JP2004028956A - 吸脱着量測定方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境中に存在する物質の吸脱着量をナノグラムからピコグラムの質量変化量として測定する微小質量測定装置及び微小質量測定方法を提供する。
【解決手段】先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近及びその後離間させ、この動作中の振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に接近又は離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法。
【選択図】 図1
【解決手段】先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近及びその後離間させ、この動作中の振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に接近又は離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡便な振動測定装置により環境中の測定対象物質の吸脱着量をピコグラムオーダーからナノグラムオーダーの質量増減量として測定する装置及び微小質量測定技術に関する。また、環境モニター装置として環境に変化をもたらす微量物質の検出技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
水晶振動子マイクロバランス法(QCM)は安価かつ簡便で3ng/cm・0.2Hzの分解能を有し、共振周波数の変化量から試料ガスや試料溶液の吸着を検知・定量することができる(例えば特開平5−187986、WO99/34176、特開2000−258324、特開2000−180250)。
しかし従来のQCMは吸着面が自由端であり、吸着面を振動させながら基板等へ数nmまで接近させるという機能を有していない。そのため、サブナノグラム以下の測定は困難であった。
二次イオン質量分析法SIMSや質量分光分析装置MSなどはピコグラムの分析感度を有する高精度微小質量分析装置であるが、高真空の雰囲気を必要とするため、重厚長大かつ高価であり、高度な分析技術を必要とするという問題がある。
原子間力顕微鏡に既存の質量分析法を採用した質量分析装置は考案されているが(例えば、特開平9−189680、特開平7−23796)、原子間力顕微鏡そのもので質量測定を行う方法は提案されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の微小質量分析装置は、高価で高度の測定技術を必要とすることから、ごく限られた機関でしか所有できず、安価で簡便なサブナノグラム以下の質量変化を測定できる装置の開発が望まれている。また、従来の装置は高真空の雰囲気を必要とし、重厚長大な排気設備が必要となるため可搬性がなく、必要とする現場で測定できる小型軽量の微小質量測定装置の開発が待たれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原子間力顕微鏡の鋭い先端を持ったカンチレバーを振動させながら、サンプル表面に接近し、その後離脱するときに得られる物理量と基板からの距離の関係曲線(フォースカーブと呼ばれている)を数値解析することにより、物質が吸脱着してカンチレバー先端の質量が変化したとき、フォースカーブの挙動が吸脱着量に応じて変化することを見出し、上記問題点を解決できるとの知見を得た。
この知見に基づき本発明は、
1.先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近及びその後離間させ、この動作中の振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に接近又は離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法
2.カンチレバーの振動中心と基板表面との距離をナノメーターオーダー以内に接近させることを特徴とする上記1記載の吸脱着量測定方法
3.カンチレバーの振動中心と基板表面との距離を1nm以内に接近させることを特徴とする上記1記載の吸脱着量測定方法
4.先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近、接触かつその後離脱させ、このカンチレバー挙動時の、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に、接近、接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法
5.先端に吸着種を備えたカンチレバー、カンチレバーに測定する物質や分子を吸脱着させる装置、カンチレバーを振動させながら基板表面に接近又は接触及び離脱させる装置、カンチレバーの動作時に、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定する装置を備え、物質や分子の吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動するカンチレバーが基板に接近又は接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から、吸脱着による質量増減量を測定する装置
