JP2004020029A - 冷凍機の異常診断装置及び異常診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷凍機の不良原因や故障原因となった異常箇所を容易且つ正確に特定することが可能な異常診断装置及び異常診断方法を提供する。
【解決手段】スターリング冷凍機40を設置して駆動部32により駆動するとシリンダ3内をピストン1やディスプレーサ2から成る移動体が往復運動して冷凍サイクルが運転される。この時のスターリング冷凍機40の振動や騒音の大きさを振動計37及び騒音計38から成る異常検出部36で検出し、診断部39によって時間に対する変化を出力する。ユーザーは診断部33の出力に基づき異常発生の時期や周波数等から異常の原因を把握する。
【選択図】 図1
【解決手段】スターリング冷凍機40を設置して駆動部32により駆動するとシリンダ3内をピストン1やディスプレーサ2から成る移動体が往復運動して冷凍サイクルが運転される。この時のスターリング冷凍機40の振動や騒音の大きさを振動計37及び騒音計38から成る異常検出部36で検出し、診断部39によって時間に対する変化を出力する。ユーザーは診断部33の出力に基づき異常発生の時期や周波数等から異常の原因を把握する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スターリング冷凍機等の冷凍機の異常を診断する異常診断装置及び異常診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
逆スターリングサイクルにより極低温を生成するスターリング冷凍機等の冷凍機は、例えば特開平10−339510号公報に開示されている。同公報のスターリング冷凍機はいわゆるフリーピストン型になっており、シリンダに内嵌するピストン及びディスプレーサが軸方向に並設される。
【0003】
シリンダ内には作動ガスが封入され、リニアモータの駆動によってピストン及びディスプレーサが所定の位相差で往復運動する。これにより、逆スターリングサイクルが行われ、ピストンとディスプレーサとの間に形成される圧縮空間(ウォームドヘッド)では圧縮による熱を放熱する。再生器を介して圧縮空間と連通してピストンの先端に形成される膨張空間(コールドヘッド)では吸熱が行われる。その結果、コールドヘッド側の冷却が行われる。
【0004】
上記のスターリング冷凍機は金属製のケーシング内にコールドヘッド側の熱交換用フィン、再生器、ウオームヘッド側の熱交換用フィン、シリンダ、リニアモーター用ヨーク、ディスプレーサ、ピストン、リニアモータ用マグネット、ピストンスプリング、ディスプレーサスプリング等の各精密部品が順にシリンダと同軸上に嵌挿して組立てられる。
【0005】
従って、高性能のスターリング冷凍機を作製する為には、各部品は高い真円度や、数十μm以下の寸法公差及び嵌合精度が要求される。そして、組立てられたスターリング冷凍機は、ケーシング内に所定の圧力で作動ガスを充填して密閉されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のスターリング冷凍機は、所定の組立精度で組み立てられていないと異常騒音や異常振動等を発生して不良になる場合がある。また、運転中の不具合によって故障による異常騒音や異常振動が発生する場合がある。これらの不良や故障が発生すると、再発防止のために原因となる異常箇所を調査する必要がある。
【0007】
異常箇所を調査するには、密封されたケーシング内の作動ガスを抜いた後、ケーシングを切開して、各部が個々に分解及び検査される。このため、原因調査に多大な時間と労力を必要とする問題があった。更に、スターリング冷凍機を停止した状態で異常箇所を調査するため、各部の色や形状変化によって原因を推定するに過ぎず、運転中の動作不良の原因を正確に把握することが困難な問題もあった。
【0008】
本発明は、冷凍機の不良原因や故障原因となった異常箇所を容易且つ正確に特定することが可能な異常診断装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、移動体を内嵌したシリンダが密閉状態のハウジング内に配された冷凍機を駆動して前記移動体を往復運動させる駆動部と、駆動された冷凍機から発生する振動または騒音を検出する異常検出部と、前記異常検出部の検出結果を加工して出力する診断部とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、冷凍機を設置して駆動部により駆動するとシリンダ内をピストンやディスプレーサから成る移動体が往復運動して冷凍サイクルが運転される。この時の冷凍機の振動や騒音の大きさを異常検出部で検出し、振動や騒音のデータを診断部によって時間に対する変化や駆動電圧に対する変化等に加工して出力する。ユーザーは診断部の出力に基づき異常発生の時期や周波数等から異常の原因を把握する。
【0011】
また本発明は、振動または騒音の時間に対する変化を、前記駆動部による冷凍機の駆動電流または駆動電圧に同期して出力できるようにしたことを特徴としている。この構成によると、異常発生時のピストンやディスプレーサの位置を把握して異常原因を解析することができる。
【0012】
また、診断部により周波数解析を行うと異常な振動や騒音の周波数を把握でき、駆動部により可変される冷凍機の駆動電流または駆動電圧に対する振動または騒音の変化によって特定の入力に対する異常を把握できる。これにより、異常原因の判断材料を取得することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は一実施形態の冷凍機の異常診断装置の構成を示すブロック図である。異常診断装置31はスターリング冷凍機40等の冷凍機に接続して該冷凍機の異常を診断する。スターリング冷凍機40は図2に示すように構成されている。
【0014】
