛星から現在数分に一度の割合で放送されているPRNマスクと呼ばれるメッセージを受信する必要がある。これは、SBAS衛星から送信される誤差補正情報のメッセージ内に含まれる210個の衛星のうち、どの衛星についてデータを放送するかを示すものである。このPRNマスクを抽出して初めて、利用する衛星の誤差補正情報が判明するので、それまではディファレンシャル測位は行えない。従って、電源投入からDGPS測位を行うまで数分を要することになり、利用者にとって不便なものとなる。
【0005】
また、SBAS衛星から放送された電離層遅延補正データを受信し、それを記憶するためのエリアは、測位用衛星から送信された航法メッセージに含まれている電離層遅延補正データだけに基づいて補正を行う場合に比べて大きな容量を必要とする。このことは、GPS受信機の小型化の面および低コスト化の面で問題となる。
【0006】
この発明の目的は、上述の問題を解消し、電源投入直後からディファレンシャル測位を可能とし、小型化・低コスト化を可能としたディファレンシャル測位装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、複数の測位用衛星(GPS衛星)から送信される測位用信号についての誤差補正データと、どの測位用衛星についての補正データであるかを示す衛星指示データ(PRNマスク)とを含む補正情報を、補正情報放送用衛星(SBAS衛星)から受信する手段と、
前記補正情報に含まれている前記衛星指示データを記憶する衛星指示データ記憶手段と、
測位開始時に前記衛星指示データ記憶手段の記憶内容と前記誤差補正データとに基づいて、測位に用いる測位用衛星からの測位用信号を補正して測位を行う手段とを備えたことを特徴としている。
このように、衛星指示データを記憶しておき、測位開始時に、その記憶内容と、受信した誤差補正データとに基づいて、測位に用いる測位用信号の補正を行って直ちにディファレンシャル測位の結果を出力する。
【0008】
また、この発明は、前記補正情報放送用衛星から受信した信号に含まれる各種データの発行番号(IODP)と、前記衛星指示データ記憶手段に記憶されている衛星指示データの発行番号(IODP)とを比較する手段と、両者が不一致であるとき、前記補正情報放送用衛星から新たな衛星指示データを受信するまで、前記測位用信号の補正を中断する手段を備えたことを特徴としている。
これにより、衛星指示データが既に変更されている場合に、誤差補正データを用いないで、例えば単独測位を行い、誤った誤差補正を防止する。
【0009】
また、この発明は、測位用衛星から送信される測位用信号についての補正情報を、補正情報放送用衛星から受信する手段と、
該補正情報に含まれている電離層遅延補正情報のうち、受信点の推定位置で利用可能な測位用衛星からの測位用信号が通過する電離層貫通点が存在する所定範囲の電離層遅延補正情報を記憶する電離層遅延補正情報記憶手段と、
該電離層遅延補正情報記憶手段の内容に基づき、測位用信号を補正して測位を行う測位手段とを備えたことを特徴としている。
これにより、限られた容量のメモリを用いて、受信点の推定位置から利用可能な測位用衛星の測位用信号について電離層遅延補正を可能とする。
【0010】
また、この発明は、前記測位手段による測位位置から定めた前記所定範囲が、前記電離層遅延補正情報記憶手段に記憶している電離層貫通点の範囲より所定量以上変位したとき、該電離層遅延補正情報記憶手段に記憶する電離層貫通点の範囲を更新する手段を備えたことを特徴としている。
これにより、受信点が大きく移動した場合にも、必要な電離層遅延補正情報を常に保持しておき、補正情報放送用衛星からの電離層遅延補正情報を利用して電離層遅延補正を行えるようにする。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態に係るGPS受信機の構成を各図を参照して説明する。
図1はSBASの全体の構成を示す図である。ここで11〜14はGPS衛星、20はこの発明に係る「補正情報放送用衛星」に相当するSBAS衛星(静止衛星)である。31,32は監視局であり、これらの監視局は地上でGPS衛星11〜14からの測位用信号を受信して、その誤差補正データ(以下、単に「補正データ」という。)を求める。また、それと共に電離層遅延補正情報を求める。33はSBAS地上局であり、監視局31,32とはネットワーク通信システムを介して接続されている。このSBAS地上局33は補正情報をSBAS衛星20に対してアップロードする。SBAS衛星20は広範囲に亘って補正情報を放送する。移動局41,42はSBAS衛星20から補正情報を受信して、またGPS衛星11〜14から測位用信号を受信してDGPS測位を行う。
