JP2004019465A - エンジンの圧縮圧力診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】各気筒の圧縮圧力の異常を、特別な計測部品を付設することなく簡単に検出することができて故障診断作業の効率化を実現する。
【解決手段】クランキング時に、診断対象気筒を基準として1行程前の気筒の瞬時回転数N4と診断対象気筒の瞬時回転数N1との差分値SAB0nを算出して(SAB0n=N4−N1)、クランキング時の過渡成分を吸収する。又診断対象気筒を基準として3行程前の気筒の瞬時回転数N3と2行程前の気筒の瞬時回転数N2との差分値SAB1nを算出して(SAB1n=N3−N2)、クランクパルス検出用クランクスプロケットに形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項を算出する。そして両差分値SAB0n,SAB1nの差分を算出し、この差分を当該気筒N1の診断値SAB2とする。そして診断値SAB2と判定値KSABJDGMとを比較し、図16に示すように、SAB2<KSABJDGの異常を示す気筒が2回連続して検出された場合、2番目に異常を検出した気筒を異常気筒として特定する。
【選択図】図14
【解決手段】クランキング時に、診断対象気筒を基準として1行程前の気筒の瞬時回転数N4と診断対象気筒の瞬時回転数N1との差分値SAB0nを算出して(SAB0n=N4−N1)、クランキング時の過渡成分を吸収する。又診断対象気筒を基準として3行程前の気筒の瞬時回転数N3と2行程前の気筒の瞬時回転数N2との差分値SAB1nを算出して(SAB1n=N3−N2)、クランクパルス検出用クランクスプロケットに形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項を算出する。そして両差分値SAB0n,SAB1nの差分を算出し、この差分を当該気筒N1の診断値SAB2とする。そして診断値SAB2と判定値KSABJDGMとを比較し、図16に示すように、SAB2<KSABJDGの異常を示す気筒が2回連続して検出された場合、2番目に異常を検出した気筒を異常気筒として特定する。
【選択図】図14
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮圧力の異常をエンジンの回転変動に基づいて検出するエンジンの圧縮圧力診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン不調等のトラブルシューティングを行なう過程の1つに、エンジンの圧縮圧力に異常がないか否かを調べる作業がある。
【0003】
エンジンの圧縮圧力の異常を検出する作業は、先ず、コンプレッションゲージを各気筒の点火プラグ用取付け孔に装着し、次いで、スタータモータによるクランキングを行い、各気筒の圧縮圧力を直接計測する。
【0004】
そして、この計測結果に基づき、例えば特定気筒のみが、他の気筒の平均圧縮圧力に比べ低い場合や、特定気筒圧縮圧力が予め設定されている基準値よりも低い場合は、当該気筒の吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等の、圧縮圧力に影響を与える部品に何らかの不具合があると考え、エンジン不調の原因の1つとして特定する。
【0005】
コンプレッションゲージにより各気筒の圧縮圧力を直接計測することで、点火系、燃料系、各センサやアクチュエータ類等のエンジン不調に起因する他の要素を排除することができるため、故障原因を的確に突き止めて修理することが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、コンプレッションゲージを用いて各気筒の圧縮圧力を計測する場合、作業者は、各気筒の点火プラグを全て取り外し、1つの気筒の点火プラグ用取付け孔に対してコンプレッションゲージを装着し、当該気筒の圧縮圧を計測する。そして、当該気筒の圧縮圧力の計測が終了した後、コンプレッションゲージを点火プラグ用取付け孔から取り外し、他の気筒の点火プラグ用取付け孔に取付けて、当該気筒の圧縮圧力を計測する。
【0007】
このように、コンプレッションゲージを用いて全気筒の圧縮圧力を計測しようとする場合、全ての気筒に対してコンプレッションゲージの取付け取り外しを行なわなければならないため、作業効率が悪い問題がある。
【0008】
又、1つの気筒の圧縮圧力を計測している間、他の気筒の点火プラグ用取付け孔は開放状態にあるため、開放状態にある点火プラグ用取付け孔から燃料が噴出してしまう可能性がある。これを防止するためには、燃料ポンプ或いはインジェクタのコネクタ等を予め取り外しておかなければならず、更に、イグナイタやエンジ制御ユニット(ECU)のコネクタ等を外し、点火信号を遮断して、ハイテンションコード等の点火系からの発火を防ぐ必要があり、複雑な作業が要求される不都合がある。
【0009】
これに対処するに、例えば特開平5−332886号公報には、シリンダ固有の動作特性量を連続的に測定し、この測定結果を気筒毎に配分して、個々の気筒のトルク或いは出力を測定して、このトルク或いは出力に基づき各気筒の圧縮圧等が正常か否かを調べる技術が開示されている。
【0010】
この公報に開示されている技術では、エンジン運転中に診断を行なうようにしているため、圧縮圧力が異常な気筒を特定することは可能であるが、その原因が、吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等を含むエンジン主機にあるのか、或いは点火系、燃料系、各センサ或いはアクチュエータ等の周辺機器にあるのかを特定することが困難であり、異常気筒を検出した後も、故障原因を更に探求する必要があり、診断作業に手間がかかる不具合がある。
【0011】
又、実開平7−29436号公報には、歪みゲージをシリンダライナに取付け、この歪みゲージで検出した筒内最大圧力を常時検出して、圧縮圧力の異常の有無を判定する技術が開示されている。
【0012】
しかし、この公報に開示されている技術では、各気筒に歪みゲージを取付けておかなければならないため、コスト高となり、実現性に乏しい。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、各気筒の圧縮圧力の異常を、特別な計測部品を付設することなく、既存の構成で検出することができるばかりでなく、点火プラグの着脱が不要で、しかも電気系統を接続する各コネクタ類を取り外すことなく簡単に検出することができ、使い勝手が良く、故障診断作業の効率化を実現できるエンジンの圧縮圧力診断装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるエンジンの圧縮圧力診断装置は、通常のエンジン制御モードを実行する通常制御モード実行手段と、圧縮圧力の異常を検出する圧縮圧力診断モードを実行する圧縮圧力診断モード実行手段と、上記通常制御モードと上記圧縮圧力診断モードとを選択するモード選択手段と、エンジンの回転変動を検出する回転変動検出手段とを備え、上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、上記エンジンの回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0015】
このような構成では、エンジンの回転変動から圧縮圧力の異常を検出するようにしたので、計測部品の追加や改良を必要とせず、従来のエンジン制御システムに対しソフトウェアのみの追加改良で実施することが可能となる。
【0016】
この場合、好ましくは、1)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、燃料系及び点火系の駆動を停止すると共にクランキング時の回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0017】
2)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、各気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0018】
3)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0019】
4)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0020】
5)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、又3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、該両差分値の差分を診断値として設定し、該診断値と予め設定した判定値とを比較して圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0021】
6)異常と判定された気筒の診断値が2回連続して検出された場合、2番目に異常を検出した気筒を圧縮圧力の異常気筒として特定することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1にはエンジン制御系の概略構成図が示されている。
【0023】
同図の符号1はエンジンで、本実施の形態においては水平対向型4気筒エンジンを示す。このエンジン1に吸気マニホルド2と排気マニホルド3とが各々連通されている。
【0024】
吸気マニホルド2の上流側がエアチャンバ4に集合され、このエアチャンバ4の上流に吸気管5が連通され、この吸気管5の上流がエアクリーナ(図示せず)に連通されている。又、吸気管5のエアチャンバ4の直上流にスロットル弁6が介装されている。尚、図示しないが、吸気管5のエアクリーナの直下流に、吸入空気量を検出する吸入空気量センサが介装されている。又、排気マニホルド3の集合部に排気管7が連通され、この排気管7に三元触媒等からなる触媒8が介装され、更に、その下流にマフラ9が連通されている。
【0025】
又、エンジン1のクランク軸1aに軸着するクランクパルス検出用クランクスプロケット10の外周に、このクランクスプロケット10の回転からエンジン回転数を検出するクランク角センサ11が対設されている。更に、カム軸12に軸着するカムパルス検出用カムスプロケット13の外周に、このカムスプロケット13の回転から気筒判別のためのカムパルスを検出するカム角センサ14が対設されている。尚、本実施の形態によるエンジン1の点火順序は#1→#3→#2→#4に設定されている。
【0026】
クランクスプロケット10の外周には、設定クランク角毎に歯が形成されており、図2に示すように、クランク角センサ11が圧縮上死点TDCを示す位置に形成された歯と、この圧縮上死点TDCに対して圧縮上死点前BDCA[deg}の位置に形成された歯を検出することで、後述するエンジン制御ユニット21では圧縮上死点前BDCA[deg}間の通過時間を計時する。又、図示しないが、カムスプロケット13の外周には気筒判別のための歯が、各気筒に対応して形成されている。
