JP2004032173A - 通信経路切替機能付きパケット通信網 - Google Patents

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Abstract

【課題】IPパケット通信網において、回線を時間帯ごとに使い分ける。
【解決手段】ルータR1〜R5間に、常時回線L1〜L6と、所定時間帯だけ借り受ける一時回線L7,L8とを設ける。各ルータ内のIPルーティングテーブルには、常時回線を利用した経路と一時回線を利用した経路との双方を記述し、「Cost」欄には、常時回線を利用した経路にはホップ数を、一時回線を利用した経路には最大値「999」を、それぞれ記入する。IPプロトコルによるルーティング処理では、「Cost」の小さな経路を優先的に選択する。一時回線の利用を開始するには、下位プロトコルであるMPLSを利用し、LFIBに一時回線を利用した一時的経路情報を書き込む処理を行い、一時回線の利用を終了するには、LFIBに書き込んだ一時的経路情報を消去する処理を行う。
【選択図】    図11

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パケット通信網における通信経路切替方法に関し、特に、IPプロトコルとMPLSプロトコルとを併用した回線選択機能を有するルータを用いたパケット通信網において、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜使い分ける技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
インターネットをはじめとするコンピュータネットワーク網が、必須の社会基盤としての地位を築きつつある今日では、IPパケット通信網は、情報通信上、極めて重要な基幹インフラとなっている。インターネットの実体は、共通のIPプロトコルに従って、個々のデータパケットを転送する機能をもった多数のルータと、これらルータ間を接続する多数の回線であり、各ルータは、所定のルーティングテーブルに基いて、受信されてきたIPパケットを所定の回線へ送信するルーティング処理を実行する。現在、IPパケット通信網では、OSPF(OpenShortest Path First)なるTCP/IPのルーティングプロトコルを用いるのが一般的であり、リンク・ステート・アルゴリズムに基いて、個々のルータ間の通信を行い、ネットワークの接続状態や距離の情報を交換しあい、ルーティングテーブルを自動作成することができる。具体的には、OSPFのもとでは、個々のルータ内の各回線ごとのインターフェイスの起動状態の確認と隣接するルータ間の疎通確認を定期的に行うことにより経路情報を生成し、これをルーティングテーブルへ格納する処理が行われる。比較的大規模なネットワークでも、経路情報の経時的な変化分だけを通知しあう仕組みになっているため、全体的なトラフィックを抑制することができる。
【0003】
コンピュータ間の通信方法を規定したプロトコルとしては、「OSI(Open Systems Interconnection)参照モデル」が国際的な標準となっており、インターネットにおける通信プロトコルも、この「OSI参照モデル」に準拠したものになっている。「OSI参照モデル」では、階層構造をもった全7層のプロトコルが定義されている。IPプロトコルは、そのうちの第3層(ネットワーク層)のプロトコルとして定義されており、その下位プロトコルとして、第2層(データリンク層)および第1層(物理層)が定義されている。また、通信業者内のルータ間通信では、いわゆる「ラベル・スイッチング技術」を利用したIPパケットの高速転送処理も行われている。たとえば、「MPLS(MultiProtocol Label Switching)」なるラベル・スイッチング技術では、第2.5層ともいうべきプロトコル層を新たに定義し、MPLSに対応した特別なルータ間での通信を、IPプロトコルに代わって、MPLSのプロトコルで行うことにより、高速伝送を実現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、インターネットの実体は、多数のルータと多数の回線であり、その運営には、多数のベンダーが参加している。たとえば、個々のユーザに対してインターネットへの接続サービスを提供する事業体であるISP(InternetService Provider )としては、自社で光ファイバーなどの大容量伝送設備を保有する大企業から、ほとんどの回線を他社から借り受けて利用している中小企業まで、様々な企業が存在している。一方、ユーザ側のインターネットの利用時間帯にはムラがあり、特定の回線のトラフィックが特定の時間帯に限って増大するような現象も少なくない。このようなトラフィック増加に対処するためには、最大トラフィック状態であっても十分な通信容量を確保できるような通信回線を用意しておくのが理想的であるが、規模の小さいISPなどでは、そのようなコストのかかる設備投資は困難な場合が多い。
【0005】
特定の時間帯におけるトラフィック増大に一時的に対処するには、「必要な容量をもった所定の通信回線を、必要な時間帯だけ、他社から時間貸ししてもらう」という方法を採るのが最も効率的である。しかしながら、IPパケット通信網のように、個々のルータ内に用意されたルーティングテーブルに基いてルーティング処理を行うシステムでは、通信経路を切り替えるためには、ルーティングテーブルの書替処理が必要になる。たとえば、特定のルータ間に、定常的に接続されている自社の常時回線と、特定の時間帯だけ一時的に他社から借り受けることができる一時回線と、の2種類の回線が存在する場合、特定の時間帯だけは一時回線を利用した経路へのルーティングが可能になるように、当該時間帯だけ、ルーティングテーブルを書き替える必要がある。
【0006】
ところが、現実的には、このような短期間におけるルーティングテーブルの一時的な書き替えを行うと、パケット通信網のシステム全体を不安定にする要因になり好ましくない。具体的には、ある1つのルータ内のルーティングテーブルを書き替えた場合、上述したOSPFによる動的経路制御のもとでは、他のルータに対しても、ルーティングテーブルの書き替えが行われた情報を伝達する必要があり、必要に応じて、他のルータ内のルーティングテーブルについての書き替えも必要になる。ところが、このような情報伝達には遅延時間が生じ、1つのルータについてのルーティングテーブルの変更内容が、他のルータに伝播するまでには、ある程度の時間が必要になる。その結果、短時間にルーティングテーブルの書き替えを行うと、分散配置されている多数のルータ間でのルーティングテーブルの内容に整合性がとれなくなり、全体的に正しい経路制御を行うことができなくなるおそれが出てくる。また、上述したように、上位となるIPプロトコルとともに、下位となるMPLSプロトコルを用いているルータの場合、IPプロトコルにおけるルーティング制御と、MPLSプロトコルにおけるルーティング制御との間の整合性がとれなくなると、支障が生じる可能性が出てくる。
【0007】
そこで本発明は、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜使い分けながら、安定した動作が可能になるパケット通信網を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、IPプロトコルとMPLSプロトコルのように、階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有する複数のルータと、所定ルータ間を定常的に接続する常時回線と、所定ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を有するパケット通信網において、一時回線を利用した通信経路を有効にしたり、無効にしたり切り替える処理を行うことができる。
【0009】
そのために、各ルータに、上位プロトコルに基く回線選択を行うための上位ルーティングテーブルと、この上位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する上位回線選択手段と、下位プロトコルに基く回線選択を行うための下位ルーティングテーブルと、この下位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する下位回線選択手段と、受信したデータパケットについて、下位回線選択手段により回線選択がなされた場合には下位回線選択手段により選択された回線への送信を行い、下位回線選択手段により回線選択がなされなかった場合には上位回線選択手段により選択された回線への送信を行うパケット送信手段と、を設けておき、上位ルーティングテーブルには、常時回線を利用した経路とともに一時回線を利用した経路を示す経路情報を書き込んでおき、かつ、常時回線を利用した経路の方が一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるような情報を書き込んでおくようにする。
