JP2004029222A - 感光性平版印刷版の製版方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成し得、且つ感光層成分が溶け込んでも、一定の性能を発揮することができ、画像形成層成分に起因する現像カスの発生を抑えることができる、平版印刷版の製版方法を提供する。
【解決手段】赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する感光性平版印刷版を露光後、アルカリ現像処理液で現像処理する感光性平版印刷版の製版方法であって、多価アルコール型アルキレンオキシド付加物および炭酸塩を含有し、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度に調整したアルカリ現像処理液で現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。
【解決手段】赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する感光性平版印刷版を露光後、アルカリ現像処理液で現像処理する感光性平版印刷版の製版方法であって、多価アルコール型アルキレンオキシド付加物および炭酸塩を含有し、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度に調整したアルカリ現像処理液で現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ現像処理液を用いて、コンピュータ等のデジタル信号に基づき、赤外線レーザー走査により直接製版できる、いわゆるダイレクトデジタル平版印刷版原版からの平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザーの発展はめざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー、半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、このデジタルデータから直接製版するシステムの露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
レーザー書き込みに適する画像記録材料として、例えば特開平7−285275号公報にはクレゾール樹脂のような結着剤と、光を吸収して熱を発生する物質と、キノンジアジドのような熱分解性であって、且つ分解前の状態では前記結着剤の溶解性を実質的に低下させうる化合物とを含有するポジ型の画像記録材料が提案されている。
これは、赤外線照射により露光部分において前記光を吸収して熱を発生する物質が発熱し、露光部分をアルカリ可溶性にするもの(ヒートモード型)であるが、支持体であるアルミニウムに吸熱されてしまうため熱効率が低く、現像工程におけるアルカリ現像処理液に対する溶解性は満足のいくものではなかった。このため、現像液のアルカリ濃度を上げ、露光部分の溶解性を確保してきた。
【0003】
ところが、ヒートモード型の平版印刷版原版は、上記のような高濃度のアルカリ条件下では画像部のアルカリ現像処理液に対する耐溶解性が低く、画像記録材料表面に僅かに傷があるだけで溶解され、画像部に欠陥を生ずるなどの問題があった。特に、アルカリ水溶液に対して可溶性の高い高分子化合物を使用するポジ型の平版印刷版原版において、その傾向はより顕著であった。
従って、非画像部に残膜が生じないようにアルカリ現像液のアルカリ濃度を上げるには限度があり、形成した画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成するのは困難であった。特に、ドット部や細線などを含む精細な画像において、その高鮮鋭化、再現性の向上が要求されている。そのため、現像液に各種界面活性剤を添加することが検討されており、画像の高鮮鋭化に関してある程度の向上が得られている。しかしながら、現像液中への感光層成分の溶け込みによって、その性能が減少することが問題となっている。
【0004】
また、近年の赤外線レーザー露光型の画像記録材料の改良に伴い、従来の赤外線吸収染料と比較してアルカリ現像処理液には溶解し難い、例えばシアニン染料といった赤外線吸収染料が使用される傾向があり、この画像記録材料をアルカリ現像処理液で現像した場合に、現像処理液中に赤外線吸収染料の不溶物が排出される傾向がある。これがバインダーポリマーの成分や水中の無機物などとの相互作用により更なる不溶物を形成して、これらの不溶物(現像カス)がプレート上に付着して画像に支障をきたしたり、現像処理浴中で沈殿・析出し、処理浴のメンテナンスに負担を生じるといった不都合を起こす。このような状況下、非画像部上に現像カス付着物による残膜があるまま、例えばバーニング処理を施すと、残膜が炭化して印刷時の汚れとなる不都合もある。
よって、赤外線吸収染料などの画像形成層成分に起因する不溶物による不都合を回避し、形成した画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成すること、特に、ドット部や細線などを含む精細な画像において、その高鮮鋭化、再現性の向上が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における諸問題を解決し、感光性平版印刷版の現像にあたって非画像部に残膜を生じないようにし、且つ画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成し得、感光層成分が溶け込んでも、一定の性能を発揮することができる、感光性平版印刷版用の製版方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物と炭酸塩を特定濃度以上含有したアルカリ現像処理液を用いることにより、高鮮鋭で鮮明な画像を形成し得、感光層成分が溶け込んでも、一定の性能を発揮することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する感光性平版印刷版を露光後、アルカリ現像処理液で現像処理する感光性平版印刷版の製版方法であって、多価アルコール型アルキレンオキシド付加物および炭酸塩を含有し、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度に調整したアルカリ現像処理液で現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法に向けられている。
【0007】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の平版印刷版の製版方法に使用する現像処理液について説明する。
現像処理に用いる現像処理液(以下、単に「現像液」ともいう。)はアルカリ性の水溶液であって、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択することができる。
アルカリ水溶液としては、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基とからなる現像液が挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものが好ましい。
前記ケイ酸アルカリとしては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸アンモニウムなどが挙げられる。
ケイ酸アルカリは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
上記アルカリ水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
前記アルカリ水溶液の中でも、前記酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。
前記SiO2/M2Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版原版の支持体として汎用のアルミニウム板などをエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0009】
また、現像液中のケイ酸アルカリの濃度としては、アルカリ水溶液の質量に対して1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%未満であると現像性、処理能力が低下することがあり、10質量%を超えると沈澱や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0010】
非還元糖と塩基とからなる現像液において、非還元糖とは遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いることができる。
トレハロース型少糖類としては、例えばサッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えばアルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシットなどが挙げられる。さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)なども好適に挙げることができる。
【0011】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は単独でも、二種以上を組み合わせてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0012】
前記ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖には、塩基としてアルカリ剤を従来公知の物の中から適宜選択して組み合わせることができる。
該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0013】
さらにモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
これらのアルカリ剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0014】
本発明で使用する現像処理液は、上述のようなアルカリ水溶液中に多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含有する。
多価アルコール型アルキレンオキシド付加物としては、具体的には下記式(I)にて示されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】
【0016】
〔式(I)中、mは1〜10の整数を表し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は下記式(II)
【0017】
【化2】
【0018】
(式(II)中、R4はアルキレン基を表し、nは1〜100の整数を表す。)を表す。mが2以上のとき、2以上あるR3は同一でも異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3のうち少なくとも1つは上記式(II)にて示される基を表す。〕
【0019】
式(I)中、mは好ましくは1〜4の整数を表す。式(II)中、R4は好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基が2種以上からなっていてもよく、例えばエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピルオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレン基などの組み合わせのランダム又はブロック状に連なったものなどでもよい。
式(II)中、nは1〜100の整数を表し、式(I)の化合物においてアルキレンオキシドの付加モル数の総数は4〜100の範囲が一般的であり、さらに6〜80が適当であり、さらに10〜50が好ましく、最も好ましくは12〜40である。
【0020】
式(I)にて示される化合物の具体例として、糖アルコール(例えばD,L−トレイット、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシットなど)のアルキレンオキシド付加化合物及びグリセリンのアルキレンオキシド付加化合物などがある。
さらに、糖アルコールを縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン及びヘキサグリセリンなどのポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシド付加としては、特にエチレンオキシド(EO)付加、エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)付加及びプロピレンオキシド(PO)付加が挙げられ、プロピレンオキシド(PO)は水溶解性が許容できる範囲で存在するのが望ましい。中でも、ソルビットEO付加物、ソルビットPO付加物、キシリットEO付加物、キシリットPO付加物、トレイットEO付加物、トレイットPO付加物、グリセリンEO付加物、グリセリンPO付加物、ジグリセリンEO付加物、トリグリセリンEO付加物などが挙げられる。
これらの化合物は市場において一般に入手することができ、市販品として例えば商品名ソルビトールEO(30)(日光ケミカルズ(株)製)などがある。
【0021】
本発明の上記多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の分子量としては、50〜10,000が好ましく、100〜5,000がより好ましく、500〜3,500が最も好ましい。
前記分子量が50未満であると画像部に対する溶解抑止力を得ることができないことがあり、10,000を超えると非画像部の現像性が低下することがある。
【0022】
上記の多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の添加量としては、アルカリ現像処理液中に0.001〜10質量%が適当であり、0.05〜5質量%が好ましい。さらに0.1〜3質量%が最も好ましい。この添加量が0.001質量%未満であると、形成した画像部の可溶性を十分に抑制できないことがあり、一方10質量%を超えると溶解抑止力が強すぎて現像感度が低下することがある。
上記化合物をアルカリ現像処理液中に含有させることにより、アルカリ水溶液に可溶性の高い高分子化合物を使用した場合や、アルカリ濃度を高めた場合でも、画像部が溶解して画像欠陥を招くことなく、エッジ調の高鮮鋭で鮮明な画像を形成することが可能となり、ドット部や細線などを含む精細な画像を高鮮鋭に再現することができる。
【0023】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液には、上記多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の他に、炭酸塩を所定濃度以上含有していることを特徴とする。画像部に対する溶解抑止力を有する多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含有するアルカリ現像処理液に、更に炭酸塩を含有させることで吸着性を向上させ、画像部の溶解抑止効果を更に向上させることができる。
【0024】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液に含まれる炭酸塩には炭酸水素塩も含まれる。
炭酸塩としては、炭酸(H2CO3)の水素の内、全てまたは1つが金属あるいはアンモニウムイオンによって置き換えられて生ずる塩であれば特に限定されない。具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウムカリウム等が挙げられるが、アルカリ水溶液への溶解性の観点から、特に炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウムカリウムが好ましく用いられる。
【0025】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液には、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度となるように調整して含有する。画像部の現像処理後の濃度低下が低いという観点で、炭酸塩の含有量は好ましくは0.2〜50倍モル濃度、さらに好ましくは0.5〜10倍モル濃度である。
【0026】
アルカリ現像処理液は、上記のとおり、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基を含む現像液を用いるが、そのカチオン成分として従来よりLi+、Na+、K+、NH4 +が用いられ、中でも、イオン半径の小さいカチオンを多く含有する系では、画像形成層への浸透性が高く現像性に優れる一方、画像部まで溶解して画像欠陥を生ずる。従って、アルカリ濃度を上げるには、ある程度の限度があり、画像部に欠陥を生ずることなく、且つ非画像部に画像形成層(残膜)が残存しないように完全に処理するためには、微妙な液性条件の設定が要求された。
しかし、前記カチオン成分として、そのイオン半径の大きいカチオンを用いることにより、画像形成層中への現像液の浸透性を抑制することができ、アルカリ濃度、即ち、現像性を低下させることなく、画像部の溶解抑止効果をも向上させることができる。
前記カチオン成分としては、上記アルカリ金属カチオン及びアンモニウムイオンのほか、他のカチオンも用いることができる。
【0027】
アルカリ現像処理液には、さらに現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を加えることができる。
例えば特開昭58−75152号公報に記載のNaCl、KCl、KBrなどの中性塩、特開昭58−190952号公報に記載のEDTA、NTAなどのキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載の[Co(NH3)6]Cl3、CoCl2・6H2Oなどの錯体、特開昭50−51324号公報に記載のアルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、n−テトラデシル−N,N−ジヒドロキシエチルベタインなどのアニオン又は両性界面活性剤、米国特許第4,374,920号明細書に記載のテトラメチルデシンジオールなどの非イオン性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載のp−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド4級化合物などのカチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体などの両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載の亜硫酸ソーダなどの還元性無機塩、特開昭58−59444号公報に記載の塩化リチウムなどの無機リチウム化合物、特開昭59−75255号公報に記載の有機Si、Tiなどを含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報に記載の有機ホウ素化合物、EP101010号明細書に記載のテトラアルキルアンモニウムオキサイドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
アルカリ現像処理液の使用態様は特に限定されるものではない。
近年では、特に製版・印刷業界において、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間などに応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0029】
この場合、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液を補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中に現像液を交換することなく多量の画像形成材料を処理できる。本発明の製版方法において上記のアルカリ現像処理液を使用する際にも、この補充方式を採用することが好ましい態様である。その場合の補充液として、上に説明したアルカリ現像処理液のアルカリ強度を現像液よりも高くした水溶液を用いることができる。
【0030】
前記現像液及び現像液補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて上記以外の種々の界面活性剤や有機溶剤などを添加することもできる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系又は両性界面活性剤から選択でき、有機溶剤としてはベンジルアルコールなどが好ましい。また、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、又はポリプロピレングリコールもしくはその誘導体などの添加も好ましい。
さらに必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩などの無機塩系還元剤、有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0031】
本発明では、上記現像方式の他に、実質的に未使用の現像処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式の現像に適用することも可能である。
上記のアルカリ現像処理液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水や界面活性剤などを含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理がなされる。この後処理には、これら公知の処理液を種々組み合わせて行うことができる。
【0032】
本発明の製版方法について概略すると次のとおりである。平版印刷版原版として、支持体上に少なくとも赤外線吸収剤を含有する画像形成層を有する平版印刷版原版を用い、該平版印刷版原版にデジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射して所望の画像様に露光すると、前記赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、次の過程を通じて画像が形成される。
すなわち、ポジ型の平版印刷版原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱してアルカリ水に可溶性となり、本発明のアルカリ現像処理液を用いた現像処理により、露光部のみが除去されて所望の画像が形成され、ネガ型の平版印刷版原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱して酸を発生すると、この酸により共存する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部のみがアルカリ水に不溶性となって像を形成する一方、非露光部では本発明のアルカリ現像処理液を用いた現像処理により除去されて、所望の画像が形成される。
【0033】
次に本発明の製版方法に使用する平版印刷版原版について説明する。
平版印刷版原版は、支持体上に画像形成層を有し、さらに必要に応じて他の層を有してなり、画像形成層は(A)赤外線吸収剤を有し、さらに(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物、(B2)アルカリ可溶性樹脂、(C)該(B1)及び(B2)のアルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物及び樹脂のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、(D)環状酸無水物などを含有して構成される。また、ネガ型の平版印刷版原版の場合には、露光部が硬化して画像部となるため、画像形成層にさらに(E)熱により酸を発生する化合物と、(F)酸により架橋する架橋剤とを含有して構成される。以下に、各構成成分について簡単に説明する。
【0034】
−(A)赤外線吸収剤−
赤外線吸収剤(以下、「(A)「成分」ということがある。)は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。
本発明において使用可能な赤外線吸収剤としては、波長700nm以上の領域に、好ましくは波長750nm〜1200nmの波長領域に赤外線を高効率に吸収しうる染料又は顔料が好ましく、波長760nm〜1200nmの領域に吸収極大を有する染料又は顔料がより好ましい。
【0035】
前記染料としては、市販の染料又は文献(例えば、「染料便覧」、有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載の公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0036】
中でも、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載のシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載のメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載のナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載のスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料等が好適に挙げられる。