スターリング冷凍機40には、軸方向に分割された略円筒形状のシリンダ3が設けられ、シリンダ3に円柱形のピストン(移動体)1及びディスプレーサ(移動体)2が内嵌されている。ピストン1とディスプレーサ2とは圧縮空間9を介して同軸に配置されている。
【0015】
シリンダ3の先端にはディスプレーサ2との間に膨張空間10が設けられている。圧縮空間9と膨張空間10とはヘリウム等の作動媒体が流通する媒体流通路11により連通している。媒体流通路11内には、作動媒体の熱を蓄積するとともに蓄積した熱を作動媒体に供給する再生器12が配されている。シリンダ3の略中間には鍔部3aが突設されている。鍔部3aにはドーム状のハウジング4が取り付けられ、内部を密閉している。
【0016】
ピストン1は後端でピストンスプリング5と一体化され、ディスプレーサ2はピストン2の中心孔1aを貫通するロッド2aを介してディスプレーサスプリング6と一体化されている。ピストンスプリング5とディスプレーサスプリング6とはボルト22により連結されている。後述するように、ピストン1が往復運動するとディスプレーサ2はその慣性力によってピストン1に対して所定の位相差を有して往復運動を行うようになっている。
【0017】
シリンダ3の後部には内側ヨーク18が外嵌されている。内側ヨーク18には隙間19を介して外側ヨーク17が対峙している。外側ヨーク17には駆動用コイル16が内装され、隙間19には環状のマグネット15が移動可能に配されている。マグネット15はカップ状のスリーブ14を介してビストン1と一体化されている。これにより、駆動用コイル16に電圧を印加することによってピストン1を軸方向に移動させるリニアモータ13が構成されている。
【0018】
駆動用コイル16には、リード線20、21が接続されている。リード線20、21は、ハウジング4の壁面に設けられたハーメチックシール端子(不図示)を貫通し、リニアモータ13の駆動電源が供給されるようになっている。また、駆動用コイル16の駆動電圧及び駆動電流を取り出すことが可能な端子(不図示)が設けられている。
【0019】
上記構成のスターリング冷凍機40は、リニアモータ13によってピストン1が往復運動すると、ディスプレーサ2の慣性力によってピストン1に対して所定の位相差でディスプレーサ2が往復運動する。これにより、圧縮空間9と膨張空間10との間を作動媒体が移動して逆スターリングサイクルが行われる。即ち、作動媒体が圧縮されることによって高温側となる圧縮空間9で発生した熱は媒体流通路11を介して大気中へ放出され、更に作動媒体は再生器12に熱を蓄積して膨張空間10へ移動する。
【0020】
再生器12により冷却された作動媒体は低温側となる膨張空間10で膨張されることによって更に冷却される。そして、作動媒体が媒体流通路11を通じて圧縮空間9へ移動する際に再生器12に蓄えられた熱を奪って再生器12を冷却する。この動作を繰り返して冷凍が行われるようになっている。
【0021】
図1において、異常診断装置31は駆動部32、入力検出部33、異常検出部36及び診断部39から成っている。駆動部32はリード線20、21を介して駆動用コイル16に所望の駆動電圧を印加し、スターリング冷凍機40を駆動する。入力検出部33は電圧計34及び電流計35を有し、スターリング冷凍機40に設けられた端子(不図示)を介して駆動用コイル16の駆動電圧や駆動電流を検出可能になっている。
【0022】
異常検出部36は振動計37及び騒音計38を有している。振動計37は駆動用コイル16のハウジング4に接触するように配置され、ハウジング4の加速度の変化により振動を検出する。騒音計38はハウジング4から例えば0.15mm離れた所定位置に設置され、その位置の音圧により騒音を検出する。
【0023】
診断部39は、電圧計34、電流計35、振動計37及び騒音計38の検出値を取込んで、振動や騒音のデータを加工して時間に対する変化を駆動電流や駆動電圧と同期して出力することができる。また、駆動部32による駆動電圧を可変して、各駆動電圧時の振動や騒音をシリンダ1やディスプレーサ2の位相別に出力することができる。更に、診断部39は振動計37及び騒音計38の出力データをフーリエ変換法により周波数分解して出力できるようになっている。
【0024】
上記構成の異常診断装置31にスターリング冷凍機40が設置されると、駆動部31によりスターリング冷凍機40の駆動用コイル16に駆動電圧が印加される。駆動電圧及び駆動用コイル16を流れる駆動電流は電圧計34及び電流計35により検出され、診断部39に出力される。
【0025】
また、駆動電圧の印加によってピストン1及びディスプレーサ2が所定周期で往復運動する。ピストン1及びディスプレーサ2の往復運動に伴って発生する振動及び騒音は振動計37及び騒音計38により検出され、診断部39に出力される。診断部39はスターリング冷凍機40の振動のデータや騒音のデータを出力し、ユーザーは診断部39の出力から異常の発生箇所を把握することができる。
【0026】
本実施形態によると、スターリング冷凍機40の振動や騒音の時間に対する変化が診断部により出力されるので、経験に基づいて異常の発生形態を把握することができる。例えば、周期的に振動や騒音が発生している場合は、シリンダ1やディスプレーサ2が特定の位置に配されたときに異常が発生していることがわかる。また、継続して一様に振動や騒音が発生している場合は、ネジの取付不良等の原因を把握することができる。これにより、不良原因や故障原因の箇所を容易に判断することができ、組立工程及び設計にフィードバックしてスターリング冷凍機40の信頼性向上を図ることができる。
【0027】
また、駆動電流や駆動電圧の時間に対する変化を、振動または騒音に同期して出力することによって、振動や騒音が発生するシリンダ1及びディスプレーサ2の位置を容易に把握することができる。
【0028】
