JP2004028004A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】リッチ空燃比の排気ガスがNO触媒を通らずに排気浄化装置下流へと流出することを抑制する。
【解決手段】流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中のNOを保持し、流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができるNO触媒32を具備する。所定条件が成立したときにリッチ化手段19を作動することによってNO触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチとする。排気ガスを順流モードと逆流モードとの間でNO触媒への排気ガスの流入モードを切り換えるための切換手段26を具備する。リッチ化手段の作動中は切換手段による流入モードの切換を禁止すると共に、リッチ化手段の作動停止後においても予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換を禁止する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の燃焼室から排出される排気ガス中の微粒子を捕集し、この捕集した微粒子を酸化除去することができるパティキュレートフィルタ(以下、フィルタと称す)を備えた排気浄化装置が、特開2001−342821号公報に開示されている。当該公報に記載の排気浄化装置では、排気ガスを一方の側からフィルタに流入させたり、その反対側からフィルタに流入させたりすることができる。すなわち、フィルタに流入する排気ガスの向きを逆転することができる。
【0003】
そして、フィルタに流入する排気ガスの向きを逆転することによってフィルタ内に捕集されている微粒子がフィルタ内にて流動し、フィルタにおける微粒子の酸化作用が促進されることから、上記公報に記載の排気浄化装置では、フィルタにおける微粒子の酸化作用を促進すべき条件が成立したときに、フィルタに流入する排気ガスの向きを逆転するようにしている。
【0004】
ところで、流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中の窒素酸化物(NO)を保持し、流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができるNO触媒を内燃機関の排気通路に備えた排気浄化装置も公知である。こうした排気浄化装置では、NO触媒が保持することができるNOの量には限界があり、NO触媒が保持しているNOの量(以下、NO保持量と称す)がその上限値に達してしまうと、もはや、NO触媒は排気ガス中のNOを保持することができず、NOは排気浄化装置下流へと流出してしまう。
【0005】
そこで、こうした排気浄化装置では、NOが排気浄化装置下流へと流出することを抑制するために、NO触媒のNO保持量がその上限値に達する前に、NO触媒にリッチ空燃比の排気ガスを供給して、NO触媒に保持されているNOを還元浄化するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記公報に記載のフィルタにこのNO触媒を担持させた場合において、NO触媒(すなわち、フィルタ)に流入する排気ガスの向きを変えるべき条件と、NO触媒(すなわち、フィルタ)にリッチ空燃比の排気ガスを供給すべき条件とが同時に成立してしまうことがある。この場合、流入する排気ガスの向きが切り換えられたときに、リッチ空燃比の排気ガスの一部がNO触媒(すなわち、フィルタ)を通らずに、そのまま排気浄化装置下流へと流出してしまうという問題がある。
【0007】
こうした問題は、一般的に、上述したようなNO触媒を排気通路に具備し、NO触媒へ流入する排気ガスの向きを逆転することができ、そして、NO触媒にリッチ空燃比の排気ガスを供給すべき条件とNO触媒へ流入する排気ガスの向きを逆転すべき条件とが同時に成立してしまうような排気浄化装置にも、等しく生じる問題である。そこで、本発明の目的は、このような排気浄化装置において、リッチ空燃比の排気ガスがNO触媒を通らずに排気浄化装置下流へと流出することを抑制することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、1番目の発明では、内燃機関から排出される排気ガス中のNOを浄化するためのNO触媒を排気通路に具備し、該NO触媒がそこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中のNOを保持し、一方、そこに流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができ、さらに、排気ガスの空燃比をリッチとするためのリッチ化手段を具備し、所定条件が成立したときに該リッチ化手段を作動することによってNO触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチとするようにした排気浄化装置において、排気ガスを一方の側からNO触媒に流入させる順流モードと排気ガスを他方の側からNO触媒に流入させる逆流モードとの間でNO触媒への排気ガスの流入モードを切り換えるための切換手段を具備し、上記リッチ化手段の作動中は該切換手段による流入モードの切換を禁止すると共に、上記リッチ化手段の作動停止後においても予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換を禁止するようにした。ここで、リッチ化手段、所定条件、および、切換手段は、後述する実施形態において、それぞれ、燃料添加弁や燃料噴射弁、リッチ要求条件、および、切換弁に相当する。
【0009】
上記課題を解決するために、2番目の発明では、内燃機関から排出される排気ガス中のNOを浄化するためのNO触媒を排気通路に具備し、該NO触媒がそこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中のNOを保持し、一方、そこに流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができ、さらに、排気ガスの空燃比をリッチとするためのリッチ化手段を具備し、所定条件が成立したときに該リッチ化手段を作動することによってNO触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチとするようにした排気浄化装置において、NO触媒をバイパスするようにNO触媒上流の排気通路からNO触媒下流の排気通路へと延びるバイパス通路と、排気ガスをNO触媒に流入させる流入モードと排気ガスをバイパス通路に流入させる流入モードとの間で排気ガスの流入モードを切り換えるための切換手段とを具備し、上記リッチ化手段の作動中は該切換手段による流入モードの切換を禁止すると共に、上記リッチ化手段の作動停止後においても予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換を禁止するようにした。ここで、リッチ化手段、所定条件、および、切換手段は、後述する実施形態において、それぞれ、燃料添加弁や燃料噴射弁、バイパス可能条件、および、切換弁に相当する。
【0010】
3番目の発明では、1または2番目の発明において、上記リッチ化手段の作動が停止されてからリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過するまでの排気ガス通過完了期間が上記切換禁止期間として設定されている。