、を提供するものである。
【0005】
【発明の実施形態】
本発明者らは、原子間力顕微鏡の振動法によるフォースカーブの挙動を解析することにより、物質の吸脱着によりカンチレバー先端の質量が変化したとき、フォースカーブも変化することを見出し、サブナノグラム以下における微小質量変化の検出可能性を明示することに成功した。
【0006】
カンチレバーを自由空間で振動させただけでは微小質量変化を知ることは困難である。しかし、測定対象物質がカンチレバー先端に吸脱着し、それを好ましくは標準的な物質基板(高配向性焼結グラファイト、二硫化モリブデン又はマイカなど)に1ナノメートルまで接近させれば、振動振幅、位相及び周波数などの物理量と、基板とカンチレバーの振動中心間の距離についての関係曲線に大きな影響を及ぼす。上記物理量の最大値に代表される特性値から吸脱着前後の質量変化を測定する。
【0007】
原子間力顕微鏡は材料表面の原子レベルにおける構造観測装置であるが、通常、観測する力を決定するためのフォースカーブの測定モードを有している。本モードを用いて、フォースカーブ上の特性値から、微小質量変化を知ることができる。
原子間力顕微鏡は他にも様々な観測・処理機構を有しているが、それらの機構及びソフトフェアを削除して、安価で軽量な微小質量測定装置として特化させることは容易である。
【0008】
特化した場合の、本発明の基本部分を図1に示す。図1はカンチレバー3を振動させながら、基板5に接近、接触、離脱させる本発明の装置の主要部である。カンチレバー3先端についたカンチレバー吸着部2の質量変化に伴う振動振幅1、基板5とカンチレバー3の振動中心間の距離4、位相、振動周波数などを計測する。
先端に吸着部2を有するカンチレバー3を1kHz〜1GHzで振動させながら、標準的な基板5に接近させ、ときには接触させ、及び又は離脱させる。
このときカンチレバーの振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離、カンチレバーの接近・離脱時のジャンプする距離の差、接近時と離脱時の最大振幅の差、又はその他の接近、接触、離脱動作に伴う変化量をモニターし、それらの値の変化から、カンチレバー先端に吸脱着した物質の質量をナノグラム以下のスケールで測定する。
このような吸脱着量測定装置及び質量測定方法ではサブナノグラム以下の微小質量測定も可能であり、環境に影響を及ぼす微量物質の高感度モニター装置として、極めて有効であることが分かった。これによって、従来に比べて安価かつ容易に現場で微小質量測定を可能にするという著しい効果を有する。
【0009】
本発明の微小質量測定方法の概略は、次の工程からなる。
(1)ブランク測定の工程
(2)吸脱着工程
(3)本測定工程
(4)質量算出工程
これによりナノグラム以下の微小質量を測定できる。
【0010】
次に、上記工程をそれぞれ詳しく説明する。
前記(1)のブランク測定の工程においては、計測前の状態を知るため、カンチレバーを振動させながら、基板表面に接近、必要に応じて接触させた後、離脱させ、振幅、位相、周波数又は接近・離脱時にカンチレバーがジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離との関係を測定する。
次に、前記(2)の吸脱着工程においては、ブランク測定したカンチレバーを環境中にさらし、吸脱着させる。
前記(3)の本測定工程においては、物質吸脱着させたカンチレバーを振動させながら、基板表面に接近、必要に応じて接触させた後、離脱させ、振幅、位相、周波数又は接近・離脱時にカンチレバーがジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離との関係を測定する。
前記(4)の質量算出工程においては、吸脱着前後の振幅、位相又は周波数と距離との関係曲線上の特性点を比較する。質量増減に伴う比較のポイントは、最も接近したときも非接触状態を保つ場合には、接近中における振幅、位相、周波数又はカンチレバーの接近・離脱時のジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離である。
それらを既知の質量増減又は濃度での測定結果と比較して、測定環境中の吸脱着量、質量増減又は濃度を求める。又はシミュレーション結果と比較して質量増減量を推定する。
【0011】
カンチレバーが基板に接触する場合の比較ポイントは、離脱時における振幅、位相、周波数の特性値、又はカンチレバーの接近・離脱時においてジャンプする距離の差又はそのときの基板−カンチレバー振動中心間の距離である。それらを既知の質量増減又は濃度での測定結果と比較して、測定環境中の吸脱着量、質量増減又は濃度を求める。又はシミュレーション結果と比較して質量増減量を推定する。
【0012】
【実施例及び比較例】
次に実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の例、態様あるいは変形等を当然含むものである。
例えば、下記の例では特定の測定項目を用いて説明しているが、これらの例以外の測定項目においても振動する物体が基板に接近・離脱させることによって起こる測定項目や特性点の変化から質量測定の分解能を向上させられる装置及び方法は当然本発明の適用範囲であり、同等の作用・効果を有する。