【0010】
ここで、一時回線を利用した通信経路を有効にするときは、下位ルーティングテーブルに、一時回線を利用した経路を示す一時的経路情報を書き込むようにすればよい。そうすれば、下位回線選択手段により一時回線を利用した回線選択がなされ、一時回線を利用した通信が行われるようになる。このとき、上位ルーティングテーブルには、一時回線を利用した経路についての経路情報も書き込まれているので、上位プロトコル(IPプロトコル)と下位プロトコル(MPLSプロトコル)との間の整合性にも問題は生じない。一方、一時回線を利用した通信経路を無効にするときは、下位ルーティングテーブルから、一時的経路情報を消去すればよい。そうすれば、下位回線選択手段による回線選択はなされなくなるので、回線選択は、上位回線選択手段によってなされることになる。上位ルーティングテーブルには、一時回線を利用した経路の経路情報も書き込まれているが、常時回線を利用した経路の経路情報の方が優先的に選択されるため、結果的に、常時回線を利用した経路が選択されることになる。
【0011】
なお、上位ルーティングテーブルに対して、常時回線を利用した経路情報を書き込む際には、OSPFなどのルーティングプロトコルを用いたルータ間通信によって収集されたデータに基いて自動的に作成された情報を書き込むようにし、一時回線を利用した経路情報を書き込む際には、オペレータ自身が作成した情報を書き込むようにすればよい。また、一時回線を利用した通信経路を有効または無効に切り替える際の下位ルーティングテーブルに対する一時的経路情報の書き込みまたは消去動作を、タイマー機能をもった書替手段によって、所定の時刻ごとに自動的に行うようにすれば、1日のうちの特定の時間帯だけ、一時回線を経由したルーティングを自動的に行うようにすることができる。
【0012】
上位ルーティングテーブルに書き込む経路情報としては、個々の経路の選択基準となる優先度を示す情報を含ませるようにし、一時回線を利用した経路の優先度を、常時回線を利用した経路の優先度よりも低く設定するようにしておけばよい。具体的には、値の小さい経路ほど優先的に選択されるような優先度を定義し、常時回線のみを利用した経路の優先度としては、当該経路のホップ数に相当する値を設定し、一時回線の利用を含む経路の優先度としては、設定可能な最大ホップ数に相当する値を設定しておけばよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する実施形態に基いて説明する。本発明は、階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有する複数のルータと、所定ルータ間を定常的に接続する常時回線と、所定ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を有するパケット通信網に広く適用可能な技術である。ただ、実用上、本発明の主たる適用対象は、上位プロトコルとしてIPプロトコル、その下位プロトコルとしてMPLSプロトコルを用いたルーティング処理を行う機能を有するルータを備えたIPパケット通信網になるものと思われるので、以下、このような具体的なプロトコルを用いたIPパケット通信網に本発明を適用した実施形態を述べることにする。
【0014】
§1.常時回線と一時回線とを併用する場合の課題
ここでは、説明の便宜上、図1に示すような5つのルータR1〜R5と、6本の回線L1〜L6と、によって構成される単純なIPパケット通信網におけるネットワーク層(OSI参照モデルにおける第3層:IP層)での動作を考えることにする。実際には、この5つのルータR1〜R5は、インターネットを構成する多数のルータの一部であり、各ルータは、図示されていない他のルータに対して、図示されていない別な回線によって接続されている。各ルータR1〜R5には、それぞれ所定のIPルーティングテーブルが用意されている。また、これら各ルータ経由で伝送される個々のIPパケットのヘッダー部には、送信元と送信先のIPアドレスが記載されており、このIPアドレスとIPルーティングテーブルとを参照することにより、各ルータは、受け取ったIPパケットを所定の回線を介して次のルータへと送信する。
【0015】
いま、この図1に示すルータR1〜R5および回線L1〜L6が、所定のISP(Internet Service Provider )の管理下にあり、このISPは、これらの通信設備を用いて、ユーザに対してインターネットを利用した種々のサービスを提供しているものとしよう。このような場合、特定のユーザによる特定のサービスの利用が、特定の時間帯に集中して生じることも少なくない。ここでは、たとえば、平日の昼間の時間帯は、企業ユーザによる利用が集中するため、ルータR5,R3間のトラフィックが増大し、夜中の時間帯は、通信回線の利用料が安価になる契約を結んでいる個人ユーザによる利用が集中するため、ルータR1,R3間のトラフィックが増大する現象が生じているものとしよう。このようなトラフィック増加に対処するためには、通信容量の大きな光ファイバなどの伝送路を、所定のルータ間に確保するのが理想的であるが、規模の小さいISPなどでは、そのようなコストのかかる設備投資は困難である。そこで、実用上は、すべての回線を常時確保しておく代わりに、「必要な回線を、必要な時間帯だけ、他社から時間貸ししてもらう」という方法を採るのが最も効率的な運用形態ということになる。なお、ここでは便宜上、インターネットを利用したサービスに本発明を適用した例を説明するが、もちろん、本発明はインターネットを利用したサービスへの適用に限定されるわけではなく、IP VPNサービス(企業間などのプライベートネットワーク接続サービス:IP Virtual Private Network)などにも適用可能である。また、Optical Cut−through技術(負荷の高いIPルータを光回線によりバイパスする技術)などにも適用可能である。
【0016】
たとえば、上述したような一時的なトラフィック増大に対処するためには、昼間の時間帯である9:00〜18:00の間は、図2に示すように、ルータR5,R3間を直結する新たな回線L7(図では、破線で示す)を他社から時間貸ししてもらうようにし、夜中の時間帯である23:00〜6:00の間は、図3に示すように、ルータR1,R3間を直結する新たな回線L8(図では、破線で示す)を他社から時間貸ししてもらうような形態を採れば、これら新たな回線L7,L8を常時確保しておく形態に比べて、採算上、効率的な運用が可能になる。すなわち、全時間帯を通してみれば、図4に示すように、5つのルータR1〜R5は、実線で示す回線L1〜L6と、破線で示す回線L7,L8によって相互に接続されていることになるが、破線で示す回線L7,L8は、常時利用できるわけではなく、特定の時間帯に限って利用できる一時的な回線ということになる。
【0017】
本明細書では、図4に実線で示す回線L1〜L6を「常時回線」と呼び、破線で示す回線L7,L8を「一時回線」と呼ぶことにする。もちろん、実際には、新たなルータを増設する際には新たな専用回線を確保し、既設のルータを撤廃する際には撤廃されたルータに接続されていた専用回線を廃止する、というように、どのような回線も、必ずしも恒久的なものではない。したがって、ここで言う「常時回線」は、必ずしも恒久的に敷設された回線を意味するものではなく、必要に応じて、新設されたり撤廃される可能性のあるものである。ただ、本発明における「常時回線」は、所定ルータ間を定常的に接続する目的で設けられた回線を意味するものであり、所定ルータ間を一時的に接続する目的で利用される「一時回線」と区別するために、ここでは、「常時回線」なる文言を用いることにする。
【0018】
さて、図4に示す例のように、常時必要な部分には、常時回線L1〜L6を用意しておき、一時的に(所定の時間帯だけ)必要になる部分には、その都度、一時回線L7,L8を借り受ける、という形態を採れば、採算上は効率的な運用が可能になる。しかしながら、ネットワーク層のトポロジーという観点から、図1,図2,図3に示す個々の時間帯におけるパケット通信網を捉えると、これらは明らかに異なるトポロジーをもったパケット通信網ということになり、各ルータ内には、それぞれ固有のトポロジーに応じた別個のIPルーティングテーブルを用意する必要が生じる。ところが、既に述べたとおり、現実的には、IPルーティングテーブルを短期間に頻繁に書き替えるような運用を行うと、パケット通信網のシステム全体が不安定になり好ましくない。