【0011】
4番目の発明では、3番目の発明において、上記排気ガス通過完了期間が機関要求負荷と機関回転数との少なくとも1つに基づいて算出される。
【0012】
5番目の発明では、3番目の発明において、内燃機関が複数の種類の燃焼モードでもって燃料を燃焼室内にて燃焼させることができ、上記排気ガス通過完了期間が上記燃焼モード毎に機関要求負荷と機関回転数との少なくとも1つに基づいて算出される。
【0013】
6番目の発明では、3番目の発明において、上記排気ガス通過完了期間が排気ガスの温度、排気ガスの流量、および、排気ガスの圧力の少なくとも1つに基づいて算出される。
【0014】
7番目の発明では、3番目の発明において、排気ガスの空燃比を検出することができる空燃比センサがNO触媒下流に配置され、リッチ化手段の作動停止後において該空燃比センサによって排気ガスの空燃比がリッチでなくなったことが検出されたことをもってリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過したと判断される。
【0015】
8番目の発明では、3番目の発明において、排気ガスの空燃比を検出することができる空燃比センサがNO触媒上流とNO触媒下流とに配置され、リッチ化手段の作動停止後においてNO触媒下流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比がリッチでなくなってから該NO触媒下流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比が上記NO触媒上流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比と略等しくなったことをもってリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過したと判断される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。図1は、本発明の排気浄化装置を備えた内燃機関を示している。図1に示されている内燃機関は圧縮着火式の内燃機関である。図1において、1は機関本体、2は燃焼室、3は燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを示している。燃料噴射弁3は燃料タンク(図示せず)からの燃料を一時的に溜めておくためのリザーバ(いわゆるコモンレール)6に接続されている。
【0017】
また、吸気マニホルド4は吸気管7を介して排気ターボチャージャ8のコンプレッサ9の出口部に接続されている。吸気管7には、燃焼室2に吸入される空気を冷却するためのインタークーラ10が取り付けられている。また、インタークーラ10下流の吸気管7内には、燃焼室2に吸入される空気の量を制御するために電動モータ(図示せず)によって駆動されるスロットル弁11が配置されている。また、コンプレッサ9の入口部にも吸気管12が取り付けられている。吸気管12には、燃焼室2内に吸入される空気の量を計量するためのエアフローメータ13が取り付けられている。
【0018】
一方、排気マニホルド5は排気管14を介して排気ターボチャージャ8のタービン15の入口部に接続されている。排気管14には、排気ガスの空燃比を検出するための上流側空燃比センサ16が取り付けられている。この上流側空燃比センサ16によって検出される排気ガスの空燃比とは、燃焼室内に吸入された空気の量に対する燃焼室内に噴射された燃料の量の比である。
【0019】
また、タービン15の出口部にも排気管17が取り付けられている。排気管17は排気浄化装置18の入口部に接続されている。また、排気管17には、そこに燃料を噴射するための燃料添加弁19が取り付けられている。また、排気管17には、排気ガスの温度を検出するための温度センサ20と、排気ガスの圧力を検出するための圧力センサ21とが取り付けられている。また、排気浄化装置18の出口部にも排気管22が取り付けられている。この排気管22にも、排気ガスの空燃比を検出するための下流側空燃比センサ23が取り付けられている。この下流側空燃比センサ23によって検出される排気ガスの空燃比とは、燃焼室内に吸入された空気の量に対する燃焼室内に噴射された燃料の量と燃料添加弁19から噴射された燃料の量との総量の比である。
【0020】
排気浄化装置18は、その入口部からループ状をなして当該入口部に戻る排気管24と、その入口部から下流へと延びる排気管(バイパス通路)25とを具備する。ループ状をなす排気管24内には、排気ガス中のNOを浄化するためのNO触媒32が配置されている。NO触媒32は、そこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには、排気ガス中のNOを吸収することによって、或いは、吸着させることによって保持する。一方、NO触媒32は、そこに流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると、保持しているNOを排気ガス中の還元剤、具体的には、炭化水素(燃料)によって還元浄化する。
【0021】
また、排気浄化装置18はその入口部に切換弁26を有する。図2(A)に示されているように、切換弁26が第1の位置に位置決めされているときには、入口部に流入した排気ガスは一方の側からNO触媒32に流入せしめられる。一方、図2(B)に示されているように、切換弁26が第2の位置に位置決めされているときには、入口部に流入した排気ガスはNO触媒32には流入せずに、そのまま、排気浄化装置18下流へと流出する。さらに、図2(C)に示されているように、切換弁26が第3の位置に位置決めされているときには、入口部に流入した排気ガスは他方の側からNO触媒32に流入せしめられる。
【0022】
このように、切換弁26の位置決め位置を切り換えることによって、排気ガスを一方の側からNO触媒32に流入させたり、或いは、排気ガスを他方の側からNO触媒32に流入させたり、或いは、排気ガスをNO触媒32に流入させずにそのまま排気浄化装置18下流へと流出させたりすることができる。すなわち、上述した3つの位置の間で切換弁26の位置決め位置を切り換えることによって、NO触媒32への排気ガスの流入モードを切り換えることができる。
【0023】
なお、以下、切換弁26が図2(A)に示されている位置に位置決めされているときのNO触媒32への排気ガスの流入モードを順流モードと称し、切換弁26が図2(C)に示されている位置に位置決めされているときのNO触媒32への排気ガスの流入モードを逆流モードと称す。また、切換弁26が図2(B)に示されている位置に位置決めされているときの排気管25への排気ガスの流入モードをバイパスモードと称す。
【0024】
また、燃焼室2から排出された排気ガスを再び燃焼室2に循環させるための排気循環(EGR)通路27が、排気マニホルド5から吸気マニホルド4まで延びる。EGR通路27には、燃焼室2に導入される排気ガスの量を制御するためのEGR制御弁28が取り付けられている。また、EGR通路27には、排気ガスを冷却するためのEGRクーラ29も取り付けられている。さらに、EGRクーラ29上流のEGR通路27内には、酸化触媒30が配置されている。この酸化触媒30は、EGRクーラ29や燃焼室2に導入される排気ガス中の燃料(炭化水素)を酸化除去する機能を果たす。
【0025】
