JP2004026936A - スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】実用的なイオン伝導性を有し、かつ耐水、耐メタノール性、メタノール遮断性に優れたスルホン酸基を有するエポキシ樹脂硬化膜及びそれからなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜を提供する。
【解決手段】スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、エポキシ樹脂硬化膜をスルホン化して得られる。エポキシ樹脂硬化膜は、重量平均分子量5000以上の高分子量エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させたものであることが好ましい。該スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を用いて燃料電池用イオン伝導性高分子膜が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、エポキシ樹脂硬化膜をスルホン化して得られる。エポキシ樹脂硬化膜は、重量平均分子量5000以上の高分子量エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させたものであることが好ましい。該スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を用いて燃料電池用イオン伝導性高分子膜が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素、アルコールなどを燃料に用いる燃料電池などに適用できる、耐水性、耐メタノール性、メタノール遮断性に優れた、スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜および該スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜からなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点から新エネルギー蓄電あるいは発電素子が社会で強く求められてきている。燃料電池もその1つとして注目されており、低公害、高効率という特徴から最も期待される発電素子である。燃料電池とは、水素やメタノール等の燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
【0003】
このような燃料電池は、用いる電解質の種類によってりん酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型および高分子電解質型に分類される。りん酸型燃料電池は、すでに電力用に実用化されている。しかし、りん酸型燃料電池は高温(200℃前後)で作用させる必要があり、そのため起動時間が長い、システムの小型化が困難であること、また、りん酸のプロトン伝導度が低いために大きな電流を取り出せないという欠点を有していた。
【0004】
これに対して、高分子型燃料電池は操作温度が最高で約80〜100℃程度である。また、用いる電解質膜を薄くすることによって燃料電池内の内部抵抗を低減できるため高電流で操作でき、そのため小型化が可能である。このような利点から高分子型燃料電池の研究が盛んになってきている。
【0005】
この高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜には、燃料電池の電極反応に関与するプロトンの高いイオン伝導性が要求される。このようなイオン伝導性高分子電解質膜材料としては、パーフルオロカーボンスルホン酸などの超強酸基含有フッ素系高分子が知られている。しかし、これらの高分子電解質材料はフッ素系の高分子であるために、非常に高価であるという問題を抱えている。また、これらの高分子の持つガラス転移温度が低いことおよび操作温度である100℃前後での水分保持が十分でないことより、100℃以上の高温ではイオン伝導度が急激に低下し電池として作用できなくなるという問題があった。さらにメタノール遮断性が低い、すなわちメタノール透過性が高いためにダイレクトメタノール型燃料電池には適用できなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術が持つ問題を解決しようとしたものである。実用的なイオン伝導性を有し、かつ耐水、耐メタノール性、メタノール遮断性に優れたスルホン酸基を有するエポキシ樹脂硬化膜及びそれからなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、高分子量エポキシ樹脂から得られるエポキシ樹脂硬化膜をアルキルスルトン化合物でスルホン化することにより、実用可能なイオン伝導性と優れた耐メタノール性およびメタノール遮断性を有するイオン導電性高分子膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]〜[5]に記載した事項により特定される。
[1] 本発明は、エポキシ樹脂硬化膜をスルホン化して得られるスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を提供する。
【0009】
[2] エポキシ樹脂硬化膜が重量平均分子量5000以上の高分子量エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させたものであることを特徴とする[1]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0010】
[3] 硬化剤が分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート類またはそのイソシアネート基をフェノール類でマスク(ブロック)した変性イソシアネート類であることを特徴とする[2]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0011】
[4] スルホン化がエポキシ樹脂硬化膜に脂肪族スルトン化合物を反応させて行われることを特徴とする[1]〜[3]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0012】
[5] 本発明は、[1]〜[4]のいずれかに記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜よりなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜を提供する。
【0013】
本発明は、簡便かつ安価に製造させることができ、耐熱性、耐薬品性、メタノール遮断性に優れた、燃料電池用イオン伝導膜として有用なスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を提供するものである。
【0014】
