JP2004020093A - 熱サイフォン型熱移動体 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱輸送能力に伴う冷却効果を、ボトムヒートモードやサイドヒートモードにおいては勿論のこと、トップヒートモードにおいても十分に発揮する熱サイフォン型熱移動体を提供する。
【解決手段】上下一対のヘッダーブロック20A,20Bを、上下方向に延びる複数の冷媒管10で連結し、吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面に、金属製のブロック40を密着接合する。ブロック40内には複数の冷媒管10が貫通し、これら冷媒管10をブロック40に密着接合する。発熱源である半導体素子Sの下面に吸熱側ヘッダーブロック20Aの上面を密着させ、トップヒートモードで使用する。半導体素子Sが発する熱をブロック40によって下方に移動させ、冷媒の循環作用を向上させる。
【選択図】 図2
【解決手段】上下一対のヘッダーブロック20A,20Bを、上下方向に延びる複数の冷媒管10で連結し、吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面に、金属製のブロック40を密着接合する。ブロック40内には複数の冷媒管10が貫通し、これら冷媒管10をブロック40に密着接合する。発熱源である半導体素子Sの下面に吸熱側ヘッダーブロック20Aの上面を密着させ、トップヒートモードで使用する。半導体素子Sが発する熱をブロック40によって下方に移動させ、冷媒の循環作用を向上させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体素子や各種産業機器の操作盤等の筐体内を冷却させる冷却デバイスとして好適な熱サイフォン型熱移動体に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の冷却デバイスとしては、従来より、アルミニウムの押し出し形材からなるヒートシンクのような金属の熱伝導を利用する冷却器や、封入した冷媒の動きに伴う潜熱を利用するヒートパイプもしくは熱サイフォン等が知られている。
【0003】
例えば、特開平5−302774号公報には、熱サイフォンによる半導体素子用の冷却デバイスが開示されている。この冷却デバイスは、冷媒が収容されて下部に配置される冷媒タンクと、鉛直方向に沿って配置される気相管と、水平に配置される複数の冷却管と、冷媒戻り管および冷却管に接するフィンとから構成されている。そして、被冷却体である半導体素子を、冷媒タンク内に浸漬したり、冷媒タンクの底部外面に密着させたりして使用する。この冷却デバイスによれば、装置の下方に位置する半導体素子からの発熱は冷媒タンク内の冷媒に伝わり、その冷媒が加熱によって沸騰気化し、冷媒蒸気が気相管内を上昇する。冷媒蒸気は冷却管内で凝縮液化し、その凝縮潜熱がフィンを介して冷却空気に伝達され放熱され、液化した冷媒は冷媒戻り管から冷媒タンクへ戻ることになる。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子を冷却することができるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アルミニウムの押し出し形材からなるヒートシンクは極めて安価であり、半導体素子の冷却や産業機械等の各種分野で広く使用されている。しかし、熱移動をアルミニウムの熱伝導のみに依存しているため、単位容積あるいは単位質量当たりの熱輸送能力に劣り、数十mmという短距離熱移動にしか適さず、近時の高い冷却性能を要求される用途には使用し難いという問題点がある。
【0005】
一方、ヒートパイプあるいは熱サイフォンでは、金属容器の内部に作動液(以下、冷媒と称する)が充填・封入され、その冷媒が沸騰気化・凝縮液化のサイクルを繰り返すことによる潜熱放出の原理により、冷却すべき半導体素子が効率よく冷却される。これら冷却デバイスは、発熱源(被冷却体)の上に搭載する使用形態、すなわち冷却デバイス側からみると底部に発熱源が位置するいわゆるボトムヒートモードで多く使用される。ところで、これら冷却デバイスの使用形態としては、発熱源の下側に密着させる場合、すなわち冷却デバイス側からみると上部に発熱源が位置するいわゆるトップヒートモードもある。
【0006】
上記ボトムヒートモードでは、冷媒に発熱源の熱が直接的に伝わるとともに、沸騰気化する冷媒は速やかに内部を上昇するので、十分な冷却効果を得ることができる。ところが、上記トップヒートモードでは、下部に存在する冷媒に上部の発熱源の熱が伝わり難く、また、冷媒は重力によって下部に滞留しやすいので、冷媒の循環が起こり難いという大きな問題がある。この問題の解決策としては、ヒートパイプの場合は、内部の毛管現象を発現する微細構造、いわゆるウイックを設け、凝縮液化した冷媒が重力に逆らって上方に移動し、加熱源に戻る構造が挙げられる。しかしながら、これでは構造が複雑になるとともにコストアップを招き、しかも、得られる効果は限定的であった。また、熱サイフォンの場合は、ヒートパイプよりも大量の冷媒を使用できることから比較的大きな熱輸送能力を得ることができるという構造上のメリットはあるものの、トップヒートモードでの使用は極めて困難である。
【0007】
したがって本発明は、熱輸送能力に伴う冷却効果を、ボトムヒートモードやサイドヒートモードにおいては勿論のこと、トップヒートモードにおいても十分に発揮することができる熱サイフォン型熱移動体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱移動体は、冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、冷媒管は、X方向およびY方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、各熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、さらに、一方の熱伝導体には、他方の熱伝導体に向かって延びる熱伝導性を有するブロックが付加され、かつ、このブロック内に冷媒管が接触する状態で貫通されていることを特徴としている。本発明で言うX方向、Y方向、Z方向は、互い直交して三次元を表す方向であり、したがって本発明の熱移動体は、全体的に見ると冷媒通路が三次元方向のいずれにも形成され、かつ、互いに連通している。
【0009】
本発明の熱移動体は、コンピュータのCPU、パワートランジスタ、熱電素子(ペルチェ素子)等の冷却デバイスとして適用することができる。使用形態としては、まず、一般的なボトムヒートモードが挙げられる。その場合には、2つの熱伝導体のうちの一方を上側として冷媒管を鉛直に立て、下側の他方の熱伝導体を発熱源に密着させる縦置きで使用され、下側の熱伝導体が吸熱側、上側の熱伝導体が放熱側となる。これによれば、下側の熱伝導体が加熱されると、内部の冷媒が沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気が冷媒管のZ方向冷媒通路を上昇して内壁面に凝縮液化し、その凝縮潜熱が冷媒管や放熱側の熱伝導体を経て放熱される。凝縮液化した冷媒は自重により冷媒管のZ方向冷媒通路を伝って滴下し、再び加熱されて沸騰気化する。このような沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。なお、ボトムヒートモードの場合、発熱源に密着させる熱伝導体は、ブロックが付加された側のものか、あるいは付加されていないもののいずれでもよい。
【0010】
次の使用形態としては、サイドヒートモードが挙げられる。例えば、タワー型デスクトップコンピュータ等では、マザーボードが鉛直方向に沿った縦置きの状態で搭載され、発熱源であるCPU素子は側方に向いている。このように発熱源が側方に向いている場合に本発明の熱移動体を適用するには、2つの熱伝導体のうちの一方を発熱源に密着させるとともに冷媒管を水平に配する。この場合、発熱源に密着させる熱伝導体が吸熱側、他方が放熱側となる。このように使用されるサイドヒートモードでも、発熱源の熱は、発熱源→吸熱側の熱移動体→冷媒のルートで効率良く移動し、冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。なお、サイドヒートモードの場合も、発熱源に密着させる熱伝導体は、ブロックが付加された側のものか、あるいは付加されていないもののいずれでもよい。
【0011】
もう一つの使用形態としては、前述したトップヒートモードがある。例えば、電子冷却にてペルチェ素子の低温面を上にし、上面を作業面として食品、薬品等の冷却を行う場合、高温である下面を冷却する。このようなトップヒートモードの場合は、ブロックを付加した側の熱伝導体を上側としてこの熱伝導体を発熱源に密着させ、冷媒管を鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配する。この場合、上側の熱伝導体が吸熱側、下側の熱伝導体が放熱側となる。
【0012】
このトップヒートモードでは、発熱源の熱が、発熱源→吸熱側の熱伝導体→ブロック→冷媒のルートで効率良く移動し、上記ボトムヒートモードの場合と同様に冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって、冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。すなわち、下方に滞留する冷媒に対してブロックから発熱源の熱が伝わることにより、従来のトップヒートモードでは加熱が不十分であった冷媒を十分に加熱することができ、ボトムヒートモードと同様の冷却効果を得ることができるのである。
【0013】
本発明に係る上記ブロックは、内部に封入された冷媒の上面よりも下方に延び、その冷媒とオーバーラップしていることを好ましい形態とする。この形態によれば、ブロックから冷媒への熱伝導が直接的となり、熱輸送能力の向上が図られて冷却効果を増大させることができる。なお、このブロックは、熱伝導体と一体に成形されたものでもよく、ブロック単体が熱伝導体に接合されている形態であってもよい。
