JP2004024856A - 光学的成分測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体を傷付けることなく生体内の血糖値等の測定を行うことのできる光学的成分測定装置、特に、プローブの押し付け条件にかかわりなく正確な測定結果を得ることのできる光学的成分測定装置を提供する。
【解決手段】光源からの光を伝送し、光を先端部から測定対象に照射する照射用光ファイバ2と、前記照射用光ファイバの先端部の近傍位置に配置され、前記照射用光ファイバから照射される光を散乱する散乱体4と、前記照射用光ファイバから照射され前記測定対象によって散乱された光を先端部から受光する受光用光ファイバ3と、前記照射用光ファイバの先端部と前記受光用光ファイバの先端部とを所定の位置関係に保持し、前記散乱体を支持するプローブ本体1と、前記受光用光ファイバによって受光された光のスペクトルを検出するスペクトル検出部とを有する。
【選択図】    図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体内の血糖値等の測定を、血液を採取したりプローブを生体内に進入させたりすることなく行うことのできる光学的成分測定装置に関し、詳しくは、プローブの押し付け条件にかかわりなく正確な測定結果を得ることのできる光学的成分測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、生体内の血液中の血糖値を測定するには、生体から血液を採取して、その血液試料中の糖(例えば、グルコース等)の濃度を直接測定することが最も一般的であった。しかし、生体から血液を採取するには、生体に針を刺す必要があるため、血液を採取される側にとっても、痛みや不安が伴うという問題点があった。また、1日に4回程度採血する場合もあり、生体の血液採取部位に傷跡が残ったり硬化したりすることもある。したがって、できれば血液を採取することなく測定できることが望ましい。
【0003】
このため、生体を傷付けることなく血糖値の測定を行う測定器の実現が待ち望まれていた。これを実現するものとして、光を生体に照射して生体内で散乱された散乱光を測定することにより、生体内の化学成分の定量および定性分析を行う測定装置がある。これは、図1に示すようなプローブ10により測定を行うものである。測定を行うためのプローブ10は、プローブ本体1に2本の光ファイバを所定距離だけ隔てて保持したものである。2本の光ファイバは、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3である。このプローブ10を、生体表面に押し付けて測定を行う。
【0004】
照射用光ファイバ2には、光源からの所定の波長域(例えば、近赤外光)の光がプローブ10の他端側から入射されており、この光が照射用光ファイバ2内を伝送されて、プローブ10側の先端部から生体表面を通して生体内に照射される。この照射光は、生体組織により散乱され、散乱光の一部が受光用光ファイバ3の先端部に入射する。このとき、生体組織内での散乱回数が数回程度であると、それぞれの散乱における散乱角度は光の波長に依存するので、散乱して受光用光ファイバ3の先端部に戻ってきた光の入射角度に対する強度分布も波長に依存することになる。
【0005】
生体組織により散乱され受光用光ファイバ3に入射された光は、受光用光ファイバ3の他端から射出され、分光器により分光されて複数の受光素子を有する検出器によって光のスペクトルを測定される。このように、生体組織内で散乱された光のスペクトルを測定することにより、生体組織すなわち血液中に含まれる化学成分の定量分析等が可能となる。このような測定装置により、生体表面からある程度の距離(例えば、数mm程度)にある組織内の化学成分の分析が可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の光学的測定装置は、生体を傷付けることなく血糖値等の測定が行えるという利点があるが、生体へのプローブ10の押し付け条件によって測定結果が大幅に異なり、均一な測定結果を得ることが難しいという問題点がある。すなわち、プローブ10の押し付け条件、特に押し付け角度によって、得られる受光スペクトルが変化してしまう。これを、図2から図5により説明する。
【0007】