また、振動する物体に基板が接近しても同様の効果を得られる。
【0013】
(実施例1)
カンチレバーの先端が基板に接触する前に離脱させた場合におけるフォースカーブを数値シミュレーションした例を図2に示す。
図2において、カンチレバーが基板に接触しない場合において、カンチレバーの振動振幅(A)及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離(D)との関係を示す。このように、5ngはブランクテストの結果として示した。
吸着量が5ngだけ増加した場合、10ngと記した曲線になる。約29nmの距離から振幅約14nmで振動し、距離16nmで振幅が16nmまでジャンプし、その状態で徐々に5nmまで接近させる。
ここからカンチレバーを離脱させ、20nmまで振幅が上昇し、その後急激に14nmへジャンプして振幅が減少し、ほぼ自由振動状態に戻り、初めの29nmの距離まで離れたところで計測を停止する。
一方、位相は−45度から距離16nmで−130度までジャンプし、以後−175度近傍まで減少し、カンチレバーの離脱と共に20nmで徐々に−100度まで上昇した後、急激に−45度にジャンプして、その後距離29nmまでほぼ一定の位相−45度を示す。
このブランクテストにおいて(カンチレバー先端の初期質量が5.0ngの場合)、カンチレバーが基板に接近する際の最大振幅となる位置が16.12nm、最大振幅が15.92nm、位相が−127.15度であるが、5.0ngの質量が増加し10.0ngになると、最大振幅となる位置が15.63nm、最大振幅が15.57nm、位相が−128.36度に変化した。
このとき例えば、最大振幅となる位置が−0.49nm、又は最大振幅が−0.35nm、又は位相が−1.21度変化した場合には5.0ngの質量増加があったと測定することができる。
【0014】
(比較例1)
従来の水晶振動子マイクロバランス法の分解能は3ngであるが、その理由の一つとして吸着面に拘束がなかったことが挙げられる。実施例1に示した本発明で基板から29nm以上離れて拘束がない場合には、吸着量5.0ngの質量増加に伴う振動振幅の変化はわずか0.007nmである。
一方、本発明のように振動物体を基板に接近させた場合の最大振幅の差は0.35nmであり、接近させることによって、質量変化に伴う50倍以上大きな応答信号をもたらす。言い換えれば、質量測定感度を50倍向上させうる。例には示していないが、振幅の変わりに周波数の変化量を用いれば、さらに高感度になることが期待できる。
【0015】
(実施例2)
実施例2はカンチレバーの先端が基板に接触する場合の例であり、それを図3に示す。この場合にはカンチレバーが基板に接近するときではなく、基板から離脱するときの最大振幅、又はそのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離、又は位相、又は周波数、又は接近・離脱時の特性曲線において特性値がジャンプする距離の差を計測した方が良い場合が多い。
図3に、カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバーの振動振幅(A)及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離(D)との関係を示す。5ngはブランクテストの結果として示した。
5ng吸着した場合には10ngと示した曲線になる。約29nmの距離から振幅約14nmで振動し、距離15nmで振幅が16nm近くまでジャンプして断続的に基板に接触するようになり、その状態で徐々に5nmまで接近させる。ここからカンチレバーを離脱させ、5ngの場合は17.21nmまで、10ngの場合は15.86nmまで振幅が上昇し、その後急激に約14.2nmへと振幅が減少し、ほぼ自由振動状態に戻り、初めの29nmの距離まで離れたところで計測を停止する。A=Dの直線の上方ではカンチレバーが基板に接触していることを意味する。
一方位相は−45度から距離15nmで−60度までジャンプし、以後−19度近傍まで上昇した。カンチレバーの離脱と共に、5ngの場合は距離17.0nmで徐々に−58.7度まで減少した後、急激に−45度にジャンプして、その後距離29nmまでほぼ一定の位相−45度を示す。
【0016】
図3より、ブランクテストにおいてカンチレバー先端の初期質量を5.0ngとしたとき、カンチレバーが基板に接近するときの最大振幅が15.98nmであり、その後、基板から離脱する際の最大振幅となる位置が16.96nm、最大振幅が17.21nm、位相が−58.72度である。
物質がカンチレバー先端に吸着して5.0ngの質量が増加し10.0ngになると、基板に接近するときの最大振幅が15.56nm、離脱するときの最大振幅となる位置が15.58nm、最大振幅が15.86nm、位相が−51.90度に変化した。
よって、例えば、最大振幅となる位置が−1.37nm、又は最大振幅が−1.35nm、又は位相が6.82度、接近と離脱時の最大振幅の差が−0.92nm、カンチレバーの離脱時と接近時において最大振幅となる距離の差が−1.18nm{=(15.587−14.7021)−(16.9558−14.8981)}に変化した場合には5.0ngの質量増加があったと測定することができる。
