JP2004030934A - スパッタリングターゲット及びそれを利用した導電膜の製造方法及びその製造方法で成膜した透明導電膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属のターゲット12を、金属酸化物のターゲット10上に配置し、単一のスパッタリングターゲット14を構成させる。このスパッタリングターゲット14を用いて、スパッタリング法によって非晶質透明導電膜を成膜する。その結果、金属の酸素引き抜き効果によって、キャリヤーを増やすことができ、非晶質導電膜の低抵抗化を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)や有機EL(Electroluminescence)表示装置等に用いられる透明導電膜を成膜するスパッタリング法の改良に関する。より詳細に言えば、スパッタリング法で用いられるターゲットの改良に関する。さらに、そのスパッタリング法を用いて成膜した透明導電膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、LCDや有機ELの技術進歩が進み、高い表示性能と、高い省エネルギー性を実現する製品が数多く提供されている。これらLCDや有機ELは、小型で薄く作ることができるので、特に携帯電話やPDA(personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、ラップトップパソコン(ノート型コンピュータ)、テレビ受像器等の表示機として広く使用されている。これらのLCDや有機ELには、各画素に信号を送るために透明導電膜が用いられている。この透明導電膜は、インジウム・スズ酸化物(以下、ITO(Indium Tin Oxide)と呼ぶ)膜が利用される場合が多い。
【0003】
しかしながら、このITO膜のエッチングは、いわゆる強酸で行う必要があり、弱酸、特に有機酸でエッチングすることは困難であった。
【0004】
また、ITO膜の生成は、スパッタリング(Sputtering)法で行うが、このスパッタリング成膜中に、ターゲット表面にノジュールと呼ばれる異物が発生する場合があることが知られている。このノジュールは、しばしばスパッタリングの異常放電の原因となる。また、このノジュールは、スパッタリング容器内でしばしば飛散して製品に付着し、製品を汚染してしまったり、その後の工程に悪影響を及ぼす場合があることが知られている。その結果、製品歩留まりが低下してしまうこともあった。
【0005】
これらの問題点を解決するために、種々の技術が提案されてきた。
たとえば、酸化亜鉛を添加した非晶質透明導電膜により問題を解決する方法が種々提案されている。たとえば、特開平6−236711号や、特開平7−325313号、特許第2695605号等にそのような技術が記載されている。
【0006】
また、酸化ガリウムを添加した非晶質透明導電膜により問題を解決する方法も種々提案されている。たとえば、特開平 4−272612号、特開平7−182924号、特開平9−50711号等にそのような技術が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの技術で得られる膜は非晶質であるため、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)で見られるようないわゆるドーピング効果を期待することはできない。その結果、低抵抗な膜を得ることは困難であった。
【0008】
非晶質透明導電膜においては、キャリヤー発生の源は酸素欠損(酸素空孔)である。したがって、酸素欠損の量によってキャリヤーの量も変化する。たとえば、成膜時に酸素量を減少させた場合には、キャリヤーの発生量を増すことができるのである。しかしながら、このようにして酸素量を減らしてキャリヤーの発生量を増やすと、一部還元が生じることによってインジウムの亜酸化体(InO)が生成され、この亜酸化体によって膜全体が着色してしまう問題が生じてしまう。
【0009】
その結果、従来の技術においては、透明導電膜のキャリヤーの発生量には限界があった。言い換えれば、従来のスパッタリング法による製造方法では、非晶質透明導電膜の低抵抗化には限界があったのである。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、その目的は、以下の2個の事項を満足するスパッタリングターゲットを得、このスパッタリングターゲットを用いて低抵抗の非晶質導電膜を提供することである。
【0011】
・スパッタリングターゲット表面にノジュールが発生しないこと
・スパッタリング成膜によって得られた非晶質導電膜の抵抗値が小さなこと
【課題を解決するための手段】
A スパッタリングターゲットに関する発明
上記課題を解決するために、本発明は、金属酸化物の部位と、金属の部位からなるスパッタリングターゲットである。
【0012】