図2(a)は、入射光21が粒子や気泡等の散乱粒子20によって散乱され、進行方向が変化させられて散乱光22として進む様子を示している。ここでは、光の散乱角αを、図示のように散乱前の光の進行方向に対して散乱後の光の進行方向のなす角度とする。同じ大きさの散乱粒子による散乱においては、散乱角αに対する光の強度分布は図2(b)のようになる。ここで、赤、黄、緑は、光の波長を表しており、波長は赤>黄>緑である。すなわち、長波長の光の方が散乱されにくく、散乱角が0度に近い範囲に強度分布が集中する。また、短波長の光の方が散乱されやすく、散乱角の大きい範囲にまで強度分布が分散する。
【0008】
図3(a)は、測定対象によって1〜数回散乱された光が、入射光23として受光用光ファイバ3に入射する様子を示している。ここでは、入射光23の入射角βを、図示のように受光用光ファイバ3の軸方向に対して光の進行方向のなす角度とする。なお、入射角βの基準となる受光用光ファイバ3の軸方向は、受光用光ファイバ3が正規角度で配置されている場合の軸方向とする。
【0009】
図3(b)は、一般的な測定対象によって散乱された光が受光用光ファイバ3に入射する際の、入射角βに対する光の強度分布を示す図である。入射角βが0度の入射光は、1〜数回の散乱により散乱角の累積が180度となる光である。したがって、散乱されにくい長波長側の光(赤)では強度が小さく、散乱されやすい短波長側の光(黄)の方が相対的に強度が大きい。また、入射角βに対する光の強度分布も波長によって異なるものとなる。
【0010】
図4は、入射角βに対する光の強度分布を詳しく示す図である。赤と黄の波長の光の強度分布がこの図のようになっている場合に、受光用光ファイバ3の角度が正規角度からずれたときの測定スペクトルの変化を考える。入射光が受光用光ファイバ3にガイドされ出力端まで伝送されるためには、入射光の入射角βが所定の角度範囲内にある必要がある。受光用光ファイバ3が正規角度(例えば、測定対象の表面に対して垂直)で置かれている場合には、図4の垂直な実線で示すように、入射角βが−b<β<bの角度範囲の入射光が受光可能となる。
【0011】
これに対して、受光用光ファイバ3の角度が正規角度から角度cだけ傾いた場合には、図4の垂直な二点鎖線で示すように、入射角βが−b+c<β<b+cの角度範囲の入射光が受光可能となる。このように、受光可能な入射角が正規角度の場合からずれてしまうので、入射角に対する光の強度分布により、受光される光の強度も変化する。また、光の強度分布が波長に依存して異なるので、受光される光の強度も波長に依存した変化を被ることになる。
【0012】
図4に示すような入射光の強度分布の場合には、受光用光ファイバ3の角度がずれると、赤の光も黄の光も受光量が増加するが、赤の光の増加率の方が大きくなっている。このように、入射光の強度分布が波長によって異なる場合には、受光量の変化も波長によって異なることになる。
【0013】
図5は、プローブの角度による吸光度スペクトルの変化の一例を示す図である。図5のグラフの横軸は光の波長を表し、縦軸は受光された光の強度から求められた吸光度を表す。実線で示す曲線が、受光用光ファイバ3が正規角度の場合の吸光度を表す。そして、二点鎖線で示す曲線が、受光用光ファイバ3の角度が正規角度からずれた場合の吸光度を表す。正規角度からずれた場合、長波長側では受光量が増加し、吸光度としては数値が減少する。この吸光度スペクトルの例では、短波長側では逆に吸光度の数値が増加している。
【0014】
以上のような理由により、プローブ10の押し付け角度によって、得られる受光スペクトルが変化してしまい、また、その受光スペクトルの変化は光の波長によって異なるものとなってしまう。このように、測定したスペクトルの変化が波長によって異なると、そのスペクトルによって求めた各成分の濃度等に大きな誤差を生じてしまう。
【0015】
このように、従来の光学的測定装置は、プローブ10の押し付け条件、特に押し付け角度に対する依存性が強く、押し付け条件によって測定結果がばらついてしまうという問題点があった。このため、従来の測定装置では、測定点または測定回数を増やして、それらの測定値の平均値を計算する等により、測定条件による測定値のばらつきをなくすようにしていた。ただ、測定点や測定回数を増やすと、測定時間も増加してしまうという問題点があり、また、測定値の平均値を算出するための構成が必要となるという問題点もある。
【0016】