【0017】
(比較例2)
実施例2ではカンチレバー先端を基板表面に接触させているが、基板から29nmの比較的遠方で自由振動させた場合には5.0ngの質量増加に伴う振幅差が−0.0007nmだけである。
一方、基板表面から離脱するときの最大振幅差は−1.37nmであり、基板に接近及び接触させることにより大きな差を計測可能と推定される。
言い換えれば、振動する物体を基板表面に接触・離脱させることにより、質量の分析感度を大幅に向上させることができることを意味している。これは非接触の場合と比較しても1.5倍の質量測定感度の向上に相当する。
【0018】
(実施例3)
実施例2のようなシミュレーションを多数行うことにより、ブランクテスト結果と基板から離脱するときの最大振幅の変化量dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離の変化量dD、位相の変化量dP又は周波数の変化量と質量増加dMの関係の近似式を導き出せる。
例えば、ブランクテストとの最大振幅の差と質量増加の関係の近似式は、
(dM)=0.06−1.46(dA)+1.62(dA)x(dA)となる。このような式から、−0.10nmの最大振幅の減少が計測できた場合の質量増加は0.22ngとなることが分かる。
【0019】
図4に、カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバー先端の質量増加dMと離脱時の最大振幅の変化dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離変化dD、及び位相の最小値変化dPの関係を示す。
縦軸の変数である質量変化をy、最大振幅変化、最大振幅となる距離の変化及び位相の変化など横軸の変数をxとしてそれぞれの近似式を示したものである。
【0020】
(実施例4)
図5は、カンチレバーが高配向性焼結グラファイトに接触する場合において、振幅に対応した電圧とカンチレバーの変位の関係を測定した例であり、金を少量真空蒸着すると、最大振幅となる変位が3.76nm減少した。
図4の最大振幅となる距離の変化の式に代入すると、27.25ngの質量が増加したことが分かる。なお、左下の小図はフォースカーブの全体図である。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、振動する物体に吸脱着した物質の質量増減量を測定する方法及び装置として、その振動物体を基板に接近、接触又は離脱させ、そのときの物体の振幅、基板と振動中心間の距離、位相又は周波数などの特性値の変化を計測することにより、サブナノグラムの質量増減量を測定できるというメリットを有する。また、本発明により、基板に近づけずに29nm以上の遠方で振動させた場合に比べて、50倍の分解能向上が期待できる。同様の分解能が水晶振動子マイクロバランス法に適用した場合には、60ピコグラムの質量分解能で測定可能と推測されるため、従来法に比べて安価で格段に優れた微小質量測定を達成できる。また本発明は真空、とりわけ超高真空中ではより高い測定感度を有するが、大気中や液体中でも質量測定の分解能向上が期待でき、高価な質量分析装置に比べて、安価で簡単に操作ができるという特徴も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】カンチレバーを振動させながら、基板に接近、接触、離脱させる本発明の主要部を示す装置の説明図である。
【図2】カンチレバーが基板に接触しない場合において、カンチレバーの振動振幅A及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離Dとの関係並びに位相Pとの関係を示す説明図である。
【図3】カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバーの振動振幅A及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離Dとの関係並びに位相Pとの関係を示す説明図である。
【図4】カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバー先端の質量増加dMと離脱時の最大振幅の変化dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離変化dD、及び位相の最小値変化dPの関係を示す説明図である。
【図5】カンチレバーが高配向性焼結グラファイトに接触する場合において、振幅に対応した電圧とカンチレバーの変位の関係を測定した例における質量増加の説明図である。
【符号の説明】
1:振幅
2:カンチレバー吸着部(探針)
3:カンチレバー
4:距離
5:基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡便な振動測定装置により環境中の測定対象物質の吸脱着量をピコグラムオーダーからナノグラムオーダーの質量増減量として測定する装置及び微小質量測定技術に関する。また、環境モニター装置として環境に変化をもたらす微量物質の検出技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
