JP2004022845A - 薄膜トランジスタおよびその製造方法並びに表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】TFTのパターンの重ね合せずれを防ぎ、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層との間の漏れ電流と、TFTの長時間動作によってゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される電荷によるオフ特性低下を防ぐ。
【解決手段】第1マスクパターンにてソース電極1aとドレイン電極を形成し、第2マスクパターンにてゲート絶縁層5、チャンネル層4およびゲート電極層7を形成する。電流リークが発生しやすいゲート電極側面端部に陽極酸化層6を設けて、ゲート端部におけるリーク電流を防ぐ。陽極酸化層6の外側面の位置を、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面よりも800μm以上内側に配置し、陽極酸化層6の水平方向の厚みdと、陽極酸化層6の外側面とチャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面との距離lとの和d+lを1000μm以上とする。
【選択図】 図2
【解決手段】第1マスクパターンにてソース電極1aとドレイン電極を形成し、第2マスクパターンにてゲート絶縁層5、チャンネル層4およびゲート電極層7を形成する。電流リークが発生しやすいゲート電極側面端部に陽極酸化層6を設けて、ゲート端部におけるリーク電流を防ぐ。陽極酸化層6の外側面の位置を、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面よりも800μm以上内側に配置し、陽極酸化層6の水平方向の厚みdと、陽極酸化層6の外側面とチャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面との距離lとの和d+lを1000μm以上とする。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜トランジスタおよびその製造方法、並びにその薄膜トランジスタをスイッチング素子として用いた液晶表示装置等の表示装置に関し、特に大型画面を有する表示装置に適した安価で高い信頼性を有する薄膜トランジスタおよびその製造方法並びに表示装置に関する。
【0002】
【従来技術】
コンピュータのモニター装置、携帯型情報端末機器、携帯型電話器等の表示装置に用いられる平面型ディスプレイとして、液晶表示装置が広く用いられ始めている。
【0003】
液晶表示装置は、所定の間隔を開けて対向配置された一対の基板の間に液晶層が挟持され、各基板上に設けられた一対の電極に挟まれた液晶層部分にて絵素部が構成されて、マトリックス状に絵素部が配置された構成となっている。そして、一対の電極に電圧を印加して各絵素部の液晶分子の配向状態をそれぞれ変化させることによって、文字、画像等が表示されるようになっている。
【0004】
液晶表示装置が普及製品として用いられるためには、高速応答と高コントラストとが必須の特性として要求されており、各絵素を個別に選択駆動する能力を高めるため、通常、各絵素毎にスイッチング素子を設けるアクティブマトリクス駆動方式が用いられている。また、スイッチング特性が良好であり、生産が容易であることから、スイッチング素子としては、通常、薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)が用いられている。
【0005】
一般的なアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置においては、液晶層を挟んで対向配置される一対の基板のうちの一方の基板(アクティブマトリクス基板)上に複数のゲート信号線と複数のソース信号線とが互いに交差して設けられ、各ゲート信号線と各ソース信号線との交差部近傍にTFTがそれぞれ設けられている。TFTは、例えば、ゲート電極層の上にゲート絶縁層を介してTFTのチャンネルとなる半導体層(チャンネル層)が設けられ、その上に互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層が設けられた構成となっている。
【0006】
ゲート電極層は、各絵素部を選択的に駆動する走査信号を供給するためのゲート信号線の一部を構成しており、ソース電極層は、絵素部に映像信号(表示データ)を供給するためのソース信号線の一部を構成している。また、ドレイン電極層は、各絵素部に設けられた絵素電極と接続されている。また、他方の基板(対向基板)には、全ての絵素部に共通の対向電極が、アクティブマトリクス基板上の各絵素電極と対向するように設けられている。
【0007】
そして、ゲート電極層に走査信号(ゲートオン電圧)を供給することによって、チャンネル層が導通状態(オン状態)となり、ソース電極層とドレイン電極層との間に電流が流れ、ソース電極層からドレイン電極層を介して絵素部(液晶層)に電荷(表示データ)が充電されるようになっている。また、ゲート電極層にゲートオフ電圧が供給されているときには、チャンネル層が非導通状態(オフ状態)となり、ソース電極層とドレイン電極層との間が電気的に遮断され、絵素部(液晶層)に充電された電荷(表示データ)が保持されるようになっている。
【0008】
近年では、大型画面を有するテレビジョンモニター装置に対する要望が高まっており、表示装置の大画面化に向けた技術開発が活発に行われている。このような表示装置の大画面化に対応するためには、回路パターンの形成精度を向上すること、製造コストの低廉価化を図ること、信頼性を向上させることを同時に満足することが可能な素子構造および製造方法を技術開発することが必要とされている。
【0009】
表示装置の大画面化に伴う回路パターンの形成精度を向上させるためには、TFTが完成するまでに複数回行われるフォトリソグラフィー工程に起因して生じるパターンの重ね合わせずれが問題となっている。パターンの重ね合わせずれとは、TFTを構成する各層(電極層、絶縁層、半導体層等)をパターン形成するためにフォトリソグラフィー工程を複数回繰り返して行うことによって、各層のパターンの位置が設計上の所定位置からずれ、その位置ずれの程度がばらつくことである。
【0010】
このようなパターンの重ね合せずれが生じる原因としては、まず、フォトリソグラフィー工程にて用いられる露光装置の機械精度が十分ではなく、被処理基板の大型化に伴って位置合わせ精度が低下することがある。また、位置合わせ精度を維持もしくは向上しようとする場合に、露光装置の価格が増大するおそれがある。さらに、基板が大きくなると、温度、湿度などの環境条件による基板の伸縮量が、TFTの素子サイズに対して無視できない値となり、これによってもパターンの重ね合わせずれが生じるおそれがある。
【0011】
このようなパターンの重ね合せずれを抑制するための方法としては、例えば、フォトリソグラフィー工程で露光される部分を、パターンの位置ずれが問題とならない程度にまで分割し、ずれを補正しながら、各層のパターンを順次露光していく方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、基板を分割して露光するため、基板一枚毎に必要とされる露光時間が長くなり、生産効率が低下して、基板一枚当たりの処理コストが高くなるという問題がある。
【0012】
これに対して、TFTのパターン構成を工夫して、フォトリソグラフィー工程で生じるパターンの重ね合せずれに対して冗長性を与えることによって、パターンの重ね合わせずれを抑制する方法が開発されている。この場合、重ね合わせを行うパターン数を減らすことによって、パターンの重ね合わせ回数を少なくし、全体としてパターンの重ね合せずれを少なくすることもできる。
【0013】
例えば、公表特許公報(特表昭59−501562号公報)には、TFTのパターン構成を工夫することによってパターンの重ね合せずれに対する冗長性を与えると共に、重ね合せを行うパターン数を減らすことができるTFTの構成が開示されている。
【0014】
図7(a)は、特表昭59−501562号公報に開示されているTFTアレイの構成を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)の○で囲んだ部分を拡大した部分拡大図である。
【0015】
このTFT109は、液晶表示装置において、液晶層を挟んで対向配置される一対の基板のうち、アクティブマトリクス基板にスイッチング素子として設けられている。アクティブマトリクス基板は、絶縁性基板上に、ソース信号線111aとゲート信号線117とが直交状態で設けられており、各ソース信号線111a111aおよびゲート信号線117で囲まれた領域に絵素電極111bが配置されている。各TFT109は、各ソース信号線111aおよび各ゲート信号線111aの交差部近傍にそれぞれ設けられており、ソース信号線111aの一部であるソース電極101aと、絵素電極111bをゲート信号線側に突出させた突出部であるドレイン電極101bとが互いに離隔して設けられている。ソース電極101aの上にはソースコンタクト層(図示せず)が設けられ、ドレイン電極101bの上にはドレインコンタクト層(図示せず)が設けられている。また、ソース電極101aおよびドレイン電極101bの上にわたってチャンネル層(図示せず)が設けられており、チャンネル層上にはゲート絶縁層(図示せず)を介してゲート信号線117の一部であるゲート電極107が設けられている。
【0016】
このTFT109は、例えば、以下のようにして作製される。まず、絶縁性基板上に透明導電膜とコンタクト層を構成する半導体膜とを成膜し、その上にフォトリソグラフィー法により所定の形状のマスクパターンを形成してエッチングを行うことにより、ソース信号線111aとその一部であるソース電極101aを形成すると共に、絵素電極111bとその突出部であるドレイン電極101bを形成する。次に、半導体膜、絶縁膜および導電膜を連続して成膜し、その上にフォトリソグラフィー法により所定の形状のマスクパターンを形成してエッチングを行うことにより、コンタクト層、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート信号線117とその一部であるゲート電極107を形成する。これによって、2回のフォトリソグラフィー工程によるパターン形成でTFTを作製することが可能となり、パターンの重ね合わせを行う回数が少なくなる。
【0017】
また、図7(b)において、X軸およびY軸方向を図示のように定めた場合、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107がソース電極101aおよびドレイン電極101bに対してX軸方向にずれても、TFTとしての特性に変化は生じない。よって、X軸方向に対してチャンネル層、ゲート絶縁膜、ゲート電極107のパターン形状の位置には制約がないことが分かる。実際には、TFT109周辺部における配線引き出し等のようなデザイン上の制約があるため、X軸方向に対して、そのデザイン上の制約を満たす必要があるが、TFTの素子サイズと比べると、緩やかな制約条件となる。