【0037】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好ましく、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリウム塩等、特公平5−13514号、同5−19702号に記載のピリリウム化合物、市販品としては、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight IV−62A(エポリン社製)等も好ましい。
【0038】
さらに、米国特許第4,756,993号明細書に記載の式(I)、(II)で表される近赤外線吸収染料も好適なものとして挙げることができる。
上記のうち、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体がより好ましい。
【0039】
前記顔料としては、市販の顔料又はカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編)、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載の顔料が挙げられ、たとえば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他ポリマー結合色素が挙げられる。
【0040】
具体的には、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシナニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0041】
前記顔料は、表面処理をせずに用いてもよいし、表面処理を施した後に用いてもよい。
表面処理の方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。これらの表面処理の方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0042】
前記顔料の粒径としては、0.01μm〜10μm が好ましく、0.05μm〜1μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが最も好ましい。
前記粒径が、0.01μm未満であると、感光層塗布液等の分散液を調製したときの分散物の安定性が劣化することがあり、10μmを超えると、画像形成層の均一性が悪化することがある。
【0043】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に汎用の分散機等、公知の分散技術から適宜選択することができる。
前記分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。その詳細については、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0044】
前記染料又は顔料の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10質量%が最も好ましく、顔料の場合には、3.1〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、画像形成層の均一性が低下し、その耐久性が劣化することがある。
前記染料又は顔料は、他の成分と同一層に添加してもよいし、別の層を設けてそこに添加してもよい。別の層とする場合は、後述の(C)成分を含有する層に隣接する層に添加することが好ましい。
また、染料又は顔料と、アルカリ可溶性樹脂、アルカリ可溶性高分子化合物とは同一の層に含有することが好ましいが、別の層にそれぞれ含有させても構わない。
【0045】
−(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下「(B1)成分」ということもある。)−
(B1)成分の高分子化合物としては、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物であれば何れでもよいが、下記で定義される高分子化合物(b1−1)、(b1−2)が好ましい。
(b1−1)下記一般式(III)で表される重合性モノマー単位を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下、高分子化合物(b1−1)ともいう)
【0046】
【化3】
【0047】
(式中、Xmは単結合又は2価の連結基を、Yは水素又はカルボキシル基を、Zは水素、アルキル基又はカルボキシル基を表す。)
【0048】
Xmで表される2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアリーレン基、−C(=O)−Y−、−O−C(=O)−Y−、−Ar−Y−が挙げられる。Yは2価の連結基を表し、Arはアリーレン基を表す。Y、Arは置換基を有していてもよい。
Yが表す2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基、アリーレン基、イミド基、アルコキシ基が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ジメチルアミノ基、エチレンオキサイド基、ビニル基、o−カルボキシベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
一般式(III)で表される重合性モノマー単位を構成するモノマーとして、カルボキシル基と、重合可能な不飽和基を分子内にそれぞれ1以上有する重合性モノマーがある。
そのような重合性モノマーの具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸類を挙げることができる。
【0050】
上記カルボキシル基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマーとしては、例えば下記(1)〜(11)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)2−ヒドロキエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0051】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリるアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
【0052】
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0053】
また、下記一般式(IV)のモノマーも好ましく用いられる。
【0054】
【化4】
【0055】
式中、XはO、S、又はN−R12を表す。R10〜R12は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。m、n、oは、各々独立に、2から5の整数を表し、CmH2m、CnH2n、CoH2oは、各々、直鎖でも分岐構造でもよい。p、q、rは各々独立に、0から3,000の整数を表し、p+q+r≧2である。
【0056】
R10〜R12におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜12のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。p、q、rは好ましくは0から500の整数を表し、更に好ましくは0から100の整数を表す。
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの例を以下に挙げるが、この限りではない。
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位は、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名プルロニック(Pluronic(旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス(Carbowax(グリコ・プロダクス))、トリトン(Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製)、およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド又は無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0060】
市販品のモノマーとしては、日本油脂株式会社製の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどが挙げられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどが挙げられる。
【0061】
高分子化合物(b1−1)におけるカルボキシル基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する重合性モノマー成分を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
共重合の方法としては、従来知られているグラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合法などを用いることができる。
【0062】
(b1−2)カルボキシル基を有する下記一般式(V)、(VI)または(VII)で表されるジオール化合物と下記一般式(X)で表されるジイソシアネート化合物との反応生成物を基本骨格とするカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下、高分子化合物(b1−2)ともいう。)
【0063】
【化7】
【0064】
式中、R13は水素原子、置換基(例えばアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよいアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ基を示し、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜8個のアルキル基もしくは炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜15個のアリール基を示す。
R14、R15、R16はそれぞれ同一でも相異していてもよい、単結合、置換基(例えばアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ及びハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を示す。好ましくは炭素原子数1〜20のアルキレン基、炭素原子数6〜15のアリーレン基、更に好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキレン基を示す。
また、必要に応じ、R14、R15、R16中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。なお、R13、R14、R15、R16のうちの2又は3個で環を構成してもよい。
Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を示し、好ましくは炭素原子数6〜15個の芳香族基を示す。
【0065】
OCN−R18−NCO (X)
式中、R18は置換基(例えばアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を示す。必要に応じ、R18中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル、ウレタン、アミド、ウレイド基、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。
【0066】
一般式(V)、(VI)又は(VII)で示されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
即ち、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミドなどが挙げられる。
【0067】
該(b1−2)のカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、下記一般式(VIII)又は(IX)で表されるジオールを組み合わせた反応生成物であると好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
式中、R17はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を示し、nは2以上の整数を示す。R17における炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などが挙げられる。
以下に、上記一般式(VIII)又は(IX)で表されるジオールの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(VIII)の具体例
HO−(−CH2CH2O−)3−H
HO−(−CH2CH2O−)4−H
HO−(−CH2CH2O−)5−H
HO−(−CH2CH2O−)6−H
HO−(−CH2CH2O−)7−H
HO−(−CH2CH2O−)8−H
HO−(−CH2CH2O−)10−H
HO−(−CH2CH2O−)12−H
ポリエチレングリコール(平均分子量1000)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000)
ポリエチレングリコール(平均分子量4000)
HO−(−CH2CH(CH3)O−)3−H
HO−(−CH2CH(CH3)O−)4−H
HO−(−CH2CH(CH3)O−)6−H
ポリプロピレングリコール(平均分子量1000)
ポリプロピレングリコール(平均分子量2000)
ポリプロピレングリコール(平均分子量4000)
【0071】
(IX)の具体例
HO−(−CH2CH2CH2O−)3−H
HO−(−CH2CH2CH2O−)4−H
HO−(−CH2CH2CH2O−)8−H
HO−(−CH2CH2CH(CH3)O−)12−H
【0072】
一般式(X)で示されるジイソシアネート化合物として、具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどの如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの如き脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの如き脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体などの如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0073】
高分子化合物(b1−2)の合成に使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は好ましくは0.8:1〜1.2〜1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0074】
(B1)成分として、上記の高分子化合物(b1−1)及び(b1−2)から1種単独を使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
(B1)成分中に含有されるカルボキシル基を有する繰り返し単位の含有量は、該(B1)成分の各単量体の総量に基づいて2モル%以上であり、好ましくは2〜70モル%であり、より好ましくは5〜60モル%の範囲である。
(B1)成分の好ましい重量平均分子量Mwは、3000〜300,000が好ましく、6,000〜100,000がより好ましい。
【0075】
さらに、(B1)成分の好ましい添加量は、画像形成層の全固形分質量に対して0.005〜80質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜50質量%の範囲であり、更に好ましくは1〜20質量%の範囲である。
(B1)成分の添加量が0.005質量%未満では効果が不充分であり、ま
た80質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行なわれなくなったり、感光材料としての性能(例えば感度)に悪影響を及ぼす。
【0076】
−(B2)アルカリ可溶性樹脂−
使用可能なアルカリ可溶性樹脂(以下、「(B2)成分」ということがある。)としては、下記(1)〜(3)の酸性基を主鎖及び/又は側鎖の構造中に有するアルカリ水可溶性の高分子化合物を用いることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
前記(1)〜(3)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
以下に、その具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0077】
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−又はm−/p−混合のいずれでもよい。)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂又はピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有するモノマーを重合させた高分子化合物を挙げることもできる。
【0078】
側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは、該重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール基を側鎖に有するモノマーとしては、フェノール基を側鎖に有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0079】
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に挙げることができる。
【0080】
前記フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の重量平均分子量Mwとしては、5.0×102〜2.0×105のものが、数平均分子量Mnとしては、2.0×102〜1.0×105のものが、画像形成性の点で好ましい。
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、単独での使用のみならず、2種類以上を組合わせて使用してもよい。組合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
これらの縮重合体も、重量平均分子量が5.0×102〜2.0×105のもの、数平均分子量が2.0×102〜1.0×105のものが好ましい。
【0081】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体、即ち、単独重合体又は前記モノマー構成単位に他の重合性モノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−SO2−NH−と、重合可能な不飽和結合とを、それぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーが挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を有する低分子化合物が好ましい。
前記低分子化合物としては、例えば、下記一般式(a)〜(e)で表される化合物が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0082】
【化9】
【0083】
式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子又はNR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R2、R5、R9、R12、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2はそれぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0084】
中でもm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0085】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体を挙げることができる。
活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーを単独重合、或いは、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を挙げることができる。
【0086】
【化10】
【0087】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に挙げることができる。
さらに、上記のほか、前記フェノール基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちのいずれか2種類以上を重合させた高分子化合物、或いは、これら2種以上の重合性モノマーにさらに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物も好適に挙げられる。
【0088】
フェノール基を有する重合性モノマー(M1)に、スルホンアミド基を有する重合性モノマー(M2)及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマー(M3)を共重合させる場合の配合比(M1:M2及び/又はM3;質量比)としては、50:50〜5:95が好ましく、40:60〜10:90がより好ましい。
【0089】
アルカリ可溶性樹脂が、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位と、他の重合性モノマーの構成単位とから構成される共重合体である場合、該共重合体中に、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位を10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むことがより好ましい。
前記モノマー構成単位の含有量が、10モル%未満であると、十分なアルカリ可溶性が得られずに、現像ラチチュードが狭くなることがある。
前記共重合体の合成方法としては、従来より公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0090】
前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマーを構成単位とする重合性モノマーと共重合させる他の重合性モノマーとしては、例えば、下記(a)〜(1)に挙げるモノマーを挙げることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0091】
(a)2−ヒドロキエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(b)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(c)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0092】
(d)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド、又はメタクリルアミド。
(e)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(f)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(g)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
【0093】
(h)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(i)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(j)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(k)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(l)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0094】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、単独重合体、共重合体に関わらず、膜強度の点で、重量平均分子量Mwが2,000以上、数平均分子量Mnが500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(Mw/Mn)が1.1〜10のものがより好ましい。
また、前記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−アルデヒド樹脂等である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であって、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0095】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が最も好ましい。