また、駆動電圧を駆動部32により可変して、駆動電流や駆動電圧に応じた振動または騒音の変化を診断部39によってシリンダ1及びディスプレーサ2の位相別に出力することにより、振動や騒音が発生するシリンダ1及びディスプレーサ2の位置を容易に把握することができるとともに、振動や騒音の駆動電圧または駆動電流に対する変化を把握することができる。更に、診断部31により振動や騒音を周波数分解して出力することによって、高調波の発生から経験に基づいて異常箇所を判別することができる。
【0029】
尚、異常診断装置31はスターリング冷凍機40の異常診断に限られず、パルス管冷凍機やGM冷凍機等のシリンダ内をピストン等の移動体が往復運動する冷凍機であれば同様の構成によって同様の効果を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。図3、図4、図5はそれぞれ第1、第2、第3実施例の診断部39による出力結果を示している。これらの図において、横軸は時間(単位:sec)である。(a)の縦軸は電流計により検出されたスターリング冷凍機40の駆動電流(単位:A)である。(b)の縦軸は騒音計により検出された音圧である。(c)の縦軸は振動計により検出された振動レベルを加速度により表わしている。
【0031】
また、図中、Tは駆動電流の周期を示しており、Pin、Poutはそれぞれ膨張空間側及び圧縮空間側のピストン1の死点位置を示すとともに、Din、Doutはそれぞれ膨張空間側及び圧縮空間側のディスプレーサ2の死点位置を示している。
【0032】
第1実施例の検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧57.7V、駆動電流0.7Aで1000時間運転を行った際に冷凍能力の低下、異常騒音及び異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。
【0033】
図3は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧57.7V、駆動電流0.7Aで駆動した結果を示している。図3(c)によると、ピストン1が圧縮空間側の死点位置Pinに配されたときに振動がスパイク状に立ち上がっていることが分かる。
【0034】
これにより、シリンダ1の軸ずれによって死点位置Pinでシリンダ3とピストン1とが摩擦していると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、シリンダ3の先端部の内壁に摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0035】
第2実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧78.6V、駆動電流1.034Aで500時間運転を行った際に冷凍能力の変動及び異常騒音が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは117.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは74.7゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が10μm、騒音レベルが49dBであった。
【0036】
図4は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧78.6V、駆動電流1.034Aで駆動した結果を示している。この時の振動振幅は11.32μm、騒音レベルが56.9dBになっており、全体的な振動の増加はないが騒音が増加していることがわかった。また、図4(c)によると、ディスプレーサ2が両死点に配された最大振幅時にスパイク状のピーク波形が形成されていることが分かる。
【0037】
これにより、ディスプレーサ2の軸ずれによって死点位置Din、Doutでシリンダ3とディスプレーサ2とが摩擦していると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ディスプレーサ2の両端で摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0038】
次に、第3実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.0Hz、駆動電圧88.3V、駆動電流1.189Aで50時間運転を行った際に冷凍能力の変動及び異常騒音が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が12.6μm、騒音レベルが50dBであった。
【0039】
図5は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧88.3V、駆動電流1.189Aで駆動した結果を示している。この時の振動振幅は14.9μm、騒音レベルが58.2dBになっており、振動振幅の大きな変化はないがことがわかった。また、図5(b)、(c)によると、時間軸全体に亙って騒音及び振動が変動していることが分かる。
【0040】
このため、シリンダ1またはディスプレーサ2の取付けネジの緩みが生じていると考えられる。経験からシリンダ1の取付けネジの緩みによる冷凍能力の変動は小さいため、冷凍能力の変動が大きいことを考慮すると、ディスプレーサ2の往復運動により微細振動が発生し、ディスプレーサ2の取付けネジの緩みが生じていると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ディスプレーサ2の両端で摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0041】
次に、図6は第4実施例の異常診断装置31の出力結果を示している。本実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧54.0V、駆動電流0.557Aで2000時間運転を行った際に異常騒音及び異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。