水晶振動子マイクロバランス法(QCM)は安価かつ簡便で3ng/cm・0.2Hzの分解能を有し、共振周波数の変化量から試料ガスや試料溶液の吸着を検知・定量することができる(例えば特開平5−187986、WO99/34176、特開2000−258324、特開2000−180250)。
しかし従来のQCMは吸着面が自由端であり、吸着面を振動させながら基板等へ数nmまで接近させるという機能を有していない。そのため、サブナノグラム以下の測定は困難であった。
二次イオン質量分析法SIMSや質量分光分析装置MSなどはピコグラムの分析感度を有する高精度微小質量分析装置であるが、高真空の雰囲気を必要とするため、重厚長大かつ高価であり、高度な分析技術を必要とするという問題がある。
原子間力顕微鏡に既存の質量分析法を採用した質量分析装置は考案されているが(例えば、特開平9−189680、特開平7−23796)、原子間力顕微鏡そのもので質量測定を行う方法は提案されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の微小質量分析装置は、高価で高度の測定技術を必要とすることから、ごく限られた機関でしか所有できず、安価で簡便なサブナノグラム以下の質量変化を測定できる装置の開発が望まれている。また、従来の装置は高真空の雰囲気を必要とし、重厚長大な排気設備が必要となるため可搬性がなく、必要とする現場で測定できる小型軽量の微小質量測定装置の開発が待たれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原子間力顕微鏡の鋭い先端を持ったカンチレバーを振動させながら、サンプル表面に接近し、その後離脱するときに得られる物理量と基板からの距離の関係曲線(フォースカーブと呼ばれている)を数値解析することにより、物質が吸脱着してカンチレバー先端の質量が変化したとき、フォースカーブの挙動が吸脱着量に応じて変化することを見出し、上記問題点を解決できるとの知見を得た。
この知見に基づき本発明は、
1.先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近及びその後離間させ、この動作中の振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に接近又は離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法
2.カンチレバーの振動中心と基板表面との距離をナノメーターオーダー以内に接近させることを特徴とする上記1記載の吸脱着量測定方法
3.カンチレバーの振動中心と基板表面との距離を1nm以内に接近させることを特徴とする上記1記載の吸脱着量測定方法
4.先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近、接触かつその後離脱させ、このカンチレバー挙動時の、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に、接近、接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法
5.先端に吸着種を備えたカンチレバー、カンチレバーに測定する物質や分子を吸脱着させる装置、カンチレバーを振動させながら基板表面に接近又は接触及び離脱させる装置、カンチレバーの動作時に、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定する装置を備え、物質や分子の吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動するカンチレバーが基板に接近又は接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から、吸脱着による質量増減量を測定する装置
、を提供するものである。
【0005】
【発明の実施形態】
本発明者らは、原子間力顕微鏡の振動法によるフォースカーブの挙動を解析することにより、物質の吸脱着によりカンチレバー先端の質量が変化したとき、フォースカーブも変化することを見出し、サブナノグラム以下における微小質量変化の検出可能性を明示することに成功した。
【0006】
カンチレバーを自由空間で振動させただけでは微小質量変化を知ることは困難である。しかし、測定対象物質がカンチレバー先端に吸脱着し、それを好ましくは標準的な物質基板(高配向性焼結グラファイト、二硫化モリブデン又はマイカなど)に1ナノメートルまで接近させれば、振動振幅、位相及び周波数などの物理量と、基板とカンチレバーの振動中心間の距離についての関係曲線に大きな影響を及ぼす。上記物理量の最大値に代表される特性値から吸脱着前後の質量変化を測定する。
【0007】
原子間力顕微鏡は材料表面の原子レベルにおける構造観測装置であるが、通常、観測する力を決定するためのフォースカーブの測定モードを有している。本モードを用いて、フォースカーブ上の特性値から、微小質量変化を知ることができる。
原子間力顕微鏡は他にも様々な観測・処理機構を有しているが、それらの機構及びソフトフェアを削除して、安価で軽量な微小質量測定装置として特化させることは容易である。
【0008】