前記含有量が、30質量%未満であると、画像形成層の耐久性が低下することがあり、99質量%を越えると、感度、耐久性が低下することがある。
また、前記アルカリ可溶性樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0096】
−(C)前記カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子化合物及び前記アルカリ可溶性樹脂と相溶させて該高分子化合物及び該樹脂のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物−この(C)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、前記(B1)及び(B2)成分との相溶性が良好であり、均一な画像形成層用塗布液を形成しうるとともに、該(B1)及び(B2)成分との相互作用により、該(B1)及び(B2)成分のアルカリ可溶性を抑制する機能(溶解性抑制作用)を有する化合物を指す。
【0097】
また、加熱により(B1)及び(B2)成分に対する前記溶解性抑制作用は消滅するが、赤外線吸収剤自体が加熱により分解する化合物である場合には、分解に十分なエネルギーが、レーザー出力や照射時間等の諸条件により付与されないと、(B1)及び(B2)成分の溶解性抑制作用を十分に低下させることができず、感度が低下するおそれがある。このため、(C)成分の熱分解温度としては、150℃以上が好ましい。
【0098】
(C)成分としては、前記(B1)及び(B2)成分との相互作用を考慮して、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の、前記アルカリ可溶性高分子化合物と相互作用しうる化合物の中から適宜選択することができる。
特に、例えば、前記(B2)成分として、ノボラック樹脂を単独で用いる場合には、後述する「(A+C)成分」が好ましく、以下に例示するシアニン染料Aなどがより好ましい。(A+C)成分については後述する。
【0099】
(C)成分と前記(B1)成分及び(B2)成分との配合比(C/(B1+B2)質量比)としては、一般に1/99〜25/75が好ましい。
前記混合比が、1/99未満、即ち、(C)成分が少なすぎると、アルカリ可溶性樹脂やアルカリ可溶性高分子化合物との相互作用が不十分となり、アルカリ可溶性を低下させることができず、良好に画像形成することができないことがあり、25/75を超える、即ち、(C)成分が多すぎると、相互作用が過大となり、感度が著しく低下することがある。
【0100】
−(A+C)成分−
前記(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する化合物((A+C)成分)を用いることができる。
前記(A+C)成分は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(A)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの波長領域に吸収域を持つと共に、さらに(B1)及び(B2)成分のアルカリ可溶性高分子化合物と良好に相溶しうる塩基性染料である。
(A+C)成分は、その分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(C)成分の特性)ため、前記高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ可溶性を抑制することができる。
前記(A+C)成分としては、例えば、下記一般式(Z)で表される化合物を挙げることができる。
【0101】
【化11】
【0102】
前記一般式(Z)中、R21〜R24は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基を表し、R21とR22、R23とR24はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
R21〜R24としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0103】
式中、R25〜R30は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、前記R25〜R30としては、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0104】
式中、R31〜R33は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R32は、前記R31又はR33と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR32同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R31〜R33としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R32同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは1〜8の整数を表し、中でも1〜3が好ましい。
【0105】
式中、R34〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R34は、R35と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR34同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R34〜R35としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R34同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは、1〜8の整数を表し、中でも、1〜3が好ましい。
【0106】
式中、X−は、アニオンを表し、例えば、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−O−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0107】
前記一般式(Z)で表される化合物は、一般にシアニン染料と呼ばれる化合物であり、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明においては、これらに限られるものではない。
【0108】
【化12】
【0109】
上述の(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する前記(A+C)成分を用いる場合、該(A+C)成分と前記(B1)、(B2)成分との使用量比〔(A+C)/((B1)+(B2))〕としては、質量比で1/99〜30/70が好ましく、1/99〜25/75がより好ましい。
【0110】
−(D)環状酸無水物−
画像形成層中には、さらに環状酸無水物を使用してもよい。該環状酸無水物は、その構造内にカルボン酸無水物のカルボニル基と共役する結合を有し、そのカルボニル基の安定性を増すことで分解速度を制御し、保存経時において適当な速度で分解して酸を発生する。そのため、保存経時での現像性劣化を抑え、現像性を長期間安定に維持しうる。
前記環状酸無水物としては、下記一般式(XI)又は(XII)で表される化合物が挙げられる。
【0111】
【化13】
【0112】
一般式(XI)中、R41、R42はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステルを表す。なお、R41、R42は互いに連結して環構造を形成してもよい。
前記R41、R42としては、例えば水素原子、又は炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基などが好適に挙げられ、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
R41、R42が互いに連結して環構造を形成する場合、その環状基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセン基、シクロペンテン基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。
【0113】
一般式(XII)中、R43、R44、R45、R46は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、塩素などのハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステル基などを表す。
前記R43、R44、R45、R46としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数6〜12のアリール基などが好適に挙げられ、具体的にはメチル基、ビニル基、フェニル基、アリル基などが挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシ基などが挙げられる。
【0114】
環状酸無水物として、例えば無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、3−ヒドロキシ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、3−フェニル無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、無水コハク酸、などが好適に挙げられる。
環状酸無水物の含有量としては、画像形成層の全固形分含量に対して0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。前記含有量が0.5質量%未満であると現像性の維持効果が不十分となることがあり、20質量%を超えると画像を形成できないことがある。
【0115】
以下は、ネガ型平版印刷版の記録層を構成する成分である。
−(E)熱により酸を発生する化合物−
画像形成材料がネガ型の場合、加熱時に酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)を併用する。この酸発生剤は、100℃以上に加熱することにより分解して酸を発生する化合物である。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等の pKa が2以下の強酸であることが好ましい。
前記酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩を好適に挙げることができる。具体的には、米国特許4,708,925号や特開平7−20629号に記載の化合物を挙げることができ、中でも、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。
【0116】
前記ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号に記載のジアゾニウム塩化合物、米国特許第2,632,703号明細書に記載のジアゾニウム化合物、特開平1−102456号、特開平1−102457号の各公報に記載のジアゾ樹脂も好適に挙げることができる。
また、米国特許第5,135,838号、米国特許第5,200,544号に記載のベンジルスルホナート類、特開平2−100054号、特開平2−100055号、特開平8−9444号に記載の活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。その他特開平7−271029号に記載の、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
前記酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が最も好ましい。
【0117】
−(F)酸により架橋する架橋剤−
平版印刷版原版がネガ型である場合、酸により架橋する架橋剤(以下、単に「架橋剤」という場合がある。)を併用する。
前記架橋剤としては、以下のものを挙げることができる。
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
さらに、特開平11−254850号公報に記載のものやフェノール誘導体等も挙げることができる。
【0118】
前記架橋剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記フェノール誘導体を架橋剤として使用する場合、該フェノール誘導体の添加量としては、画像形成材料の全固形分質量に対し5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
上記の各種化合物の詳細については、特開2000−267265号公報に記載されている。
【0119】
−その他の成分−
アルカリ現像処理液を適用するのに好適な平版印刷版原版の画像形成層には、必要に応じて、さらに種々の添加剤を添加することができる。
例えば、感度を向上させる目的で、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類等の公知の添加剤を併用することもできる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0120】
前記有機酸類としては、、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
スルホニル化合物類としては、例えばビスヒドロキシフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジフェニルジスルホンなどが挙げられる。
前記のフェノール類、有機酸類又はスルホニル化合物類の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が最も好ましい。
【0121】
また、現像条件に対する処理性の安定性を拡げる目的で、特開昭62−251740号公報、特開平3−208514号公報等に記載の非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号公報等に記載の両性界面活性剤、EP950517号公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤としては、例えばソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば商品名:アモーゲンK、第1工業(株)製)などが挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として(株)チッソ社製、DBE−224、DBE−621、DBE−712、DBP−732、DBP−534、独Tego社製、Tego Glide 100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
前記非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤の使用量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0122】
前記画像形成層には、露光による加熱後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤や画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
前記焼き出し剤としては、例えば、露光による加熱によって酸を発生する化合物と塩を形成しうる有機染料との組合せが挙げられる。
具体的には、特開昭50−36209号、特開昭53−8128号の各公報に記載の、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料との組合せ、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号及び特開昭63−58440号の各公報に記載の、トリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組合せ、が挙げられる。
前記トリハロメチル化合物として、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物があり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
前記画像着色剤としては、例えば、前記塩形成性有機染料以外に、他の染料を用いることができ、例えば、油溶性染料、塩基性染料が好適に挙げられる。
【0123】
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載の染料は、特に好ましい。
前記各種染料の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0124】
また、必要に応じて、その塗膜に柔軟性等を付与する目的で、可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、例えばブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマーなどが挙げられる。
【0125】
さらに必要に応じて、以下の種々添加剤を添加することができる。
例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性で、未分解状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる化合物を併用することができる。該化合物の添加は、画像部の現像液への溶解阻止能の向上を図る点で好ましい。
前記オニウム塩としては、例えばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩などが挙げられる。
中でも、例えばS.I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974), T.S.Bal et al, Polymer, 21, 423 (1980), 特開昭5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468 (1984), C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J. V. Crivelloet et al. Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p.31 (1988)、欧州特許第104,143号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、
【0126】
J. V. Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al, J.Org. Chem., 43, 3055 (1978)、W. R, Watt et al, J. Polymer Sci., PolymerChem. Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer bull., 14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromolecules, 14(5), 1141 (1981), J.V.Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17. 2877 (1979), 欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、
【0127】
J. V. Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307 (1977), J.V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p.478, Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩などが挙げられる。
上記のうち、ジアゾニウム塩が好ましく、中でも、特開平5−158230号公報に記載のものがより好ましい。
【0128】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサチリル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸などを挙げることができる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸などのアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0129】
前記o−キノンジアジド化合物としては、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものが挙げられ、種々の構造の化合物を用いることができる。
前記o−キノンジアジドは、熱分解により結着剤の溶解抑制能を喪失し、且つo−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化する、両効果により平版印刷版原版の溶解性を助ける。
【0130】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用可能であるが、中でも、種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物又は芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好ましい。
また、特開昭43−28403号公報に記載の、ベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又は、米国特許第3,046,120号、同第3,188,210号に記載のベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好ましい。
【0131】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも好ましい。
その他、例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854、890号などに記載のものも有用である。
これらの化合物は単独でも、数種を組み合わせて混合物として使用してもよい。
前記オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン酸エステル等の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。
【0132】
その他、画像のディスクリミネーションの強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することが好ましい。添加量としては画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6117913号明細書に開示されているような長鎖アルキルカルボン酸のエステルなどを挙げることができる。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、画像形成層の溶解性を調節する目的で種々の溶解抑制剤を含んでもよい。溶解抑制剤としては、特開平11−119418号公報に記載されるようなジスルホン化合物又はスルホン化合物が好適に用いられ、具体例として4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホンを用いることが好ましい。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.05〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0133】
本発明の製版方法を適用し得る平版印刷版原版の具体例として、特願2000−378507号に開示されるような画像形成層を2層構造のポジ型感熱層とした平版印刷版原版も挙げられる。即ちこのポジ型感熱層は積層構造を有し、表面(露光面)に近い位置に設けられている感熱層と、支持体に近い側に設けられているアルカリ可溶性樹脂、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する下層とを有することを特徴とする。該感熱層と下層の双方に或いは一方に、上述してきた(A)赤外線吸収剤、(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物、(B2)アルカリ可溶性樹脂、(C)該(B1)及び(B2)のアルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、その他の成分などを含有させることができる。
下層で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、アクリル樹脂が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするアルカリ現像液に対して下層の溶解性を良好に保持し得るため、現像時の画像形成の観点から好ましい。さらにこのアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましい。また、感熱層で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点などからフェノール性水酸基を有する樹脂が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