ところで、圧縮着火式の内燃機関では、通常、空気過剰の下で燃料の燃焼が行われることから、燃焼室2から排出される排気ガスの空燃比は、通常、リーンである。また、燃焼室2内では、通常、NOが発生することから、燃焼室2から排出される排気ガス中には、通常、NOが含まれている。したがって、NO触媒32には、通常、リーン空燃比であってNOを含んだ排気ガスが流入することになる。上述したように、リーン空燃比の排気ガスがNO触媒32に流入しているときにはNO触媒32は排気ガス中のNOを保持するので、通常、NO触媒32に保持されているNOの量は増え続ける。
【0026】
ところが、NO触媒32が保持可能なNOの量には限界があるので、NO触媒32が保持しているNOの量(以下、NO保持量と称す)がその上限値に達してしまうと、もはや、NO触媒32は排気ガス中のNOを保持することができず、NOは排気浄化装置18下流へと流出してしまう。
【0027】
そこで、第1実施形態では、NOが排気浄化装置18下流へと流出することを抑制するために、NO触媒32のNO保持量がその上限値に達する前に、燃料添加弁19から燃料を噴射して排気ガスの空燃比をリッチとするようにしている。詳細には、第1実施形態では、NO触媒32のNO保持量がその上限値よりも小さいがその上限値に近い値を超えたという特定の条件(以下、リッチ要求条件と称す)が成立したときに、燃料添加弁19から燃料を噴射して排気ガスの空燃比をリッチとする。これによれば、NO触媒32にリッチ空燃比の排気ガスが流入するので、NO触媒32に保持されているNOが排気ガス中の還元剤、具体的には、燃料(炭化水素)や一酸化炭素によって還元浄化され、NO触媒32のNO保持量が少なくなる。したがって、その後、排気ガス中のNOはNO触媒32に保持されることとなる。
【0028】
もちろん、このように燃料添加弁19から燃料が噴射されるときには、切換弁26は図2(A)に示されている第1の位置、または、図2(C)に示されている第2の位置に位置決めされている。
【0029】
ところで、圧縮着火式の内燃機関では、通常、主にカーボンからなる微粒子が生成される。したがって、通常、排気ガス中には微粒子が含まれている。第1実施形態のNO触媒32はこうした微粒子を捕集するためのパティキュレートフィルタにもなっている。すなわち、第1実施形態では、NO触媒32はパティキュレートフィルタに担持されていることとなる。このパティキュレートフィルタの構造を図3に示した。以下の説明では、NO触媒とパティキュレートフィルタに参照符号25を付す。
【0030】
図3(A)はパティキュレートフィルタの端面図であり、図3(B)はパティキュレートフィルタの縦断面図である。図3(A)および図3(B)に示したように、パティキュレートフィルタ(以下、フィルタと称す)32はハニカム構造をなす隔壁54を具備する。これら隔壁54によって互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路50,51が形成される。これら排気流通路のうち略半数の排気流通路50がその下流端開口を栓52で閉鎖されている。以下、これら排気流通路50を排気ガス流入通路と称す。一方、残りの半数の排気流通路51はその上流端開口を栓53で閉鎖されている。以下、これら排気流通路51を排気流出通路51と称す。排気ガス流入通路50には4つの排気ガス流出通路51が隣接する。一方、排気ガス流出通路51には4つの排気ガス流入通路50が隣接する。
【0031】
排気ガスは排気ガス流入通路50に流入する。隔壁54はコージェライトのような多孔質材料からなるので、図3(B)において矢印で示したように、排気ガス流入通路50内の排気ガスは、隔壁54の細孔を通って、隣接する排気ガス流出通路51内に流れ込む。このように排気ガスがフィルタ32内を流れる間に、隔壁の表壁面や細孔を画成する隔壁の壁面上に微粒子が捕集される。
【0032】
ところで、フィルタ32が捕集可能な微粒子の量には限界があるので、フィルタ32が捕集している微粒子の量(以下、微粒子捕集量と称す)がその上限値に達してしまうと、もはや、フィルタ32は排気ガス中の微粒子を捕集することができず、微粒子が排気浄化装置18下流へと流出してしまう。また、フィルタ32の微粒子捕集量が多くなると、フィルタ32に起因する圧力損失が大きくなってしまう。
【0033】
そこで、第1実施形態では、フィルタ32に起因する圧力損失が大きくなることを抑制するために、フィルタ32に捕集された微粒子を短時間のうちに連続的に酸化除去するようにしている。詳細には、第1実施形態では、フィルタ32内に、隔壁54の両壁面上、および、隔壁54の細孔を画成する壁面上に全面に亘って、例えば、アルミナからなる担体層を形成し、この担体層上に、貴金属触媒と活性酸素生成剤とを担持し、活性酸素生成剤によって生成される活性酸素と貴金属触媒の触媒作用とによって、フィルタ32に捕集された微粒子を酸化除去するようにしている。
【0034】
ところで、フィルタ32に捕集された微粒子をフィルタ32内にて流動させると、フィルタ32における微粒子酸化作用が促進される。そこで、第1実施形態では、フィルタ32における微粒子酸化作用を促進するために、所定の条件(以下、微粒子流動要求条件と称す)が成立したときに、切換弁26の位置を図2(A)に示されている第1の位置と図2(C)に示されている第2の位置との間で切り換えることによって、すなわち、NO触媒32への排気ガスの流入モードを順流モードと逆流モードとの間で切り換えることによって、フィルタ32内における排気ガスの流れを逆転させ、フィルタ32に捕集されている微粒子を流動させるようにしている。
【0035】
なお、第1実施形態において、上記微粒子流動要求条件とは、例えば、所定の時間が経過したという条件や、フィルタ32に起因する圧力損失が所定の値を超えたという条件である。
【0036】
ところで、上記説明によれば、上述したリッチ要求条件と上述した微粒子流動要求条件とが同時に成立することがある。この場合に、燃料添加弁19から燃料を噴射すると共に、NO触媒32への排気ガスの流入モードを順流モードと逆流モードとの間で切り換えたとすると、切換え途中のバイパスモード時に、燃料添加弁19から噴射された燃料の一部がNO触媒32を通過せずに、そのまま、排気浄化装置18下流へと流出してしまう。
【0037】
そこで、第1実施形態では、燃料が排気浄化装置18下流へと流出してしまうことを抑制するために、リッチ要求条件が成立しているとき、すなわち、燃料添加弁19から燃料が噴射されているときには、微粒子流動要求条件が成立したとしても、切換弁26の位置の切換を禁止し、したがって、NO触媒32への排気ガスの流入モードの切換を禁止するようにしている。
【0038】
ところで、リッチ要求条件が不成立となり、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたとしても、燃料添加弁19から噴射された燃料によってリッチ空燃比とされている排気ガス全てがNO触媒32を通過しているわけではない。すなわち、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたときには、燃料添加弁19からNO触媒32までの排気通路内にリッチ空燃比の排気ガスが残っている。ここで、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたときに、切換弁26の位置が切り換えられ、したがって、NO触媒32への排気ガスの流入モードが切り換えられると、排気通路内に残っているリッチ空燃比の排気ガスの一部、すなわち、燃料が排気浄化装置18下流へと流出してしまう。
【0039】