これは、ターゲットの表面のある部位が金属であり、表面の他の部位が金属酸化物からなることを意味する。
たとえば、金属酸化物のターゲット10上に金属ターゲット12を1個以上載置し、一体として単一のスパッタリングターゲット14として利用する態様が考えられる。この様子が図1に示されている。
また、逆に、金属ターゲット上に金属酸化物ターゲットを載置し、一体として単一のスパッタリングターゲットとして利用する態様でもよい。
【0013】
このようなスパッタリングターゲット14を使用して成膜した導電膜の組成比率(金属酸化物と金属の組成比率)は、利用したスパッタリングターゲット14における金属の部位の表面積と金属酸化物の部位の表面積との比に概ね比例する。したがって、成膜したい導電膜の組成比率と同様の表面積比となるように、金属の部位と、金属酸化物の部位の表面積とを調整してスパッタリングターゲット14を作成することが好ましい。図1に示したような態様を採用する場合には、金属酸化物ターゲット10上に配置する金属ターゲット12の個数を調整することによって、表面積比を調整することができる。
【0014】
また、金属酸化物ターゲット10と、金属ターゲット12とを交互に並べて組み合わせたものをスパッタリングターゲット14として利用することも好ましい。この様子が図2に示されている。図2は、交互に並べられた状態を上から見た図である。この図2のような状態を入れ子状態と呼ぶ。また、図2で示した例では円形の部材を並べる例を示したが、四角形や六角形の部材を並べてもよい。
【0015】
金属酸化物の部位と、金属の部位の表面積の比率は、スパッタリングターゲットの全表面積に対する金属の部位の表面積の比率で表現することができる。この比率は20%以下(金属の部位の表面積の比率)である。好ましくは、10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0016】
この比率(全表面積に対する金属の部位の表面積の比率)が20%を超える場合には、金属の部位の表面積が増えすぎてしまい、金属による着色等により導電膜の透明性が低下するおそれがあるからである。
一方、この比率が0.1%以下では、効果が非常に小さくなってしまうことが判明している。
【0017】
また、本発明は、当該金属酸化物が、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛のいずれか1種以上の金属酸化物よりなることを特徴とするスパッタリングターゲットである。
【0018】
さらに、本発明は、当該金属酸化物が、酸化スズと酸化インジウムからなることを特徴とする。
ここで、酸化インジウムに対する酸化スズのドーピング量としては、2から20wt%である。そして、ドーピング量は、好ましくは3から15wt%、より好ましくは5から12wt%である。ドーピング量は、20wt%より多くなると、添加効果がかえって薄れるおそれがあり、その一方、2wt%以下では、添加効果が小さいおそれがある。
【0019】
さらに、本発明は、当該金属酸化物が、酸化インジウムと酸化亜鉛からなる六方晶相層状化合物(In203・(ZnO)m ここでmは2から20の整数)を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットである。
【0020】
ここで、酸化亜鉛の導入量は2から30wt%である。好ましくは、導入量は3から25wt%であり、より好ましくは5から15wt%である。この導入量が30wt%以上では、抵抗が増加するおそれがあり、一方、2wt%以下では、成膜時に導電膜中に結晶が生じてしまい非晶質透明導電膜を得ることが困難になることが考えられる。
【0021】
さらに、六方晶相層状化合物「In203・(ZnO)m」のmは2から20の整数であるが、好ましくは、mは3から8、より好ましくは3から7の間の整数がよい。
【0022】
また、本発明は、上で述べた各スパッタリングターゲットにおいて、前記金属が、酸化インジウムより酸化されやすい金属からなることを特徴とするスパッタリングターゲットである。本発明において特徴的な事項は、スパッタリングターゲットの金属が、酸化インジウムより酸化されやすい材料からなることである。
【0023】
酸化インジウムより酸化されにくい金属では、酸化インジウムから酸素の引き抜き効果がなく、本発明の効果(低抵抗化)が希薄になる。一方、 酸化インジウムより酸化されやすい金属では、酸化インジウムから酸素の引き抜き効果が十分に得られ、本発明の効果(低抵抗化)が十分に得られると考えられる。
【0024】
酸化されやすさの目安として、仕事関数を用いることができる。すなわち、本発明は、前記金属が、仕事関数が4.6eV(酸化インジウムの仕事関数)未満である金属であることが特徴とする。
【0025】
仕事関数が4.6eV以上の金属では、酸化インジウムから酸素の引き抜き効果が小さいと考えられるからである。ここで、仕事関数は、たとえば、紫外光電子分光法によって測定することができる。具体的には、理研科学製のAC−1装置等を用いて測定することができる。