【0019】
通常、各ルータ内のIPルーティングテーブルは、OSPF(Open Shortest Path First)といったルーティングプロトコルによって自動的に作成され、定期的に更新されるようになっている。このOSPFのもとでは、個々のルータ内の各回線ごとのインターフェイスの起動状態の確認と隣接するルータ間の疎通確認が定期的に行われ、その情報がすべてのルータへと通知されることになる。ところが、このような情報伝達には時間が必要であり、短時間に頻繁にIPルーティングテーブルの書き替えが行われると、情報伝達の遅延に起因して、多数のルータ間でのルーティングテーブルの内容に整合性がとれなくなり、全体的に正しい経路制御を行うことができなくなるおそれが出てくる。また、IPプロトコルとその下位プロトコルとの間における整合性を確保する上でも、支障が生じる可能性がある。このように、IPパケット通信網において、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜使い分けながら、安定した動作を行えるようにするためには、実用上、解決しなければならない課題が存在する。
【0020】
§2.IPプロトコルとMPLSプロトコル
前述したように、本発明の主たる適用対象は、IPプロトコルとMPLSプロトコルとを用いたルーティング処理を行う機能を有するルータを備えたIPパケット通信網である。そこで、ここでは、これらのプロトコルの相互関係を簡単に述べておく。
【0021】
コンピュータ間の通信方法を規定したプロトコルとしては、図5に示すような「OSI(Open Systems Interconnection)参照モデル」が国際標準となっており、インターネットにおける通信プロトコルも、この「OSI参照モデル」に準拠したものになっている。「OSI参照モデル」では、階層構造をもった全7層のプロトコルが定義されている。IPプロトコルは、そのうちの第3層(ネットワーク層)のプロトコルとして定義されており、その下位プロトコルとして、第2層(データリンク層)および第1層(物理層)が定義されている。ただ、最近の通信業者内のルータ間通信では、いわゆる「ラベル・スイッチング技術」を利用したIPパケットの高速転送処理も行われており、「MPLS(MultiProtocol Label Switching)」なるラベル・スイッチング技術では、図示のとおり、第2.5層ともいうべきプロトコル層を新たに定義し、MPLSに対応した特別なルータ間での通信を、IPプロトコルに代わって、MPLSのプロトコルで行うことにより、高速伝送を実現している。
【0022】
図6は、一部にラベル・スイッチング技術を採り入れたIPパケット通信網におけるIPパケットの伝送手順を示す図であり、パソコンなどの端末装置T10から別な端末装置T20へと、所定のIPパケットが伝送されてゆく過程を示すものである。図示のとおり、端末装置T10から送出されたIPパケットは、ルータR11〜R15を介して伝送され、目的の端末装置T20まで届けられる。図6の下半分に示すダイヤグラムは、OSI参照モデルにおける第3層〜第1層を示している(第2.5層として、MPLS層が定義されている)。
【0023】
まず、端末装置T10において、送信対象となるデータが用意され、このデータにIPヘッダ(端末装置T10のIPアドレスを送信元、端末装置T20のIPアドレスを送信先とするヘッダ)が付加され、IPパケットが作成される。これが、端末装置T10における第3層の処理である。端末装置T10は、第2.5層となるMPLSの処理を行う機能を有していないため(図の端末装置T10の第2.5層に相当するブロックにX印が記されているのは、MPLSの処理機能が備わっていないことを示す)、続いて、第2層の処理が行われる。すなわち、第3層の処理で作成されたIPパケットに、更に、第2層のプロトコルであるATMのヘッダが付加され、ATMパケットが作成される。最後に、第1層の処理として、このATMパケット全体が、送信対象となるデータとして送信されることになる。図示の例の場合、この第1層(物理層)のデータは、電気的な回線を経て、デフォルトゲートウエイとなるルータR11へと送信される。
【0024】
図7は、第3層、第2層、第1層で作成されるデータパケットの構成を示す図である。上述したように、まず、第3層において、データにIPヘッダが付加され、IPパケットが作成される。続く第2層では、このIPパケット全体を送信対象となるデータとして、ATMヘッダが付加され、ATMパケットが作成される。最後に、第1層において、このATMパケット全体が、送信対象となるデータとして、物理的な回線への送信が行われる。
【0025】
このような第1層(物理層)のデータを受信したルータR11は、第2層の処理として、受信データの先頭部分にあるATMヘッダを認識してこれをデータ部分から切り離し、更に、第3層の処理として、残りのデータの先頭部分にあるIPヘッダを認識してこれをデータ部分から切り離す処理を行う。ルータR11は、こうして認識したIPヘッダに含まれている送信先IPアドレスに基いて、IPルーティングテーブルを参照し、当該データの次なる送信先であるルータR12(実際には、ルータR12への回線が接続されたインターフェイス)を選択する。そして、第3層の処理として新たなIPヘッダを付加し、続いて第2層の処理として新たなATMヘッダを付加し、第1層の処理として、これらヘッダの付加されたデータを、次なる送信先であるルータR12へ向かう回線(この例では、光回線)へと送信する。ルータR11は、第2.5層の処理機能を有していないため、ルータR11におけるルーティング処理は第3層のIPプロトコルに基いて行われることになる。
【0026】
続いて、このルータR11から、物理層のデータを受信したルータR12は、やはり第1層の処理、第2層の処理、第3層の処理と順に実行し、IPヘッダに含まれている情報およびIPルーティングテーブルを参照し、第3層のIPプロトコルに基くルーティング処理を実行する。ただ、このルータR12の送信側には、第2.5層の処理機能が備わっているため、送信のための処理は、第3層の処理、第2.5層の処理、第2層の処理、第1層の処理いう順で所定の処理が実行される。具体的には、図8に示すように、まず、第3層において、データにIPヘッダが付加され、IPパケットが作成される。続いて、第2.5層において、このIPパケット全体を送信対象となるデータとして、MPLSヘッダ(一般に、ラベルと呼ばれている情報)が付加され、第2層では、このラベル付きIPパケット全体を送信対象となるデータとしてATMヘッダが付加され、ATMパケットが作成される。最後に、第1層において、このATMパケット全体が、送信対象となるデータとして、光回線への送信が行われる。
【0027】
このルータR12から、物理層のデータを受信したルータR13は、第2.5層の処理機能を有している。したがって、第1層の処理でデータ受信を行った後、第2層の処理として、受信データの先頭部分にあるATMヘッダを認識してこれをデータ部分から切り離し、更に、第2.5層の処理として、残りのデータの先頭部分にあるMPLSヘッダ(ラベル)を認識してこれをデータ部分から切り離す処理が行われる。ルータR13は、このMPLSヘッダに含まれている情報に基いて、LFIB(Label Forwarding Information Base :MPLS層のルーティングテーブルに相当するもの)を参照し、当該データの次なる送信先であるルータR14(実際には、ルータR14への回線が接続されたインターフェイス)を選択する。このように、ルータR13におけるルーティング処理は、第3層であるIPプロトコルに基いて行われるのではなく、第2.5層であるMPLSプロトコルに基いて行われることになるので、第3層の処理は不要になる。すなわち、第3層におけるIPヘッダの認識処理が行われることなしに、第2.5層の処理において、新たなMPLSヘッダ(ラベル)が付加され、続いて第2層の処理として新たなATMヘッダが付加され、第1層の処理として、これらヘッダが付加されたデータを、次なる送信先であるルータR14へ向かう回線(この例では、光回線)へと送信する処理が行われる。
【0028】