赤外線吸収剤は、感熱層のみならず、下層にも添加することができる。下層に赤外線吸収剤を添加することで下層も感熱層として機能させることができる。下層に赤外線吸収剤を添加する場合には、上部の感熱層におけるのと互いに同じ物を用いてもよく、また異なる物を用いてもよい。
その他の添加剤は下層のみに含有させてもよいし、感熱層のみに含有させてもよく、更に両方の層に含有させてもよい。
【0134】
平版印刷版原版の画像形成層(上記2層構造も含む)は、上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成できる。溶媒として、例えばエチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、α−ブチロラクトン、トルエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記溶媒は単独でも2種以上を混合してもよい。
【0135】
画像形成層を2層構造とする場合、感熱層に用いるアルカリ可溶性樹脂と下層に用いるアルカリ可溶性樹脂に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましい。つまり、下層を塗布した後、それに隣接して上層である感熱層を塗布する際、最上層の塗布溶剤として下層のアルカリ可溶性樹脂を溶解させうる溶剤を用いると、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、重層にならず均一な単一層になってしまう場合がある。このため、上部の感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂に対する貧溶剤であることが好ましい。
【0136】
画像形成層を塗布する場合の溶媒中の上記成分の全固形分濃度は、一般的に1〜10質量%が好ましい。
また、支持体上に塗布、乾燥して設けられる画像形成層の乾燥塗布量(固形分)としては、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。2層構造とする場合には、感熱層は0.05〜1.0g/m2であり、下層は0.3〜3.0g/m2であることが好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像形成層の皮膜特性は低下する。
支持体上に塗布する方法としては、公知の種々の方法の中から適宜選択できるが、例えばバーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、グレード塗布、ロール塗布などを挙げることができる。
画像形成層用塗布液中には、塗布性を良化する目的で界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤などを添加することができる。その添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
【0137】
−支持体−
平版印刷版原版の支持体としては、例えば純アルミニウム板、アルミニウム合金板、アルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
アルミニウム板の表面は砂目立て処理、ケイ酸ソーダ、フッ化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩などの水溶液への浸透処理、あるいは、陽極酸化処理などの表面処理が施されていることが好ましい。
また、米国特許第2,714,066号明細書に記載の砂目立てした後にケイ酸ナトリウム水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板、特公昭47−5125号公報に記載のアルミニウム板を陽極酸化処理した後、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板も好ましい。
【0138】
前記陽極酸化処理としては、例えば硫酸、リン酸、クロム酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸若しくは蓚酸、スルファミン酸などの有機酸又はこれらの塩の水溶液若しくは非水溶液の単独若しくは二種以上を組み合わせた電解液中で、アルミニウム板を陽極として電極を流すことにより施される。
また、米国特許第3,658,662号明細書に記載のシリケート電着も有効である。
【0139】
また、米国特許第4,087,341号明細書、特公昭46−27481号公報、特開昭52−30503号公報などに記載の、電解グレインを施した支持体に前記陽極酸化処理を施したものも有用である。
米国特許第3,834,998号明細書に記載の砂目立てした後、化学的にエッチングし、さらに陽極酸化処理したアルミニウム板も有用である。
これらの処理は支持体の表面を親水性とする目的で施されるほか、支持体上に設けられる画像形成層との有害な反応を防止する目的、画像形成像との密着性を向上させる目的などの種々の目的で施される。
【0140】
平版印刷版原版は、支持体上に少なくとも画像形成層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体上に下塗り層を設けることができる。
下塗り層に用いる成分としては、種々の有機化合物が挙げられ、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などが挙げられる。
前記有機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前述したジアゾニウム塩を下塗りすることも好ましい態様である。
【0141】
また、下塗り層としては、下記一般式(XIII)で表される構成単位を有する有機高分子化合物の少なくとも1種を含む有機下塗り層も好ましい。
【0142】
【化14】
【0143】
式中、R51は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R52及びR53は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、−OR54、−COOR55、−CONHR56、−COR57又は−CNを表し、前記R52及びR53は互いに結合して環構造を形成してもよい。ここで、R54〜R57はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。Xは水素原子、金属原子、−NR58R59R60R61を表す。ここでR58〜R61はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表し、R58及びR59は互いに結合して環構造を形成してもよい。mは1〜3の整数を表す。
下塗り層の乾燥塗布量としては2〜200mg/m2が好ましく、5〜100mg/m2がより好ましい。この乾燥塗布量が2mg/m2未満であると十分な膜性が得られないことがある。一方200mg/m2を超えて塗布しても、それ以上の効果を得ることはできない。
【0144】
下塗り層は下記方法により設けることができる。
即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液をアルミニウム板などの支持体上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液に、アルミニウム板などの支持体を浸漬して前記有機化合物を吸着させ、その後水等で洗浄、乾燥して設ける方法である。
【0145】
前者の方法では、前記有機化合物の0.005〜10質量%濃度の下塗り層用溶液を用いることが好ましい。
一方、後者の方法では、下塗り層用溶液の前記有機化合物の濃度としては、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。また、浸漬温度としては20〜90℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。浸漬時間としては0.1秒〜20分が好ましく、2秒〜1分がより好ましい。下塗り層用溶液はアンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や塩酸、リン酸などの酸性物質を用いてpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、調子再現性改良を目的として黄色染料を追加することもできる。
【0146】
上記のようにして作成された平版印刷版原版は赤外線レーザーで記録することができる他、紫外線ランプによる記録やサーマルヘッド等による熱的な記録も可能である。
前記赤外線レーザーとしては波長700〜1200nmの赤外線を放射するレーザーが好ましく、同波長範囲の赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーがより好ましい。
【0147】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、実施例中の「%」はすべて「質量%」を表す。
【0148】
[SiO2含有のアルカリ現像処理液の調製]
酸化ケイ素SiO2及び酸化カリウムK2Oの混合比SiO2/K2Oが1.1のケイ酸カリウム4.0%水溶液1リットルに、以下に示す多価アルコール型アルキレンオキシド付加物A〜Cを表1に記載の濃度(g/リットル)で添加し、さらに炭酸カリウムを該アルキレンオキシド付加物に対して各アルキレンオキシド基換算で0.1倍モル濃度となるように添加し、アルカリ現像処理液(1)〜(7)を作成した。また、比較のため上記組成で炭酸カリウムを含まないものをアルカリ現像処理液(1’)〜(7’)とした。
さらに、上記組成で多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含まないものをアルカリ現像処理液(A)とした。
【0149】
[非還元糖含有のアルカリ現像処理液の調製]
非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2Oよりなるカリウム塩5.0%水溶液1リットルに、ソルーシア・ジャパン(株)製DQ−2066:0.5gおよび三洋化成(株)製エレミノールMON−2:0.5gを含有させ、その後、以下に示す多価アルコール型アルキレンオキシド付加物A〜Cを表1に記載の濃度(g/リットル)で添加し、さらに炭酸カリウムを該アルキレンオキシド付加物に対して各アルキレンオキシド基換算で0.1倍モル濃度となるように添加し、アルカリ現像処理液(8)〜(14)を作成した。また、比較のため上記組成で炭酸カリウムを含まないものをアルカリ現像処理液(8’)〜(14’)とした。
さらに、上記組成で多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含まないものをアルカリ現像処理液(B)とした。
【0150】
現像液に用いた化合物A〜C
【0151】
【化15】
【0152】
【表1】
【0153】
[画像形成層用素材の合成例1(B1成分:カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(共重合体)の合成)]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三ッ口フラスコに、メタクリル酸n−プロピル6.39g(0.045モル)、メタクリル酸1.29g(0.015モル)及び1−メトキシ−2−プロパノール20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に重合開始剤「V−601」(和光純薬(株)製)0.15gを加え70℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにメタクリル酸n−プロピル6.39g(0.045モル)、メタクリル酸1.29g(0.015モル)、1−メトキシ−2−プロパノール20g及び「V−601」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに90℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりこの共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0154】
[画像形成層用素材の合成例2(B1成分:カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(共重合体)の合成)]
上記合成例1と同様の操作によって、メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸(モル%:35/35/30)を使用して共重合体を合成した。GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、50,000であった。
【0155】
[画像形成層用素材の合成例3(B1成分:カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の合成)]
冷却管コンデンサー、攪拌機を備えた500mlの三ッ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸14.6g(0.109モル)、テトラエチレングリコール13.3g(0.0686モル)及び1,4−ブタンジオール2.05g(0.0228モル)を加え、N,N−ジメチルアセトアミド118gに溶解した。これに、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート30.8g(0.123モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート13.8g(0.0819モル)及び触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.1gを添加し、攪拌下、90℃、7時間加熱した。
この反応液にN,N−ジメチルアセトアミド100ml、メタノール50ml及び酢酸50mlを加え、攪拌した後に、これを水4リットル中に攪拌しながら投入し、白色のポリマーを析出させた。このポリマーを濾別し、水にて洗浄後、減圧乾燥させることにより、60gのポリマーを得た。
GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、70,000であった。また、滴定によりカルボキシル基含量を測定したところ1.43meq/gであった。
【0156】
[画像形成層用素材の合成例4(B1成分:カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の合成)]
以下のジイソシアネート化合物(モル%)
【0157】
【化16】
【0158】
及び以下のジオール化合物(モル%)
【0159】
【化17】
【0160】
を用いて、合成例3と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体の滴定による酸含量は1.72meq/gであり、GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、80,000であった。
【0161】
[画像形成層用素材の合成例5(B2成分の合成)]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。この反応混合物にp−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することにより、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)
【0162】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三つ口フラスコにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、(0.0192モル)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258モル)、アクリロニトリル0.80g(0.015モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に重合開始剤「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。GPCにより、この特定の共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、53,000であった。
【0163】
[平版印刷版原版の作製1]
0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用い、この表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。
洗浄後、このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗した後、さらに20%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、再度水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
【0164】
次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として、電流密度15A/dm2の直流電流で陽極酸化して3g/m2の陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
これを、30℃の珪酸ナトリウム2.5%水溶液で10秒処理し、水洗、乾燥後、下記下塗り層用塗布液を塗布し、80℃で15秒間乾燥して支持体を得た。乾燥後の下塗り層の乾燥塗布量は、15mg/m2であった。
【0165】
<下塗り層用塗布液>
下記共重合体P(分子量28000) 0.3g
メタノール 100g
水 1g
【0166】
【化18】
【0167】
得られた支持体上に下記画像形成層塗布液を塗布し、150℃、30秒乾燥させて、乾燥塗布量を1.8g/m2とし、ポジ型の平版印刷版原版を得た。
【0168】
実施例1〜22及び比較例1〜16
上記により得られた平版印刷版原版に出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザーを用いて主走査速度5m/秒にて露光し、25℃に保持した。
この露光済み平版印刷版原版を、上記の各種アルカリ現像処理液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)により、現像温度30℃、12秒で現像処理した。実施例1〜22では、アルカリ現像処理液(1)〜(14)を、比較例1〜7では、アルカリ現像処理液(1’)〜(7’)を、比較例9〜15では、アルカリ現像処理液(8’)〜(14’)を、および比較例8及び16では、アルカリ現像処理液(A)及び(B)を、それぞれ表に記載したように用いた。補充液の補充なしに、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理した。現像処理が終了したのち、水洗工程を経て、ガム(富士写真フイルム(株)製、GU−7(1:1))などで処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
【0169】
このようにして得られた平版印刷版および処理済み処理液について、下記項目(非画像部の現像性、画像部の膜べり、現像液中の不溶物)について評価した。
なお、印刷は下記条件で行った。
印刷機:小森コーポレーション社製リスロン印刷機
インキ:大日本インキ化学工業社製DIC−GEOS(N)墨
湿し水:富士写真フイルム(株)製IF−102
【0170】
<非画像部の現像性の評価>
上記のようにして現像直後、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理して得た平版印刷版の非画像部の現像性を「非画像部の残膜の有無」および「印刷物上の汚れの有無」を観察し、下記基準で官能評価した。その結果を表2〜表3に示す。
−基準−
○:十分に現像され、非画像部上の画像形成層の残存は認められなかった。印刷物上に汚れがなかった。
△:非画像部上に画像形成層が若干残存していた。印刷物上には汚れがなかった。
×:現像不良が認められ、非画像部に画像形成層が残存していた。印刷物上に汚れが発生した。
【0171】
<画像部の膜べりの評価>
上記のようにして現像直後、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理して得た平版印刷版の「画像部の欠陥」を下記基準に従い、目視により観察し、官能評価を行った。評価結果を表4〜表5に示す。
−基準−
◎:画像部に欠陥は認められず、画像濃度の低下も全く見られなかった。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
○:画像部に欠陥は認められないが、画像部濃度が1〜2%低下した。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
△:画像部に欠陥は認められないが、画像濃度が2%以上低下した。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
×:画像部濃度が大幅に低下し、画像部に欠陥した部分有り。印刷物上に画像部の白ぬけが発生した。
【0172】
<現像液中の不溶物の評価>
現像液1リットル当たり、平版印刷版を1m2、10m2および100m2処理した現像液を密閉容器に入れ、冷蔵庫(5℃)、常温(20〜25℃)、サーモ(35℃)の中でそれぞれ1ヶ月保管したときの不溶物の発生状況を観察し、下記基準で評価した。結果を表6〜表7に示す。
−基準−
○:不溶物なし
△:若干の不溶物があるが、振ると溶解してなくなる。
×:振っても不溶物が残存する。
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
【表7】
【0179】
[平版印刷版原版の作製2]
上記の[平版印刷版原版の作製1]で使用したのと同様に処理し下塗り層を設
けたアルミニウム支持体に、以下の感光液2を塗布量が0.16g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、TABAI社製 PERFECT OVER PH200にてWindControlを7に設定して140℃、50秒で乾燥した。更にその上に感光液3を塗布量が0.85g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、TABAI社製 PERFECT OVER PH200にてWindControlを7に設定して120℃、60秒で乾燥し、2層構成の感熱層を有する平版印刷版原版を得た。
【0180】
【0181】
【0182】実施例23〜44および比較例17〜32上記より得られた平版印刷版原版に出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザーを用いて主走査速度5m/秒にて露光し、25℃に保持した。
この露光済み平版印刷版原版を、上記の各種アルカリ現像処理液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)により、現像温度30℃、12秒で現像処理した。実施例23〜44では、アルカリ現像処理液(1)〜(14)を、比較例17〜23では、アルカリ現像処理液(1’)〜(7’)を、比較例25〜31では、アルカリ現像処理液(8’)〜(14’)を、および比較例24及び32では、アルカリ現像処理液(A)及び(B)を、それぞれ表に記載したように用いた。補充液の補充なしに、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理した。現像処理が終了したのち、水洗工程を経て、ガム(富士写真フイルム(株)製、GU−7(1:1))で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
【0183】
こうして製版された平版印刷版について、実施例1〜22と同様にして評価を行った。その評価結果を、非画像部の現像性について表8〜9に、画像部の膜べりについて表10〜11、及び現像液中の不溶物について表12〜13に示す。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
【0187】
【表11】
【0188】
【表12】
【0189】
【表13】
【0190】
【発明の効果】
本発明の感光性平版印刷版の製版方法によれば、使用するアルカリ現像処理液中に感光層成分が溶け込んでも一定の性能を維持することができ、長期間安定に平版印刷版原版の現像処理を行うことができる。また、本発明の感光性平版印刷版の製版方法によれば、現像性を維持しながら画像部に画像欠陥を招くことなく、エッジ調の高鮮鋭で鮮明な画像を形成することができる。
また、自動現像機のおいて版を搬送処理する際に、現像処理液の液はね及び液ゆれが起こり、それらが版の現像性に影響を与えることがあるが、本発明の製版方法によれば、そのような液ゆれや液はねが抑えられて安定した現像処理を行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ現像処理液を用いて、コンピュータ等のデジタル信号に基づき、赤外線レーザー走査により直接製版できる、いわゆるダイレクトデジタル平版印刷版原版からの平版印刷版の製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザーの発展はめざましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー、半導体レーザーは、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、このデジタルデータから直接製版するシステムの露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
