JP2004019489A - リニア圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】構成の複雑化を招くことなく、リニアモータ部の駆動コイルの発生熱を効果的、且つ効率的に吸熱して、リニアモータ部の過熱を確実に抑制できる構成を備えたリニア圧縮機を提供する。
【解決手段】シリンダ2、ピストン3およびばね部材4,7を備えた圧縮機構と、シリンダ2に連結されたモータ固定部9およびピストンに対し連結されて往復駆動力を与えるモータ可動部10とを備えたリニアモータ部8とを有する。モータ可動部10を、モータ固定部9の往復用通路11内にモータ固定部9に対し微小隙間41,42を存して往復動可能に配置する。往復用通路11におけるモータ可動部10の一端部側の通路端部空間40を、冷媒ガスRを圧縮室12に導くシリンダ2またはモータ固定部9の吸入通路19に連通する。モータ固定部9またはモータ可動部10に、微小隙間42に対面する配置で駆動コイル31を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】シリンダ2、ピストン3およびばね部材4,7を備えた圧縮機構と、シリンダ2に連結されたモータ固定部9およびピストンに対し連結されて往復駆動力を与えるモータ可動部10とを備えたリニアモータ部8とを有する。モータ可動部10を、モータ固定部9の往復用通路11内にモータ固定部9に対し微小隙間41,42を存して往復動可能に配置する。往復用通路11におけるモータ可動部10の一端部側の通路端部空間40を、冷媒ガスRを圧縮室12に導くシリンダ2またはモータ固定部9の吸入通路19に連通する。モータ固定部9またはモータ可動部10に、微小隙間42に対面する配置で駆動コイル31を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、冷凍サイクルなどの圧縮機として使用されるもので、圧縮機構のシリンダ内に摺動自在に嵌合されたピストンを駆動源のリニアモータ部によって往復運動させることにより、冷媒ガスを吸入、圧縮および吐出するリニア圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷凍サイクルに使用される冷媒ガスのうち、R22に代表されるHCFC系冷媒ガスは、その物性の安定性からオゾン層を破壊すると言われている。また、近年では、HCFC系冷媒ガスの代替冷媒ガスとして、HFC系冷媒ガスが利用されているが、このHFC系冷媒ガスは温暖化現象を促進する性質を有している。
そのため、最近では、オゾン層の破壊や温暖化現象に大きな影響を与えないHC系冷媒ガスやCO2 系冷媒ガスなどの自然冷媒ガスが採用され始めている。
【0003】
しかし、上記HC系冷媒ガスは、可燃性を有することから、爆発や発火を防止することが安全性確保の面から不可欠であるため、HC系冷媒ガスの使用量は可及的に少なくすることが要望される。さらに、HC系冷媒ガスは、塩素を含まないことから、これ自体として潤滑性がなく、且つオイルに溶け込み易い性質を有している。以上のことから、オイルレスまたはオイルプアの形式の圧縮機はHC系冷媒の使用量を低減できるので、優位となる。これに対して、リニア圧縮機は、ピストンの軸線と直交する方向への荷重が小さく、摺動面圧が小さいので、従来から多く利用されてきたレシプロ式圧縮機、ロータリ式圧縮機およびスクロール式圧縮機などの他方式の圧縮機と比較すると、上述のオイルレス化を図りやすいタイプの圧縮機であるといえる。また、リニア圧縮機のピストン可動部はモータに印加されるモータ推力と運転圧力条件によってピストン位置が自由に決まるフリーピストンストロークとなる圧縮機としても知られている。
【0004】
一方、CO2 系冷媒ガスは、可燃性のHC系冷媒ガスとは異なり、不燃性であることから、近年において、特に車載用空調機に用いる冷媒ガスとして開発が盛んに行われいる。このCO2 系冷媒ガスは、その特性から、高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルとして知られている。リニア圧縮機は、上述したように、運転条件に対応したピストンストロークとなるため、高差圧起動時においても、駆動し易く、応答性に優れるため、カーエアコンの窓ガラスなどの曇り除去等に求められる高速立ち上げや瞬時起動といったハイレスパンス性に優位となる。
【0005】
従来のリニア圧縮機としては、リニアモータ部が直接的に圧縮機構のピストンを往復駆動させるダイレクトドライブ方式のものが知られている(例えば、特開平9−88817号公報および特開9−112416号公報参照)。このリニア圧縮機では、リニアモータ部が圧縮機構のシリンダの外周部を取り囲むように配置されて、シリンダの外周面にリニアモータ部の駆動コイルが設けられた構成になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来において提案されている上述したリニア圧縮機では、高負荷運転時におけるリニアモータ部の冷却が信頼性面で大きな課題となる。すなわち、これのリニア圧縮機は、駆動コイルがシリンダの外周面を取り囲む配置で設けられ、この駆動コイルの外周面側がマグネットやヨークで取り囲まれた構成になっているため、リニアモータ部の特に駆動コイルの発生熱が放熱されにくい。また、上記リニア圧縮機は、低振動を図るために、圧縮機構を密閉容器の内部で弾性的に懸架して振動を抑制する構造になっているので、圧縮機構から密閉容器への熱の伝播の大部分は、密閉容器内の冷媒ガスを経由するので、リニアモータ部は、放熱が円滑に行われないことから、過熱されてしまい、駆動コイルの信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、上記リニア圧縮機では、ピストンの往復運動に伴い開閉動作して圧縮室に冷媒ガスを導き入れる吸入バルブが閉じる際にバルブ板などに当接して、そのときの打音による騒音が比較的大きいという別の課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたもので、構成の複雑化を招くことなく、リニアモータ部の駆動コイルの発生熱を効果的、且つ効率的に吸熱して、リニアモータ部の過熱を確実に抑制できる信頼性の高い構成を備えたリニア圧縮機を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るリニア圧縮機は、容器内に支持されたシリンダと、このシリンダにその軸線方向に沿って摺動自在に支持されて、往復動することによって圧縮室の冷媒ガスを圧縮するピストンと、このピストンに対し軸線方向の力を付与して往復動可能に保持するばね部材とを備えた圧縮機構と、前記シリンダに連結されたモータ固定部および前記ピストンに対し連結されて往復駆動力を与えるモータ可動部とを備えたリニアモータ部とを有し、前記モータ可動部が、前記モータ固定部に形成された往復用通路内に前記モータ固定部に対し微小隙間を存して往復動可能に配置され、前記往復用通路における前記モータ可動部の一端部側に形成される通路端部空間が、前記シリンダまたは前記モータ固定部に形成されて冷媒ガスを前記圧縮室に導く吸入通路に連通され、前記モータ固定部または前記モータ可動部に、前記微小隙間に対面する配置で駆動コイルが設けられていることを特徴としている。