【0018】
同様に、Y軸方向に対しては、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107がソース電極101aおよびドレイン電極101bに対してY軸方向にずれても、±yで示される範囲であれば、TFTとしての特性に変化は生じない。例えば、TFT109をアクティブマトリクス型表示装置のスイッチング素子として用いる場合には、絵素としての有効面積の観点から問題が無い程度であれば、yの値をある程度、大きく設定することが可能である。従って、このTFT109の構成によれば、ソース電極101aおよびドレイン電極101bを形成するための1回目のマスクパターンと、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107を形成するための2回目のマスクパターンとの位置合わせに対して、冗長性を持たせることが可能となっている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特表昭59−501562号公報に開示されているTFTには、以下のような問題がある。
【0020】
まず、第1の問題としては、TFTのゲート端部における、ゲート電極とソース電極、およびゲート電極とドレイン電極との間のリーク電流が挙げられる。
【0021】
図8は、図7のC−C’線による断面図である。ここでは、絶縁性基板110上にソース電極101aが設けられ、その上にソースコンタクト層102a、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が積層されている。
【0022】
このTFTでは、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が同一のマスクパターンを用いて形成されるため、その側面がほぼ同一の面(断面)となって表れる。また、ゲート絶縁層105として一般的に用いられるSiN膜をエッチングする際に、ウエットエッチング法を用いた場合には、エッチング液中の成分、エッチング処理後の付着物等がSiN膜の側面に付着するおそれがある。また、ドライエッチング法を用いた場合には、反応生成物、エッチング処理後の付着物等がSiN膜の側面に付着するおそれがある。これらの付着物、および付着物に接するSiN膜部分(SiN膜の側面端部)は、付着物に接していないSiN膜部分に比べて、電気的な抵抗が著しく低くなることがある。このような場合には、TFTの動作時に、ゲート絶縁層105の側面端部の抵抗が低い部分を通じて、ゲート電極107とチャンネル層104との間で、漏れ電流(リーク電流)が発生する。
【0023】
特公平8−28510号公報では、上述したような具体的な原因については触れていないが、ゲート電極107の側面が露出していることによる電流リークを防ぐために、ゲート電極の側面端部を陽極酸化したTFTが開示されている。
【0024】
図9は、特公平8−28510号公報に開示されているTFTの構成を示す断面図である。この図9は、図8と同様に、図7のC−C’線による断面部分を示している。ここでは、絶縁性基板10上にソース電極101aが設けられ、その上にソースコンタクト層102a、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が積層されている。ゲート電極107は、Al、Ti、Ta、Nb、Cr等のように、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、ゲート電極をエッチングする際に用いたマスクパターンを用いてゲート電極側面端部を陽極酸化することによって、ゲート電極107の側面に陽極酸化層106が形成される。このように、電流リークが発生しやすいゲート電極107の側面に陽極酸化層106を形成することによって、リーク電流を防ぐことができるため、上記第1の問題に対応することができる。
【0025】
次に、本願発明者らが詳細な検討を行ったところ、第2の問題として、TFTのゲート端部近傍において、ゲート絶縁層105に緩和時間の長い電荷が生成しやすい領域が形成されるおそれがあることが判明した。
【0026】
この原因としては、ゲート絶縁層105のパターン形成時のエッチングによるゲート絶縁層端部へのダメージ、チャンネル層104のパターン形成時のエッチングによるチャンネル層端部へのダメージ、またはチャンネル層端部への付着物等が考えられる。ゲート絶縁層端部へのダメージについては、ゲート絶縁層端部近傍に原子結合の欠陥等が生じ、この欠陥部分に電荷が注入されることにより緩和時間の長い電荷が蓄積されると推察される。また、チャンネル層端部へのダメージまたはチャンネル層端部への付着物については、チャンネル端部の電気抵抗の値が本来のチャンネル部分の電気抵抗と比較して著しく低下し、異常な電流がチャンネル端部に集中して流れるため、そのチャンネル端部に隣接するゲート絶縁層端部に電気的な欠陥を生じさせることにより緩和時間の長い電荷が蓄積されると推察される。このような場合には、本来チャンネル部分を流れる電流がオフ電流となるゲート電圧(ゲートオフ電圧)印加時においても、オフ電流が上昇し、TFTがオフ状態とならないことになる。
【0027】
本願発明者らの検討によれば、この現象が現れないようにするためには、ゲート電極107において電極として機能する部分の端部をゲート絶縁層105およびチャンネル層104の端部の位置から1000nm内側に配置することが必要であることが判明した。
【0028】
特公平8−28510号公報に開示されているTFTの構造では、ゲート電極の側面端部を陽極酸化して陽極酸化層106を形成することにより、ゲート電極107の側面の位置がゲート絶縁膜105およびチャンネル層104の側面の位置から内側に配置される。よって、陽極酸化層106の水平方向の厚さを厚くすることにより、上記第2の問題に対しても対応できるものと考えられる。
【0029】
しかしながら、陽極酸化層106の水平方向の厚さを厚くするためには、ゲート電極層を陽極酸化する際に陽極酸化電圧を高くする必要があり、ゲート電極層に印加される陽極酸化電圧を高くした場合には、ゲート絶縁膜105に高電界が加わりゲート絶縁膜105の漏れ電流が増えるため、陽極酸化部分に加わる電圧の低下が生じ陽極酸化部分の水平方向の厚さを200nm以上にすることは容易ではない。
【0030】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、パターンの重ね合せずれを防ぐと共に、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層との間の漏れ電流と、TFTの長時間動作によりゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるオフ特性低下とを防ぐことができる薄膜トランジスタおよびその製造方法並びに表示装置を提供することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜トランジスタは、絶縁性基板上に、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層が設けられ、該ソース電極層および該ドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられた薄膜トランジスタにおいて、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
好ましくは、前記陽極酸化層の外側面の位置と、前記チャンネル層および前記ゲート絶縁層の側面の位置との距離が、800nm以上である。
【0033】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上に第1導電膜を成膜し、該導電膜上に第1マスクパターンを形成して、該第1マスクパターンをマスクとして用いて該第1導電膜をエッチングすることによって、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、該ソース電極層および該ドレイン電極層が設けられた基板上に半導体膜、絶縁膜および陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な第2導電膜を成膜し、該第2導電膜上に第2マスクパターンを形成して、該第2マスクパターンをマスクとして、該第2導電膜の側面端部を陽極酸化して形成される陽極酸化層の外側面がチャンネル層およびゲート絶縁層の側面よりも内側に配置されるように、該第2導電膜をエッチングする工程と、該第2マスクパターンをマスクとして用いて該半導体膜および該絶縁膜をエッチングすることによってチャンネル層およびゲート絶縁層を形成する工程と、該第2マスクパターンをマスクとして用いて第2導電膜の側面端部を陽極酸化する工程とを含み、そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
本発明の表示装置は、表示媒体を挟んで対向配置される一対の基板のうちの一方の基板に、複数のゲート信号線および複数のソース信号線が互いに交差して設けられ、各ゲート信号線および各ソース信号線で囲まれた領域に絵素電極が配置されており、各ゲート信号線および各ソース信号線の交差部近傍に薄膜トランジスタが設けられ、各薄膜トランジスタのゲート電極は交差部近傍のゲート信号線の一部を構成し、ソース電極は交差部近傍のソース信号線の一部を構成し、ドレイン電極は該絵素電極をゲート信号線側に突出させた突出部からなり、ソース電極層およびドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられ、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0035】
以下に、本発明の作用について説明する。
【0036】
本発明にあっては、第1マスクパターンによってソース電極層およびドレイン電極層を形成し、第2マスクパターンによってゲート絶縁層、チャンネル層およびゲート電極を形成することによって、パターンの重ね合せずれを防ぐことができる。
【0037】
また、ゲート電極層は、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、第2マスクパターンを用いて電流リークが発生しやすいゲート電極側面端部に陽極酸化層を設けることによって、TFTのゲート端部におけるリーク電流を防ぐことができる。
【0038】