そこで、本発明は、生体を傷付けることなく生体内の血糖値等の測定を行うことのできる光学的成分測定装置、特に、プローブの押し付け条件にかかわりなく正確な測定結果を得ることのできる光学的成分測定装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光学的成分測定装置は、光源からの光を伝送し、光を先端部から測定対象に照射する照射用光ファイバと、前記照射用光ファイバの先端部の近傍位置に配置され、前記照射用光ファイバから照射される光を散乱する散乱体と、前記照射用光ファイバから照射され前記測定対象によって散乱された光を先端部から受光する受光用光ファイバと、前記照射用光ファイバの先端部と前記受光用光ファイバの先端部とを所定の位置関係に保持し、前記散乱体を支持するプローブ本体と、前記受光用光ファイバによって受光された光のスペクトルを検出するスペクトル検出部とを有するものである。
【0018】
また、上記の光学的成分測定装置において、前記散乱体は、前記受光用光ファイバの先端部の近傍位置にも配置されており、前記受光用光ファイバに入射される光を散乱するものであることが好ましい。
【0019】
また、上記の光学的成分測定装置において、前記測定対象によって散乱された光を集光し、前記受光用光ファイバの先端部の近傍位置に配置された前記散乱体に入射するための集光レンズを有することが好ましい。
【0020】
また、本発明の光学的成分測定装置は、光源からの光を伝送し、光を先端部から測定対象に照射する照射用光ファイバと、前記照射用光ファイバから照射され前記測定対象によって散乱された光を先端部から受光する受光用光ファイバと、前記受光用光ファイバの先端部の近傍位置に配置され、前記受光用光ファイバに入射する光を散乱する散乱体と、前記照射用光ファイバの先端部と前記受光用光ファイバの先端部とを所定の位置関係に保持し、前記散乱体を支持するプローブ本体と、前記受光用光ファイバによって受光された光のスペクトルを検出するスペクトル検出部とを有するものである。
【0021】
また、上記の光学的成分測定装置において、前記散乱体の散乱係数と前記散乱体の厚さの積が、0.5〜50の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、上記の光学的成分測定装置において、前記散乱体の散乱係数と前記散乱体の厚さの積が、5〜25の範囲内であることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図6は、本発明の光学的成分測定装置のプローブ11を示す断面図である。プローブ11は、プローブ本体1に照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の2本の光ファイバを所定距離だけ隔てて保持したものである。また、照射用光ファイバ2および受光用光ファイバ3の先端部近傍には、光を散乱するための散乱体4が配置されている。散乱体4はプローブ本体1に支持されている。
【0024】
なお、図6では照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3とが平行に配置されて保持されているが、必ずしも平行に保持するわけではなく、照射用光ファイバ2からの照射され散乱された光が効率よく受光用光ファイバ3に入射されるように、両者の位置および角度が設定される。また、ここでは照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3としてそれぞれ1本の光ファイバを使用した例を示しているが、いずれか一方または両方を複数本の光ファイバによって構成してもよい。
【0025】
このプローブ11を、生体表面に押し付けて測定を行う。照射用光ファイバ2には、光源からの所定の波長域の光(近赤外光、例えば、グルコースの測定においては波長1000〜2500nmの光が使用される。)がプローブ11とは反対側の光ファイバ端部から入射されており、この光が照射用光ファイバ2内を伝送されて、プローブ11側の先端部から照射される。照射用光ファイバ2から照射された光は、散乱体4によって散乱され、照射方向が分散されて全方向に均等に照射されるようになる。なお、散乱体4としては、透明体の表面に微細な凹凸を形成したものや、透明体の内部に微細粒子を分散させたもの等が使用でき、測定に使用する波長域の光を効率よく散乱するものとする。
【0026】