【0010】
このリニア圧縮機では、モータ可動部の往復運動に伴って容積が変化する通路端部空間の容積が拡大したときに、吸入通路から圧縮室に供給される冷媒ガスの一部が通路端部空間内に強制的に吸い込まれる。さらに、駆動コイルに対峙する配置でモータ可動部またはモータ固定部に設けられる永久磁石の外周面には、モータ可動部の往復運動によって動圧が発生することにより、永久磁石の外周面側の圧力が吸入通路の吸入圧力よりも低くなるので、通路端部空間内に導入された冷媒ガスが、永久磁石の外周面とこれに対峙する配置で駆動コイルが設けられたモータ可動部またはモータ固定部との間の微小空間内に強制的に吸い込まれながら駆動コイルに供給されることになる。この冷媒ガスは、比較的低温であることから、駆動コイルの発生熱を効果的に吸熱する。したがって、このリニア圧縮機では、吸入通路と通路端部空間とを連通するだけの簡単な構成を設けるだけで、駆動コイルが過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。
【0011】
上記発明において、往復用通路内に配置されたモータ可動部の両側面とモータ固定部との各間にそれぞれ形成される二つの微小隙間のうち、駆動コイルが対面する一方が他方よりも広く設定されていることが好ましい。この構成によれば、永久磁石と駆動コイルとが対峙する微小隙間を通って駆動コイルに供給される冷媒ガスの導入量の増大を図ることができるから、駆動コイルの発生熱を冷媒ガスで一層効率的に吸熱することができ、リニアモータ部の信頼性を一層高めることができる。
【0012】
上記発明において、シリンダに、吸入通路に連通する分岐路が形成され、前記シリンダに重合状態に固着されたバルブ板に、前記分岐路に連通する導入路が形成され、圧縮室に冷媒ガスを入出させるヘッドカバー部に、前記分岐路および前記導入路を通って冷媒ガスが導入される低圧室と、前記圧縮室から冷媒ガスを導き入れる高圧室とが設けられ、前記バルブ板における前記低圧室から前記圧縮室に至る通路を開閉する吸入バルブが設けられている構成とすることが好ましい。
【0013】
この構成よれば、低圧室が吸入マフラと同等に機能し、低圧室からの低減された放射音をさらに通路端部間にて吸音することができるので、、ピストンの往復運動に伴い開閉される吸入バルブがバルブ板に当たって閉じる際の打音を低減させ、格段の低騒音化を図ることができる。しかも、ヘッドカバー部を低圧室と高圧室を有する一体部品とする場合、低圧室は、別部品を用いて設ける必要がなく、ヘッドカバー部の内部空間の一部を利用して形成できるので、大型化やコストアップを招くことがない。
【0014】
上記発明のリニア圧縮機に用いる冷媒ガスとして、HC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスの何れかが好ましい。HC系冷媒ガスの場合、冷媒の使用量を可及的に少なくする必要があるが、その少ない使用量の冷媒ガスの一部を駆動コイルに有効に供給することができるから、駆動コイルの発生熱を効率良く吸熱でき、リニアモータ部の信頼性をさらに高めることができる。CO2 系冷媒ガスを用いた場合には、CO2 系冷媒ガスの特性により、他方式の圧縮機に比べて非常に効率がよく高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルを構成できるリニア圧縮機となる。また、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストンの軸線と直交する方向への荷重が小さい上に、摺動面圧が小さいという、リニア圧縮機が本体有している特長を活かして、オイルレス化することができる。そのため、オゾン層の破壊や温暖化現象に大きな影響を与えない自然冷媒をはじめとするあらゆる冷媒に容易に適用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るリニア圧縮機の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳述する。図1は、本発明の一実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示す断面図である。このリニア圧縮機は、構成を大別すると、密閉容器1内に後述する構造により弾性的に支持されたシリンダ2と、シリンダ2にその軸線方向に沿って摺動自在に支持されたピストン3と、ピストン3に軸線方向の力を付与して往復動可能に保持する圧縮コイルばねからなる一対のばね部材4,7と、シリンダ2側に連結されたモータ固定部9とこのモータ固定部9に形成された後述の往復用通路11内に往復動可能に配置されたモータ可動部10とを備えて構成された駆動源のリニアモータ部8と、圧縮室12に冷媒ガスRを入出させる吸入バルブ43や吐出バルブ44などを有するバルブ板23と、内部に高圧の吐出用空間20が形成されたヘッドカバー部13と、シリンダ2およびモータ固定部9などの固定機構部を密閉容器1内に弾性的に支持するための支持機構部を構成する一対のコイルばね14,17とを有している。
【0016】
上記密閉容器1はリニア圧縮機の主要構成要素を収納する外体容器であり、この密閉容器1の内部には、外部冷却システムなどから吸入管18を通じて冷媒ガスRが供給され、この冷媒ガスRがシリンダ2の吸入通路19を通って圧縮室12内に導入される。この圧縮室12で圧縮された冷媒ガスRは、ヘッドカバー部13の吐出用空間20を通って、密閉容器1に設けられた吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出される。
【0017】