そこで、第1実施形態では、燃料が排気浄化装置18下流へと流出してしまうことを抑制するために、リッチ要求条件が不成立となり、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたとしても、予め定められた期間(以下、切換禁止期間と称す)が経過するまでは、切換弁26の位置の切換を禁止し、したがって、NO触媒32への排気ガスの流入モードの切換を禁止するようにしている。
【0040】
図4は、第1実施形態に従って切換弁26の切換を禁止するための制御を実行するためのルーチンのフローチャートを示している。図4のルーチンでは、始めに、ステップ10において、リッチ要求フラグFがセットされている(F=1)か否かが判別される。リッチ要求フラグFはリッチ要求条件が成立するとセットされ、一方、リッチ要求条件が不成立となるとリセットされるフラグである。したがって、ステップ10において、F=1であると判別されたときには、リッチ要求条件が成立しており、燃料添加弁19から燃料が噴射されている最中であるので、ルーチンはステップ18に進んで、切換弁26の切換を禁止し、次いで、ステップ19において、切換禁止フラグFfがセットされ、ルーチンが終了する。なお、切換禁止フラグFfは、ステップ18において切換弁26の切換が禁止されるとセットされ、一方、ステップ15において切換弁26の切換禁止が解除されるとリセットされるフラグである。
【0041】
ところで、ステップ10において、F=0であると判別されたときには、ルーチンはステップ11に進んで、切換禁止フラグFfがセットされている(Ff=1)か否かが判別される。ステップ11において、Ff=0であると判別されたときには、ルーチンは終了する。一方、ステップ11において、Ff=1であると判別されたときには、ルーチンはステップ12に進んで、排気ガス通過完了期間Tpが算出され、次いで、ステップ13において、カウンタCがカウントアップされ、次いで、ステップ14において、このカウンタCが切換禁止期間Tpを超えた(C>Tp)か否かが判別される。
【0042】
ステップ14において、C≦Tpであると判別されたときには、ルーチンはステップ13に戻り、カウンタCがカウントアップされ、ルーチンは再びステップ14に戻る。一方、ステップ14において、C>Tpであると判別されたときには、ルーチンはステップ15に進んで、切換弁26の切換禁止が解除され、次いで、ステップ16において、切換禁止フラグFfがリセットされ、次いで、ステップ17において、カウンタCがクリアされ、ルーチンが終了する。
【0043】
ところで、上記切換禁止期間は、単に、任意に定められた所定期間であってもよいが、燃料が排気浄化装置18下流へと流出してしまうことをより確実に抑制するために、第1実施形態では、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されてからリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過するまでの期間(以下、排気ガス通過完了期間と称す)とされている。そして、第1実施形態では、内燃機関に要求される負荷(以下、機関要求負荷と称す)Lと機関回転数Nとの関係でもって排気ガス通過完了期間Tpを予め求め、図5に示したようにマップの形で記憶しておき、このマップから排気ガス通過完了期間を算出するようにしている。詳細には、第1実施形態によれば、機関要求負荷が高いほど排気ガス通過完了期間は短く、機関回転数が大きいほど排気ガス通過完了期間は短くなる。
【0044】
ところで、本発明の内燃機関では、EGR通路27を介して燃焼室2内に導入される排気ガス量(以下、EGRガス量と称す)が多くなると燃焼室2内にて発生する微粒子の量(以下、微粒子発生量と称す)も多くなり、やがて、ピークとなる。そして、EGRガス量がさらに多くなると、燃焼室内における燃料およびその周囲のガス温が煤の生成温度よりも低くなって、煤(微粒子)がほとんど発生しなくなる。すなわち、微粒子発生量がピークとなる排気ガス量よりも少ない適量の排気ガスを燃焼室2内に導入しつつ燃料を燃焼させれば、微粒子発生量を少なく抑えることができ、そして、微粒子発生量がピークとなる排気ガス量よりも多い適量の排気ガスを燃焼室2内に導入しつつ燃料を燃焼させても、微粒子発生量を少なく抑えることができる。
【0045】
さらに、EGRガス量が少なければ、相対的に、燃焼室2内の混合気中の空気の量が多くなるので、燃焼室2内にて燃焼可能な燃料の量が多くなる。したがって、EGRガス量が少なければ、内燃機関から大きな出力を出力可能である。一方、EGRガス量が多ければ、相対的に、燃焼室2内の混合気中の空気の量が少なくなるので、燃焼室2内にて燃焼可能な燃料の量が少なくなる。したがって、EGRガス量が多ければ、内燃機関から出力可能な出力は小さい。
【0046】
こうしたEGRガス量と微粒子発生量との関係、および、EGRガス量と内燃機関から出力可能な出力との関係とを考慮し、第1実施形態では、図6に示したように、機関運転状態を機関回転数Nと要求負荷Lとに基づいて2つの領域I、IIに分割している。そして、機関運転状態が第1の領域Iにあるときには、微粒子発生量がピークとなる排気ガス量よりも多い適量の排気ガスを燃焼室2内に導入しつつ燃料を燃焼させる燃焼モード(以下、低温燃焼モードと称す)でもって燃料を燃焼させる。一方、機関運転状態が第2の領域IIにあるときには、微粒子発生量がピークとなる排気ガス量よりも少ない適量の排気ガスを燃焼室2内に導入しつつ燃料を燃焼させる燃焼モード(以下、通常燃焼モードと称す)でもって燃料を燃焼させるようにしている。
【0047】
なお、第1の領域Iは機関回転数Nが比較的小さく且つ要求負荷Lが比較的低い領域であり、第2の領域IIはそれ以外の領域であって、機関回転数Nが比較的大きいか或いは要求負荷Lが比較的高い領域である。
【0048】
ところで、上述したように、第1実施形態では、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間が算出されるが、これら機関要求負荷と機関回転数とが同じであったとしても、実際にリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過するまでの期間は、燃料が低温燃焼モードでもって燃焼せしめられているときと燃料が通常燃焼モードでもって燃焼せしめられているときとで異なる。
【0049】
したがって、内燃機関が複数の種類の燃料モードでもって燃焼を燃焼室2内にて燃焼させるようになっている場合、燃料の燃焼モード(すなわち、燃焼形態)に応じて排気ガス通過完了期間を算出すべきである。そこで、本発明では、燃料の燃焼モード毎に燃料添加弁19からの燃料噴射量と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間が算出される。
【0050】
ここで、第1実施形態では、低温燃焼モードと通常燃焼モードといった燃焼モード毎に図5に示したようなマップを用意し、燃焼モードが低温燃焼モードであるときには、低温燃焼モード用のマップを用いて排気ガス通過完了期間を算出し、一方、燃焼モードが通常燃焼モードであるときには、通常燃焼モード用のマップを用いて排気ガス通過完了期間を算出するようにしている。これによれば、算出される排気ガス通過完了期間がより正確に真の排気ガス通過完了期間となっていることとなる。
【0051】
もちろん、燃焼モード毎に排気ガス通過完了期間に対する補正係数を求め、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて算出された排気ガス通過完了期間をこの補正係数でもって補正するようにしてもよい。
