JP2004027131A - 成形体の処理方法及び成形体 - Google Patents
成形体の処理方法及び成形体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004027131A JP2004027131A JP2002188644A JP2002188644A JP2004027131A JP 2004027131 A JP2004027131 A JP 2004027131A JP 2002188644 A JP2002188644 A JP 2002188644A JP 2002188644 A JP2002188644 A JP 2002188644A JP 2004027131 A JP2004027131 A JP 2004027131A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer
- monomer unit
- ethylenically unsaturated
- acrylate
- weight
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Treatments Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
Abstract
【課題】
【解決手段】芳香族ビニル単量体を重合して芳香族ビニル系重合体を得、この芳香族ビニル系重合体の芳香環を水素化して脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する重合体を得、この重合体に電子線を照射し、次いで、100℃で真空乾燥し、60℃22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が50μg/g以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体を得る。
【選択図】 なし。
【解決手段】芳香族ビニル単量体を重合して芳香族ビニル系重合体を得、この芳香族ビニル系重合体の芳香環を水素化して脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する重合体を得、この重合体に電子線を照射し、次いで、100℃で真空乾燥し、60℃22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が50μg/g以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体を得る。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は成形体の処理方法及び成形体に関し、さらに詳細には、耐候性、耐久性、耐熱老化性、低熱変形性、耐磨耗性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、半導体ウェハなどの部材への汚染が無く、弾性、柔軟性にも優れ、さらに形状安定性または耐久性にも優れた成形体を得るための処理方法、及び半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材に適した成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合体からなる成形体の特性を改良するために、種々の処理方法が提案されている。例えば、特開平6−345885号公報には、α−オレフィンと環状オレフィンとの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体及びこれらの水素添加物から選ばれる樹脂に電子線又は放射線を照射する方法が開示されている。この方法によれば、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の諸特性に優れているとともに、十分な弾性、柔軟性をも兼ね備えた樹脂が得られることが開示されている。また、特開平10−147671号公報には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素化物(SEBS:ブタジエンに由来する不飽和結合のみが水素化されたもの)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素化物(SEPS:イソプレンに由来する不飽和結合のみが水素化されたもの)などのスチレン系樹脂に活性エネルギー線を照射する方法が開示されている。この方法によれば、耐薬品性、耐油性、耐磨耗性を大幅に向上させた樹脂が得られる旨が述べられている。
しかしながら、これらの方法で得られた樹脂成形体は、高温状態において形状安定性又は耐久性が不十分であり、ガスケットなどに適用したときにシール漏れなどを起こすことがあった。また半導体ウェハなどの異物汚染を極力避けなければならない部材と接触させたときに、部材が汚染されることがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、耐溶剤性、弾性、柔軟性、機械的強度などに優れ、接触物への汚染が無く、さらに形状安定性又は耐久性にも優れた成形体を得るための処理方法を提供することである。本発明の第二の目的は半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材に適した成形体を提供することである。
本出願人は脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックBとからなるブロック重合体からなり、100℃で1時間放置したときに有機物の放出量が50μg/g以下である樹脂成形体に関する発明を出願(特願2001−276012号)している。この出願発明によれば半導体ウェハ等への汚染の少ない樹脂成形体が提供できる。しかしながら、形状安定性が不十分であるために、パッキング材等として繰り返し使用するには不十分なものであった。
そこで、本発明者は上記検討をさらに推し進め、その結果、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することによって、前記第一の目的を達成できることを見出し、さらに、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が50μg/g以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体が、前記第二の目的を達成できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することを含む、処理方法が提供される。
また、本発明によれば、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が成形体1gあたり50μg以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の処理方法は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することを含み、好適にはさらに揮発成分を除去することを含む。
【0006】
本発明に用いる重合体は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有するものである。脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体を付加重合反応させることによって形成することもできるが、通常、芳香族ビニル単量体を付加重合反応させ、次いで芳香環を水素化することによって形成する。なお、脂環基としてはシクロアルカン構造を有する基、シクロアルケン構造を有する基などが挙げられるが、耐光安定性の観点からシクロアルカン構造を有する基、特にシクロヘキサン構造を有する基を有するものが好ましい。
【0007】
脂環基含有エチレン性不飽和単量体は、重合性のエチレン性不飽和基と脂環基を有するものであり、具体的には、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、α−メチルビニルシクロヘキサン、ビニルメチルシクロヘキサン、ビニルブチルシクロヘキサンのごときビニルシクロアルカン;ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルメチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテンのごときビニルシクロアルケン;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート;
【0008】
テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、2,7−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、2,10−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、11,12−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、
【0009】
ヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、12−メチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、11−メチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、12−エチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、11−エチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、オクタシクロ〔8.8.12,3.14,7.111,18.113,15.0.03,8.012,17〕ドコシル−5−(メタ)アクリレート、15−メチルオクタシクロ〔8.8.12,3.14,7.111,18.113,15.0.03,8.012,17〕ドコシル−5−(メタ)アクリレート、
【0010】
ペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、1,6−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、15,16−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、1,6−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、15,16−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレートのごときノルボルナン環構造含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0011】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−フェニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−メトキシメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、クロロメチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、ペンタフルオロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
【0012】
本発明に用いる重合体は脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位のみからなるものであってもよいが、機械的強度などの観点から、他の単量体単位を有する共重合体であってもよい。脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位は、該共重合体中に、通常、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%有する。
他の単量体単位としては、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位(以下、水素化された共役ジエン単量体単位ということがある。);芳香族ビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−シアノ−1−クロロエチレン等のエチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;1−ヒドロカルボニルエチレン、2−ヒドロカルボニル−プロペン、1−メチルカルボニルエチレン、2−メチルカルボニル−プロペン、N−フェニルマレイミド等のその他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、弾性、柔軟性及び形状安定性の観点から、水素化された共役ジエン単量体単位が好適である。水素化された共役ジエン単量体単位は、共重合体中に、通常40〜95重量%、好ましくは60〜90重量%有する。
【0013】
水素化された共役ジエン単量体単位は、通常、共役ジエン単量体を付加重合させ、次いで不飽和結合部分を水素化することによって形成される。
共役ジエン単量体としては1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。中でも1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。水素化された共役ジエン単量体単位の結合様式としては、1,4−結合、1,2−結合又は3,4−結合があるが、1,4−結合が全水素化共役ジエン単量体単位の中に、通常10〜95モル%、好ましくは40〜90モル%、特に好ましくは50〜90モル%占める。
水素化された共役ジエン単量体単位は、エチレン、プロピレン、ブテンなどのアルケンを付加重合させて得られる構造と同じになるので、アルケンを付加重合させて形成したものも含む。
【0014】