【0014】
本発明の熱移動体は、熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路と、冷媒管のZ方向冷媒通路とが連通しており、したがって、冷媒が三次元方向に循環可能である。このため、冷媒には局所的な停滞が起こりにくく、流速あるいは流量等を要素とする流動性の均一化が図られ、さらにこれによって冷媒温度のより一層の均一化が図られる。また、冷媒が三次元方向に循環可能であることにより、冷媒管が鉛直方向に沿って配されるボトムヒートモードおよびトップヒートモードのみならず、上記サイドヒートモードも可能である。つまり、設置スタイル(縦置き、横置き等)の自由度が高く、このため、様々な機器の冷却デバイスとして応用範囲が広い。
【0015】
次に、本発明の熱移動体は、冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、冷媒管は、X方向およびY方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、各熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、さらに、一方の熱伝導体におけるZ方向の寸法が、他方の熱伝導体のそれよりも大きいことを特徴としている。
【0016】
この熱移動体にあっても、上記の熱移動体と同様にボトムヒートモードおよびサイドヒートモードで使用されるが、やはり上記熱移動体と同様に、トップヒートモードでの使用が効果的である。すなわち、トップヒートモードでは、Z方向の寸法が大きい側の熱伝導体を上側に配して発熱源に密着させ、かつ、冷媒管を略鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配する。この熱移動体によれば、発熱源に密着させられる上側の熱伝導体が、他方の下側の熱伝導体よりもZ方向の寸法が大きいので、冷媒に対してより接近することになる。したがって、発熱源の熱が冷媒に伝わりやすく、冷媒を十分に加熱することができ、ボトムヒートモードと同様の冷却効果得ることができる。ここで、発熱源に密着される熱伝導体のZ方向の寸法は、滞留する冷媒に対して十分に熱を移動させるに足る寸法に設定されることが望ましい。
【0017】
以上の本発明に係る熱移動体にあっては、より一層の冷却効果の向上を図る観点から、冷媒管にフィンが接合されていることを好ましい形態としている。
【0018】
また、本発明の熱移動体の構成部材の材料としては、アルミニウム、銅あるいはステンレススチール等が使用される。アルミニウムは、押し出し加工等によって極めて安価に熱伝導体や冷媒管を製造することができ、しかも加工が容易であることから、コストの上昇が抑えられる。また、銅は、使用可能な冷媒の種類の選択肢が広いというメリットがある。また、ステンレススチールは、耐腐食性に優れており、汚れがつき難いといった特長を有することから、食品、薬品、バイオの分野に好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(1)第1実施形態:図1〜図6
図1は第1実施形態に係る熱サイフォン型熱移動体(以下、熱移動体と略称する)1の斜視図である。この熱移動体1は、等間隔をおいて互いに平行に配された複数の冷媒管10と、これら冷媒管10の両端に接合されて互いに平行をなす上下一対のヘッダーブロック(熱伝導体)20と、隣り合う冷媒管10に接合されたコルゲートフィン30と、ブロック40とから構成されている。これらは、いずれもアルミニウム、銅あるいはステンレススチールのうちの1種から製造されている。
【0020】
図1の符号Sは、冷却すべき物品(発熱源)である半導体素子である。この半導体素子Sは平板状で、水平に設置される。図1に示すように、この場合の熱移動体1は、上側に配された一方のヘッダーブロック20を半導体素子Sに密着させ、他方のヘッダーブロック20を下側に配して冷媒管10を鉛直に立てた状態、すなわち縦置きのトップヒートモードで使用される。以下必要に応じて、上方に配されるヘッダーブロック20を吸熱側ヘッダーブロック(吸熱側熱伝導体)20A、下方に配されるヘッダーブロック20を放熱側ヘッダーブロック(放熱側熱移動体)20Bと称する。
【0021】
図2(a)は熱移動体1の一部正面側面図、図2(b)は熱移動体1の一部断面側面図である。図1と図2(b)とでは冷媒管10の数が異なる(図1の方が少ない)が、これは図1では冷媒管10の幾つかを省略しているからであり、構造的な相違はない。なお、冷媒管10の数は仕様に応じて任意である。上下のヘッダーブロック20A,20Bに対する各冷媒管10の接合、および各冷媒管10に対する各コルゲートフィン30の接合は、ろう付けによりなされている。
【0022】
冷媒管10は、図3に示すように、断面が扁平楕円状で、内部には、長手方向に延びる複数(この場合6つ)の冷媒通路(Z方向冷媒通路)Zが、隔壁11によって幅方向に一列の状態で形成されている。冷媒管10は、材料がアルミニウムの場合は押し出し加工により成形され、銅あるいはステンレススチールの場合は細長い複数の角型パイプをろう付けして製造される。冷媒通路Zの寸法は、冷媒管10の厚さや幅等の寸法、冷媒通路Zを流れる冷媒の流動性等の諸条件を勘案して適宜に設定される。
【0023】
ヘッダーブロック20は、図4に示すように、断面が長方形状で、一定厚さの長尺なバー状を呈しており、内部には、長手方向に延び、両端面に開口する複数(この場合3つ)の断面円形状の冷媒通路(X方向冷媒通路)Xが等間隔をおいて形成されている。ヘッダーブロック20の片面には、幅方向(冷媒通路Xに直交する方向)に延びる複数の凹所21が等間隔をおいて形成されている。これら凹所21の数は冷媒管10の数に対応している。
【0024】
図5(a)に示すように、凹所21は各冷媒通路Xを横断しており、その深さはヘッダーブロック20の厚さの半分よりやや浅い。これら凹所21に冷媒管10の端部が嵌合され、冷媒管10はヘッダーブロック20にろう付けによって気密的に接合されている。冷媒管10はヘッダーブロック20に直交して接合され、その状態で、図5(a)に示すように、ヘッダーブロック20の1つの冷媒通路Xに対して2つの冷媒通路Zが連通している。ヘッダーブロック20は、材料がアルミニウムの場合は押し出し加工により成形され、銅あるいはステンレススチールの場合は切削加工等により成形される。
【0025】
また、図4に示すように、ヘッダーブロック20には、長手方向に間隔をおいて複数(この場合3つ)の冷媒通路(Y方向冷媒通路)Yが形成されている。これら冷媒通路Yは、ヘッダーブロック20の一方の側面からの孔空け加工によって形成されており、3つの冷媒通路Xを貫通することによってこれら冷媒通路Xに連通している。各冷媒通路Yは、近隣する凹所21と連通せぬよう凹所21の間に配されており、その開口は、ろう付けされたプラグ22で気密的に閉塞されている。また、各冷媒通路Xの両端面の開口のうち、中央の冷媒通路Xの一方の開口が冷媒充填口23とされる。この冷媒充填口23は、冷媒充填後に、最終的にろう付けされるネジ式キャップ24で封止され、他の開口は、冷媒通路Yと同様にろう付けされたプラグ22で気密的に閉塞されている。冷媒は、材料がアルミニウムの場合はフロン等であり、銅あるいはステンレススチールの場合は、フロン、水とされ、冷媒充填口23から適量が充填される。
【0026】
なお、ヘッダーブロック20の厚さ、幅、長さ、冷媒通路X,Yの径や数、凹所21の寸法等は、所要冷却能力、当該熱移動体1の設置スペース、冷媒管10の寸法および冷媒の種類等を勘案して適宜に設定される。
【0027】
各ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yは互いに連通し、さらに、各冷媒管10の冷媒通路Zはヘッダーブロック20の冷媒通路Xに連通している。すなわち、冷媒通路X,Y,Zは互いに連通している。これら冷媒通路X,Y,Zは互いに直交する方向に延びており、図1に示すトップヒートモードの使用状態で、冷媒通路Xは三次元方向におけるX方向、冷媒通路YはY方向、冷媒通路ZはZ方向に延びることになる。
【0028】
上記ブロック40は、図1および図2(a)に示すように、吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面(放熱側ヘッダーブロック20B側への対向面)の中央部に密着する状態で配置されており、その内部に複数の冷媒管10が貫通している。ブロック40は、図6(a)に示すように直方体状であって、冷媒管10が貫通する複数の貫通孔41が形成されている。貫通孔41の断面形状は冷媒管10の断面外形にほぼ等しい楕円状であり、冷媒管10は貫通孔41の内面に密着している。ブロック40は、吸熱側ヘッダーブロック20Aおよび貫通する各冷媒管10に対し、ろう付けによって密着接合される。なお、ブロック40の奥行きはヘッダーブロック20の幅とほぼ同じ寸法とされ、幅は複数の冷媒管10が貫通し得る寸法とされている。また、その高さは適宜に設定されるが、その下端が、充填された冷媒液の上面よりも下方に位置して冷媒液とオーバーラップする寸法が好適である。
【0029】
次に、上記熱移動体1の作用を説明する。
半導体素子Sに発生した熱は、吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さ、熱容量、熱伝導度に依存する熱拡散効果により、吸熱側ヘッダーブロック20A全体に拡散する。この拡散した熱は、吸熱側ヘッダーブロック20Aに密着接合されているブロック40に伝わり、さらに、ブロック40の熱伝導作用によって下方に伝わりながら、ブロック40に密着接合されている冷媒管10に伝わる。すると、冷媒管10の冷媒通路Z内に存在する冷媒液が加熱されて沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気は、冷媒通路Zを上昇して吸熱側ヘッダーブロック20Aの冷媒通路X,Yを通り、ブロック40と接していない両側の冷媒管10に分配される。次いで、冷媒蒸気は両側の冷媒管の冷媒通路Zを下降しながら、冷媒蒸気の熱がコルゲートフィン30を経て外気(冷却空気)に伝熱される。この時、冷媒蒸気は凝縮液化して冷媒液に変わり、その凝縮潜熱が外気に放熱される。