なお、散乱体4の散乱の強さが弱すぎると光の散乱量が減少して効果が薄れるし、散乱体4の散乱の強さが強すぎても受光される光の強度が小さくなりすぎて測定には適さなくなる。散乱体4の散乱度合いとしては、散乱体4の厚さ(照射用光ファイバ2の軸方向の厚さ)が5mmの場合、散乱体4の散乱係数が1〜100[cm−1]の範囲内であることが望ましい。特に、散乱体4の散乱係数が10〜50[cm−1]の範囲内が最適である。これは、コンピュータによる光散乱のシミュレーションによって得た結果である。
【0027】
また、散乱体4の散乱度合いは、散乱体4の散乱係数と散乱体4の厚さとの積で表されるため、散乱体4の厚さを1/2としたときには散乱体4の散乱係数を2倍とすればほぼ同じ散乱度合いとなる。すなわち、散乱体4の散乱係数と散乱体4の厚さとの積が0.5〜50[無次元数]の範囲内であることが望ましい。特に、この積を5〜25[無次元数]の範囲内とすれば最適である。
【0028】
散乱体の散乱係数と散乱体の厚さの積を上記のような範囲内とすることにより、受光用光ファイバに入射する入射光の入射角に対する強度分布が十分に平坦化されるとともに、測定に適する受光量を得ることができる。このため、高精度で信頼性の高い測定結果を得ることができる。ただし、プローブ11の構造上、散乱体4の厚さは10mm以下(例えば、5mm程度)であることが望ましい。
【0029】
散乱体4により分散された光は、生体表面を通して生体内に照射される。この照射光は、さらに生体組織により散乱され、その散乱光の一部が散乱体4を通って受光用光ファイバ3の先端部に入射する。このように、生体への照射光は、2度にわたって、散乱体4によって照射方向が分散されるので、プローブ11を生体に押し付ける角度が、正規の角度からずれていたとしても、その角度ずれにはあまり依存することなく、ほぼ一定のスペクトルの光が受光用光ファイバ3に入射することになる。
【0030】
なお、このプローブ11では、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の両方の先端部近傍に散乱体4を配置しているが、照射用光ファイバ2の先端部近傍のみに散乱体4を配置するようにしてもよい。特に、受光用光ファイバ3の受光量が小さい場合には、散乱体4を照射用光ファイバ2側にだけ配置することが好ましい。また、散乱体4を受光用光ファイバ3の先端部近傍のみに配置してもよい。この場合には、受光用光ファイバ3に入射される光が散乱されて入射方向が均一化され入射角に対する強度分布が平坦化される。
【0031】
図7は、受光用光ファイバ3に入射する入射光の入射角に対する強度分布が理想的に平坦となった場合の強度分布を示す図である。入射光の強度分布が図示のように平坦であれば、受光用光ファイバ3の角度が正規角度からずれても、受光される光の強度は変化しないことになる。
【0032】
受光用光ファイバ3が正規角度で置かれている場合、図7の垂直な実線で示すように、入射角βが−b<β<bの角度範囲の入射光が受光可能となる。受光用光ファイバ3の角度が正規角度から角度cだけ傾いた場合には、図7の垂直な二点鎖線で示すように、入射角βが−b+c<β<b+cの角度範囲の入射光が受光可能となる。しかし、入射光の入射角に対する強度分布が平坦であるため、いずれの場合でも受光用光ファイバ3によって受光される光の強度は同じになる。したがって、受光用光ファイバ3の角度が正規角度からずれても、光の受光量は変化しない。
【0033】
本発明のプローブ11のように、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の一方または両方の先端部近傍に散乱体4を配置した場合には、受光用光ファイバ3に入射する入射光の入射角に対する強度分布が平坦化されて、図7に示すような平坦な強度分布に近付く。したがって、散乱体4により全体的な受光量は減少するが、プローブ11の押し付け角度がずれた場合の受光量の変化は少なくなり、吸光度スペクトルの変化も少なくなる。
【0034】
このように、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の一方または両方の先端部近傍に散乱体4を配置することにより、プローブ11の押し付け角度に依存せずに、ほぼ一定の吸光度のスペクトルを得ることができる。また、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の両方の先端部近傍に散乱体4を配置すれば、受光用光ファイバ3に入射する入射光の入射角に対する強度分布がさらによく平坦化され、測定スペクトルの押し付け角度に対する依存性もさらに小さくなる。