チャンネル層およびゲート絶縁層の側面は、陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に配置することにより、ゲート電極の側面をゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置から1000nm内側に配置することが容易となる。例えば、陽極酸化層の外側面の位置と、チャンネル層およびゲート絶縁層の側面の位置との距離を800nm以上とすることにより、陽極酸化層の水平方向の厚さが200nm以下であっても、ゲート電極の側面をゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置から1000nm内側に配置することが可能となる。これによって、ゲート絶縁層の側面端部に生成される緩和時間の長い電荷によるTFTのオフ特性の低下を防ぐことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態である表示装置の要部構成を示す平面図である。また、図2(a)は、図1のA−A’線による断面図であり、図2(b)は、図2(a)の○で囲んだ部分を拡大した部分拡大図である。また、図3は、図1のB−B’線による断面図である。
【0041】
この表示装置は、表示媒体としての液晶層(図示せず)を間に挟んで対向配置される一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)に、複数のゲート信号線17と複数のソース信号線11aとが互いに交差して設けられている。各ゲート信号線17と各ソース信号線11aとで囲まれた矩形状の領域には、絵素電極11bが設けられ、各ゲート信号線17と各ソース信号線11aとの交差部近傍には、スイッチング素子として、本発明の一実施形態であるTFT9が設けられている。
【0042】
TFT9は、絶縁性基板10上に、Alなどの金属膜またはITOなどの透明導電膜からなり、ソース信号線の一部を構成するソース電極101aと、絵素電極11bをゲート信号線17側に突出させた突出部であるドレイン電極1bとが互いに離隔して設けられている。ソース電極1aの上には、n+a−Si(アモルファスシリコン)膜からなるソースコンタクト層2aが設けられ、ドレイン電極1bの上にはn+a−Si膜からなるドレインコンタクト層2bが設けられている。また、ソース電極1aおよびドレイン電極1bの上にわたってa−Si:H膜からなるチャンネル層4が設けられており、チャンネル層4上にはSiN膜等からなるゲート絶縁層5を介して、Ti膜などの陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、ゲート信号線17の一部であるゲート電極7が設けられている。また、ゲート電極7の側面には、TiO膜等からなる陽極酸化層6が設けられている。さらに、ゲート信号線7、ソース信号線11a、絵素電極11bおよびTFT9を覆うように絶縁膜(図示せず)が設けられ、その上に配向膜(図示せず)が設けられている。
【0043】
また、図示しない他方の基板(対向基板)には、全ての絵素部に共通の対向電極が、アクティブマトリクス基板上の各絵素電極11bと対向するように設けられており、その上に配向膜が設けられている。そして、ゲート電極7に走査信号(ゲートオン電圧)を供給することによって、チャンネル層4が導通状態(オン状態)となり、ソース電極1aとドレイン電極1bとの間に電流が流れ、ソース電極1aからドレイン電極1bを介して絵素部(液晶層)に電荷(表示データ)が充電されるようになっている。また、ゲート電極7にゲートオフ電圧が供給されているときには、チャンネル層4が非導通状態(オフ状態)となり、ソース電極1aとドレイン電極1bとの間が電気的に遮断され、絵素部(液晶層)に充電された電荷(表示データ)が保持されるようになっている。
【0044】
図2(a)およびその部分拡大図である図2(b)に示すように、本実施形態において、ゲート電極7の側面に設けられた陽極酸化層6の外側面の位置は、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面よりも内側に配置されている。
【0045】
図2(b)において、Wは、ゲート信号線17およびゲート電極7の幅を示し、このWがTFT9のチャンネル幅となっている。また、dは、ゲート電極7の側面に設けられた陽極酸化層6の水平方向の厚さを示す。また、lは、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面と陽極酸化層6の外側面との距離を示し、電極として有効に機能するゲート電極7は、その側面がチャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面からd+lだけ入り込んだ形状となっている。
【0046】
このTFT9において、陽極酸化層6の水平方向の厚さdを、140nmを超えて、例えば200nm以上に大きくすることは、以下の製造工程において説明するように、容易ではない。また、後述する図6に示すように、d+lが約1μm以上のときに、TFTのオフ電流が上昇する現象を動作上問題がない程度に抑制することが可能となるため、lは800nm以上(陽極酸化による体積増加量は陽極酸化の方法により異なるため、体積増加分は含めていない)とすることが好ましい。なお、図2(b)では、作図上の都合から、lよりもdを大きく示している。
【0047】
以下に、このように構成された本実施形態のTFTを製造する方法について説明する。
【0048】
図4(a)〜図4(f)は、本実施形態のTFTの製造工程を示す断面図である。
【0049】
まず、図4(a)に示すように、絶縁性基板10上に、Alなどの金属膜もしくはITOなどの透明導電膜と、n+a−Si膜とを連続して成膜し、この積層膜をフォトリソグラフィー法により所定の形状にマスクパターンを形成してエッチングを行い、ソース電極1a(ソース信号線11a、絵素電極11b、ドレイン電極1b)が形成される。このときソース電極1aおよびドレイン電極1b上に積層された形状でn+a−Si膜30がパターン形成される。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、a−Si:H膜40、SiN膜50、Ti膜70を連続して成膜し、その上に、フォトリソグラフィー法により所定の形状にフォトレジストからなるマスクパターン8を形成する。本実施形態では、Ti膜70の厚みを150nmとした。また、マスクパターン8の寸法は、5μm〜50μmが好ましく、本実施形態では20μmとした。
【0051】
続いて、過酸化水素水2000ml、アンモニア水500ml、エチレンジアミン四酢酸60gおよび純水500mlの割合で各材料を混合してなるエッチング液により、Ti膜70をエッチングする。本願発明者らの詳細な検討によれば、膜厚方向(基板面に対して垂直方向)へのTi膜のエッチング速度は300nm/minであり、フォトレジスト下に膜厚150nmのTi膜を設けた場合の端部水平方向へのTi膜エッチング速度は400nm/minであることが判明していることから、このときのTi膜70のエッチング処理時間は2.75min、4min、および5.25minの3種類の試料を作製した。これによって、図4(c)に示すように、フォトレジストからなるマスクパターン8の端部からそれぞれ、1μm(1000nm)、1.5μmおよび2μm内側まで入りこんだ形状でTi膜70aがパターン形成される。
【0052】
その後、SF6をエッチングガスとして用いたリアクティブイオンエッチング法により、SiN膜50およびa−Si:H膜40のエッチングを続けて行う。このとき、エッチングガスのガス圧力、エッチングガスをプラズマ反応させるときの発振出力、および基板に印加されるバイアス電圧の周波数と電圧値の設定等を制御することにより、フォトレジストからなるマスクパターン8の端部に対して垂直にパターン形成することが可能となる。これによって、マスクパターン8の形状通りに、SiN膜およびa−Si:H膜を続けてエッチングして、図4(d)に示すように、ゲート絶縁層5、チャンネル層4、ソースコンタクト層2a(ドレインコンタクト層2b)を形成する。
【0053】
続いて、上記マスクパターン8を除去することなく、1%の酒石酸アンモニウム水溶液中でTi膜70aの陽極酸化を行う。このとき、マスクパターン8が設けられているため、酒石酸アンモニウム水溶液にTi膜70aが接している部分は、Ti膜70aの側面端部だけであるので、この側面端部だけが陽極酸化されて、図4(e)に示すように陽極酸化層6が形成される。また、このとき、Ti膜70aに印加される陽極酸化電圧を上げることにより、陽極酸化される部分の水平方向の厚さは増加することになり、本願発明者らの詳細な検討から、陽極酸化電圧1Vに対して、陽極酸化される部分の水平方向の厚さは約2nm/Vであることが判明している。また、本願発明者らの詳細な検討から、陽極酸化電圧が約70Vに到達する付近において、陽極酸化を進めるための陽極酸化電流の値と、Ti膜70の下にあるSiN膜50を介して酒石酸アンモニウム水溶液とTi膜70との間で流れる漏れ電流の値とが同等となることから、この電圧以上に陽極酸化電圧を印加しても、陽極酸化される部分の水平方向の厚さをさらに厚くすることはできないことが判明している。従って、陽極酸化層6の水平方向の厚さdは、約140nm以上に厚くすることは容易ではない。そこで、本実施形態では、陽極酸化電圧を65Vとし、陽極酸化層6の水平方向の厚さdを130nmとした。本願発明者らが本実施形態の作製試料を詳細に分析したところ、水平方向の厚さ100nmのTi膜が陽極酸化されて、TiO膜として体積が増加し、結果として陽極酸化層6の水平方向の厚さdが130nmとなっていることが分かった。従って、ゲート電極7となる金属Ti膜の側面は、陽極酸化される前のTi膜70aの側面の位置から、100nm内側に後退していることが分かった。
【0054】
最後に、図4(f)に示すように、フォトレジストからなるマスクパターン8を除去することにより、本実施形態のTFT9が完成する。
【0055】
さらに、本実施形態のTFT9と比較するために、以下のようなTFTを比較例として作製した。
【0056】
比較例1として、ゲート電極の側面と、ゲート絶縁膜およびチャンネル層の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにエッチングを行って、ゲート電極の側面端部の陽極酸化は行わない試料を作製した。これにより、図8に示す特表昭59−501562号公報に記載されているTFTと同様の構成のTFTが作製される。この比較例1では、ゲート電極107の側面と、ゲート絶縁膜105およびチャンネル層104の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにするため、Ti膜のエッチング時間を30secとした。
【0057】