本発明に係るイオン導電性高分子膜は、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、メタノール遮断性に優れている。特に、本発明に係るイオン導電性高分子膜を用いて燃料電池を形成すると、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜とその製法について説明する。
本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、エポキシ樹脂を硬化剤で架橋させたフィルム状の硬化物をスルホン化剤でスルホン化することにより得ることができる。
【0016】
エポキシ樹脂としては市販のフェノキシ樹脂、または公知の二段法で製造した高分子量エポキシ樹脂を使用することが好ましい。二段法とは二官能性エポキシ化合物と芳香族ジオール類とを無触媒または塩基性触媒の存在下で重合する方法である。本発明で使用する高分子量エポキシ樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算重量平均分子量で5000以上のものが好ましい。さらには10000〜1000000のものが好ましい。
【0017】
高分子量エポキシ樹脂の二段法による製造方法について説明する。高分子量エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ化合物と芳香族ジオール化合物とを塩基性触媒の存在下、溶媒中または無溶媒で反応させることにより得ることができる。
【0018】
二官能性エポキシ化合物は、分子内に二個のエポキシ基をもつ化合物であれば制限されない。例えば、公知のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物などが使用できる。これらの二官能性エポキシ化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
芳香族ジオール化合物としてはハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。これらの芳香族ジオール化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。高分子量のエポキシ樹脂を得るためには二官能性エポキシ化合物1モルに対して芳香族ジオール化合物を0.9〜1.1モル使用することが望ましい。
【0020】
反応に用いる塩基性触媒としてはアルカリ金属化合物、イミダゾール類、アミン類、有機りん化合物などが挙げられる。アルカリ金属化合物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、ハロゲン化物、有機酸塩、金属アルコキシド、金属フェノキシド、水素化物、金属アミドなどが挙げられる。イミダゾール類としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0021】
アミン類としては、脂肪族あるいは芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類がある。これらの化合物の一例としては、N,N−ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,4,0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイドなどがあげられる。
【0022】
有機リン化合物としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、トリ−n−プロピルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−プロピルベンジルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、テトラ−n−オクチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−オクチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリ−n−オクチルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−オクチル−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリ−n−オクチルベンジルホスホニウムクロライド等が挙げられる。これらの触媒は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらの触媒の使用量は、原料である二官能エポキシ樹脂1モルに対して、0.005〜0.20モルである。
【0023】
重合に使用できる溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンメチルイソブチルケトン、ヘプタノン、オクタノンなどのケトン系溶媒、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒が使用できる。
【0024】
高分子量エポキシ樹脂の合成反応時の固形分濃度は、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると副反応が多くなる傾向が見られ、直鎖状に高分子量化しにくくなることがある。
【0025】
高分子量エポキシ樹脂の重合温度は、60〜150℃であることが望ましい。60℃より低いと重合速度が遅くなり過ぎる傾向が見られ、また150℃より高いと副反応が多くなる傾向が見られ直鎖状に高分子量化しにくくなることがある。
【0026】
次に、市販のフェノキシ樹脂または二段法により得られた高分子量エポキシ樹脂よりエポキシ樹脂硬化膜を製造する方法について説明する。
エポキシ樹脂に溶剤、硬化剤および必要に応じて硬化促進剤を加え、得られたワニスを基板上に塗布し、溶媒を除去した後、塗布膜を硬化させることにより得ることができる。硬化方法に特に限定はなく、従来公知の熱的な硬化方法を用いることが出来る。例えば、基材上に塗布したワニスを熱風乾燥した後、キャスト膜を基材より剥離し熱処理する方法、キャスト膜を基材に付けたまま熱処理する方法などがあげられる。
【0027】
硬化剤としては水酸基またはエポキシ基と反応しうる化合物であればよく多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多価アミン化合物などが使用できるが、取り扱い易さなどの点より、特に多官能性のイソシアネート化合物やイソシアネート基をフェノール系化合物でブロックした変性イソシアネート化合物が好ましい。
【0028】
使用できる多官能性のイソシアネート化合物としては、具体的には、分子内にイソシアネート基を2個有するトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネナート等や、分子内にイソシアネート基を3個有するトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン、トリス(3−イソシアネートフェニル)メタン、チオリン酸トリス(4−イソシアネートフェニルエステル)、N−イソシアネートヘキサアミノカルボニル―N’,N”―ビス(イソシアネートヘキシル)ウレア、1,3,5−トリス(3−イソシアネートー4−メチルフェニル)−2,4,6−トリオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(TDIトリマー)等や、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート(ポリメリックMDI)が挙げられる。