【0030】
ブロック40の両側の冷媒管10の冷媒通路Zを降下した冷媒液は、放熱側ヘッダーブロック20Bの冷媒通路X,Yに入ってその中央部に戻り、ブロック40に密着している冷媒管10の冷媒通路Zに分配される。このようにして冷媒通路Zに戻った冷媒液は、ブロック40の熱伝導作用により下向きに引き込まれた熱を受けて再び沸騰気化し、冷媒通路Zを上昇することになる。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子Sは継続して冷却される。
【0031】
上記第1実施形態の熱移動体1によれば、ブロック40を吸熱側ヘッダーブロック20Aに密着接合することにより、トップヒートモードでも冷媒の沸騰気化・凝縮液化を効率よく発現することが可能となり、半導体素子Sから発する熱を効率よく放散させることができる。
【0032】
また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと、冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒は三次元方向に循環可能である。このため、冷媒が局所的に停滞するといったことが起こりにくく、流速あるいは流量等を要素とする冷媒の流動性の均一化が図られ、さらに、冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0033】
図5(b)は、ヘッダーブロック20が備える冷媒通路Yの変形例を示している。この例では、ヘッダーブロック20の凹所21の周縁全周に段部21aが形成されている。この場合の凹所21の深さはヘッダーブロック20の厚さの半分よりやや深く、段部21aは凹所21のほぼ半分の深さを有している。そして、冷媒管10は段部21aに先端が突き当てられた状態で凹所21に嵌合され、ヘッダーブロック20に気密的に接合されている。冷媒管10の先端と凹所21の底部との間には空間が形成され、その空間が冷媒通路Yを構成している。このように凹所21の一部が冷媒通路Yを構成するので、上記のようにヘッダーブロック20の側面から孔空け加工して冷媒通路Yを形成する必要がない。この変形例では、冷媒管10を嵌合させる凹所21を利用して冷媒通路Yを形成するものであり、段部21aの形成は孔空け加工と比べると容易で、しかもプラグ22を要さないので、加工コストが低減される。また、冷媒通路Yが冷媒管10に応じて形成されるので、冷媒通路Yの数を増加させることができ、冷媒の分配効率の向上が図られる。
【0034】
また、図6(b)は、ブロックの変形例を示している。このブロック40Bは、上記貫通孔41の代わりに、冷媒管10が貫通する切欠き42が形成されており、全体として櫛の歯状を呈している。上記ブロック40では、冷媒管10を1本ずつ貫通孔41に挿入していかなければならず、その作業が煩雑であるが、ブロック40Bによれば、切欠き42に冷媒管10を嵌め込むことによって、容易に冷媒管10を貫通させた状態とすることができるので、組立性が大幅に向上する。
【0035】
続いて、上記第1実施形態を基本構成とする本発明の第2および第3実施形態を説明する。なお、これら実施形態で参照する図面において、第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0036】
(2)第2実施形態:図7および図8
図7および図8は、上記熱移動体1を横置きのトップヒートモードで使用する例を示している。この場合、熱移動体1は、冷媒管10およびヘッダーブロック20が水平に配され、図中左側の吸熱側ヘッダーブロック20Aおよびブロック40の上面が、発熱源である半導体素子Sに密着させられている。
【0037】
以下、この熱伝導体1の作用を説明する。
半導体素子Sに発生した熱はブロック40に伝わり、ブロック40の熱伝導作用により下方に伝わりながら、さらにブロック40に密着接合されている冷媒管10に伝わる。すると、冷媒管10の冷媒通路Z内に存在する冷媒液が加熱されて沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気は冷媒通路Zを放熱側ヘッダーブロック20Bに向かって水平に移動する。冷媒蒸気の熱は、冷媒管10からコルゲートフィン30を経て、外気(冷却空気)に伝熱される。この時、冷媒蒸気は凝縮液化し冷媒液に変わり、その凝縮潜熱が外気に放熱される。
【0038】
一方、放熱側ヘッダーブロック20Bでは、冷媒通路X,Yに冷媒管10の冷媒通路Zから冷媒液または冷媒蒸気が流入し、それらは自重により冷媒通路Yを降下して再び冷媒管10に分配される。凝縮液化した冷媒液は、冷媒通路Zをブロック40に向かって水平移動し、ブロック40を介して再び半導体素子Sからの熱を受けて沸騰気化する。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子Sは継続的に冷却される。
【0039】
半導体素子Sはブロック40のみに密着していてもよいが、図示例のように吸熱側ヘッダーブロック20Aとブロック40とに跨って密着させれば、吸熱側ヘッダーブロック20Aが半導体素子Sの発熱の一部を直接受け、かつその熱が下方に移動する作用が付加されるので、冷媒液の沸騰気化がより促進されることになる。
【0040】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果、すなわち、ブロック40により半導体素子Sの発熱を効率よく下方に導いて下方に存在する冷媒液の沸騰気化を促し、結果として半導体素子Sが効率よく冷却される。また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒が三次元方向に循環可能であり、このため、冷媒の流動性の均一化、冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0041】
(3)第3実施形態:図9および図10
図9に示す熱移動体3は、上記第2実施形態の熱移動体1にブロック40を取り付けず、代わりに吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さを大きくしたものである。すなわち、吸熱側ヘッダーブロック20Aは、冷媒通路Zの延びる方向(Z方向)の寸法が、放熱側ヘッダーブロック20Bのそれよりも大きい。これ以外は第2実施形態の熱移動体1と同一構成であり、使用形態もトップヒートモードに準じたものである。ただし、半導体素子Sは、吸熱側ヘッダーブロック20Aの上面に水平に設置される。
【0042】
ここでの吸熱側ヘッダーブロック20Aは、ブロック40+吸熱側ヘッダーブロック20Aに相当する熱伝導のための伝熱面積を有するように、その厚さが設定されることが望ましい。また、吸熱側ヘッダーブロック20Aで下方に移動した熱を冷媒通路Xに存在する冷媒液に効率よく伝えるために、冷媒通路Xの内表面積を大きくすることが好ましい。したがって、冷媒通路Xの数を増加させることが効果的である(図9では、冷媒通路Xを塞ぐ6個のプラグ22でそれを示唆している)。
【0043】
なお、図10に示すように、吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さより半導体素子Sの幅が大きい場合には、吸熱側ヘッダーブロック20Aの上部に受熱板50を設置し、この受熱板50の上に半導体素子Sを搭載するとよい。
【0044】
本実施例の熱伝導体3の作用は、上記第2実施形態と同様であるが、冷媒の沸騰気化が主として吸熱側ヘッダーブロック20Aの冷媒通路X,Y内で生じる点が、第2実施形態の熱移動体1とは異なる。
【0045】
上記のように、第1〜第3実施形態で説明した熱移動体は、いずれも半導体素子Sが発する熱をブロック40の熱伝導作用によって下方に導き、下方に存在する冷媒液に熱を伝えて冷媒液の沸騰気化を促すので、従来の熱サイフォン型熱移動体では難しかったトップヒートモードでの使用を可能にするという顕著な効果を有している。また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと、冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒は三次元方向に循環可能であり、このため、冷媒の流動性の均一化が図られ、さらに冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0046】
また、冷媒が三次元方向に循環可能であることにより、設置スタイル(縦置き、横置きなど)の自由度が向上し、様々な機器の冷却デバイスとして応用範囲が広がる。例えば、第2実施形態の熱移動体では、図7に示すように半導体素子Sが上部に搭載されたいわゆるトップヒートモードで使用されているが、このままの姿勢で半導体素子Sをブロックの下面に密着させることにより、ボトムヒートモードとしても使用可能である。
【0047】
また、ヘッダーブロック20の長手方向一端面を下に向け、かつ冷媒管10の平坦面を水平とした横置きとすれば、サイドヒートモードとしても使用可能である。さらに、吸熱側ヘッダーブロック20Aを下側に配して冷媒管10が鉛直方向に沿った縦置きの状態で、半導体素子Sを吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面に密着させることにより、ボトムヒートモードとしても使用可能である。
【0048】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した実施例を説明する。なお、説明中に出てくる符号は、上記実施形態の構成要素に準じている。
[実施例1]:第1実施形態に相当