特化した場合の、本発明の基本部分を図1に示す。図1はカンチレバー3を振動させながら、基板5に接近、接触、離脱させる本発明の装置の主要部である。カンチレバー3先端についたカンチレバー吸着部2の質量変化に伴う振動振幅1、基板5とカンチレバー3の振動中心間の距離4、位相、振動周波数などを計測する。
先端に吸着部2を有するカンチレバー3を1kHz〜1GHzで振動させながら、標準的な基板5に接近させ、ときには接触させ、及び又は離脱させる。
このときカンチレバーの振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離、カンチレバーの接近・離脱時のジャンプする距離の差、接近時と離脱時の最大振幅の差、又はその他の接近、接触、離脱動作に伴う変化量をモニターし、それらの値の変化から、カンチレバー先端に吸脱着した物質の質量をナノグラム以下のスケールで測定する。
このような吸脱着量測定装置及び質量測定方法ではサブナノグラム以下の微小質量測定も可能であり、環境に影響を及ぼす微量物質の高感度モニター装置として、極めて有効であることが分かった。これによって、従来に比べて安価かつ容易に現場で微小質量測定を可能にするという著しい効果を有する。
【0009】
本発明の微小質量測定方法の概略は、次の工程からなる。
(1)ブランク測定の工程
(2)吸脱着工程
(3)本測定工程
(4)質量算出工程
これによりナノグラム以下の微小質量を測定できる。
【0010】
次に、上記工程をそれぞれ詳しく説明する。
前記(1)のブランク測定の工程においては、計測前の状態を知るため、カンチレバーを振動させながら、基板表面に接近、必要に応じて接触させた後、離脱させ、振幅、位相、周波数又は接近・離脱時にカンチレバーがジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離との関係を測定する。
次に、前記(2)の吸脱着工程においては、ブランク測定したカンチレバーを環境中にさらし、吸脱着させる。
前記(3)の本測定工程においては、物質吸脱着させたカンチレバーを振動させながら、基板表面に接近、必要に応じて接触させた後、離脱させ、振幅、位相、周波数又は接近・離脱時にカンチレバーがジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離との関係を測定する。
前記(4)の質量算出工程においては、吸脱着前後の振幅、位相又は周波数と距離との関係曲線上の特性点を比較する。質量増減に伴う比較のポイントは、最も接近したときも非接触状態を保つ場合には、接近中における振幅、位相、周波数又はカンチレバーの接近・離脱時のジャンプする距離の差と基板−カンチレバー振動中心間の距離である。
それらを既知の質量増減又は濃度での測定結果と比較して、測定環境中の吸脱着量、質量増減又は濃度を求める。又はシミュレーション結果と比較して質量増減量を推定する。
【0011】
カンチレバーが基板に接触する場合の比較ポイントは、離脱時における振幅、位相、周波数の特性値、又はカンチレバーの接近・離脱時においてジャンプする距離の差又はそのときの基板−カンチレバー振動中心間の距離である。それらを既知の質量増減又は濃度での測定結果と比較して、測定環境中の吸脱着量、質量増減又は濃度を求める。又はシミュレーション結果と比較して質量増減量を推定する。
【0012】
【実施例及び比較例】
次に実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲における他の例、態様あるいは変形等を当然含むものである。
例えば、下記の例では特定の測定項目を用いて説明しているが、これらの例以外の測定項目においても振動する物体が基板に接近・離脱させることによって起こる測定項目や特性点の変化から質量測定の分解能を向上させられる装置及び方法は当然本発明の適用範囲であり、同等の作用・効果を有する。
また、振動する物体に基板が接近しても同様の効果を得られる。
【0013】
(実施例1)
カンチレバーの先端が基板に接触する前に離脱させた場合におけるフォースカーブを数値シミュレーションした例を図2に示す。
図2において、カンチレバーが基板に接触しない場合において、カンチレバーの振動振幅(A)及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離(D)との関係を示す。このように、5ngはブランクテストの結果として示した。
吸着量が5ngだけ増加した場合、10ngと記した曲線になる。約29nmの距離から振幅約14nmで振動し、距離16nmで振幅が16nmまでジャンプし、その状態で徐々に5nmまで接近させる。
ここからカンチレバーを離脱させ、20nmまで振幅が上昇し、その後急激に14nmへジャンプして振幅が減少し、ほぼ自由振動状態に戻り、初めの29nmの距離まで離れたところで計測を停止する。
一方、位相は−45度から距離16nmで−130度までジャンプし、以後−175度近傍まで減少し、カンチレバーの離脱と共に20nmで徐々に−100度まで上昇した後、急激に−45度にジャンプして、その後距離29nmまでほぼ一定の位相−45度を示す。
このブランクテストにおいて(カンチレバー先端の初期質量が5.0ngの場合)、カンチレバーが基板に接近する際の最大振幅となる位置が16.12nm、最大振幅が15.92nm、位相が−127.15度であるが、5.0ngの質量が増加し10.0ngになると、最大振幅となる位置が15.63nm、最大振幅が15.57nm、位相が−128.36度に変化した。