【0029】
また、変性イソシアネート化合物としては前記のイソシアネート化合物のイソシアネート基をフェノール、クレゾール、クロロフェノールなどのフェノール系化合物でブロックした公知の化合物が挙げられる。これらのイソシアネート化合物または変性イソシアネート化合物は単独で、または二種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0030】
イソシアネート化合物を硬化剤としたワニスはゲル化し易いため、ワニスを製造後、直ちに使用せず保存する場合は変性イソシアネート化合物を硬化剤として使用することが好ましい。イソシアネート化合物または変性イソシアネート化合物は、エポキシ化合物の水酸基1モル当たりイソシアネート基が0.005〜0.8モル、望ましくは0.02〜0.5モルとなるように使用することが好ましい。
【0031】
硬化促進剤としては、通常イソシアネート基と水酸基の反応に用いられる公知のアミン類、イミダゾール類、アジリジン類、第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属塩、鉛化合物、錫化合物、アルコラート化合物、フェノラート化合物、金属ハロゲン化合物、金属錯体化合物等が使用できる。
【0032】
ワニスをキャストして得られた膜を硬化させるための熱処理条件は、通常のウレタン結合形成条件やエポキシ硬化条件で十分であり、長時間の高温アニール処理を行う必要はない。硬化時の温度に制限はないが、エポキシ結合やウレタン結合の分解を抑制するために、250℃以下であることが好ましい。
【0033】
次に、エポキシ樹脂硬化膜のスルホン化方法の好適な例として、脂肪族スルトン化合物と反応させてアルキルスルホン化する方法について説明する。脂肪族スルトン化合物はエポキシ樹脂硬化膜の水酸基に付加反応することによりアルキルスルホン酸基に変化する。
すなわち、エポキシ樹脂硬化膜を、アルカリ金属化合物触媒を含む有機溶媒に一定時間浸漬し、そのままあるいは触媒溶液を除去後、さらに脂肪族スルトン化合物を含む溶液に所定時間、所定温度で浸漬することにより、水酸基、または水酸基および未反応アミノ基がアルキルスルホン化されたスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜が得られる。
【0034】
本発明で使用できる脂肪族スルトン化合物としては1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−メチル―1,3−プロパンスルトン、1−エチル―1,3−プロパンスルトン、1−メチル―1,4−ブタンスルトン、ヘキサフルオロ―1,3−プロパンスルトンなどが挙げられる。脂肪族スルトン化合物の使用量は、エポキシ樹脂硬化膜の種類、架橋度、脂肪族スルトンの種類、反応温度、溶媒の使用量、触媒の使用量などにより異なるが、エポキシ樹脂硬化物100質量部に対し、通常10〜1000質量部、望ましくは20〜400質量部である。
【0035】
反応に使用できる有機溶媒としては、
a)非プロトン性アミド系溶媒である、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド;
b)エーテル系溶媒である、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル;
c)アミン系溶媒である、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソホロン、ピペリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン;
d)ハロゲン系溶媒である、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン;
e)その他の溶媒である、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素
などが挙げられる。
【0036】
使用できるアルカリ金属化合物触媒としては、リチウムハイドライド、ナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド、ナトリウムアルミニウムハイドライドなどの金属水素化物、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ペンタジエニルナトリウムなどの有機金属、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムビスジメチルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの金属アミド、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムブトキシド、リチウムヘキソキシド、リチウム−2−エチルヘキソキシド、リチウムフェノキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。アルカリ金属化合物触媒の使用量は触媒の種類、エポキシ樹脂硬化膜の種類、架橋度、反応時間などにより異なるが、エポキシ樹脂硬化膜100質量部に対し、通常1〜1000質量部、望ましくは10〜400質量部である。
【0037】
エポキシ樹脂硬化膜を触媒溶液または脂肪族スルトン化合物溶液に浸漬する際の温度に制限はないが、通常−5〜150℃、望ましくは30〜120℃である。浸漬時間は温度、脂肪族スルトンの種類、触媒の種類などにより異なるが、通常0.5〜96時間である。
【0038】
脂肪族スルトン化合物によりスルホン化したエポキシ樹脂硬化膜はそのままイオン伝導性高分子膜として使用することができる。このイオン伝導性高分子膜の厚みは、特に制限はないが、通常10〜200μm、特には30〜100μmが好ましい。前記の範囲内であれば、実用に耐える膜の機械的強度が得られ、かつ膜抵抗が実用上十分な程度に低くなる、すなわち十分な発電性能を得ることができる。また、イオン伝導性高分子膜として使用する際の、スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜のスルホン酸基の様態としては、最もプロトン伝導度が大きいフリーのプロトン酸の状態が好ましい。
【0039】
本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜からなるイオン伝導膜は、従来の高価なパーフルオロカーボンスルホン酸膜に比べ製造価格が安価である。また、本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は従来のパーフルオロカーボンスルホン酸に比べ耐熱性が高いため高温で使用することができる。さらに本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜はメタノール遮断性が高いため、ダイレクトメタノール型燃料電池に適用できる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0041】