純アルミニウムA1050:10.0mm厚×40mm幅で、長手方向に内径6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて3つ形成された長尺な押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを2つ切り出して得た。これらヘッダーブロックに、内径6.0mmの貫通しない3つの冷媒通路Yを孔空け加工により形成し、さらに、片面に10個の凹所21を切削加工により形成し、さらに、片面に10個の凹所21を切削加工により形成した。そして、一方のヘッダーブロックの各冷媒通路X,Yの開口のうち1つを冷媒充填口とし、この冷媒充填口にキャップ24をねじ込むための継手を嵌合し、他の8つの開口にプラグ22を嵌合した。また、他方のヘッダーブロックの各冷媒通路X,Yの開口すべて(9つ)にプラグ22を嵌合した。
【0049】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6つの矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ117mmの冷媒管を10個切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21に嵌合した。次に、外形寸法:30mm高×40mm幅×60mm長の図6(b)に示すような櫛型のアルミニウム製ブロック40B(切欠きの数:4)を、切欠きに扁平管を嵌め込むとともに、上面を吸熱側ヘッダーブロックの内面に接触させて組み込んだ。次いで、各冷媒管の間隙にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入し、熱移動体の素材となるワークを組み立てた。なお、この組立にあたっては、各部材どうしの接触部分に、フラックスを塗布したろう材を付着させた。ただし、コルゲートフィンには両面クラッドのブレージング材を用いたので、コルゲートフィンにはフラックスのみを塗布した。そして、このワークを不活性雰囲気炉に装入し、602℃にてろう付けした。
【0050】
次に、ワーク内を真空脱気後、冷媒充填口から冷媒通路X,Y,Zの総容積の70%に相当する量の冷媒(HFC−134a)を充填し、冷媒充填口をキャップ24で封止して熱移動体を得た。
【0051】
次いで、被冷却体に相当するものとして、25mm×50mmのセラミックヒーターを用意し、これを吸熱側ヘッダーブロックの上面に密着する状態に置いてトップヒートモードに設定し、加熱冷却試験を行った。その結果、ほぼ同寸法の従来型ヒートシンクやボトムヒートモードのヒートパイプ、あるいは熱サイフォン冷却器と比較して、実施例1の熱移動体が同等ないし同等以上の放熱性能を有することが確認された。
【0052】
[実施例2]:第2実施形態に相当
実施例1と同様に、純アルミニウムA1050:10.00mm厚×40mm幅で、長手方向に内径6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて3つ形成された長尺な押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを2つ切り出して得た。これらヘッダーブロックの片面に、深さ3mmの10個の凹所21を切削加工により形成し、さらにこれら凹所21の周縁に深さ2mmの段部21aを切削加工により形成した。そして、一方のヘッダーブロックの各冷媒通路Xの開口のうちの1つを冷媒充填口とし、この冷媒充填口にキャップ24をねじ込むための継手を嵌合し、他の5つの開口にプラグ22を嵌合した。また、他方のヘッダーブロックの各冷媒通路Xの開口すべて(この場合6個)に、プラグ22を嵌合した。
【0053】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6個の矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ157mmの冷媒管を10個切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21の段部21aに突き当てて嵌合し、次に、外形寸法:40mm高×36mm幅×85mm長の図6(b)に示すような櫛型のアルミニウム製ブロック40B(切欠き数:4)を、上記と同様にして組み込んだ。次いで、各冷媒管の間隙にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入し、熱移動体の素材となるワークを組み立てた。この後、実施例1と同様の手法でワークをろう付けし、冷媒を充填して熱移動体を得た。なお、ここでの冷媒の充填率は80%とした。
【0054】
次いで、被冷却体に相当するものとして、25mm×50mmのセラミックヒーターを用意し、次に述べる加熱冷却試験を行った。該試験は、図7に示したようにブロック上に発熱源(上記セラミックヒータ)を搭載したトップヒートモード(ワーク横置き)、ワークを横置きのままヒータをブロックの下面に密着させたボトムヒートモード、吸熱側ヘッダーブロックを下側に配し、かつ冷媒管を鉛直に立て(ワーク縦置き)、ヒータをアルミニウムブロックの横に沿わせるよう密着させたサイドヒートモードの3つの使用形態で加熱冷却試験を行った。また、比較例として、ブロックを取り付けず、かつ冷媒を充填しない以外は実施例と同様にして熱移動体を作製し、これをトップヒートモードとして同様の加熱冷却試験を行った。
【0055】
なお、試験の条件は、熱移動体のコルゲートフィン、冷媒管および放熱側ヘッダーブロックの全体に、120mm角プロペラファンによって前面風速1.7m/secで冷却風を当て、ヒータへ入力する電力を、表1に示すように120〜280Wの範囲で5段階にし、その電力が入力された時の熱抵抗値(℃/W)を求め、熱輸送能力を比較した。その試験結果を、表1に示す。なお、熱抵抗値は、次式から算出した。
熱抵抗値R=(ヒータの表面温度−室温)/入力電力値
【0056】
【表1】
【0057】
表1で明らかなように、本発明に基づく実施例の熱移動体は、トップヒートモードにおいても、ボトムヒートモードあるいはサイドヒートモードとほぼ同等の熱輸送能力を示すことが確認された。比較例の熱移動体は、電力が200W以上ではヒータの温度が破壊限界を超えたため入力が不可能となった。比較例の熱移動体はヒートシンクないしは従来の熱サイフォンと同等の構造であり、本発明品はこれら従来品の約3倍の性能を示すことが判った。
【0058】
[実施例3]:第3実施形態に相当
純アルミニウムA1050:30.0mm厚×40mm幅で、図9に示したように、長手方向に内径:6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて2列×3=6つ形成された長尺押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを1つ切り出し、さらに実施例1および実施例2と同様に、純アルミニウムA1050:10.0mm厚×40mm幅の3穴押し出し扁平管から、長さ132mmのヘッダーブロックを1つ切り出した。これら2つのヘッダーブロックに対し、凹所21の切削加工、継手嵌合およびプラグ22の嵌合を、実施例2と同様に実施した。なお、吸熱側ヘッダーブロックについては、凹所21の切削加工は、図9の内側(冷媒管寄り)の冷媒通路Xを貫通し、かつ外側の冷媒通路Xに達するまで深く切削した。また、冷媒通路Xに直交する6個の冷媒通路も形成した。
【0059】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6つの矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ117mmの冷媒管10個を切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21に嵌合した後、平行な扁平管間にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入して熱移動体の素材となるワークを組み立てた。次いで、実施例1と同様な手法で、ワークのろう付けおよび冷媒の充填を行い、熱移動体を得た。この熱移動体に対し、実施例2と同様の加熱冷却試験を行ったところ、熱輸送能力は実施例2と同等であった。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吸熱側の熱伝導体に、放熱側の熱伝導体に向かって延び、かつ冷媒管に接触する熱伝導性を有するブロックを付加し、このブロックによって冷媒の循環作用を促進させる構成としたので、熱輸送能力に伴う冷却効果が、ボトムヒートモードやサイドヒートモードにおいては勿論のこと、トップヒートモードにおいても十分に発揮されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱移動体の斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る熱移動体の(a)一部断面正面図、(b)一部断面側面図である。
【図3】第1実施形態に係る冷媒管の一部斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るヘッダーブロックの(a)一部断面側面図、(b)平面図、(c)端面図である。
【図5】(a)第1実施形態に係るヘッダーブロックへの冷媒管の接合構造を示す縦断面図、(b)同接合構造の変形例を示す縦断面図である。
【図6】(a)第1実施形態に係るブロックの斜視図、(b)ブロックの変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態の熱移動体の斜視図である。
【図8】第2実施形態の熱移動体の側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の熱移動体の斜視図である。
【図10】第3実施形態の熱移動体の側面図である。
【符号の説明】
1,3…熱サイフォン型熱移動体
10…冷媒管
20(20A)…吸熱側ヘッダーブロック(吸熱側熱伝導体)
20(20B)…放熱側ヘッダーブロック(放熱側熱伝導体)
30…コルゲートフィン
40…ブロック
S…半導体素子(発熱源)
X…冷媒通路(X方向冷媒通路)
Y…冷媒通路(Y方向冷媒通路)