【0052】
ところで、本発明の内燃機関では、要求に応じた燃料噴射モードでもって燃料噴射弁3から燃料を噴射するようにしている。例えば、第1実施形態では、通常時においては、図7(A)に示した燃料噴射モードでもって、燃料噴射弁3から燃料が噴射される。すなわち、図7(A)に符号Qmで示したように、圧縮上死点TDC直後のタイミングで燃料噴射弁3から燃焼室2内に燃料が噴射される。このとき噴射された燃料は主に内燃機関を駆動するために消費される。
【0053】
さらに、第1実施形態では、内燃機関を駆動するために消費されるべき燃料の燃焼を促進すべきであると判断したときには、図7(B)に示した燃料噴射モードでもって、燃料噴射弁3から燃料が噴射される。すなわち、図7(B)に符号Qpiで示したように、圧縮上死点TDC直前のタイミングで燃料噴射弁3から燃焼室2内に少量の燃料が噴射される。このとき噴射された燃料は主に燃料の燃焼を促進するために消費される。そして、その後、図7(B)に符号Qmで示したように、圧縮上死点TDC直後のタイミングで燃料噴射弁3から燃焼室2内に内燃機関の駆動用の燃料が噴射される。
【0054】
さらに、第1実施形態では、燃焼室2から排出される排気ガスの温度を上昇すべきであると判断したときには、図7(C)に示した燃料噴射モードでもって、燃料噴射弁3から燃料が噴射される。すなわち、図7(C)に符号Qpoで示したように、圧縮上死点TDC直後のタイミングで燃料噴射弁3から燃焼室2内に内燃機関の駆動用の燃料が噴射される。そして、その後、図7(C)に符号Qpoで示したように、膨張下死点BDC直前のタイミング、すなわち、膨張行程後期のタイミングで燃料噴射弁3から燃焼室2内に少量の燃料が噴射される。この膨張行程後期のタイミングで噴射された燃料は主に排気ガスの温度を上昇するために消費される。
【0055】
ところで、上述したように、第1実施形態では、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間が算出されるが、これら機関要求負荷と機関回転数とが同じであっても、実際にリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過するまでの期間は、燃料の噴射モード毎に異なる。
【0056】
したがって、内燃機関が複数の種類の燃料噴射モードでもって燃料噴射弁3から燃料を噴射させるようになっている場合、燃料噴射モード(すなわち、燃料噴射形態)に応じて排気ガス通過完了期間を算出すべきである。そこで、本発明では、燃料噴射モード毎に機関要求負荷と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間が算出される。ここで、第1実施形態では、図7(A)〜図7(C)といった燃料噴射モード毎に図5に示したようなマップを用意し、各燃料噴射モード用のマップを用いて排気ガス通過完了期間を算出するようにしている。これによれば、算出される排気ガス通過完了期間がより正確に真の排気ガス通過完了期間となる。
【0057】
もちろん、燃料噴射モード毎に排気ガス通過完了期間に対する補正係数を求め、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて算出された排気ガス通過完了期間をこの補正係数でもって補正するようにしてもよい。
【0058】
ところで、上述したように、第1実施形態では、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間が算出されるが、これら機関要求負荷と機関回転数とが同じであったとしても、実際にリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過するまでの期間は、燃料添加弁19からの燃料噴射量や燃焼室2内の混合気の空燃比毎に異なる。そこで、第1実施形態では、図5に示したマップから算出された排気ガス通過完了期間を燃料添加弁19からの燃料噴射量および燃焼室2内の混合気の空燃比に応じて補正するようにしている。
【0059】
具体的には、例えば、第1実施形態では、燃料添加弁19からの燃料噴射量が多いほど算出された排気ガス通過完了期間をそれが長くなるように補正し、燃焼室2内の混合気の空燃比が小さいほど算出された排気ガス通過完了期間をそれが長くなるように補正する。これによれば、算出される排気ガス通過完了期間がより正確に真の排気ガス通過完了期間となっていることとなる。
【0060】
ところで、第1実施形態では、機関要求負荷と機関回転数とに基づいて排気ガス通過完了期間を算出するようにしているが、これ以外に、排気ガスの温度と排気ガスの流量と排気ガスの圧力とに基づいて排気ガス通過完了期間を算出することもできる。
【0061】
そこで、第2実施形態では、排気ガスの温度と排気ガスの流量と排気ガスの圧力とに基づいて排気ガス通過完了期間を算出するようにしている。具体的には、排気ガス通過完了期間をTp、燃料添加弁19からフィルタ32下流側端面までの排気通路の容積をVo、排気ガスの温度をTex、排気ガスの流量をGex、排気ガスの圧力をPex、排気ガスの気体定数をRexとした場合、式Tp=Vo/(Gex×Tex×Rex/Pex)でもって、排気ガス通過完了期間を算出するようにしている。
【0062】
なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様に、斯くして算出された排気ガス通過完了期間を燃焼モード、燃料噴射モード、燃料添加弁19からの燃料噴射量、燃焼室2内の混合気の空燃比などによって補正するようにしてもよい。また、排気ガスの流量はエアフローメータ13からの出力と燃料噴射量とに基づいて算出可能である。
【0063】
ところで、リッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過したことを空燃比センサを用いて検出することもできる。云い換えれば、空燃比センサを用いて排気ガス通過完了期間を算出することができる。そこで、第3実施形態では、以下のようにして、空燃比センサを用いて、リッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過したことを検出し、このときまでを排気ガス通過完了期間とするようにしている。
【0064】
すなわち、第3実施形態では、NO触媒32下流に配置されている下流側空燃比センサ23からの出力を監視し、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止された後に、この下流側空燃比センサ23によって検出される排気ガスの空燃比がリッチでなくなったことをもって、リッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過したと判断し、このときまでを排気ガス通過完了期間とする。
【0065】
また、第4実施形態では、以下のようにして、空燃比センサを用いて、リッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過したことを検出し、このときまでを排気ガス通過完了期間とするようにしている。すなわち、第4実施形態では、NO触媒32上流に配置されている上流側空燃比センサ16からの出力と、NO触媒32下流に配置されている下流側空燃比センサ23からの出力とを監視し、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止された後に、下流側空燃比センサ23によって検出される排気ガスの空燃比がリッチでなくなってから、この下流側空燃比センサ23によって検出される排気ガスの空燃比と、上流側空燃比センサ26によって検出される排気ガスの空燃比とがほぼ等しくなったことをもって、リッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒32を通過したと判断し、このときまでを排気ガス通過完了期間とする。