シリンダ2は、平板状のシリンダ鍔部21と、このシリンダ鍔部21の中心から一端側(図の左方側)に向かって一体に突設された円筒状ボス部22と、シリンダ鍔部21に重合状態に固着されたバルブ板23とを有する構成になっている。シリンダ鍔部21には、冷媒ガスRを圧縮室12に導くための上記吸入通路19が形成されている。なお、円筒状ボス部22の内周面にはピストン3を往復動自在に保持する摺動面が形成されている。
【0018】
ピストン3は、シリンダ2の円筒状ボス部22内に摺動自在に保持された円柱状のピストン本体部24と、ばね部材7を収納する凹所を有するピストン枠体部27とが結合された構成になっている。ピストン枠体部27の凹所内底面には、ばね部材7を保持する突起部28が設けられている。ピストン本体部24の一端側(図の右端側)とバルブ板23との間には、上記圧縮室12が形成されている。
【0019】
リニアモータ部8は、上述したように、モータ固定部9とモータ可動部10とを備えて構成されている。モータ固定部9は、インナーヨーク29とアウターヨーク30と駆動コイル31とを備えて構成されている。インナーヨーク29は、円筒体からなり、シリンダ2の円筒状ボス部22に対し同心状に配置されて、円筒状ボス部22の大径部外周面に外嵌固定されている。一方、アウターヨーク30は、円筒体からなり、インナーヨーク29に対しこれの外周面を覆うように同心状に配置されて、シリンダ鍔部21に固定されている。アウターヨーク30とインナーヨーク29との間には、小さな隙間を有する環状の空間である上記往復用通路11が形成されている。また、この実施の形態において、アウターヨーク30の内部には駆動コイル31が巻装して収容されており、この駆動コイル31は電源部(図示せず)に接続されている。
【0020】
リニアモータ部8のモータ可動部10は、永久磁石32と、この永久磁石32を支持する円筒保持部材33とを備えて構成されている。このモータ可動部10は、上述のモータ固定部9のインナーヨーク29とアウターヨーク30との間に形成された往復用通路11内に往復動可能に配置されて、円筒保持部材33がピストン枠体部27に固持されている。これにより、リニアモータ部8のモータ可動部10はピストン3に連結されている。モータ可動部10とモータ固定部9とは同心状に高精度に保持されていることにより、環状の往復用通路11が全周にわたり、空隙を有しており、これにより、モータ可動部10の往復運動を円滑に行なうことができる。なお、永久磁石32は駆動コイル31と対峙する位置に配置されている。
【0021】
インナーヨーク29の外周面と円筒保持部材33との間には第1の微小隙間41が形成され、アウターヨーク30と永久磁石32との間には第2の微小隙間42が形成されている。上記往復用通路11におけるモータ可動部10の一端側(図の右端側)に形成される通路端部空間40は、冷媒ガスRを圧縮室12内に導くための上記吸入通路19に連通している。
【0022】
所定のばね剛性を持たせた圧縮コイルばねからなる圧縮室側ばね部材4は、シシリンダ2の円筒状ボス部22の段部とピストン3のピストン枠体部27の底外面との間に介装されている。同じく所定のばね剛性を持たせた圧縮コイルばねからなる反圧縮室側ばね部材7は、上記ピストン枠体部27とばね固定部材38とにそれぞれ形成された保持用突起部28,39に両端部を保持されて、ピストン枠体部27とばね固定部材38との間に介装されている。ばね固定部材38は、両ばね部材4,7に対し圧縮たわみによる予荷重をそれぞれ発生させるようにピストン3側に押し付けた配置で、リニアモータ部8のモータ固定部9の一部であるアウターヨーク30に架設状態で固着されている。これにより、両ばね部材4,7は、常に自然長さよりも圧縮された状態でピストン3に対し軸線方向の力を付与しており、運転時に圧縮状態で振動する。なお、支持機構部を構成する一対のコイルばね14,17は、圧縮機構成要素の両端部と密閉容器1との間にそれぞれ配設されて、密閉容器1への振動の伝達を抑制する。
【0023】
つぎに、上記構造としたリニア圧縮機の作用について説明する。モータ固定部9のアウターヨーク30に巻装された駆動コイル31に通電すると、モータ可動部10の永久磁石32との間にフレミングの左手の法則に従って電流に比例した磁力が推力として発生する。この推力の発生により、モータ可動部10には軸線方向に沿って移動する駆動力が作用する。モータ可動部10の円筒保持部材33は、ピストン3のピストン枠体部27に固持されているので、ピストン3がその軸線方向に沿って移動する。なお、図1には、ピストン3が右方の限度位置まで移動し終えた状態を図示してあり、したがって、ピストン3は図示位置から左方へ移動することになる。
【0024】
駆動コイル31への通電は、正弦波で与えられ、リニアモータ部8には正逆の推力が交互に発生する。そして、ピストン3は、上記の交互に発生する正逆の推力によって往復運動を行なうことになる。
【0025】
冷媒ガスRは、吸入管18から密閉容器1の内部空間に導入され、この密閉容器1内に導入された冷媒ガスRは、シリンダ2のシリンダ鍔部21に形成された吸入通路19を通り、さらに、吸入バルブ43を介して圧縮室12内に導入される。この圧縮室12内の冷媒ガスRは、ピストン3の往復運動によって圧縮されたのち、バルブ板23に組み付けられた吐出バルブ44からヘッドカバー部13の吐出用空間20を経て、吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出される。また、ピストン3の往復運動に伴って生じるシリンダ2の振動は、一対のコイルばね14,17によって制振される。
【0026】
上述の吸入通路19内に導入された冷媒ガスRの一部は、吸入通路19に連通した通路端部空間40内に導入される。この通路端部空間40は、永久磁石32と円筒保持部材33からなるモータ可動部10の往復運動に伴って容積が変化し、その容積が拡大したときに、通路端部空間40内に冷媒ガスRが強制的に吸い込まれる。さらに、永久磁石32の外周面には往復運動によって動圧が発生することにより、永久磁石32の外周面側の圧力が通路端部空間40の吸入圧力よりも低くなるので、通路端部空間40内に導入された冷媒ガスRの一部が、永久磁石32の外周面とアウタヨーク30の内周部との間の第2の微小隙間42内に強制的に吸い込まれる。この第2の微小隙間42内に吸い込まれた冷媒ガスRは、比較的低温であることから、アウターヨーク30に巻装された駆動コイル31の発生熱を効果的に吸熱する。
【0027】