Z…冷媒通路(Z方向冷媒通路)
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば半導体素子や各種産業機器の操作盤等の筐体内を冷却させる冷却デバイスとして好適な熱サイフォン型熱移動体に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子の冷却デバイスとしては、従来より、アルミニウムの押し出し形材からなるヒートシンクのような金属の熱伝導を利用する冷却器や、封入した冷媒の動きに伴う潜熱を利用するヒートパイプもしくは熱サイフォン等が知られている。
【0003】
例えば、特開平5−302774号公報には、熱サイフォンによる半導体素子用の冷却デバイスが開示されている。この冷却デバイスは、冷媒が収容されて下部に配置される冷媒タンクと、鉛直方向に沿って配置される気相管と、水平に配置される複数の冷却管と、冷媒戻り管および冷却管に接するフィンとから構成されている。そして、被冷却体である半導体素子を、冷媒タンク内に浸漬したり、冷媒タンクの底部外面に密着させたりして使用する。この冷却デバイスによれば、装置の下方に位置する半導体素子からの発熱は冷媒タンク内の冷媒に伝わり、その冷媒が加熱によって沸騰気化し、冷媒蒸気が気相管内を上昇する。冷媒蒸気は冷却管内で凝縮液化し、その凝縮潜熱がフィンを介して冷却空気に伝達され放熱され、液化した冷媒は冷媒戻り管から冷媒タンクへ戻ることになる。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子を冷却することができるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
アルミニウムの押し出し形材からなるヒートシンクは極めて安価であり、半導体素子の冷却や産業機械等の各種分野で広く使用されている。しかし、熱移動をアルミニウムの熱伝導のみに依存しているため、単位容積あるいは単位質量当たりの熱輸送能力に劣り、数十mmという短距離熱移動にしか適さず、近時の高い冷却性能を要求される用途には使用し難いという問題点がある。
【0005】
一方、ヒートパイプあるいは熱サイフォンでは、金属容器の内部に作動液(以下、冷媒と称する)が充填・封入され、その冷媒が沸騰気化・凝縮液化のサイクルを繰り返すことによる潜熱放出の原理により、冷却すべき半導体素子が効率よく冷却される。これら冷却デバイスは、発熱源(被冷却体)の上に搭載する使用形態、すなわち冷却デバイス側からみると底部に発熱源が位置するいわゆるボトムヒートモードで多く使用される。ところで、これら冷却デバイスの使用形態としては、発熱源の下側に密着させる場合、すなわち冷却デバイス側からみると上部に発熱源が位置するいわゆるトップヒートモードもある。
【0006】
上記ボトムヒートモードでは、冷媒に発熱源の熱が直接的に伝わるとともに、沸騰気化する冷媒は速やかに内部を上昇するので、十分な冷却効果を得ることができる。ところが、上記トップヒートモードでは、下部に存在する冷媒に上部の発熱源の熱が伝わり難く、また、冷媒は重力によって下部に滞留しやすいので、冷媒の循環が起こり難いという大きな問題がある。この問題の解決策としては、ヒートパイプの場合は、内部の毛管現象を発現する微細構造、いわゆるウイックを設け、凝縮液化した冷媒が重力に逆らって上方に移動し、加熱源に戻る構造が挙げられる。しかしながら、これでは構造が複雑になるとともにコストアップを招き、しかも、得られる効果は限定的であった。また、熱サイフォンの場合は、ヒートパイプよりも大量の冷媒を使用できることから比較的大きな熱輸送能力を得ることができるという構造上のメリットはあるものの、トップヒートモードでの使用は極めて困難である。
【0007】
したがって本発明は、熱輸送能力に伴う冷却効果を、ボトムヒートモードやサイドヒートモードにおいては勿論のこと、トップヒートモードにおいても十分に発揮することができる熱サイフォン型熱移動体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱移動体は、冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、冷媒管は、X方向およびY方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、各熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、さらに、一方の熱伝導体には、他方の熱伝導体に向かって延びる熱伝導性を有するブロックが付加され、かつ、このブロック内に冷媒管が接触する状態で貫通されていることを特徴としている。本発明で言うX方向、Y方向、Z方向は、互い直交して三次元を表す方向であり、したがって本発明の熱移動体は、全体的に見ると冷媒通路が三次元方向のいずれにも形成され、かつ、互いに連通している。
【0009】
本発明の熱移動体は、コンピュータのCPU、パワートランジスタ、熱電素子(ペルチェ素子)等の冷却デバイスとして適用することができる。使用形態としては、まず、一般的なボトムヒートモードが挙げられる。その場合には、2つの熱伝導体のうちの一方を上側として冷媒管を鉛直に立て、下側の他方の熱伝導体を発熱源に密着させる縦置きで使用され、下側の熱伝導体が吸熱側、上側の熱伝導体が放熱側となる。これによれば、下側の熱伝導体が加熱されると、内部の冷媒が沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気が冷媒管のZ方向冷媒通路を上昇して内壁面に凝縮液化し、その凝縮潜熱が冷媒管や放熱側の熱伝導体を経て放熱される。凝縮液化した冷媒は自重により冷媒管のZ方向冷媒通路を伝って滴下し、再び加熱されて沸騰気化する。このような沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。なお、ボトムヒートモードの場合、発熱源に密着させる熱伝導体は、ブロックが付加された側のものか、あるいは付加されていないもののいずれでもよい。
【0010】
次の使用形態としては、サイドヒートモードが挙げられる。例えば、タワー型デスクトップコンピュータ等では、マザーボードが鉛直方向に沿った縦置きの状態で搭載され、発熱源であるCPU素子は側方に向いている。このように発熱源が側方に向いている場合に本発明の熱移動体を適用するには、2つの熱伝導体のうちの一方を発熱源に密着させるとともに冷媒管を水平に配する。この場合、発熱源に密着させる熱伝導体が吸熱側、他方が放熱側となる。このように使用されるサイドヒートモードでも、発熱源の熱は、発熱源→吸熱側の熱移動体→冷媒のルートで効率良く移動し、冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。なお、サイドヒートモードの場合も、発熱源に密着させる熱伝導体は、ブロックが付加された側のものか、あるいは付加されていないもののいずれでもよい。
【0011】
もう一つの使用形態としては、前述したトップヒートモードがある。例えば、電子冷却にてペルチェ素子の低温面を上にし、上面を作業面として食品、薬品等の冷却を行う場合、高温である下面を冷却する。このようなトップヒートモードの場合は、ブロックを付加した側の熱伝導体を上側としてこの熱伝導体を発熱源に密着させ、冷媒管を鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配する。この場合、上側の熱伝導体が吸熱側、下側の熱伝導体が放熱側となる。
【0012】
このトップヒートモードでは、発熱源の熱が、発熱源→吸熱側の熱伝導体→ブロック→冷媒のルートで効率良く移動し、上記ボトムヒートモードの場合と同様に冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しの作用によって、冷媒は各冷媒通路を循環し、発熱源が冷却される。すなわち、下方に滞留する冷媒に対してブロックから発熱源の熱が伝わることにより、従来のトップヒートモードでは加熱が不十分であった冷媒を十分に加熱することができ、ボトムヒートモードと同様の冷却効果を得ることができるのである。
【0013】
本発明に係る上記ブロックは、内部に封入された冷媒の上面よりも下方に延び、その冷媒とオーバーラップしていることを好ましい形態とする。この形態によれば、ブロックから冷媒への熱伝導が直接的となり、熱輸送能力の向上が図られて冷却効果を増大させることができる。なお、このブロックは、熱伝導体と一体に成形されたものでもよく、ブロック単体が熱伝導体に接合されている形態であってもよい。
【0014】
本発明の熱移動体は、熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路と、冷媒管のZ方向冷媒通路とが連通しており、したがって、冷媒が三次元方向に循環可能である。このため、冷媒には局所的な停滞が起こりにくく、流速あるいは流量等を要素とする流動性の均一化が図られ、さらにこれによって冷媒温度のより一層の均一化が図られる。また、冷媒が三次元方向に循環可能であることにより、冷媒管が鉛直方向に沿って配されるボトムヒートモードおよびトップヒートモードのみならず、上記サイドヒートモードも可能である。つまり、設置スタイル(縦置き、横置き等)の自由度が高く、このため、様々な機器の冷却デバイスとして応用範囲が広い。
【0015】
次に、本発明の熱移動体は、冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、冷媒管は、X方向およびY方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、各熱伝導体のX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、さらに、一方の熱伝導体におけるZ方向の寸法が、他方の熱伝導体のそれよりも大きいことを特徴としている。
【0016】