共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などがあるが、本発明においてはブロック共重合体が、特に、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックBとからなるブロック重合体が好ましい。ブロック重合体はそのブロック形態によって特に限定されず、例えば、一つの重合体ブロックAと一つの重合体ブロックBとからなるジブロック重合体、重合体ブロックA−重合体ブロックB−重合体ブロックAのブロック形態のトリブロック重合体、更に重合体ブロックが並んだマルチブロック重合体、重合体分子鎖がスター状に分岐した構造のブロック重合体、重合体ブロックAから重合体ブロックBへと共重合組成が次第に変化していくテーパー構造のブロック重合体などが挙げられる。
【0015】
本発明で好適に用いられるブロック重合体は、少なくとも二つの重合体ブロックA及び少なくとも二つの重合体ブロックBを有するものである。重合体ブロックAと重合体ブロックBの組合せによって、A−(B−A)n、B−A−(B−A)n、(A−B)m−X、(B−A)m−Xなどの構造を有するものが挙げられるが、これらのうち、A−(B−A)n、特にA−B−Aの構造を有するものが好ましい(但し、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、Xはカップリング剤をそれぞれ表す。また、n及びmは繰り返し単位数であり、自然数を表す。)。重合体ブロックAと重合体ブロックBとは明確にブロック化されている方が好ましいが、重合体ブロックAの組成から重合体ブロックBの組成に漸次変化するテーパー構造となっていてもよい。
【0016】
重合体ブロックAにおいて、各重合体ブロックAに占める脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位の量は、通常70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。重合体ブロックAの総量は、ブロック重合体全体に対して、通常、5〜60重量%、好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。重合体ブロックAの総量がこの範囲にあることによって、柔軟性や弾性と形状安定性とがバランスされた成形体が得られる。
重合体ブロックAを構成するその他の単量体単位としては、水素化された共役ジエン単量体単位;水素化されていない共役ジエン単量体単位;芳香族ビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;その他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、水素化された共役ジエン単量体単位が好適である。
【0017】
各重合体ブロックAは、それらの重量平均分子量が同じであっても、異なっていてもよい。異なる重量平均分子量を持つ重合体ブロックAでブロック重合体を構成する場合に、重合体ブロックAの最小重量平均分子量(Mamin)の重合体ブロックAの最大重量平均分子量(Mamax)に対する比(Mamin/Mamax)は、好ましくは0.05以上1未満、特に好ましくは0.1以上0.99未満である。
【0018】
なお、重合体ブロックAの重量平均分子量は、重合体ブロックAを得るための単量体を重合する前の重合体の重量平均分子量(重合体が未だ合成されていない場合は分子量をゼロとする。)と、重合体ブロックAを得るための単量体を重合した後の重合体の重量平均分子量との差から求めた値である。重合体ブロックBの重量平均分子量も重合体ブロックAの重量平均分子量と同様にして求めた値である。また、本発明において重量平均分子量及び数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法により測定されるポリスチレン換算した値である。但し、重合体がテトラヒドロフランに溶解しない場合は、トルエン溶液にして測定し、ポリイソプレン換算した値である。
【0019】
重合体ブロックBにおいて、各重合体ブロックB中の水素化された共役ジエン単量体単位の量は、通常40〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは60〜100重量%である。
【0020】
重合体ブロックBを構成するその他の単量体単位としては、前記の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位;水素化されていない共役ジエン単量体単位;エチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;その他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位が好適である。
【0021】
本発明に用いるブロック共重合体は、水素化された共役ジエン単量体単位の総量が、ブロック共重合体全体の、40〜95重量%、好ましくは50〜92重量%、特に好ましくは60〜90重量%である。水素化された共役ジエン単量体単位の総量が少なすぎると機械的強度が低下し、多すぎると耐熱性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明の重合体中の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位が、芳香族ビニル単量体を付加重合し次いで芳香環を水素化したものである場合、水素化されていない芳香族ビニル単量体単位と水素化された芳香族ビニル単量体単位との合計量に対する、水素化されていない芳香族ビニル単量体単位の量の百分率が、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
また、水素化されていない共役ジエン単量体単位と水素化された共役ジエン単量体単位との合計に対して、水素化されていない共役ジエン単量体単位の量の百分率が、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。水素化されていない芳香族ビニル単量体単位又は水素化されていない共役ジエン単量体単位の量が多いと熱安定性が低下することがある。
【0023】
本発明で用いる重合体は、そのガラス転移温度(以下、Tgということがある。ブロック共重合体でTgが2個以上あるものは高い値の方を指す。)が、通常60〜200℃、好ましくは70〜180℃、特に好ましくは90〜160℃のものである。Tgが低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。Tgが高すぎると加工性が悪くなる傾向がある。ここでTgは示差走査熱量計を用いて測定した値である。
【0024】
重合体の分子量は、特に制限されないが、本発明に用いる重合体がブロック共重合体である場合は、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が、50,000〜300,000、好ましくは55,000〜200,000、特に好ましくは60,000〜150,000である。ランダム共重合体あるいは単独重合体である場合は、重量平均分子量(Mw)は、通常、5000〜500000、好ましくは10000〜200000である。Mwが小さ過ぎる場合には、機械的強度が十分でなくなり、大きすぎる場合には成形時間が長くかかり重合体の熱分解を起こしやすくなり、有機物放出量が増加する傾向になる。また後述する水素化反応が進みにくくなり水素化率が低くなることがある。
重合体は、その分子量分布が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)による表記で、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.15以下である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
【0025】
重合体は、揮発成分含有量が0.5重量%以下のものが好ましい。ここで揮発成分含有量は、示差熱重量測定装置(セイコー・インスツルメント社製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃まで10℃/分で加熱したときに揮発する成分の量である。揮発成分の低減方法は特に制限されないが、例えば、貧溶媒によるポリマー凝固法、直接乾燥法、スチームストリッピング法、減圧ストリッピング法、窒素ストリッピング法などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いる重合体は、その製法によって、特に限定されないが、通常、脂環基含有エチレン性不飽和単量体及び必要に応じてその他の単量体とを付加重合することによって、あるいは芳香族ビニル単量体及び必要に応じてその他の単量体とを付加重合して芳香族ビニル系重合体を得、次いでその芳香環を水素化することによって得られる。
重合は、ラジカル重合触媒やイオン重合触媒のごとき重合開始剤を用いて、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの方法によって行うことができる。溶液リビング重合に用いる重合開始剤の代表的なものとして有機リチウム化合物が挙げられ、具体的には、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等が挙げられる。また重合用溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒が賞用される。さらに反応を制御するために、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの三級アミンを重合反応系に添加することができる。また、複数の重合体ブロックを繋いで、高分子量化するために用いるカップリング剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、エステル化合物、エポキシ化合物、四塩化ケイ素などが挙げられる。
【0027】
また芳香環や不飽和結合を水素化する方法は、公知の水素添加方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、水素添加触媒の存在下に、重合体の融液あるいは溶液、好ましくは溶液に水素を導入し、芳香環部分に水素を付加反応させる。水素添加触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル等の金属の微粉末、またはこれら金属類を活性炭、けい藻土、アルミナ、シリカ等の担体に担持したもの、ニッケル、クロム、コバルトなどの遷移金属の錯体と有機金属化合物とを組み合わせたもの等が挙げられる。
水素添加反応で用いる溶媒は、水素添加反応によって得られる水素化された重合体を溶解できるもので、触媒毒にならないものであればよい。溶媒の具体例として、シクロヘキサンなどのシクロアルカン;n−ヘキサンなどのアルカンが挙げられる。溶媒の粘度や反応速度を調整するために、アルコールやケトンなどの極性化合物を溶媒に添加してもよい。
芳香環を水素化した場合の芳香環水素化率は、特に限定されない。通常、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。芳香環の水素化反応と同時に、共役ジエン単量体に由来の不飽和結合も水素化される。共役ジエン単量体に由来の不飽和結合の水素化率は通常、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100%である。
【0028】
本発明に用いる重合体には配合剤が添加されていてもよい。配合剤としては、密着性改質剤、無機又は有機充填材、難燃剤、耐熱安定剤(酸化防止剤)、レベリング剤、チクソトロピック付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、乳剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合防止剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、誘電率調整剤等が挙げられ、その配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0029】
密着性改質剤としては、例えば、2−メルカプトプロピオン酸、トリメチルプロパントリス(2−チオプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、2−アミノチオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリアジンチオールのごときメルカプト化合物等を挙げることができる。これらの密着性改質剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、重合体100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0030】
充填材としては、例えば、フッ素化ポリエチレン系樹脂、メラミン系樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジン及びそれらの架橋体粒子;ガラス繊維、炭素繊維、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、アモルファス酸化チタンとチタン酸アルカリ土類金属塩との複合体、チタン酸ジルコン酸鉛;ワラストナイト、ゾノトライトなどのケイ酸カルシウム;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定型シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、カ−ボンブラック、グラファイト、タルク、クレー、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシサルフェ−ト、酸化スズ、アルミナ、カオリン、炭化ケイ素、金属粉末、ガラスパウダ−、ガラスフレ−ク、ガラスビ−ズ等を挙げることができる。これらの充填材として表面処理したものを用いてもよい。表面処理に用いられるカップリング剤は、充填材の分散性を良好にするために用いられるものであり、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。充填材の配合量は、重合体100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜60重量部の範囲である。