仕事関数が4.6eV(酸化インジウムの仕事関数)未満の金属の例を挙げれば、Zn、Zr、Yb、Y、W、V、Ti、Ta、Sn、Sc、Nb、Hf、Ga、Ge、Biなどである。これらの中でも好ましくは、Zn(亜鉛)及びその合金が挙げられる。この合金としては、Zn5Ce、ZnNb、Zn3V、Zn3Ti、Zn2Yb、ZnY、Zn2Zr、などが挙げられよう。
【0026】
B 導電膜の製造方法及びその製造方法で成膜した導電膜に関する発明
本発明は、上記課題を解決するために、上で述べた各発明のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングにより非晶質透明導電膜を成膜する方法であって、スパッタリング時の真空度を1×10−4Pa未満にすることを特徴とする非晶質透明導電膜の製造方法である。
また、本発明は、この製造方法によって成膜した非晶質透明導電膜である。
【0027】
上で述べたように、本発明では、金属と金属酸化物とからなるスパッタリングターゲットを用いている結果、低抵抗の非晶質透明導電膜を成膜することができる。なお、スパッタリングの具体的な方式としては、マグネトロンスパッタリング、DCマグネトロンスパッタリング 、RFマグネトロンスパッタリング 、DC−RFマグネトロンスパッタリングなどが挙げられよう。
ここで、スパッタリング中の真空度を1×10−4Pa未満にすることが好ましい。装置内の水分を除去し、水の影響を低減できるため。
【0028】
さらに、本発明は、上で述べた製造方法で得られた非晶質導電膜を熱処理することにより結晶化させることを特徴とする導電膜の製造方法である。
また、本発明は、この製造方法によって成膜される結晶性導電膜である。
【0029】
スパッタリングによって得られた非晶質透明導電膜を、熱処理により、結晶化させることによって、キャリアーを発生させ、一層低抵抗化が図ることができる。このように結晶化を行うことによって、既に説明した酸素欠損によるキャリヤー発生に加えて、結晶化によるキャリヤー発生も生じさせることができ、より一層低抵抗な透明導電膜が得られる。
【0030】
この熱処理は、好ましくは250℃〜150℃、より好ましくは230℃〜180℃の温度で処理することが好ましい。もちろん、基板の耐熱性以下の温度に抑えるべきことは言うまでもない。
また、ガラス基板の場合には、400℃以下に抑えるべきであり、プラスチック基板の場合もその耐熱温度以下にすることが必要であることは言うまでもない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施例群を図1〜図4に基づき説明する。
【0032】
A.非晶質導電膜
[実施例1から実施例4]
酸化インジウム・酸化亜鉛からなる六方晶相層状化合物(In2O3(ZnO)m:mは3から5までの整数)を含む直径4インチΦ、厚さ5mm(t)のターゲット(ZnO含有量:7.5wt%)10のエロージョン部分に直径3mmΦの開孔部を5カ所設けて、金属亜鉛のワイヤー(直径3mmΦ、長さ5mm)12をその開孔部に挿入し、スパッタリングターゲット14として用いる。このスパッタリングターゲット14の様子が図1の説明図に示されている。アルゴン99%、酸素1%の雰囲気中で、スパッタリングを行った。基板温度を室温、150℃、200℃、250℃で変化させて成膜した各透明導電膜の特性を調べた。その結果が図3の表に示されている(実施例1〜実施例4)。
【0033】
なお、エロージョン部分とは、エロージョン領域とも呼ばれ、スパッタリング現象によってターゲット構成元素がはじき出され、ターゲットが消耗する領域の範囲を意味する。
【0034】
実施例1は基板温度が室温の例である。実施例1で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は10.8wt%であった。比抵抗は250μΩ・cmであり、透明性が89%(波長:550nm)であった。
【0035】
実施例2は基板温度が150℃で成膜した例である。実施例2で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は10.7wt%であった。比抵抗は240μΩ・cmであり、透明性が90%(波長:550nm)であった。
【0036】
実施例3は基板温度が200℃で成膜した例である。実施例3で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は10.5wt%であった。比抵抗は220μΩ・cmであり、透明性が90%(波長:550nm)であった。
【0037】
実施例4は基板温度が250℃で成膜した例である。実施例4で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は10.4wt%であった。比抵抗は140μΩ・cmであり、透明性が90%(波長:550nm)であった。