【0012】
図2はGPS受信機の構成を示すブロック図である。図2において、1はGPSアンテナ、2は、このGPSアンテナ1からの信号を周波数変換するダウンコンバータ、3は、その周波数変換された信号を所定ビット数のディジタルデータ列に変換するA/Dコンバータである。4は、そのディジタルデータ列を順に入力してPRNコードおよびキャリア位相の捕捉・追尾を行う受信回路である。
【0013】
受信回路4の内部には、所定周波数・所定位相のキャリア信号を発生するキャリアNCO(数値制御発振器)、所定位相のPRNコードを発生するコードNCO、入力信号とキャリア信号とを乗算してキャリア成分を除去する乗算器、キャリア成分の除去された入力信号とPRNコードとの相関を求める相関器等を備えている。
【0014】
図2においてCPU5は、ROM6に予め書き込んでいるプログラムを実行して、後述する処理により速やかにディファレンシャル測位を行う。RAM7は演算処理時のワーキングエリア等として用いる。RTC8は、現在時刻をローカルタイム、UTC、またはGPSタイムで計時する時計回路であり、電源遮断時等、航法メッセージを受信していない時でも計時動作を継続する。CPU5はインタフェース9を介して、この受信機に接続されている他の装置へ、測位結果を出力する。
51は、SBAS衛星から放送される補正情報を受けるアンテナ、52はその受信回路である。
【0015】
図3はGPS受信機の主要部の各処理手順を示すフローチャートである。
(A)は測位用信号の受信に伴う処理を示すフローチャートである。この処理では、まず、各GPS衛星からの測位用信号に含まれているPRNコードのコード位相を検出する(n1)。続いて、補正情報に含まれている各種データの発行番号(IODP)がメモリに記憶されているPRNマスクのIODPと一致するか否かを判定する(n2)。これが一致すれば、PRNマスクに基づく該当の補正データで、衛星から受信点までの擬似距離を補正する(n3)。さらに、その後、電離層遅延量の補正を行い、ディファレンシャル測位による結果を出力する(n4)。
【0016】
もし現在受信中の補正情報に含まれている各種データの発行番号IODPと、メモリに記憶されているPRNマスクのIODPとが不一致であれば、メモリに記憶されているPRNマスクが既に古くなったものと見なして、補正データによる補正は行わない。すなわち単独測位を行う(n2→n4)。
【0017】
その後、既に記憶している電離層貫通点(IPP)の範囲を更新すべき状態であるか否かを判定し、必要な範囲の電離層遅延補正データを更新する(n5→n6)。この電離層遅延補正に関しては後に詳述する。
【0018】
図3の(B)は補正情報の受信に伴う処理を示すフローチャートである。まず、各衛星毎の補正データを抽出し、PRNマスクを抽出する(n11→n12)。また、電離層遅延補正情報を抽出する(n13)。
【0019】
図4はPRNマスクの例を示す図である。ここで、PRNマスクは、210個の衛星のうち、どの衛星について補正データを放送するか、その衛星番号の並びをビットパターンで表したものである。図4に示す例では、PRNマスクのビットが現れる順にPRNマスク番号を01,02,03・・・とすると、例えばPRNマスク番号01に相当する衛星はビット番号002の衛星であり、その衛星番号は02である。また例えばPRNマスク番号が04に相当する衛星はビット番号006の衛星であり、その衛星番号は06である。
【0020】
このように、各衛星の補正データはPRNマスクのビットが1に相当する衛星だけについて順に並べられている。従って、このPRNマスクと補正データとに基づいて、該当の衛星についての補正データを知ることができる。前述したように、補正データは6秒毎に更新されるが、PRNマスクは数分毎にしか放送されない。しかし、その内容は例えば年4回程度しか変わらず、結果的に殆ど毎回同じPRNマスクが抽出されることになる。
【0021】