また、比較例2として、ゲート電極の側面と、ゲート絶縁膜およびチャンネル層の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにエッチングを行い、ゲート電極の側面端部を陽極酸化した試料を作製した。この比較例2では、比較例1と同様に、Ti膜のエッチング時間を30secとした。また、Ti膜の陽極酸化は、実施形態と同様に行い、陽極酸化電圧を65V、陽極酸化部分の水平方向の厚さを130nmとした。これにより、特公平8−28510号公報に記載のTFTと同様の構成のTFTが作製されるが、この比較例2では、実施形態でも説明したように、陽極酸化される前のTi膜の側面から厚さ100nmのTi膜部分が陽極酸化され、陽極酸化部分の水平方向の厚さが130nmとなる。従って、この方法で作製される比較例2のTFTの断面形状は、特公平8−28510号公報に記載されている図9とは異なり、図10に示すような形状となり、陽極酸化層106として体積が増加する分、陽極酸化層106の外側面の位置は、ゲート絶縁層105およびチャンネル層104の側面から外側に突出することになる。
【0058】
また、比較例3として、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面に対するゲート電極側面の内側への入り込み量が実施形態のTFT9とは異なる試料(入り込み量d+l=0.3μm、0.5μm、0.8μm)を作製した。この比較例3では、Ti膜のエッチング時間を異ならせること以外は、実施形態と同様の作製方法を用いた。これにより、実施形態のTFT9に対して、図2(b)に示すd+lの長さが異なるTFTが作製される。
【0059】
また、比較例4として、ゲート電極側面端部の陽極酸化は行わずに、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面に対するゲート電極側面の内側への入り込み量が実施形態のTFT9と同じ試料(入り込み量=1.0μm、1.5μm、2.0μm)を作製した。これにより、図11に示すように、ゲート電極107の側面がチャンネル層104およびゲート絶縁層105の側面よりも内側に配置されたTFTが作製される。
【0060】
なお、上記比較例1〜比較例4のTFTにおいては、ゲート電極の側面の位置が異なることから、同じマスクパターンを用いてTFTを作製した場合、ゲート信号線としても機能するゲート電極の幅、およびTFTのチャンネルとして機能する部分の幅が異なることから、それぞれのTFT特性に違いが生じることになる。このため、TFTとして機能する部分のサイズ(寸法)が本実施形態のTFT9と同じとなるようにマスクパターンを調整して、比較例1〜比較例4のTFTを作製した。TFTの素子サイズとしては、チャンネル幅を40μm、チャンネル長を10μmとした。
【0061】
以下に、このようにして作製された実施形態のTFT9と、比較例1〜比較例4のTFTとについて、TFT特性を比較した結果を説明する。
【0062】
図5は、比較例1のTFTについて、ゲート電圧Vg−ソース・ドレイン間電流Ids特性を示すグラフである。ここでは、TFT製造直後のVg−Ids特性と、ゲート電圧15V、ソース・ドレイン間の印加電圧10Vとして300min連続動作試験した後のVg−Ids特性とを示している。
【0063】
この図5から、例えば、ゲート電圧−10Vにおいてソース・ドレイン間に流れる電流は、3桁以上も増加していることが分かる。この原因を調べるため、TFTのチャンネル幅およびチャンネル長に対する特性依存性、ゲート絶縁膜の絶縁特性、キャパシタンス特性などについて本願発明者らが詳細に検討を行ったところ、TFTを長時間動作させることによって、TFTのゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に、緩和時間の長い電荷が蓄積されていることが分かった。これによって、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層が同一パターンで形成されるTFTでは、TFTのゲート端部においてゲート電極とチャンネル層との間に流れる漏れ電流、もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流に加えて、TFT動作時にゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるソース・ドレイン間でのオフ電流特性低下という問題が生じるおそれがあることが分かる。
【0064】
また、図6は、本実施形態のTFT9、および比較例1〜比較例3のTFTについて、動作試験によるオフ電流の上昇を示すグラフである。ここでは、縦軸にゲート電圧15V、ソース・ドレイン間の印加電圧10Vとして300min連続動作試験した後にゲート電圧−10Vにおいてソース・ドレイン間に流れる電流値をとり、横軸にゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置からゲート電極として機能する部分の側面の位置が内側に入り込んでいる距離(水平方向の長さ)をとって各TFTのオフ電流特性をプロットしている。
【0065】
この図6から、比較例2のTFTのように、ゲート電極の側面端部を陽極酸化しただけでは、TFTを長時間動作させた後のオフ電流の増加を充分防ぐことができないことが分かる。これに対して、本実施形態のTFT9では、TFT作製直後の電流値とほとんど変わらないことが分かる。
【0066】
さらに、実施形態1のTFT9と、比較例1、比較例2および比較例4のTFTとについて、ゲート・ソース間の印加電圧20Vとした場合のゲート・ソース間の漏れ電流の値を下記表1に示す。ここでは、それぞれ10個のTFT素子について測定を行い、平均値を求めている。
【0067】
【表1】
本実施形態1のTFT9および比較例2のTFTでは、ゲート・ソース間の電流値は、測定値の測定限界のために計測することができず、0.1pA以下であると推察される。一方、比較例1のTFTでは、ゲート・ソース間の電流値が平均で4720pAと高い値を示している。これは、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層を同一パターンで形成したTFTにおいて、TFTのゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流を示している。比較例4のTFTにおいても、比較例1と比べて値が低下しているものの、平均で24.3pAと高い値を示している。これについても同様に、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流を示している。
【0068】
これらのことから、TFTのゲート端部における漏れ電流の原因として、ゲート絶縁膜側面およびゲート絶縁膜表面の露出部分に対して、エッチング時に付着する付着物が影響を与えていることが考えられる。このため、ゲート電極側面端部を陽極酸化することの効果としては、特公平8−28510号公報に記載されているような、ゲート電極側面端部とチャンネル側面端部との導電可能部分の距離が増加することによる効果だけではなく、ゲート絶縁膜側面端部に存在すると考えられる低抵抗部分とゲート電極側面端部とを電気的に遮断することによる効果も考えられる。従って、ゲート電極側面が、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面からある程度内側に入り込んだ構造であっても、TFTのゲート端部における漏れ電流を低減するためには、ゲート電極側面端部を陽極酸化する必要があることが分かる。
【0069】
以上のことから、本実施形態のTFTによれば、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層を同一パターンで形成したTFTにおいて、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流と、TFT動作時にゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるソース電極・ドレイン電極間のオフ電流特性低下の2つの問題を同時に解決することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ソース電極層およびドレイン電極層がパターン形成された後、ゲート電極層、ゲート絶縁層およびチャンネル層が同一パターンで形成されるTFTにおいて、ゲート電極層端部を陽極酸化して得られる陽極酸化層の外側面を、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置よりも内側に配置して、特に、陽極酸化層の側面の位置とゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置との距離を800μm以上とすることによって、TFTの動作時に、ゲート電極層、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面端部で、ゲート絶縁層の抵抗が低い部分を介して、ゲート電極層とチャンネル層との間に流れる漏れ電流を低減すると共に、ゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に緩和時間の長い電荷が生成しやすい領域が形成されることによるオフ電流上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるTFTを用いた表示装置の要部構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’線による断面図である。
【図3】図1のB−B’線による断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の一実施形態であるTFTの製造工程を示す断面図である。
【図5】比較例1のTFTについて、作製直後および動作試験後のゲート電圧−ソース・ドレイン間電流特性を示すグラフである。
【図6】実施形態のTFTおよび比較例〜比較例3のTFTについて、動作試験によるオフ電流の上昇とゲート電極側面端部の入り込みの長さとの関係を示すグラフである。
【図7】特表昭59−501562号公報に記載のTFTアレイの構成を示す平面図である。
【図8】図7のC−C’線による断面図である。
【図9】特公平8−28510号公報に記載のTFTの構成を示す断面図である。
【図10】比較例2のTFTの構成を示す断面図である。
【図11】比較例4のTFTの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1a、101a ソース電極
1b、101b ドレイン電極
2a、102a ソースコンタクト層
2b、102b ドレインコンタクト層
4、104 チャンネル層
5、105 ゲート絶縁層
6、106 陽極酸化層
7、107 ゲート電極
8 マスクパターン
9、109 TFT
10、110 絶縁性基板
11a、111a ソース信号線
11b、111b 絵素電極
17、117 ゲート信号線
20 金属膜または透明導電膜
30 n+a−Si膜
40 a−Si:H膜
50 SiN膜
