JP2004033162A - アミノトランスフェラーゼ活性を示す蛋白質 - Google Patents

アミノトランスフェラーゼ活性を示す蛋白質 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れた新規なアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ、および該蛋白質をコードするDNAを提供する。
【解決手段】60℃以上の温度条件下において、アセチルオルニチンをアミノ基供与体とするアミノトランスフェラーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質であり、特定の塩基配列によってコードされる蛋白質等である。また上記の塩基配列又は上記塩基配列の一部からなるDNAを含み、適切な宿主細胞に導入することにより上述の蛋白質を生産し得る染色体外増殖性環状DNAである。またそのDNAによって形質転換された宿主細胞である。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、60℃以上の温度条件下においてもアセチルオルニチンをアミノ基供与体としてアミノトランスフェラーゼ活性を有する新規な蛋白質(その誘導体を含む)、該蛋白質をコードする環状DNAおよびその利用法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼ(以下、ACOATと略記)は、α位のアミノ基がアセチル化されたオルニチンのω位のアミノ基をα−ケトグルタル酸やピルビン酸などのケト酸やアルデヒド等に転移し、グルタミン酸やアラニン等のアミノ酸やアミンおよび末端のカルボキシル基がアルデヒドに還元されたアセチルグルタミン酸を合成する酵素で、医薬、農薬の合成中間体等に利用価値のある有用な酵素である。例えば降圧剤の中間体合成としてリジンのα位のアミノ基が修飾された化合物への利用が報告されている(Enzyme−Microb.Technol.,27,6,376−389,2000年)。これまでに報告されているACOATとしてエッシェリヒア・コリ由来の酵素(Billheimer.J.T.ら,Arch.Biochem.Biophys.,195,401−413,1979年)、シュードモーナス・アエルギノーサ由来の酵素(Richard.V.らJ.Bacteriol.,122,799−809,1975年)、クレブシーラ・アエロゲネス(Friedrich.B.らJ.Bacteriol.,133,686−691,1978年)等が知られるが、これらはいずれも常温にて生育する生物由来であるために至適温度は高くない。そのため我々は至適温度が高いACOATを求めて超好熱菌に着目した。
【0003】
超好熱菌は安定性が高く、工業的に有用な酵素を探索する上で貴重な生物資源である。実際にいくつかの酵素については、同様の活性を有する中温菌由来のものに比べて著しく高い耐熱性を有しており、温度ストレスはもとより、温度以外の種々の物理化学的なストレスにも耐性が高く、一般的には酵素が失活したり反応が阻害されるような条件(例えば攪拌によって生じる強い機械的衝撃や高濃度の基質などの存在下、有機溶媒中による反応、酸やアルカリ条件下による反応、界面活性剤存在下による反応)でも反応をし得るものと期待される。
【0004】
超好熱菌に由来するアミノトランスフェラーゼの報告例として、エアロパイラム・ペルニクスの酵素(特願2000−357630号)、スルフォロバス・ソルファタリカスの酵素(Marino,G.ら,J.Biol.Chem.263、12305−12309、1988年)、サーモコッカス・リトラリスの酵素(Andreotti,G.ら,Eur.J.Biochem.220、543−549、1994年)、パイロコッカス・フリオサスの酵素(Andreotti,G.ら,Biochemica et Biophysica Acta 1247、90−96、1995年)、サーモコッカス・プロファンダスの酵素(Kobayashi,T.,The 5th Anniversary Novo Nordisk Enzyme Symposium 要旨集21−26、1997年)、パイロコッカス・ホリコシイの酵素(Matsui,I.ら,J.Biol.Chem.275、4871−4879、2000年)等が知られる。しかし、いずれの酵素もα−アミノ酸アミノトランスフェラーゼであるためアセチルオルニチンには作用せず、超好熱菌由来のACOATは今まで知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性に優れた新規なACOAT、および該蛋白質をコードするDNAを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パイロコッカス・フリオサスの菌体抽出物より、リジン、オルニチンおよび4−アミノ酪酸をアミノ基供与体にしてα−ケトグルタル酸からグルタミン酸が生成することを見出した。該知見よりパイロコッカス・フリオサスがファミリーIIIに属するアミノトランスフェラーゼ(ACOATやオルニチンアミノトランスフェラーゼ、4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ等が含まれる)を含むことが示され、ACOATに対する活性を持つ酵素遺伝子を探索した結果、パイロコッカス・フリオサスにACOAT遺伝子を見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