【0042】
ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が4.6μm、騒音レベルが47dBであった。
【0043】
図6は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動周波数75.1Hzで駆動電圧を0V〜75Vの間で可変して駆動した結果を示している。縦軸は振動の振幅(単位:μm)を示し、横軸は駆動電圧(単位:V)を示している。
【0044】
駆動電圧が54V付近の時にピストン1が膨張空間側の死点位置Pinに配されると振動振幅が増加している。駆動電圧が増加するとピストン1及びディスプレーサ2のストロークは大きくなり、駆動電圧が減少するとピストン1及びディスプレーサ2のストロークは小さくなる。このため、駆動電圧54Vに対応するストロークの端部でピストン1の反転時に軸ずれが生じ、ピストン1とシリンダ3とが接触していると推察される。
【0045】
実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、駆動電圧54V時のピストン1の振幅である4mmの位置のシリンダ3内壁に異物が付着しているのが発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0046】
次に、図7、図8は第5実施例の異常診断装置31の出力結果を示している。本実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.0Hz、駆動電圧63.7V、駆動電流0.5Aで1000時間運転を行った際に冷凍能力の低下と異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。
【0047】
ピストン1の入力電流に対する位相遅れは115゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは66゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が5μm、騒音レベルが45dBであった。
【0048】
図7、図8は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧63.7V、駆動電流0.5Aで駆動した結果の周波数分解を示している。図7、図8の横軸は周波数(単位:Hz)を示し、縦軸はそれぞれ加速度により表わされる振動レベル及び音圧(dB表示)による騒音レベルを示している。
【0049】
この時の振動振幅は7μm、騒音レベルが48dBになっており、異常が発生していることが確認され、振動レベル及び騒音レベルは2.2kHz及び3.7kHz付近でピークを有する高調波が確認された。経験から高調波が確認される場合はネジの緩みが発生していると推察される。
【0050】
実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ピストンスプリング5の固定ネジが緩んでいることが確認された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によると、駆動部により駆動された冷凍機の振動または騒音を異常検出部により検出して振動や騒音の時間に対する変化が診断部により出力されるので、経験に基づいて異常の発生形態を把握することができる。これにより、不良原因や故障原因の箇所を容易に判断することができ、組立工程及び設計にフィードバックして冷凍機の信頼性向上を図ることができる。
【0052】
また、駆動電圧または駆動電流に同期して振動または騒音を出力するので異常発生する移動体の位置を捉えて異常箇所を容易に判別することができる。駆動電流または駆動電圧に応じた振動または騒音の変化を移動体の位相別に出力することや、振動または騒音を周波数分解して出力することによって異常原因を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の実施形態の異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、スターリング冷凍機の構成を説明する側面断面図である。
【図3】は、本発明の第1実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図4】は、本発明の第2実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図5】は、本発明の第3実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図6】は、本発明の第4実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図7】は、本発明の第5実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図8】は、本発明の第5実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ディスプレーサ
3 シリンダ
4 耐圧容器
5 ピストンスプリング
6 ディスプレーサスプリング
9 圧縮空間
10 膨張空間
12 再生器
13 リニアモータ
14 スリーブ
15 マグネット
16 駆動用コイル
17 内側ヨーク
18 外側ヨーク
20、21 リード線
31 異常診断装置
32 駆動部
33 入力検出部
34 電圧計
35 電流計
36 異常検出部
37 振動計
38 騒音計
39 診断部
40 スターリング冷凍機
【発明の属する技術分野】
本発明は、スターリング冷凍機等の冷凍機の異常を診断する異常診断装置及び異常診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