70、70a Ti膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜トランジスタおよびその製造方法、並びにその薄膜トランジスタをスイッチング素子として用いた液晶表示装置等の表示装置に関し、特に大型画面を有する表示装置に適した安価で高い信頼性を有する薄膜トランジスタおよびその製造方法並びに表示装置に関する。
【0002】
【従来技術】
コンピュータのモニター装置、携帯型情報端末機器、携帯型電話器等の表示装置に用いられる平面型ディスプレイとして、液晶表示装置が広く用いられ始めている。
【0003】
液晶表示装置は、所定の間隔を開けて対向配置された一対の基板の間に液晶層が挟持され、各基板上に設けられた一対の電極に挟まれた液晶層部分にて絵素部が構成されて、マトリックス状に絵素部が配置された構成となっている。そして、一対の電極に電圧を印加して各絵素部の液晶分子の配向状態をそれぞれ変化させることによって、文字、画像等が表示されるようになっている。
【0004】
液晶表示装置が普及製品として用いられるためには、高速応答と高コントラストとが必須の特性として要求されており、各絵素を個別に選択駆動する能力を高めるため、通常、各絵素毎にスイッチング素子を設けるアクティブマトリクス駆動方式が用いられている。また、スイッチング特性が良好であり、生産が容易であることから、スイッチング素子としては、通常、薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)が用いられている。
【0005】
一般的なアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置においては、液晶層を挟んで対向配置される一対の基板のうちの一方の基板(アクティブマトリクス基板)上に複数のゲート信号線と複数のソース信号線とが互いに交差して設けられ、各ゲート信号線と各ソース信号線との交差部近傍にTFTがそれぞれ設けられている。TFTは、例えば、ゲート電極層の上にゲート絶縁層を介してTFTのチャンネルとなる半導体層(チャンネル層)が設けられ、その上に互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層が設けられた構成となっている。
【0006】
ゲート電極層は、各絵素部を選択的に駆動する走査信号を供給するためのゲート信号線の一部を構成しており、ソース電極層は、絵素部に映像信号(表示データ)を供給するためのソース信号線の一部を構成している。また、ドレイン電極層は、各絵素部に設けられた絵素電極と接続されている。また、他方の基板(対向基板)には、全ての絵素部に共通の対向電極が、アクティブマトリクス基板上の各絵素電極と対向するように設けられている。
【0007】
そして、ゲート電極層に走査信号(ゲートオン電圧)を供給することによって、チャンネル層が導通状態(オン状態)となり、ソース電極層とドレイン電極層との間に電流が流れ、ソース電極層からドレイン電極層を介して絵素部(液晶層)に電荷(表示データ)が充電されるようになっている。また、ゲート電極層にゲートオフ電圧が供給されているときには、チャンネル層が非導通状態(オフ状態)となり、ソース電極層とドレイン電極層との間が電気的に遮断され、絵素部(液晶層)に充電された電荷(表示データ)が保持されるようになっている。
【0008】
近年では、大型画面を有するテレビジョンモニター装置に対する要望が高まっており、表示装置の大画面化に向けた技術開発が活発に行われている。このような表示装置の大画面化に対応するためには、回路パターンの形成精度を向上すること、製造コストの低廉価化を図ること、信頼性を向上させることを同時に満足することが可能な素子構造および製造方法を技術開発することが必要とされている。
【0009】
表示装置の大画面化に伴う回路パターンの形成精度を向上させるためには、TFTが完成するまでに複数回行われるフォトリソグラフィー工程に起因して生じるパターンの重ね合わせずれが問題となっている。パターンの重ね合わせずれとは、TFTを構成する各層(電極層、絶縁層、半導体層等)をパターン形成するためにフォトリソグラフィー工程を複数回繰り返して行うことによって、各層のパターンの位置が設計上の所定位置からずれ、その位置ずれの程度がばらつくことである。
【0010】
このようなパターンの重ね合せずれが生じる原因としては、まず、フォトリソグラフィー工程にて用いられる露光装置の機械精度が十分ではなく、被処理基板の大型化に伴って位置合わせ精度が低下することがある。また、位置合わせ精度を維持もしくは向上しようとする場合に、露光装置の価格が増大するおそれがある。さらに、基板が大きくなると、温度、湿度などの環境条件による基板の伸縮量が、TFTの素子サイズに対して無視できない値となり、これによってもパターンの重ね合わせずれが生じるおそれがある。
【0011】
このようなパターンの重ね合せずれを抑制するための方法としては、例えば、フォトリソグラフィー工程で露光される部分を、パターンの位置ずれが問題とならない程度にまで分割し、ずれを補正しながら、各層のパターンを順次露光していく方法が挙げられる。しかしながら、この方法では、基板を分割して露光するため、基板一枚毎に必要とされる露光時間が長くなり、生産効率が低下して、基板一枚当たりの処理コストが高くなるという問題がある。
【0012】
これに対して、TFTのパターン構成を工夫して、フォトリソグラフィー工程で生じるパターンの重ね合せずれに対して冗長性を与えることによって、パターンの重ね合わせずれを抑制する方法が開発されている。この場合、重ね合わせを行うパターン数を減らすことによって、パターンの重ね合わせ回数を少なくし、全体としてパターンの重ね合せずれを少なくすることもできる。
【0013】
例えば、公表特許公報(特表昭59−501562号公報)には、TFTのパターン構成を工夫することによってパターンの重ね合せずれに対する冗長性を与えると共に、重ね合せを行うパターン数を減らすことができるTFTの構成が開示されている。
【0014】
図7(a)は、特表昭59−501562号公報に開示されているTFTアレイの構成を示す平面図であり、図7(b)は、図7(a)の○で囲んだ部分を拡大した部分拡大図である。
【0015】
このTFT109は、液晶表示装置において、液晶層を挟んで対向配置される一対の基板のうち、アクティブマトリクス基板にスイッチング素子として設けられている。アクティブマトリクス基板は、絶縁性基板上に、ソース信号線111aとゲート信号線117とが直交状態で設けられており、各ソース信号線111a111aおよびゲート信号線117で囲まれた領域に絵素電極111bが配置されている。各TFT109は、各ソース信号線111aおよび各ゲート信号線111aの交差部近傍にそれぞれ設けられており、ソース信号線111aの一部であるソース電極101aと、絵素電極111bをゲート信号線側に突出させた突出部であるドレイン電極101bとが互いに離隔して設けられている。ソース電極101aの上にはソースコンタクト層(図示せず)が設けられ、ドレイン電極101bの上にはドレインコンタクト層(図示せず)が設けられている。また、ソース電極101aおよびドレイン電極101bの上にわたってチャンネル層(図示せず)が設けられており、チャンネル層上にはゲート絶縁層(図示せず)を介してゲート信号線117の一部であるゲート電極107が設けられている。
【0016】
このTFT109は、例えば、以下のようにして作製される。まず、絶縁性基板上に透明導電膜とコンタクト層を構成する半導体膜とを成膜し、その上にフォトリソグラフィー法により所定の形状のマスクパターンを形成してエッチングを行うことにより、ソース信号線111aとその一部であるソース電極101aを形成すると共に、絵素電極111bとその突出部であるドレイン電極101bを形成する。次に、半導体膜、絶縁膜および導電膜を連続して成膜し、その上にフォトリソグラフィー法により所定の形状のマスクパターンを形成してエッチングを行うことにより、コンタクト層、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート信号線117とその一部であるゲート電極107を形成する。これによって、2回のフォトリソグラフィー工程によるパターン形成でTFTを作製することが可能となり、パターンの重ね合わせを行う回数が少なくなる。
【0017】
また、図7(b)において、X軸およびY軸方向を図示のように定めた場合、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107がソース電極101aおよびドレイン電極101bに対してX軸方向にずれても、TFTとしての特性に変化は生じない。よって、X軸方向に対してチャンネル層、ゲート絶縁膜、ゲート電極107のパターン形状の位置には制約がないことが分かる。実際には、TFT109周辺部における配線引き出し等のようなデザイン上の制約があるため、X軸方向に対して、そのデザイン上の制約を満たす必要があるが、TFTの素子サイズと比べると、緩やかな制約条件となる。
【0018】
同様に、Y軸方向に対しては、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107がソース電極101aおよびドレイン電極101bに対してY軸方向にずれても、±yで示される範囲であれば、TFTとしての特性に変化は生じない。例えば、TFT109をアクティブマトリクス型表示装置のスイッチング素子として用いる場合には、絵素としての有効面積の観点から問題が無い程度であれば、yの値をある程度、大きく設定することが可能である。従って、このTFT109の構成によれば、ソース電極101aおよびドレイン電極101bを形成するための1回目のマスクパターンと、チャンネル層、ゲート絶縁膜およびゲート電極107を形成するための2回目のマスクパターンとの位置合わせに対して、冗長性を持たせることが可能となっている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特表昭59−501562号公報に開示されているTFTには、以下のような問題がある。
【0020】
まず、第1の問題としては、TFTのゲート端部における、ゲート電極とソース電極、およびゲート電極とドレイン電極との間のリーク電流が挙げられる。
【0021】
図8は、図7のC−C’線による断面図である。ここでは、絶縁性基板110上にソース電極101aが設けられ、その上にソースコンタクト層102a、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が積層されている。
【0022】
このTFTでは、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が同一のマスクパターンを用いて形成されるため、その側面がほぼ同一の面(断面)となって表れる。また、ゲート絶縁層105として一般的に用いられるSiN膜をエッチングする際に、ウエットエッチング法を用いた場合には、エッチング液中の成分、エッチング処理後の付着物等がSiN膜の側面に付着するおそれがある。また、ドライエッチング法を用いた場合には、反応生成物、エッチング処理後の付着物等がSiN膜の側面に付着するおそれがある。これらの付着物、および付着物に接するSiN膜部分(SiN膜の側面端部)は、付着物に接していないSiN膜部分に比べて、電気的な抵抗が著しく低くなることがある。このような場合には、TFTの動作時に、ゲート絶縁層105の側面端部の抵抗が低い部分を通じて、ゲート電極107とチャンネル層104との間で、漏れ電流(リーク電流)が発生する。