ルータR14も、第2.5層の処理機能を有しているので、ルータR13と全く同様のルーティング処理を実行する。すなわち、IPプロトコルではなく、MPLSプロトコルに基くルーティング処理が実行されることになる。最後のルータR15は、受信側では、第2.5層の処理機能を有しているが、送信側では、第2.5層の処理機能は有していないため、ルータR15から電気回線を介して送信されるデータは、図7の第1層に示す通常のデータになる。かくして、端末装置T20に、このようなデータが到達すると、第1層の処理で受信された後、第2層の処理として、受信データの先頭部分にあるATMヘッダが認識されてデータ部分から切り離され、更に、第3層の処理として、IPヘッダが認識されてデータ部分から切り離され、最終的に、データ部分のみがアプリケーションによって認識されることになる。
【0029】
結局、上述したデータ伝送経路において、第2.5層に相当するMPLSプロトコルの処理機能をもったルータR13,R14では、IPヘッダを認識する第3層の処理を行うことなしに、第2.5層においてルーティング処理を実行することが可能になるため、より高速な転送処理が可能になる。もちろん、これらのルータが、第2.5層のMPLSプロトコルによるルーティング処理を行うことができないデータ(たとえば、MPLSヘッダに応じた経路情報が、LFIB内に記述されていないようなデータ)を受信した場合には、更に、第3層の処理を実行し、通常どおり、IPプロトコルによるルーティング処理が行われることになる。別言すれば、第3層のIPプロトコルによるルーティング処理機能と、第2.5層のMPLSプロトコルによるルーティング処理機能と、を併せもつルータは、受信したデータパケットについて、MPLSプロトコルによるルーティング処理により回線選択がなされた場合には、当該選択された回線への送信を行い、MPLSプロトコルによるルーティング処理により回線選択がなされなかった場合には、IPプロトコルによるルーティング処理によって選択された回線への送信を行う機能を有していることになる。
【0030】
図9は、IPプロトコルによるルーティング処理機能とMPLSプロトコルによるルーティング処理機能とを併せもったルータRの基本構成を示すブロック図である。図の一点鎖線で囲まれた部分が、このルータRの構成要素になる。この例では、ルータRには、データ入力用の回線Aと、データ出力用の回線X,Y,Zとが接続されている。ルータRの役目は、回線Aを介して伝送されてきたデータを受信し、その中身(IPヘッダあるいはMPLSヘッダ)を調べ、ルーティングテーブルを参照することにより回線X,Y,Zのいずれかを選択し、受信したデータを選択された回線経由で別なルータへと送信することである。
【0031】
図示のとおり、このルータRは、入力インターフェイス10、下位回線選択手段20、下位ルーティングテーブル30、上位回線選択手段40、上位ルーティングテーブル50、パケット送信手段60、出力インターフェイス71〜73によって構成されている。なお、書替手段80は、本発明に係る通信切替を行う際に用いられる構成要素であり、その動作については後述する。入力インターフェイス10および出力インターフェイス71〜73は、第1層のデータと第2層のデータとの間の変換処理を行う働きをする。下位回線選択手段20は、第2.5層のルーティング処理(MPLSプロトコルによるルーティング処理)を実行する手段であり、下位ルーティングテーブル30は、このルーティング処理において利用されるルーティングテーブル(LFIB)である。上位回線選択手段40は、第3層のルーティング処理(IPプロトコルによるルーティング処理)を実行する手段であり、上位ルーティングテーブル50は、このルーティング処理において利用されるルーティングテーブル(IPルーティングテーブル)である。このように、この実施形態における「上位」および「下位」なる文言は、「第3層のIPプロトコル」および「第2.5層のMPLSプロトコル」を意味している。
【0032】
下位回線選択手段20または上位回線選択手段40によって実行されるルーティング処理の実体は、回線Aから受信したデータパケットを、3つの回線X,Y,Zのいずれから送信するかを決定する処理、すなわち、出力経路となる回線を選択する処理である。実際には、回線自体を選択する代わりに、回線に接続されている出力インターフェイスを選択する処理が行われる。別言すれば、下位回線選択手段20または上位回線選択手段40による選択処理によって、出力インターフェイス71,72,73のいずれかが選択されることになる。パケット送信手段60は、下位回線選択手段20または上位回線選択手段40から与えられたデータを、選択されたいずれかの出力インターフェイスへと出力する処理を行う。
【0033】
回線Aを介して伝送されてきたデータ(第1層の物理的データ)は、入力インターフェイス10によってルータR内に取り込まれ、ここで第2層の受信処理が行われる。すなわち、ATMヘッダが分離され、第2層のデータ部分が抽出される。続いて、この第2層のデータ部分は、下位回線選択手段20へと送られ、第2.5層の受信処理が行われる。すなわち、MPLSヘッダ(ラベル)が分離され、第2.5層のデータ部分が抽出される。ここで、下位回線選択手段20は、MPLSヘッダの内容に基いて、下位ルーティングテーブル(LFIB)30を参照し、MPLSプロトコルによるルーティング処理が実行可能であれば、これを実行する。一方、下位回線選択手段20によるルーティング処理が実行不能であるときには、第2.5層のデータ部分は更に上位回線選択手段40へと送られ、第3層の受信処理が行われる。すなわち、IPヘッダが分離され、第3層のデータ部分が抽出される。ここで、上位回線選択手段40は、IPヘッダの内容に基いて、上位ルーティングテーブル(IPルーティングテーブル)50を参照し、IPプロトコルに基くルーティング処理を実行する。
【0034】
このように、ルータRには、下位プロトコルに基く回線選択を行うための下位ルーティングテーブル30と、この下位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する下位回線選択手段20と、上位プロトコルに基く回線選択を行うための上位ルーティングテーブル50と、この上位ルーティングテーブル50に基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する上位回線選択手段40と、が備わっており、上位プロトコルか下位プロトコルかのいずれかに基くルーティング処理が実行されることになる。ここで、入力インターフェイス10に到達するデータは、図7に示すタイプのデータか、図8に示すタイプのデータか、のいずれかである。いずれのタイプのデータも、第3層には必ずIPヘッダが含まれているので、いずれのタイプのデータであっても、上位ルーティングテーブル50を参照して、上位回線選択手段40によるルーティング処理を実行することは可能である。ただ、上位回線選択手段40によるルーティング処理は、下位回線選択手段20によるルーティング処理が実行不能の場合に限り実行されることになるので、いずれのタイプのデータがきた場合にも、まず、下位ルーティングテーブル30を参照した下位回線選択手段20によるルーティング処理が優先的に試みられることになる。ここで、正しいルーティング処理が実行されなかった場合(たとえば、MPLSヘッダが含まれていなかった場合や、MPLSヘッダの内容に対応するルーティング情報が、下位ルーティングテーブル30に記載されていなかったような場合)は、あらためて、上位ルーティングテーブル50を参照した上位回線選択手段40によるルーティング処理が実行されることになる。
【0035】
下位回線選択手段20によりルーティング処理が実行された場合、すなわち、受信したデータの行く先として、出力インターフェイス71,72,73のいずれかを選択することができた場合は、送信対象となるデータに新たなMPLSヘッダを付加した第2.5層のデータパケットと、選択回線を示す情報とが、下位回線選択手段20からパケット送信手段60へと送られる。この場合、上位回線選択手段40は何ら処理を行う必要はない。パケット送信手段60は、これを選択された出力インターフェイスへと出力する。選択された出力インターフェイスでは、第2層の送信処理(ATMヘッダの付加)を行った後、これを第1層のデータとして、回線へと送り出す処理が行われる。以上の処理は、図6に示すルータR13,R14が行う転送処理に相当するものであり、ルータ内ではIPプロトコルによる処理は行われない。
【0036】