したがって、駆動コイル31は、過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部8の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部8を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。しかも、上記効果を、吸入通路19と通路端部空間40とを連通するだけの簡単な構成で得ることができる。
【0028】
さらに、上記実施の形態では、第2の微小隙間42を第1の微小隙間41よりも広く設定されている。これにより、永久磁石32とアウターヨーク30との間の第2の微小隙間42を通って駆動コイル31に供給される冷媒ガスRの導入量の増大を図ることができる。そのため、このリニア圧縮機では、使用量を可及的に少なくする必要があるHC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスを用いる場合であっても、冷媒ガスRの一部を駆動コイル31に有効に供給することができるから、駆動コイル31の発生熱を効率良く吸熱でき、リニアモータ部8の信頼性をさらに高めることができる。また、このリニア圧縮機では、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストン3の軸線と直交する方向への荷重が小さい上に、摺動面圧が小さいという、リニア圧縮機が本来有している特長を活かして、オイルレス化することができる。
【0029】
図2は、本発明の他の実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施の形態のリニア圧縮機が図1のものと相違するのは、圧縮室12への冷媒ガスの導入経路が、吸入通路19から、吸入通路19に連通してシリンダ鍔部21に形成された分岐路47およびバルブ板23に形成された導入路48を通って、ヘッドカバー部13の低圧室49内に一旦導かれたのち、低圧室49から吸入バルブ50を通って圧縮室12内に導入するように形成され、圧縮室12内でピストン3の往復運動によって圧縮された冷媒ガスRが、バルブ板23に組み付けられた吐出バルブ44を通ってヘッドカバー部13の高圧室51に導入されたのち、吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出されるようになった構成のみである。
【0030】
したがって、このリニア圧縮機では、図1の一実施の形態と同様に、モータ可動部10の往復運動により、吸入通路19から通路端部空間40内に吸い込まれた冷媒ガスRを、永久磁石32の外周面とアウタヨーク30の内周部との間の第2の微小隙間42を経て駆動コイル31に効率的に供給して、その冷媒ガスRによって駆動コイル31の発生熱を効率的に吸熱することにより、駆動コイル31の過熱による温度上昇を確実に抑制できるので、リニアモータ部8の耐久性が向上して、高い信頼性を得ることができる。
【0031】
さらに、この実施の形態のリニア圧縮機では、吸入通路19に導入した冷媒ガスRを、ヘッドカバー部13の低圧室49に一旦導いたのちに、圧縮室12内に導き入れるようにしているので、低圧室49は、恰も吸入マフラと同等に機能して、ピストン3の往復運動に伴い開閉される吸入バルブ50がバルブ板23に当たって閉じる際の打音を低減させることができるので、格段の低騒音化を図ることができる。しかも、低圧室49は、別部品を用いて設けるのではなく、既存のヘッドカバー部13の内部空間の一部を利用して形成しているので、大型化やコストアップを招くことがない。
【0032】
なお、上記各実施の形態では、アウターヨーク30に駆動コイル31を巻装して構成したリニアモータ部8を例示して説明しているが、本発明のリニア圧縮機は、インナーヨークに駆動コイルを巻装した構成のリニアモータ部や、可動コイル型リニアモータ部を有する構造のものにも適用することができる。
【0033】
また、上記各実施の形態で使用する冷媒ガスRとしては、HC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスが望ましい。HC系冷媒ガスを用いる場合は、使用量を極力少なくする必要があるが、本発明は、その少量の冷媒ガスRの一部を利用して駆動コイル31の発生熱を吸熱することを要旨とするものであり、吸入通路19に吸入された冷媒ガスRを、モータ可動部10の往復運動を利用することによって駆動コイル31に強制的、且つ効率的に供給できるので、HC系冷媒ガスを少量用いた場合であっても、この冷媒ガスによって駆動コイル31の発生熱を有効に吸熱することができる。CO2 系冷媒ガスを用いた場合には、このCO2 系冷媒ガスの特性により、他方式の圧縮機に比べて非常に効率が良く、高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルを構成できる圧縮機となる。また、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストン3の軸線と直交する方向への荷重が小さく、リニア圧縮機が本来有している特長を活かして、オイルレス化することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係るリニア圧縮機によれば、モータ可動部の往復運動に伴って容積が変化する通路端部空間の容積が拡大したときに、吸入通路から圧縮室に供給される冷媒ガスの一部を通路端部空間内に強制的に吸い込ませて、モータ可動部の往復運動によって永久磁石の外周面側の圧力が吸入通路の吸入圧力よりも低くなったときに、通路端部空間内に導入された冷媒ガスを、永久磁石の外周面とこれに対峙する配置で駆動コイルが設けられたモータ可動部またはモータ固定部との間の微小空間内に強制的に吸い込ませながら駆動コイルに供給することができるので、比較的低温の冷媒ガスによって駆動コイルの発生熱を効果的に吸熱することができる。したがって、駆動コイルは、過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図。
【記号の説明】
1 密閉容器(容器)
2 シリンダ
3 ピストン
4,7 ばね部材
8 リニアモータ部
9 モータ固定部
10 モータ可動部
11 往復用通路
12 圧縮室
13 ヘッドカバー部
19 吸入通路
23 バルブ板
31 駆動コイル
40 通路端部空間
41,42 微小隙間
47 分岐路
48 導入路
49 低圧室
50 吸入バルブ
51 高圧室
R 冷媒ガス