レーザー書き込みに適する画像記録材料として、例えば特開平7−285275号公報にはクレゾール樹脂のような結着剤と、光を吸収して熱を発生する物質と、キノンジアジドのような熱分解性であって、且つ分解前の状態では前記結着剤の溶解性を実質的に低下させうる化合物とを含有するポジ型の画像記録材料が提案されている。
これは、赤外線照射により露光部分において前記光を吸収して熱を発生する物質が発熱し、露光部分をアルカリ可溶性にするもの(ヒートモード型)であるが、支持体であるアルミニウムに吸熱されてしまうため熱効率が低く、現像工程におけるアルカリ現像処理液に対する溶解性は満足のいくものではなかった。このため、現像液のアルカリ濃度を上げ、露光部分の溶解性を確保してきた。
【0003】
ところが、ヒートモード型の平版印刷版原版は、上記のような高濃度のアルカリ条件下では画像部のアルカリ現像処理液に対する耐溶解性が低く、画像記録材料表面に僅かに傷があるだけで溶解され、画像部に欠陥を生ずるなどの問題があった。特に、アルカリ水溶液に対して可溶性の高い高分子化合物を使用するポジ型の平版印刷版原版において、その傾向はより顕著であった。
従って、非画像部に残膜が生じないようにアルカリ現像液のアルカリ濃度を上げるには限度があり、形成した画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成するのは困難であった。特に、ドット部や細線などを含む精細な画像において、その高鮮鋭化、再現性の向上が要求されている。そのため、現像液に各種界面活性剤を添加することが検討されており、画像の高鮮鋭化に関してある程度の向上が得られている。しかしながら、現像液中への感光層成分の溶け込みによって、その性能が減少することが問題となっている。
【0004】
また、近年の赤外線レーザー露光型の画像記録材料の改良に伴い、従来の赤外線吸収染料と比較してアルカリ現像処理液には溶解し難い、例えばシアニン染料といった赤外線吸収染料が使用される傾向があり、この画像記録材料をアルカリ現像処理液で現像した場合に、現像処理液中に赤外線吸収染料の不溶物が排出される傾向がある。これがバインダーポリマーの成分や水中の無機物などとの相互作用により更なる不溶物を形成して、これらの不溶物(現像カス)がプレート上に付着して画像に支障をきたしたり、現像処理浴中で沈殿・析出し、処理浴のメンテナンスに負担を生じるといった不都合を起こす。このような状況下、非画像部上に現像カス付着物による残膜があるまま、例えばバーニング処理を施すと、残膜が炭化して印刷時の汚れとなる不都合もある。
よって、赤外線吸収染料などの画像形成層成分に起因する不溶物による不都合を回避し、形成した画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成すること、特に、ドット部や細線などを含む精細な画像において、その高鮮鋭化、再現性の向上が要求されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における諸問題を解決し、感光性平版印刷版の現像にあたって非画像部に残膜を生じないようにし、且つ画像部に欠陥を与えることなく、高鮮鋭で鮮明な画像を形成し得、感光層成分が溶け込んでも、一定の性能を発揮することができる、感光性平版印刷版用の製版方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物と炭酸塩を特定濃度以上含有したアルカリ現像処理液を用いることにより、高鮮鋭で鮮明な画像を形成し得、感光層成分が溶け込んでも、一定の性能を発揮することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する感光性平版印刷版を露光後、アルカリ現像処理液で現像処理する感光性平版印刷版の製版方法であって、多価アルコール型アルキレンオキシド付加物および炭酸塩を含有し、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度に調整したアルカリ現像処理液で現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法に向けられている。
【0007】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の平版印刷版の製版方法に使用する現像処理液について説明する。
現像処理に用いる現像処理液(以下、単に「現像液」ともいう。)はアルカリ性の水溶液であって、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択することができる。
アルカリ水溶液としては、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基とからなる現像液が挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものが好ましい。
前記ケイ酸アルカリとしては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、ケイ酸アンモニウムなどが挙げられる。
ケイ酸アルカリは1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
上記アルカリ水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
前記アルカリ水溶液の中でも、前記酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。
前記SiO2/M2Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版原版の支持体として汎用のアルミニウム板などをエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0009】
また、現像液中のケイ酸アルカリの濃度としては、アルカリ水溶液の質量に対して1〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、4〜7質量%が最も好ましい。この濃度が1質量%未満であると現像性、処理能力が低下することがあり、10質量%を超えると沈澱や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0010】
非還元糖と塩基とからなる現像液において、非還元糖とは遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味し、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体、糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類される。本発明ではこれらのいずれも好適に用いることができる。
トレハロース型少糖類としては、例えばサッカロースやトレハロースが挙げられ、前記配糖体としては、例えばアルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体などが挙げられる。
糖アルコールとしては、例えばD,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシットなどが挙げられる。さらには、二糖類の水素添加で得られるマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元体(還元水あめ)なども好適に挙げることができる。
【0011】
上記のうち、非還元糖としては、糖アルコール、サッカロースが好ましく、中でも特に、D−ソルビット、サッカロース、還元水あめが適度なpH領域に緩衝作用がある点でより好ましい。
これらの非還元糖は単独でも、二種以上を組み合わせてもよく、現像液中に占める割合としては、0.1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0012】
前記ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖には、塩基としてアルカリ剤を従来公知の物の中から適宜選択して組み合わせることができる。
該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0013】
さらにモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
これらのアルカリ剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0014】
本発明で使用する現像処理液は、上述のようなアルカリ水溶液中に多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含有する。
多価アルコール型アルキレンオキシド付加物としては、具体的には下記式(I)にて示されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】
【0016】
〔式(I)中、mは1〜10の整数を表し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子又は下記式(II)
【0017】
【化2】
【0018】
(式(II)中、R4はアルキレン基を表し、nは1〜100の整数を表す。)を表す。mが2以上のとき、2以上あるR3は同一でも異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3のうち少なくとも1つは上記式(II)にて示される基を表す。〕
【0019】
式(I)中、mは好ましくは1〜4の整数を表す。式(II)中、R4は好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のアルキレン基を表し、該アルキレン基が2種以上からなっていてもよく、例えばエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソプロピルオキシ基、エチレンオキシ基とブチレンオキシ基、エチレンオキシ基とイソブチレン基などの組み合わせのランダム又はブロック状に連なったものなどでもよい。
式(II)中、nは1〜100の整数を表し、式(I)の化合物においてアルキレンオキシドの付加モル数の総数は4〜100の範囲が一般的であり、さらに6〜80が適当であり、さらに10〜50が好ましく、最も好ましくは12〜40である。
【0020】
式(I)にて示される化合物の具体例として、糖アルコール(例えばD,L−トレイット、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシットなど)のアルキレンオキシド付加化合物及びグリセリンのアルキレンオキシド付加化合物などがある。
さらに、糖アルコールを縮合したジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン及びヘキサグリセリンなどのポリグリセリンのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
アルキレンオキシド付加としては、特にエチレンオキシド(EO)付加、エチレンオキシド(EO)/プロピレンオキシド(PO)付加及びプロピレンオキシド(PO)付加が挙げられ、プロピレンオキシド(PO)は水溶解性が許容できる範囲で存在するのが望ましい。中でも、ソルビットEO付加物、ソルビットPO付加物、キシリットEO付加物、キシリットPO付加物、トレイットEO付加物、トレイットPO付加物、グリセリンEO付加物、グリセリンPO付加物、ジグリセリンEO付加物、トリグリセリンEO付加物などが挙げられる。
これらの化合物は市場において一般に入手することができ、市販品として例えば商品名ソルビトールEO(30)(日光ケミカルズ(株)製)などがある。
【0021】
本発明の上記多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の分子量としては、50〜10,000が好ましく、100〜5,000がより好ましく、500〜3,500が最も好ましい。
前記分子量が50未満であると画像部に対する溶解抑止力を得ることができないことがあり、10,000を超えると非画像部の現像性が低下することがある。
【0022】
上記の多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の添加量としては、アルカリ現像処理液中に0.001〜10質量%が適当であり、0.05〜5質量%が好ましい。さらに0.1〜3質量%が最も好ましい。この添加量が0.001質量%未満であると、形成した画像部の可溶性を十分に抑制できないことがあり、一方10質量%を超えると溶解抑止力が強すぎて現像感度が低下することがある。
上記化合物をアルカリ現像処理液中に含有させることにより、アルカリ水溶液に可溶性の高い高分子化合物を使用した場合や、アルカリ濃度を高めた場合でも、画像部が溶解して画像欠陥を招くことなく、エッジ調の高鮮鋭で鮮明な画像を形成することが可能となり、ドット部や細線などを含む精細な画像を高鮮鋭に再現することができる。
【0023】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液には、上記多価アルコール型アルキレンオキシド付加物の他に、炭酸塩を所定濃度以上含有していることを特徴とする。画像部に対する溶解抑止力を有する多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含有するアルカリ現像処理液に、更に炭酸塩を含有させることで吸着性を向上させ、画像部の溶解抑止効果を更に向上させることができる。
【0024】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液に含まれる炭酸塩には炭酸水素塩も含まれる。
炭酸塩としては、炭酸(H2CO3)の水素の内、全てまたは1つが金属あるいはアンモニウムイオンによって置き換えられて生ずる塩であれば特に限定されない。具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウムカリウム等が挙げられるが、アルカリ水溶液への溶解性の観点から、特に炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウムカリウムが好ましく用いられる。
【0025】
本発明において用いられるアルカリ現像処理液には、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度となるように調整して含有する。画像部の現像処理後の濃度低下が低いという観点で、炭酸塩の含有量は好ましくは0.2〜50倍モル濃度、さらに好ましくは0.5〜10倍モル濃度である。
【0026】
アルカリ現像処理液は、上記のとおり、ケイ酸アルカリ若しくは非還元糖と、塩基を含む現像液を用いるが、そのカチオン成分として従来よりLi+、Na+、K+、NH4 +が用いられ、中でも、イオン半径の小さいカチオンを多く含有する系では、画像形成層への浸透性が高く現像性に優れる一方、画像部まで溶解して画像欠陥を生ずる。従って、アルカリ濃度を上げるには、ある程度の限度があり、画像部に欠陥を生ずることなく、且つ非画像部に画像形成層(残膜)が残存しないように完全に処理するためには、微妙な液性条件の設定が要求された。
しかし、前記カチオン成分として、そのイオン半径の大きいカチオンを用いることにより、画像形成層中への現像液の浸透性を抑制することができ、アルカリ濃度、即ち、現像性を低下させることなく、画像部の溶解抑止効果をも向上させることができる。
前記カチオン成分としては、上記アルカリ金属カチオン及びアンモニウムイオンのほか、他のカチオンも用いることができる。
【0027】
アルカリ現像処理液には、さらに現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を加えることができる。
例えば特開昭58−75152号公報に記載のNaCl、KCl、KBrなどの中性塩、特開昭58−190952号公報に記載のEDTA、NTAなどのキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載の[Co(NH3)6]Cl3、CoCl2・6H2Oなどの錯体、特開昭50−51324号公報に記載のアルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、n−テトラデシル−N,N−ジヒドロキシエチルベタインなどのアニオン又は両性界面活性剤、米国特許第4,374,920号明細書に記載のテトラメチルデシンジオールなどの非イオン性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載のp−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド4級化合物などのカチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体などの両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載の亜硫酸ソーダなどの還元性無機塩、特開昭58−59444号公報に記載の塩化リチウムなどの無機リチウム化合物、特開昭59−75255号公報に記載の有機Si、Tiなどを含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報に記載の有機ホウ素化合物、EP101010号明細書に記載のテトラアルキルアンモニウムオキサイドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】
アルカリ現像処理液の使用態様は特に限定されるものではない。
近年では、特に製版・印刷業界において、製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間などに応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0029】
この場合、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液を補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中に現像液を交換することなく多量の画像形成材料を処理できる。本発明の製版方法において上記のアルカリ現像処理液を使用する際にも、この補充方式を採用することが好ましい態様である。その場合の補充液として、上に説明したアルカリ現像処理液のアルカリ強度を現像液よりも高くした水溶液を用いることができる。
【0030】
前記現像液及び現像液補充液には、現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて上記以外の種々の界面活性剤や有機溶剤などを添加することもできる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系又は両性界面活性剤から選択でき、有機溶剤としてはベンジルアルコールなどが好ましい。また、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、又はポリプロピレングリコールもしくはその誘導体などの添加も好ましい。
さらに必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸又は亜硫酸水素酸のナトリウム塩若しくはカリウム塩などの無機塩系還元剤、有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
【0031】
本発明では、上記現像方式の他に、実質的に未使用の現像処理液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式の現像に適用することも可能である。
上記のアルカリ現像処理液及び補充液を用いて現像処理された平版印刷版は、水洗水や界面活性剤などを含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理がなされる。この後処理には、これら公知の処理液を種々組み合わせて行うことができる。
【0032】
本発明の製版方法について概略すると次のとおりである。平版印刷版原版として、支持体上に少なくとも赤外線吸収剤を含有する画像形成層を有する平版印刷版原版を用い、該平版印刷版原版にデジタルデータに基づき赤外線レーザーを照射して所望の画像様に露光すると、前記赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、次の過程を通じて画像が形成される。
すなわち、ポジ型の平版印刷版原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱してアルカリ水に可溶性となり、本発明のアルカリ現像処理液を用いた現像処理により、露光部のみが除去されて所望の画像が形成され、ネガ型の平版印刷版原版の場合には、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部分のみが発熱して酸を発生すると、この酸により共存する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部のみがアルカリ水に不溶性となって像を形成する一方、非露光部では本発明のアルカリ現像処理液を用いた現像処理により除去されて、所望の画像が形成される。
【0033】
次に本発明の製版方法に使用する平版印刷版原版について説明する。
平版印刷版原版は、支持体上に画像形成層を有し、さらに必要に応じて他の層を有してなり、画像形成層は(A)赤外線吸収剤を有し、さらに(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物、(B2)アルカリ可溶性樹脂、(C)該(B1)及び(B2)のアルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物及び樹脂のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、(D)環状酸無水物などを含有して構成される。また、ネガ型の平版印刷版原版の場合には、露光部が硬化して画像部となるため、画像形成層にさらに(E)熱により酸を発生する化合物と、(F)酸により架橋する架橋剤とを含有して構成される。以下に、各構成成分について簡単に説明する。
【0034】
−(A)赤外線吸収剤−
赤外線吸収剤(以下、「(A)「成分」ということがある。)は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。
本発明において使用可能な赤外線吸収剤としては、波長700nm以上の領域に、好ましくは波長750nm〜1200nmの波長領域に赤外線を高効率に吸収しうる染料又は顔料が好ましく、波長760nm〜1200nmの領域に吸収極大を有する染料又は顔料がより好ましい。
【0035】
前記染料としては、市販の染料又は文献(例えば、「染料便覧」、有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載の公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0036】
中でも、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載のシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載のメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載のナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載のスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料等が好適に挙げられる。
【0037】
また、米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好ましく、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリウム塩等、特公平5−13514号、同5−19702号に記載のピリリウム化合物、市販品としては、Epolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125、Epolight IV−62A(エポリン社製)等も好ましい。
【0038】
さらに、米国特許第4,756,993号明細書に記載の式(I)、(II)で表される近赤外線吸収染料も好適なものとして挙げることができる。
上記のうち、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体がより好ましい。
【0039】
前記顔料としては、市販の顔料又はカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編)、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載の顔料が挙げられ、たとえば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他ポリマー結合色素が挙げられる。