一方、下位回線選択手段20により正しいルーティング処理が実行されなかった場合、すなわち、受信したデータの行く先として、出力インターフェイス71,72,73のいずれかを選択することができなかった場合は、データは上位回線選択手段40へと送られ、ここで上位ルーティングテーブル50を参照したIPプロトコルに基くルーティング処理が実行される。すなわち、第3層の受信処理により、IPヘッダが分離され、第3層のデータ部分が抽出される。ここで、IPヘッダの内容に基いて、上位ルーティングテーブル50を参照し、出力インターフェイス71,72,73のいずれかが選択される。続いて、送信対象となるデータに新たなIPヘッダを付加することにより第3層のデータパケットを作成する処理が行われ、更に、必要に応じて(送信先のルータがMPLSプロトコルに対応している場合には)、更にMPLSヘッダを付加することにより第2.5層のデータパケットを作成する処理が行われる。こうして作成されたデータパケットと選択回線を示す情報とが、上位回線選択手段40からパケット送信手段60へ送られる。パケット送信手段60は、これを選択された出力インターフェイスへと出力する。選択された出力インターフェイスでは、第2層の送信処理(ATMヘッダの付加)を行った後、これを第1層のデータとして、回線へと送り出す処理が行われる。
【0037】
結局、パケット送信手段60は、受信したデータパケットについて、下位回線選択手段20により回線選択がなされた場合には、下位回線選択手段20により選択された回線への送信を行い、下位回線選択手段20により回線選択がなされなかった場合には、上位回線選択手段40により選択された回線への送信を行うことになる。なお、上述の実施形態では、ATMを第2層のプロトコルとして用いているが、本発明を実施する上で、第2層のプロトコルをATMに限定する必要はない。たとえば、SONETやSDHといったOSIモデルの第2層に相当するプロトコルや、MPLS層と物理層との間に介在するプロトコルであれば、どのようなプロトコルを第2層のプロトコルとして用いてもかまわない。
【0038】
このように、IPプロトコルによるルーティング処理機能とMPLSプロトコルによるルーティング処理機能を併せもったルータは、IPプロトコルに基くルーティング処理機能のみをもったルータに比べて、MPLSプロトコルを利用した高速な転送処理能力を発揮することができるが、ルータ自体の製造コストが高いため、現時点では、主として、通信業者内でのデータ転送用ルータとして利用されている。もっとも、将来はコストダウンにより、更なる普及が期待される。
【0039】
本発明の主眼は、このIPプロトコルとMPLSプロトコルのように、階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有するルータの特性を巧みに利用し、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜使い分けながら、安定した動作が可能になるパケット通信網を実現することにある。以下、その手法を詳述する。
【0040】
§3.本発明に係る通信経路切替方法
本発明では、図9に示すルータRのように、階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有するルータを利用することにより、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜切り替える運用が可能になる。そのために、本発明では、次のような方法を採る。まず、上位ルーティングテーブル50には、常時回線を利用した経路とともに、一時回線を利用した経路を示す経路情報を書き込んでおくようにする。ただし、常時回線を利用した経路の方が一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるような情報を書き込んでおくようにする。また、新たに書替手段80を設け、この書替手段80内には、下位プロトコルに基いて一時回線を利用する経路を示す一時的経路情報を用意しておく。そして、一時回線を利用した通信経路を有効にする際には、下位ルーティングテーブル30に対して、書替手段80から一時的経路情報を書き込むようにすればよい。逆に、一時回線を利用した通信経路を無効にする際には、書替手段80によって、下位ルーティングテーブル30から、一時的経路情報を消去する処理を行うようにすればよい。
【0041】
このような処理を行えば、上位ルーティングテーブル50内には、一応、常時回線と一時回線との双方が常に存在する旨の経路情報が用意されている状態になるので、一時回線を利用する際にも、何ら矛盾が生じることはない。すなわち、一時回線を通る経路を利用した場合であっても、当該経路は、上位ルーティングテーブル上に記述されている正規の経路であり、上位プロトコル(この例では、IPプロトコル)上は何ら支障は生じない。しかも、上位ルーティングテーブル50内のこのような経路情報は、常時回線を利用した経路の方が一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるような情報となっているため、上位プロトコル上でルーティング処理が実行される限りにおいては、常時回線を利用した経路が優先的に選択されることになり、一時回線を利用した経路が選択されることはない。一時回線を利用した経路が選択されるのは、下位ルーティングテーブル30内に書き込まれた一時的経路情報に基いて、下位プロトコル(この例では、MPLSプロトコル)上でルーティング処理が実行される場合に限られる。したがって、下位ルーティングテーブル30に、一時的経路情報を書き込んだり、消去したりすることにより、一時回線を利用した通信経路を有効にしたり無効にしたり切り替えることが可能になる。切替に際しては、上位ルーティングテーブル50の書替処理は必要ないので、常に安定した動作が可能になる。
【0042】
以下、このような通信経路切替方法の手順を、具体例に即して説明する。図10は、図1に示すパケット通信網において、各ルータR1〜R5内に用意されるIPルーティングテーブル(図9に示す上位ルーティングテーブル50)の具体的内容を示す図である。各ルータのアイコンについての吹き出しの中に記述されたテーブルが、個々のルータのIPルーティングテーブルである。このテーブルにおいて、「Dst 」なる欄に記載されているルータ名が、行き先となるルータ名を示しており、「Next」なる欄に記載されているインターフェイス名が、ルーティング処理の結果として選択されるべき出力インターフェイスの名を示しており、「Cost」なる欄に記載されている数字が、個々の出力インターフェイスに対応する経路の選択基準となる優先度を示している。この例では、値の小さい経路ほど優先的に選択されるような優先度が定義されており、具体的には、個々の経路のホップ数に相当する値が優先度として定義されている。
【0043】
たとえば、ルータR5に、何らかのデータパケットが到着した場合を考える。このデータパケットからIPヘッダを抽出して行き先を調べたところ、「ルータR1」が行き先として指定されていたとしよう。この場合、図10の左上の吹き出しに示されているルータR5についてのIPルーティングテーブルにおいて、「Dst 」欄から、行き先として指定された「R1」を参照すると、「Next」欄にインターフェイス「IF2」、「Cost」欄に「1」なる優先度が定義されており、ルーティング処理の結果、当該データパケットの出力先として、インターフェイスIF2(回線L1)が選択されることになる。なお、図示のルーティングテーブルの例では、行き先が「R1」となる経路は、回線L1を通る1種類の経路だけしか示されていないが、たとえば、回線L4,L5を経る別な経路(ルータR4を中継してルータR1に至る経路)が定義されていた場合には、当該別な経路についての「Next」欄は「IF1」となり、「Cost」欄の優先度は「2」となる。これは、回線L1を通る経路のホップ数が1であるのに対し、回線L4,L5を通る別な経路のホップ数が2になるためである。このようなホップ数による優先度は、値の小さい経路ほど優先的に選択されるような優先度であり、複数の経路がテーブル上に記載されている場合には、基本的には、ホップ数の小さな経路が優先的に選択されることになる。
【0044】