このとき例えば、最大振幅となる位置が−0.49nm、又は最大振幅が−0.35nm、又は位相が−1.21度変化した場合には5.0ngの質量増加があったと測定することができる。
【0014】
(比較例1)
従来の水晶振動子マイクロバランス法の分解能は3ngであるが、その理由の一つとして吸着面に拘束がなかったことが挙げられる。実施例1に示した本発明で基板から29nm以上離れて拘束がない場合には、吸着量5.0ngの質量増加に伴う振動振幅の変化はわずか0.007nmである。
一方、本発明のように振動物体を基板に接近させた場合の最大振幅の差は0.35nmであり、接近させることによって、質量変化に伴う50倍以上大きな応答信号をもたらす。言い換えれば、質量測定感度を50倍向上させうる。例には示していないが、振幅の変わりに周波数の変化量を用いれば、さらに高感度になることが期待できる。
【0015】
(実施例2)
実施例2はカンチレバーの先端が基板に接触する場合の例であり、それを図3に示す。この場合にはカンチレバーが基板に接近するときではなく、基板から離脱するときの最大振幅、又はそのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離、又は位相、又は周波数、又は接近・離脱時の特性曲線において特性値がジャンプする距離の差を計測した方が良い場合が多い。
図3に、カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバーの振動振幅(A)及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離(D)との関係を示す。5ngはブランクテストの結果として示した。
5ng吸着した場合には10ngと示した曲線になる。約29nmの距離から振幅約14nmで振動し、距離15nmで振幅が16nm近くまでジャンプして断続的に基板に接触するようになり、その状態で徐々に5nmまで接近させる。ここからカンチレバーを離脱させ、5ngの場合は17.21nmまで、10ngの場合は15.86nmまで振幅が上昇し、その後急激に約14.2nmへと振幅が減少し、ほぼ自由振動状態に戻り、初めの29nmの距離まで離れたところで計測を停止する。A=Dの直線の上方ではカンチレバーが基板に接触していることを意味する。
一方位相は−45度から距離15nmで−60度までジャンプし、以後−19度近傍まで上昇した。カンチレバーの離脱と共に、5ngの場合は距離17.0nmで徐々に−58.7度まで減少した後、急激に−45度にジャンプして、その後距離29nmまでほぼ一定の位相−45度を示す。
【0016】
図3より、ブランクテストにおいてカンチレバー先端の初期質量を5.0ngとしたとき、カンチレバーが基板に接近するときの最大振幅が15.98nmであり、その後、基板から離脱する際の最大振幅となる位置が16.96nm、最大振幅が17.21nm、位相が−58.72度である。
物質がカンチレバー先端に吸着して5.0ngの質量が増加し10.0ngになると、基板に接近するときの最大振幅が15.56nm、離脱するときの最大振幅となる位置が15.58nm、最大振幅が15.86nm、位相が−51.90度に変化した。
よって、例えば、最大振幅となる位置が−1.37nm、又は最大振幅が−1.35nm、又は位相が6.82度、接近と離脱時の最大振幅の差が−0.92nm、カンチレバーの離脱時と接近時において最大振幅となる距離の差が−1.18nm{=(15.587−14.7021)−(16.9558−14.8981)}に変化した場合には5.0ngの質量増加があったと測定することができる。
【0017】
(比較例2)
実施例2ではカンチレバー先端を基板表面に接触させているが、基板から29nmの比較的遠方で自由振動させた場合には5.0ngの質量増加に伴う振幅差が−0.0007nmだけである。
一方、基板表面から離脱するときの最大振幅差は−1.37nmであり、基板に接近及び接触させることにより大きな差を計測可能と推定される。
言い換えれば、振動する物体を基板表面に接触・離脱させることにより、質量の分析感度を大幅に向上させることができることを意味している。これは非接触の場合と比較しても1.5倍の質量測定感度の向上に相当する。
【0018】
(実施例3)
実施例2のようなシミュレーションを多数行うことにより、ブランクテスト結果と基板から離脱するときの最大振幅の変化量dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離の変化量dD、位相の変化量dP又は周波数の変化量と質量増加dMの関係の近似式を導き出せる。
例えば、ブランクテストとの最大振幅の差と質量増加の関係の近似式は、
(dM)=0.06−1.46(dA)+1.62(dA)x(dA)となる。このような式から、−0.10nmの最大振幅の減少が計測できた場合の質量増加は0.22ngとなることが分かる。
【0019】
図4に、カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバー先端の質量増加dMと離脱時の最大振幅の変化dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離変化dD、及び位相の最小値変化dPの関係を示す。