【0040】
具体的には、例えば、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシナニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0041】
前記顔料は、表面処理をせずに用いてもよいし、表面処理を施した後に用いてもよい。
表面処理の方法としては、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤やエポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が挙げられる。これらの表面処理の方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0042】
前記顔料の粒径としては、0.01μm〜10μm が好ましく、0.05μm〜1μmがより好ましく、0.1μm〜1μmが最も好ましい。
前記粒径が、0.01μm未満であると、感光層塗布液等の分散液を調製したときの分散物の安定性が劣化することがあり、10μmを超えると、画像形成層の均一性が悪化することがある。
【0043】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に汎用の分散機等、公知の分散技術から適宜選択することができる。
前記分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。その詳細については、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載がある。
【0044】
前記染料又は顔料の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10質量%が最も好ましく、顔料の場合には、3.1〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、画像形成層の均一性が低下し、その耐久性が劣化することがある。
前記染料又は顔料は、他の成分と同一層に添加してもよいし、別の層を設けてそこに添加してもよい。別の層とする場合は、後述の(C)成分を含有する層に隣接する層に添加することが好ましい。
また、染料又は顔料と、アルカリ可溶性樹脂、アルカリ可溶性高分子化合物とは同一の層に含有することが好ましいが、別の層にそれぞれ含有させても構わない。
【0045】
−(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下「(B1)成分」ということもある。)−
(B1)成分の高分子化合物としては、カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物であれば何れでもよいが、下記で定義される高分子化合物(b1−1)、(b1−2)が好ましい。
(b1−1)下記一般式(III)で表される重合性モノマー単位を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下、高分子化合物(b1−1)ともいう)
【0046】
【化3】
【0047】
(式中、Xmは単結合又は2価の連結基を、Yは水素又はカルボキシル基を、Zは水素、アルキル基又はカルボキシル基を表す。)
【0048】
Xmで表される2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアリーレン基、−C(=O)−Y−、−O−C(=O)−Y−、−Ar−Y−が挙げられる。Yは2価の連結基を表し、Arはアリーレン基を表す。Y、Arは置換基を有していてもよい。
Yが表す2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基、アリーレン基、イミド基、アルコキシ基が挙げられる。これらの置換基としては、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子、フェニル基、ジメチルアミノ基、エチレンオキサイド基、ビニル基、o−カルボキシベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0049】
一般式(III)で表される重合性モノマー単位を構成するモノマーとして、カルボキシル基と、重合可能な不飽和基を分子内にそれぞれ1以上有する重合性モノマーがある。
そのような重合性モノマーの具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸類を挙げることができる。
【0050】
上記カルボキシル基を有する重合性モノマーと共重合させるモノマーとしては、例えば下記(1)〜(11)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)2−ヒドロキエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0051】
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリるアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド又はメタクリルアミド。
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
【0052】
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
【0053】
また、下記一般式(IV)のモノマーも好ましく用いられる。
【0054】
【化4】
【0055】
式中、XはO、S、又はN−R12を表す。R10〜R12は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。m、n、oは、各々独立に、2から5の整数を表し、CmH2m、CnH2n、CoH2oは、各々、直鎖でも分岐構造でもよい。p、q、rは各々独立に、0から3,000の整数を表し、p+q+r≧2である。
【0056】
R10〜R12におけるアルキル基としては、炭素原子数1〜12のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。p、q、rは好ましくは0から500の整数を表し、更に好ましくは0から100の整数を表す。
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位に相当するモノマーの例を以下に挙げるが、この限りではない。
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位は、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名プルロニック(Pluronic(旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)、カルボワックス(Carbowax(グリコ・プロダクス))、トリトン(Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製)、およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド又は無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。
別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0060】
市販品のモノマーとしては、日本油脂株式会社製の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどが挙げられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどが挙げられる。
【0061】
高分子化合物(b1−1)におけるカルボキシル基と、重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する重合性モノマー成分を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
共重合の方法としては、従来知られているグラフト共重合、ブロック共重合、ランダム共重合法などを用いることができる。
【0062】
(b1−2)カルボキシル基を有する下記一般式(V)、(VI)または(VII)で表されるジオール化合物と下記一般式(X)で表されるジイソシアネート化合物との反応生成物を基本骨格とするカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(以下、高分子化合物(b1−2)ともいう。)
【0063】
【化7】
【0064】
式中、R13は水素原子、置換基(例えばアルキル、アリール、アルコキシ、エステル、ウレタン、アミド、ウレイド、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよいアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、アリーロキシ基を示し、好ましくは水素原子、炭素原子数1〜8個のアルキル基もしくは炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数6〜15個のアリール基を示す。
R14、R15、R16はそれぞれ同一でも相異していてもよい、単結合、置換基(例えばアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ及びハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を示す。好ましくは炭素原子数1〜20のアルキレン基、炭素原子数6〜15のアリーレン基、更に好ましくは炭素原子数1〜8個のアルキレン基を示す。
また、必要に応じ、R14、R15、R16中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル基、ウレタン基、アミド基、ウレイド基、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。なお、R13、R14、R15、R16のうちの2又は3個で環を構成してもよい。
Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を示し、好ましくは炭素原子数6〜15個の芳香族基を示す。
【0065】
OCN−R18−NCO (X)
式中、R18は置換基(例えばアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アルコキシ、ハロゲノの各基が好ましい。)を有していてもよい二価の脂肪族又は芳香族炭化水素を示す。必要に応じ、R18中にイソシアネート基と反応しない他の官能基、例えばエステル、ウレタン、アミド、ウレイド基、炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。
【0066】
一般式(V)、(VI)又は(VII)で示されるカルボキシル基を有するジオール化合物としては具体的には以下に示すものが含まれる。
即ち、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−カルボキシ−プロピオンアミドなどが挙げられる。
【0067】
該(b1−2)のカルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、下記一般式(VIII)又は(IX)で表されるジオールを組み合わせた反応生成物であると好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
式中、R17はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜8のアルキル基を示し、nは2以上の整数を示す。R17における炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基などが挙げられる。
以下に、上記一般式(VIII)又は(IX)で表されるジオールの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(VIII)の具体例
HO−(−CH2CH2O−)3−H
HO−(−CH2CH2O−)4−H
HO−(−CH2CH2O−)5−H
HO−(−CH2CH2O−)6−H
HO−(−CH2CH2O−)7−H
HO−(−CH2CH2O−)8−H
HO−(−CH2CH2O−)10−H
HO−(−CH2CH2O−)12−H
ポリエチレングリコール(平均分子量1000)
ポリエチレングリコール(平均分子量2000)
ポリエチレングリコール(平均分子量4000)
HO−(−CH2CH(CH3)O−)3−H
HO−(−CH2CH(CH3)O−)4−H
HO−(−CH2CH(CH3)O−)6−H
ポリプロピレングリコール(平均分子量1000)
ポリプロピレングリコール(平均分子量2000)
ポリプロピレングリコール(平均分子量4000)
【0071】
(IX)の具体例
HO−(−CH2CH2CH2O−)3−H
HO−(−CH2CH2CH2O−)4−H
HO−(−CH2CH2CH2O−)8−H
HO−(−CH2CH2CH(CH3)O−)12−H
【0072】
一般式(X)で示されるジイソシアネート化合物として、具体的には以下に示すものが含まれる。
すなわち、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどの如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートなどの如き脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの如き脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体などの如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0073】
高分子化合物(b1−2)の合成に使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は好ましくは0.8:1〜1.2〜1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
【0074】
(B1)成分として、上記の高分子化合物(b1−1)及び(b1−2)から1種単独を使用してもよいし、また2種以上を併用してもよい。
(B1)成分中に含有されるカルボキシル基を有する繰り返し単位の含有量は、該(B1)成分の各単量体の総量に基づいて2モル%以上であり、好ましくは2〜70モル%であり、より好ましくは5〜60モル%の範囲である。
(B1)成分の好ましい重量平均分子量Mwは、3000〜300,000が好ましく、6,000〜100,000がより好ましい。
【0075】
さらに、(B1)成分の好ましい添加量は、画像形成層の全固形分質量に対して0.005〜80質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜50質量%の範囲であり、更に好ましくは1〜20質量%の範囲である。
(B1)成分の添加量が0.005質量%未満では効果が不充分であり、ま
た80質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行なわれなくなったり、感光材料としての性能(例えば感度)に悪影響を及ぼす。
【0076】
−(B2)アルカリ可溶性樹脂−
使用可能なアルカリ可溶性樹脂(以下、「(B2)成分」ということがある。)としては、下記(1)〜(3)の酸性基を主鎖及び/又は側鎖の構造中に有するアルカリ水可溶性の高分子化合物を用いることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
前記(1)〜(3)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
以下に、その具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0077】
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−又はm−/p−混合のいずれでもよい。)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂又はピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有するモノマーを重合させた高分子化合物を挙げることもできる。
【0078】
側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは、該重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール基を側鎖に有するモノマーとしては、フェノール基を側鎖に有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0079】
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に挙げることができる。
【0080】
前記フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の重量平均分子量Mwとしては、5.0×102〜2.0×105のものが、数平均分子量Mnとしては、2.0×102〜1.0×105のものが、画像形成性の点で好ましい。
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、単独での使用のみならず、2種類以上を組合わせて使用してもよい。組合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
これらの縮重合体も、重量平均分子量が5.0×102〜2.0×105のもの、数平均分子量が2.0×102〜1.0×105のものが好ましい。
【0081】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体、即ち、単独重合体又は前記モノマー構成単位に他の重合性モノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−SO2−NH−と、重合可能な不飽和結合とを、それぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーが挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を有する低分子化合物が好ましい。
前記低分子化合物としては、例えば、下記一般式(a)〜(e)で表される化合物が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0082】
【化9】
【0083】
式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子又はNR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R2、R5、R9、R12、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2はそれぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0084】
中でもm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0085】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体を挙げることができる。
活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーを単独重合、或いは、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を挙げることができる。
【0086】
【化10】
【0087】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に挙げることができる。
さらに、上記のほか、前記フェノール基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちのいずれか2種類以上を重合させた高分子化合物、或いは、これら2種以上の重合性モノマーにさらに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物も好適に挙げられる。
【0088】
フェノール基を有する重合性モノマー(M1)に、スルホンアミド基を有する重合性モノマー(M2)及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマー(M3)を共重合させる場合の配合比(M1:M2及び/又はM3;質量比)としては、50:50〜5:95が好ましく、40:60〜10:90がより好ましい。
【0089】
アルカリ可溶性樹脂が、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位と、他の重合性モノマーの構成単位とから構成される共重合体である場合、該共重合体中に、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位を10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むことがより好ましい。
前記モノマー構成単位の含有量が、10モル%未満であると、十分なアルカリ可溶性が得られずに、現像ラチチュードが狭くなることがある。
前記共重合体の合成方法としては、従来より公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0090】
前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマーを構成単位とする重合性モノマーと共重合させる他の重合性モノマーとしては、例えば、下記(a)〜(1)に挙げるモノマーを挙げることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0091】
(a)2−ヒドロキエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(b)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(c)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0092】
(d)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド、又はメタクリルアミド。
(e)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(f)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(g)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
【0093】
(h)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(i)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(j)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(k)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(l)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0094】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、単独重合体、共重合体に関わらず、膜強度の点で、重量平均分子量Mwが2,000以上、数平均分子量Mnが500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(Mw/Mn)が1.1〜10のものがより好ましい。
また、前記アルカリ可溶性樹脂が、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−アルデヒド樹脂等である場合には、重量平均分子量が500〜20,000であって、数平均分子量が200〜10,000のものが好ましい。
【0095】
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が最も好ましい。
前記含有量が、30質量%未満であると、画像形成層の耐久性が低下することがあり、99質量%を越えると、感度、耐久性が低下することがある。
また、前記アルカリ可溶性樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0096】
−(C)前記カルボキシル基を含有するアルカリ可溶性高分子化合物及び前記アルカリ可溶性樹脂と相溶させて該高分子化合物及び該樹脂のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物−この(C)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、前記(B1)及び(B2)成分との相溶性が良好であり、均一な画像形成層用塗布液を形成しうるとともに、該(B1)及び(B2)成分との相互作用により、該(B1)及び(B2)成分のアルカリ可溶性を抑制する機能(溶解性抑制作用)を有する化合物を指す。