さて、図10に示されている6本の回線L1〜L6は、いずれも常時回線であったが、ここでは、この6本の常時回線L1〜L6に加えて、更に、2本の一時回線L7,L8を利用する運用形態を考えてみよう。この場合、全回線は、図4に示すように、回線L1〜L8の全8本ということになるが、一時回線L7は、図2に示すように、9:00〜18:00の時間帯のみ利用することができる時間貸し回線であり、一時回線L8は、図3に示すように、23:00〜6:00の時間帯のみ利用することができる時間貸し回線であるものとする。このような場合、取りあえず、各ルータR1〜R5には、図11に示すようなIPルーティングテーブルを用意しておくようにする。図11に示すルーティングテーブルは、図10に示すルーティングテーブルに、次の4つの経路情報を付加したものである。第1の経路情報は、ルータR5のルーティングテーブルに追加した「R3/IF3/999」なる情報であり、一時回線L7を通って、ルータR5からR3へ至る経路に関する情報である。第2の経路情報は、ルータR3のルーティングテーブルに追加した「R1/IF3/999」なる情報であり、一時回線L8を通って、ルータR3からR1へ至る経路に関する情報である。第3の経路情報は、ルータR3のルーティングテーブルに追加した「R5/IF2/999」なる情報であり、一時回線L7を通って、ルータR3からR5へ至る経路に関する情報である。第4の経路情報は、ルータR1のルーティングテーブルに追加した「R3/IF4/999」なる情報であり、一時回線L8を通って、ルータR1からR3へ至る経路に関する情報である。
【0045】
この4つの経路情報を追加することにより、IPプロトコル上は、一時回線L7,L8も、常時回線L1〜L6と同等の取り扱いになる。すなわち、IPルーティングテーブル上では、常時回線L1〜L6と一時回線L7,L8との双方が常に存在する旨の経路が定義された状態になる。もっとも、一時回線L7,L8については、実際には、所定の時間帯だけ存在する仮想の経路ということになる。ここで留意すべき点は、仮想の経路として定義された一時回線L7,L8についての優先度が「999」になっている点である。前述のように、この優先度は、ホップ数に相当する値であるが、一時回線に関しては、実際のホップ数とは異なる値となっている。これは、常時回線を利用した経路の方が一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるようにするための配慮である。すなわち、常時回線のみを利用した経路の優先度としては、原則どおり、当該経路のホップ数に相当する値を設定するようにするが、一時回線の利用を含む経路の優先度としては、設定可能な最大ホップ数に相当する値を設定することにより、常時回線を利用した経路の方が一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるようにしているのである。この例では、その仕様上、ホップ数の最大値が「999」であるため、一時回線L7,L8を利用した経路についての優先度は「999」に設定されている。これは、一時回線L7,L8は、IPプロトコル上、一応、仮想の経路として定義されているものの、IPプロトコルによる経路選択では、決して選択されることのない経路になっていることを意味する。
【0046】
なお、上位ルーティングテーブルに書き込む経路情報としては、必ずしもホップ数に相当する情報を優先度を示す値として用いる必要はなく、個々の経路の選択基準となる値であれば、どのような値を優先度を示す値として用いるようにしてもよい。要するに、一時回線を利用した経路の優先度が、常時回線を利用した経路の優先度よりも低く設定されるようにすれば、どのような値を優先度を示す値として用いてもかまわない。
【0047】
このように、一時回線L7,L8は、優先度「999」が設定されていることにより、IPプロトコル上では実際に選択されることはないが、名目的には、IPプロトコル上で有効に定義された経路を構成することになり、IPプロトコルを基本プロトコルとするパケット通信網上、これらの経路を利用することに何ら不整合は生じないようになる。また、6本の常時回線L1〜L6と、2本の時間貸し一時回線L7,L8と、を用いた運用形態を続ける限りは、図11に示す各IPルーティングテーブルの内容を変更する必要はない。前述したように、図11に示されている5つのルータR1〜R5は、インターネットの一部を構成するパケット通信網にすぎず、実際には、これらの各ルータには、図示されていない多数のルータが接続されていることになる。そして、これら5つのルータR1〜R5内に書き込まれたルーティングテーブルの内容は、OSPFなどのプロトコルによる動的経路制御機能により、図示されていない他のルータへと伝播することになる。このため、IPルーティングテーブルの書き替えを頻繁に行うと、パケット通信網のシステム全体を不安定にする要因になり好ましくないことは既に述べたとおりである。本発明の場合、上述のように、6本の常時回線L1〜L6と、2本の時間貸し一時回線L7,L8と、を用いた運用形態を続ける限りは、各IPルーティングテーブルの内容を変更する必要はないため、安定したシステム運用が可能になる。
【0048】
実用上は、6本の常時回線L1〜L6を利用した経路情報をIPルーティングテーブルに書き込む際には、OSPFなどの動的経路制御機能を利用して、ルータ間通信によって収集されたデータに基いて自動的に作成された情報を書き込むようにし、2本の一時回線L7,L8を利用した経路情報をIPルーティングテーブルに書き込む際には、オペレータ自身が手作業で作成した情報を書き込むようにすればよい。一時回線L7,L8は、時間帯によっては物理的に存在しない回線になるため、これらの経路情報をOSPFなどのプロトコルで自動収集すると支障が生じるおそれがあるが、オペレータ自身が手作業で書き込むようにすれば、そのような支障は生じない。具体的な方法としては、静的経路情報を書き込むようにする方法や、一時回線の隣接ルータ間にてIPトンネルを作る方法がある。
【0049】
本発明の特徴は、回線の時間帯による切替は、下位ルーティングテーブル、すなわち、各ルータ内のLFIBの書き替え(書き込みと消去)によって行う点である。ここでは、まず、図1に示すように、常時回線のみを利用した運用を行う時間帯、すなわち、6:00〜9:00および18:00〜23:00の時間帯に、各ルータ内に用意されるLFIBの内容を示しておく。図12は、この時間帯における各ルータR1〜R5に書き込まれているLFIBの内容を示す図である。ここでは、説明の便宜上、常時回線のみを経由する経路情報の表示は省略する。図12に示す各LFIBの内容は、いずれも「………」となっているが、これはルータR1〜R5の相互間のルーティング処理上、一時回線に関連するMPLSプロトコルにおける経路情報が全くないことを示している。なお、通常、常時回線を経由する経路についてのLFIBの内容は、オペレータが一部を手作業で設定すると、必要に応じてIPルーティングテーブルを利用した情報交換が行われ、すべての設定が完了する。
【0050】
次に、一時回線L7を利用した運用を行う時間帯、すなわち、9:00〜18:00の時間帯に、各ルータ内に用意されるLFIBの経路情報を図13に示す。ここで、この経路情報の各項目を簡単に説明しておくと、「In Label」なる欄に記載されている数字および「Out Label 」なる欄に記載されている数字は、MPLSプロトコルにおいて付加されるラベル(MPLSヘッダ)であり、「Prefix」なる欄に記載されているルータ名が、行き先となるルータ名を示しており、「IF」なる欄に記載されているインターフェイス名が、ルーティング処理の結果として選択されるべき出力インターフェイスの名を示している。図12に示す経路情報との相違は、ルータR5のLFIBおよびルータR3のLFIBにそれぞれ2行ずつ、一時回線L7に関連した経路情報(LSP:Label Switched Path)が付加されている点である。
【0051】
まず、ルータR5のLFIBの1行目に付加された「−(ラベル無しを示す)/3/R3/IF3」なる経路情報は、行き先が「R3」であるようなラベル無しのデータパケットが来たら、「3」なるラベルを付加した上で、出力インターフェイスIF3から出力せよ、なる意味である。また、ルータR5のLFIBの2行目に付加された「8/−(ラベル無しを示す)/R5/IF0」なる経路情報は、行き先が「R5」(自分自身)であるようなラベル「8」のデータパケットが来たら、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から出力せよ、なる意味である。ここで、出力インターフェイスIF0は、図示されていないが、ルータR5自身に接続されたホスト(端末装置)へデータを送信するためのインターフェイスである。
【0052】