【0027】
一方、符号21はエンジン制御ユニット(ECU)で、CPU22,ROM(図示せず),RAM(図示せず)、及びデータの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、EEP(Electrically Erasable Programmable)ROM、フラッシュメモリ)やバックアップRAM等を備えたマイクロコンピュータ等を主体に構成されている。
【0028】
CPU22では、ROMに記憶されている制御プログラムに従い、各センサ類からの検出信号等を処理し、RAMに格納されている各種データ、及び不揮発性メモリやバックアップRAMに格納されている各種学習値データ等に基づき、燃料噴射量、点火時期等を演算し、燃料噴射制御、点火時期制御等のエンジン制御機能を有すると共に、各種の故障診断を行なう機能を有する。
【0029】
ECU21で処理された、点火時期、燃料噴射量等の演算結果、及び各種の故障診断結果は、このECU21から延出するデータリンクコネクタ23aに、故障診断ツール(セレクトモニタ)24から延出するデータリンクコネクタ23bを接続することで、この故障診断ツール24にて読出すことができる。尚、この故障診断ツール24については、本出願人によって先に提出された特許第3245348号公報等に詳述されているため、ここでの説明は省略する。
【0030】
故障診断ツール24を用いて診断することのできる項目の1つとして、筒内圧縮圧力診断がある。すなわち、ある特定気筒において吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等、気筒内圧を保持する部位から圧縮漏れが生じると、当該気筒の圧縮圧力が正常時の圧縮圧力に対して低い値を示したり、或いは、他の気筒の圧縮圧力の平均値及び圧力変動と比較した場合、その平均値が低く、且つ圧力変動が大きくなることが知られている。
【0031】
これは気筒内圧を保持する部位の異常により気筒内に吸入した空気が漏れるためである。この状態においてスタータモータによりクランキングを行ない、圧縮行程のある特定の回転角範囲の経過時間ついて、正常な気筒と、圧縮漏れのある気筒とを比較すると、正常な気筒の経過時間(瞬時回転数)は空気の圧縮抵抗により相対的に長くなり、圧縮漏れのある気筒の経過時間は圧縮抵抗が小さいため、相対的に短くなる。
【0032】
本実施の形態では、正常な気筒と圧縮漏れの発生している気筒との瞬時回転数の違いに着目し、瞬時回転数をパラメータとして計算処理することで、圧縮圧力の異常を検出するものである。
【0033】
ECU21で処理される筒内圧縮圧力診断は、具体的には、図3〜図12に示すフローチャートに従って実行される。
【0034】
イグニッションスイッチがONされると、図3に示す圧縮圧力判定モードフラグ処理ルーチンが所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行される。
【0035】
そして、先ず、ステップS1で、ECU21に対してデータリンクコネクタ23a,23bを介して接続されている故障診断ツール24からの信号を読込み、この故障診断ツール24から圧縮圧力診断モード選択信号が送信されているか否かを調べる。
【0036】
ECU21にデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24を接続した後、この故障診断ツール24のスイッチをONすると、モニタに故障診断メニューが表示され、操作者がこの故障診断面ニューから「圧縮圧力診断」モードを選択すると、故障診断ツール24からECU21に対して圧縮圧力診断モード選択信号が送信される。又、「圧縮圧力診断」モードをキャンセルする場合は、キャンセルキー(Cキー)をONすることで、圧縮圧力診断モードキャンセル信号がECU21へ送信される。尚、故障診断ツール24で処理されるデータ信号の送受については、後述する。
【0037】
そして、ECU24が故障診断ツール24からの圧縮圧力診断モード選択信号を受信したときは、ステップS2へ進み、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをセットして(FPTSTMD=1)、ルーチンを抜ける。その結果、エンジンの制御モードが通常制御モードから圧縮圧力診断モードに切換えられる。
【0038】
又、ステップS1で圧縮圧力診断モード選択信号を受信しなかったときは、ステップS3へ分岐し、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信したか否かを調べ、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信したときは、ステップS4へ進み、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、ルーチンを抜ける。その結果、エンジンの制御モードが圧縮圧力診断モードから通常制御モードへ戻される。
【0039】
又、ステップS3で圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信しなかったとき、すなわち、故障診断ツール24で、圧縮圧力診断モードが選択されていない場合は、そのままルーチンを抜け、通常制御モード或いは選択した他の圧縮圧力診断モードを実行する。
【0040】
この圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDは、図4に示す診断実行条件成立フラグ処理ルーチンにおいて読込まれる。
【0041】
このルーチンは、所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS11で診断実行条件が全て成立したか否かを調べる。
【0042】
本実施の形態による診断実行条件は、表1の通りである。
【表1】
【0043】
そして、診断実行条件が全て成立したとき、ステップS12へ進み、診断実行条件成立フラグFCNDTNをセットし(FCNDTN=1)、ステップS13へ進み、診断実行条件成立信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信し、ルーチンを抜ける。
【0044】
一方、ステップS11で、診断実行条件不成立と判断したときは、ステップS14へ分岐し、診断実行条件成立フラグFCNDTNをクリアし(FCNDTN=0)、ステップS15へ進み、診断実行条件不成立信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信して、ルーチンを抜ける。
【0045】
上述した圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMD、及び診断実行条件成立フラグFCNDTNは、図5に示す圧縮圧力診断モード実行判定ルーチンで読込まれる。
【0046】
このルーチンは所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS21で、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDの状態を調べ、FPTSTMD=1のときは、圧縮圧力診断モードが選択され、或いは実行中であるため、ステップS22へ進み、燃料噴射制御、点火時期制御を圧縮圧力診断モードに切換え、燃料ポンプ、インジェクタ等の燃料系、及び点火系の駆動を停止させる処理を実行する。
【0047】
次いで、ステップS23へ進み、診断実行条件成立フラグFCNDTNの状態を調べ、FCNDTN=0のときは診断実行条件不成立であるため、ステップS21へ戻り、診断実行条件が成立するまで待機する。又、FCNDTN=1のときは、診断実行条件成立であるため、ステップS24へ進み、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNをセットして(FPACTN=1)、ルーチンを抜ける。
【0048】
又、ステップS21で、FPTSTMD=0のときは、圧縮圧力診断モードがキャンセルされているため、ステップS25へ分岐し、燃料噴射制御、及び点火時期制御を通常モードに戻し、燃料ポンプ、インジェクタ等の燃料系、及び点火系の停止処理を解除する。
【0049】
その後、ステップS26へ進み、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNをクリアして(FPACTN=0)、ルーチンを抜ける。
【0050】
この圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNは、図6、図7に示す圧縮圧力診断処理ルーチンで読込まれる。
【0051】
このルーチンは、予め設定した各気筒の圧縮上死点後(ATDC)から次の気筒の圧縮上死点TDCの1行程前下死点までの予め設定した任意のクランク角毎に実施される。
【0052】
先ず、ステップS31で、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNの状態を調べ、FPACTN=1のときは、圧縮圧力診断処理が許可されているため、ステップS32へ進み、PACTN=0のときは、圧縮圧力診断処理が不許可であるため、ステップS42へ分岐する。
【0053】
ステップS31からステップS32へ進むと、診断値算出カウンタCNTSABと、予め設定した診断値算出判定回数KCNSABとを比較し、CNTSAB<KCNSABのときは、圧縮圧力診断処理中であるため、ステップS33へ進む。又、CNTSAB=KCNSABのときは、診断値SAB2の算出回数が診断に必要な所定の回数(KCNSAB回)に達したと判定し、ステップS41へ分岐し、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1をセットし(FPEND1=1)、ステップS42へ進む。尚、ステップS42以下のルーチンについては後述する。
【0054】
ステップS32からステップS33へ進むと、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1をクリアし(FPEND1=0)、ステップS34で、診断値SAB2[rpm]を算出した後、ステップS35へ進む。
【0055】
ここで、診断値SAB2の求め方について説明する。