【0066】
図8は第4実施形態に従った燃料添加弁の作動などを示すタイムチャートである。図8(A)は燃料添加弁に対する作動信号を示し、この作動信号がONとなると燃料添加弁から燃料が噴射され、この作動信号がOFFとなると燃料添加弁からの燃料噴射が停止されることを示す。また、図8(B)は排気ガスの空燃比の推移を示し、鎖線Xは上流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比の推移であり、実線Yは下流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比の推移である。また、図8(C)は時刻を示している。
【0067】
時刻t0において、リッチ要求条件が成立すると、燃料添加弁に対する作動信号がONとされる。すると、下流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比、すなわち、フィルタ下流の排気ガスの空燃比Yが若干遅れて小さくなり、やがて、リッチとなる。そして、時刻t1において、リッチ要求条件が不成立となると、燃料添加弁に対する作動信号がOFFにされる。すると、フィルタ下流の排気ガスの空燃比Yが若干遅れて大きくなり、やがて、リーンとなる。そして、時刻t3において、上流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比Xとフィルタ下流の排気ガスの空燃比Yとがほぼ等しくなる。
【0068】
以降、同様に、時刻t4においてリッチ要求条件が成立し、時刻t5においてリッチ条件が不成立となり、時刻t8においてリッチ要求条件が成立し、時刻t9においてリッチ条件が不成立となり、時刻t12においてリッチ条件が成立し、時刻t13においてリッチ条件が不成立となる。
【0069】
さて、第4実施形態によれば、図8において、期間Aは燃料添加弁から燃料が噴射されている期間であるので、切換弁26の位置の切換が禁止される。また、第4実施形態によれば、図8において、期間Tpはフィルタ下流の排気ガスの空燃比がいったんリッチとなってから、上流側空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比とほぼ等しくなっていない期間、すなわち、上記切換禁止期間(排気ガス通過完了期間)であるので、ここでも、切換弁26の位置の切換が禁止される。したがって、図8において、期間Bが切換弁26の位置の切換が許可される期間である。
【0070】
ところで、上述した実施形態によれば、リッチ要求条件が比較的短い時間間隔でもって成立した場合、切換弁26の切換を禁止する期間が連続してしまい、非常に長くなってしまうことがある。この場合、切換弁26の位置がいっこうに切り換えられないので、フィルタ32の微粒子酸化作用が促進されないという不具合がある。そこで、上述した実施形態において、切換弁26の切換が禁止されている期間がトータルで許容上限値を超えたときには、燃料添加弁19からの燃料噴射を強制的に禁止し、その後、排気ガス通過完了期間が経過したときに切換弁26の位置を切り換え、その後、燃料添加弁19からの燃料噴射を再開するようにしてもよい。
【0071】
なお、上述した実施形態において、リッチ要求条件が成立したときに燃料添加弁19から燃料を噴射するのではなく、燃料噴射弁3から燃焼室2内に噴射する燃料の量を増量することによって、排気ガスの空燃比をリッチとするようにしてもよい。
【0072】
また、NO触媒32はそこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中の硫黄酸化物(SO)を保持する。そして、NO触媒32が保持しているSOの量が多くなると、NO触媒32が保持可能なNOの量が少なくなってしまう。ここで、NO触媒32の温度を比較的高温に保ったままでNO触媒32に流入する排気ガスの空燃比をリッチとすれば、NO触媒32に保持されているSOはNO触媒32から除去されることが分かっている。
【0073】
そこで、上述した実施形態において、NO触媒32のSO保持量が予め定められた量を超えたことをもって、リッチ要求条件が成立したとしてもよい。これによれば、NO触媒32のSO保持量が多くなったときに、NO触媒32にリッチ空燃比の排気ガスが供給されるので、NO触媒32からSOが除去されることとなる。もちろん、このとき、NO触媒32の温度を比較的高温に保つように何らかの手段を講じておく。
【0074】
また、フィルタ32の温度が高いほど、フィルタ32において単位時間当たりに酸化除去される微粒子の量は多くなる。ここで、フィルタ32にリッチ空燃比の排気ガスが流入すると、排気ガス中の炭化水素がフィルタ32にて酸化して、フィルタ32の温度が上昇する。そこで、上述した実施形態において、フィルタ32における単位時間当たりに酸化除去される微粒子の量を多く維持するために、フィルタ32において単位時間当たりに酸化除去可能な微粒子の量が予め定められた下限値を下回ったことをもって、リッチ要求条件が成立したとしてもよい。
【0075】
また、フィルタ32においては、微粒子は連続的に酸化除去されるが、燃焼室2から排出される微粒子の量が多ければ、フィルタ32には、一時的に、微粒子が比較的多く堆積することとなり、いったん堆積してしまった微粒子は酸化除去されづらくなってしまう。ここで、フィルタ32にリッチ空燃比の排気ガスを供給すれば、排気ガス中の炭化水素を還元剤として、フィルタ32に堆積している微粒子を一気に酸化除去することができる。そこで、上述した実施形態において、フィルタ32に堆積している微粒子の量が予め定められた上限値を超えたことをもって、リッチ要求条件が成立したとしてもよい。
【0076】
ところで、上述した実施形態における排気浄化装置の代わりに、図9に示した第5実施形態の排気浄化装置を採用している場合にも本発明を適用可能である。図9に示した排気浄化装置18では、排気通路にNO触媒32が配置されている。また、NO触媒32上流の排気通路からNO触媒32下流の排気通路までNO触媒32をバイパスするバイパス通路31が延びている。排気通路とバイパス通路31との分岐部には、排気ガスをNO触媒32に流入させるのか、或いは、排気ガスをバイパス通路に流入させるのかを切り換えるための切換弁26が配置されている。
【0077】
すなわち、切換弁26が図9(A)に示されている位置に位置決めされたときには、排気ガスはNO触媒32に流入する。一方、切換弁26が図9(B)に示されている位置に位置決めされたときには、排気ガスはバイパス通路31に流入する。例えば、排気ガス中にNOが含まれていないことから排気ガスをNO触媒32を介さずに排気浄化装置18下流へと流出させても排気エミッションは悪化せず、排気ガスをNO触媒32を介さずに排気浄化装置18下流へと流出させたほうがNO触媒32に起因する圧力損失が小さくなるので好ましい場合に、切換弁26は図9(B)に示されている位置に位置決めされる。
【0078】