【0038】
[実施例5]
酸化インジウム・酸化スズからなるITOの直径4インチΦ、厚さ5mm(t)のターゲット(SnO2含有量:10wt%)10のエロージョン部分に、直径3mmΦの開孔部を5カ所設け、金属亜鉛のワイヤー(太さ3mmΦ、長さ5mm)12をターゲット10の開孔部に挿入した。これを、スパッタリングターゲット14として利用する。このスパッタリングターゲット14の様子も図1の説明図で示されている様子と同様である。このスパッタリングターゲット14を用いて、アルゴン99%、酸素1%の雰囲気中で、スパッタリングを行った。基板温度を室温にして、成膜した透明導電膜の特性を調べた。調べた結果を実施例1〜実施例4と同様に図3の表に示す。なお、この実施例5は、金属酸化物が、酸数スズと酸化インジウムからなるスパッタリングターゲットの一例である。
【0039】
図3の表に示すように、実施例5で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は3.2wt%であった。比抵抗は210μΩ・cmであり、透明性が90%(波長:550nm)であった。
【0040】
[実施例6及び実施例7]
実施例6は、実施例5のターゲット10の組成を、酸化インジウム・酸化スズから、酸化インジウム単独の組成に変えた例であり、実施例7はターゲット10を酸化スズ単独の組成に変えた例である。それぞれ成膜した透明導電膜の特性を調べ、その結果を図3の表に示す。
【0041】
図3の表に示すように、実施例6で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は3.4wt%であった。比抵抗は260μΩ・cmであり、透明性が90%(波長:550nm)であった。
【0042】
実施例7で成膜した導電膜の酸化亜鉛含有量は3.1wt%であった。比抵抗は280μΩ・cmであり、透明性が91%(波長:550nm)であった。
【0043】
なお、図4の表に示すように、実施例1から実施例7までのすべての例で作成した導電膜は非晶質である。この結晶性に関してはXRD(X−ray diffraction:X線解析装置)を用いて測定を行った。
【0044】
以下、本発明の実施例と比較するために従来のスパッタリングターゲットを用いてスパッタ法で導電膜を成膜した例(比較例1〜5)について紹介し、上記実施例と比較を行う。
【0045】
[比較例1から比較例4]
酸化インジウム・酸化亜鉛からなる六方晶相層状化合物(In2O3(ZnO)m:mは3から5までの整数)を含む4インチΦ、5mm(t)のスパッタリングターゲット(ZnO含有量:10.8wt%)を、アルゴン99%、酸素1%の雰囲気中で、スパッタリングを行った。基板温度を室温、150℃、200℃、250℃に変化させて透明導電膜を成膜した(比較例1〜比較例4)。得られた各透明導電膜の特性を調べ、その結果を図4の表に示す。
【0046】
図4の表に示すように、比較例1は、基板温度が室温で成膜した例であり、成膜した導電膜中の酸化亜鉛含有量は10.6%であった。比抵抗は、330μΩ・cmであり、透明性は89%(波長:550nm)であった。
【0047】
比較例2は、基板温度が150℃で成膜した例であり、成膜した導電膜中の酸化亜鉛含有量は10.5%であった。比抵抗は、330μΩ・cmであり、透明性は89%(波長:550nm)であった。
【0048】
比較例3は、基板温度が200℃で成膜した例であり、成膜した導電膜中の酸化亜鉛含有量は10.5%であった。比抵抗は、320μΩ・cmであり、透明性は90%(波長:550nm)であった。
【0049】
比較例4は、基板温度が250℃で成膜した例であり、成膜した導電膜中の酸化亜鉛含有量は10.4%であった。比抵抗は、320μΩ・cmであり、透明性は90%(波長:550nm)であった。
【0050】
[比較例5]
酸化インジウム・酸化スズからなるITOの4インチΦ、5mm(t)のスパッタリングターゲット(SnO2含有量:10wt%)で、スパッタリングを行った。基板温度を室温にして、成膜した透明導電膜の特性を、比較例1〜4と同様に図4の表に示した。
【0051】
この比較例5は、基板温度が室温で成膜した例であり、成膜した導電膜中の酸化亜鉛含有量は0%であった。比抵抗は、450μΩ・cmであり、透明性は89%(波長:550nm)であった。
なお、比較例1〜4は、いずれも非晶質の導電膜であるが、比較例5は微結晶となった。
【0052】
以上述べたように、比較例1〜5と、本発明の実施例1〜7とを比較した場合、実施例1〜7は、比較例1〜5に比べて比抵抗が小さく、透明性も高いことが理解されよう。
【0053】
以上述べたように、本実施の形態によれば、金属亜鉛を同一ターゲット内に配置することにより、スパッタリング成膜時に薄膜中の酸化インジウムの酸素と反応して酸素欠損を発生させ、非晶質透明導電膜のキャリヤー量が増加することにより低抵抗化が可能となった。