【0031】
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等、好適にはリン系難燃剤が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフェート、縮合リン酸エステル等のごときリン酸エステル化合物;
リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、メタリン酸、二リン酸、ホスフィン酸ナトリウム一水和物、ホスホン酸ナトリウム五水和物、ホスホン酸水素ナトリウム2.5水和物、リン酸ナトリウム十二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、次リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸二水素二ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム六水和物、三リン酸ナトリウム、cyclo−四リン酸ナトリウム、ホスフィン酸カリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム三水和物、メタリン酸カリウム、赤リン等のごとき無機リン化合物;
【0032】
ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン塩、ポリリン酸硫酸塩、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素のごときリン酸塩化合物;
ジフェニルリン酸エステル−2−プロペニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−2−ヒドロキシエチルアミド、ジフェニルリン酸エステル−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミド、ジフェニルリン酸エステル−ジ−2−シアノエチルアミド、ジフェニルリン酸エステル−p−ヒドロキシフェニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−m−ヒドロキシフェニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−シクロヘキシルアミドのごときリン酸エステルアミド化合物;
フェニルリン酸エステル−ジ−N,N−フェニルメチルアミド、フェニルリン酸エステル−N−シクロヘキシルアミドのごときリン酸アミド化合物;等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン元素を含有しないリン系難燃剤が好ましく、特にハロゲン元素を含有しないリン酸エステルアミド化合物又はリン酸アミド化合物が好適である。
難燃剤の使用量は、重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜60重量部である。
【0033】
着色剤としては特に制限はないが、例えば、モノアゾ、ジアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、ハンザイエロー、スレンイエロー、パーマネントイエロー、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、ニッケルチタンイエロー、アンチモン黄等の黄色系着色剤;キナクドリンレッド、クリスタルバイオレッド、パーマネントレッド、弁殻、朱、カドミウムレッド、クロムパーミリオン等の赤色系着色剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、インダスレンブルー、群青、紺青、コバルトブルー等の青色系着色剤;アニリンブラック、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の黒色系着色剤;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色系着色剤;等が挙げられる。これらの着色剤は、使用目的に応じて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を適宜選択、使用される。その配合量は、重合体100重量部に対して、0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜80重量部、より好ましくは1〜50重量部の範囲である。
【0034】
耐熱安定剤(すなわち酸化防止剤)としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤などが挙げられる。これらのうち、式(1)で表されるラクトンと、式(2)で表されるフェノールと、式(3)で表されるフォスファイト化合物との混合物からなる酸化防止剤が好ましく、特に式(1−1)で表されるラクトンと、式(2−1)で表されるフェノールと、式(3−1)で表されるフォスファイト化合物との混合物からなる酸化防止剤が好ましい。
【0035】
【化1】
(式(1)中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表す。)
【0036】
【化2】
(式(2)中のR5及びR6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表し、Rは独立して水素、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基又は5員環若しくは6員環の環を表し、A1及びA2はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキレンを表す。)
【0037】
【化3】
(式(3)中のR7及びR8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表し、x及びyはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、nは1又は2を表し、n=1の場合には左端部は水素、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基又は5員環若しくは6員環の環と結合する)
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
本発明の重合体には、他の樹脂や軟質重合体が配合されていてもよい。他の樹脂としては、直鎖状高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、ポリ4−メチルペンテンに代表されるポリオレフィン系樹脂;アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、HIPS、AS、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸グリシジルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−フマル酸共重合体に代表されるポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6に代表されるポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド;ポリ−4−フッ化エチレン(PTFE)等のフッ素化ポリエチレン系樹脂、ノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加重合体、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素化物等;が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン又はポリフェニレンエーテルが好ましい。なお、ノルボルネン系単量体とは、シクロペンタジエンとオレフィンとの付加反応等によって得られるノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン等の多環不飽和炭化水素、及びそれのアルキル置換体や;カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基などの極性基置換体のごとき多環不飽和炭化水素誘導体のことをいう。
【0042】
軟質重合体はガラス転移温度が30℃以下のものである。ガラス転移温度を2以上持つものは、複数のガラス転移温度の中の最低値が30℃以下のもので、好適にはゴム弾性を有するものである。具体的には、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の主鎖水素化物(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体〔SEBS〕)、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体の主鎖水素化物(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体〔SEPS〕);エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム;ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンのごときシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。これらの軟質重合体の中でも、本発明においては、耐熱性、誘電特性、表面光沢などの点からSEBSやSEPSが好ましい。軟質重合体は金属含量が通常50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。軟質重合体の量は、重合体100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは5〜60重量部である。この範囲で含有することによって、メッキの密着性と平滑性とがバランスする。
【0043】
本発明では、上述の重合体からなる成形体に高エネルギー線の照射処理をする。この処理により、重合体に架橋構造を付与することができるとともに、重合体の滅菌を行なうことができる。架橋を行うにあたっては、その架橋効率を高めるためにジアリルセバケートやトリアリルシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を重合体に配合してもよい。高エネルギー線の照射量は100〜300kGy、特に130から260kGyが好ましいが、この範囲を外れても重合体の性質が目的範囲を外れない限り特に問題はない。
【0044】
本発明処理方法に用いられる高エネルギー線は、特に制限されない。例えば、放射性同位元素などから放射されるα線、β線、及びγ線などが挙げられる。またヴァン・デ・クラーク型電子加速器、コッククロフト・ウォルトン型電子加速器、絶縁変圧器型電子加速器、変圧器型ガス(油)絶縁方式電子加速器、冷陰極衝撃電圧型電子加速器、線状フィラメント型電子加速器等によって発生される高エネルギー線を挙げることができる。さらにX線を挙げることができる。
【0045】
照射方法は特に制限されないが、たとえば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、キャスト成形法、インサート成形法、圧縮成形法などの方法によって所望の形状に成形し、その後照射することを挙げることができる。また、成形と同時に照射するいわゆるインライン方式であってもよい。医療用や半導体製造用成形体の場合は、予め所定形状を付与し、完全に密閉した状態又はクレーンルーム内で照射することが好ましい。
【0046】
さらに本発明の好適な処理方法では、照射処理に続いて、揮発成分の除去を行う。揮発成分除去の具体的方法として、マイクロウェーブや熱線によって、或いは高温雰囲気中に放置することによって、成形体を加熱して除去する方法;または減圧下に成形体を放置して除去する方法が用いられる。加熱温度は、通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、圧力は常圧以下、好ましくは10〜2000Paに減圧する。除去時間は特に制限されないが、通常24時間以上である。
【0047】
このように、前述の重合体からなる成形体に高エネルギー線を照射することによって、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪を低下させ、好ましくは70%以下、特に好ましくは65%以下にすることができる。またさらに揮発成分を除去することによって、圧縮永久歪を低下させることにくわえ、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量を減少させ、好ましくは成形体1gあたり50μg以下、特に好ましくは40μg以下にすることができる。
【0048】
本発明の成形体は、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、好ましくは65%以下であり、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が成形体1gあたり50μg以下、好ましくは40μg以下の、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなるものである。本発明の成形体は、前記の処理方法によって好適に製造することができる。
圧縮永久歪は、JIS−K6262に準拠して60℃22時間の条件で測定した値である。有機物の放出量は、成形体から約11mgの試料を採り、精秤した後、サンプルホルダー内で試料を100℃に加熱し、300分間に放出される有機物成分を活性炭素チューブで捕集し、TDS−GC−MS[GC−MS装置:Agilent社製6890A;加熱脱着導入システム(TDS):Gerstel社製CIS−4;カラム:HP−1MS(0.25mmφ×30m、df=1.0μm)、オーブン:40℃で3分間保持し、280℃まで昇温(昇温速度:10℃/分)し、次いで280℃で10分間保持;ヘリウム流量:1.0ml/分;測定イオン:29〜550]を使用して、分析し、検出された有機物質の全ピーク面積を合計し、それと同面積のピーク面積を示すテトラデカンの重量に換算し、この値を、成形体1gあたりに換算した値である。