このように、排気ガスをバイパス通路31に流入させてもよい条件(以下、バイパス可能条件と称す)が成立したときには、第5実施形態では、切換弁26の位置が図9(A)に示されている位置から図9(B)に示されている位置(以下、バイパス位置と称す)に切り換えられる。しかしながら、上述した実施形態と同様に、リッチ要求条件が成立している間にバイパス可能条件が成立したときに、切換弁26の位置をバイパス位置に切り換えてしまうと、リッチ空燃比の排気ガスがNO触媒32を通らずに排気浄化装置18下流へと流出してしまう。そこで、第5実施形態においても、上述した実施形態と同様に、リッチ要求条件が成立している間にバイパス可能条件が成立したとしても、切換弁26の位置の切換を禁止する。
【0079】
ところで、リッチ要求条件が不成立となり、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたとしても、燃料添加弁19から噴射された燃料によってリッチ空燃比とされている排気ガス全てがNO触媒32を通過しているわけではない。そこで、第5実施形態においても、上述した実施形態と同様に、リッチ要求条件が不成立となり、燃料添加弁19からの燃料噴射が停止されたとしても、切換禁止期間が経過するまでは、切換弁26の位置の切換を禁止するようにする。
【0080】
なお、切換禁止期間の設定など第5実施形態のその他の構成は上述した実施形態における構成と同様であるので、説明は省略する。もちろん、上述した実施形態と同様に、NO触媒32がNO触媒を担持したパティキュレートフィルタであってもよい。
【0081】
最後に、フィルタ32の微粒子酸化作用について詳細に説明する。本発明のフィルタ32では、貴金属触媒としては、白金(Pt)が用いられる。一方、活性酸素生成剤としては、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、ルビジウム(Rb)のようなアルカリ金属、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)のようなアルカリ土類金属、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)のような希土類、鉄(Fe)のような遷移金属、およびスズ(Sn)のような炭素族元素から選ばれた少なくとも一つが用いられる。
【0082】
活性酸素生成剤は、周囲に過剰な酸素が存在すると酸素を吸収によって保持し且つ周囲の酸素濃度が低下すると保持している酸素を活性酸素の形で解放することによって活性酸素を生成する。次に、活性酸素生成剤の活性酸素生成作用について、担体上に白金およびカリウムを担持させた場合を例にとって説明するが、他の貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、遷移金属を用いても同様な活性酸素生成作用が行われる。
【0083】
上述したように、圧縮着火式の内燃機関から排出される排気ガスの空燃比はリーンである。したがって、フィルタ32に流入する排気ガスは多量の過剰空気を含んでいる。また、圧縮着火式内燃機関の燃焼室2内ではNOが発生する。したがって、排気ガス中にはNOが含まれている。このため過剰酸素、および、NOを含んだ排気ガスがフィルタ32の排気ガス流入通路50内に流入することになる。
【0084】
図10(A)および(B)は、隔壁54上に形成された担体層の表面の拡大図を模式的に表わしている。なお、図10(A)および(B)において、60は白金の粒子を示し、61はカリウムを含んでいる活性酸素生成剤を示している。
【0085】
排気ガスがフィルタ32の排気ガス流入通路50内に流入すると、図10(A)に示したように、排気ガス中の酸素(O)がO またはO2−の形で白金の表面に付着する。排気ガス中のNOはこれらO またはO2−と反応し、NOとなる。斯くして生成されたNOの一部は、白金上で酸化されつつ活性酸素生成剤61内に吸収によって保持され、図10(A)に示したように、カリウム(K)と結合しながら硝酸イオン(NO )の形で活性酸素生成剤61内に拡散し、硝酸カリウム(KNO)を生成する。すなわち、排気ガス中の酸素が硝酸カリウム(KNO)の形で活性酸素生成剤61内に吸収によって保持される。
【0086】
ここで、燃焼室2内においては主にカーボン(C)からなる微粒子が生成される。したがって、排気ガス中にはこれら微粒子が含まれている。排気ガス中に含まれているこれら微粒子は排気ガスが排気ガス流入通路50内を流れているとき、或いは、隔壁54の細孔内を通過するときに、図10(B)において62で示したように、活性酸素生成剤61の表面上に接触して付着する。
【0087】
このように微粒子62が活性酸素生成剤61の表面上に付着すると、微粒子62と活性酸素生成剤61との接触面では酸素濃度が低下する。すなわち、活性酸素生成剤61の周囲の酸素濃度が低下する。酸素濃度が低下すると酸素濃度の高い活性酸素生成剤61内との間で濃度差が生じ、斯くして、活性酸素生成剤61内の酸素が微粒子62と活性酸素生成剤61との接触面に向けて移動しようとする。その結果、活性酸素生成剤61内に形成されている硝酸カリウム(KNO)がカリウム(K)と酸素(O)とNOとに分解され、酸素(O)が微粒子62と活性酸素生成剤61との接触面に向かい、その一方で、NOが活性酸素生成剤61から外部に放出される。
【0088】
ここで、微粒子62と活性酸素生成剤61との接触面に向かう酸素は、硝酸カリウムといった化合物から分解された酸素であるので、不対電子を有し、したがって、極めて高い反応性を有する活性酸素となっている。こうして活性酸素生成剤61は活性酸素を生成する。なお、外部に放出されたNOは下流側の白金上において酸化され、再び活性酸素生成剤61内に保持される。
【0089】
活性酸素生成剤61によって生成される活性酸素はそこに付着した微粒子を酸化除去するために消費される。すなわち、フィルタ32に捕集された微粒子は活性酸素生成剤61によって生成される活性酸素によって酸化除去される。
【0090】
このように本発明では、フィルタ32に捕集されている微粒子は、反応性の高い活性酸素によって、輝炎を発することなく酸化除去される。このように輝炎を発することのない酸化によって微粒子を除去すれば、フィルタ32の温度が過剰に高くなることがなく、したがって、フィルタ32が熱劣化することがない。
【0091】
さらに、微粒子を酸化除去するために利用される活性酸素は反応性が高いので、フィルタ32の温度が比較的低くても、微粒子は酸化除去される。すなわち、圧縮点火式内燃機関から排出される排気ガスの温度が比較的低く、このため、フィルタ32の温度も比較的低いことが多いが、本発明によれば、フィルタ32の温度を上昇させるための特別な処理を実行しなくても、フィルタ32に捕集された微粒子は酸化除去され続ける。
【0092】
なお、活性酸素生成剤61は周囲に過剰な酸素が存在するとNOを硝酸イオンの形で保持することによって結果的に酸素を保持する。すなわち、活性酸素生成剤61は周囲に過剰な酸素が存在するとNOを吸収によって保持する。一方、活性酸素生成剤61は周囲の酸素濃度が低下すると硝酸イオンの形で保持されているNOを解放することによって活性酸素を生成する。すなわち、活性酸素生成剤61は周囲の酸素濃度が低下するとNOを解放する。したがって、本発明の活性酸素生成剤61はNO保持剤としても機能する。
【0093】
ここで、活性酸素生成剤61周りの酸素濃度が低下する場合とは、上述したように、周囲の雰囲気はリーン雰囲気であるが活性酸素生成剤61に微粒子が付着した場合の他に、フィルタ32に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなって周囲の雰囲気がリッチ雰囲気となった場合がある。
【0094】