図5は受信点と電離層貫通点との関係を示している。ここで受信点の現在位置の(緯度,経度)を(φu ,λu)とし、電離層貫通点IPP(受信点とGPS衛星とを結ぶ線が高度350kmを通過する点)の(緯度,経度)を(φpp,λpp)とし、衛星の仰角をE、衛星方位をA、電離層の高さをhI 、地球半径をReとすると、これらは次の関係で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
電離層遅延補正に必要なデータは、電離層貫通点の(緯度,経度)を囲む4〜3点のグリッドポイントでの電離層遅延補正データである。該当の衛星に対する電離層遅延補正値は、それらグリッドポイントの電離層遅延補正データを補間計算することにより求める。
【0024】
図6は電離層グリッドポイント(IGP)を表している。このように地球経線によって各々201点(バンド8は200点)を持つ0〜8の9つのバンドに分割し,北緯55度から南緯55度まで5度刻みで、また経度についても5度刻みで、それぞれの交わる点を電離層グリッドポイント(IGP)としている。従ってこの例では、IGPは1808点である。
【0025】
また、北緯55度を超える領域および南緯55度を超える領域について、384点のデータをIGPとしている。電離層遅延補正データは各IGPの鉛直方向の遅延量と遅延量の誤差推定値とから成る。受信機側ではこれらのデータを基に各衛星毎の電離層遅延量と、その誤差を計算し、電離層遅延補正を行う。
【0026】
但し、図6に示した全てのIGPについて電離層遅延補正データが放送されるわけではなく、値の求まっているIGPについてのみ放送される。そのために、前述のPRNマスクの場合と同様に、どのIGPについての電離層遅延補正データであるかを示すデータ(IGPマスク)と、所定のIGPにおける電離層遅延補正データとが放送される。これらが前記「電離層遅延補正情報」である。
【0027】
図7は、GPS衛星の仰角を一定とし、受信点の緯度を変化させた時の電離層貫通点の範囲について示している。横軸は経度、縦軸は緯度である。(A),(B),(C)は何れもGPS衛星の仰角を5度とし、(A)は受信点の緯度を30度、(B)は受信点の緯度を60度、(C)は受信点の緯度を80度とした場合である。このように衛星の仰角の下限を5度とした場合に、図5に示した角度Ψppは14.2度となり、緯度の採りうる範囲は最大でも±14.2度である。一方、経度に関しては、緯度により大きさが変化する。受信機の位置が高緯度になれば、全ての経度についての電離層遅延補正データを使用する可能性がある。但し、高緯度についてはIGPがまばらであるので、必要なデータ量はそれほど増えない。緯度が60度より低緯度なら±30度の経度範囲でカバーできる。
【0028】
図8は電離層遅延補正データの記憶範囲について示している。電離層遅延補正データは、受信機の位置から緯度方向に±20度分と経度方向に±30度分のエリアを5度刻みで記憶する。但し、受信機の位置が北緯55度または南緯55度を超える場合には、それぞれ55度として扱う。すなわち±55度でクリッピングを行う。これで、記憶すべき点数は10×14=140点分となる。
【0029】
受信機の電離層遅延補正データがどのエリアについて記憶しているかを示すデータとして、上記エリアの中心の緯度,経度を記憶する。図8の左側の例では、北緯47.5度,西経122.5度となる。右側の例は北緯52.5度,東経137.5度となる。
【0030】
図9は高緯度についての記憶エリアを示している。緯度65度以上の高緯度の電離層遅延補正データに関しては、全経度分のデータを記憶する。このエリアは最高でも10度刻みであるので、必要なデータ量は少ない。図6に示したIGPの場合、この高緯度エリアの点数は120点となる。
【0031】
電離層遅延補正データである鉛直方向の遅延量9ビットと、遅延量の誤差推定値GIVEI(Grid Ionospheric Error Indicator)4ビットとを2バイトの記憶エリアに割り当て、それと共にタイムアウトカウントのための2バイトを割り当てると、合計4バイト必要となる。従って、電離層遅延補正データに必要な記憶容量は4×(140+120)=1040バイトとなる。
【0032】
なお、上記タイムアウトカウントとは、電離層遅延補正データの取得からの経過時間を秒単位で加算記憶するためのデータであり、最大600秒まで加算する。このカウントが600秒の電離層遅延補正データは無効として使用しない。
【0033】