【0049】
この圧縮永久歪及び有機物放出量が上記範囲にある脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体は、耐候性、耐久性、耐熱老化性、低熱変形性、耐磨耗性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、接触物への汚染が無く、弾性、柔軟性にも優れ、さらに形状安定性又は耐久性にも優れている。そして、この成形体は半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材等に適している。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、「部」は特に断りがない限り「重量部」である。
[評価方法]
▲1▼圧縮永久歪の測定
JIS−K6262に準拠して測定した。
▲2▼有機物放出量の測定
成形体から約11mgの試料を採り、精秤した後、サンプルホルダー内で試料を100℃に加熱し、300分間に放出される有機物成分を活性炭素チューブで捕集し、TDS−GC−MS[GC−MS装置:Agilent社製6890A;加熱脱着導入システム(TDS):Gerstel社製CIS−4;カラム:HP−1MS(0.25mmφ×30m、df=1.0μm)、オーブン:40℃で3分間保持し、280℃まで昇温(昇温速度:10℃/分)し、次いで280℃で10分間保持;ヘリウム流量:1.0ml/分;測定イオン:29〜550]を使用して、分析した。検出された有機物質の全ピーク面積を合計し、それと同面積のピーク面積を示すテトラデカンの重量に換算し、この値から、成形体1gあたりの有機物放出量を求めた。単位はμg−有機物/g−成形体である。
【0051】
▲3▼ウェハ汚染性
クラス1000のクリーンルーム内で、8インチのベアシリコンウェハを濃度4.5%のフッ化水素酸水溶液に25℃で1分間浸漬して酸化ケイ素の皮膜を除去し、次いで濃度98%の硫酸と濃度30%の過酸化水素の混合液(容積比50:1)に110℃で10分間浸漬し、さらに濃硫酸に65℃で10分間浸漬し、最後に多量の超純水で洗浄して酸を除去し、遠心分離機で水分を振り飛ばし、酸処理ウェハを得た。
酸処理ウェハの、温度23℃および相対湿度40%環境下での純水の接触角(協和界面科学社製、CA−150型接触角測定装置を用いて測定)は2度未満であった。なお、酸処理前のウェハの純水接触角は32度であった。
酸処理ウェハ25枚を、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン社製、ゼオノア1420R)で形成されたキャリアに並べ、同シクロオレフィンポリマーで形成されたウェハケースに収納し、Oリングをウェハケースに取り付け、同シクロオレフィンポリマーで形成された蓋で密閉をした。
シリコンウェハを収納したウェハケースを、クラス1000のクリーンルーム内(有機物量0ppmの部屋)に、40℃で48時間放置した。
放置後、ウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出し、純水の接触角を測定し、25枚のシリコンウェハについて、純水の接触角の平均値を求めた。平均値が10度未満である場合はA、10度以上20度未満である場合はB、20度以上である場合はCとして評価した。接触角が小さいほど、汚染が少ないことを意味する。
【0052】
▲4▼Oリングの耐久性
酸処理ウェハ25枚を新たに用意し、それらを、前記で用いたキャリア、ウェハケース、Oリングおよび蓋からなる容器に密閉した。シリコンウェハを収納したウェハケースを、クラス1000のクリーンルーム内(有機物量0ppmの部屋)に、40℃で48時間放置した。放置後、同クリーンルーム内でウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出した。
この操作をさらにもう1回行った。
次に、有機物量が10ppmの部屋に40℃48時間放置し、放置後ウェハケース表面に付着した有機物を洗浄し、クリーンルーム(有機物量0ppmの部屋)内で洗浄したウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出した以外は前記操作と同様の操作を1回行った。
最終回において取り出したシリコンウェハ25枚の純水接触角の平均値を求め、前記同様の方法で汚染性を評価した。
【0053】
〔製造例1〕
(第一ブロックA):十分に乾燥し窒素置換した攪拌機付き反応容器内に、脱水シクロヘキサン300部、スチレン15部及びジブチルエーテル0.38部を仕込み、温度60℃に加温した。反応液を攪拌し、そこにn−ブチルリチウム溶液(濃度15重量%有ヘキサン溶液)0.63部を添加して1時間重合反応を行った。
(ブロックB):次いで反応液中に、イソプレン70部を2時間かけて連続的に添加して、さらに1時間重合反応を行った。
(第二ブロックA)その後、反応液中にスチレン15部をさらに添加して、さらに1時間重合反応を行った。最後、反応溶液にイソプロピルアルコール0.2部を添加して重合反応を停止させた。
【0054】
上記重合反応液400部を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移し替え、それにケイソウ土担持型ニッケル触媒(日揮化学社製;E22U)4部を添加し混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて5時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)0.1部を添加し、溶解させ、薄膜蒸発機(フィルムトルーダー、Buss社製)を用いて、260℃(533°K)、7torr、滞留時間1.2時間の条件で揮発分を蒸発させスチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体(A−B−A型ブロック共重合体)の芳香環水素化物Aを得た。
芳香環の水素化率は100モル%、イソプレン不飽和結合部分の水素化率は100モル%、ガラス転移温度132℃であった。その他、この水素化物Aの物性を表2に示す。
【0055】
〔製造例2〕
スチレン、イソプレン量、触媒量等を表1に示す処方に変えた他は製造例1と同様にしてブロック共重合体の芳香環水素化物BおよびCを得た。その結果を表1および表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1
クラス1000のクリーンルーム内で、水素化物Aのペレットを、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS450)を用いて、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、成形サイクルタイム40秒、金型温度40℃の条件で、Oリング(直径5mmの円形状断面をなした、リング直径が310mmの成形体)を成形した。成形したOリングは、その表面がトルエンに溶解しやすく、その圧縮永久歪は、23℃22時間で65、60℃22時間で90であった。
次に該Oリングに電子線を照射量180kGyで照射した。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で35、60℃22時間で62であった。有機物放出量は295μg/gであった。
【0059】
実施例2
水素化物Aを水素化物Bに変えた他は実施例1と同様にしてOリングを得た。電子線照射前の圧縮永久歪は、23℃22時間で80、60℃22時間で92であった。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で68、60℃22時間で82であった。有機物放出量は257μg/gであった。
【0060】
実施例3
クラス1000のクリーンルーム内で、水素化物Cのペレットを、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS450)を用いて、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、成形サイクルタイム40秒、金型温度40℃の条件で、Oリング(直径5mmの円形状断面をなした、リング直径が310mmの成形体)を成形した。成形したOリングは、その表面がトルエンに溶解し、その圧縮永久歪は、23℃22時間で20、60℃22時間で84であった。 次に該Oリングに電子線を照射量150kGyで照射した。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で20、60℃22時間で68であった。有機物放出量は191μg/gであった。
【0061】
実施例4〜6
実施例3において電子線照射量を180kGy、210kGy、及び240kGyに変えた他は実施例3と同様にしてOリングを得た。これらのOリングの圧縮永久歪及び有機物放出量を表3に示した。
【0062】
比較例1
実施例3において電子線を照射しなかった他は実施例3と同様にしてOリングを得た。このOリングの圧縮永久歪及び有機物放出量を表3に、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
【表3】
【0063】
実施例1〜6及び比較例1の結果から、本発明の処理方法、すなわち、高エネルギー線の照射を行った成形体は、未照射の成形体に比して、60℃22時間の圧縮永久歪が小さくなっていることがわかる。またトルエンに対する耐性が高くなっていることがわかる。これらのことから、本発明の処理方法を実施すると、耐溶剤性、弾性、柔軟性、機械的強度などに優れ、さらに高温の圧縮永久歪が小さく形状安定性に優れた成形体が得られることがわかる。
【0064】
実施例7
実施例4と同様の方法でOリングを製造し、そのOリングを100℃の乾燥機中に24時間放置し乾燥した。このOリングの圧縮永久歪、有機物放出量、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
実施例8
実施例4と同様の方法でOリングを製造し、そのOリングを100℃、1333Paの真空乾燥機中に24時間放置し乾燥した。このOリングの圧縮永久歪、有機物放出量、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。比較のため前記比較例1で製造したOリングのウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例4、7〜8及び比較例1の結果から、100℃300分間の有機物放出量が50μg/g以下で、60℃22時間の圧縮永久歪が70%以下の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体は、ウェハ汚染性が少なく、またパッキング材として繰り返し使用してもシール漏れが起きにくい(すなわち、形状安定性又は耐久性が高い)ことがわかる。
【発明の属する技術分野】
本発明は成形体の処理方法及び成形体に関し、さらに詳細には、耐候性、耐久性、耐熱老化性、低熱変形性、耐磨耗性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、半導体ウェハなどの部材への汚染が無く、弾性、柔軟性にも優れ、さらに形状安定性または耐久性にも優れた成形体を得るための処理方法、及び半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材に適した成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
重合体からなる成形体の特性を改良するために、種々の処理方法が提案されている。例えば、特開平6−345885号公報には、α−オレフィンと環状オレフィンとの付加重合体、環状オレフィンの開環重合体及びこれらの水素添加物から選ばれる樹脂に電子線又は放射線を照射する方法が開示されている。この方法によれば、耐熱性、耐水性、耐薬品性等の諸特性に優れているとともに、十分な弾性、柔軟性をも兼ね備えた樹脂が得られることが開示されている。また、特開平10−147671号公報には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素化物(SEBS:ブタジエンに由来する不飽和結合のみが水素化されたもの)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素化物(SEPS:イソプレンに由来する不飽和結合のみが水素化されたもの)などのスチレン系樹脂に活性エネルギー線を照射する方法が開示されている。この方法によれば、耐薬品性、耐油性、耐磨耗性を大幅に向上させた樹脂が得られる旨が述べられている。
しかしながら、これらの方法で得られた樹脂成形体は、高温状態において形状安定性又は耐久性が不十分であり、ガスケットなどに適用したときにシール漏れなどを起こすことがあった。また半導体ウェハなどの異物汚染を極力避けなければならない部材と接触させたときに、部材が汚染されることがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、耐溶剤性、弾性、柔軟性、機械的強度などに優れ、接触物への汚染が無く、さらに形状安定性又は耐久性にも優れた成形体を得るための処理方法を提供することである。本発明の第二の目的は半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材に適した成形体を提供することである。
本出願人は脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックBとからなるブロック重合体からなり、100℃で1時間放置したときに有機物の放出量が50μg/g以下である樹脂成形体に関する発明を出願(特願2001−276012号)している。この出願発明によれば半導体ウェハ等への汚染の少ない樹脂成形体が提供できる。しかしながら、形状安定性が不十分であるために、パッキング材等として繰り返し使用するには不十分なものであった。