この熱移動体にあっても、上記の熱移動体と同様にボトムヒートモードおよびサイドヒートモードで使用されるが、やはり上記熱移動体と同様に、トップヒートモードでの使用が効果的である。すなわち、トップヒートモードでは、Z方向の寸法が大きい側の熱伝導体を上側に配して発熱源に密着させ、かつ、冷媒管を略鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配する。この熱移動体によれば、発熱源に密着させられる上側の熱伝導体が、他方の下側の熱伝導体よりもZ方向の寸法が大きいので、冷媒に対してより接近することになる。したがって、発熱源の熱が冷媒に伝わりやすく、冷媒を十分に加熱することができ、ボトムヒートモードと同様の冷却効果得ることができる。ここで、発熱源に密着される熱伝導体のZ方向の寸法は、滞留する冷媒に対して十分に熱を移動させるに足る寸法に設定されることが望ましい。
【0017】
以上の本発明に係る熱移動体にあっては、より一層の冷却効果の向上を図る観点から、冷媒管にフィンが接合されていることを好ましい形態としている。
【0018】
また、本発明の熱移動体の構成部材の材料としては、アルミニウム、銅あるいはステンレススチール等が使用される。アルミニウムは、押し出し加工等によって極めて安価に熱伝導体や冷媒管を製造することができ、しかも加工が容易であることから、コストの上昇が抑えられる。また、銅は、使用可能な冷媒の種類の選択肢が広いというメリットがある。また、ステンレススチールは、耐腐食性に優れており、汚れがつき難いといった特長を有することから、食品、薬品、バイオの分野に好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(1)第1実施形態:図1〜図6
図1は第1実施形態に係る熱サイフォン型熱移動体(以下、熱移動体と略称する)1の斜視図である。この熱移動体1は、等間隔をおいて互いに平行に配された複数の冷媒管10と、これら冷媒管10の両端に接合されて互いに平行をなす上下一対のヘッダーブロック(熱伝導体)20と、隣り合う冷媒管10に接合されたコルゲートフィン30と、ブロック40とから構成されている。これらは、いずれもアルミニウム、銅あるいはステンレススチールのうちの1種から製造されている。
【0020】
図1の符号Sは、冷却すべき物品(発熱源)である半導体素子である。この半導体素子Sは平板状で、水平に設置される。図1に示すように、この場合の熱移動体1は、上側に配された一方のヘッダーブロック20を半導体素子Sに密着させ、他方のヘッダーブロック20を下側に配して冷媒管10を鉛直に立てた状態、すなわち縦置きのトップヒートモードで使用される。以下必要に応じて、上方に配されるヘッダーブロック20を吸熱側ヘッダーブロック(吸熱側熱伝導体)20A、下方に配されるヘッダーブロック20を放熱側ヘッダーブロック(放熱側熱移動体)20Bと称する。
【0021】
図2(a)は熱移動体1の一部正面側面図、図2(b)は熱移動体1の一部断面側面図である。図1と図2(b)とでは冷媒管10の数が異なる(図1の方が少ない)が、これは図1では冷媒管10の幾つかを省略しているからであり、構造的な相違はない。なお、冷媒管10の数は仕様に応じて任意である。上下のヘッダーブロック20A,20Bに対する各冷媒管10の接合、および各冷媒管10に対する各コルゲートフィン30の接合は、ろう付けによりなされている。
【0022】
冷媒管10は、図3に示すように、断面が扁平楕円状で、内部には、長手方向に延びる複数(この場合6つ)の冷媒通路(Z方向冷媒通路)Zが、隔壁11によって幅方向に一列の状態で形成されている。冷媒管10は、材料がアルミニウムの場合は押し出し加工により成形され、銅あるいはステンレススチールの場合は細長い複数の角型パイプをろう付けして製造される。冷媒通路Zの寸法は、冷媒管10の厚さや幅等の寸法、冷媒通路Zを流れる冷媒の流動性等の諸条件を勘案して適宜に設定される。
【0023】
ヘッダーブロック20は、図4に示すように、断面が長方形状で、一定厚さの長尺なバー状を呈しており、内部には、長手方向に延び、両端面に開口する複数(この場合3つ)の断面円形状の冷媒通路(X方向冷媒通路)Xが等間隔をおいて形成されている。ヘッダーブロック20の片面には、幅方向(冷媒通路Xに直交する方向)に延びる複数の凹所21が等間隔をおいて形成されている。これら凹所21の数は冷媒管10の数に対応している。
【0024】
図5(a)に示すように、凹所21は各冷媒通路Xを横断しており、その深さはヘッダーブロック20の厚さの半分よりやや浅い。これら凹所21に冷媒管10の端部が嵌合され、冷媒管10はヘッダーブロック20にろう付けによって気密的に接合されている。冷媒管10はヘッダーブロック20に直交して接合され、その状態で、図5(a)に示すように、ヘッダーブロック20の1つの冷媒通路Xに対して2つの冷媒通路Zが連通している。ヘッダーブロック20は、材料がアルミニウムの場合は押し出し加工により成形され、銅あるいはステンレススチールの場合は切削加工等により成形される。
【0025】
また、図4に示すように、ヘッダーブロック20には、長手方向に間隔をおいて複数(この場合3つ)の冷媒通路(Y方向冷媒通路)Yが形成されている。これら冷媒通路Yは、ヘッダーブロック20の一方の側面からの孔空け加工によって形成されており、3つの冷媒通路Xを貫通することによってこれら冷媒通路Xに連通している。各冷媒通路Yは、近隣する凹所21と連通せぬよう凹所21の間に配されており、その開口は、ろう付けされたプラグ22で気密的に閉塞されている。また、各冷媒通路Xの両端面の開口のうち、中央の冷媒通路Xの一方の開口が冷媒充填口23とされる。この冷媒充填口23は、冷媒充填後に、最終的にろう付けされるネジ式キャップ24で封止され、他の開口は、冷媒通路Yと同様にろう付けされたプラグ22で気密的に閉塞されている。冷媒は、材料がアルミニウムの場合はフロン等であり、銅あるいはステンレススチールの場合は、フロン、水とされ、冷媒充填口23から適量が充填される。
【0026】
なお、ヘッダーブロック20の厚さ、幅、長さ、冷媒通路X,Yの径や数、凹所21の寸法等は、所要冷却能力、当該熱移動体1の設置スペース、冷媒管10の寸法および冷媒の種類等を勘案して適宜に設定される。
【0027】
各ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yは互いに連通し、さらに、各冷媒管10の冷媒通路Zはヘッダーブロック20の冷媒通路Xに連通している。すなわち、冷媒通路X,Y,Zは互いに連通している。これら冷媒通路X,Y,Zは互いに直交する方向に延びており、図1に示すトップヒートモードの使用状態で、冷媒通路Xは三次元方向におけるX方向、冷媒通路YはY方向、冷媒通路ZはZ方向に延びることになる。
【0028】
上記ブロック40は、図1および図2(a)に示すように、吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面(放熱側ヘッダーブロック20B側への対向面)の中央部に密着する状態で配置されており、その内部に複数の冷媒管10が貫通している。ブロック40は、図6(a)に示すように直方体状であって、冷媒管10が貫通する複数の貫通孔41が形成されている。貫通孔41の断面形状は冷媒管10の断面外形にほぼ等しい楕円状であり、冷媒管10は貫通孔41の内面に密着している。ブロック40は、吸熱側ヘッダーブロック20Aおよび貫通する各冷媒管10に対し、ろう付けによって密着接合される。なお、ブロック40の奥行きはヘッダーブロック20の幅とほぼ同じ寸法とされ、幅は複数の冷媒管10が貫通し得る寸法とされている。また、その高さは適宜に設定されるが、その下端が、充填された冷媒液の上面よりも下方に位置して冷媒液とオーバーラップする寸法が好適である。
【0029】
次に、上記熱移動体1の作用を説明する。
半導体素子Sに発生した熱は、吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さ、熱容量、熱伝導度に依存する熱拡散効果により、吸熱側ヘッダーブロック20A全体に拡散する。この拡散した熱は、吸熱側ヘッダーブロック20Aに密着接合されているブロック40に伝わり、さらに、ブロック40の熱伝導作用によって下方に伝わりながら、ブロック40に密着接合されている冷媒管10に伝わる。すると、冷媒管10の冷媒通路Z内に存在する冷媒液が加熱されて沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気は、冷媒通路Zを上昇して吸熱側ヘッダーブロック20Aの冷媒通路X,Yを通り、ブロック40と接していない両側の冷媒管10に分配される。次いで、冷媒蒸気は両側の冷媒管の冷媒通路Zを下降しながら、冷媒蒸気の熱がコルゲートフィン30を経て外気(冷却空気)に伝熱される。この時、冷媒蒸気は凝縮液化して冷媒液に変わり、その凝縮潜熱が外気に放熱される。
【0030】
ブロック40の両側の冷媒管10の冷媒通路Zを降下した冷媒液は、放熱側ヘッダーブロック20Bの冷媒通路X,Yに入ってその中央部に戻り、ブロック40に密着している冷媒管10の冷媒通路Zに分配される。このようにして冷媒通路Zに戻った冷媒液は、ブロック40の熱伝導作用により下向きに引き込まれた熱を受けて再び沸騰気化し、冷媒通路Zを上昇することになる。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子Sは継続して冷却される。
【0031】
上記第1実施形態の熱移動体1によれば、ブロック40を吸熱側ヘッダーブロック20Aに密着接合することにより、トップヒートモードでも冷媒の沸騰気化・凝縮液化を効率よく発現することが可能となり、半導体素子Sから発する熱を効率よく放散させることができる。
【0032】
また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと、冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒は三次元方向に循環可能である。このため、冷媒が局所的に停滞するといったことが起こりにくく、流速あるいは流量等を要素とする冷媒の流動性の均一化が図られ、さらに、冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0033】