【0097】
また、加熱により(B1)及び(B2)成分に対する前記溶解性抑制作用は消滅するが、赤外線吸収剤自体が加熱により分解する化合物である場合には、分解に十分なエネルギーが、レーザー出力や照射時間等の諸条件により付与されないと、(B1)及び(B2)成分の溶解性抑制作用を十分に低下させることができず、感度が低下するおそれがある。このため、(C)成分の熱分解温度としては、150℃以上が好ましい。
【0098】
(C)成分としては、前記(B1)及び(B2)成分との相互作用を考慮して、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の、前記アルカリ可溶性高分子化合物と相互作用しうる化合物の中から適宜選択することができる。
特に、例えば、前記(B2)成分として、ノボラック樹脂を単独で用いる場合には、後述する「(A+C)成分」が好ましく、以下に例示するシアニン染料Aなどがより好ましい。(A+C)成分については後述する。
【0099】
(C)成分と前記(B1)成分及び(B2)成分との配合比(C/(B1+B2)質量比)としては、一般に1/99〜25/75が好ましい。
前記混合比が、1/99未満、即ち、(C)成分が少なすぎると、アルカリ可溶性樹脂やアルカリ可溶性高分子化合物との相互作用が不十分となり、アルカリ可溶性を低下させることができず、良好に画像形成することができないことがあり、25/75を超える、即ち、(C)成分が多すぎると、相互作用が過大となり、感度が著しく低下することがある。
【0100】
−(A+C)成分−
前記(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する化合物((A+C)成分)を用いることができる。
前記(A+C)成分は、光を吸収して熱を発生する性質(即ち、(A)成分の特性)を有し、しかも700〜1200nmの波長領域に吸収域を持つと共に、さらに(B1)及び(B2)成分のアルカリ可溶性高分子化合物と良好に相溶しうる塩基性染料である。
(A+C)成分は、その分子内にアンモニウム基、イミニウム基等のアルカリ可溶性高分子化合物と相互作用する基を有する(即ち、(C)成分の特性)ため、前記高分子化合物と相互作用して、そのアルカリ可溶性を抑制することができる。
前記(A+C)成分としては、例えば、下記一般式(Z)で表される化合物を挙げることができる。
【0101】
【化11】
【0102】
前記一般式(Z)中、R21〜R24は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基を表し、R21とR22、R23とR24はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
R21〜R24としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0103】
式中、R25〜R30は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、前記R25〜R30としては、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0104】
式中、R31〜R33は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R32は、前記R31又はR33と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR32同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R31〜R33としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R32同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは1〜8の整数を表し、中でも1〜3が好ましい。
【0105】
式中、R34〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R34は、R35と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR34同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R34〜R35としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R34同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは、1〜8の整数を表し、中でも、1〜3が好ましい。
【0106】
式中、X−は、アニオンを表し、例えば、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−O−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0107】
前記一般式(Z)で表される化合物は、一般にシアニン染料と呼ばれる化合物であり、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明においては、これらに限られるものではない。
【0108】
【化12】
【0109】
上述の(A)成分及び(C)成分に代えて、これら双方の特性を有する前記(A+C)成分を用いる場合、該(A+C)成分と前記(B1)、(B2)成分との使用量比〔(A+C)/((B1)+(B2))〕としては、質量比で1/99〜30/70が好ましく、1/99〜25/75がより好ましい。
【0110】
−(D)環状酸無水物−
画像形成層中には、さらに環状酸無水物を使用してもよい。該環状酸無水物は、その構造内にカルボン酸無水物のカルボニル基と共役する結合を有し、そのカルボニル基の安定性を増すことで分解速度を制御し、保存経時において適当な速度で分解して酸を発生する。そのため、保存経時での現像性劣化を抑え、現像性を長期間安定に維持しうる。
前記環状酸無水物としては、下記一般式(XI)又は(XII)で表される化合物が挙げられる。
【0111】
【化13】
【0112】
一般式(XI)中、R41、R42はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステルを表す。なお、R41、R42は互いに連結して環構造を形成してもよい。
前記R41、R42としては、例えば水素原子、又は炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基などが好適に挙げられ、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
R41、R42が互いに連結して環構造を形成する場合、その環状基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセン基、シクロペンテン基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。
【0113】
一般式(XII)中、R43、R44、R45、R46は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、塩素などのハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステル基などを表す。
前記R43、R44、R45、R46としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数6〜12のアリール基などが好適に挙げられ、具体的にはメチル基、ビニル基、フェニル基、アリル基などが挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシ基などが挙げられる。
【0114】
環状酸無水物として、例えば無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、3−ヒドロキシ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、3−フェニル無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、無水コハク酸、などが好適に挙げられる。
環状酸無水物の含有量としては、画像形成層の全固形分含量に対して0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。前記含有量が0.5質量%未満であると現像性の維持効果が不十分となることがあり、20質量%を超えると画像を形成できないことがある。
【0115】
以下は、ネガ型平版印刷版の記録層を構成する成分である。
−(E)熱により酸を発生する化合物−
画像形成材料がネガ型の場合、加熱時に酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)を併用する。この酸発生剤は、100℃以上に加熱することにより分解して酸を発生する化合物である。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等の pKa が2以下の強酸であることが好ましい。
前記酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩を好適に挙げることができる。具体的には、米国特許4,708,925号や特開平7−20629号に記載の化合物を挙げることができ、中でも、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。
【0116】
前記ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号に記載のジアゾニウム塩化合物、米国特許第2,632,703号明細書に記載のジアゾニウム化合物、特開平1−102456号、特開平1−102457号の各公報に記載のジアゾ樹脂も好適に挙げることができる。
また、米国特許第5,135,838号、米国特許第5,200,544号に記載のベンジルスルホナート類、特開平2−100054号、特開平2−100055号、特開平8−9444号に記載の活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。その他特開平7−271029号に記載の、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
前記酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が最も好ましい。
【0117】
−(F)酸により架橋する架橋剤−
平版印刷版原版がネガ型である場合、酸により架橋する架橋剤(以下、単に「架橋剤」という場合がある。)を併用する。
前記架橋剤としては、以下のものを挙げることができる。
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
さらに、特開平11−254850号公報に記載のものやフェノール誘導体等も挙げることができる。
【0118】
前記架橋剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記フェノール誘導体を架橋剤として使用する場合、該フェノール誘導体の添加量としては、画像形成材料の全固形分質量に対し5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
上記の各種化合物の詳細については、特開2000−267265号公報に記載されている。
【0119】
−その他の成分−
アルカリ現像処理液を適用するのに好適な平版印刷版原版の画像形成層には、必要に応じて、さらに種々の添加剤を添加することができる。
例えば、感度を向上させる目的で、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類等の公知の添加剤を併用することもできる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0120】
前記有機酸類としては、、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
スルホニル化合物類としては、例えばビスヒドロキシフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジフェニルジスルホンなどが挙げられる。
前記のフェノール類、有機酸類又はスルホニル化合物類の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が最も好ましい。
【0121】
また、現像条件に対する処理性の安定性を拡げる目的で、特開昭62−251740号公報、特開平3−208514号公報等に記載の非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号公報等に記載の両性界面活性剤、EP950517号公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤としては、例えばソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えばアルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば商品名:アモーゲンK、第1工業(株)製)などが挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として(株)チッソ社製、DBE−224、DBE−621、DBE−712、DBP−732、DBP−534、独Tego社製、Tego Glide 100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
前記非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤の使用量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0122】
前記画像形成層には、露光による加熱後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤や画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
前記焼き出し剤としては、例えば、露光による加熱によって酸を発生する化合物と塩を形成しうる有機染料との組合せが挙げられる。
具体的には、特開昭50−36209号、特開昭53−8128号の各公報に記載の、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料との組合せ、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号及び特開昭63−58440号の各公報に記載の、トリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組合せ、が挙げられる。
前記トリハロメチル化合物として、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物があり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
前記画像着色剤としては、例えば、前記塩形成性有機染料以外に、他の染料を用いることができ、例えば、油溶性染料、塩基性染料が好適に挙げられる。
【0123】
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載の染料は、特に好ましい。
前記各種染料の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0124】
また、必要に応じて、その塗膜に柔軟性等を付与する目的で、可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、例えばブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマーなどが挙げられる。
【0125】
さらに必要に応じて、以下の種々添加剤を添加することができる。
例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性で、未分解状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる化合物を併用することができる。該化合物の添加は、画像部の現像液への溶解阻止能の向上を図る点で好ましい。
前記オニウム塩としては、例えばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩などが挙げられる。
中でも、例えばS.I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974), T.S.Bal et al, Polymer, 21, 423 (1980), 特開昭5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468 (1984), C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J. V. Crivelloet et al. Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p.31 (1988)、欧州特許第104,143号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、
【0126】
J. V. Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al, J.Org. Chem., 43, 3055 (1978)、W. R, Watt et al, J. Polymer Sci., PolymerChem. Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer bull., 14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromolecules, 14(5), 1141 (1981), J.V.Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17. 2877 (1979), 欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、
【0127】
J. V. Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307 (1977), J.V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p.478, Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩などが挙げられる。
上記のうち、ジアゾニウム塩が好ましく、中でも、特開平5−158230号公報に記載のものがより好ましい。
【0128】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサチリル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸などを挙げることができる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸などのアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0129】
前記o−キノンジアジド化合物としては、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものが挙げられ、種々の構造の化合物を用いることができる。
前記o−キノンジアジドは、熱分解により結着剤の溶解抑制能を喪失し、且つo−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化する、両効果により平版印刷版原版の溶解性を助ける。
【0130】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用可能であるが、中でも、種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物又は芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好ましい。
また、特開昭43−28403号公報に記載の、ベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又は、米国特許第3,046,120号、同第3,188,210号に記載のベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好ましい。
【0131】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも好ましい。
その他、例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854、890号などに記載のものも有用である。
これらの化合物は単独でも、数種を組み合わせて混合物として使用してもよい。
前記オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン酸エステル等の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。
【0132】
その他、画像のディスクリミネーションの強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することが好ましい。添加量としては画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6117913号明細書に開示されているような長鎖アルキルカルボン酸のエステルなどを挙げることができる。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、画像形成層の溶解性を調節する目的で種々の溶解抑制剤を含んでもよい。溶解抑制剤としては、特開平11−119418号公報に記載されるようなジスルホン化合物又はスルホン化合物が好適に用いられ、具体例として4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホンを用いることが好ましい。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.05〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0133】
本発明の製版方法を適用し得る平版印刷版原版の具体例として、特願2000−378507号に開示されるような画像形成層を2層構造のポジ型感熱層とした平版印刷版原版も挙げられる。即ちこのポジ型感熱層は積層構造を有し、表面(露光面)に近い位置に設けられている感熱層と、支持体に近い側に設けられているアルカリ可溶性樹脂、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する下層とを有することを特徴とする。該感熱層と下層の双方に或いは一方に、上述してきた(A)赤外線吸収剤、(B1)カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物、(B2)アルカリ可溶性樹脂、(C)該(B1)及び(B2)のアルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、その他の成分などを含有させることができる。
下層で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、アクリル樹脂が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするアルカリ現像液に対して下層の溶解性を良好に保持し得るため、現像時の画像形成の観点から好ましい。さらにこのアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましい。また、感熱層で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点などからフェノール性水酸基を有する樹脂が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
赤外線吸収剤は、感熱層のみならず、下層にも添加することができる。下層に赤外線吸収剤を添加することで下層も感熱層として機能させることができる。下層に赤外線吸収剤を添加する場合には、上部の感熱層におけるのと互いに同じ物を用いてもよく、また異なる物を用いてもよい。
その他の添加剤は下層のみに含有させてもよいし、感熱層のみに含有させてもよく、更に両方の層に含有させてもよい。
【0134】
平版印刷版原版の画像形成層(上記2層構造も含む)は、上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成できる。溶媒として、例えばエチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、α−ブチロラクトン、トルエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記溶媒は単独でも2種以上を混合してもよい。
【0135】