そこで、本発明者は上記検討をさらに推し進め、その結果、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することによって、前記第一の目的を達成できることを見出し、さらに、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が50μg/g以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体が、前記第二の目的を達成できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かくして、本発明によれば、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することを含む、処理方法が提供される。
また、本発明によれば、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が成形体1gあたり50μg以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の処理方法は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することを含み、好適にはさらに揮発成分を除去することを含む。
【0006】
本発明に用いる重合体は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有するものである。脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位は、脂環基含有エチレン性不飽和単量体を付加重合反応させることによって形成することもできるが、通常、芳香族ビニル単量体を付加重合反応させ、次いで芳香環を水素化することによって形成する。なお、脂環基としてはシクロアルカン構造を有する基、シクロアルケン構造を有する基などが挙げられるが、耐光安定性の観点からシクロアルカン構造を有する基、特にシクロヘキサン構造を有する基を有するものが好ましい。
【0007】
脂環基含有エチレン性不飽和単量体は、重合性のエチレン性不飽和基と脂環基を有するものであり、具体的には、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、α−メチルビニルシクロヘキサン、ビニルメチルシクロヘキサン、ビニルブチルシクロヘキサンのごときビニルシクロアルカン;ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルメチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテンのごときビニルシクロアルケン;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート;
【0008】
テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、9−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−エチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−エチリデンテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、8,9−メチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、2,7−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、2,10−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、11,12−ジメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデシル−3−(メタ)アクリレート、
【0009】
ヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、12−メチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、11−メチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、12−エチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、11−エチルヘキサシクロ〔6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14〕ヘプタデシル−4−(メタ)アクリレート、オクタシクロ〔8.8.12,3.14,7.111,18.113,15.0.03,8.012,17〕ドコシル−5−(メタ)アクリレート、15−メチルオクタシクロ〔8.8.12,3.14,7.111,18.113,15.0.03,8.012,17〕ドコシル−5−(メタ)アクリレート、
【0010】
ペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、1,6−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、15,16−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕ヘキサデシル−4−(メタ)アクリレート、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、1,6−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレート、15,16−ジメチルペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕ペンタデシル−4−(メタ)アクリレートのごときノルボルナン環構造含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0011】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、p−フェニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−メトキシメチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、クロロメチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、ペンタフルオロスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
【0012】
本発明に用いる重合体は脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位のみからなるものであってもよいが、機械的強度などの観点から、他の単量体単位を有する共重合体であってもよい。脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位は、該共重合体中に、通常、5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%有する。
他の単量体単位としては、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位(以下、水素化された共役ジエン単量体単位ということがある。);芳香族ビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、1−シアノ−1−クロロエチレン等のエチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;1−ヒドロカルボニルエチレン、2−ヒドロカルボニル−プロペン、1−メチルカルボニルエチレン、2−メチルカルボニル−プロペン、N−フェニルマレイミド等のその他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、弾性、柔軟性及び形状安定性の観点から、水素化された共役ジエン単量体単位が好適である。水素化された共役ジエン単量体単位は、共重合体中に、通常40〜95重量%、好ましくは60〜90重量%有する。
【0013】
水素化された共役ジエン単量体単位は、通常、共役ジエン単量体を付加重合させ、次いで不飽和結合部分を水素化することによって形成される。
共役ジエン単量体としては1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。中でも1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。水素化された共役ジエン単量体単位の結合様式としては、1,4−結合、1,2−結合又は3,4−結合があるが、1,4−結合が全水素化共役ジエン単量体単位の中に、通常10〜95モル%、好ましくは40〜90モル%、特に好ましくは50〜90モル%占める。
水素化された共役ジエン単量体単位は、エチレン、プロピレン、ブテンなどのアルケンを付加重合させて得られる構造と同じになるので、アルケンを付加重合させて形成したものも含む。
【0014】
共重合体の構造としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などがあるが、本発明においてはブロック共重合体が、特に、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックBとからなるブロック重合体が好ましい。ブロック重合体はそのブロック形態によって特に限定されず、例えば、一つの重合体ブロックAと一つの重合体ブロックBとからなるジブロック重合体、重合体ブロックA−重合体ブロックB−重合体ブロックAのブロック形態のトリブロック重合体、更に重合体ブロックが並んだマルチブロック重合体、重合体分子鎖がスター状に分岐した構造のブロック重合体、重合体ブロックAから重合体ブロックBへと共重合組成が次第に変化していくテーパー構造のブロック重合体などが挙げられる。
【0015】
本発明で好適に用いられるブロック重合体は、少なくとも二つの重合体ブロックA及び少なくとも二つの重合体ブロックBを有するものである。重合体ブロックAと重合体ブロックBの組合せによって、A−(B−A)n、B−A−(B−A)n、(A−B)m−X、(B−A)m−Xなどの構造を有するものが挙げられるが、これらのうち、A−(B−A)n、特にA−B−Aの構造を有するものが好ましい(但し、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、Xはカップリング剤をそれぞれ表す。また、n及びmは繰り返し単位数であり、自然数を表す。)。重合体ブロックAと重合体ブロックBとは明確にブロック化されている方が好ましいが、重合体ブロックAの組成から重合体ブロックBの組成に漸次変化するテーパー構造となっていてもよい。
【0016】
重合体ブロックAにおいて、各重合体ブロックAに占める脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位の量は、通常70〜100重量%、好ましくは80〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%である。重合体ブロックAの総量は、ブロック重合体全体に対して、通常、5〜60重量%、好ましくは8〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。重合体ブロックAの総量がこの範囲にあることによって、柔軟性や弾性と形状安定性とがバランスされた成形体が得られる。
重合体ブロックAを構成するその他の単量体単位としては、水素化された共役ジエン単量体単位;水素化されていない共役ジエン単量体単位;芳香族ビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;その他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、水素化された共役ジエン単量体単位が好適である。
【0017】
各重合体ブロックAは、それらの重量平均分子量が同じであっても、異なっていてもよい。異なる重量平均分子量を持つ重合体ブロックAでブロック重合体を構成する場合に、重合体ブロックAの最小重量平均分子量(Mamin)の重合体ブロックAの最大重量平均分子量(Mamax)に対する比(Mamin/Mamax)は、好ましくは0.05以上1未満、特に好ましくは0.1以上0.99未満である。
【0018】
なお、重合体ブロックAの重量平均分子量は、重合体ブロックAを得るための単量体を重合する前の重合体の重量平均分子量(重合体が未だ合成されていない場合は分子量をゼロとする。)と、重合体ブロックAを得るための単量体を重合した後の重合体の重量平均分子量との差から求めた値である。重合体ブロックBの重量平均分子量も重合体ブロックAの重量平均分子量と同様にして求めた値である。また、本発明において重量平均分子量及び数平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法により測定されるポリスチレン換算した値である。但し、重合体がテトラヒドロフランに溶解しない場合は、トルエン溶液にして測定し、ポリイソプレン換算した値である。
【0019】
重合体ブロックBにおいて、各重合体ブロックB中の水素化された共役ジエン単量体単位の量は、通常40〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、特に好ましくは60〜100重量%である。
【0020】
重合体ブロックBを構成するその他の単量体単位としては、前記の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位;水素化されていない共役ジエン単量体単位;エチレン性不飽和ニトリル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;(メタ)アクリル酸エステル単量体を付加重合させて得られる単量体単位;エチレン性不飽和カルボン酸を付加重合させて得られる単量体単位;その他のビニル単量体を付加重合させて得られる単量体単位等が挙げられる。これらのうち、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位が好適である。