クランク軸1aのある特定の回転位置、例えば、図2に示すように、クランク角センサ11が、#1気筒圧縮上死点前BDCA1[deg]から#1気筒圧縮上死点TDC1を検出するまでの回転角経過時間T1を、ECU21にて計測し、#1気筒の瞬時回転数N1[rpm]を算出する。これを#2気筒、#3気筒、#4気筒についても同様に行い、各気筒の瞬時回転数N2、N3、N4を各々求める。尚、本実施の形態では、4気筒エンジンの点火順序を、#1→#3→#2→#4に設定しているため、瞬時回転数もN1→N3→N2→N4の順で算出される。その際、入力されるクランクパルスが何れの気筒のものかを示す気筒判別は、カム角センサ14により検出したカムパルスの割り込みにより行なう。
【0056】
このようにして、図13のタイムチャートに示すように、各気筒の瞬時回転数N2n−1,N4n−1……N2,N1を順次算出する。
【0057】
この場合、診断実行条件を構成する要件の一部として、上述の表1に示したように、
・車速VSP=0Km/hであること
・スタータスイッチがONであること
・エンジン回転数NEが100〜400rpmであること
が設定されているため、圧縮圧力診断は、クランク軸1aをスタータモータでクランキングしている領域に限定される。
【0058】
スタータモータでクランク軸1aをクランキングすると、クランク軸1aの回転が次第に上昇し、ある回転範囲内で定常的な回転となるが、定常的な回転といえども実際には様々なフリクション要因等による回転変動があるので、クランキング時は常に過渡状態にあるといえる。
【0059】
そこで、過渡成分を吸収するため、診断対象気筒を基準として、当該気筒から1行程前の気筒の瞬時回転数と当該診断対象気筒の瞬時回転数との回転変動を示す差分値SAB0n[rpm]を求める。更に、クランクパルス検出用クランクスプロケット10に形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項として、診断対象気筒を基準に3行程前の気筒の瞬時回転数と2行程前の気筒の瞬時回転数との回転変動を示す差分値SAB1n[rpm]を求める。
【0060】
すなわち、図14のタイムチャートに示すように、診断対象気筒をN1とした場合、差分値SAB0nは、
SABOn=N4−N1
であり、又、差分値SAB1nは、
SAB1n=N3−N2
となる。又、1行程前の差分値SAB0n−1,SAB1n−1は、
SABOn−1=N2−N4
SAB1n−1=N1n−1−N3
となる。
【0061】
そして、差分値SAB0nとSAB1nの差分を算出し、この差分を診断対象気筒の診断値SAB2[rpm]として、記憶エリアの予め設定されているアドレスSAB2n=1,SAB2n=2〜SAB2n=KCNTSAB−1,SAB2n=KCNTSABに対し、表2に示すように順にストアする。
【0062】
【表2】
【0063】
ここで、図15に圧縮圧力が正常な場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値SAB2との算出タイムチャートを例示し、図16に、ある特定気筒の圧縮圧力に異常が生じている場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値SAB2との算出タイムチャートを例示する。
【0064】
図15に示すように、瞬時回転数が180°CA毎に交互に40rpm前後で変動しているのはクランクスプロケット10に形成されている歯の機械的な誤差に起因するものと考えられる。一方、診断値SAB2は、この機械的な誤差が修正されているため変動幅が小さくなり、0rpm付近に収束していることが解る。
【0065】
ところで、図16に示すように、例えば#1気筒に圧縮漏れがある場合、その分、起動時の負荷が小さいため、毎回算出される瞬時回転数が正常よりも1割程度高い状態となる。その結果、診断値SAB2は、#1気筒の異常により上昇した瞬時回転数と同じ割合で、0rpmを中心として大きく振幅する特性を示すことが解る。
【0066】
この場合、仮に、図15に示す正常時の診断値SAB2を基準として、その正負、或いは正負何れか側の値を超えるところに、判定ラインを設定することで、この判定ラインを超える診断値SAB2を示した場合、何れかの気筒が圧縮漏れを生じている判定することが可能となる。
【0067】
実験によれば、図16に示すように、何れかの気筒に圧縮漏れが生じている場合、診断値SAB2が、隣接する2気筒ずつ連続して負の値と正の値とを交互に繰り返す特性を示し、この中で、圧縮漏れの生じている気筒は、連続して負の値を示す気筒の2つ目であることが判明している。
【0068】
本実施の形態では、以下のステップで、判定ラインとして負の値を示す判定値KSABJDGMを設定し、この判定値KSABJDGM以下の診断値SAB2が検出された場合、2気筒連続して検出されたかどうかを調べ、2気筒連続して検出された場合は、2番目に異常を検出した気筒に圧縮漏れ(異常)が発生していると判定する。
【0069】
上述したステップS34からステップS35へ進むと、診断値算出カウンタCNTSABをインクリメントし(CNTSAB=CNTSAB+1)、算出回数をカウントする。その後、ステップS36へ進み、カムパルスの割り込み信号から今回の診断対象気筒を判別処理し、気筒判別CYLを算出する。尚、この気筒判別CYLは、その都度、上述した診断値SAB2のデータ記憶と同様、記憶エリアに予め設定されているアドレスCYLn=1,CYLn=2,〜CYLn=KCNTSAB−1,CYLn=KCNTSABに対して算出順にストアする。
【0070】
その後、ステップS37で、診断値SAB2と判定値KSABJDGMとを比較する。この判定値KSABJDGMは、診断対象気筒の圧縮圧力が正常値を示す下限値であり、予め実験等から求めて設定されているもので、本実施の形態では、KSABJDGM=−20[rpm]前後に設定されている。
【0071】
そして、SAB2<KSABJDGMのときは、診断対象気筒の圧縮圧力が異常と判定し、ステップS38へ進む。又、SAB2≧KSABJDGMのときは、診断対象気筒の圧縮圧力は正常と判定し、ステップS44へ分岐し、NG気筒判定フラグFNGCYLをクリアし(FNGCYL=0)、ルーチンを抜ける。
【0072】
一方、ステップS37からステップS38へ進むと、NG気筒判定フラグFNGCYLの値を調べ、FNGCYL=0、すなわち、1回前の診断対象気筒の診断値SAB2n−1が判定値KSABJDGMよりも大きく、正常であると判定されているときは、今回の診断値SAB2は判定値KSABJDGM以下であり異常であるが、前回の診断値SAB2は正常レベルにあり、異常な状態が連続していないので、ステップS39へ分岐し、NG気筒判定フラグFNGCYLをセットして(FNGCYL=1)、ルーチンを抜ける。
【0073】
一方、FNGCYL=1、すなわち、1回前の診断対象気筒の診断値SAB2n−1が判定値KSABJDGM以下のときは、この状態が2回連続して検出されたため、診断対象気筒に圧縮漏れ(異常)が発生していると判定することができる。従って、ステップS40へ進み、ステップS36で算出した、今回の診断対象気筒である気筒判別CYLのデータを、NG気筒NGCYLにストアし、ルーチンを抜ける。
【0074】
又、上述したステップS31或いはステップS41からステップS42へ進むと、ステップS42以下で、診断完了時の各処理を実施する。すなわち、ステップS42で、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアし(FPTSTMD=0)、ステップS43で、診断値算出カウンタCNTSABをクリアし(CNTSAB=0)、ステップS44で、NG気筒判定フラグFNGCYLをクリアして(FNGCYL=0)、ルーチンを抜ける。
【0075】
又、図8に診断結果送信処理ルーチンを示す。このルーチンは、予め設定された演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS51で、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1の値を参照し、FPEND1=0のときは、診断の算出が未完了であるため、そのままルーチンを抜ける。
【0076】
一方、FPEND1=1の診断完了のときは、ステップS52へ進み、圧縮圧力診断完了信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信する。
【0077】
次いで、ステップS53へ進み、NG気筒NGCYLのデータと、記憶エリアに格納されている診断値SAB2n=1〜SAB2n=KCNTSABの各データ、及びこれに対応して格納されている気筒判別CYLn=1〜CYLn=KCNTSABの各データを故障診断ツール24へ送信して、ルーチンを抜ける。
【0078】
次に、図9〜図12に示すフローチャートに従い、故障診断ツール24で実行される処理を示す。
【0079】
故障診断ツール24をデータリンクコネクタ23a,23bを介してECU21に接続した後、スイッチをONすると、故障診断ツール24のモニタ(図示せず)に診断メニューが表示され、操作者が、メニュー中から所望の診断モードを選択するまで待機状態にある。
【0080】
そして、操作者が、メニュー中から「圧縮圧力診断」モードを選択すると、図9、図10に示す圧縮圧力診断モード処理ルーチンが起動される。このルーチンは、予め設定した演算周期(例えば、512sec)毎に実施され、先ず、ステップS61で、操作者が「圧縮圧力診断」モードを選択したため、待機状態からステップS62へ進み、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2の値を調べる。
【0081】
この圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2は、圧縮圧力の診断が完了しているか否かを示すもので、初期値は0であり、ECU21からの圧縮圧力診断完了信号が受信されたときセットされる(図12参照)。
【0082】
故障診断ツール24をONした直後は、FPEND2=0であるため、ステップS68へ分岐し、圧縮圧力診断を開始する。
【0083】
以下においては、説明を簡単にするため、先ず、ステップS68以下のルーチンについて説明し、次いで、ステップS62以下のルーチンについて説明する。
【0084】
ステップS68へ進むと、圧縮圧力診断モード選択信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介してECU21へ送信し、続く、ステップS69で、圧縮圧力診断実行指示表示処理を実行する。
【0085】
すると、故障診断ツール24のモニタには、「ギアをニュートラルにしてスタータを回し、クランキングして下さい。」のメッセージが表示され、運転者が、ギアをニュートラルにセットした後、スタータスイッチをONすると、次のステップS70へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2の値を調べる。