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(イ)プロトン交換
プロトン酸の金属塩等は以下の手順でフリーのプロトン酸に戻した。
1)スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を2N−硫酸に一晩浸した。
2)酸処理した膜を蒸留水に一晩浸した。
3)酸処理および蒸留水で洗浄した膜を150℃で4時間乾燥して、フリーのプロトン酸を含有する膜を得た。
(ロ)イオン交換基当量
スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を密閉できるガラス容器中に精秤し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を0.1N水酸化ナトリウム標準水溶液にてフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、計算した。
【0042】
(ハ)イオン伝導度
イオン伝導膜を幅5mm、長さ40mmに切り出した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まるCole−Coleプロットの円弧から抵抗率を測定した。電圧端子間は20mmとした。インピーダンスの測定はLCRメーター(日置電機社製3532)を使用した。温度変化は電極を接続したサンプルをアルミブロック製の恒温槽内に設置することにより行い、30℃から110℃の範囲の伝導度を測定した。測定は全て加湿下で行ったが、この加湿は常圧の恒温槽内への蒸気の導入により行い、水蒸気発生器にて測定温度が100℃未満では恒温槽温+5℃、100℃以上では120℃の一定温度に蒸留水を加熱し、生成する蒸気を使用した。また、イオン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
【0043】
(ニ)メタノール溶解性
150℃で4時間乾燥させたイオン伝導膜をメタノールに浸し、25℃で24時間静置した。取り出したイオン伝導膜を再度150℃で4時間乾燥させた後、重量減少率を測定した。
(ホ)メタノール透過性
室温にて蒸留水と1mol/Lメタノール水溶液を直径23mmφのイオン伝導膜を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きよりメタノール透過性を計算した。
【0044】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、冷却管及び撹拌装置を備えた500mlの5つ口反応器に、二官能性エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル34.04g(0.100モル)、芳香族ジオールとしてビスフェノールA22.83g(0.100モル)、触媒として水素化リチウム0.02g(0.003モル)とトリフェニルホスフィン0.787g(0.03モル)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)230.7gに溶解させ、120℃で8時間反応させた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定より得られた高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量は84000であった。
【0045】
この溶液20gに硬化剤としてフェノールでマスクしたトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン0.76gを加えガラス板に塗布し、イナートオーブンにて常圧の窒素雰囲気下で室温より200℃まで4時間で昇温後、200℃で4時間保持することにより溶媒の除去および硬化を行った。ガラス板を水に浸してエポキシ樹脂硬化膜を剥離した。
【0046】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド7.5gをジメチルスルホキシド(DMSO)200mlに溶かし、得られたエポキシ樹脂硬化膜2.0gを70℃で24時間浸漬した。触媒溶液を除去し膜をDMSOで洗浄した後、1,3−プロパンスルトン5.5gをDMSO200mlに溶かした溶液に70℃で24時間浸漬した。DMSOを除去後、(イ)記載の方法でスルホン酸基をリチウム塩型よりフリーのプロトン酸型に戻した。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、(ロ)記載の方法でイオン交換基当量、(ハ)記載の方法でイオン伝導度、(ニ)記載の方法でメタノール溶解度、(ホ)記載の方法でメタノール透過性を測定した。測定結果を表1に記す。
【0047】
(実施例2)
実施例1で得られた高分子量エポキシ樹脂溶液20gに硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート0.44gを加え、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化膜を作製した。得られた硬化膜を実施例1と同様にしてアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
ビスフェノールAの代わりにビスフェノールF20.02gを使用し、その他は実施例1と同様にして高分子量エポキシ樹脂を合成した。GPC測定より得られたエポキシ樹脂の分子量は78000であった。得られたエポキシ樹脂溶液より実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化膜を作製し、さらに実施例1と同様にして硬化膜をアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
市販のフェノキシ樹脂(東都化成(株)社製フェノトートYP−50)10g、硬化剤としてフェノールでブロックしたトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン2.00gをメチルエチルケトン40gに溶かしガラス基板上にキャストした。実施例1と同様に熱処理してエポキシ硬化膜を作製した。さらに実施例1と同様にしてアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った結果を表1に示す
【0050】
(比較例1)
パーフルオロカーボンスルホン酸膜(ナフィオン(登録商標)膜、Aldrich社試薬)を用いて、実施例1と同様にして各種測定を行った。測定結果を表1に示す
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜4のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜のイオン伝導度は10−2オーダーであり燃料電池用イオン伝導膜として使用するのに差し支えない値であった。また、いずれも比較例1のナフィオン膜に比べメタノール透過性は低いことが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池を可能とする、実用的なイオン伝導性を有し、耐メタノール性およびメタノール遮断性に優れた高分子電解質膜が提供される。