【0021】
本発明に用いるブロック共重合体は、水素化された共役ジエン単量体単位の総量が、ブロック共重合体全体の、40〜95重量%、好ましくは50〜92重量%、特に好ましくは60〜90重量%である。水素化された共役ジエン単量体単位の総量が少なすぎると機械的強度が低下し、多すぎると耐熱性が低下する傾向にある。
【0022】
本発明の重合体中の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位が、芳香族ビニル単量体を付加重合し次いで芳香環を水素化したものである場合、水素化されていない芳香族ビニル単量体単位と水素化された芳香族ビニル単量体単位との合計量に対する、水素化されていない芳香族ビニル単量体単位の量の百分率が、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。
また、水素化されていない共役ジエン単量体単位と水素化された共役ジエン単量体単位との合計に対して、水素化されていない共役ジエン単量体単位の量の百分率が、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。水素化されていない芳香族ビニル単量体単位又は水素化されていない共役ジエン単量体単位の量が多いと熱安定性が低下することがある。
【0023】
本発明で用いる重合体は、そのガラス転移温度(以下、Tgということがある。ブロック共重合体でTgが2個以上あるものは高い値の方を指す。)が、通常60〜200℃、好ましくは70〜180℃、特に好ましくは90〜160℃のものである。Tgが低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。Tgが高すぎると加工性が悪くなる傾向がある。ここでTgは示差走査熱量計を用いて測定した値である。
【0024】
重合体の分子量は、特に制限されないが、本発明に用いる重合体がブロック共重合体である場合は、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が、50,000〜300,000、好ましくは55,000〜200,000、特に好ましくは60,000〜150,000である。ランダム共重合体あるいは単独重合体である場合は、重量平均分子量(Mw)は、通常、5000〜500000、好ましくは10000〜200000である。Mwが小さ過ぎる場合には、機械的強度が十分でなくなり、大きすぎる場合には成形時間が長くかかり重合体の熱分解を起こしやすくなり、有機物放出量が増加する傾向になる。また後述する水素化反応が進みにくくなり水素化率が低くなることがある。
重合体は、その分子量分布が、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)による表記で、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.15以下である。Mw/Mnがこの範囲にあると、機械強度と耐熱性が高度にバランスされる。
【0025】
重合体は、揮発成分含有量が0.5重量%以下のものが好ましい。ここで揮発成分含有量は、示差熱重量測定装置(セイコー・インスツルメント社製TG/DTA200)を用いて、30℃から350℃まで10℃/分で加熱したときに揮発する成分の量である。揮発成分の低減方法は特に制限されないが、例えば、貧溶媒によるポリマー凝固法、直接乾燥法、スチームストリッピング法、減圧ストリッピング法、窒素ストリッピング法などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いる重合体は、その製法によって、特に限定されないが、通常、脂環基含有エチレン性不飽和単量体及び必要に応じてその他の単量体とを付加重合することによって、あるいは芳香族ビニル単量体及び必要に応じてその他の単量体とを付加重合して芳香族ビニル系重合体を得、次いでその芳香環を水素化することによって得られる。
重合は、ラジカル重合触媒やイオン重合触媒のごとき重合開始剤を用いて、塊状重合、乳化重合、懸濁重合、溶液重合などの方法によって行うことができる。溶液リビング重合に用いる重合開始剤の代表的なものとして有機リチウム化合物が挙げられ、具体的には、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等が挙げられる。また重合用溶媒としては、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサンなどの炭化水素溶媒が賞用される。さらに反応を制御するために、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル;トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの三級アミンを重合反応系に添加することができる。また、複数の重合体ブロックを繋いで、高分子量化するために用いるカップリング剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、エステル化合物、エポキシ化合物、四塩化ケイ素などが挙げられる。
【0027】
また芳香環や不飽和結合を水素化する方法は、公知の水素添加方法を用いて行うことができる。具体的には、例えば、水素添加触媒の存在下に、重合体の融液あるいは溶液、好ましくは溶液に水素を導入し、芳香環部分に水素を付加反応させる。水素添加触媒としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、ニッケル等の金属の微粉末、またはこれら金属類を活性炭、けい藻土、アルミナ、シリカ等の担体に担持したもの、ニッケル、クロム、コバルトなどの遷移金属の錯体と有機金属化合物とを組み合わせたもの等が挙げられる。
水素添加反応で用いる溶媒は、水素添加反応によって得られる水素化された重合体を溶解できるもので、触媒毒にならないものであればよい。溶媒の具体例として、シクロヘキサンなどのシクロアルカン;n−ヘキサンなどのアルカンが挙げられる。溶媒の粘度や反応速度を調整するために、アルコールやケトンなどの極性化合物を溶媒に添加してもよい。
芳香環を水素化した場合の芳香環水素化率は、特に限定されない。通常、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100モル%である。芳香環の水素化反応と同時に、共役ジエン単量体に由来の不飽和結合も水素化される。共役ジエン単量体に由来の不飽和結合の水素化率は通常、90〜100モル%、好ましくは95〜100モル%、特に好ましくは99〜100%である。
【0028】
本発明に用いる重合体には配合剤が添加されていてもよい。配合剤としては、密着性改質剤、無機又は有機充填材、難燃剤、耐熱安定剤(酸化防止剤)、レベリング剤、チクソトロピック付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス、乳剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等の熱重合防止剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤、誘電率調整剤等が挙げられ、その配合割合は、本発明の目的を損ねない範囲で適宜選択される。
【0029】
密着性改質剤としては、例えば、2−メルカプトプロピオン酸、トリメチルプロパントリス(2−チオプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、2−アミノチオフェノール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリアジンチオールのごときメルカプト化合物等を挙げることができる。これらの密着性改質剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、重合体100重量部に対し、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0030】
充填材としては、例えば、フッ素化ポリエチレン系樹脂、メラミン系樹脂、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、アクリル系レジン及びそれらの架橋体粒子;ガラス繊維、炭素繊維、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウムストロンチウム、アモルファス酸化チタンとチタン酸アルカリ土類金属塩との複合体、チタン酸ジルコン酸鉛;ワラストナイト、ゾノトライトなどのケイ酸カルシウム;ホウ酸マグネシウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定型シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、カ−ボンブラック、グラファイト、タルク、クレー、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシサルフェ−ト、酸化スズ、アルミナ、カオリン、炭化ケイ素、金属粉末、ガラスパウダ−、ガラスフレ−ク、ガラスビ−ズ等を挙げることができる。これらの充填材として表面処理したものを用いてもよい。表面処理に用いられるカップリング剤は、充填材の分散性を良好にするために用いられるものであり、いわゆるシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等、従来公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。充填材の配合量は、重合体100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜60重量部の範囲である。
【0031】
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等、好適にはリン系難燃剤が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフェート、縮合リン酸エステル等のごときリン酸エステル化合物;
リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、メタリン酸、二リン酸、ホスフィン酸ナトリウム一水和物、ホスホン酸ナトリウム五水和物、ホスホン酸水素ナトリウム2.5水和物、リン酸ナトリウム十二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、次リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸ナトリウム十水和物、二リン酸二水素二ナトリウム、二リン酸二水素二ナトリウム六水和物、三リン酸ナトリウム、cyclo−四リン酸ナトリウム、ホスフィン酸カリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、二リン酸カリウム三水和物、メタリン酸カリウム、赤リン等のごとき無機リン化合物;
【0032】
ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン塩、ポリリン酸硫酸塩、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素のごときリン酸塩化合物;
ジフェニルリン酸エステル−2−プロペニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−2−ヒドロキシエチルアミド、ジフェニルリン酸エステル−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミド、ジフェニルリン酸エステル−ジ−2−シアノエチルアミド、ジフェニルリン酸エステル−p−ヒドロキシフェニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−m−ヒドロキシフェニルアミド、ジフェニルリン酸エステル−シクロヘキシルアミドのごときリン酸エステルアミド化合物;
フェニルリン酸エステル−ジ−N,N−フェニルメチルアミド、フェニルリン酸エステル−N−シクロヘキシルアミドのごときリン酸アミド化合物;等が挙げられる。これらのうち、ハロゲン元素を含有しないリン系難燃剤が好ましく、特にハロゲン元素を含有しないリン酸エステルアミド化合物又はリン酸アミド化合物が好適である。
難燃剤の使用量は、重合体100重量部に対して、通常1〜100重量部、好ましくは5〜60重量部である。
【0033】
着色剤としては特に制限はないが、例えば、モノアゾ、ジアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、ハンザイエロー、スレンイエロー、パーマネントイエロー、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、ニッケルチタンイエロー、アンチモン黄等の黄色系着色剤;キナクドリンレッド、クリスタルバイオレッド、パーマネントレッド、弁殻、朱、カドミウムレッド、クロムパーミリオン等の赤色系着色剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、インダスレンブルー、群青、紺青、コバルトブルー等の青色系着色剤;アニリンブラック、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の黒色系着色剤;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色系着色剤;等が挙げられる。これらの着色剤は、使用目的に応じて、それぞれ単独で、あるいは2種以上を適宜選択、使用される。その配合量は、重合体100重量部に対して、0.01〜100重量部、好ましくは0.1〜80重量部、より好ましくは1〜50重量部の範囲である。
【0034】