【0086】
この診断実行条件成立2フラグFCNDTN2の値は、後述する図11に示す診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンにてセット或いはクリアされる。
【0087】
そして、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされるまで、ステップS69,S70のルーチンを繰り返し実行する待機状態となる。
【0088】
尚、その間、操作者がキャンセルキー(Cキー)をONして、圧縮圧力診断モードをキャンセルすると、ステップS71からステップS66へ進み、圧縮圧力診断モードキャンセル信号をECU21へ送信して、ルーチンを抜ける。その結果、故障診断ツール24のモニタには初期メニューが表示される。一方ECU21が、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信すると、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、圧縮圧力診断モードを終了する(図3のステップS3,S4参照)。
【0089】
又、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされるまで、ステップS69,S70のルーチンを繰り返し実行する待機状態にあるとき、図11に示す診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンが、設定演算周期(例えば、128msec)毎に実行される。以下においては、圧縮圧力診断モード処理ルーチンの説明を中断し、診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンについて説明する。
【0090】
このルーチンでは、先ずステップS81で、ECU21から診断実行条件成立信号が受診されたか否かを調べ、診断実行条件成立信号が受診された場合は、ステップS82へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2をセットして(FCNDTN2=1)、ルーチンを抜ける。
【0091】
又、診断実行条件成立信号が受診されなかった場合は、ステップS83へ分岐し、診断実行条件不成立信号が受診されたか否かを調べ、診断実行条件不成立信号が受診されたときは、ステップS84へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2をクリアして(FCNDTN2=0)、ルーチンを抜ける。又、診断実行条件不成立信号も受信されていない場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0092】
一方、上述した、図10のステップS70では、診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンで処理した診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされたとき、ステップS72へ進み、圧縮圧力診断実行中表示処理を行い、故障診断ツール24のモニタに「診断実行中です。クランキングを継続して下さい。」のメッセージを表示する。
【0093】
次いで、ステップS73で、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2の値を参照する。この圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2は、圧縮圧力の診断が完了したことをECU21からの通信により通知があったか否かを示す値であり、FPEND2=0の圧縮圧力診断が未完のときは、ステップS72へ戻り、圧縮圧力診断実行中表示処理が完了するまで、ルーチンを繰り返し実行する。
【0094】
そして、FPEND2=1の圧縮圧力診断完了のときは、ステップS74へ進み、圧縮圧力診断完了表示処理が実行される。すると、故障診断ツール24のモニタには、「診断が完了しました。クランキングを止めてYESキーを押して下さい。」のメッセージが表示される。
【0095】
その後、ステップS75へ進み、YESキーの入力があるまで、ステップS74の圧縮圧力診断完了表示処理に戻り、YESキーの入力待ちループに入る。
【0096】
そして、YESキーの入力があったときは、圧縮圧力の診断が完了したので、ステップS64へ進み、ステップS64〜S66の処理を実行してルーチンを抜ける。尚、このステップS64〜S66の処理については後述する。
【0097】
一方、ステップS62で、FPEND2=1の圧縮圧力診断完了のときは、ステップS63へ進み、故障診断ツール24のモニタに、「診断データの表示」を選択するか否かのメッセージ画面が表示され、「診断データの表示」を選択(YESキーをON)した場合は、ステップS64へ進み、選択しなかった(キャンセル(C)キーをONした)場合は、ステップS67へ分岐する。ステップS67へ分岐すると、新規の診断を実行するために、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2をクリアし(FPEND2=0)、上述したステップS68へ進む。
【0098】
又、ステップS63或いはステップS75からステップS64へ進むと、診断結果の表示処理を実行する。この診断結果の表示処理は、後述する図12に示す診断完了データ受信処理ルーチンによって受信されたECU21からのデータを、故障診断ツール24のモニタに表示するもので、表示内容は、以下に示す表3の通りである。
【0099】
【表3】
【0100】
そして、モニタへ出力する画像データの表示処理を実行した後は、ステップS65へ進み、操作者がキャンセルキーをON(Cキー入力)するまで、表示状態を継続し、Cキーの入力があったとき、診断結果の表示終了と判定し、ステップS66へ進み、圧縮圧力診断モードキャンセル信号をECU21へ送信し、ルーチンを抜ける。
【0101】
その結果、故障診断ツール24のモニタには初期メニューが表示され、一方、ECU21では、圧縮圧力診断モードキャンセル信号の受信により、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、圧縮圧力診断モードを終了する(図3のステップS3,S4参照)。
【0102】
又、図12にECU21からのデータを受信した後の診断完了データ受信処理ルーチンを示す。このルーチンは、予め設定された演算周期(例えば、128msec)毎に実施される。
【0103】
先ず、ステップS91で、ECU21からの圧縮圧力診断完了信号を受信したか否かを調べ、受信していないときは、そのままルーチンを抜ける。
【0104】
一方、圧縮圧力診断完了信号を受信したときは、ステップS92へ進み、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2をセットし(FPEND2=1)、ステップS93へ進み、診断結果データの受診処理を行う。
【0105】
すなわち、NG気筒NGCYLの受信データは予め確保された記憶エリアNGCYLにストアし、又、診断値SAB2n=1〜SAB2n=KCNTSABの受信データは予め確保された記憶エリアTSABn=1〜TSABn=KCNTSABにそれぞれ対応する順にストアし、更に、気筒判別CYLn=1〜CYLn=KCNTSABの受信データは予め確保された記憶エリアTCYLn=1〜TCYLn=KCNTSABにそれぞれ対応する順にストアして、ルーチンを抜ける。
【0106】
このように、本実施の形態では、気筒内圧を保持する部位の異常により、圧縮漏れの発生を、圧縮圧力を計測する装置を用いることなく、始動時のエンジン回転変動から検出するようにしたので、計測部品の追加や改良を必要とせず、従来のエンジン制御ユニット(ECU)に対してソフトウェアのみの追加改良で対応することができるため、低コストでの実現が可能であり、しかも、既存のエンジンに簡単に適用することができるため、汎用性に優れている。
【0107】
又、ECU21に予め組み込まれている通常制御モードと圧縮圧力診断モードとを、圧縮圧力診断機能が予め組み込まれている故障診断ツール24からの指令により、作業者が自由に切換えることができるため使い勝手がよい。
【0108】
更に、作業者が圧縮圧力診断モードを選択したときは、故障診断ツール24に表示される指示に従って、スタータを駆動させてクランキングを実施するだけで、圧縮圧力の診断が自動的に実行されるため、診断に要する時間が短く、且つ高精度な診断結果を得ることができる。
【0109】
又、圧縮圧力診断モード実行時は、燃料ポンプ、インジェクタ、点火を各々停止されるようにしているので、少なくとも燃料系と点火系との不具合要素が除かれて、機械的不具合要素に特定した診断を行なうことができ、故障の原因を早期に確定することができる。
【0110】
更に、診断結果を故障診断ツール24のモニタ上に表示させるようにしたので、不具合気筒の特定のみならず、診断値データをグラフ化して表示することも可能となり、モニタに表示された情報から、故障の程度を瞬時に把握することができる。
【0111】
又、診断対象気筒を基準として1行程前の気筒の瞬時回転数と、当該診断対象気筒の瞬時回転数との差分値SAB0n[rpm]を求め、更に、クランクパルス検出用クランクスプロケット10に形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項として、診断対象気筒を基準に3行程前の気筒の瞬時回転数と、2行程前の気筒の瞬時回転数との差分値SAB1n[rpm]を求め、この差分値SAB0nとSAB1nとの差分から診断値SAB2を算出し、この診断値SAB2と予め設定されている判定値KSABJDGMとを比較することで、圧縮圧力の異常の有無を検出するようにしたので、クランキング中の様々なフリクション要因等による回転変動の過渡成分が吸収されて、検出精度がより一層向上する。
【0112】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、各気筒の圧縮圧力の異常を、新たな計測部品を付設することなく、既存の構成で検出することができ、しかも、点火プラグの着脱が不要で、その上、電気系統を接続する各コネクタ類を取り外す必要が無く、簡単に検出することができるため、使い勝手が良く、故障診断時の作業効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン制御系の概略構成図
【図2】クランクスプロケットと瞬時回転数の検出領域との関係を示す説明図
【図3】圧縮圧力判定モードフラグ処理ルーチンを示すフローチャート
【図4】診断実行条件成立フラグ処理ルーチンを示すフローチャート