【発明の属する技術分野】
本発明は水素、アルコールなどを燃料に用いる燃料電池などに適用できる、耐水性、耐メタノール性、メタノール遮断性に優れた、スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜および該スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜からなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点から新エネルギー蓄電あるいは発電素子が社会で強く求められてきている。燃料電池もその1つとして注目されており、低公害、高効率という特徴から最も期待される発電素子である。燃料電池とは、水素やメタノール等の燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
【0003】
このような燃料電池は、用いる電解質の種類によってりん酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型および高分子電解質型に分類される。りん酸型燃料電池は、すでに電力用に実用化されている。しかし、りん酸型燃料電池は高温(200℃前後)で作用させる必要があり、そのため起動時間が長い、システムの小型化が困難であること、また、りん酸のプロトン伝導度が低いために大きな電流を取り出せないという欠点を有していた。
【0004】
これに対して、高分子型燃料電池は操作温度が最高で約80〜100℃程度である。また、用いる電解質膜を薄くすることによって燃料電池内の内部抵抗を低減できるため高電流で操作でき、そのため小型化が可能である。このような利点から高分子型燃料電池の研究が盛んになってきている。
【0005】
この高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜には、燃料電池の電極反応に関与するプロトンの高いイオン伝導性が要求される。このようなイオン伝導性高分子電解質膜材料としては、パーフルオロカーボンスルホン酸などの超強酸基含有フッ素系高分子が知られている。しかし、これらの高分子電解質材料はフッ素系の高分子であるために、非常に高価であるという問題を抱えている。また、これらの高分子の持つガラス転移温度が低いことおよび操作温度である100℃前後での水分保持が十分でないことより、100℃以上の高温ではイオン伝導度が急激に低下し電池として作用できなくなるという問題があった。さらにメタノール遮断性が低い、すなわちメタノール透過性が高いためにダイレクトメタノール型燃料電池には適用できなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような従来技術が持つ問題を解決しようとしたものである。実用的なイオン伝導性を有し、かつ耐水、耐メタノール性、メタノール遮断性に優れたスルホン酸基を有するエポキシ樹脂硬化膜及びそれからなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、高分子量エポキシ樹脂から得られるエポキシ樹脂硬化膜をアルキルスルトン化合物でスルホン化することにより、実用可能なイオン伝導性と優れた耐メタノール性およびメタノール遮断性を有するイオン導電性高分子膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の[1]〜[5]に記載した事項により特定される。
[1] 本発明は、エポキシ樹脂硬化膜をスルホン化して得られるスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を提供する。
【0009】
[2] エポキシ樹脂硬化膜が重量平均分子量5000以上の高分子量エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させたものであることを特徴とする[1]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0010】
[3] 硬化剤が分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート類またはそのイソシアネート基をフェノール類でマスク(ブロック)した変性イソシアネート類であることを特徴とする[2]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0011】
[4] スルホン化がエポキシ樹脂硬化膜に脂肪族スルトン化合物を反応させて行われることを特徴とする[1]〜[3]記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、本発明の好ましい態様である。
【0012】
[5] 本発明は、[1]〜[4]のいずれかに記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜よりなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜を提供する。
【0013】
本発明は、簡便かつ安価に製造させることができ、耐熱性、耐薬品性、メタノール遮断性に優れた、燃料電池用イオン伝導膜として有用なスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を提供するものである。
【0014】
本発明に係るイオン導電性高分子膜は、耐水性、耐溶剤性、耐熱性、メタノール遮断性に優れている。特に、本発明に係るイオン導電性高分子膜を用いて燃料電池を形成すると、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜とその製法について説明する。
本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は、エポキシ樹脂を硬化剤で架橋させたフィルム状の硬化物をスルホン化剤でスルホン化することにより得ることができる。
【0016】
エポキシ樹脂としては市販のフェノキシ樹脂、または公知の二段法で製造した高分子量エポキシ樹脂を使用することが好ましい。二段法とは二官能性エポキシ化合物と芳香族ジオール類とを無触媒または塩基性触媒の存在下で重合する方法である。本発明で使用する高分子量エポキシ樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算重量平均分子量で5000以上のものが好ましい。さらには10000〜1000000のものが好ましい。
【0017】
高分子量エポキシ樹脂の二段法による製造方法について説明する。高分子量エポキシ樹脂は、二官能性エポキシ化合物と芳香族ジオール化合物とを塩基性触媒の存在下、溶媒中または無溶媒で反応させることにより得ることができる。
【0018】