【0035】
図8は、本発明におけるプローブの他の形態を示す断面図である。このプローブ12では、照射用光ファイバ2と受光用光ファイバ3の両方の先端部近傍に散乱体4,4aを配置している。しかし、これにより受光用光ファイバ3の受光量が減少する。この受光量の減少によって、感度が低下することを防止するために、受光用光ファイバ3側の散乱体4aの前方に集光レンズ5を配置したものである。集光レンズ5は、プローブ本体1に支持されている。集光レンズ5によって集光された光が散乱体4aを通して受光用光ファイバ3に入射するので、受光量が増大して感度低下を防止することができる。
【0036】
図9は、本発明の光学的成分測定装置の測定時の状態を示す図である。プローブ11を生体に押し付けて血糖値等の測定を行う。照射用光ファイバ2のプローブ11とは反対側の端部からは、光源6から発光された所定の波長域(例えば、グルコースの測定においては波長1000〜2500nm)の光が入射されており、この光が照射用光ファイバ2内を伝送されて、プローブ11側の先端部から生体に照射される。
【0037】
この照射光はさらに生体組織により散乱され、生体内の化学成分により一部が吸収されて、受光用光ファイバ3の先端部に入射する。受光用光ファイバ3に入射した光は、プローブ11とは反対側の光ファイバ端部から出射され、検出器7によりそのスペクトルが検出される。検出されたスペクトルから血糖値等の算出が行われ、図示しない表示装置にその値が表示される。なお、ここではプローブ11を使用しているが、プローブ12も同様に使用することができる。
【0038】
以上のように、本発明の光学的成分測定装置によれば、プローブの押し付け条件にかかわらず、ほぼ一定の測定結果を得ることができる。このため、単一の測定により信頼性の高い測定結果が得ることができ、測定時間も短縮できる。さらに、測定条件に対する依存性が少ないため、測定作業自体も熟練者を必要とせずに、誰にでも容易に測定が行える。また、本発明により、生体を全く傷付けることなく生体内の化学成分の測定を行うことができる。
【0039】
なお、本発明は、照射用光ファイバの先端部の近傍位置に散乱体を配置したものであるが、ここで言う散乱体とは、光を効率よく散乱させるための何らかの構成を有するものであればよく、種々の形態のものが使用可能である。例えば、アクリル樹脂中にラテックス粒子を均一に分散させ固化させたもの、ガラス等の透明材料の表面を粗面化したもの等が使用できる。また、基盤となる透明材料は測定に使用する波長域の光を透過しやすい材料(吸収の少ない材料)であることが好ましく、これらの散乱体が測定に使用する波長域の光を効率よく散乱するものであることが好ましい。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上に説明したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0041】
照射用光ファイバの先端部の近傍位置に散乱体を配置するようにしたので、プローブの押し付け角度にかかわらず、ほぼ一定の測定結果を得ることができる。このため、単一の測定により信頼性の高い測定結果が得ることができ、測定時間も短縮できる。さらに、測定条件に対する依存性が少ないため、測定作業自体も熟練者を必要とせずに、誰にでも容易に測定が行える。また、生体を全く傷付けることなく生体内の化学成分の測定を行うことができる。
【0042】
受光用光ファイバの先端部の近傍位置にも散乱体を配置した場合には、測定結果の測定条件に対する依存性をさらに少なくすることができる。
【0043】
受光用光ファイバ側に配置された散乱体の前方に集光レンズを配置するようにしたので、受光用光ファイバの受光量が増大して測定装置の感度低下を防止することができる。
【0044】
受光用光ファイバの先端部の近傍位置に散乱体を配置するようにしたので、プローブの押し付け角度にかかわらず、ほぼ一定の測定結果を得ることができる。このため、単一の測定により信頼性の高い測定結果が得ることができ、測定時間も短縮できる。さらに、測定条件に対する依存性が少ないため、測定作業自体も熟練者を必要とせずに、誰にでも容易に測定が行える。また、生体を全く傷付けることなく生体内の化学成分の測定を行うことができる。
【0045】