耐熱安定剤(すなわち酸化防止剤)としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤などが挙げられる。これらのうち、式(1)で表されるラクトンと、式(2)で表されるフェノールと、式(3)で表されるフォスファイト化合物との混合物からなる酸化防止剤が好ましく、特に式(1−1)で表されるラクトンと、式(2−1)で表されるフェノールと、式(3−1)で表されるフォスファイト化合物との混合物からなる酸化防止剤が好ましい。
【0035】
【化1】
(式(1)中のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表す。)
【0036】
【化2】
(式(2)中のR5及びR6はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表し、nは1〜4の整数を表し、Rは独立して水素、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基又は5員環若しくは6員環の環を表し、A1及びA2はそれぞれ独立に炭素数1〜6個のアルキレンを表す。)
【0037】
【化3】
(式(3)中のR7及びR8はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜6個のアルキル基又は5員環若しくは6員環のシクロアルキル基を表し、x及びyはそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、nは1又は2を表し、n=1の場合には左端部は水素、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のアルコキシ基又は5員環若しくは6員環の環と結合する)
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
【0040】
【化6】
【0041】
本発明の重合体には、他の樹脂や軟質重合体が配合されていてもよい。他の樹脂としては、直鎖状高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ポリブテン、1,2−ポリブタジエン、ポリ4−メチルペンテンに代表されるポリオレフィン系樹脂;アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、HIPS、AS、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸グリシジルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−フマル酸共重合体に代表されるポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6に代表されるポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド;ポリ−4−フッ化エチレン(PTFE)等のフッ素化ポリエチレン系樹脂、ノルボルネン系単量体とオレフィンとの付加重合体、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びその水素化物等;が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン又はポリフェニレンエーテルが好ましい。なお、ノルボルネン系単量体とは、シクロペンタジエンとオレフィンとの付加反応等によって得られるノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン等の多環不飽和炭化水素、及びそれのアルキル置換体や;カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基などの極性基置換体のごとき多環不飽和炭化水素誘導体のことをいう。
【0042】
軟質重合体はガラス転移温度が30℃以下のものである。ガラス転移温度を2以上持つものは、複数のガラス転移温度の中の最低値が30℃以下のもので、好適にはゴム弾性を有するものである。具体的には、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の主鎖水素化物(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体〔SEBS〕)、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体の主鎖水素化物(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の主鎖水素化物(=スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体〔SEPS〕);エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、直鎖状低密度ポリエチレン系エラストマー等のオレフィン系ゴム;ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(AABS)、ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム、メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンのごときシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴム等が挙げられる。これらの軟質重合体の中でも、本発明においては、耐熱性、誘電特性、表面光沢などの点からSEBSやSEPSが好ましい。軟質重合体は金属含量が通常50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。軟質重合体の量は、重合体100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは5〜60重量部である。この範囲で含有することによって、メッキの密着性と平滑性とがバランスする。
【0043】
本発明では、上述の重合体からなる成形体に高エネルギー線の照射処理をする。この処理により、重合体に架橋構造を付与することができるとともに、重合体の滅菌を行なうことができる。架橋を行うにあたっては、その架橋効率を高めるためにジアリルセバケートやトリアリルシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド等を重合体に配合してもよい。高エネルギー線の照射量は100〜300kGy、特に130から260kGyが好ましいが、この範囲を外れても重合体の性質が目的範囲を外れない限り特に問題はない。
【0044】
本発明処理方法に用いられる高エネルギー線は、特に制限されない。例えば、放射性同位元素などから放射されるα線、β線、及びγ線などが挙げられる。またヴァン・デ・クラーク型電子加速器、コッククロフト・ウォルトン型電子加速器、絶縁変圧器型電子加速器、変圧器型ガス(油)絶縁方式電子加速器、冷陰極衝撃電圧型電子加速器、線状フィラメント型電子加速器等によって発生される高エネルギー線を挙げることができる。さらにX線を挙げることができる。
【0045】
照射方法は特に制限されないが、たとえば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、キャスト成形法、インサート成形法、圧縮成形法などの方法によって所望の形状に成形し、その後照射することを挙げることができる。また、成形と同時に照射するいわゆるインライン方式であってもよい。医療用や半導体製造用成形体の場合は、予め所定形状を付与し、完全に密閉した状態又はクレーンルーム内で照射することが好ましい。
【0046】
さらに本発明の好適な処理方法では、照射処理に続いて、揮発成分の除去を行う。揮発成分除去の具体的方法として、マイクロウェーブや熱線によって、或いは高温雰囲気中に放置することによって、成形体を加熱して除去する方法;または減圧下に成形体を放置して除去する方法が用いられる。加熱温度は、通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、圧力は常圧以下、好ましくは10〜2000Paに減圧する。除去時間は特に制限されないが、通常24時間以上である。
【0047】
このように、前述の重合体からなる成形体に高エネルギー線を照射することによって、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪を低下させ、好ましくは70%以下、特に好ましくは65%以下にすることができる。またさらに揮発成分を除去することによって、圧縮永久歪を低下させることにくわえ、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量を減少させ、好ましくは成形体1gあたり50μg以下、特に好ましくは40μg以下にすることができる。
【0048】
本発明の成形体は、60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、好ましくは65%以下であり、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が成形体1gあたり50μg以下、好ましくは40μg以下の、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなるものである。本発明の成形体は、前記の処理方法によって好適に製造することができる。
圧縮永久歪は、JIS−K6262に準拠して60℃22時間の条件で測定した値である。有機物の放出量は、成形体から約11mgの試料を採り、精秤した後、サンプルホルダー内で試料を100℃に加熱し、300分間に放出される有機物成分を活性炭素チューブで捕集し、TDS−GC−MS[GC−MS装置:Agilent社製6890A;加熱脱着導入システム(TDS):Gerstel社製CIS−4;カラム:HP−1MS(0.25mmφ×30m、df=1.0μm)、オーブン:40℃で3分間保持し、280℃まで昇温(昇温速度:10℃/分)し、次いで280℃で10分間保持;ヘリウム流量:1.0ml/分;測定イオン:29〜550]を使用して、分析し、検出された有機物質の全ピーク面積を合計し、それと同面積のピーク面積を示すテトラデカンの重量に換算し、この値を、成形体1gあたりに換算した値である。
【0049】
この圧縮永久歪及び有機物放出量が上記範囲にある脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体は、耐候性、耐久性、耐熱老化性、低熱変形性、耐磨耗性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、接触物への汚染が無く、弾性、柔軟性にも優れ、さらに形状安定性又は耐久性にも優れている。そして、この成形体は半導体ウェハなどを保管する容器などに用いるパッキング材等に適している。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、「部」は特に断りがない限り「重量部」である。
[評価方法]
▲1▼圧縮永久歪の測定
JIS−K6262に準拠して測定した。
▲2▼有機物放出量の測定
成形体から約11mgの試料を採り、精秤した後、サンプルホルダー内で試料を100℃に加熱し、300分間に放出される有機物成分を活性炭素チューブで捕集し、TDS−GC−MS[GC−MS装置:Agilent社製6890A;加熱脱着導入システム(TDS):Gerstel社製CIS−4;カラム:HP−1MS(0.25mmφ×30m、df=1.0μm)、オーブン:40℃で3分間保持し、280℃まで昇温(昇温速度:10℃/分)し、次いで280℃で10分間保持;ヘリウム流量:1.0ml/分;測定イオン:29〜550]を使用して、分析した。検出された有機物質の全ピーク面積を合計し、それと同面積のピーク面積を示すテトラデカンの重量に換算し、この値から、成形体1gあたりの有機物放出量を求めた。単位はμg−有機物/g−成形体である。
【0051】
▲3▼ウェハ汚染性
クラス1000のクリーンルーム内で、8インチのベアシリコンウェハを濃度4.5%のフッ化水素酸水溶液に25℃で1分間浸漬して酸化ケイ素の皮膜を除去し、次いで濃度98%の硫酸と濃度30%の過酸化水素の混合液(容積比50:1)に110℃で10分間浸漬し、さらに濃硫酸に65℃で10分間浸漬し、最後に多量の超純水で洗浄して酸を除去し、遠心分離機で水分を振り飛ばし、酸処理ウェハを得た。
酸処理ウェハの、温度23℃および相対湿度40%環境下での純水の接触角(協和界面科学社製、CA−150型接触角測定装置を用いて測定)は2度未満であった。なお、酸処理前のウェハの純水接触角は32度であった。
酸処理ウェハ25枚を、シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン社製、ゼオノア1420R)で形成されたキャリアに並べ、同シクロオレフィンポリマーで形成されたウェハケースに収納し、Oリングをウェハケースに取り付け、同シクロオレフィンポリマーで形成された蓋で密閉をした。
シリコンウェハを収納したウェハケースを、クラス1000のクリーンルーム内(有機物量0ppmの部屋)に、40℃で48時間放置した。
放置後、ウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出し、純水の接触角を測定し、25枚のシリコンウェハについて、純水の接触角の平均値を求めた。平均値が10度未満である場合はA、10度以上20度未満である場合はB、20度以上である場合はCとして評価した。接触角が小さいほど、汚染が少ないことを意味する。
【0052】
▲4▼Oリングの耐久性
酸処理ウェハ25枚を新たに用意し、それらを、前記で用いたキャリア、ウェハケース、Oリングおよび蓋からなる容器に密閉した。シリコンウェハを収納したウェハケースを、クラス1000のクリーンルーム内(有機物量0ppmの部屋)に、40℃で48時間放置した。放置後、同クリーンルーム内でウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出した。
この操作をさらにもう1回行った。
次に、有機物量が10ppmの部屋に40℃48時間放置し、放置後ウェハケース表面に付着した有機物を洗浄し、クリーンルーム(有機物量0ppmの部屋)内で洗浄したウェハケースの蓋を開いて、シリコンウェハを取り出した以外は前記操作と同様の操作を1回行った。