周囲の雰囲気はリッチ雰囲気であるが活性酸素生成剤61に微粒子が付着することで活性酸素生成剤61周りの酸素濃度が低下した場合に解放されたNOは、上述したように、再び活性酸素生成剤61に吸収によって保持される。一方、フィルタ32に流入する排気ガスの空燃比がリッチとなって周囲の雰囲気がリッチ雰囲気となった場合に解放されたNOは、白金の作用によって排気ガス中の炭化水素で還元浄化される。云い換えれば、内燃機関からリッチ空燃比の排気ガスが排出されるように内燃機関の運転を制御すれば、活性酸素生成剤61に保持されているNOを還元浄化することができる。したがって、本発明のフィルタ32は、活性酸素生成剤61と白金とからなるNO触媒を具備する。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、リッチ化手段の作動中は切換手段による流入モードの切換が禁止されるので、リッチ化手段の作動中においてリッチ空燃比の排気ガスがNO触媒を通らずに排気浄化装置下流へと流出してしまうことが抑制される。さらに、本発明によれば、リッチ化手段の作動が停止された後においても、予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換が禁止されるので、リッチ化手段の作動停止後においてもリッチ空燃比の排気ガスがNO触媒を通らずに排気浄化装置下流へと流出してしまうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の排気浄化装置を備えた内燃機関の全体図である。
【図2】本発明の排気浄化装置の動作形態を説明するための図である。
【図3】パティキュレートフィルタを示す図である。
【図4】第1実施形態の切換弁の切換禁止制御を実行するためのルーチンを示す図である。
【図5】排気ガス通過完了期間を算出するためのマップを示す図である。
【図6】燃焼モードを決定するために用いられるマップを示す図である。
【図7】第1実施形態の燃料噴射モードを説明するための図である。
【図8】第4実施形態に従った燃料添加弁の作動などを示すタイムチャートである。
【図9】第5実施形態の排気浄化装置を示した図である。
【図10】パティキュレートフィルタにおける微粒子酸化作用を説明するための図である。
【符号の説明】
1…機関本体
2…燃焼室
3…燃料噴射弁
4…吸気マニホルド
5…排気マニホルド
16…空燃比センサ
18…排気浄化装置
19…燃料添加弁
23…空燃比センサ
26…切換弁
27…EGR通路
31…バイパス通路
32…NO触媒(パティキュレートフィルタ)

Claims (8)

  1. 内燃機関から排出される排気ガス中のNOを浄化するためのNO触媒を排気通路に具備し、該NO触媒がそこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中のNOを保持し、一方、そこに流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができ、さらに、排気ガスの空燃比をリッチとするためのリッチ化手段を具備し、所定条件が成立したときに該リッチ化手段を作動することによってNO触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチとするようにした排気浄化装置において、排気ガスを一方の側からNO触媒に流入させる順流モードと排気ガスを他方の側からNO触媒に流入させる逆流モードとの間でNO触媒への排気ガスの流入モードを切り換えるための切換手段を具備し、上記リッチ化手段の作動中は該切換手段による流入モードの切換を禁止すると共に、上記リッチ化手段の作動停止後においても予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換を禁止するようにしたことを特徴とする排気浄化装置。
  2. 内燃機関から排出される排気ガス中のNOを浄化するためのNO触媒を排気通路に具備し、該NO触媒がそこに流入する排気ガスの空燃比がリーンであるときには排気ガス中のNOを保持し、一方、そこに流入する排気ガスの空燃比がリッチとなると保持しているNOを還元剤によって還元浄化することができ、さらに、排気ガスの空燃比をリッチとするためのリッチ化手段を具備し、所定条件が成立したときに該リッチ化手段を作動することによってNO触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチとするようにした排気浄化装置において、NO触媒をバイパスするようにNO触媒上流の排気通路からNO触媒下流の排気通路へと延びるバイパス通路と、排気ガスをNO触媒に流入させる流入モードと排気ガスをバイパス通路に流入させる流入モードとの間で排気ガスの流入モードを切り換えるための切換手段とを具備し、上記リッチ化手段の作動中は該切換手段による流入モードの切換を禁止すると共に、上記リッチ化手段の作動停止後においても予め定められた切換禁止期間に亘って切換手段による流入モードの切換を禁止するようにしたことを特徴とする排気浄化装置。
  3. 上記リッチ化手段の作動が停止されてからリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過するまでの排気ガス通過完了期間が上記切換禁止期間として設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の排気浄化装置。
  4. 上記排気ガス通過完了期間が機関要求負荷と機関回転数との少なくとも1つに基づいて算出されることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
  5. 内燃機関が複数の種類の燃焼モードでもって燃料を燃焼室内にて燃焼させることができ、上記排気ガス通過完了期間が上記燃焼モード毎に機関要求負荷と機関回転数との少なくとも1つに基づいて算出されることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
  6. 上記排気ガス通過完了期間が排気ガスの温度、排気ガスの流量、および、排気ガスの圧力の少なくとも1つに基づいて算出されることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
  7. 排気ガスの空燃比を検出することができる空燃比センサがNO触媒下流に配置され、リッチ化手段の作動停止後において該空燃比センサによって排気ガスの空燃比がリッチでなくなったことが検出されたことをもってリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過したと判断されることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
  8. 排気ガスの空燃比を検出することができる空燃比センサがNO触媒上流とNO触媒下流とに配置され、リッチ化手段の作動停止後においてNO触媒下流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比がリッチでなくなってから該NO触媒下流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比が上記NO触媒上流の空燃比センサによって検出される排気ガスの空燃比と略等しくなったことをもってリッチ空燃比の排気ガスのほとんど全てがNO触媒を通過したと判断されることを特徴とする請求項3に記載の排気浄化装置。
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