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、冷凍サイクルなどの圧縮機として使用されるもので、圧縮機構のシリンダ内に摺動自在に嵌合されたピストンを駆動源のリニアモータ部によって往復運動させることにより、冷媒ガスを吸入、圧縮および吐出するリニア圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷凍サイクルに使用される冷媒ガスのうち、R22に代表されるHCFC系冷媒ガスは、その物性の安定性からオゾン層を破壊すると言われている。また、近年では、HCFC系冷媒ガスの代替冷媒ガスとして、HFC系冷媒ガスが利用されているが、このHFC系冷媒ガスは温暖化現象を促進する性質を有している。
そのため、最近では、オゾン層の破壊や温暖化現象に大きな影響を与えないHC系冷媒ガスやCO2 系冷媒ガスなどの自然冷媒ガスが採用され始めている。
【0003】
しかし、上記HC系冷媒ガスは、可燃性を有することから、爆発や発火を防止することが安全性確保の面から不可欠であるため、HC系冷媒ガスの使用量は可及的に少なくすることが要望される。さらに、HC系冷媒ガスは、塩素を含まないことから、これ自体として潤滑性がなく、且つオイルに溶け込み易い性質を有している。以上のことから、オイルレスまたはオイルプアの形式の圧縮機はHC系冷媒の使用量を低減できるので、優位となる。これに対して、リニア圧縮機は、ピストンの軸線と直交する方向への荷重が小さく、摺動面圧が小さいので、従来から多く利用されてきたレシプロ式圧縮機、ロータリ式圧縮機およびスクロール式圧縮機などの他方式の圧縮機と比較すると、上述のオイルレス化を図りやすいタイプの圧縮機であるといえる。また、リニア圧縮機のピストン可動部はモータに印加されるモータ推力と運転圧力条件によってピストン位置が自由に決まるフリーピストンストロークとなる圧縮機としても知られている。
【0004】
一方、CO2 系冷媒ガスは、可燃性のHC系冷媒ガスとは異なり、不燃性であることから、近年において、特に車載用空調機に用いる冷媒ガスとして開発が盛んに行われいる。このCO2 系冷媒ガスは、その特性から、高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルとして知られている。リニア圧縮機は、上述したように、運転条件に対応したピストンストロークとなるため、高差圧起動時においても、駆動し易く、応答性に優れるため、カーエアコンの窓ガラスなどの曇り除去等に求められる高速立ち上げや瞬時起動といったハイレスパンス性に優位となる。
【0005】
従来のリニア圧縮機としては、リニアモータ部が直接的に圧縮機構のピストンを往復駆動させるダイレクトドライブ方式のものが知られている(例えば、特開平9−88817号公報および特開9−112416号公報参照)。このリニア圧縮機では、リニアモータ部が圧縮機構のシリンダの外周部を取り囲むように配置されて、シリンダの外周面にリニアモータ部の駆動コイルが設けられた構成になっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来において提案されている上述したリニア圧縮機では、高負荷運転時におけるリニアモータ部の冷却が信頼性面で大きな課題となる。すなわち、これのリニア圧縮機は、駆動コイルがシリンダの外周面を取り囲む配置で設けられ、この駆動コイルの外周面側がマグネットやヨークで取り囲まれた構成になっているため、リニアモータ部の特に駆動コイルの発生熱が放熱されにくい。また、上記リニア圧縮機は、低振動を図るために、圧縮機構を密閉容器の内部で弾性的に懸架して振動を抑制する構造になっているので、圧縮機構から密閉容器への熱の伝播の大部分は、密閉容器内の冷媒ガスを経由するので、リニアモータ部は、放熱が円滑に行われないことから、過熱されてしまい、駆動コイルの信頼性が低下するという問題がある。
【0007】
一方、上記リニア圧縮機では、ピストンの往復運動に伴い開閉動作して圧縮室に冷媒ガスを導き入れる吸入バルブが閉じる際にバルブ板などに当接して、そのときの打音による騒音が比較的大きいという別の課題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたもので、構成の複雑化を招くことなく、リニアモータ部の駆動コイルの発生熱を効果的、且つ効率的に吸熱して、リニアモータ部の過熱を確実に抑制できる信頼性の高い構成を備えたリニア圧縮機を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るリニア圧縮機は、容器内に支持されたシリンダと、このシリンダにその軸線方向に沿って摺動自在に支持されて、往復動することによって圧縮室の冷媒ガスを圧縮するピストンと、このピストンに対し軸線方向の力を付与して往復動可能に保持するばね部材とを備えた圧縮機構と、前記シリンダに連結されたモータ固定部および前記ピストンに対し連結されて往復駆動力を与えるモータ可動部とを備えたリニアモータ部とを有し、前記モータ可動部が、前記モータ固定部に形成された往復用通路内に前記モータ固定部に対し微小隙間を存して往復動可能に配置され、前記往復用通路における前記モータ可動部の一端部側に形成される通路端部空間が、前記シリンダまたは前記モータ固定部に形成されて冷媒ガスを前記圧縮室に導く吸入通路に連通され、前記モータ固定部または前記モータ可動部に、前記微小隙間に対面する配置で駆動コイルが設けられていることを特徴としている。
【0010】
このリニア圧縮機では、モータ可動部の往復運動に伴って容積が変化する通路端部空間の容積が拡大したときに、吸入通路から圧縮室に供給される冷媒ガスの一部が通路端部空間内に強制的に吸い込まれる。さらに、駆動コイルに対峙する配置でモータ可動部またはモータ固定部に設けられる永久磁石の外周面には、モータ可動部の往復運動によって動圧が発生することにより、永久磁石の外周面側の圧力が吸入通路の吸入圧力よりも低くなるので、通路端部空間内に導入された冷媒ガスが、永久磁石の外周面とこれに対峙する配置で駆動コイルが設けられたモータ可動部またはモータ固定部との間の微小空間内に強制的に吸い込まれながら駆動コイルに供給されることになる。この冷媒ガスは、比較的低温であることから、駆動コイルの発生熱を効果的に吸熱する。したがって、このリニア圧縮機では、吸入通路と通路端部空間とを連通するだけの簡単な構成を設けるだけで、駆動コイルが過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。
【0011】