即ち本発明は、60℃以上の温度条件下において、アセチルオルニチンをアミノ基供与体とするアミノトランスフェラーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質である。また本発明は、配列番号1の塩基配列、又は配列番号1の塩基配列の一部からなるDNAを含み、適切な宿主細胞に導入することにより、上述の蛋白質を生産し得ることを特徴とする、染色体外増殖性環状DNAである。さらに本発明は、上述のDNAによって形質転換されたことを特徴とする宿主細胞である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明の蛋白質は、60℃以上の温度条件下において、アセチルオルニチンをアミノ基供与体とするアミノトランスフェラーゼ活性を有するものである。このような蛋白質としては特に限定されるものではないが、例えば配列番号1の塩基配列によってコードされる蛋白質、又はその一部のアミノ酸配列が欠失し、一部のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換され、他のアミノ酸残基が挿入され、若しくは他のアミノ酸残基が付加された蛋白質があげられる。配列番号1の塩基配列によってコードされる蛋白質は、本発明によって明らかになったパイロコッカス・フリオサスのACOATであり、より具体的には、例えば後述するように配列番号5のアミノ酸残基配列からなる蛋白質を含むものである。これらの蛋白質は、パイロコッカス属微生物に由来する他の蛋白質を実質的に含まないことが好ましい。
【0009】
配列番号1の塩基配列、即ちパイロコッカス・フリオサスのACOATをコードするDNAは、パイロコッカス・フリオサス染色体DNAの特定の領域を異種遺伝子発現系で発現しやすいよう、超好熱菌エアロパイラム・ペルニクスの酵素を組換え大腸菌にて発現させた例(特願2000−357630号)を参考に、改変することにより得ることができる。より具体的には、例えば配列番号2及び配列番号3のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、パイロコッカス・フリオサスの染色体DNAを材料にPCR法を実施して特定領域のDNAを増幅し、これを制限酵素SacIとBamHIで処理した後に、配列番号4のオリゴヌクレオチドをその5’末端側に付加することによって得ることができる。ここで、配列番号4よりなるオリゴヌクレオチドの付加は、予め染色体外増殖性環状DNA上に該配列を配置することによって達成することもできる。またこの配列番号4よりなるオリゴヌクレオチドは、その5’末端に位置するATG配列が翻訳開始メチオニンとして認識されやすいように上記プラスミドと連結されていることが望ましい。
【0010】
配列番号2及び3をプライマーDNAとしてPCR増幅したDNA断片を制限酵素SacIとBamHIで処理した後、配列番号4である人工的な配列をパイロコッカス・フリオサスのゲノムDNAにある配列に連結させることにより融合蛋白質として発現させるように設計し、これらの配列を含む染色体外増殖性環状DNAを宿主に導入することが、本発明のアミノトランスフェラーゼ活性のある蛋白質を大量に製造するうえで好ましいのである。
【0011】
染色体外増殖性環状DNAの構築から形質転換宿主細胞の培養、そして蛋白質の発現に至る操作は遺伝子工学の分野における常法を採用することができ、プラスミドの種類や宿主細胞の選択、蛋白質の発現方法等は適宜選択可能である。例えば、染色体外増殖性環状DNAであるプラスミドベクターとしては、pUC18/19、pBR322、pACYC184等を例示することができる。また宿主細胞としては、例えば大腸菌K12株や、その誘導体であるHB101、JM109、MC4100、W3110、C600等を例示できる。
【0012】