【0023】
特公平8−28510号公報では、上述したような具体的な原因については触れていないが、ゲート電極107の側面が露出していることによる電流リークを防ぐために、ゲート電極の側面端部を陽極酸化したTFTが開示されている。
【0024】
図9は、特公平8−28510号公報に開示されているTFTの構成を示す断面図である。この図9は、図8と同様に、図7のC−C’線による断面部分を示している。ここでは、絶縁性基板10上にソース電極101aが設けられ、その上にソースコンタクト層102a、チャンネル層104、ゲート絶縁層105およびゲート電極107が積層されている。ゲート電極107は、Al、Ti、Ta、Nb、Cr等のように、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、ゲート電極をエッチングする際に用いたマスクパターンを用いてゲート電極側面端部を陽極酸化することによって、ゲート電極107の側面に陽極酸化層106が形成される。このように、電流リークが発生しやすいゲート電極107の側面に陽極酸化層106を形成することによって、リーク電流を防ぐことができるため、上記第1の問題に対応することができる。
【0025】
次に、本願発明者らが詳細な検討を行ったところ、第2の問題として、TFTのゲート端部近傍において、ゲート絶縁層105に緩和時間の長い電荷が生成しやすい領域が形成されるおそれがあることが判明した。
【0026】
この原因としては、ゲート絶縁層105のパターン形成時のエッチングによるゲート絶縁層端部へのダメージ、チャンネル層104のパターン形成時のエッチングによるチャンネル層端部へのダメージ、またはチャンネル層端部への付着物等が考えられる。ゲート絶縁層端部へのダメージについては、ゲート絶縁層端部近傍に原子結合の欠陥等が生じ、この欠陥部分に電荷が注入されることにより緩和時間の長い電荷が蓄積されると推察される。また、チャンネル層端部へのダメージまたはチャンネル層端部への付着物については、チャンネル端部の電気抵抗の値が本来のチャンネル部分の電気抵抗と比較して著しく低下し、異常な電流がチャンネル端部に集中して流れるため、そのチャンネル端部に隣接するゲート絶縁層端部に電気的な欠陥を生じさせることにより緩和時間の長い電荷が蓄積されると推察される。このような場合には、本来チャンネル部分を流れる電流がオフ電流となるゲート電圧(ゲートオフ電圧)印加時においても、オフ電流が上昇し、TFTがオフ状態とならないことになる。
【0027】
本願発明者らの検討によれば、この現象が現れないようにするためには、ゲート電極107において電極として機能する部分の端部をゲート絶縁層105およびチャンネル層104の端部の位置から1000nm内側に配置することが必要であることが判明した。
【0028】
特公平8−28510号公報に開示されているTFTの構造では、ゲート電極の側面端部を陽極酸化して陽極酸化層106を形成することにより、ゲート電極107の側面の位置がゲート絶縁膜105およびチャンネル層104の側面の位置から内側に配置される。よって、陽極酸化層106の水平方向の厚さを厚くすることにより、上記第2の問題に対しても対応できるものと考えられる。
【0029】
しかしながら、陽極酸化層106の水平方向の厚さを厚くするためには、ゲート電極層を陽極酸化する際に陽極酸化電圧を高くする必要があり、ゲート電極層に印加される陽極酸化電圧を高くした場合には、ゲート絶縁膜105に高電界が加わりゲート絶縁膜105の漏れ電流が増えるため、陽極酸化部分に加わる電圧の低下が生じ陽極酸化部分の水平方向の厚さを200nm以上にすることは容易ではない。
【0030】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、パターンの重ね合せずれを防ぐと共に、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層との間の漏れ電流と、TFTの長時間動作によりゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるオフ特性低下とを防ぐことができる薄膜トランジスタおよびその製造方法並びに表示装置を提供することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄膜トランジスタは、絶縁性基板上に、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層が設けられ、該ソース電極層および該ドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられた薄膜トランジスタにおいて、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0032】
好ましくは、前記陽極酸化層の外側面の位置と、前記チャンネル層および前記ゲート絶縁層の側面の位置との距離が、800nm以上である。
【0033】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上に第1導電膜を成膜し、該導電膜上に第1マスクパターンを形成して、該第1マスクパターンをマスクとして用いて該第1導電膜をエッチングすることによって、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、該ソース電極層および該ドレイン電極層が設けられた基板上に半導体膜、絶縁膜および陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な第2導電膜を成膜し、該第2導電膜上に第2マスクパターンを形成して、該第2マスクパターンをマスクとして、該第2導電膜の側面端部を陽極酸化して形成される陽極酸化層の外側面がチャンネル層およびゲート絶縁層の側面よりも内側に配置されるように、該第2導電膜をエッチングする工程と、該第2マスクパターンをマスクとして用いて該半導体膜および該絶縁膜をエッチングすることによってチャンネル層およびゲート絶縁層を形成する工程と、該第2マスクパターンをマスクとして用いて第2導電膜の側面端部を陽極酸化する工程とを含み、そのことにより上記目的が達成される。
【0034】
本発明の表示装置は、表示媒体を挟んで対向配置される一対の基板のうちの一方の基板に、複数のゲート信号線および複数のソース信号線が互いに交差して設けられ、各ゲート信号線および各ソース信号線で囲まれた領域に絵素電極が配置されており、各ゲート信号線および各ソース信号線の交差部近傍に薄膜トランジスタが設けられ、各薄膜トランジスタのゲート電極は交差部近傍のゲート信号線の一部を構成し、ソース電極は交差部近傍のソース信号線の一部を構成し、ドレイン電極は該絵素電極をゲート信号線側に突出させた突出部からなり、ソース電極層およびドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられ、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されており、そのことにより上記目的が達成される。
【0035】
以下に、本発明の作用について説明する。
【0036】
本発明にあっては、第1マスクパターンによってソース電極層およびドレイン電極層を形成し、第2マスクパターンによってゲート絶縁層、チャンネル層およびゲート電極を形成することによって、パターンの重ね合せずれを防ぐことができる。
【0037】
また、ゲート電極層は、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、第2マスクパターンを用いて電流リークが発生しやすいゲート電極側面端部に陽極酸化層を設けることによって、TFTのゲート端部におけるリーク電流を防ぐことができる。
【0038】
チャンネル層およびゲート絶縁層の側面は、陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に配置することにより、ゲート電極の側面をゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置から1000nm内側に配置することが容易となる。例えば、陽極酸化層の外側面の位置と、チャンネル層およびゲート絶縁層の側面の位置との距離を800nm以上とすることにより、陽極酸化層の水平方向の厚さが200nm以下であっても、ゲート電極の側面をゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置から1000nm内側に配置することが可能となる。これによって、ゲート絶縁層の側面端部に生成される緩和時間の長い電荷によるTFTのオフ特性の低下を防ぐことができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態である表示装置の要部構成を示す平面図である。また、図2(a)は、図1のA−A’線による断面図であり、図2(b)は、図2(a)の○で囲んだ部分を拡大した部分拡大図である。また、図3は、図1のB−B’線による断面図である。
【0041】
この表示装置は、表示媒体としての液晶層(図示せず)を間に挟んで対向配置される一対の基板のうち、一方の基板(アクティブマトリクス基板)に、複数のゲート信号線17と複数のソース信号線11aとが互いに交差して設けられている。各ゲート信号線17と各ソース信号線11aとで囲まれた矩形状の領域には、絵素電極11bが設けられ、各ゲート信号線17と各ソース信号線11aとの交差部近傍には、スイッチング素子として、本発明の一実施形態であるTFT9が設けられている。
【0042】
TFT9は、絶縁性基板10上に、Alなどの金属膜またはITOなどの透明導電膜からなり、ソース信号線の一部を構成するソース電極101aと、絵素電極11bをゲート信号線17側に突出させた突出部であるドレイン電極1bとが互いに離隔して設けられている。ソース電極1aの上には、n+a−Si(アモルファスシリコン)膜からなるソースコンタクト層2aが設けられ、ドレイン電極1bの上にはn+a−Si膜からなるドレインコンタクト層2bが設けられている。また、ソース電極1aおよびドレイン電極1bの上にわたってa−Si:H膜からなるチャンネル層4が設けられており、チャンネル層4上にはSiN膜等からなるゲート絶縁層5を介して、Ti膜などの陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなり、ゲート信号線17の一部であるゲート電極7が設けられている。また、ゲート電極7の側面には、TiO膜等からなる陽極酸化層6が設けられている。さらに、ゲート信号線7、ソース信号線11a、絵素電極11bおよびTFT9を覆うように絶縁膜(図示せず)が設けられ、その上に配向膜(図示せず)が設けられている。