また、金属亜鉛の酸素引き抜き効果により、酸化インジウムは見かけ上還元されるが、引き抜かれた酸素は、元の酸化インジウム近傍に存在するため、亜酸化体までの還元は免れる。これにより、酸素欠損によるキャリヤー発生量を増大することと共に、亜酸化体の発生を抑えることができ、非晶質透明導電膜の低抵抗化が可能となった。
【0054】
B.結晶性導電膜
上記A.の実施の形態では、非晶質の導電膜について説明したが、ここで成膜した非晶質の導電膜を熱処理することによって結晶化させ、一層低抵抗化を図ることができる。
【0055】
熱処理により、結晶化させることにより、結晶化によってキャリヤーを発生させ一層低抵抗化を図ることができる。この熱処理の際の温度は、好ましくは250℃〜150℃、より好ましくは230℃〜180℃である。
また、ガラス基板では400℃以下の温度で熱処理を行うことが好ましく、プラスチック基板では、そのプラスチックの耐熱温度以下の温度で熱処理を行うことが好ましい。
【0056】
実施例5で得られた非晶質膜を230℃で1%H2ガスを含むN2ガス中で1時間処理した。得られた膜はX線解析により結晶質であることがわかった。また、抵抗は、190μΩ・cmと低抵抗であった。
【0057】
このように本実施の形態によれば、熱処理による結晶化によって、キャリヤーを発生させ、一層低抵抗化を図ることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、単一のスパッタリングターゲットに、金属の部位と、金属酸化物の部位とを存在させ、このターゲットを用いてスパッタリング法により成膜すれば、金属の酸素引き抜き効果によって、金属酸化物は見かけ上還元され、酸素欠損が生じる。その結果、キャリヤーの量が増加することになり、導電膜の低抵抗化が可能となる。
さらに、本発明によれば、熱処理によって、結晶化を行っているので、一層キャリヤーの増大を図ることができ、導電膜をより低抵抗化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いるスパッタリングターゲットの様子を示す説明図である。
【図2】本発明で用いるスパッタリングターゲットの他の様子を示す説明図である。
【図3】実施例1から実施例7までの導電性薄膜の特性を表す表である。
【図4】比較例1から比較例5までの導電性薄膜の特性を表す表である。
【符号の説明】
10 金属酸化物のターゲット
12 金属のターゲット
14 スパッタリングターゲット
20 (金属酸化物の)ターゲット
22 金属亜鉛のワイヤー
24 スパッタリングターゲット
Claims (12)
- 金属酸化物の部位と、金属の部位からなるスパッタリングターゲット。
- 該金属の部位の表面積は、該金属酸化物の部位の表面積と該金属の部位の表面積との和である全表面積に対して20%〜0.1%の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
- 前記金属酸化物が、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛のいずれか1種以上の金属酸化物よりなることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
- 前記金属酸化物が、酸化スズと酸化インジウムからなることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
- 前記金属酸化物が、酸化インジウムと酸化亜鉛からなる六方晶相層状化合物(In203・(ZnO)m)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。ここでmは2から20の整数である。
- 前記金属が、酸化インジウムより酸化されやすい金属からなることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
- 請求項6に記載の金属が、仕事関数が4.6eV未満である金属であることを特徴とする請求項6に記載のスパッタリングターゲット。
- 前記金属の部位が、亜鉛及び/または亜鉛合金からなることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
- 請求項1から8のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングにより導電膜を成膜する方法であって、
スパッタリング時の真空度を1×10−4Pa未満にすることを特徴とする非晶質導電膜の製造方法。 - 請求項9に記載の導電膜の製造方法によって成膜される非晶質導電膜。
- 請求項10に記載の非晶質導電膜を熱処理することにより結晶化させることを特徴とする導電膜の製造方法。
- 請求項11に記載の導電膜の製造方法によって成膜される結晶性導電膜。
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