この形質転換された宿主細胞を用いて、本発明のアミノトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質が生産されるが、用いられる培地は菌株が増殖し得るものであればいずれを使用してもよく、このとき使用する培地として、炭素源にはグルコース、ショ糖、デンプン、乳糖、グリセロールなどが、窒素源には肉エキス、ペプトン、トリプトン、酢酸アンモニウムや硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩等などが、無機塩にはリン酸1ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸1カリウム、リン酸2カリウム等のリン酸塩やNaClなどが、金属イオンには硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸第一鉄・7水和物、塩化カルシウム・2水和物などが使用できる。また、培地には酵母エキス、ビタミン類などを添加することもできる。
【0013】
培養は通気撹拌、振とうによって好気的条件で行なうことが好ましく、pHは5〜9の範囲に調整する。pHの調整に使用するアルカリとしてはアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン化合物など任意のものが使用でき、酸としては塩酸、硫酸、リン酸などが使用できる。培養時間は酵素の生成量が最大になるまで行なうことが好ましく、12時間〜72時間程度が好ましい。培養温度としては20〜40℃付近が好ましく、培地中の溶存酸素濃度は5〜50%付近が好ましい。また、必要に応じて酵素の誘導処理を行なうこともできるが、その際使用する誘導剤としては糖類やその誘導体のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などが使用できる。
【0014】
このようにして培養した培養液より菌体を回収するが、回収方法としては遠心分離やろ過などを用いることができる。回収した菌体を緩衝液に懸濁し破砕するが、使用する緩衝液は酵素が安定に抽出されればいずれの緩衝液でもよく、例えばリン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、酢酸緩衝液などがあげられる。濃度やpHについても同様に酵素が安定に抽出されればいずれの濃度やpHでもよいが、好ましくは濃度は10〜200mM、pHは5〜9である。また必要に応じてキレート剤のEDTAや酸化防止剤のα−メルカプトエタノールやジチオスレイトールを添加できる。菌体の破砕は浸透圧ショックや超音波処理、フレンチプレス処理、マントン・ゴーリン・ホモジナイザー処理などの通常の方法によって処理できる。
【0015】
得られた酵素抽出液に対し1回目の加熱処理を行なうが、それに先立ち酵素の安定化剤を添加することが好ましく、アミノトランスフェラーゼにはピリドキサールリン酸やピリドキサミンリン酸、α−ケトグルタル酸などが挙げられる。熱処理条件は目的とする本発明の蛋白質がなるべく安定に回収される条件がよく、好ましくは温度が60〜100℃、時間が10〜120分である。また必要に応じて得られた蛋白質を沈殿法や膜を用いて濃縮したり、あるいは透析によって低分子化合物を除去したりすることもできるが、沈殿法による濃縮はアセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ポリエチレングリコールなどの有機溶媒や硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸カリウムなどの無機塩による塩析が使用できる。膜を用いた濃縮は限外ろ過膜など用いることができ、膜を用いた透析は市販の透析膜が使用できる。その際に使用する膜の分画分子量は目的の蛋白質が膜外に溶出しなければいずれをも使用できる。
【0016】
沈殿法による濃縮を行なった場合は緩衝液に再溶解し、不溶物がある場合は遠心分離あるいはろ過により除去し、2回目の加熱処理を行なう。2回目の加熱処理条件は1回目と同様に蛋白質が安定に保たれればいずれの条件でもよいが、1回目より高い温度もしくは長い時間で処理すればより多く夾雑蛋白質を除くことができる。
【0017】
得られた蛋白質溶液を透析や市販の脱塩カラムにより脱塩を行ない、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーを用いることにより更に高純度に精製することができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
実施例1 パイロコッカス・フリオサスの培養
市販の培地(商品名;マリンブロス2216、Difco社製)を1リットル容のメジュームビンに37.4g取り、純水1リットルを加えて溶解し、更に少量のリサズリンを酸化還元指示薬として加えて120℃で20分間加圧滅菌した。滅菌後、薬サジ一杯分の元素硫黄粉末を加え、窒素雰囲気下で密栓して97℃に加熱した。この溶液に2%の2−メルカプトエタノールをリサズリンの赤色が消失するまで滴下し、さらにパイロコッカス・フリオサスDSM3638株を植菌して97℃で一晩培養を行なった。
【0020】
培養終了後、室温まで培養液を冷却し、残存する元素硫黄及び硫黄酸化物の沈殿を培養液を傾斜させて分離、除去し、8000回転、20分の遠心分離により微生物菌体を回収した。