【0043】
また、図示しない他方の基板(対向基板)には、全ての絵素部に共通の対向電極が、アクティブマトリクス基板上の各絵素電極11bと対向するように設けられており、その上に配向膜が設けられている。そして、ゲート電極7に走査信号(ゲートオン電圧)を供給することによって、チャンネル層4が導通状態(オン状態)となり、ソース電極1aとドレイン電極1bとの間に電流が流れ、ソース電極1aからドレイン電極1bを介して絵素部(液晶層)に電荷(表示データ)が充電されるようになっている。また、ゲート電極7にゲートオフ電圧が供給されているときには、チャンネル層4が非導通状態(オフ状態)となり、ソース電極1aとドレイン電極1bとの間が電気的に遮断され、絵素部(液晶層)に充電された電荷(表示データ)が保持されるようになっている。
【0044】
図2(a)およびその部分拡大図である図2(b)に示すように、本実施形態において、ゲート電極7の側面に設けられた陽極酸化層6の外側面の位置は、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面よりも内側に配置されている。
【0045】
図2(b)において、Wは、ゲート信号線17およびゲート電極7の幅を示し、このWがTFT9のチャンネル幅となっている。また、dは、ゲート電極7の側面に設けられた陽極酸化層6の水平方向の厚さを示す。また、lは、チャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面と陽極酸化層6の外側面との距離を示し、電極として有効に機能するゲート電極7は、その側面がチャンネル層4およびゲート絶縁層5の側面からd+lだけ入り込んだ形状となっている。
【0046】
このTFT9において、陽極酸化層6の水平方向の厚さdを、140nmを超えて、例えば200nm以上に大きくすることは、以下の製造工程において説明するように、容易ではない。また、後述する図6に示すように、d+lが約1μm以上のときに、TFTのオフ電流が上昇する現象を動作上問題がない程度に抑制することが可能となるため、lは800nm以上(陽極酸化による体積増加量は陽極酸化の方法により異なるため、体積増加分は含めていない)とすることが好ましい。なお、図2(b)では、作図上の都合から、lよりもdを大きく示している。
【0047】
以下に、このように構成された本実施形態のTFTを製造する方法について説明する。
【0048】
図4(a)〜図4(f)は、本実施形態のTFTの製造工程を示す断面図である。
【0049】
まず、図4(a)に示すように、絶縁性基板10上に、Alなどの金属膜もしくはITOなどの透明導電膜と、n+a−Si膜とを連続して成膜し、この積層膜をフォトリソグラフィー法により所定の形状にマスクパターンを形成してエッチングを行い、ソース電極1a(ソース信号線11a、絵素電極11b、ドレイン電極1b)が形成される。このときソース電極1aおよびドレイン電極1b上に積層された形状でn+a−Si膜30がパターン形成される。
【0050】
次に、図4(b)に示すように、a−Si:H膜40、SiN膜50、Ti膜70を連続して成膜し、その上に、フォトリソグラフィー法により所定の形状にフォトレジストからなるマスクパターン8を形成する。本実施形態では、Ti膜70の厚みを150nmとした。また、マスクパターン8の寸法は、5μm〜50μmが好ましく、本実施形態では20μmとした。
【0051】
続いて、過酸化水素水2000ml、アンモニア水500ml、エチレンジアミン四酢酸60gおよび純水500mlの割合で各材料を混合してなるエッチング液により、Ti膜70をエッチングする。本願発明者らの詳細な検討によれば、膜厚方向(基板面に対して垂直方向)へのTi膜のエッチング速度は300nm/minであり、フォトレジスト下に膜厚150nmのTi膜を設けた場合の端部水平方向へのTi膜エッチング速度は400nm/minであることが判明していることから、このときのTi膜70のエッチング処理時間は2.75min、4min、および5.25minの3種類の試料を作製した。これによって、図4(c)に示すように、フォトレジストからなるマスクパターン8の端部からそれぞれ、1μm(1000nm)、1.5μmおよび2μm内側まで入りこんだ形状でTi膜70aがパターン形成される。
【0052】
その後、SF6をエッチングガスとして用いたリアクティブイオンエッチング法により、SiN膜50およびa−Si:H膜40のエッチングを続けて行う。このとき、エッチングガスのガス圧力、エッチングガスをプラズマ反応させるときの発振出力、および基板に印加されるバイアス電圧の周波数と電圧値の設定等を制御することにより、フォトレジストからなるマスクパターン8の端部に対して垂直にパターン形成することが可能となる。これによって、マスクパターン8の形状通りに、SiN膜およびa−Si:H膜を続けてエッチングして、図4(d)に示すように、ゲート絶縁層5、チャンネル層4、ソースコンタクト層2a(ドレインコンタクト層2b)を形成する。
【0053】
続いて、上記マスクパターン8を除去することなく、1%の酒石酸アンモニウム水溶液中でTi膜70aの陽極酸化を行う。このとき、マスクパターン8が設けられているため、酒石酸アンモニウム水溶液にTi膜70aが接している部分は、Ti膜70aの側面端部だけであるので、この側面端部だけが陽極酸化されて、図4(e)に示すように陽極酸化層6が形成される。また、このとき、Ti膜70aに印加される陽極酸化電圧を上げることにより、陽極酸化される部分の水平方向の厚さは増加することになり、本願発明者らの詳細な検討から、陽極酸化電圧1Vに対して、陽極酸化される部分の水平方向の厚さは約2nm/Vであることが判明している。また、本願発明者らの詳細な検討から、陽極酸化電圧が約70Vに到達する付近において、陽極酸化を進めるための陽極酸化電流の値と、Ti膜70の下にあるSiN膜50を介して酒石酸アンモニウム水溶液とTi膜70との間で流れる漏れ電流の値とが同等となることから、この電圧以上に陽極酸化電圧を印加しても、陽極酸化される部分の水平方向の厚さをさらに厚くすることはできないことが判明している。従って、陽極酸化層6の水平方向の厚さdは、約140nm以上に厚くすることは容易ではない。そこで、本実施形態では、陽極酸化電圧を65Vとし、陽極酸化層6の水平方向の厚さdを130nmとした。本願発明者らが本実施形態の作製試料を詳細に分析したところ、水平方向の厚さ100nmのTi膜が陽極酸化されて、TiO膜として体積が増加し、結果として陽極酸化層6の水平方向の厚さdが130nmとなっていることが分かった。従って、ゲート電極7となる金属Ti膜の側面は、陽極酸化される前のTi膜70aの側面の位置から、100nm内側に後退していることが分かった。
【0054】
最後に、図4(f)に示すように、フォトレジストからなるマスクパターン8を除去することにより、本実施形態のTFT9が完成する。
【0055】
さらに、本実施形態のTFT9と比較するために、以下のようなTFTを比較例として作製した。
【0056】
比較例1として、ゲート電極の側面と、ゲート絶縁膜およびチャンネル層の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにエッチングを行って、ゲート電極の側面端部の陽極酸化は行わない試料を作製した。これにより、図8に示す特表昭59−501562号公報に記載されているTFTと同様の構成のTFTが作製される。この比較例1では、ゲート電極107の側面と、ゲート絶縁膜105およびチャンネル層104の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにするため、Ti膜のエッチング時間を30secとした。
【0057】
また、比較例2として、ゲート電極の側面と、ゲート絶縁膜およびチャンネル層の側面とがほぼ同一の位置に配置されるようにエッチングを行い、ゲート電極の側面端部を陽極酸化した試料を作製した。この比較例2では、比較例1と同様に、Ti膜のエッチング時間を30secとした。また、Ti膜の陽極酸化は、実施形態と同様に行い、陽極酸化電圧を65V、陽極酸化部分の水平方向の厚さを130nmとした。これにより、特公平8−28510号公報に記載のTFTと同様の構成のTFTが作製されるが、この比較例2では、実施形態でも説明したように、陽極酸化される前のTi膜の側面から厚さ100nmのTi膜部分が陽極酸化され、陽極酸化部分の水平方向の厚さが130nmとなる。従って、この方法で作製される比較例2のTFTの断面形状は、特公平8−28510号公報に記載されている図9とは異なり、図10に示すような形状となり、陽極酸化層106として体積が増加する分、陽極酸化層106の外側面の位置は、ゲート絶縁層105およびチャンネル層104の側面から外側に突出することになる。
【0058】
また、比較例3として、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面に対するゲート電極側面の内側への入り込み量が実施形態のTFT9とは異なる試料(入り込み量d+l=0.3μm、0.5μm、0.8μm)を作製した。この比較例3では、Ti膜のエッチング時間を異ならせること以外は、実施形態と同様の作製方法を用いた。これにより、実施形態のTFT9に対して、図2(b)に示すd+lの長さが異なるTFTが作製される。
【0059】
また、比較例4として、ゲート電極側面端部の陽極酸化は行わずに、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面に対するゲート電極側面の内側への入り込み量が実施形態のTFT9と同じ試料(入り込み量=1.0μm、1.5μm、2.0μm)を作製した。これにより、図11に示すように、ゲート電極107の側面がチャンネル層104およびゲート絶縁層105の側面よりも内側に配置されたTFTが作製される。
【0060】
なお、上記比較例1〜比較例4のTFTにおいては、ゲート電極の側面の位置が異なることから、同じマスクパターンを用いてTFTを作製した場合、ゲート信号線としても機能するゲート電極の幅、およびTFTのチャンネルとして機能する部分の幅が異なることから、それぞれのTFT特性に違いが生じることになる。このため、TFTとして機能する部分のサイズ(寸法)が本実施形態のTFT9と同じとなるようにマスクパターンを調整して、比較例1〜比較例4のTFTを作製した。TFTの素子サイズとしては、チャンネル幅を40μm、チャンネル長を10μmとした。
【0061】
以下に、このようにして作製された実施形態のTFT9と、比較例1〜比較例4のTFTとについて、TFT特性を比較した結果を説明する。
【0062】