【図5】圧縮圧力診断モード実行判定ルーチンを示すフローチャート
【図6】圧縮圧力診断処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図7】圧縮圧力診断処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図8】診断結果送信処理ルーチンを示すフローチャート
【図9】圧縮圧力診断モード処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図10】圧縮圧力診断モード処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図11】診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンを示すフローチャート
【図12】診断完了データ受信処理ルーチンを示すフローチャート
【図13】各気筒の瞬時回転数の算出タイムチャート
【図14】各気筒の診断値の算出タイムチャート
【図15】圧縮圧力が正常な場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値との算出タイムチャート
【図16】特定気筒の圧縮圧力に異常が生じている場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値との算出タイムチャート
【符号の説明】
1 エンジン
KSABJDGM 判定値
N 瞬時回転数
NE エンジン回転数
SAB0n,SAB1n 差分値
SAB2 診断値
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧縮圧力の異常をエンジンの回転変動に基づいて検出するエンジンの圧縮圧力診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン不調等のトラブルシューティングを行なう過程の1つに、エンジンの圧縮圧力に異常がないか否かを調べる作業がある。
【0003】
エンジンの圧縮圧力の異常を検出する作業は、先ず、コンプレッションゲージを各気筒の点火プラグ用取付け孔に装着し、次いで、スタータモータによるクランキングを行い、各気筒の圧縮圧力を直接計測する。
【0004】
そして、この計測結果に基づき、例えば特定気筒のみが、他の気筒の平均圧縮圧力に比べ低い場合や、特定気筒圧縮圧力が予め設定されている基準値よりも低い場合は、当該気筒の吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等の、圧縮圧力に影響を与える部品に何らかの不具合があると考え、エンジン不調の原因の1つとして特定する。
【0005】
コンプレッションゲージにより各気筒の圧縮圧力を直接計測することで、点火系、燃料系、各センサやアクチュエータ類等のエンジン不調に起因する他の要素を排除することができるため、故障原因を的確に突き止めて修理することが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、コンプレッションゲージを用いて各気筒の圧縮圧力を計測する場合、作業者は、各気筒の点火プラグを全て取り外し、1つの気筒の点火プラグ用取付け孔に対してコンプレッションゲージを装着し、当該気筒の圧縮圧を計測する。そして、当該気筒の圧縮圧力の計測が終了した後、コンプレッションゲージを点火プラグ用取付け孔から取り外し、他の気筒の点火プラグ用取付け孔に取付けて、当該気筒の圧縮圧力を計測する。
【0007】
このように、コンプレッションゲージを用いて全気筒の圧縮圧力を計測しようとする場合、全ての気筒に対してコンプレッションゲージの取付け取り外しを行なわなければならないため、作業効率が悪い問題がある。
【0008】
又、1つの気筒の圧縮圧力を計測している間、他の気筒の点火プラグ用取付け孔は開放状態にあるため、開放状態にある点火プラグ用取付け孔から燃料が噴出してしまう可能性がある。これを防止するためには、燃料ポンプ或いはインジェクタのコネクタ等を予め取り外しておかなければならず、更に、イグナイタやエンジ制御ユニット(ECU)のコネクタ等を外し、点火信号を遮断して、ハイテンションコード等の点火系からの発火を防ぐ必要があり、複雑な作業が要求される不都合がある。
【0009】
これに対処するに、例えば特開平5−332886号公報には、シリンダ固有の動作特性量を連続的に測定し、この測定結果を気筒毎に配分して、個々の気筒のトルク或いは出力を測定して、このトルク或いは出力に基づき各気筒の圧縮圧等が正常か否かを調べる技術が開示されている。
【0010】
この公報に開示されている技術では、エンジン運転中に診断を行なうようにしているため、圧縮圧力が異常な気筒を特定することは可能であるが、その原因が、吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等を含むエンジン主機にあるのか、或いは点火系、燃料系、各センサ或いはアクチュエータ等の周辺機器にあるのかを特定することが困難であり、異常気筒を検出した後も、故障原因を更に探求する必要があり、診断作業に手間がかかる不具合がある。
【0011】
又、実開平7−29436号公報には、歪みゲージをシリンダライナに取付け、この歪みゲージで検出した筒内最大圧力を常時検出して、圧縮圧力の異常の有無を判定する技術が開示されている。
【0012】
しかし、この公報に開示されている技術では、各気筒に歪みゲージを取付けておかなければならないため、コスト高となり、実現性に乏しい。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み、各気筒の圧縮圧力の異常を、特別な計測部品を付設することなく、既存の構成で検出することができるばかりでなく、点火プラグの着脱が不要で、しかも電気系統を接続する各コネクタ類を取り外すことなく簡単に検出することができ、使い勝手が良く、故障診断作業の効率化を実現できるエンジンの圧縮圧力診断装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によるエンジンの圧縮圧力診断装置は、通常のエンジン制御モードを実行する通常制御モード実行手段と、圧縮圧力の異常を検出する圧縮圧力診断モードを実行する圧縮圧力診断モード実行手段と、上記通常制御モードと上記圧縮圧力診断モードとを選択するモード選択手段と、エンジンの回転変動を検出する回転変動検出手段とを備え、上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、上記エンジンの回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0015】
このような構成では、エンジンの回転変動から圧縮圧力の異常を検出するようにしたので、計測部品の追加や改良を必要とせず、従来のエンジン制御システムに対しソフトウェアのみの追加改良で実施することが可能となる。
【0016】
この場合、好ましくは、1)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、燃料系及び点火系の駆動を停止すると共にクランキング時の回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0017】
2)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、各気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0018】
3)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0019】
4)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする。
【0020】
5)上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、又3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、該両差分値の差分を診断値として設定し、該診断値と予め設定した判定値とを比較して圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする。
【0021】
6)異常と判定された気筒の診断値が2回連続して検出された場合、2番目に異常を検出した気筒を圧縮圧力の異常気筒として特定することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の一実施の形態を説明する。図1にはエンジン制御系の概略構成図が示されている。
【0023】
同図の符号1はエンジンで、本実施の形態においては水平対向型4気筒エンジンを示す。このエンジン1に吸気マニホルド2と排気マニホルド3とが各々連通されている。
【0024】
吸気マニホルド2の上流側がエアチャンバ4に集合され、このエアチャンバ4の上流に吸気管5が連通され、この吸気管5の上流がエアクリーナ(図示せず)に連通されている。又、吸気管5のエアチャンバ4の直上流にスロットル弁6が介装されている。尚、図示しないが、吸気管5のエアクリーナの直下流に、吸入空気量を検出する吸入空気量センサが介装されている。又、排気マニホルド3の集合部に排気管7が連通され、この排気管7に三元触媒等からなる触媒8が介装され、更に、その下流にマフラ9が連通されている。
【0025】
又、エンジン1のクランク軸1aに軸着するクランクパルス検出用クランクスプロケット10の外周に、このクランクスプロケット10の回転からエンジン回転数を検出するクランク角センサ11が対設されている。更に、カム軸12に軸着するカムパルス検出用カムスプロケット13の外周に、このカムスプロケット13の回転から気筒判別のためのカムパルスを検出するカム角センサ14が対設されている。尚、本実施の形態によるエンジン1の点火順序は#1→#3→#2→#4に設定されている。
【0026】
クランクスプロケット10の外周には、設定クランク角毎に歯が形成されており、図2に示すように、クランク角センサ11が圧縮上死点TDCを示す位置に形成された歯と、この圧縮上死点TDCに対して圧縮上死点前BDCA[deg}の位置に形成された歯を検出することで、後述するエンジン制御ユニット21では圧縮上死点前BDCA[deg}間の通過時間を計時する。又、図示しないが、カムスプロケット13の外周には気筒判別のための歯が、各気筒に対応して形成されている。
【0027】
一方、符号21はエンジン制御ユニット(ECU)で、CPU22,ROM(図示せず),RAM(図示せず)、及びデータの書き換えが可能な不揮発性メモリ(例えば、EEP(Electrically Erasable Programmable)ROM、フラッシュメモリ)やバックアップRAM等を備えたマイクロコンピュータ等を主体に構成されている。