上記発明において、往復用通路内に配置されたモータ可動部の両側面とモータ固定部との各間にそれぞれ形成される二つの微小隙間のうち、駆動コイルが対面する一方が他方よりも広く設定されていることが好ましい。この構成によれば、永久磁石と駆動コイルとが対峙する微小隙間を通って駆動コイルに供給される冷媒ガスの導入量の増大を図ることができるから、駆動コイルの発生熱を冷媒ガスで一層効率的に吸熱することができ、リニアモータ部の信頼性を一層高めることができる。
【0012】
上記発明において、シリンダに、吸入通路に連通する分岐路が形成され、前記シリンダに重合状態に固着されたバルブ板に、前記分岐路に連通する導入路が形成され、圧縮室に冷媒ガスを入出させるヘッドカバー部に、前記分岐路および前記導入路を通って冷媒ガスが導入される低圧室と、前記圧縮室から冷媒ガスを導き入れる高圧室とが設けられ、前記バルブ板における前記低圧室から前記圧縮室に至る通路を開閉する吸入バルブが設けられている構成とすることが好ましい。
【0013】
この構成よれば、低圧室が吸入マフラと同等に機能し、低圧室からの低減された放射音をさらに通路端部間にて吸音することができるので、、ピストンの往復運動に伴い開閉される吸入バルブがバルブ板に当たって閉じる際の打音を低減させ、格段の低騒音化を図ることができる。しかも、ヘッドカバー部を低圧室と高圧室を有する一体部品とする場合、低圧室は、別部品を用いて設ける必要がなく、ヘッドカバー部の内部空間の一部を利用して形成できるので、大型化やコストアップを招くことがない。
【0014】
上記発明のリニア圧縮機に用いる冷媒ガスとして、HC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスの何れかが好ましい。HC系冷媒ガスの場合、冷媒の使用量を可及的に少なくする必要があるが、その少ない使用量の冷媒ガスの一部を駆動コイルに有効に供給することができるから、駆動コイルの発生熱を効率良く吸熱でき、リニアモータ部の信頼性をさらに高めることができる。CO2 系冷媒ガスを用いた場合には、CO2 系冷媒ガスの特性により、他方式の圧縮機に比べて非常に効率がよく高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルを構成できるリニア圧縮機となる。また、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストンの軸線と直交する方向への荷重が小さい上に、摺動面圧が小さいという、リニア圧縮機が本体有している特長を活かして、オイルレス化することができる。そのため、オゾン層の破壊や温暖化現象に大きな影響を与えない自然冷媒をはじめとするあらゆる冷媒に容易に適用することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るリニア圧縮機の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳述する。図1は、本発明の一実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示す断面図である。このリニア圧縮機は、構成を大別すると、密閉容器1内に後述する構造により弾性的に支持されたシリンダ2と、シリンダ2にその軸線方向に沿って摺動自在に支持されたピストン3と、ピストン3に軸線方向の力を付与して往復動可能に保持する圧縮コイルばねからなる一対のばね部材4,7と、シリンダ2側に連結されたモータ固定部9とこのモータ固定部9に形成された後述の往復用通路11内に往復動可能に配置されたモータ可動部10とを備えて構成された駆動源のリニアモータ部8と、圧縮室12に冷媒ガスRを入出させる吸入バルブ43や吐出バルブ44などを有するバルブ板23と、内部に高圧の吐出用空間20が形成されたヘッドカバー部13と、シリンダ2およびモータ固定部9などの固定機構部を密閉容器1内に弾性的に支持するための支持機構部を構成する一対のコイルばね14,17とを有している。
【0016】
上記密閉容器1はリニア圧縮機の主要構成要素を収納する外体容器であり、この密閉容器1の内部には、外部冷却システムなどから吸入管18を通じて冷媒ガスRが供給され、この冷媒ガスRがシリンダ2の吸入通路19を通って圧縮室12内に導入される。この圧縮室12で圧縮された冷媒ガスRは、ヘッドカバー部13の吐出用空間20を通って、密閉容器1に設けられた吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出される。
【0017】
シリンダ2は、平板状のシリンダ鍔部21と、このシリンダ鍔部21の中心から一端側(図の左方側)に向かって一体に突設された円筒状ボス部22と、シリンダ鍔部21に重合状態に固着されたバルブ板23とを有する構成になっている。シリンダ鍔部21には、冷媒ガスRを圧縮室12に導くための上記吸入通路19が形成されている。なお、円筒状ボス部22の内周面にはピストン3を往復動自在に保持する摺動面が形成されている。
【0018】
ピストン3は、シリンダ2の円筒状ボス部22内に摺動自在に保持された円柱状のピストン本体部24と、ばね部材7を収納する凹所を有するピストン枠体部27とが結合された構成になっている。ピストン枠体部27の凹所内底面には、ばね部材7を保持する突起部28が設けられている。ピストン本体部24の一端側(図の右端側)とバルブ板23との間には、上記圧縮室12が形成されている。
【0019】
リニアモータ部8は、上述したように、モータ固定部9とモータ可動部10とを備えて構成されている。モータ固定部9は、インナーヨーク29とアウターヨーク30と駆動コイル31とを備えて構成されている。インナーヨーク29は、円筒体からなり、シリンダ2の円筒状ボス部22に対し同心状に配置されて、円筒状ボス部22の大径部外周面に外嵌固定されている。一方、アウターヨーク30は、円筒体からなり、インナーヨーク29に対しこれの外周面を覆うように同心状に配置されて、シリンダ鍔部21に固定されている。アウターヨーク30とインナーヨーク29との間には、小さな隙間を有する環状の空間である上記往復用通路11が形成されている。また、この実施の形態において、アウターヨーク30の内部には駆動コイル31が巻装して収容されており、この駆動コイル31は電源部(図示せず)に接続されている。
【0020】