図5は、比較例1のTFTについて、ゲート電圧Vg−ソース・ドレイン間電流Ids特性を示すグラフである。ここでは、TFT製造直後のVg−Ids特性と、ゲート電圧15V、ソース・ドレイン間の印加電圧10Vとして300min連続動作試験した後のVg−Ids特性とを示している。
【0063】
この図5から、例えば、ゲート電圧−10Vにおいてソース・ドレイン間に流れる電流は、3桁以上も増加していることが分かる。この原因を調べるため、TFTのチャンネル幅およびチャンネル長に対する特性依存性、ゲート絶縁膜の絶縁特性、キャパシタンス特性などについて本願発明者らが詳細に検討を行ったところ、TFTを長時間動作させることによって、TFTのゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に、緩和時間の長い電荷が蓄積されていることが分かった。これによって、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層が同一パターンで形成されるTFTでは、TFTのゲート端部においてゲート電極とチャンネル層との間に流れる漏れ電流、もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流に加えて、TFT動作時にゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるソース・ドレイン間でのオフ電流特性低下という問題が生じるおそれがあることが分かる。
【0064】
また、図6は、本実施形態のTFT9、および比較例1〜比較例3のTFTについて、動作試験によるオフ電流の上昇を示すグラフである。ここでは、縦軸にゲート電圧15V、ソース・ドレイン間の印加電圧10Vとして300min連続動作試験した後にゲート電圧−10Vにおいてソース・ドレイン間に流れる電流値をとり、横軸にゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置からゲート電極として機能する部分の側面の位置が内側に入り込んでいる距離(水平方向の長さ)をとって各TFTのオフ電流特性をプロットしている。
【0065】
この図6から、比較例2のTFTのように、ゲート電極の側面端部を陽極酸化しただけでは、TFTを長時間動作させた後のオフ電流の増加を充分防ぐことができないことが分かる。これに対して、本実施形態のTFT9では、TFT作製直後の電流値とほとんど変わらないことが分かる。
【0066】
さらに、実施形態1のTFT9と、比較例1、比較例2および比較例4のTFTとについて、ゲート・ソース間の印加電圧20Vとした場合のゲート・ソース間の漏れ電流の値を下記表1に示す。ここでは、それぞれ10個のTFT素子について測定を行い、平均値を求めている。
【0067】
【表1】
本実施形態1のTFT9および比較例2のTFTでは、ゲート・ソース間の電流値は、測定値の測定限界のために計測することができず、0.1pA以下であると推察される。一方、比較例1のTFTでは、ゲート・ソース間の電流値が平均で4720pAと高い値を示している。これは、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層を同一パターンで形成したTFTにおいて、TFTのゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流を示している。比較例4のTFTにおいても、比較例1と比べて値が低下しているものの、平均で24.3pAと高い値を示している。これについても同様に、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流を示している。
【0068】
これらのことから、TFTのゲート端部における漏れ電流の原因として、ゲート絶縁膜側面およびゲート絶縁膜表面の露出部分に対して、エッチング時に付着する付着物が影響を与えていることが考えられる。このため、ゲート電極側面端部を陽極酸化することの効果としては、特公平8−28510号公報に記載されているような、ゲート電極側面端部とチャンネル側面端部との導電可能部分の距離が増加することによる効果だけではなく、ゲート絶縁膜側面端部に存在すると考えられる低抵抗部分とゲート電極側面端部とを電気的に遮断することによる効果も考えられる。従って、ゲート電極側面が、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面からある程度内側に入り込んだ構造であっても、TFTのゲート端部における漏れ電流を低減するためには、ゲート電極側面端部を陽極酸化する必要があることが分かる。
【0069】
以上のことから、本実施形態のTFTによれば、ゲート電極、ゲート絶縁層およびチャンネル層を同一パターンで形成したTFTにおいて、ゲート端部におけるゲート電極とチャンネル層もしくはゲート電極とソース電極およびドレイン電極との間に流れる漏れ電流と、TFT動作時にゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に生成される緩和時間の長い電荷によるソース電極・ドレイン電極間のオフ電流特性低下の2つの問題を同時に解決することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ソース電極層およびドレイン電極層がパターン形成された後、ゲート電極層、ゲート絶縁層およびチャンネル層が同一パターンで形成されるTFTにおいて、ゲート電極層端部を陽極酸化して得られる陽極酸化層の外側面を、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置よりも内側に配置して、特に、陽極酸化層の側面の位置とゲート絶縁層およびチャンネル層の側面の位置との距離を800μm以上とすることによって、TFTの動作時に、ゲート電極層、ゲート絶縁層およびチャンネル層の側面端部で、ゲート絶縁層の抵抗が低い部分を介して、ゲート電極層とチャンネル層との間に流れる漏れ電流を低減すると共に、ゲート端部近傍のゲート絶縁膜中に緩和時間の長い電荷が生成しやすい領域が形成されることによるオフ電流上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるTFTを用いた表示装置の要部構成を示す平面図である。
【図2】図1のA−A’線による断面図である。
【図3】図1のB−B’線による断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の一実施形態であるTFTの製造工程を示す断面図である。
【図5】比較例1のTFTについて、作製直後および動作試験後のゲート電圧−ソース・ドレイン間電流特性を示すグラフである。
【図6】実施形態のTFTおよび比較例〜比較例3のTFTについて、動作試験によるオフ電流の上昇とゲート電極側面端部の入り込みの長さとの関係を示すグラフである。
【図7】特表昭59−501562号公報に記載のTFTアレイの構成を示す平面図である。
【図8】図7のC−C’線による断面図である。
【図9】特公平8−28510号公報に記載のTFTの構成を示す断面図である。
【図10】比較例2のTFTの構成を示す断面図である。
【図11】比較例4のTFTの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1a、101a ソース電極
1b、101b ドレイン電極
2a、102a ソースコンタクト層
2b、102b ドレインコンタクト層
4、104 チャンネル層
5、105 ゲート絶縁層
6、106 陽極酸化層
7、107 ゲート電極
8 マスクパターン
9、109 TFT
10、110 絶縁性基板
11a、111a ソース信号線
11b、111b 絵素電極
17、117 ゲート信号線
20 金属膜または透明導電膜
30 n+a−Si膜
40 a−Si:H膜
50 SiN膜
70、70a Ti膜
Claims (4)
- 絶縁性基板上に、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層が設けられ、該ソース電極層および該ドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられた薄膜トランジスタにおいて、
陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されている薄膜トランジスタ。 - 前記陽極酸化層の外側面の位置と、前記チャンネル層および前記ゲート絶縁層の側面の位置との距離が、800nm以上である請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
- 絶縁性基板上に第1導電膜を成膜し、該導電膜上に第1マスクパターンを形成して、該第1マスクパターンをマスクとして用いて該第1導電膜をエッチングすることによって、互いに離隔したソース電極層およびドレイン電極層を形成する工程と、
該ソース電極層および該ドレイン電極層が設けられた基板上に半導体膜、絶縁膜および陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な第2導電膜を成膜し、該第2導電膜上に第2マスクパターンを形成して、該第2マスクパターンをマスクとして、該第2導電膜の側面端部を陽極酸化して形成される陽極酸化層の外側面がチャンネル層およびゲート絶縁層の側面よりも内側に配置されるように、該第2導電膜をエッチングする工程と、
該第2マスクパターンをマスクとして用いて該半導体膜および該絶縁膜をエッチングすることによってチャンネル層およびゲート絶縁層を形成する工程と、
該第2マスクパターンをマスクとして用いて第2導電膜の側面端部を陽極酸化する工程とを含む薄膜トランジスタの製造方法。 - 表示媒体を挟んで対向配置される一対の基板のうちの一方の基板に、複数のゲート信号線および複数のソース信号線が互いに交差して設けられ、各ゲート信号線および各ソース信号線で囲まれた領域に絵素電極が配置されており、各ゲート信号線および各ソース信号線の交差部近傍に薄膜トランジスタが設けられ、各薄膜トランジスタのゲート電極は交差部近傍のゲート信号線の一部を構成し、ソース電極は交差部近傍のソース信号線の一部を構成し、ドレイン電極は該絵素電極をゲート信号線側に突出させた突出部からなり、ソース電極層およびドレイン電極層の上にわたってチャンネル層となる半導体層が設けられ、該半導体層上にゲート絶縁層を介してゲート電極層が設けられ、陽極酸化により電気的に絶縁物とすることが可能な導電性材料からなる該ゲート電極層の側面に陽極酸化層が設けられており、該陽極酸化層の外側面の位置よりも外側に、該チャンネル層および該ゲート絶縁層の側面が配置されている表示装置。
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2002
- 2002-06-17 JP JP2002176480A patent/JP2004022845A/ja not_active Withdrawn
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