画像形成層を2層構造とする場合、感熱層に用いるアルカリ可溶性樹脂と下層に用いるアルカリ可溶性樹脂に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましい。つまり、下層を塗布した後、それに隣接して上層である感熱層を塗布する際、最上層の塗布溶剤として下層のアルカリ可溶性樹脂を溶解させうる溶剤を用いると、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、重層にならず均一な単一層になってしまう場合がある。このため、上部の感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれるアルカリ可溶性樹脂に対する貧溶剤であることが好ましい。
【0136】
画像形成層を塗布する場合の溶媒中の上記成分の全固形分濃度は、一般的に1〜10質量%が好ましい。
また、支持体上に塗布、乾燥して設けられる画像形成層の乾燥塗布量(固形分)としては、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。2層構造とする場合には、感熱層は0.05〜1.0g/m2であり、下層は0.3〜3.0g/m2であることが好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像形成層の皮膜特性は低下する。
支持体上に塗布する方法としては、公知の種々の方法の中から適宜選択できるが、例えばバーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、グレード塗布、ロール塗布などを挙げることができる。
画像形成層用塗布液中には、塗布性を良化する目的で界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤などを添加することができる。その添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
【0137】
−支持体−
平版印刷版原版の支持体としては、例えば純アルミニウム板、アルミニウム合金板、アルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムなどが挙げられる。
アルミニウム板の表面は砂目立て処理、ケイ酸ソーダ、フッ化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩などの水溶液への浸透処理、あるいは、陽極酸化処理などの表面処理が施されていることが好ましい。
また、米国特許第2,714,066号明細書に記載の砂目立てした後にケイ酸ナトリウム水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板、特公昭47−5125号公報に記載のアルミニウム板を陽極酸化処理した後、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中で浸漬処理したアルミニウム板も好ましい。
【0138】
前記陽極酸化処理としては、例えば硫酸、リン酸、クロム酸、硝酸、ホウ酸などの無機酸若しくは蓚酸、スルファミン酸などの有機酸又はこれらの塩の水溶液若しくは非水溶液の単独若しくは二種以上を組み合わせた電解液中で、アルミニウム板を陽極として電極を流すことにより施される。
また、米国特許第3,658,662号明細書に記載のシリケート電着も有効である。
【0139】
また、米国特許第4,087,341号明細書、特公昭46−27481号公報、特開昭52−30503号公報などに記載の、電解グレインを施した支持体に前記陽極酸化処理を施したものも有用である。
米国特許第3,834,998号明細書に記載の砂目立てした後、化学的にエッチングし、さらに陽極酸化処理したアルミニウム板も有用である。
これらの処理は支持体の表面を親水性とする目的で施されるほか、支持体上に設けられる画像形成層との有害な反応を防止する目的、画像形成像との密着性を向上させる目的などの種々の目的で施される。
【0140】
平版印刷版原版は、支持体上に少なくとも画像形成層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体上に下塗り層を設けることができる。
下塗り層に用いる成分としては、種々の有機化合物が挙げられ、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などが挙げられる。
前記有機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前述したジアゾニウム塩を下塗りすることも好ましい態様である。
【0141】
また、下塗り層としては、下記一般式(XIII)で表される構成単位を有する有機高分子化合物の少なくとも1種を含む有機下塗り層も好ましい。
【0142】
【化14】
【0143】
式中、R51は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R52及びR53は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、−OR54、−COOR55、−CONHR56、−COR57又は−CNを表し、前記R52及びR53は互いに結合して環構造を形成してもよい。ここで、R54〜R57はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。Xは水素原子、金属原子、−NR58R59R60R61を表す。ここでR58〜R61はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表し、R58及びR59は互いに結合して環構造を形成してもよい。mは1〜3の整数を表す。
下塗り層の乾燥塗布量としては2〜200mg/m2が好ましく、5〜100mg/m2がより好ましい。この乾燥塗布量が2mg/m2未満であると十分な膜性が得られないことがある。一方200mg/m2を超えて塗布しても、それ以上の効果を得ることはできない。
【0144】
下塗り層は下記方法により設けることができる。
即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液をアルミニウム板などの支持体上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液に、アルミニウム板などの支持体を浸漬して前記有機化合物を吸着させ、その後水等で洗浄、乾燥して設ける方法である。
【0145】
前者の方法では、前記有機化合物の0.005〜10質量%濃度の下塗り層用溶液を用いることが好ましい。
一方、後者の方法では、下塗り層用溶液の前記有機化合物の濃度としては、0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。また、浸漬温度としては20〜90℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。浸漬時間としては0.1秒〜20分が好ましく、2秒〜1分がより好ましい。下塗り層用溶液はアンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や塩酸、リン酸などの酸性物質を用いてpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、調子再現性改良を目的として黄色染料を追加することもできる。
【0146】
上記のようにして作成された平版印刷版原版は赤外線レーザーで記録することができる他、紫外線ランプによる記録やサーマルヘッド等による熱的な記録も可能である。
前記赤外線レーザーとしては波長700〜1200nmの赤外線を放射するレーザーが好ましく、同波長範囲の赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーがより好ましい。
【0147】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、実施例中の「%」はすべて「質量%」を表す。
【0148】
[SiO2含有のアルカリ現像処理液の調製]
酸化ケイ素SiO2及び酸化カリウムK2Oの混合比SiO2/K2Oが1.1のケイ酸カリウム4.0%水溶液1リットルに、以下に示す多価アルコール型アルキレンオキシド付加物A〜Cを表1に記載の濃度(g/リットル)で添加し、さらに炭酸カリウムを該アルキレンオキシド付加物に対して各アルキレンオキシド基換算で0.1倍モル濃度となるように添加し、アルカリ現像処理液(1)〜(7)を作成した。また、比較のため上記組成で炭酸カリウムを含まないものをアルカリ現像処理液(1’)〜(7’)とした。
さらに、上記組成で多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含まないものをアルカリ現像処理液(A)とした。
【0149】
[非還元糖含有のアルカリ現像処理液の調製]
非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2Oよりなるカリウム塩5.0%水溶液1リットルに、ソルーシア・ジャパン(株)製DQ−2066:0.5gおよび三洋化成(株)製エレミノールMON−2:0.5gを含有させ、その後、以下に示す多価アルコール型アルキレンオキシド付加物A〜Cを表1に記載の濃度(g/リットル)で添加し、さらに炭酸カリウムを該アルキレンオキシド付加物に対して各アルキレンオキシド基換算で0.1倍モル濃度となるように添加し、アルカリ現像処理液(8)〜(14)を作成した。また、比較のため上記組成で炭酸カリウムを含まないものをアルカリ現像処理液(8’)〜(14’)とした。
さらに、上記組成で多価アルコール型アルキレンオキシド付加物を含まないものをアルカリ現像処理液(B)とした。
【0150】
現像液に用いた化合物A〜C
【0151】
【化15】
【0152】
【表1】
【0153】
[画像形成層用素材の合成例1(B1成分:カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(共重合体)の合成)]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三ッ口フラスコに、メタクリル酸n−プロピル6.39g(0.045モル)、メタクリル酸1.29g(0.015モル)及び1−メトキシ−2−プロパノール20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に重合開始剤「V−601」(和光純薬(株)製)0.15gを加え70℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにメタクリル酸n−プロピル6.39g(0.045モル)、メタクリル酸1.29g(0.015モル)、1−メトキシ−2−プロパノール20g及び「V−601」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに90℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりこの共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0154】
[画像形成層用素材の合成例2(B1成分:カルボキシル基を有するアルカリ可溶性高分子化合物(共重合体)の合成)]
上記合成例1と同様の操作によって、メタクリル酸エチル/メタクリル酸イソブチル/メタクリル酸(モル%:35/35/30)を使用して共重合体を合成した。GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、50,000であった。
【0155】
[画像形成層用素材の合成例3(B1成分:カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の合成)]
冷却管コンデンサー、攪拌機を備えた500mlの三ッ口丸底フラスコに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸14.6g(0.109モル)、テトラエチレングリコール13.3g(0.0686モル)及び1,4−ブタンジオール2.05g(0.0228モル)を加え、N,N−ジメチルアセトアミド118gに溶解した。これに、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート30.8g(0.123モル)、ヘキサメチレンジイソシアネート13.8g(0.0819モル)及び触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.1gを添加し、攪拌下、90℃、7時間加熱した。
この反応液にN,N−ジメチルアセトアミド100ml、メタノール50ml及び酢酸50mlを加え、攪拌した後に、これを水4リットル中に攪拌しながら投入し、白色のポリマーを析出させた。このポリマーを濾別し、水にて洗浄後、減圧乾燥させることにより、60gのポリマーを得た。
GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、70,000であった。また、滴定によりカルボキシル基含量を測定したところ1.43meq/gであった。
【0156】
[画像形成層用素材の合成例4(B1成分:カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂の合成)]
以下のジイソシアネート化合物(モル%)
【0157】
【化16】
【0158】
及び以下のジオール化合物(モル%)
【0159】
【化17】
【0160】
を用いて、合成例3と同様にして共重合体を合成した。得られた共重合体の滴定による酸含量は1.72meq/gであり、GPCにより重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、80,000であった。
【0161】
[画像形成層用素材の合成例5(B2成分の合成)]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三つ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。この反応混合物にp−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することにより、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)
【0162】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた20ml三つ口フラスコにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、(0.0192モル)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258モル)、アクリロニトリル0.80g(0.015モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に重合開始剤「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物にさらにN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミド及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、さらに65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。GPCにより、この特定の共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ、53,000であった。
【0163】
[平版印刷版原版の作製1]
0.3mm厚のアルミニウム板(材質1050)をトリクロロエチレンで洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミス−水懸濁液を用い、この表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。
洗浄後、このアルミニウム板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗した後、さらに20%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、再度水洗した。このときの砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
【0164】
次に、このアルミニウム板を7%硫酸を電解液として、電流密度15A/dm2の直流電流で陽極酸化して3g/m2の陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
これを、30℃の珪酸ナトリウム2.5%水溶液で10秒処理し、水洗、乾燥後、下記下塗り層用塗布液を塗布し、80℃で15秒間乾燥して支持体を得た。乾燥後の下塗り層の乾燥塗布量は、15mg/m2であった。
【0165】
<下塗り層用塗布液>
下記共重合体P(分子量28000) 0.3g
メタノール 100g
水 1g
【0166】
【化18】
【0167】
得られた支持体上に下記画像形成層塗布液を塗布し、150℃、30秒乾燥させて、乾燥塗布量を1.8g/m2とし、ポジ型の平版印刷版原版を得た。
【0168】
実施例1〜22及び比較例1〜16
上記により得られた平版印刷版原版に出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザーを用いて主走査速度5m/秒にて露光し、25℃に保持した。
この露光済み平版印刷版原版を、上記の各種アルカリ現像処理液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)により、現像温度30℃、12秒で現像処理した。実施例1〜22では、アルカリ現像処理液(1)〜(14)を、比較例1〜7では、アルカリ現像処理液(1’)〜(7’)を、比較例9〜15では、アルカリ現像処理液(8’)〜(14’)を、および比較例8及び16では、アルカリ現像処理液(A)及び(B)を、それぞれ表に記載したように用いた。補充液の補充なしに、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理した。現像処理が終了したのち、水洗工程を経て、ガム(富士写真フイルム(株)製、GU−7(1:1))などで処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
【0169】
このようにして得られた平版印刷版および処理済み処理液について、下記項目(非画像部の現像性、画像部の膜べり、現像液中の不溶物)について評価した。
なお、印刷は下記条件で行った。
印刷機:小森コーポレーション社製リスロン印刷機
インキ:大日本インキ化学工業社製DIC−GEOS(N)墨
湿し水:富士写真フイルム(株)製IF−102
【0170】
<非画像部の現像性の評価>
上記のようにして現像直後、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理して得た平版印刷版の非画像部の現像性を「非画像部の残膜の有無」および「印刷物上の汚れの有無」を観察し、下記基準で官能評価した。その結果を表2〜表3に示す。
−基準−
○:十分に現像され、非画像部上の画像形成層の残存は認められなかった。印刷物上に汚れがなかった。
△:非画像部上に画像形成層が若干残存していた。印刷物上には汚れがなかった。
×:現像不良が認められ、非画像部に画像形成層が残存していた。印刷物上に汚れが発生した。
【0171】
<画像部の膜べりの評価>
上記のようにして現像直後、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理して得た平版印刷版の「画像部の欠陥」を下記基準に従い、目視により観察し、官能評価を行った。評価結果を表4〜表5に示す。
−基準−
◎:画像部に欠陥は認められず、画像濃度の低下も全く見られなかった。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
○:画像部に欠陥は認められないが、画像部濃度が1〜2%低下した。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
△:画像部に欠陥は認められないが、画像濃度が2%以上低下した。印刷物上でも画像部の白抜けはなかった。
×:画像部濃度が大幅に低下し、画像部に欠陥した部分有り。印刷物上に画像部の白ぬけが発生した。
【0172】
<現像液中の不溶物の評価>
現像液1リットル当たり、平版印刷版を1m2、10m2および100m2処理した現像液を密閉容器に入れ、冷蔵庫(5℃)、常温(20〜25℃)、サーモ(35℃)の中でそれぞれ1ヶ月保管したときの不溶物の発生状況を観察し、下記基準で評価した。結果を表6〜表7に示す。
−基準−
○:不溶物なし
△:若干の不溶物があるが、振ると溶解してなくなる。
×:振っても不溶物が残存する。
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
【表7】
【0179】
[平版印刷版原版の作製2]
上記の[平版印刷版原版の作製1]で使用したのと同様に処理し下塗り層を設
けたアルミニウム支持体に、以下の感光液2を塗布量が0.16g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、TABAI社製 PERFECT OVER PH200にてWindControlを7に設定して140℃、50秒で乾燥した。更にその上に感光液3を塗布量が0.85g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、TABAI社製 PERFECT OVER PH200にてWindControlを7に設定して120℃、60秒で乾燥し、2層構成の感熱層を有する平版印刷版原版を得た。
【0180】
【0181】
【0182】実施例23〜44および比較例17〜32上記より得られた平版印刷版原版に出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2)の半導体レーザーを用いて主走査速度5m/秒にて露光し、25℃に保持した。
この露光済み平版印刷版原版を、上記の各種アルカリ現像処理液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)により、現像温度30℃、12秒で現像処理した。実施例23〜44では、アルカリ現像処理液(1)〜(14)を、比較例17〜23では、アルカリ現像処理液(1’)〜(7’)を、比較例25〜31では、アルカリ現像処理液(8’)〜(14’)を、および比較例24及び32では、アルカリ現像処理液(A)及び(B)を、それぞれ表に記載したように用いた。補充液の補充なしに、50m2、100m2、200m2、300m2、400m2、500m2と処理した。現像処理が終了したのち、水洗工程を経て、ガム(富士写真フイルム(株)製、GU−7(1:1))で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
【0183】
こうして製版された平版印刷版について、実施例1〜22と同様にして評価を行った。その評価結果を、非画像部の現像性について表8〜9に、画像部の膜べりについて表10〜11、及び現像液中の不溶物について表12〜13に示す。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
【表10】
【0187】
【表11】
【0188】
【表12】
【0189】
【表13】
【0190】
【発明の効果】
本発明の感光性平版印刷版の製版方法によれば、使用するアルカリ現像処理液中に感光層成分が溶け込んでも一定の性能を維持することができ、長期間安定に平版印刷版原版の現像処理を行うことができる。また、本発明の感光性平版印刷版の製版方法によれば、現像性を維持しながら画像部に画像欠陥を招くことなく、エッジ調の高鮮鋭で鮮明な画像を形成することができる。
また、自動現像機のおいて版を搬送処理する際に、現像処理液の液はね及び液ゆれが起こり、それらが版の現像性に影響を与えることがあるが、本発明の製版方法によれば、そのような液ゆれや液はねが抑えられて安定した現像処理を行うことができる。
Claims (1)
- 赤外線吸収剤を含む画像形成層を有する感光性平版印刷版を露光後、アルカリ現像処理液で現像処理する感光性平版印刷版の製版方法であって、多価アルコール型アルキレンオキシド付加物および炭酸塩を含有し、前記炭酸塩をアルカリ現像処理液に含まれるアルキレンオキシド基のモル濃度の0.1倍以上のモル濃度に調整したアルカリ現像処理液で現像処理することを特徴とする感光性平版印刷版の製版方法。
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JP2002182926A JP2004029222A (ja) | 2002-06-24 | 2002-06-24 | 感光性平版印刷版の製版方法 |
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JP2007529030A (ja) * | 2004-03-12 | 2007-10-18 | コダック ポリクロウム グラフィクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング | 安定的な高pH現像剤 |
-
2002
- 2002-06-24 JP JP2002182926A patent/JP2004029222A/ja active Pending
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