【0028】
CPU22では、ROMに記憶されている制御プログラムに従い、各センサ類からの検出信号等を処理し、RAMに格納されている各種データ、及び不揮発性メモリやバックアップRAMに格納されている各種学習値データ等に基づき、燃料噴射量、点火時期等を演算し、燃料噴射制御、点火時期制御等のエンジン制御機能を有すると共に、各種の故障診断を行なう機能を有する。
【0029】
ECU21で処理された、点火時期、燃料噴射量等の演算結果、及び各種の故障診断結果は、このECU21から延出するデータリンクコネクタ23aに、故障診断ツール(セレクトモニタ)24から延出するデータリンクコネクタ23bを接続することで、この故障診断ツール24にて読出すことができる。尚、この故障診断ツール24については、本出願人によって先に提出された特許第3245348号公報等に詳述されているため、ここでの説明は省略する。
【0030】
故障診断ツール24を用いて診断することのできる項目の1つとして、筒内圧縮圧力診断がある。すなわち、ある特定気筒において吸気弁、排気弁、ピストン、ピストンリング、ヘッドガスケット、シリンダヘッド等、気筒内圧を保持する部位から圧縮漏れが生じると、当該気筒の圧縮圧力が正常時の圧縮圧力に対して低い値を示したり、或いは、他の気筒の圧縮圧力の平均値及び圧力変動と比較した場合、その平均値が低く、且つ圧力変動が大きくなることが知られている。
【0031】
これは気筒内圧を保持する部位の異常により気筒内に吸入した空気が漏れるためである。この状態においてスタータモータによりクランキングを行ない、圧縮行程のある特定の回転角範囲の経過時間ついて、正常な気筒と、圧縮漏れのある気筒とを比較すると、正常な気筒の経過時間(瞬時回転数)は空気の圧縮抵抗により相対的に長くなり、圧縮漏れのある気筒の経過時間は圧縮抵抗が小さいため、相対的に短くなる。
【0032】
本実施の形態では、正常な気筒と圧縮漏れの発生している気筒との瞬時回転数の違いに着目し、瞬時回転数をパラメータとして計算処理することで、圧縮圧力の異常を検出するものである。
【0033】
ECU21で処理される筒内圧縮圧力診断は、具体的には、図3〜図12に示すフローチャートに従って実行される。
【0034】
イグニッションスイッチがONされると、図3に示す圧縮圧力判定モードフラグ処理ルーチンが所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行される。
【0035】
そして、先ず、ステップS1で、ECU21に対してデータリンクコネクタ23a,23bを介して接続されている故障診断ツール24からの信号を読込み、この故障診断ツール24から圧縮圧力診断モード選択信号が送信されているか否かを調べる。
【0036】
ECU21にデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24を接続した後、この故障診断ツール24のスイッチをONすると、モニタに故障診断メニューが表示され、操作者がこの故障診断面ニューから「圧縮圧力診断」モードを選択すると、故障診断ツール24からECU21に対して圧縮圧力診断モード選択信号が送信される。又、「圧縮圧力診断」モードをキャンセルする場合は、キャンセルキー(Cキー)をONすることで、圧縮圧力診断モードキャンセル信号がECU21へ送信される。尚、故障診断ツール24で処理されるデータ信号の送受については、後述する。
【0037】
そして、ECU24が故障診断ツール24からの圧縮圧力診断モード選択信号を受信したときは、ステップS2へ進み、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをセットして(FPTSTMD=1)、ルーチンを抜ける。その結果、エンジンの制御モードが通常制御モードから圧縮圧力診断モードに切換えられる。
【0038】
又、ステップS1で圧縮圧力診断モード選択信号を受信しなかったときは、ステップS3へ分岐し、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信したか否かを調べ、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信したときは、ステップS4へ進み、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、ルーチンを抜ける。その結果、エンジンの制御モードが圧縮圧力診断モードから通常制御モードへ戻される。
【0039】
又、ステップS3で圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信しなかったとき、すなわち、故障診断ツール24で、圧縮圧力診断モードが選択されていない場合は、そのままルーチンを抜け、通常制御モード或いは選択した他の圧縮圧力診断モードを実行する。
【0040】
この圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDは、図4に示す診断実行条件成立フラグ処理ルーチンにおいて読込まれる。
【0041】
このルーチンは、所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS11で診断実行条件が全て成立したか否かを調べる。
【0042】
本実施の形態による診断実行条件は、表1の通りである。
【表1】
【0043】
そして、診断実行条件が全て成立したとき、ステップS12へ進み、診断実行条件成立フラグFCNDTNをセットし(FCNDTN=1)、ステップS13へ進み、診断実行条件成立信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信し、ルーチンを抜ける。
【0044】
一方、ステップS11で、診断実行条件不成立と判断したときは、ステップS14へ分岐し、診断実行条件成立フラグFCNDTNをクリアし(FCNDTN=0)、ステップS15へ進み、診断実行条件不成立信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信して、ルーチンを抜ける。
【0045】
上述した圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMD、及び診断実行条件成立フラグFCNDTNは、図5に示す圧縮圧力診断モード実行判定ルーチンで読込まれる。
【0046】
このルーチンは所定演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS21で、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDの状態を調べ、FPTSTMD=1のときは、圧縮圧力診断モードが選択され、或いは実行中であるため、ステップS22へ進み、燃料噴射制御、点火時期制御を圧縮圧力診断モードに切換え、燃料ポンプ、インジェクタ等の燃料系、及び点火系の駆動を停止させる処理を実行する。
【0047】
次いで、ステップS23へ進み、診断実行条件成立フラグFCNDTNの状態を調べ、FCNDTN=0のときは診断実行条件不成立であるため、ステップS21へ戻り、診断実行条件が成立するまで待機する。又、FCNDTN=1のときは、診断実行条件成立であるため、ステップS24へ進み、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNをセットして(FPACTN=1)、ルーチンを抜ける。
【0048】
又、ステップS21で、FPTSTMD=0のときは、圧縮圧力診断モードがキャンセルされているため、ステップS25へ分岐し、燃料噴射制御、及び点火時期制御を通常モードに戻し、燃料ポンプ、インジェクタ等の燃料系、及び点火系の停止処理を解除する。
【0049】
その後、ステップS26へ進み、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNをクリアして(FPACTN=0)、ルーチンを抜ける。
【0050】
この圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNは、図6、図7に示す圧縮圧力診断処理ルーチンで読込まれる。
【0051】
このルーチンは、予め設定した各気筒の圧縮上死点後(ATDC)から次の気筒の圧縮上死点TDCの1行程前下死点までの予め設定した任意のクランク角毎に実施される。
【0052】
先ず、ステップS31で、圧縮圧力診断処理実行フラグFPACTNの状態を調べ、FPACTN=1のときは、圧縮圧力診断処理が許可されているため、ステップS32へ進み、PACTN=0のときは、圧縮圧力診断処理が不許可であるため、ステップS42へ分岐する。
【0053】
ステップS31からステップS32へ進むと、診断値算出カウンタCNTSABと、予め設定した診断値算出判定回数KCNSABとを比較し、CNTSAB<KCNSABのときは、圧縮圧力診断処理中であるため、ステップS33へ進む。又、CNTSAB=KCNSABのときは、診断値SAB2の算出回数が診断に必要な所定の回数(KCNSAB回)に達したと判定し、ステップS41へ分岐し、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1をセットし(FPEND1=1)、ステップS42へ進む。尚、ステップS42以下のルーチンについては後述する。
【0054】
ステップS32からステップS33へ進むと、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1をクリアし(FPEND1=0)、ステップS34で、診断値SAB2[rpm]を算出した後、ステップS35へ進む。
【0055】
ここで、診断値SAB2の求め方について説明する。
クランク軸1aのある特定の回転位置、例えば、図2に示すように、クランク角センサ11が、#1気筒圧縮上死点前BDCA1[deg]から#1気筒圧縮上死点TDC1を検出するまでの回転角経過時間T1を、ECU21にて計測し、#1気筒の瞬時回転数N1[rpm]を算出する。これを#2気筒、#3気筒、#4気筒についても同様に行い、各気筒の瞬時回転数N2、N3、N4を各々求める。尚、本実施の形態では、4気筒エンジンの点火順序を、#1→#3→#2→#4に設定しているため、瞬時回転数もN1→N3→N2→N4の順で算出される。その際、入力されるクランクパルスが何れの気筒のものかを示す気筒判別は、カム角センサ14により検出したカムパルスの割り込みにより行なう。
【0056】
このようにして、図13のタイムチャートに示すように、各気筒の瞬時回転数N2n−1,N4n−1……N2,N1を順次算出する。
【0057】
この場合、診断実行条件を構成する要件の一部として、上述の表1に示したように、