逆スターリングサイクルにより極低温を生成するスターリング冷凍機等の冷凍機は、例えば特開平10−339510号公報に開示されている。同公報のスターリング冷凍機はいわゆるフリーピストン型になっており、シリンダに内嵌するピストン及びディスプレーサが軸方向に並設される。
【0003】
シリンダ内には作動ガスが封入され、リニアモータの駆動によってピストン及びディスプレーサが所定の位相差で往復運動する。これにより、逆スターリングサイクルが行われ、ピストンとディスプレーサとの間に形成される圧縮空間(ウォームドヘッド)では圧縮による熱を放熱する。再生器を介して圧縮空間と連通してピストンの先端に形成される膨張空間(コールドヘッド)では吸熱が行われる。その結果、コールドヘッド側の冷却が行われる。
【0004】
上記のスターリング冷凍機は金属製のケーシング内にコールドヘッド側の熱交換用フィン、再生器、ウオームヘッド側の熱交換用フィン、シリンダ、リニアモーター用ヨーク、ディスプレーサ、ピストン、リニアモータ用マグネット、ピストンスプリング、ディスプレーサスプリング等の各精密部品が順にシリンダと同軸上に嵌挿して組立てられる。
【0005】
従って、高性能のスターリング冷凍機を作製する為には、各部品は高い真円度や、数十μm以下の寸法公差及び嵌合精度が要求される。そして、組立てられたスターリング冷凍機は、ケーシング内に所定の圧力で作動ガスを充填して密閉されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のスターリング冷凍機は、所定の組立精度で組み立てられていないと異常騒音や異常振動等を発生して不良になる場合がある。また、運転中の不具合によって故障による異常騒音や異常振動が発生する場合がある。これらの不良や故障が発生すると、再発防止のために原因となる異常箇所を調査する必要がある。
【0007】
異常箇所を調査するには、密封されたケーシング内の作動ガスを抜いた後、ケーシングを切開して、各部が個々に分解及び検査される。このため、原因調査に多大な時間と労力を必要とする問題があった。更に、スターリング冷凍機を停止した状態で異常箇所を調査するため、各部の色や形状変化によって原因を推定するに過ぎず、運転中の動作不良の原因を正確に把握することが困難な問題もあった。
【0008】
本発明は、冷凍機の不良原因や故障原因となった異常箇所を容易且つ正確に特定することが可能な異常診断装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、移動体を内嵌したシリンダが密閉状態のハウジング内に配された冷凍機を駆動して前記移動体を往復運動させる駆動部と、駆動された冷凍機から発生する振動または騒音を検出する異常検出部と、前記異常検出部の検出結果を加工して出力する診断部とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この構成によると、冷凍機を設置して駆動部により駆動するとシリンダ内をピストンやディスプレーサから成る移動体が往復運動して冷凍サイクルが運転される。この時の冷凍機の振動や騒音の大きさを異常検出部で検出し、振動や騒音のデータを診断部によって時間に対する変化や駆動電圧に対する変化等に加工して出力する。ユーザーは診断部の出力に基づき異常発生の時期や周波数等から異常の原因を把握する。
【0011】
また本発明は、振動または騒音の時間に対する変化を、前記駆動部による冷凍機の駆動電流または駆動電圧に同期して出力できるようにしたことを特徴としている。この構成によると、異常発生時のピストンやディスプレーサの位置を把握して異常原因を解析することができる。
【0012】
また、診断部により周波数解析を行うと異常な振動や騒音の周波数を把握でき、駆動部により可変される冷凍機の駆動電流または駆動電圧に対する振動または騒音の変化によって特定の入力に対する異常を把握できる。これにより、異常原因の判断材料を取得することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は一実施形態の冷凍機の異常診断装置の構成を示すブロック図である。異常診断装置31はスターリング冷凍機40等の冷凍機に接続して該冷凍機の異常を診断する。スターリング冷凍機40は図2に示すように構成されている。
【0014】
スターリング冷凍機40には、軸方向に分割された略円筒形状のシリンダ3が設けられ、シリンダ3に円柱形のピストン(移動体)1及びディスプレーサ(移動体)2が内嵌されている。ピストン1とディスプレーサ2とは圧縮空間9を介して同軸に配置されている。
【0015】
シリンダ3の先端にはディスプレーサ2との間に膨張空間10が設けられている。圧縮空間9と膨張空間10とはヘリウム等の作動媒体が流通する媒体流通路11により連通している。媒体流通路11内には、作動媒体の熱を蓄積するとともに蓄積した熱を作動媒体に供給する再生器12が配されている。シリンダ3の略中間には鍔部3aが突設されている。鍔部3aにはドーム状のハウジング4が取り付けられ、内部を密閉している。
【0016】
ピストン1は後端でピストンスプリング5と一体化され、ディスプレーサ2はピストン2の中心孔1aを貫通するロッド2aを介してディスプレーサスプリング6と一体化されている。ピストンスプリング5とディスプレーサスプリング6とはボルト22により連結されている。後述するように、ピストン1が往復運動するとディスプレーサ2はその慣性力によってピストン1に対して所定の位相差を有して往復運動を行うようになっている。
【0017】
シリンダ3の後部には内側ヨーク18が外嵌されている。内側ヨーク18には隙間19を介して外側ヨーク17が対峙している。外側ヨーク17には駆動用コイル16が内装され、隙間19には環状のマグネット15が移動可能に配されている。マグネット15はカップ状のスリーブ14を介してビストン1と一体化されている。これにより、駆動用コイル16に電圧を印加することによってピストン1を軸方向に移動させるリニアモータ13が構成されている。