二官能性エポキシ化合物は、分子内に二個のエポキシ基をもつ化合物であれば制限されない。例えば、公知のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物などが使用できる。これらの二官能性エポキシ化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
芳香族ジオール化合物としてはハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。これらの芳香族ジオール化合物は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。高分子量のエポキシ樹脂を得るためには二官能性エポキシ化合物1モルに対して芳香族ジオール化合物を0.9〜1.1モル使用することが望ましい。
【0020】
反応に用いる塩基性触媒としてはアルカリ金属化合物、イミダゾール類、アミン類、有機りん化合物などが挙げられる。アルカリ金属化合物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、ハロゲン化物、有機酸塩、金属アルコキシド、金属フェノキシド、水素化物、金属アミドなどが挙げられる。イミダゾール類としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンズイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0021】
アミン類としては、脂肪族あるいは芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類がある。これらの化合物の一例としては、N,N−ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4,4,0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイドなどがあげられる。
【0022】
有機リン化合物としては、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、トリ−n−プロピルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−プロピルベンジルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−ブチルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、テトラ−n−オクチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−オクチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリ−n−オクチルエチルホスホニウムクロライド、トリ−n−オクチル−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリ−n−オクチルベンジルホスホニウムクロライド等が挙げられる。これらの触媒は単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。これらの触媒の使用量は、原料である二官能エポキシ樹脂1モルに対して、0.005〜0.20モルである。
【0023】
重合に使用できる溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノン、アセトフェノンメチルイソブチルケトン、ヘプタノン、オクタノンなどのケトン系溶媒、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒が使用できる。
【0024】
高分子量エポキシ樹脂の合成反応時の固形分濃度は、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。50質量%を超えると副反応が多くなる傾向が見られ、直鎖状に高分子量化しにくくなることがある。
【0025】
高分子量エポキシ樹脂の重合温度は、60〜150℃であることが望ましい。60℃より低いと重合速度が遅くなり過ぎる傾向が見られ、また150℃より高いと副反応が多くなる傾向が見られ直鎖状に高分子量化しにくくなることがある。
【0026】
次に、市販のフェノキシ樹脂または二段法により得られた高分子量エポキシ樹脂よりエポキシ樹脂硬化膜を製造する方法について説明する。
エポキシ樹脂に溶剤、硬化剤および必要に応じて硬化促進剤を加え、得られたワニスを基板上に塗布し、溶媒を除去した後、塗布膜を硬化させることにより得ることができる。硬化方法に特に限定はなく、従来公知の熱的な硬化方法を用いることが出来る。例えば、基材上に塗布したワニスを熱風乾燥した後、キャスト膜を基材より剥離し熱処理する方法、キャスト膜を基材に付けたまま熱処理する方法などがあげられる。
【0027】
硬化剤としては水酸基またはエポキシ基と反応しうる化合物であればよく多官能イソシアネート化合物、多官能エポキシ化合物、多価アミン化合物などが使用できるが、取り扱い易さなどの点より、特に多官能性のイソシアネート化合物やイソシアネート基をフェノール系化合物でブロックした変性イソシアネート化合物が好ましい。
【0028】
使用できる多官能性のイソシアネート化合物としては、具体的には、分子内にイソシアネート基を2個有するトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネナート等や、分子内にイソシアネート基を3個有するトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン、トリス(3−イソシアネートフェニル)メタン、チオリン酸トリス(4−イソシアネートフェニルエステル)、N−イソシアネートヘキサアミノカルボニル―N’,N”―ビス(イソシアネートヘキシル)ウレア、1,3,5−トリス(3−イソシアネートー4−メチルフェニル)−2,4,6−トリオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(TDIトリマー)等や、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート(ポリメリックMDI)が挙げられる。
【0029】
また、変性イソシアネート化合物としては前記のイソシアネート化合物のイソシアネート基をフェノール、クレゾール、クロロフェノールなどのフェノール系化合物でブロックした公知の化合物が挙げられる。これらのイソシアネート化合物または変性イソシアネート化合物は単独で、または二種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0030】
イソシアネート化合物を硬化剤としたワニスはゲル化し易いため、ワニスを製造後、直ちに使用せず保存する場合は変性イソシアネート化合物を硬化剤として使用することが好ましい。イソシアネート化合物または変性イソシアネート化合物は、エポキシ化合物の水酸基1モル当たりイソシアネート基が0.005〜0.8モル、望ましくは0.02〜0.5モルとなるように使用することが好ましい。
【0031】