・車速VSP=0Km/hであること
・スタータスイッチがONであること
・エンジン回転数NEが100〜400rpmであること
が設定されているため、圧縮圧力診断は、クランク軸1aをスタータモータでクランキングしている領域に限定される。
【0058】
スタータモータでクランク軸1aをクランキングすると、クランク軸1aの回転が次第に上昇し、ある回転範囲内で定常的な回転となるが、定常的な回転といえども実際には様々なフリクション要因等による回転変動があるので、クランキング時は常に過渡状態にあるといえる。
【0059】
そこで、過渡成分を吸収するため、診断対象気筒を基準として、当該気筒から1行程前の気筒の瞬時回転数と当該診断対象気筒の瞬時回転数との回転変動を示す差分値SAB0n[rpm]を求める。更に、クランクパルス検出用クランクスプロケット10に形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項として、診断対象気筒を基準に3行程前の気筒の瞬時回転数と2行程前の気筒の瞬時回転数との回転変動を示す差分値SAB1n[rpm]を求める。
【0060】
すなわち、図14のタイムチャートに示すように、診断対象気筒をN1とした場合、差分値SAB0nは、
SABOn=N4−N1
であり、又、差分値SAB1nは、
SAB1n=N3−N2
となる。又、1行程前の差分値SAB0n−1,SAB1n−1は、
SABOn−1=N2−N4
SAB1n−1=N1n−1−N3
となる。
【0061】
そして、差分値SAB0nとSAB1nの差分を算出し、この差分を診断対象気筒の診断値SAB2[rpm]として、記憶エリアの予め設定されているアドレスSAB2n=1,SAB2n=2〜SAB2n=KCNTSAB−1,SAB2n=KCNTSABに対し、表2に示すように順にストアする。
【0062】
【表2】
【0063】
ここで、図15に圧縮圧力が正常な場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値SAB2との算出タイムチャートを例示し、図16に、ある特定気筒の圧縮圧力に異常が生じている場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値SAB2との算出タイムチャートを例示する。
【0064】
図15に示すように、瞬時回転数が180°CA毎に交互に40rpm前後で変動しているのはクランクスプロケット10に形成されている歯の機械的な誤差に起因するものと考えられる。一方、診断値SAB2は、この機械的な誤差が修正されているため変動幅が小さくなり、0rpm付近に収束していることが解る。
【0065】
ところで、図16に示すように、例えば#1気筒に圧縮漏れがある場合、その分、起動時の負荷が小さいため、毎回算出される瞬時回転数が正常よりも1割程度高い状態となる。その結果、診断値SAB2は、#1気筒の異常により上昇した瞬時回転数と同じ割合で、0rpmを中心として大きく振幅する特性を示すことが解る。
【0066】
この場合、仮に、図15に示す正常時の診断値SAB2を基準として、その正負、或いは正負何れか側の値を超えるところに、判定ラインを設定することで、この判定ラインを超える診断値SAB2を示した場合、何れかの気筒が圧縮漏れを生じている判定することが可能となる。
【0067】
実験によれば、図16に示すように、何れかの気筒に圧縮漏れが生じている場合、診断値SAB2が、隣接する2気筒ずつ連続して負の値と正の値とを交互に繰り返す特性を示し、この中で、圧縮漏れの生じている気筒は、連続して負の値を示す気筒の2つ目であることが判明している。
【0068】
本実施の形態では、以下のステップで、判定ラインとして負の値を示す判定値KSABJDGMを設定し、この判定値KSABJDGM以下の診断値SAB2が検出された場合、2気筒連続して検出されたかどうかを調べ、2気筒連続して検出された場合は、2番目に異常を検出した気筒に圧縮漏れ(異常)が発生していると判定する。
【0069】
上述したステップS34からステップS35へ進むと、診断値算出カウンタCNTSABをインクリメントし(CNTSAB=CNTSAB+1)、算出回数をカウントする。その後、ステップS36へ進み、カムパルスの割り込み信号から今回の診断対象気筒を判別処理し、気筒判別CYLを算出する。尚、この気筒判別CYLは、その都度、上述した診断値SAB2のデータ記憶と同様、記憶エリアに予め設定されているアドレスCYLn=1,CYLn=2,〜CYLn=KCNTSAB−1,CYLn=KCNTSABに対して算出順にストアする。
【0070】
その後、ステップS37で、診断値SAB2と判定値KSABJDGMとを比較する。この判定値KSABJDGMは、診断対象気筒の圧縮圧力が正常値を示す下限値であり、予め実験等から求めて設定されているもので、本実施の形態では、KSABJDGM=−20[rpm]前後に設定されている。
【0071】
そして、SAB2<KSABJDGMのときは、診断対象気筒の圧縮圧力が異常と判定し、ステップS38へ進む。又、SAB2≧KSABJDGMのときは、診断対象気筒の圧縮圧力は正常と判定し、ステップS44へ分岐し、NG気筒判定フラグFNGCYLをクリアし(FNGCYL=0)、ルーチンを抜ける。
【0072】
一方、ステップS37からステップS38へ進むと、NG気筒判定フラグFNGCYLの値を調べ、FNGCYL=0、すなわち、1回前の診断対象気筒の診断値SAB2n−1が判定値KSABJDGMよりも大きく、正常であると判定されているときは、今回の診断値SAB2は判定値KSABJDGM以下であり異常であるが、前回の診断値SAB2は正常レベルにあり、異常な状態が連続していないので、ステップS39へ分岐し、NG気筒判定フラグFNGCYLをセットして(FNGCYL=1)、ルーチンを抜ける。
【0073】
一方、FNGCYL=1、すなわち、1回前の診断対象気筒の診断値SAB2n−1が判定値KSABJDGM以下のときは、この状態が2回連続して検出されたため、診断対象気筒に圧縮漏れ(異常)が発生していると判定することができる。従って、ステップS40へ進み、ステップS36で算出した、今回の診断対象気筒である気筒判別CYLのデータを、NG気筒NGCYLにストアし、ルーチンを抜ける。
【0074】
又、上述したステップS31或いはステップS41からステップS42へ進むと、ステップS42以下で、診断完了時の各処理を実施する。すなわち、ステップS42で、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアし(FPTSTMD=0)、ステップS43で、診断値算出カウンタCNTSABをクリアし(CNTSAB=0)、ステップS44で、NG気筒判定フラグFNGCYLをクリアして(FNGCYL=0)、ルーチンを抜ける。
【0075】
又、図8に診断結果送信処理ルーチンを示す。このルーチンは、予め設定された演算周期(例えば、128msec)毎に実行され、先ず、ステップS51で、圧縮圧力診断完了1フラグFPEND1の値を参照し、FPEND1=0のときは、診断の算出が未完了であるため、そのままルーチンを抜ける。
【0076】
一方、FPEND1=1の診断完了のときは、ステップS52へ進み、圧縮圧力診断完了信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介して故障診断ツール24へ送信する。
【0077】
次いで、ステップS53へ進み、NG気筒NGCYLのデータと、記憶エリアに格納されている診断値SAB2n=1〜SAB2n=KCNTSABの各データ、及びこれに対応して格納されている気筒判別CYLn=1〜CYLn=KCNTSABの各データを故障診断ツール24へ送信して、ルーチンを抜ける。
【0078】
次に、図9〜図12に示すフローチャートに従い、故障診断ツール24で実行される処理を示す。
【0079】
故障診断ツール24をデータリンクコネクタ23a,23bを介してECU21に接続した後、スイッチをONすると、故障診断ツール24のモニタ(図示せず)に診断メニューが表示され、操作者が、メニュー中から所望の診断モードを選択するまで待機状態にある。
【0080】
そして、操作者が、メニュー中から「圧縮圧力診断」モードを選択すると、図9、図10に示す圧縮圧力診断モード処理ルーチンが起動される。このルーチンは、予め設定した演算周期(例えば、512sec)毎に実施され、先ず、ステップS61で、操作者が「圧縮圧力診断」モードを選択したため、待機状態からステップS62へ進み、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2の値を調べる。
【0081】
この圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2は、圧縮圧力の診断が完了しているか否かを示すもので、初期値は0であり、ECU21からの圧縮圧力診断完了信号が受信されたときセットされる(図12参照)。
【0082】
故障診断ツール24をONした直後は、FPEND2=0であるため、ステップS68へ分岐し、圧縮圧力診断を開始する。
【0083】
以下においては、説明を簡単にするため、先ず、ステップS68以下のルーチンについて説明し、次いで、ステップS62以下のルーチンについて説明する。
【0084】
ステップS68へ進むと、圧縮圧力診断モード選択信号をデータリンクコネクタ23a,23bを介してECU21へ送信し、続く、ステップS69で、圧縮圧力診断実行指示表示処理を実行する。
【0085】
すると、故障診断ツール24のモニタには、「ギアをニュートラルにしてスタータを回し、クランキングして下さい。」のメッセージが表示され、運転者が、ギアをニュートラルにセットした後、スタータスイッチをONすると、次のステップS70へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2の値を調べる。
【0086】
この診断実行条件成立2フラグFCNDTN2の値は、後述する図11に示す診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンにてセット或いはクリアされる。
【0087】
そして、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされるまで、ステップS69,S70のルーチンを繰り返し実行する待機状態となる。
【0088】
尚、その間、操作者がキャンセルキー(Cキー)をONして、圧縮圧力診断モードをキャンセルすると、ステップS71からステップS66へ進み、圧縮圧力診断モードキャンセル信号をECU21へ送信して、ルーチンを抜ける。その結果、故障診断ツール24のモニタには初期メニューが表示される。一方ECU21が、圧縮圧力診断モードキャンセル信号を受信すると、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、圧縮圧力診断モードを終了する(図3のステップS3,S4参照)。