【0021】
実施例2 パイロコッカス・フリオサスの菌体抽出液からの酵素活性測定
実施例1で得られた菌体の一部を50mMトリス−塩酸(pH7.6)に懸濁し、超音波で菌体の破砕を行ない、遠心分離により沈殿を除去した。得られた上清を分画分子量12000〜14000の膜にて一晩透析(20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6))を行なったのち、ピリドキサールリン酸を1mMの濃度になるよう加えた。酵素反応はアミノ基受容体にα−ケトグルタル酸、アミノ基供与体にL−リジン塩酸塩、L−オルニチン塩酸塩または4−アミノ酪酸をそれぞれ20mMの濃度で用い、0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.7)中、70℃60分間保温した。この溶液10μlを取り、エタノール35μl、トリエチルアミン5μl、フェニルイソチオシアネート(PITC)5μlを加え、室温で20分間反応させたのち、デシケーター内で90分間減圧乾固させ、一部を高速液体クロマトグラフィー(Tsk−gel ODS−80TM、商品名、東ソー(株)製を使用)によって生成したグルタミン酸を定量した。
【0022】
溶離液として0.14M酢酸ナトリウム−0.05%トリエチルアミン(pH6.35)を用い、アセトニトリルの直線濃度勾配で溶出させ、254nmでの吸光度で検出を行ない、1分間に1μmoleのグルタミン酸を生成する活性を1Uとした。その結果、表1に示すようにパイロコッカス・フリオサスの菌体抽出液を用いて、L−リジン、L−オルニチン、または4−アミノ酪酸をアミノ基供与体としてα−ケトグルタル酸からグルタミン酸の生成が確認された。また酵素活性の高い順はL−オルニチン、L−リジン、4−アミノ酪酸だった。
【0023】
【表1】
Figure 2004033162
実施例3 パイロコッカス・フリオサス染色体DNAの調製
実施例1で得られた菌体の一部を1mlのTNE緩衝液(10mMトリス−塩酸(pH7.5)、200mMNaCl、1mMEDTA)に懸濁した。これに10%SDSを0.1ml加えて室温に10分間静置し、溶菌させた。
【0024】
これに水相と等容のフェノール−クロロフォルム(10mMトリス−塩酸で飽和)を加えて穏やかに攪拌し、遠心操作によって水相を回収した。この操作を3回繰り返した後、水相と等容のクロロフォルムによる抽出を行なった。得られた水相に2.5容のエタノールを加え、室温で10分間静置した後、遠心によって核酸を回収した。沈殿を70%エタノールで洗浄した後、再度遠心して核酸をペレットとして回収し、これを400μlのTE緩衝液(10mMトリス−塩酸(pH7.5、1mMEDTA)に溶解した。
【0025】
この溶液に10mg/mlのRNaseA(あらかじめDNaseを熱処理により除去)を最終濃度50μg/mlになるように2μl加え、37℃で1時間保温した。これに20%PEG6000/2.5MNaClを240μl加えてから0℃で2時間静置した。これを4℃で遠心し、ペレットを70%エタノールで洗浄して再度遠心した。得られたペレットを乾固させた後400μlのTE緩衝液に溶解してDNA標品とした。これにより140μgのDNAが回収された。
【0026】
実施例4 PCRによる特異的DNA配列の増幅
実施例3で得られた染色体DNAを鋳型として特定の配列をもつDNAを以下の手順により増幅した。まずプライマーとしては、増幅させようとするDNA配列に相当する配列を20ないし25塩基含み、かつその5’側に適当な制限酵素認識配列と、さらにその5’側に1ないし3塩基の余分な配列を持つように設計した。この余分な配列は制限酵素が効率的に働くことを助けるものであり、その配列と長さは用いる制限酵素によって異なる。SacIについてはATCCなる4塩基、BamHIについてはCGよりなる2塩基が付加することにより制限酵素が十分に切断活性をもつことが知られているので(NEB社カタログ)、これを用いることにした。すなわち配列番号2及び3よりなるDNA配列をプライマーとすることに決定し、これらのオリゴヌクレオチドを常法により合成した。
【0027】
配列番号2
5’ ATCCGAGCTCAGGAAGAGACTAAGGCTCGTAAAA 3’
(下線部はSacIの切断部位を示す)
配列番号3
5’ CGGGATCCCGATTACGTTCCCTACATCATCGA3’
(下線部はBamHIの切断部位を示す)。
【0028】