なお、緯度60度より低緯度に限って用いる受信機であれば、この高緯度部分の記憶エリアおよびそのエリアに対する書き込み・読み出しのための処理を省けばよい。このことにより更に小型・低コスト化が図れる。
【0034】
図3に示したステップn13では、現在の受信機の推定位置を中心として上記エリアについての電離層遅延補正データを抽出し、それを所定フォーマットでRAM7に記憶する。また、ステップn4では、この電離層遅延補正データによる補正を行う。
【0035】
図10は受信機が所定量以上移動したときの記憶範囲の変更の例を示している。基本的に、現在の記憶エリアの中心位置を囲む4点と、受信機の推定位置を囲む4点が異なればIGPの記憶範囲を変更する。なお、上記推定位置を囲む4点は前述の高緯度でのクリッピングを行った結果の4点である。
【0036】
このようにして、最低限必要な、または処理上都合のよい範囲の電離層遅延補正データを記憶することにより、少ないメモリ容量で電離層遅延補正を行うことができる。
SBAS衛星から放送される補正情報に含まれている電離層遅延補正情報は、所定の周期(例えば280秒周期)で更新されるので、この更新があれば、上記受信機内の電離層遅延補正データを更新する。
【0037】
また、受信機が所定量以上移動したときにも、受信機内の電離層遅延補正データを更新する。但し、緯度方向または経度方向に5度以上変化する頻度は、通常非常に低いので、この電離層遅延補正データの更新に要する処理負荷は非常に小さい。因みに、緯度方向の5度は、5×60×1852≒555kmに相当する。
【0038】
なお、電源投入直後の受信機の推定位置が緯度方向または経度方向に5度以上誤っていて、測位後に正しい位置が求まれば、結果的に緯度方向または経度方向に5度以上変化する事はある。また、受信機が極付近に存在する場合には、経度が大きく変化する可能性はある。しかし、もともと極付近ではSBAS衛星の追尾ができないので、そのこと自体は問題とはならない。そこで、経度方向または緯度方向に、グリッドポイントの1ステップ分以上、すなわち5度以上、変化したか否かで、次のように処理を分ける。
【0039】
(1)受信機の緯度および経度の変化が5度未満で,且つ記憶エリアの中心位置が変化しない場合
例えば、受信機の(緯度,経度)が(北緯51度,東経135度)だとすると、記憶エリアの中心は(北緯52.5度,東経137.5度)となる。そこから受信機の(緯度,経度)が(北緯51度,東経139度)に移動した場合、受信機の位置変化は緯度および経度ともに5度以内であり、且つ記憶エリアの中心位置は(北緯52.5度,東経137.5度)のままであるので、電離層遅延補正データの記憶範囲の変更は行わない。
【0040】
(2)受信機の緯度および経度の変化にともない、記憶エリアの中心位置が5度変化した場合
例えば,受信機の(緯度,経度)が(北緯51度,東経139度)だとすると,記憶エリアの中心は(北緯52.5度,東経137.5)となる。そこから受信機の(緯度,経度)が(北緯51度,東経141度)に移動したとすると,記憶エリアの中心は(北緯52.5度,東経142.5度)に変化する。受信機の位置としては、経度が2度変化しただけであるが、記憶エリアの中心の経度は5度変化する。そこで、このような場合は、次に述べる処理によって、電離層遅延補正データの記憶範囲を変更する。
【0041】
先ず、図10に示すように、既に記憶している電離層遅延補正データを受信機の移動方向へ5度分シフトさせるようにデータのコピーを行い、コピーできない部分のデータを無効にする。その後、中心の緯度・経度を設定する。図10は記憶エリアの中心位置を東方向に5度移動させた時の例である。このように、図中塗りつぶし部で示す部分のデータを5度分移動させ、コピーできなかった部分のデータを無効にする。このことにより、無効にした部分以外について短時間のうちにデータの更新を行うことができる。コピーできなかった部分については、SBAS衛星から放送される補正情報に含まれている電離層遅延補正情報から新たに抽出して書き込む。
【0042】
(3)受信機の緯度または経度が5度以上変化した場合
メモリに記憶している全ての電離層遅延補正データを無効にした後、中心の緯度・経度を設定する。このことにより新たな所定範囲の電離層遅延補正データを記憶する。通常は、記憶エリアの中心を求める処理が6秒周期だとしても、この時間での受信機の緯度または経度の変化量が「度」のオーダーになることはない。従って、記憶エリア中心の移動は殆ど起こらず、起こったとしても、緯度方向及び経度方向の5度単位のグリッドで両隣に移る事を考えておけば充分である。それ以上の変化は、異常と見なして(このような事態になるのは、前述したように、電源投入時などの特殊な場合である)、電離層遅延補正データの記憶を最初からやり直せばよい。