硬化促進剤としては、通常イソシアネート基と水酸基の反応に用いられる公知のアミン類、イミダゾール類、アジリジン類、第4級アンモニウム化合物、アルカリ金属塩、鉛化合物、錫化合物、アルコラート化合物、フェノラート化合物、金属ハロゲン化合物、金属錯体化合物等が使用できる。
【0032】
ワニスをキャストして得られた膜を硬化させるための熱処理条件は、通常のウレタン結合形成条件やエポキシ硬化条件で十分であり、長時間の高温アニール処理を行う必要はない。硬化時の温度に制限はないが、エポキシ結合やウレタン結合の分解を抑制するために、250℃以下であることが好ましい。
【0033】
次に、エポキシ樹脂硬化膜のスルホン化方法の好適な例として、脂肪族スルトン化合物と反応させてアルキルスルホン化する方法について説明する。脂肪族スルトン化合物はエポキシ樹脂硬化膜の水酸基に付加反応することによりアルキルスルホン酸基に変化する。
すなわち、エポキシ樹脂硬化膜を、アルカリ金属化合物触媒を含む有機溶媒に一定時間浸漬し、そのままあるいは触媒溶液を除去後、さらに脂肪族スルトン化合物を含む溶液に所定時間、所定温度で浸漬することにより、水酸基、または水酸基および未反応アミノ基がアルキルスルホン化されたスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜が得られる。
【0034】
本発明で使用できる脂肪族スルトン化合物としては1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−メチル―1,3−プロパンスルトン、1−エチル―1,3−プロパンスルトン、1−メチル―1,4−ブタンスルトン、ヘキサフルオロ―1,3−プロパンスルトンなどが挙げられる。脂肪族スルトン化合物の使用量は、エポキシ樹脂硬化膜の種類、架橋度、脂肪族スルトンの種類、反応温度、溶媒の使用量、触媒の使用量などにより異なるが、エポキシ樹脂硬化物100質量部に対し、通常10〜1000質量部、望ましくは20〜400質量部である。
【0035】
反応に使用できる有機溶媒としては、
a)非プロトン性アミド系溶媒である、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド;
b)エーテル系溶媒である、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、アニソール、ジフェニルエーテル;
c)アミン系溶媒である、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソホロン、ピペリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン;
d)ハロゲン系溶媒である、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン;
e)その他の溶媒である、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素
などが挙げられる。
【0036】
使用できるアルカリ金属化合物触媒としては、リチウムハイドライド、ナトリウムハイドライド、カリウムハイドライド、リチウムアルミニウムハイドライド、ナトリウムアルミニウムハイドライドなどの金属水素化物、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ペンタジエニルナトリウムなどの有機金属、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムビスジメチルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドなどの金属アミド、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムブトキシド、リチウムヘキソキシド、リチウム−2−エチルヘキソキシド、リチウムフェノキシドなどの金属アルコキシドなどが挙げられる。アルカリ金属化合物触媒の使用量は触媒の種類、エポキシ樹脂硬化膜の種類、架橋度、反応時間などにより異なるが、エポキシ樹脂硬化膜100質量部に対し、通常1〜1000質量部、望ましくは10〜400質量部である。
【0037】
エポキシ樹脂硬化膜を触媒溶液または脂肪族スルトン化合物溶液に浸漬する際の温度に制限はないが、通常−5〜150℃、望ましくは30〜120℃である。浸漬時間は温度、脂肪族スルトンの種類、触媒の種類などにより異なるが、通常0.5〜96時間である。
【0038】
脂肪族スルトン化合物によりスルホン化したエポキシ樹脂硬化膜はそのままイオン伝導性高分子膜として使用することができる。このイオン伝導性高分子膜の厚みは、特に制限はないが、通常10〜200μm、特には30〜100μmが好ましい。前記の範囲内であれば、実用に耐える膜の機械的強度が得られ、かつ膜抵抗が実用上十分な程度に低くなる、すなわち十分な発電性能を得ることができる。また、イオン伝導性高分子膜として使用する際の、スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜のスルホン酸基の様態としては、最もプロトン伝導度が大きいフリーのプロトン酸の状態が好ましい。
【0039】
本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜からなるイオン伝導膜は、従来の高価なパーフルオロカーボンスルホン酸膜に比べ製造価格が安価である。また、本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜は従来のパーフルオロカーボンスルホン酸に比べ耐熱性が高いため高温で使用することができる。さらに本発明のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜はメタノール遮断性が高いため、ダイレクトメタノール型燃料電池に適用できる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0041】
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(イ)プロトン交換
プロトン酸の金属塩等は以下の手順でフリーのプロトン酸に戻した。
1)スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を2N−硫酸に一晩浸した。
2)酸処理した膜を蒸留水に一晩浸した。
3)酸処理および蒸留水で洗浄した膜を150℃で4時間乾燥して、フリーのプロトン酸を含有する膜を得た。
(ロ)イオン交換基当量
スルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜を密閉できるガラス容器中に精秤し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を0.1N水酸化ナトリウム標準水溶液にてフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、計算した。
【0042】
(ハ)イオン伝導度