最終回において取り出したシリコンウェハ25枚の純水接触角の平均値を求め、前記同様の方法で汚染性を評価した。
【0053】
〔製造例1〕
(第一ブロックA):十分に乾燥し窒素置換した攪拌機付き反応容器内に、脱水シクロヘキサン300部、スチレン15部及びジブチルエーテル0.38部を仕込み、温度60℃に加温した。反応液を攪拌し、そこにn−ブチルリチウム溶液(濃度15重量%有ヘキサン溶液)0.63部を添加して1時間重合反応を行った。
(ブロックB):次いで反応液中に、イソプレン70部を2時間かけて連続的に添加して、さらに1時間重合反応を行った。
(第二ブロックA)その後、反応液中にスチレン15部をさらに添加して、さらに1時間重合反応を行った。最後、反応溶液にイソプロピルアルコール0.2部を添加して重合反応を停止させた。
【0054】
上記重合反応液400部を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移し替え、それにケイソウ土担持型ニッケル触媒(日揮化学社製;E22U)4部を添加し混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて5時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)0.1部を添加し、溶解させ、薄膜蒸発機(フィルムトルーダー、Buss社製)を用いて、260℃(533°K)、7torr、滞留時間1.2時間の条件で揮発分を蒸発させスチレン−イソプレン−スチレンブロック重合体(A−B−A型ブロック共重合体)の芳香環水素化物Aを得た。
芳香環の水素化率は100モル%、イソプレン不飽和結合部分の水素化率は100モル%、ガラス転移温度132℃であった。その他、この水素化物Aの物性を表2に示す。
【0055】
〔製造例2〕
スチレン、イソプレン量、触媒量等を表1に示す処方に変えた他は製造例1と同様にしてブロック共重合体の芳香環水素化物BおよびCを得た。その結果を表1および表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
実施例1
クラス1000のクリーンルーム内で、水素化物Aのペレットを、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS450)を用いて、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、成形サイクルタイム40秒、金型温度40℃の条件で、Oリング(直径5mmの円形状断面をなした、リング直径が310mmの成形体)を成形した。成形したOリングは、その表面がトルエンに溶解しやすく、その圧縮永久歪は、23℃22時間で65、60℃22時間で90であった。
次に該Oリングに電子線を照射量180kGyで照射した。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で35、60℃22時間で62であった。有機物放出量は295μg/gであった。
【0059】
実施例2
水素化物Aを水素化物Bに変えた他は実施例1と同様にしてOリングを得た。電子線照射前の圧縮永久歪は、23℃22時間で80、60℃22時間で92であった。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で68、60℃22時間で82であった。有機物放出量は257μg/gであった。
【0060】
実施例3
クラス1000のクリーンルーム内で、水素化物Cのペレットを、射出成形機(東芝機械(株)社製、IS450)を用いて、シリンダー温度(樹脂温度)280℃、成形サイクルタイム40秒、金型温度40℃の条件で、Oリング(直径5mmの円形状断面をなした、リング直径が310mmの成形体)を成形した。成形したOリングは、その表面がトルエンに溶解し、その圧縮永久歪は、23℃22時間で20、60℃22時間で84であった。 次に該Oリングに電子線を照射量150kGyで照射した。電子線照射後のOリングは、トルエンに溶解せず、圧縮永久歪は、23℃22時間で20、60℃22時間で68であった。有機物放出量は191μg/gであった。
【0061】
実施例4〜6
実施例3において電子線照射量を180kGy、210kGy、及び240kGyに変えた他は実施例3と同様にしてOリングを得た。これらのOリングの圧縮永久歪及び有機物放出量を表3に示した。
【0062】
比較例1
実施例3において電子線を照射しなかった他は実施例3と同様にしてOリングを得た。このOリングの圧縮永久歪及び有機物放出量を表3に、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
【表3】
【0063】
実施例1〜6及び比較例1の結果から、本発明の処理方法、すなわち、高エネルギー線の照射を行った成形体は、未照射の成形体に比して、60℃22時間の圧縮永久歪が小さくなっていることがわかる。またトルエンに対する耐性が高くなっていることがわかる。これらのことから、本発明の処理方法を実施すると、耐溶剤性、弾性、柔軟性、機械的強度などに優れ、さらに高温の圧縮永久歪が小さく形状安定性に優れた成形体が得られることがわかる。
【0064】
実施例7
実施例4と同様の方法でOリングを製造し、そのOリングを100℃の乾燥機中に24時間放置し乾燥した。このOリングの圧縮永久歪、有機物放出量、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
実施例8
実施例4と同様の方法でOリングを製造し、そのOリングを100℃、1333Paの真空乾燥機中に24時間放置し乾燥した。このOリングの圧縮永久歪、有機物放出量、ウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。比較のため前記比較例1で製造したOリングのウェハ汚染性及び耐久性を表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
実施例4、7〜8及び比較例1の結果から、100℃300分間の有機物放出量が50μg/g以下で、60℃22時間の圧縮永久歪が70%以下の脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体は、ウェハ汚染性が少なく、またパッキング材として繰り返し使用してもシール漏れが起きにくい(すなわち、形状安定性又は耐久性が高い)ことがわかる。
Claims (6)
- 脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射することを含む、処理方法。
- 重合体が、さらに共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を有するものである請求項1記載の処理方法。
- 重合体が、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックAと、共役ジエン単量体に由来し且つその不飽和結合が水素化された単量体単位を主構成成分とする重合体ブロックBとからなるブロック重合体である請求項2記載の処理方法。
- 脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体に、高エネルギー線を照射し、次いで揮発成分を除去することを含む、処理方法。
- 請求項1〜4記載のいずれかの処理方法によって得られた成形体。
- 60℃、22時間の条件で測定した圧縮永久歪が70%以下、100℃の空気中に300分間放置している間に放出される有機物の量が成形体1gあたり50μg以下である、脂環基含有エチレン性不飽和単量体単位を有する重合体からなる成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002188644A JP2004027131A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 成形体の処理方法及び成形体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002188644A JP2004027131A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 成形体の処理方法及び成形体 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004027131A true JP2004027131A (ja) | 2004-01-29 |
Family
ID=31183333
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002188644A Pending JP2004027131A (ja) | 2002-06-27 | 2002-06-27 | 成形体の処理方法及び成形体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004027131A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015033876A1 (ja) * | 2013-09-06 | 2015-03-12 | 日本ゼオン株式会社 | 滅菌済み医療用成形体の製造方法 |
-
2002
- 2002-06-27 JP JP2002188644A patent/JP2004027131A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2015033876A1 (ja) * | 2013-09-06 | 2015-03-12 | 日本ゼオン株式会社 | 滅菌済み医療用成形体の製造方法 |
JPWO2015033876A1 (ja) * | 2013-09-06 | 2017-03-02 | 日本ゼオン株式会社 | 滅菌済み医療用成形体の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN110023403B (zh) | 热塑性弹性体组合物、栓体和容器 | |
RU2081889C1 (ru) | Полимерная композиция (варианты) | |
TWI267700B (en) | Photocurable compositions and flexographic printing plates comprising the same | |
TWI520976B (zh) | Modified liquid diene rubber and a manufacturing method | |
US8048362B2 (en) | Polyolefin-based resin composition and use thereof | |
JPWO2013047314A1 (ja) | (メタ)アクリロイル末端ポリイソブチレン系重合体、その製造方法、および活性エネルギー線硬化性組成物 | |
JP7267864B2 (ja) | 熱可塑性エラストマー組成物、栓体及び容器 | |
WO2001085818A1 (fr) | Copolymere bloc et composition contenant ce copolymere | |
JP2016135860A (ja) | 硬化性組成物及びそれを用いた封止材料 | |
JP2020535266A (ja) | 耐電離放射線性熱可塑性樹脂組成物及びこれを含む成形品 | |
JP2013245256A (ja) | エラストマー組成物 | |
EP3677645A1 (en) | Multi-block copolymer composition obtained by modification treatment, and film | |
JP2004027131A (ja) | 成形体の処理方法及び成形体 | |
JP2007099846A (ja) | ブロック共重合体、及び該共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物 | |
JP4675712B2 (ja) | ポリオレフィン系樹脂組成物 | |
JP4357924B2 (ja) | ポリオレフィン系樹脂組成物およびその用途 | |
JP2011116960A (ja) | 熱伝導性シート | |
EP3936547B1 (en) | Hydrogenated block copolymer, elastomer composition comprising hydrogenated block copolymer, seal member comprising elastomer composition, plug body and medical plug | |
JP2007112881A (ja) | 変性ポリオレフィン樹脂 | |
JP2022016344A (ja) | 水添ブロック共重合体、水添ブロック共重合体を含むエラストマー組成物、エラストマー組成物からなるシール部材、栓体、薬栓 | |
WO2014119341A1 (ja) | 光硬化性エラストマー組成物、ハードディスクドライブ用ガスケットおよびハードディスクドライブ | |
CN110734647B (zh) | 热塑性弹性体组合物、栓体和容器 | |
JP2003268036A (ja) | 成形材料 | |
JP2022094685A (ja) | 親水化剤 | |
Desroches | Mechanical reinforcement and property tuning of adhesive elastomers with polymer-grafted inorganic nanoparticles |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20050308 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20070702 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070725 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071211 |