一方、ルータR3のLFIBの1行目に付加された「−(ラベル無しを示す)/8/R5/IF2」なる経路情報は、行き先が「R5」であるようなラベル無しのデータパケットが来たら、「8」なるラベルを付加した上で、出力インターフェイスIF2から出力せよ、なる意味である。また、ルータR3のLFIBの2行目に付加された「3/−(ラベル無しを示す)/R3/IF0」なる経路情報は、行き先が「R3」(自分自身)であるようなラベル「3」のデータパケットが来たら、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から出力せよ、なる意味である。ここで、出力インターフェイスIF0は、図示されていないが、ルータR3自身に接続されたホスト(端末装置)へデータを送信するためのインターフェイスである。
【0053】
いま、ルータR5に対して、図示されていない別なルータから何らかのデータパケットが到着し、そのMPLSヘッダを調べたところ、ラベル(MPLSヘッダ)は無しであったとしよう。この場合、IPヘッダに含まれている行き先ルータの情報を参照する処理が行われる。参照の結果、行き先がルータR3であったとすると、図13に示すLFIB(R5)の1行目に記載された経路情報に基いて、「3」なるラベル(MPLSヘッダ)を付加して出力インターフェイスIF3から出力するルーティング処理が実行されることになる。このようなルーティング処理は、IPプロトコルではなく、MPLSプロトコルに基くものである。前述したとおり、図9に示すルータRでは、下位回線選択手段20においてMPLSプロトコルによるルーティング処理が実施されると、上位回線選択手段40におけるIPプロトコルによるルーティング処理は実行されず、MPLSプロトコルによるルーティング処理によって選択された出力インターフェイスが選択されることになる。したがって、上述の例の場合も、IPプロトコルによるルーティング処理では選択されることがない一時回線L7が、MPLSプロトコルによって選択され、隣接ルータR3への伝送が行われることになる。
【0054】
さて、こうして、ルータR5から一時回線L7を介して送信されたデータパケットは、ルータR3で受信され、ラベル(MPLSヘッダ)が調べられる。すると、ラベル「3」が付加されているので、図13に示すLFIB(R3)の2行目に記載された経路情報に基いて、当該データパケットを、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から、自分自身に接続されたホストへと送信する処理が行われる。この場合、ホストとなる端末装置は、MPLSプロトコルには対応していないので、出力インターフェイスIF0からの出力は、IPプロトコルに基づいて行われることになる。
【0055】
逆に、ルータR3に対して、図示されていない別なルータから何らかのデータパケットが到着し、そのMPLSヘッダを調べたところ、ラベルは無しであるが、IPヘッダ内の行き先がルータR5であったとすると、図13に示すLFIB(R3)の1行目に記載された経路情報に基いて、「8」なるラベルを付加して出力インターフェイスIF2から出力するルーティング処理が実行されることになる。こうして、ルータR3から一時回線L7を介して送信されたデータパケットは、ルータR5で受信され、MPLSヘッダが調べられる。すると、ラベル「8」が付加されているから、図13に示すLFIB(R5)の2行目に記載された経路情報に基いて、当該データパケットを、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から、自分自身に接続されたホストへと送信する処理が行われる。
【0056】
続いて、一時回線L8を利用した運用を行う時間帯、すなわち、23:00〜6:00の時間帯に、各ルータ内に用意されるLFIBの経路情報を図14に示す。図12に示す経路情報との相違は、ルータR1のLFIBおよびルータR3のLFIBにそれぞれ2行ずつ、一時回線L8に関連した経路情報が付加されている点である。この例では、ルータR1に対して、図示されていない別なルータから何らかのデータパケットが到着し、そのMPLSヘッダを調べたところ、ラベルは無しであるが、IPヘッダ内の行き先がルータR3であったとすると、図14に示すLFIB(R1)の1行目に記載された経路情報に基いて、「4」なるラベルを付加して出力インターフェイスIF3から出力するルーティング処理が実行される。こうして、一時回線L8を通して伝送されたデータパケットは、ルータR3で受信され、MPLSヘッダが調べられる。すると、ラベル「4」が付加されているので、図14に示すLFIB(R3)の2行目に記載された経路情報に基いて、当該データパケットを、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から、自分自身に接続されたホストへと送信する処理が行われる。
【0057】
逆に、ルータR3に対して、図示されていない別なルータから何らかのデータパケットが到着し、そのMPLSヘッダを調べたところ、ラベルは無しであるが、IPヘッダ内の行き先がルータR1であったとすると、図14に示すLFIB(R3)の1行目に記載された経路情報に基いて、「7」なるラベルを付加して出力インターフェイスIF3から出力するルーティング処理が実行されることになる。こうして、ルータR3から一時回線L8を介して送信されたデータパケットは、ルータR1で受信され、MPLSヘッダが調べられる。すると、ラベル「7」が付加されているので、図14に示すLFIB(R1)の2行目に記載された経路情報に基いて、当該データパケットを、ラベルを付加しないで、出力インターフェイスIF0から、自分自身に接続されたホストへと送信する処理が行われる。
【0058】
以上、最終的な目的地が、ルータR1〜R5のうちのいずれかになる例について、LFIBを参照したルーティング処理を説明したが、ルータR1〜R5からなるパケット通信網を中継して、図示されていないルータから、図示されていない別なルータへと伝送されるべきデータパケットについても、ほぼ同様のルーティング処理により、一時回線を利用した転送が可能である。たとえば、ルータR1のLFIBに、「2/9/R9/IF9」なる経路情報が書き込まれており、ルータR3から一時回線L8経由で送られてきたデータパケットのラベルが「2」であった場合、ラベルを「2」から「9」に貼り替え、図示されていない出力インターフェイスIF9から、図示されていない外部のルータR9へ向けてデータパケットの出力が行われることになる。
【0059】
結局、各ルータ内のLFIBの内容は、基本的には、図12に示すような状態にしておき、毎日、9:00になったら、図13に示すような内容に書き替え(一時回線L7に関する経路情報を付加する)、18:00になったら、再び図12の状態に戻し(一時回線L7に関する経路情報を消去する)、23:00になったら、図14に示すような内容に書き替え(一時回線L8に関する経路情報を付加する)、6:00になったら、再び図12の状態に戻す(一時回線L8に関する経路情報を消去する)、という処理を実行すれば、所期の目的は達成されることになる。このような一時回線を利用した通信経路を有効または無効に切り替える際のLFIB(下位ルーティングテーブル)に対する一時的経路情報の書き込みまたは消去動作は、書替手段80にタイマー機能をもたせておき、所定の時刻ごとに自動的に行うようにすればよい。図9に示す例では、書替手段80は、ルータRの外部に設けられた構成要素となっているが、もちろん、書替手段80をルータRの内部構成要素にしてもかまわない。
【0060】
IPプロトコルは、インターネットなどのパケット通信網の全体にわたるグローバルなプロトコルであるため、IPルーティングテーブルを頻繁に書き替えることは、システムの安定性を損なう要因になり好ましくない。これに対して、MPLSプロトコルは、通常、インターネットなどのパケット通信網の一部で、特定の通信業者によって利用されるプロトコルであり、LFIBの内容を他のルータへと伝播させるような運用が行われたとしても、その範位は限定的なので、LFIBを頻繁に書き替えても重大な支障は生じない。また、MPLSプロトコルは、IPプロトコルの下位プロトコルであるが、IPプロトコル上、一時回線は常時回線と同様に、常に正規に定義された回線となっているため、一時回線用のインターフェイスは常に起動状態を維持し、下位プロトコルであるMPLSプロトコルによって、一時回線用のインターフェイスを起動し、これを利用する処理を行っても、何ら階層上の不整合は生じることがない。
【0061】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、ルータ間を定常的に接続する常時回線と、ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を適宜使い分けながら、安定した動作が可能になるパケット通信網を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】5つのルータR1〜R5と、6本の常時回線L1〜L6と、によって構成される単純なIPパケット通信網を示すブロック図である。