PCR反応はPyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造製)を用い、以下の手順で行なった。すなわち10×Pyrobest緩衝液(宝酒造製)を10μl、各2.5mMになるように調製されたdNTP混合溶液を8μl、鋳型となる染色体DNA標品を350ng、上記プライマーDNAを各々100pmol、PyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造製)を0.5μl加えて、全量を100μlとした。Perkin Elmer製Thermal Cyclerを用いて、<94℃、20秒−60℃、60秒−72℃、120秒>のサイクルを30回繰り返し、その後72℃、10分の伸長反応を行なって終了させた。その一部を1.0%アガロースで分析することにより、約1400bpのDNAが特異的に増幅されていることが観察された。この反応によって得られたDNA量は約10μgであった。
【0029】
実施例5 組換え大腸菌の作製
実施例4で得られたDNAを常法に従いフェノール−クロロフォルム(10mMトリス−塩酸で飽和)抽出で除蛋白し、次いでクロロフォルムによる抽出を行なった。エタノール沈殿により回収したDNAのうち5μgに6UのSacIと6UのBamHIによる酵素消化を各々37℃で90分間行なった。一方、5μgのプラスミドpUK02−A3(特開平3−155788号参照)DNAを用いて、これを同様に6UのSacIと6UのBamHIで各々37℃で2時間酵素消化を行なった。こうして得られた両方の酵素消化物を1.0%アガロースで電気泳動させ、ゲルから常法により抽出して各DNA断片を精製した。
【0030】
次に前記pUK02−A3由来の4kbp断片とPCR産物の1.2kbp断片を等モル混合し、ライゲーション反応に供し、pPFOAT4を得た。pPFOAT4を図1に示す。図中、A3/lac promoterは大腸菌T3ファージA3プロモーターと大腸菌lacオペレーターとの融合プロモーターを、SacIは制限酵素SacIの切断部位を、BamHIは制限酵素BamHIの切断部位を、PstIは制限酵素PstIの切断部位を、EcoRVは制限酵素EcoRVの切断部位を、ACOATはパイロコッカス・フリオサスのACOATがコードされている領域を、rrnB T1T2は大腸菌rrnBオペロンの転写終結シグナルを、Ampはアンピシリン耐性の遺伝子を、Oriはプラスミドの複製開始部位を、そしてlacIqは大腸菌のlacリプレッサーバリアントの遺伝子をそれぞれ示す。これを常法に従って大腸菌JM109に導入した。形質転換菌は50μg/mlのカルベニシリンを含む寒天培地で選択し、生じたコロニーからプラスミドを常法によって抽出、分析することにより、約1.4kbpのSacI−BamHI挿入断片を有するプラスミドを保有する菌株を同定した。これをJM109/pPFOAT4と呼び、以下の実験に供した。
【0031】
実施例6 酵素の調製
実施例5で得られた組換え大腸菌JM109/pPFOAT4を200ml容のバッフル付き3角フラスコを用い50μg/mlのカルベニシリンを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキストラクト、0.5%NaCl)40mlで34℃で14時間振とう培養を行なった。この培養液30mlを50μg/mlのアンピシリンを含むLB4Y培地(1%バクトトリプトン、2%バクトイーストエキストラクト、0.5%NaCl)3リットルに植菌し、5リットル容の発酵槽を用いて30℃で20時間好気的培養を行なった。この培養物を常法に従って菌体を集めると53gであった。集めた菌体を150mlの50mMのトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)で洗浄後、同じ緩衝液200mlで再度懸濁し、超音波で菌体の破砕をなった。この菌体破砕物にピリドキサールリン酸を1mMの濃度になるよう加え、70℃の湯浴にて30分間浸し熱処理を行なった。生じた沈殿物を遠心分離により除去し、上清を回収した。
【0032】
得られた上清に硫酸アンモニウムを80%飽和濃度になるようゆっくり添加し、生じた沈殿を遠心分離により回収した。この沈殿物を20mlの50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6)に溶解し、80℃の湯浴にて20分間浸し生じた沈殿を遠心分離により除去し、上清を回収した。得られた上清を分画分子量12000〜14000の膜にて一晩透析(20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.6))を行ない、市販のゲル(DEAE−Toyopearl650M、商品名、東ソー(株)製)により分画し、SDS−ポリクリルアミドゲル電気泳動による分析にて目的の蛋白質を含む画分を回収した。得られた画分を濃縮後、高速液体クロマトグラフィーによるイオン交換(TSK−gel DEAE−5PW、商品名、東ソー(株)製を使用)、高速液体クロマトグラフィーによるゲルろ過(TSK−gel G3000SWXL、商品名、東ソー(株)製を使用)による分画を順次行い、SDS−ポリクリルアミドゲル電気泳動による分析にて目的の蛋白質を含む画分を回収した。
【0033】
実施例7 組換え体の酵素活性測定