リニアモータ部8のモータ可動部10は、永久磁石32と、この永久磁石32を支持する円筒保持部材33とを備えて構成されている。このモータ可動部10は、上述のモータ固定部9のインナーヨーク29とアウターヨーク30との間に形成された往復用通路11内に往復動可能に配置されて、円筒保持部材33がピストン枠体部27に固持されている。これにより、リニアモータ部8のモータ可動部10はピストン3に連結されている。モータ可動部10とモータ固定部9とは同心状に高精度に保持されていることにより、環状の往復用通路11が全周にわたり、空隙を有しており、これにより、モータ可動部10の往復運動を円滑に行なうことができる。なお、永久磁石32は駆動コイル31と対峙する位置に配置されている。
【0021】
インナーヨーク29の外周面と円筒保持部材33との間には第1の微小隙間41が形成され、アウターヨーク30と永久磁石32との間には第2の微小隙間42が形成されている。上記往復用通路11におけるモータ可動部10の一端側(図の右端側)に形成される通路端部空間40は、冷媒ガスRを圧縮室12内に導くための上記吸入通路19に連通している。
【0022】
所定のばね剛性を持たせた圧縮コイルばねからなる圧縮室側ばね部材4は、シシリンダ2の円筒状ボス部22の段部とピストン3のピストン枠体部27の底外面との間に介装されている。同じく所定のばね剛性を持たせた圧縮コイルばねからなる反圧縮室側ばね部材7は、上記ピストン枠体部27とばね固定部材38とにそれぞれ形成された保持用突起部28,39に両端部を保持されて、ピストン枠体部27とばね固定部材38との間に介装されている。ばね固定部材38は、両ばね部材4,7に対し圧縮たわみによる予荷重をそれぞれ発生させるようにピストン3側に押し付けた配置で、リニアモータ部8のモータ固定部9の一部であるアウターヨーク30に架設状態で固着されている。これにより、両ばね部材4,7は、常に自然長さよりも圧縮された状態でピストン3に対し軸線方向の力を付与しており、運転時に圧縮状態で振動する。なお、支持機構部を構成する一対のコイルばね14,17は、圧縮機構成要素の両端部と密閉容器1との間にそれぞれ配設されて、密閉容器1への振動の伝達を抑制する。
【0023】
つぎに、上記構造としたリニア圧縮機の作用について説明する。モータ固定部9のアウターヨーク30に巻装された駆動コイル31に通電すると、モータ可動部10の永久磁石32との間にフレミングの左手の法則に従って電流に比例した磁力が推力として発生する。この推力の発生により、モータ可動部10には軸線方向に沿って移動する駆動力が作用する。モータ可動部10の円筒保持部材33は、ピストン3のピストン枠体部27に固持されているので、ピストン3がその軸線方向に沿って移動する。なお、図1には、ピストン3が右方の限度位置まで移動し終えた状態を図示してあり、したがって、ピストン3は図示位置から左方へ移動することになる。
【0024】
駆動コイル31への通電は、正弦波で与えられ、リニアモータ部8には正逆の推力が交互に発生する。そして、ピストン3は、上記の交互に発生する正逆の推力によって往復運動を行なうことになる。
【0025】
冷媒ガスRは、吸入管18から密閉容器1の内部空間に導入され、この密閉容器1内に導入された冷媒ガスRは、シリンダ2のシリンダ鍔部21に形成された吸入通路19を通り、さらに、吸入バルブ43を介して圧縮室12内に導入される。この圧縮室12内の冷媒ガスRは、ピストン3の往復運動によって圧縮されたのち、バルブ板23に組み付けられた吐出バルブ44からヘッドカバー部13の吐出用空間20を経て、吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出される。また、ピストン3の往復運動に伴って生じるシリンダ2の振動は、一対のコイルばね14,17によって制振される。
【0026】
上述の吸入通路19内に導入された冷媒ガスRの一部は、吸入通路19に連通した通路端部空間40内に導入される。この通路端部空間40は、永久磁石32と円筒保持部材33からなるモータ可動部10の往復運動に伴って容積が変化し、その容積が拡大したときに、通路端部空間40内に冷媒ガスRが強制的に吸い込まれる。さらに、永久磁石32の外周面には往復運動によって動圧が発生することにより、永久磁石32の外周面側の圧力が通路端部空間40の吸入圧力よりも低くなるので、通路端部空間40内に導入された冷媒ガスRの一部が、永久磁石32の外周面とアウタヨーク30の内周部との間の第2の微小隙間42内に強制的に吸い込まれる。この第2の微小隙間42内に吸い込まれた冷媒ガスRは、比較的低温であることから、アウターヨーク30に巻装された駆動コイル31の発生熱を効果的に吸熱する。
【0027】
したがって、駆動コイル31は、過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部8の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部8を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。しかも、上記効果を、吸入通路19と通路端部空間40とを連通するだけの簡単な構成で得ることができる。
【0028】
さらに、上記実施の形態では、第2の微小隙間42を第1の微小隙間41よりも広く設定されている。これにより、永久磁石32とアウターヨーク30との間の第2の微小隙間42を通って駆動コイル31に供給される冷媒ガスRの導入量の増大を図ることができる。そのため、このリニア圧縮機では、使用量を可及的に少なくする必要があるHC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスを用いる場合であっても、冷媒ガスRの一部を駆動コイル31に有効に供給することができるから、駆動コイル31の発生熱を効率良く吸熱でき、リニアモータ部8の信頼性をさらに高めることができる。また、このリニア圧縮機では、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストン3の軸線と直交する方向への荷重が小さい上に、摺動面圧が小さいという、リニア圧縮機が本来有している特長を活かして、オイルレス化することができる。
【0029】
図2は、本発明の他の実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図であり、同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。この実施の形態のリニア圧縮機が図1のものと相違するのは、圧縮室12への冷媒ガスの導入経路が、吸入通路19から、吸入通路19に連通してシリンダ鍔部21に形成された分岐路47およびバルブ板23に形成された導入路48を通って、ヘッドカバー部13の低圧室49内に一旦導かれたのち、低圧室49から吸入バルブ50を通って圧縮室12内に導入するように形成され、圧縮室12内でピストン3の往復運動によって圧縮された冷媒ガスRが、バルブ板23に組み付けられた吐出バルブ44を通ってヘッドカバー部13の高圧室51に導入されたのち、吐出管(図示せず)から外方の冷却システムなどに吐出されるようになった構成のみである。