【図2】図1に示すIPパケット通信網に、更に、一時回線L7を加えた状態を示すブロック図である。
【図3】図1に示すIPパケット通信網に、更に、一時回線L8を加えた状態を示すブロック図である。
【図4】図1に示すIPパケット通信網に、更に、一時回線L7,L8の双方を加えた状態を示すブロック図である。
【図5】OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルに定義された全7層の通信プロトコルを示す図である。
【図6】一部にラベル・スイッチング技術を採り入れたIPパケット通信網におけるIPパケットの伝送手順を示す図である。
【図7】第3層、第2層、第1層で作成されるデータパケットの構成を示す図である。
【図8】第3層、第2.5層、第2層、第1層で作成されるデータパケットの構成を示す図である。
【図9】IPプロトコルとMPLSプロトコルとの双方に対応したルータの構成を示すブロック図である。
【図10】常時回線のみについてのIPルーティングテーブルを示す図である。
【図11】常時回線および一時回線についてのIPルーティングテーブルを示す図である。
【図12】常時回線のみを利用する場合のLFIBの内容を示す図である。
【図13】常時回線と一時回線L7を利用する場合のLFIBの内容を示す図である。
【図14】常時回線と一時回線L8を利用する場合のLFIBの内容を示す図である。
【符号の説明】
10…入力インターフェイス
20…下位回線選択手段
30…下位ルーティングテーブル(LFIB)
40…上位回線選択手段
50…上位ルーティングテーブル(IPルーティングテーブル)
60…パケット送信手段
71〜73…出力インターフェイス
80…書替手段
A…回線
IF1〜IF4…インターフェイス
L1〜L6…常時回線
L7,L8…一時回線
R,R1〜R5,R11〜R15…ルータ
T10,T20…端末装置
X,Y,Z…回線

Claims (9)

  1. 階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有する複数のルータと、所定ルータ間を定常的に接続する常時回線と、所定ルータ間を一時的に接続する一時回線と、を有するパケット通信網であって、
    前記各ルータは、上位プロトコルに基く回線選択を行うための上位ルーティングテーブルと、この上位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する上位回線選択手段と、下位プロトコルに基く回線選択を行うための下位ルーティングテーブルと、この下位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する下位回線選択手段と、受信したデータパケットについて、前記下位回線選択手段により回線選択がなされた場合には前記下位回線選択手段により選択された回線への送信を行い、前記下位回線選択手段により回線選択がなされなかった場合には前記上位回線選択手段により選択された回線への送信を行うパケット送信手段と、を有し、
    前記上位ルーティングテーブルには、前記常時回線を利用した経路とともに前記一時回線を利用した経路を示す経路情報が書き込まれており、かつ、前記常時回線を利用した経路の方が前記一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるような情報が書き込まれており、
    前記下位プロトコルに基いて前記一時回線を利用する経路を示す一時的経路情報を保持し、前記一時回線を利用した通信経路を有効にする際には、前記下位ルーティングテーブルに、前記一時的経路情報を書き込み、前記一時回線を利用した通信経路を無効にする際には、前記下位ルーティングテーブルから、前記一時的経路情報を消去する処理を行う書替手段を更に有することを特徴とする通信経路切替機能付きパケット通信網。
  2. 請求項1に記載のパケット通信網において、
    書替手段が、タイマー機能を有し、下位ルーティングテーブルに対する一時的経路情報の書き込みまたは消去動作を、所定の時刻ごとに自動的に行うことを特徴とする通信経路切替機能付きパケット通信網。
  3. 請求項1または2に記載のパケット通信網において、
    上位プロトコルとしてIPプロトコルが用いられ、下位プロトコルとしてMPLSプロトコルが用いられていることを特徴とする通信経路切替機能付きパケット通信網。
  4. 階層構造をもった2つの通信プロトコルに応じた回線選択機能を有する複数のルータと、所定ルータ間を定常的に接続する常時回線と、所定ルータ間を一時的に接続する一時回線と、によって構成されるパケット通信網における通信経路切替方法であって、
    前記各ルータには、上位プロトコルに基く回線選択を行うための上位ルーティングテーブルと、この上位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する上位回線選択手段と、下位プロトコルに基く回線選択を行うための下位ルーティングテーブルと、この下位ルーティングテーブルに基いて、受信したデータパケットを送信すべき回線を選択する下位回線選択手段と、受信したデータパケットについて、前記下位回線選択手段により回線選択がなされた場合には前記下位回線選択手段により選択された回線への送信を行い、前記下位回線選択手段により回線選択がなされなかった場合には前記上位回線選択手段により選択された回線への送信を行うパケット送信手段と、を用意し、
    前記上位ルーティングテーブルには、前記常時回線を利用した経路とともに前記一時回線を利用した経路を示す経路情報を書き込んでおき、かつ、前記常時回線を利用した経路の方が前記一時回線を利用した経路よりも優先的に選択されるような情報を書き込んでおき、
    前記一時回線を利用した通信経路を有効にするときは、前記下位ルーティングテーブルに、前記一時回線を利用した経路を示す一時的経路情報を書き込み、前記一時回線を利用した通信経路を無効にするときは、前記下位ルーティングテーブルから、前記一時的経路情報を消去することを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
  5. 請求項4に記載の通信経路切替方法において、
    上位ルーティングテーブルに対して、常時回線を利用した経路情報を書き込む際には、ルータ間通信によって収集されたデータに基いて自動的に作成された情報を書き込むようにし、一時回線を利用した経路情報を書き込む際には、オペレータ自身が作成した情報を書き込むようにすることを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
  6. 請求項4または5に記載の通信経路切替方法において、
    一時回線を利用した通信経路を有効または無効に切り替える際の下位ルーティングテーブルに対する一時的経路情報の書き込みまたは消去動作を、タイマー機能をもった書替手段によって、所定の時刻ごとに自動的に行うようにすることを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
  7. 請求項4〜6に記載の通信経路切替方法において、
    上位ルーティングテーブルに書き込む経路情報として、個々の経路の選択基準となる優先度を示す情報を含ませるようにし、一時回線を利用した経路の優先度を、常時回線を利用した経路の優先度よりも低く設定するようにしたことを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
  8. 請求項7に記載の通信経路切替方法において、
    値の小さい経路ほど優先的に選択されるような優先度を定義し、常時回線のみを利用した経路の優先度としては、当該経路のホップ数に相当する値を設定し、一時回線の利用を含む経路の優先度としては、設定可能な最大ホップ数に相当する値を設定することを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
  9. 請求項4〜8のいずれかに記載の通信経路切替方法において、
    上位プロトコルとしてIPプロトコルを用い、下位プロトコルとしてMPLSプロトコルを用いることを特徴とするパケット通信網における通信経路切替方法。
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