図5(b)は、ヘッダーブロック20が備える冷媒通路Yの変形例を示している。この例では、ヘッダーブロック20の凹所21の周縁全周に段部21aが形成されている。この場合の凹所21の深さはヘッダーブロック20の厚さの半分よりやや深く、段部21aは凹所21のほぼ半分の深さを有している。そして、冷媒管10は段部21aに先端が突き当てられた状態で凹所21に嵌合され、ヘッダーブロック20に気密的に接合されている。冷媒管10の先端と凹所21の底部との間には空間が形成され、その空間が冷媒通路Yを構成している。このように凹所21の一部が冷媒通路Yを構成するので、上記のようにヘッダーブロック20の側面から孔空け加工して冷媒通路Yを形成する必要がない。この変形例では、冷媒管10を嵌合させる凹所21を利用して冷媒通路Yを形成するものであり、段部21aの形成は孔空け加工と比べると容易で、しかもプラグ22を要さないので、加工コストが低減される。また、冷媒通路Yが冷媒管10に応じて形成されるので、冷媒通路Yの数を増加させることができ、冷媒の分配効率の向上が図られる。
【0034】
また、図6(b)は、ブロックの変形例を示している。このブロック40Bは、上記貫通孔41の代わりに、冷媒管10が貫通する切欠き42が形成されており、全体として櫛の歯状を呈している。上記ブロック40では、冷媒管10を1本ずつ貫通孔41に挿入していかなければならず、その作業が煩雑であるが、ブロック40Bによれば、切欠き42に冷媒管10を嵌め込むことによって、容易に冷媒管10を貫通させた状態とすることができるので、組立性が大幅に向上する。
【0035】
続いて、上記第1実施形態を基本構成とする本発明の第2および第3実施形態を説明する。なお、これら実施形態で参照する図面において、第1実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
【0036】
(2)第2実施形態:図7および図8
図7および図8は、上記熱移動体1を横置きのトップヒートモードで使用する例を示している。この場合、熱移動体1は、冷媒管10およびヘッダーブロック20が水平に配され、図中左側の吸熱側ヘッダーブロック20Aおよびブロック40の上面が、発熱源である半導体素子Sに密着させられている。
【0037】
以下、この熱伝導体1の作用を説明する。
半導体素子Sに発生した熱はブロック40に伝わり、ブロック40の熱伝導作用により下方に伝わりながら、さらにブロック40に密着接合されている冷媒管10に伝わる。すると、冷媒管10の冷媒通路Z内に存在する冷媒液が加熱されて沸騰気化し、沸騰気化した冷媒蒸気は冷媒通路Zを放熱側ヘッダーブロック20Bに向かって水平に移動する。冷媒蒸気の熱は、冷媒管10からコルゲートフィン30を経て、外気(冷却空気)に伝熱される。この時、冷媒蒸気は凝縮液化し冷媒液に変わり、その凝縮潜熱が外気に放熱される。
【0038】
一方、放熱側ヘッダーブロック20Bでは、冷媒通路X,Yに冷媒管10の冷媒通路Zから冷媒液または冷媒蒸気が流入し、それらは自重により冷媒通路Yを降下して再び冷媒管10に分配される。凝縮液化した冷媒液は、冷媒通路Zをブロック40に向かって水平移動し、ブロック40を介して再び半導体素子Sからの熱を受けて沸騰気化する。このような冷媒の沸騰気化・凝縮液化の繰り返しがなされることにより、半導体素子Sは継続的に冷却される。
【0039】
半導体素子Sはブロック40のみに密着していてもよいが、図示例のように吸熱側ヘッダーブロック20Aとブロック40とに跨って密着させれば、吸熱側ヘッダーブロック20Aが半導体素子Sの発熱の一部を直接受け、かつその熱が下方に移動する作用が付加されるので、冷媒液の沸騰気化がより促進されることになる。
【0040】
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果、すなわち、ブロック40により半導体素子Sの発熱を効率よく下方に導いて下方に存在する冷媒液の沸騰気化を促し、結果として半導体素子Sが効率よく冷却される。また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒が三次元方向に循環可能であり、このため、冷媒の流動性の均一化、冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0041】
(3)第3実施形態:図9および図10
図9に示す熱移動体3は、上記第2実施形態の熱移動体1にブロック40を取り付けず、代わりに吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さを大きくしたものである。すなわち、吸熱側ヘッダーブロック20Aは、冷媒通路Zの延びる方向(Z方向)の寸法が、放熱側ヘッダーブロック20Bのそれよりも大きい。これ以外は第2実施形態の熱移動体1と同一構成であり、使用形態もトップヒートモードに準じたものである。ただし、半導体素子Sは、吸熱側ヘッダーブロック20Aの上面に水平に設置される。
【0042】
ここでの吸熱側ヘッダーブロック20Aは、ブロック40+吸熱側ヘッダーブロック20Aに相当する熱伝導のための伝熱面積を有するように、その厚さが設定されることが望ましい。また、吸熱側ヘッダーブロック20Aで下方に移動した熱を冷媒通路Xに存在する冷媒液に効率よく伝えるために、冷媒通路Xの内表面積を大きくすることが好ましい。したがって、冷媒通路Xの数を増加させることが効果的である(図9では、冷媒通路Xを塞ぐ6個のプラグ22でそれを示唆している)。
【0043】
なお、図10に示すように、吸熱側ヘッダーブロック20Aの厚さより半導体素子Sの幅が大きい場合には、吸熱側ヘッダーブロック20Aの上部に受熱板50を設置し、この受熱板50の上に半導体素子Sを搭載するとよい。
【0044】
本実施例の熱伝導体3の作用は、上記第2実施形態と同様であるが、冷媒の沸騰気化が主として吸熱側ヘッダーブロック20Aの冷媒通路X,Y内で生じる点が、第2実施形態の熱移動体1とは異なる。
【0045】
上記のように、第1〜第3実施形態で説明した熱移動体は、いずれも半導体素子Sが発する熱をブロック40の熱伝導作用によって下方に導き、下方に存在する冷媒液に熱を伝えて冷媒液の沸騰気化を促すので、従来の熱サイフォン型熱移動体では難しかったトップヒートモードでの使用を可能にするという顕著な効果を有している。また、ヘッダーブロック20の冷媒通路X,Yと、冷媒管10の冷媒通路Zとが連通しているので、冷媒は三次元方向に循環可能であり、このため、冷媒の流動性の均一化が図られ、さらに冷媒温度のより一層の均一化が図られる。
【0046】
また、冷媒が三次元方向に循環可能であることにより、設置スタイル(縦置き、横置きなど)の自由度が向上し、様々な機器の冷却デバイスとして応用範囲が広がる。例えば、第2実施形態の熱移動体では、図7に示すように半導体素子Sが上部に搭載されたいわゆるトップヒートモードで使用されているが、このままの姿勢で半導体素子Sをブロックの下面に密着させることにより、ボトムヒートモードとしても使用可能である。
【0047】
また、ヘッダーブロック20の長手方向一端面を下に向け、かつ冷媒管10の平坦面を水平とした横置きとすれば、サイドヒートモードとしても使用可能である。さらに、吸熱側ヘッダーブロック20Aを下側に配して冷媒管10が鉛直方向に沿った縦置きの状態で、半導体素子Sを吸熱側ヘッダーブロック20Aの下面に密着させることにより、ボトムヒートモードとしても使用可能である。
【0048】
【実施例】
次に、本発明をより具体化した実施例を説明する。なお、説明中に出てくる符号は、上記実施形態の構成要素に準じている。
[実施例1]:第1実施形態に相当
純アルミニウムA1050:10.0mm厚×40mm幅で、長手方向に内径6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて3つ形成された長尺な押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを2つ切り出して得た。これらヘッダーブロックに、内径6.0mmの貫通しない3つの冷媒通路Yを孔空け加工により形成し、さらに、片面に10個の凹所21を切削加工により形成し、さらに、片面に10個の凹所21を切削加工により形成した。そして、一方のヘッダーブロックの各冷媒通路X,Yの開口のうち1つを冷媒充填口とし、この冷媒充填口にキャップ24をねじ込むための継手を嵌合し、他の8つの開口にプラグ22を嵌合した。また、他方のヘッダーブロックの各冷媒通路X,Yの開口すべて(9つ)にプラグ22を嵌合した。
【0049】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6つの矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ117mmの冷媒管を10個切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21に嵌合した。次に、外形寸法:30mm高×40mm幅×60mm長の図6(b)に示すような櫛型のアルミニウム製ブロック40B(切欠きの数:4)を、切欠きに扁平管を嵌め込むとともに、上面を吸熱側ヘッダーブロックの内面に接触させて組み込んだ。次いで、各冷媒管の間隙にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入し、熱移動体の素材となるワークを組み立てた。なお、この組立にあたっては、各部材どうしの接触部分に、フラックスを塗布したろう材を付着させた。ただし、コルゲートフィンには両面クラッドのブレージング材を用いたので、コルゲートフィンにはフラックスのみを塗布した。そして、このワークを不活性雰囲気炉に装入し、602℃にてろう付けした。
【0050】
次に、ワーク内を真空脱気後、冷媒充填口から冷媒通路X,Y,Zの総容積の70%に相当する量の冷媒(HFC−134a)を充填し、冷媒充填口をキャップ24で封止して熱移動体を得た。
【0051】