【0030】
したがって、このリニア圧縮機では、図1の一実施の形態と同様に、モータ可動部10の往復運動により、吸入通路19から通路端部空間40内に吸い込まれた冷媒ガスRを、永久磁石32の外周面とアウタヨーク30の内周部との間の第2の微小隙間42を経て駆動コイル31に効率的に供給して、その冷媒ガスRによって駆動コイル31の発生熱を効率的に吸熱することにより、駆動コイル31の過熱による温度上昇を確実に抑制できるので、リニアモータ部8の耐久性が向上して、高い信頼性を得ることができる。
【0031】
さらに、この実施の形態のリニア圧縮機では、吸入通路19に導入した冷媒ガスRを、ヘッドカバー部13の低圧室49に一旦導いたのちに、圧縮室12内に導き入れるようにしているので、低圧室49は、恰も吸入マフラと同等に機能して、ピストン3の往復運動に伴い開閉される吸入バルブ50がバルブ板23に当たって閉じる際の打音を低減させることができるので、格段の低騒音化を図ることができる。しかも、低圧室49は、別部品を用いて設けるのではなく、既存のヘッドカバー部13の内部空間の一部を利用して形成しているので、大型化やコストアップを招くことがない。
【0032】
なお、上記各実施の形態では、アウターヨーク30に駆動コイル31を巻装して構成したリニアモータ部8を例示して説明しているが、本発明のリニア圧縮機は、インナーヨークに駆動コイルを巻装した構成のリニアモータ部や、可動コイル型リニアモータ部を有する構造のものにも適用することができる。
【0033】
また、上記各実施の形態で使用する冷媒ガスRとしては、HC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスが望ましい。HC系冷媒ガスを用いる場合は、使用量を極力少なくする必要があるが、本発明は、その少量の冷媒ガスRの一部を利用して駆動コイル31の発生熱を吸熱することを要旨とするものであり、吸入通路19に吸入された冷媒ガスRを、モータ可動部10の往復運動を利用することによって駆動コイル31に強制的、且つ効率的に供給できるので、HC系冷媒ガスを少量用いた場合であっても、この冷媒ガスによって駆動コイル31の発生熱を有効に吸熱することができる。CO2 系冷媒ガスを用いた場合には、このCO2 系冷媒ガスの特性により、他方式の圧縮機に比べて非常に効率が良く、高圧高密度の遷臨界冷凍サイクルを構成できる圧縮機となる。また、HC系冷媒ガスを用いる場合であっても、ピストン3の軸線と直交する方向への荷重が小さく、リニア圧縮機が本来有している特長を活かして、オイルレス化することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係るリニア圧縮機によれば、モータ可動部の往復運動に伴って容積が変化する通路端部空間の容積が拡大したときに、吸入通路から圧縮室に供給される冷媒ガスの一部を通路端部空間内に強制的に吸い込ませて、モータ可動部の往復運動によって永久磁石の外周面側の圧力が吸入通路の吸入圧力よりも低くなったときに、通路端部空間内に導入された冷媒ガスを、永久磁石の外周面とこれに対峙する配置で駆動コイルが設けられたモータ可動部またはモータ固定部との間の微小空間内に強制的に吸い込ませながら駆動コイルに供給することができるので、比較的低温の冷媒ガスによって駆動コイルの発生熱を効果的に吸熱することができる。したがって、駆動コイルは、過熱によって温度上昇するのが効果的に抑制されるので、特に、高負荷運転時におけるリニアモータ部の耐久性が格段に向上し、このリニアモータ部を駆動源とするリニア圧縮機としての信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るリニア圧縮機の全体構成を示した断面図。
【記号の説明】
1 密閉容器(容器)
2 シリンダ
3 ピストン
4,7 ばね部材
8 リニアモータ部
9 モータ固定部
10 モータ可動部
11 往復用通路
12 圧縮室
13 ヘッドカバー部
19 吸入通路
23 バルブ板
31 駆動コイル
40 通路端部空間
41,42 微小隙間
47 分岐路
48 導入路
49 低圧室
50 吸入バルブ
51 高圧室
R 冷媒ガス
Claims (4)
- 容器内に支持されたシリンダと、このシリンダにその軸線方向に沿って摺動自在に支持されて、往復動することによって圧縮室の冷媒ガスを圧縮するピストンと、このピストンに対し軸線方向の力を付与して往復動可能に保持するばね部材とを備えた圧縮機構と、
前記シリンダに連結されたモータ固定部および前記ピストンに対し連結されて往復駆動力を与えるモータ可動部とを備えたリニアモータ部とを有し、
前記モータ可動部が、前記モータ固定部に形成された往復用通路内に前記モータ固定部に対し微小隙間を存して往復動可能に配置され、
前記往復用通路における前記モータ可動部の一端部側に形成される通路端部空間が、前記シリンダまたは前記モータ固定部に形成されて冷媒ガスを前記圧縮室に導く吸入通路に連通され、
前記モータ固定部または前記モータ可動部に、前記微小隙間に対面する配置で駆動コイルが設けられていることを特徴とするリニア圧縮機。 - 往復用通路内に配置されたモータ可動部の両側面とモータ固定部との各間にそれぞれ形成される二つの微小隙間のうち、駆動コイルが対面する一方が他方よりも広く設定されている請求項1に記載のリニア圧縮機。
- シリンダに、吸入通路に連通する分岐路が形成され、
前記シリンダに重合状態に固着されたバルブ板に、前記分岐路に連通する導入路が形成され、
圧縮室に冷媒ガスを入出させるヘッドカバー部に、前記分岐路および前記導入路を通って冷媒ガスが導入される低圧室と、前記圧縮室から冷媒ガスを導き入れる高圧室とが設けられ、
前記バルブ板における前記低圧室から前記圧縮室に至る通路を開閉する吸入バルブが設けられている請求項1または2に記載のリニア圧縮機。 - 冷媒ガスとして、HC系冷媒ガスまたはCO2 系冷媒ガスの何れかが用いられている請求項1〜3の何れかに記載のリニア圧縮機。
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