20mMのL−アラニン及び20mMのα−ケトグルタル酸を含む0.1Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.7)中70℃60分間保温し酵素反応を行ない、等量の1N酢酸水溶液を加え反応を停止させた。この溶液10μlを取り、エタノール35μl、トリエチルアミン5μl、フェニルイソチオシアネート(PITC)5μlを加え、室温で20分間反応させたのち、デシケーター内で90分間減圧乾固させ、一部を高速液体クロマトグラフィー(TSk−gel ODS−80TM、商品名、東ソー(株)製を使用)によって生成したグルタミン酸を定量した。溶離液として0.14M酢酸ナトリウム−0.05%トリエチルアミン(pH6.35)を用い、アセトニトリルの直線濃度勾配で溶出させ、254nmでの吸光度で検出した。1分間に1μmoleのグルタミン酸を生成する活性を1Uとした。実施例6で得られた酵素の活性は0.63U/mgだった。
【0034】
実施例8 酵素活性の温度プロファイル
実施例7に記載した酵素反応を50、60、70、80、90、100℃の各温度で行ない、温度による活性の変化を図2に示した。図中、横軸は反応温度(℃)、縦軸は相対活性(%)である。その結果本酵素は60℃の温度において最も高い活性を有していた。
【0035】
実施例9 酵素活性のpHプロファイル
実施例7に記載した酵素反応をpH5.1から10.3の間で行ない、pHによる活性の変化を図3に示した。図中、横軸はpH、縦軸は相対活性(%)である。その結果本酵素は7.3から10.3の間で高い活性を有していた。
【0036】
実施例10 アミノ基供与体に対する基質特異性
アミノ基受容体をα−ケトグルタル酸として、表2に記載した化合物をアミノ基供与体に用いて実施例7に記載した酵素反応を行なった。その結果、表2に示すように本酵素は様々なアミノ酸に作用し、アセチルオルニチンに対して最も高い活性を示した。
【0037】
【表2】
Figure 2004033162
実施例12 アミノ基受容体に対する基質特異性
アミノ基供与体をアセチルオルニチンに固定し、表3に記載した化合物をアミノ基受容体に用いて実施例7に記載した酵素反応を行なった。その結果、表3に示すように本酵素はα−ケトグルタル酸よりもピルビン酸に対して高い活性を示した。
【0038】
【表3】
Figure 2004033162
【発明の効果】
本発明によって至適温度が高いACOATをコードするDNAが新規に提供される。このDNAを使用することにより、安価かつ安定的に、大量のACOATを製造することや、天然に存在するACOATのアミノ酸残基の一部を置換等した変異型ACOATを製造することが可能となる。
【0039】
本発明は更に、前記ACOATを用いることにより、医薬品あるいは農薬等の原料として重要なω−アミノ酸やアミノ化合物を安価に製造することが可能となる。
【0040】
前記した本発明の蛋白質は、60℃以上の温度条件下でもACOAT活性を発現し得るものである。このように高い至適温度を有する酵素は、一般的な酵素が失活したり反応が阻害されるような温度以外の条件、例えば攪拌によって生じる強い機械的衝撃や高濃度の基質などの存在下等においても高い耐性が期待できることから、産業的な有用性が高い。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpPFOAT4の概要を示す図である。
【図2】実施例8で得られた反応温度と相対活性との関係を示す図である。
【図3】実施例9で得られたpHと相対活性との関係を示す図である。

Claims (6)

  1. 60℃以上の温度条件下において、アセチルオルニチンをアミノ基供与体とするアミノトランスフェラーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質。
  2. 配列番号1の塩基配列によってコードされる蛋白質、又はその一部のアミノ酸配列が欠失し、一部のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換され、他のアミノ酸残基が挿入され、若しくは他のアミノ酸残基が付加された蛋白質であることを特徴とする請求項1に記載の蛋白質。
  3. パイロコッカス属微生物に由来する他の蛋白質を実質的に含まないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の蛋白質。
  4. 配列番号1の塩基配列、又は配列番号1の塩基配列の一部からなるDNAを含み、適切な宿主細胞に導入することにより請求項1〜3いずれかに記載の蛋白質を生産し得ることを特徴とする、染色体外増殖性環状DNA。
  5. 請求項4に記載のDNAによって形質転換されたことを特徴とする宿主細胞。
  6. 大腸菌K12株又はその誘導体であることを特徴とする、請求項5に記載の宿主細胞。
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