【0018】
駆動用コイル16には、リード線20、21が接続されている。リード線20、21は、ハウジング4の壁面に設けられたハーメチックシール端子(不図示)を貫通し、リニアモータ13の駆動電源が供給されるようになっている。また、駆動用コイル16の駆動電圧及び駆動電流を取り出すことが可能な端子(不図示)が設けられている。
【0019】
上記構成のスターリング冷凍機40は、リニアモータ13によってピストン1が往復運動すると、ディスプレーサ2の慣性力によってピストン1に対して所定の位相差でディスプレーサ2が往復運動する。これにより、圧縮空間9と膨張空間10との間を作動媒体が移動して逆スターリングサイクルが行われる。即ち、作動媒体が圧縮されることによって高温側となる圧縮空間9で発生した熱は媒体流通路11を介して大気中へ放出され、更に作動媒体は再生器12に熱を蓄積して膨張空間10へ移動する。
【0020】
再生器12により冷却された作動媒体は低温側となる膨張空間10で膨張されることによって更に冷却される。そして、作動媒体が媒体流通路11を通じて圧縮空間9へ移動する際に再生器12に蓄えられた熱を奪って再生器12を冷却する。この動作を繰り返して冷凍が行われるようになっている。
【0021】
図1において、異常診断装置31は駆動部32、入力検出部33、異常検出部36及び診断部39から成っている。駆動部32はリード線20、21を介して駆動用コイル16に所望の駆動電圧を印加し、スターリング冷凍機40を駆動する。入力検出部33は電圧計34及び電流計35を有し、スターリング冷凍機40に設けられた端子(不図示)を介して駆動用コイル16の駆動電圧や駆動電流を検出可能になっている。
【0022】
異常検出部36は振動計37及び騒音計38を有している。振動計37は駆動用コイル16のハウジング4に接触するように配置され、ハウジング4の加速度の変化により振動を検出する。騒音計38はハウジング4から例えば0.15mm離れた所定位置に設置され、その位置の音圧により騒音を検出する。
【0023】
診断部39は、電圧計34、電流計35、振動計37及び騒音計38の検出値を取込んで、振動や騒音のデータを加工して時間に対する変化を駆動電流や駆動電圧と同期して出力することができる。また、駆動部32による駆動電圧を可変して、各駆動電圧時の振動や騒音をシリンダ1やディスプレーサ2の位相別に出力することができる。更に、診断部39は振動計37及び騒音計38の出力データをフーリエ変換法により周波数分解して出力できるようになっている。
【0024】
上記構成の異常診断装置31にスターリング冷凍機40が設置されると、駆動部31によりスターリング冷凍機40の駆動用コイル16に駆動電圧が印加される。駆動電圧及び駆動用コイル16を流れる駆動電流は電圧計34及び電流計35により検出され、診断部39に出力される。
【0025】
また、駆動電圧の印加によってピストン1及びディスプレーサ2が所定周期で往復運動する。ピストン1及びディスプレーサ2の往復運動に伴って発生する振動及び騒音は振動計37及び騒音計38により検出され、診断部39に出力される。診断部39はスターリング冷凍機40の振動のデータや騒音のデータを出力し、ユーザーは診断部39の出力から異常の発生箇所を把握することができる。
【0026】
本実施形態によると、スターリング冷凍機40の振動や騒音の時間に対する変化が診断部により出力されるので、経験に基づいて異常の発生形態を把握することができる。例えば、周期的に振動や騒音が発生している場合は、シリンダ1やディスプレーサ2が特定の位置に配されたときに異常が発生していることがわかる。また、継続して一様に振動や騒音が発生している場合は、ネジの取付不良等の原因を把握することができる。これにより、不良原因や故障原因の箇所を容易に判断することができ、組立工程及び設計にフィードバックしてスターリング冷凍機40の信頼性向上を図ることができる。
【0027】
また、駆動電流や駆動電圧の時間に対する変化を、振動または騒音に同期して出力することによって、振動や騒音が発生するシリンダ1及びディスプレーサ2の位置を容易に把握することができる。
【0028】
また、駆動電圧を駆動部32により可変して、駆動電流や駆動電圧に応じた振動または騒音の変化を診断部39によってシリンダ1及びディスプレーサ2の位相別に出力することにより、振動や騒音が発生するシリンダ1及びディスプレーサ2の位置を容易に把握することができるとともに、振動や騒音の駆動電圧または駆動電流に対する変化を把握することができる。更に、診断部31により振動や騒音を周波数分解して出力することによって、高調波の発生から経験に基づいて異常箇所を判別することができる。
【0029】
尚、異常診断装置31はスターリング冷凍機40の異常診断に限られず、パルス管冷凍機やGM冷凍機等のシリンダ内をピストン等の移動体が往復運動する冷凍機であれば同様の構成によって同様の効果を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。図3、図4、図5はそれぞれ第1、第2、第3実施例の診断部39による出力結果を示している。これらの図において、横軸は時間(単位:sec)である。(a)の縦軸は電流計により検出されたスターリング冷凍機40の駆動電流(単位:A)である。(b)の縦軸は騒音計により検出された音圧である。(c)の縦軸は振動計により検出された振動レベルを加速度により表わしている。
【0031】
また、図中、Tは駆動電流の周期を示しており、Pin、Poutはそれぞれ膨張空間側及び圧縮空間側のピストン1の死点位置を示すとともに、Din、Doutはそれぞれ膨張空間側及び圧縮空間側のディスプレーサ2の死点位置を示している。
【0032】