【0043】
【発明の効果】
この発明によれば、補正情報放送用衛星から受信した衛星指示データを測位装置に記憶しておき、測位開始時にその記憶内容と、補正情報放送用衛星から受信した誤差補正データとに基づいて、測位に用いる測位用信号の補正を行うので、電源投入直後からディファレンシャル測位の結果を出力することができる。
【0044】
また、この発明によれば、前記衛星指示データが既に変更されている場合に、誤差補正データを用いないで、例えば単独測位を行うので、誤った誤差補正の処理を防止することができる。
【0045】
また、この発明によれば、補正情報放送用衛星から放送される補正情報に含まれている電離層遅延補正情報のうち、受信点の推定位置から利用可能な測位用衛星から送信される測位用信号が通過する電離層貫通点が存在する所定範囲の電離層遅延補正情報を記憶し、その記憶手段の内容に基づいて電離層遅延補正を行うようにしたので、限られた容量のメモリを用いて、受信点の推定位置から利用可能な測位用衛星の測位用信号について電離層遅延補正が可能となる。
【0046】
また、この発明によれば、測位装置が所定量移動したとき、電離層遅延補正情報記憶手段の内容を更新するようにしたので、受信点が大きく移動した場合にも、必要な電離層遅延補正情報を常に保持しておき、補正情報放送用衛星からの電離層遅延補正情報を利用して電離層遅延補正を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】SBASの全体の構成を示す図
【図2】GPS受信機の構成を示すブロック図
【図3】同GPS受信機の処理内容を示すフローチャート
【図4】PRNマスクの例を示す図
【図5】受信機の位置と電離層貫通点の位置との関係を示す図
【図6】電離層グリッドポイントの例を示す図
【図7】電離層貫通点の範囲の例を示す図
【図8】受信機側で記憶する電離層貫通点の範囲を電離層グリッドポイントの範囲で表した例を示す図
【図9】受信機側で記憶する高緯度での電離層グリッドポイントの例を示す図
【図10】受信機の移動に伴う電離層遅延補正データの更新の例を示す図
【符号の説明】
11〜14−GPS衛星
20−静止衛星(SBAS衛星)
31,32−監視局
33−SBAS地上局
41,42−移動局
Claims (4)
- 複数の測位用衛星から送信される測位用信号についての誤差補正データと、どの測位用衛星についての補正データであるかを示す衛星指示データとを含む補正情報を、補正情報放送用衛星から受信する手段と、
前記補正情報に含まれている前記衛星指示データを記憶する衛星指示データ記憶手段と、
測位開始時に前記衛星指示データ記憶手段の記憶内容と前記誤差補正データとに基づいて、測位に用いる測位用衛星からの測位用信号を補正して測位を行う手段とを備えたディファレンシャル測位装置。 - 前記補正情報放送用衛星から受信した信号に含まれる各種データの発行番号と、前記衛星指示データ記憶手段に記憶されている衛星指示データの発行番号とを比較する手段と、両者が不一致であるとき、前記補正情報放送用衛星から新たな衛星指示データを受信するまで、前記測位用信号の補正を中断する手段とを備えた請求項1に記載のディファレンシャル測位装置。
- 測位用衛星から送信される測位用信号についての補正情報を、補正情報放送用衛星から受信する手段と、
該補正情報に含まれている電離層遅延補正情報のうち、受信点の推定位置で利用可能な測位用衛星からの測位用信号が通過する電離層貫通点が存在する所定範囲の電離層遅延補正情報を記憶する電離層遅延補正情報記憶手段と、
該電離層遅延補正情報記憶手段の内容に基づき、前記測位用信号を補正して測位を行う測位手段とを備えたディファレンシャル測位装置。 - 前記測位手段による測位位置から定めた前記所定範囲が、前記電離層遅延補正情報記憶手段に記憶している電離層貫通点の範囲より所定量以上変位したとき、該電離層遅延補正情報記憶手段に記憶する電離層貫通点の範囲を更新する手段を備えた請求項3に記載のディファレンシャル測位装置。
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