散乱体の散乱係数と散乱体の厚さの積を0.5〜50の範囲内としたので、受光用光ファイバに入射する入射光の入射角に対する強度分布が十分に平坦化されるとともに、測定に適する受光量を得ることができる。このため、高精度で信頼性の高い測定結果が得ることができ、測定時間も短縮できる。
【0046】
散乱体の散乱係数と散乱体の厚さの積を5〜25の範囲内としたので、受光用光ファイバに入射する入射光の入射角に対する強度分布がさらに平坦化されるとともに、測定に適する受光量を得ることができる。このため、高精度で信頼性の高い測定結果が得ることができ、測定時間も短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、従来の光学的成分測定装置のプローブを示す断面図である。
【図2】図2は、光の散乱を説明するための図である。
【図3】図3は、受光用光ファイバに入射する光を説明するための図である。
【図4】図4は、プローブの角度ずれによる受光用光ファイバの受光量の変化を説明するための図である。
【図5】図5は、プローブの角度ずれによる吸光度スペクトルの変化を示す図である。
【図6】図6は、本発明の光学的成分測定装置のプローブを示す断面図である。
【図7】図7は、受光用光ファイバに入射する入射光の入射角に対する強度分布が理想的に平坦化された場合を示す図である。
【図8】図8は、本発明のプローブの他の形態を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の光学的成分測定装置の測定時の状態を示す図である。
【符号の説明】
1…プローブ本体
2…照射用光ファイバ
3…受光用光ファイバ
4,4a…散乱体
5…集光レンズ
6…光源
7…検出器
10,11,12…プローブ
20…散乱粒子
21…入射光
22…散乱光
23…入射光

Claims (6)

  1. 光源(6)からの光を伝送し、光を先端部から測定対象に照射する照射用光ファイバ(2)と、
    前記照射用光ファイバ(2)の先端部の近傍位置に配置され、前記照射用光ファイバ(2)から照射される光を散乱する散乱体(4)と、
    前記照射用光ファイバ(2)から照射され前記測定対象によって散乱された光を先端部から受光する受光用光ファイバ(3)と、
    前記照射用光ファイバ(2)の先端部と前記受光用光ファイバ(3)の先端部とを所定の位置関係に保持し、前記散乱体(4)を支持するプローブ本体(1)と、
    前記受光用光ファイバ(3)によって受光された光のスペクトルを検出するスペクトル検出部(7)とを有する光学的成分測定装置。
  2. 請求項1に記載した光学的成分測定装置であって、
    前記散乱体(4)は、前記受光用光ファイバ(3)の先端部の近傍位置にも配置されており、前記受光用光ファイバ(3)に入射される光を散乱するものである光学的成分測定装置。
  3. 請求項2に記載した光学的成分測定装置であって、
    前記測定対象によって散乱された光を集光し、前記受光用光ファイバ(3)の先端部の近傍位置に配置された前記散乱体(4)に入射するための集光レンズ(5)を有する光学的成分測定装置。
  4. 光源(6)からの光を伝送し、光を先端部から測定対象に照射する照射用光ファイバ(2)と、
    前記照射用光ファイバ(2)から照射され前記測定対象によって散乱された光を先端部から受光する受光用光ファイバ(3)と、
    前記受光用光ファイバ(3)の先端部の近傍位置に配置され、前記受光用光ファイバ(3)に入射する光を散乱する散乱体(4)と、
    前記照射用光ファイバ(2)の先端部と前記受光用光ファイバ(3)の先端部とを所定の位置関係に保持し、前記散乱体(4)を支持するプローブ本体(1)と、
    前記受光用光ファイバ(3)によって受光された光のスペクトルを検出するスペクトル検出部(7)とを有する光学的成分測定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載した光学的成分測定装置であって、
    前記散乱体(4)の散乱係数と前記散乱体(4)の厚さの積が、0.5〜50の範囲内である光学的成分測定装置。
  6. 請求項5に記載した光学的成分測定装置であって、
    前記散乱体(4)の散乱係数と前記散乱体(4)の厚さの積が、5〜25の範囲内である光学的成分測定装置。
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