第1実施例の検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧57.7V、駆動電流0.7Aで1000時間運転を行った際に冷凍能力の低下、異常騒音及び異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。
【0033】
図3は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧57.7V、駆動電流0.7Aで駆動した結果を示している。図3(c)によると、ピストン1が圧縮空間側の死点位置Pinに配されたときに振動がスパイク状に立ち上がっていることが分かる。
【0034】
これにより、シリンダ1の軸ずれによって死点位置Pinでシリンダ3とピストン1とが摩擦していると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、シリンダ3の先端部の内壁に摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0035】
第2実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧78.6V、駆動電流1.034Aで500時間運転を行った際に冷凍能力の変動及び異常騒音が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは117.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは74.7゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が10μm、騒音レベルが49dBであった。
【0036】
図4は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧78.6V、駆動電流1.034Aで駆動した結果を示している。この時の振動振幅は11.32μm、騒音レベルが56.9dBになっており、全体的な振動の増加はないが騒音が増加していることがわかった。また、図4(c)によると、ディスプレーサ2が両死点に配された最大振幅時にスパイク状のピーク波形が形成されていることが分かる。
【0037】
これにより、ディスプレーサ2の軸ずれによって死点位置Din、Doutでシリンダ3とディスプレーサ2とが摩擦していると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ディスプレーサ2の両端で摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0038】
次に、第3実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.0Hz、駆動電圧88.3V、駆動電流1.189Aで50時間運転を行った際に冷凍能力の変動及び異常騒音が発生したスターリング冷凍機40を用いている。ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が12.6μm、騒音レベルが50dBであった。
【0039】
図5は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧88.3V、駆動電流1.189Aで駆動した結果を示している。この時の振動振幅は14.9μm、騒音レベルが58.2dBになっており、振動振幅の大きな変化はないがことがわかった。また、図5(b)、(c)によると、時間軸全体に亙って騒音及び振動が変動していることが分かる。
【0040】
このため、シリンダ1またはディスプレーサ2の取付けネジの緩みが生じていると考えられる。経験からシリンダ1の取付けネジの緩みによる冷凍能力の変動は小さいため、冷凍能力の変動が大きいことを考慮すると、ディスプレーサ2の往復運動により微細振動が発生し、ディスプレーサ2の取付けネジの緩みが生じていると推察することができる。実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ディスプレーサ2の両端で摺動痕が発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0041】
次に、図6は第4実施例の異常診断装置31の出力結果を示している。本実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.1Hz、駆動電圧54.0V、駆動電流0.557Aで2000時間運転を行った際に異常騒音及び異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。
【0042】
ピストン1の入力電流に対する位相遅れは111.4゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは64.9゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が4.6μm、騒音レベルが47dBであった。
【0043】
図6は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動周波数75.1Hzで駆動電圧を0V〜75Vの間で可変して駆動した結果を示している。縦軸は振動の振幅(単位:μm)を示し、横軸は駆動電圧(単位:V)を示している。
【0044】
駆動電圧が54V付近の時にピストン1が膨張空間側の死点位置Pinに配されると振動振幅が増加している。駆動電圧が増加するとピストン1及びディスプレーサ2のストロークは大きくなり、駆動電圧が減少するとピストン1及びディスプレーサ2のストロークは小さくなる。このため、駆動電圧54Vに対応するストロークの端部でピストン1の反転時に軸ずれが生じ、ピストン1とシリンダ3とが接触していると推察される。
【0045】