イオン伝導膜を幅5mm、長さ40mmに切り出した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まるCole−Coleプロットの円弧から抵抗率を測定した。電圧端子間は20mmとした。インピーダンスの測定はLCRメーター(日置電機社製3532)を使用した。温度変化は電極を接続したサンプルをアルミブロック製の恒温槽内に設置することにより行い、30℃から110℃の範囲の伝導度を測定した。測定は全て加湿下で行ったが、この加湿は常圧の恒温槽内への蒸気の導入により行い、水蒸気発生器にて測定温度が100℃未満では恒温槽温+5℃、100℃以上では120℃の一定温度に蒸留水を加熱し、生成する蒸気を使用した。また、イオン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
【0043】
(ニ)メタノール溶解性
150℃で4時間乾燥させたイオン伝導膜をメタノールに浸し、25℃で24時間静置した。取り出したイオン伝導膜を再度150℃で4時間乾燥させた後、重量減少率を測定した。
(ホ)メタノール透過性
室温にて蒸留水と1mol/Lメタノール水溶液を直径23mmφのイオン伝導膜を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きよりメタノール透過性を計算した。
【0044】
(実施例1)
窒素導入管、温度計、冷却管及び撹拌装置を備えた500mlの5つ口反応器に、二官能性エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル34.04g(0.100モル)、芳香族ジオールとしてビスフェノールA22.83g(0.100モル)、触媒として水素化リチウム0.02g(0.003モル)とトリフェニルホスフィン0.787g(0.03モル)をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)230.7gに溶解させ、120℃で8時間反応させた。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定より得られた高分子量エポキシ樹脂の重量平均分子量は84000であった。
【0045】
この溶液20gに硬化剤としてフェノールでマスクしたトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン0.76gを加えガラス板に塗布し、イナートオーブンにて常圧の窒素雰囲気下で室温より200℃まで4時間で昇温後、200℃で4時間保持することにより溶媒の除去および硬化を行った。ガラス板を水に浸してエポキシ樹脂硬化膜を剥離した。
【0046】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド7.5gをジメチルスルホキシド(DMSO)200mlに溶かし、得られたエポキシ樹脂硬化膜2.0gを70℃で24時間浸漬した。触媒溶液を除去し膜をDMSOで洗浄した後、1,3−プロパンスルトン5.5gをDMSO200mlに溶かした溶液に70℃で24時間浸漬した。DMSOを除去後、(イ)記載の方法でスルホン酸基をリチウム塩型よりフリーのプロトン酸型に戻した。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、(ロ)記載の方法でイオン交換基当量、(ハ)記載の方法でイオン伝導度、(ニ)記載の方法でメタノール溶解度、(ホ)記載の方法でメタノール透過性を測定した。測定結果を表1に記す。
【0047】
(実施例2)
実施例1で得られた高分子量エポキシ樹脂溶液20gに硬化剤としてジフェニルメタンジイソシアネート0.44gを加え、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化膜を作製した。得られた硬化膜を実施例1と同様にしてアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
ビスフェノールAの代わりにビスフェノールF20.02gを使用し、その他は実施例1と同様にして高分子量エポキシ樹脂を合成した。GPC測定より得られたエポキシ樹脂の分子量は78000であった。得られたエポキシ樹脂溶液より実施例1と同様にしてエポキシ樹脂硬化膜を作製し、さらに実施例1と同様にして硬化膜をアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
市販のフェノキシ樹脂(東都化成(株)社製フェノトートYP−50)10g、硬化剤としてフェノールでブロックしたトリス(4−イソシアネートフェニル)メタン2.00gをメチルエチルケトン40gに溶かしガラス基板上にキャストした。実施例1と同様に熱処理してエポキシ硬化膜を作製した。さらに実施例1と同様にしてアルキルスルホン化した。このスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜について実施例1と同様に各種測定を行った結果を表1に示す
【0050】
(比較例1)
パーフルオロカーボンスルホン酸膜(ナフィオン(登録商標)膜、Aldrich社試薬)を用いて、実施例1と同様にして各種測定を行った。測定結果を表1に示す
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜4のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜のイオン伝導度は10−2オーダーであり燃料電池用イオン伝導膜として使用するのに差し支えない値であった。また、いずれも比較例1のナフィオン膜に比べメタノール透過性は低いことが分かる。
【0053】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池を可能とする、実用的なイオン伝導性を有し、耐メタノール性およびメタノール遮断性に優れた高分子電解質膜が提供される。
Claims (5)
- エポキシ樹脂硬化膜をスルホン化して得られるスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜。
- エポキシ樹脂硬化膜が重量平均分子量5000以上の高分子量エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させたものであることを特徴とする請求項1記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜。
- 硬化剤が分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート類またはそのイソシアネート基をフェノール類でマスク(ブロック)した変性イソシアネート類であることを特徴とする請求項2記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜。
- スルホン化がエポキシ樹脂硬化膜に脂肪族スルトン化合物を反応させて行われることを特徴とする請求項1〜3記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスルホン酸基含有エポキシ樹脂硬化膜よりなる燃料電池用イオン伝導性高分子膜。
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