縦軸の変数である質量変化をy、最大振幅変化、最大振幅となる距離の変化及び位相の変化など横軸の変数をxとしてそれぞれの近似式を示したものである。
【0020】
(実施例4)
図5は、カンチレバーが高配向性焼結グラファイトに接触する場合において、振幅に対応した電圧とカンチレバーの変位の関係を測定した例であり、金を少量真空蒸着すると、最大振幅となる変位が3.76nm減少した。
図4の最大振幅となる距離の変化の式に代入すると、27.25ngの質量が増加したことが分かる。なお、左下の小図はフォースカーブの全体図である。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、振動する物体に吸脱着した物質の質量増減量を測定する方法及び装置として、その振動物体を基板に接近、接触又は離脱させ、そのときの物体の振幅、基板と振動中心間の距離、位相又は周波数などの特性値の変化を計測することにより、サブナノグラムの質量増減量を測定できるというメリットを有する。また、本発明により、基板に近づけずに29nm以上の遠方で振動させた場合に比べて、50倍の分解能向上が期待できる。同様の分解能が水晶振動子マイクロバランス法に適用した場合には、60ピコグラムの質量分解能で測定可能と推測されるため、従来法に比べて安価で格段に優れた微小質量測定を達成できる。また本発明は真空、とりわけ超高真空中ではより高い測定感度を有するが、大気中や液体中でも質量測定の分解能向上が期待でき、高価な質量分析装置に比べて、安価で簡単に操作ができるという特徴も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】カンチレバーを振動させながら、基板に接近、接触、離脱させる本発明の主要部を示す装置の説明図である。
【図2】カンチレバーが基板に接触しない場合において、カンチレバーの振動振幅A及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離Dとの関係並びに位相Pとの関係を示す説明図である。
【図3】カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバーの振動振幅A及び基板とカンチレバーの振動中心間の距離Dとの関係並びに位相Pとの関係を示す説明図である。
【図4】カンチレバーが基板に接触する場合において、カンチレバー先端の質量増加dMと離脱時の最大振幅の変化dA、そのときの基板とカンチレバーの振動中心間の距離変化dD、及び位相の最小値変化dPの関係を示す説明図である。
【図5】カンチレバーが高配向性焼結グラファイトに接触する場合において、振幅に対応した電圧とカンチレバーの変位の関係を測定した例における質量増加の説明図である。
【符号の説明】
1:振幅
2:カンチレバー吸着部(探針)
3:カンチレバー
4:距離
5:基板
Claims (5)
- 先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近及びその後離間させ、この動作中の振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に接近又は離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法。
- カンチレバーの振動中心と基板表面との距離をナノメーターオーダー以内に接近させることを特徴とする請求項1記載の吸脱着量測定方法。
- カンチレバーの振動中心と基板表面との距離を1nm以内に接近させることを特徴とする請求項1記載の吸脱着量測定方法。
- 先端に吸着種を備えたカンチレバーを測定環境にさらして物質や分子を吸脱着させる前後において、カンチレバーを振動させながらカンチレバーの振動中心と基板表面との距離を接近、接触かつその後離脱させ、このカンチレバー挙動時の、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定し、吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動しながらカンチレバーが基板に、接近、接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から吸脱着による質量増減量を測定する吸脱着量測定方法。
- 先端に吸着種を備えたカンチレバー、カンチレバーに測定する物質や分子を吸脱着させる装置、カンチレバーを振動させながら基板表面に接近又は接触及び離脱させる装置、カンチレバーの動作時に、振動振幅、位相、周波数又は基板とカンチレバーの振動中心間の距離を測定する装置を備え、物質や分子の吸脱着前後における最大振動振幅の変化量、最大振幅となる距離の変化量、位相の変化量、周波数の変化量等の、振動するカンチレバーが基板に接近又は接触及び離脱する挙動に伴う物理量の変化から、吸脱着による質量増減量を測定する装置。
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2002
- 2002-06-28 JP JP2002189611A patent/JP2004028956A/ja active Pending
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