実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、駆動電圧54V時のピストン1の振幅である4mmの位置のシリンダ3内壁に異物が付着しているのが発見された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0046】
次に、図7、図8は第5実施例の異常診断装置31の出力結果を示している。本実施例は検証サンプルとして、駆動周波数75.0Hz、駆動電圧63.7V、駆動電流0.5Aで1000時間運転を行った際に冷凍能力の低下と異常振動が発生したスターリング冷凍機40を用いている。
【0047】
ピストン1の入力電流に対する位相遅れは115゜、ピストン1のディスプレーサ2に対する位相遅れは66゜である。また、異常発生前の状態を異常診断装置31により測定した結果、駆動電流に同期した周期的な振動及び騒音を発生しており、振動振幅が5μm、騒音レベルが45dBであった。
【0048】
図7、図8は上記のスターリング冷凍機40を異常診断装置31に設置し、駆動部32により駆動電圧63.7V、駆動電流0.5Aで駆動した結果の周波数分解を示している。図7、図8の横軸は周波数(単位:Hz)を示し、縦軸はそれぞれ加速度により表わされる振動レベル及び音圧(dB表示)による騒音レベルを示している。
【0049】
この時の振動振幅は7μm、騒音レベルが48dBになっており、異常が発生していることが確認され、振動レベル及び騒音レベルは2.2kHz及び3.7kHz付近でピークを有する高調波が確認された。経験から高調波が確認される場合はネジの緩みが発生していると推察される。
【0050】
実際にスターリング冷凍機40を分解して調査したところ、ピストンスプリング5の固定ネジが緩んでいることが確認された。従って、異常診断装置31によってスターリング冷凍機40の異常箇所を容易且つ正確に診断することができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によると、駆動部により駆動された冷凍機の振動または騒音を異常検出部により検出して振動や騒音の時間に対する変化が診断部により出力されるので、経験に基づいて異常の発生形態を把握することができる。これにより、不良原因や故障原因の箇所を容易に判断することができ、組立工程及び設計にフィードバックして冷凍機の信頼性向上を図ることができる。
【0052】
また、駆動電圧または駆動電流に同期して振動または騒音を出力するので異常発生する移動体の位置を捉えて異常箇所を容易に判別することができる。駆動電流または駆動電圧に応じた振動または騒音の変化を移動体の位相別に出力することや、振動または騒音を周波数分解して出力することによって異常原因を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の実施形態の異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】は、スターリング冷凍機の構成を説明する側面断面図である。
【図3】は、本発明の第1実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図4】は、本発明の第2実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図5】は、本発明の第3実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図6】は、本発明の第4実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図7】は、本発明の第5実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【図8】は、本発明の第5実施例の診断部による出力結果を示す図である。
【符号の説明】
1 ピストン
2 ディスプレーサ
3 シリンダ
4 耐圧容器
5 ピストンスプリング
6 ディスプレーサスプリング
9 圧縮空間
10 膨張空間
12 再生器
13 リニアモータ
14 スリーブ
15 マグネット
16 駆動用コイル
17 内側ヨーク
18 外側ヨーク
20、21 リード線
31 異常診断装置
32 駆動部
33 入力検出部
34 電圧計
35 電流計
36 異常検出部
37 振動計
38 騒音計
39 診断部
40 スターリング冷凍機
Claims (5)
- 移動体を内嵌したシリンダが密閉状態のハウジング内に配された冷凍機を駆動して前記移動体を往復運動させる駆動部と、駆動された冷凍機から発生する振動または騒音を検出する異常検出部と、前記異常検出部の検出結果を加工して出力する診断部とを備えたことを特徴とする冷凍機の異常診断装置。
- 振動または騒音の時間に対する変化を、前記駆動部による冷凍機の駆動電流または駆動電圧に同期して出力できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍機の異常診断装置。
- 前記駆動部により冷凍機の駆動電流または駆動電圧を所望の値に可変して、それに応じた振動または騒音の変化を前記移動体の位相別に前記診断部により出力できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍機の異常診断装置。
- 前記診断部によって、振動または騒音を周波数分解したことを特徴とする請求項1に記載の冷凍機の異常診断装置。
- 移動体を内嵌したシリンダが密閉状態のハウジング内に配された冷凍機を駆動して前記移動体を往復運動させる駆動部と、駆動された冷凍機から発生する振動または騒音を検出する異常検出部と、前記異常検出部の検出結果を加工して出力する診断部とを備え、前記診断部の出力に基づいて冷凍機の異常原因を判別することを特徴とする冷凍機の異常診断方法。
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