次いで、被冷却体に相当するものとして、25mm×50mmのセラミックヒーターを用意し、これを吸熱側ヘッダーブロックの上面に密着する状態に置いてトップヒートモードに設定し、加熱冷却試験を行った。その結果、ほぼ同寸法の従来型ヒートシンクやボトムヒートモードのヒートパイプ、あるいは熱サイフォン冷却器と比較して、実施例1の熱移動体が同等ないし同等以上の放熱性能を有することが確認された。
【0052】
[実施例2]:第2実施形態に相当
実施例1と同様に、純アルミニウムA1050:10.00mm厚×40mm幅で、長手方向に内径6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて3つ形成された長尺な押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを2つ切り出して得た。これらヘッダーブロックの片面に、深さ3mmの10個の凹所21を切削加工により形成し、さらにこれら凹所21の周縁に深さ2mmの段部21aを切削加工により形成した。そして、一方のヘッダーブロックの各冷媒通路Xの開口のうちの1つを冷媒充填口とし、この冷媒充填口にキャップ24をねじ込むための継手を嵌合し、他の5つの開口にプラグ22を嵌合した。また、他方のヘッダーブロックの各冷媒通路Xの開口すべて(この場合6個)に、プラグ22を嵌合した。
【0053】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6個の矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ157mmの冷媒管を10個切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21の段部21aに突き当てて嵌合し、次に、外形寸法:40mm高×36mm幅×85mm長の図6(b)に示すような櫛型のアルミニウム製ブロック40B(切欠き数:4)を、上記と同様にして組み込んだ。次いで、各冷媒管の間隙にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入し、熱移動体の素材となるワークを組み立てた。この後、実施例1と同様の手法でワークをろう付けし、冷媒を充填して熱移動体を得た。なお、ここでの冷媒の充填率は80%とした。
【0054】
次いで、被冷却体に相当するものとして、25mm×50mmのセラミックヒーターを用意し、次に述べる加熱冷却試験を行った。該試験は、図7に示したようにブロック上に発熱源(上記セラミックヒータ)を搭載したトップヒートモード(ワーク横置き)、ワークを横置きのままヒータをブロックの下面に密着させたボトムヒートモード、吸熱側ヘッダーブロックを下側に配し、かつ冷媒管を鉛直に立て(ワーク縦置き)、ヒータをアルミニウムブロックの横に沿わせるよう密着させたサイドヒートモードの3つの使用形態で加熱冷却試験を行った。また、比較例として、ブロックを取り付けず、かつ冷媒を充填しない以外は実施例と同様にして熱移動体を作製し、これをトップヒートモードとして同様の加熱冷却試験を行った。
【0055】
なお、試験の条件は、熱移動体のコルゲートフィン、冷媒管および放熱側ヘッダーブロックの全体に、120mm角プロペラファンによって前面風速1.7m/secで冷却風を当て、ヒータへ入力する電力を、表1に示すように120〜280Wの範囲で5段階にし、その電力が入力された時の熱抵抗値(℃/W)を求め、熱輸送能力を比較した。その試験結果を、表1に示す。なお、熱抵抗値は、次式から算出した。
熱抵抗値R=(ヒータの表面温度−室温)/入力電力値
【0056】
【表1】
【0057】
表1で明らかなように、本発明に基づく実施例の熱移動体は、トップヒートモードにおいても、ボトムヒートモードあるいはサイドヒートモードとほぼ同等の熱輸送能力を示すことが確認された。比較例の熱移動体は、電力が200W以上ではヒータの温度が破壊限界を超えたため入力が不可能となった。比較例の熱移動体はヒートシンクないしは従来の熱サイフォンと同等の構造であり、本発明品はこれら従来品の約3倍の性能を示すことが判った。
【0058】
[実施例3]:第3実施形態に相当
純アルミニウムA1050:30.0mm厚×40mm幅で、図9に示したように、長手方向に内径:6.0mmの冷媒通路Xが等間隔をおいて2列×3=6つ形成された長尺押し出し扁平バー材から、長さ132mmのヘッダーブロックを1つ切り出し、さらに実施例1および実施例2と同様に、純アルミニウムA1050:10.0mm厚×40mm幅の3穴押し出し扁平管から、長さ132mmのヘッダーブロックを1つ切り出した。これら2つのヘッダーブロックに対し、凹所21の切削加工、継手嵌合およびプラグ22の嵌合を、実施例2と同様に実施した。なお、吸熱側ヘッダーブロックについては、凹所21の切削加工は、図9の内側(冷媒管寄り)の冷媒通路Xを貫通し、かつ外側の冷媒通路Xに達するまで深く切削した。また、冷媒通路Xに直交する6個の冷媒通路も形成した。
【0059】
一方、純アルミニウムA1050:5.0mm厚×32mm幅で、6つの矩形状の冷媒通路Zが形成された長尺な押し出し扁平多穴管から、長さ117mmの冷媒管10個を切り出して得た。これら冷媒管の両端部を、各ヘッダーブロックの凹所21に嵌合した後、平行な扁平管間にアルミニウム製の薄板からなるコルゲートフィンを挿入して熱移動体の素材となるワークを組み立てた。次いで、実施例1と同様な手法で、ワークのろう付けおよび冷媒の充填を行い、熱移動体を得た。この熱移動体に対し、実施例2と同様の加熱冷却試験を行ったところ、熱輸送能力は実施例2と同等であった。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、吸熱側の熱伝導体に、放熱側の熱伝導体に向かって延び、かつ冷媒管に接触する熱伝導性を有するブロックを付加し、このブロックによって冷媒の循環作用を促進させる構成としたので、熱輸送能力に伴う冷却効果が、ボトムヒートモードやサイドヒートモードにおいては勿論のこと、トップヒートモードにおいても十分に発揮されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱移動体の斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る熱移動体の(a)一部断面正面図、(b)一部断面側面図である。
【図3】第1実施形態に係る冷媒管の一部斜視図である。
【図4】第1実施形態に係るヘッダーブロックの(a)一部断面側面図、(b)平面図、(c)端面図である。
【図5】(a)第1実施形態に係るヘッダーブロックへの冷媒管の接合構造を示す縦断面図、(b)同接合構造の変形例を示す縦断面図である。
【図6】(a)第1実施形態に係るブロックの斜視図、(b)ブロックの変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態の熱移動体の斜視図である。
【図8】第2実施形態の熱移動体の側面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の熱移動体の斜視図である。
【図10】第3実施形態の熱移動体の側面図である。
【符号の説明】
1,3…熱サイフォン型熱移動体
10…冷媒管
20(20A)…吸熱側ヘッダーブロック(吸熱側熱伝導体)
20(20B)…放熱側ヘッダーブロック(放熱側熱伝導体)
30…コルゲートフィン
40…ブロック
S…半導体素子(発熱源)
X…冷媒通路(X方向冷媒通路)
Y…冷媒通路(Y方向冷媒通路)
Z…冷媒通路(Z方向冷媒通路)
Claims (6)
- 冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、
前記各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、
前記冷媒管は、前記X方向および前記Y方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、前記各熱伝導体の前記X方向冷媒通路および前記Y方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、
さらに、前記一方の熱伝導体には、前記他方の熱伝導体に向かって延びる熱伝導性を有するブロックが付加され、かつ、このブロック内に前記冷媒管が接触する状態で貫通されていることを特徴とする熱サイフォン型熱移動体。 - 前記ブロックが付加された側の熱伝導体を上側に配して発熱源に密着させ、かつ、前記冷媒管を略鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配するトップヒートモードで使用されることを特徴とする請求項1に記載の熱サイフォン型熱移動体。
- 前記ブロックは、内部に封入された前記冷媒の上面よりも下方に延び、その冷媒とオーバーラップしていることを特徴とする請求項2に記載の熱サイフォン型熱移動体。
- 冷媒管の両端に熱伝導体が接合され、一方の熱伝導体が吸熱側、他方の熱伝導体が放熱側とされる熱サイフォン型熱移動体であって、
前記各熱伝導体は、互いに連通して冷媒をX方向およびY方向に流動させるX方向冷媒通路およびY方向冷媒通路を有し、
前記冷媒管は、前記X方向および前記Y方向に対して直交するZ方向に冷媒を流動させるとともに、前記各熱伝導体の前記X方向冷媒通路および前記Y方向冷媒通路のうちの少なくとも一方に連通するZ方向冷媒通路を有し、
さらに、前記一方の熱伝導体における前記Z方向の寸法が、前記他方の熱伝導体のそれよりも大きいことを特徴とする熱サイフォン型熱移動体。 - 前記Z方向の寸法が大きい側の前記熱伝導体を上側に配して発熱源に密着させ、かつ、前記冷媒管を略鉛直に立てて他方の熱伝導体を下側に配するトップヒートモードで使用されることを特徴とする請求項4に記載の熱サイフォン型熱移動体。
- 前記冷媒管にフィンが接合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱サイフォン型熱移動体。
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