【0089】
又、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされるまで、ステップS69,S70のルーチンを繰り返し実行する待機状態にあるとき、図11に示す診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンが、設定演算周期(例えば、128msec)毎に実行される。以下においては、圧縮圧力診断モード処理ルーチンの説明を中断し、診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンについて説明する。
【0090】
このルーチンでは、先ずステップS81で、ECU21から診断実行条件成立信号が受診されたか否かを調べ、診断実行条件成立信号が受診された場合は、ステップS82へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2をセットして(FCNDTN2=1)、ルーチンを抜ける。
【0091】
又、診断実行条件成立信号が受診されなかった場合は、ステップS83へ分岐し、診断実行条件不成立信号が受診されたか否かを調べ、診断実行条件不成立信号が受診されたときは、ステップS84へ進み、診断実行条件成立2フラグFCNDTN2をクリアして(FCNDTN2=0)、ルーチンを抜ける。又、診断実行条件不成立信号も受信されていない場合は、そのままルーチンを抜ける。
【0092】
一方、上述した、図10のステップS70では、診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンで処理した診断実行条件成立2フラグFCNDTN2がセットされたとき、ステップS72へ進み、圧縮圧力診断実行中表示処理を行い、故障診断ツール24のモニタに「診断実行中です。クランキングを継続して下さい。」のメッセージを表示する。
【0093】
次いで、ステップS73で、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2の値を参照する。この圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2は、圧縮圧力の診断が完了したことをECU21からの通信により通知があったか否かを示す値であり、FPEND2=0の圧縮圧力診断が未完のときは、ステップS72へ戻り、圧縮圧力診断実行中表示処理が完了するまで、ルーチンを繰り返し実行する。
【0094】
そして、FPEND2=1の圧縮圧力診断完了のときは、ステップS74へ進み、圧縮圧力診断完了表示処理が実行される。すると、故障診断ツール24のモニタには、「診断が完了しました。クランキングを止めてYESキーを押して下さい。」のメッセージが表示される。
【0095】
その後、ステップS75へ進み、YESキーの入力があるまで、ステップS74の圧縮圧力診断完了表示処理に戻り、YESキーの入力待ちループに入る。
【0096】
そして、YESキーの入力があったときは、圧縮圧力の診断が完了したので、ステップS64へ進み、ステップS64〜S66の処理を実行してルーチンを抜ける。尚、このステップS64〜S66の処理については後述する。
【0097】
一方、ステップS62で、FPEND2=1の圧縮圧力診断完了のときは、ステップS63へ進み、故障診断ツール24のモニタに、「診断データの表示」を選択するか否かのメッセージ画面が表示され、「診断データの表示」を選択(YESキーをON)した場合は、ステップS64へ進み、選択しなかった(キャンセル(C)キーをONした)場合は、ステップS67へ分岐する。ステップS67へ分岐すると、新規の診断を実行するために、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2をクリアし(FPEND2=0)、上述したステップS68へ進む。
【0098】
又、ステップS63或いはステップS75からステップS64へ進むと、診断結果の表示処理を実行する。この診断結果の表示処理は、後述する図12に示す診断完了データ受信処理ルーチンによって受信されたECU21からのデータを、故障診断ツール24のモニタに表示するもので、表示内容は、以下に示す表3の通りである。
【0099】
【表3】
【0100】
そして、モニタへ出力する画像データの表示処理を実行した後は、ステップS65へ進み、操作者がキャンセルキーをON(Cキー入力)するまで、表示状態を継続し、Cキーの入力があったとき、診断結果の表示終了と判定し、ステップS66へ進み、圧縮圧力診断モードキャンセル信号をECU21へ送信し、ルーチンを抜ける。
【0101】
その結果、故障診断ツール24のモニタには初期メニューが表示され、一方、ECU21では、圧縮圧力診断モードキャンセル信号の受信により、圧縮圧力診断モードフラグFPTSTMDをクリアして(FPTSTMD=0)、圧縮圧力診断モードを終了する(図3のステップS3,S4参照)。
【0102】
又、図12にECU21からのデータを受信した後の診断完了データ受信処理ルーチンを示す。このルーチンは、予め設定された演算周期(例えば、128msec)毎に実施される。
【0103】
先ず、ステップS91で、ECU21からの圧縮圧力診断完了信号を受信したか否かを調べ、受信していないときは、そのままルーチンを抜ける。
【0104】
一方、圧縮圧力診断完了信号を受信したときは、ステップS92へ進み、圧縮圧力診断完了2フラグFPEND2をセットし(FPEND2=1)、ステップS93へ進み、診断結果データの受診処理を行う。
【0105】
すなわち、NG気筒NGCYLの受信データは予め確保された記憶エリアNGCYLにストアし、又、診断値SAB2n=1〜SAB2n=KCNTSABの受信データは予め確保された記憶エリアTSABn=1〜TSABn=KCNTSABにそれぞれ対応する順にストアし、更に、気筒判別CYLn=1〜CYLn=KCNTSABの受信データは予め確保された記憶エリアTCYLn=1〜TCYLn=KCNTSABにそれぞれ対応する順にストアして、ルーチンを抜ける。
【0106】
このように、本実施の形態では、気筒内圧を保持する部位の異常により、圧縮漏れの発生を、圧縮圧力を計測する装置を用いることなく、始動時のエンジン回転変動から検出するようにしたので、計測部品の追加や改良を必要とせず、従来のエンジン制御ユニット(ECU)に対してソフトウェアのみの追加改良で対応することができるため、低コストでの実現が可能であり、しかも、既存のエンジンに簡単に適用することができるため、汎用性に優れている。
【0107】
又、ECU21に予め組み込まれている通常制御モードと圧縮圧力診断モードとを、圧縮圧力診断機能が予め組み込まれている故障診断ツール24からの指令により、作業者が自由に切換えることができるため使い勝手がよい。
【0108】
更に、作業者が圧縮圧力診断モードを選択したときは、故障診断ツール24に表示される指示に従って、スタータを駆動させてクランキングを実施するだけで、圧縮圧力の診断が自動的に実行されるため、診断に要する時間が短く、且つ高精度な診断結果を得ることができる。
【0109】
又、圧縮圧力診断モード実行時は、燃料ポンプ、インジェクタ、点火を各々停止されるようにしているので、少なくとも燃料系と点火系との不具合要素が除かれて、機械的不具合要素に特定した診断を行なうことができ、故障の原因を早期に確定することができる。
【0110】
更に、診断結果を故障診断ツール24のモニタ上に表示させるようにしたので、不具合気筒の特定のみならず、診断値データをグラフ化して表示することも可能となり、モニタに表示された情報から、故障の程度を瞬時に把握することができる。
【0111】
又、診断対象気筒を基準として1行程前の気筒の瞬時回転数と、当該診断対象気筒の瞬時回転数との差分値SAB0n[rpm]を求め、更に、クランクパルス検出用クランクスプロケット10に形成されているクランク角上で対向する気筒180°CA間の歯の機械的誤差の補正項として、診断対象気筒を基準に3行程前の気筒の瞬時回転数と、2行程前の気筒の瞬時回転数との差分値SAB1n[rpm]を求め、この差分値SAB0nとSAB1nとの差分から診断値SAB2を算出し、この診断値SAB2と予め設定されている判定値KSABJDGMとを比較することで、圧縮圧力の異常の有無を検出するようにしたので、クランキング中の様々なフリクション要因等による回転変動の過渡成分が吸収されて、検出精度がより一層向上する。
【0112】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、各気筒の圧縮圧力の異常を、新たな計測部品を付設することなく、既存の構成で検出することができ、しかも、点火プラグの着脱が不要で、その上、電気系統を接続する各コネクタ類を取り外す必要が無く、簡単に検出することができるため、使い勝手が良く、故障診断時の作業効率を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンジン制御系の概略構成図
【図2】クランクスプロケットと瞬時回転数の検出領域との関係を示す説明図
【図3】圧縮圧力判定モードフラグ処理ルーチンを示すフローチャート
【図4】診断実行条件成立フラグ処理ルーチンを示すフローチャート
【図5】圧縮圧力診断モード実行判定ルーチンを示すフローチャート
【図6】圧縮圧力診断処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図7】圧縮圧力診断処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図8】診断結果送信処理ルーチンを示すフローチャート
【図9】圧縮圧力診断モード処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
【図10】圧縮圧力診断モード処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
【図11】診断実行条件成立フラグ状態受信処理ルーチンを示すフローチャート
【図12】診断完了データ受信処理ルーチンを示すフローチャート
【図13】各気筒の瞬時回転数の算出タイムチャート
【図14】各気筒の診断値の算出タイムチャート
【図15】圧縮圧力が正常な場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値との算出タイムチャート
【図16】特定気筒の圧縮圧力に異常が生じている場合に算出される各気筒の瞬時回転数と診断値との算出タイムチャート
【符号の説明】
1 エンジン
KSABJDGM 判定値
N 瞬時回転数
NE エンジン回転数
SAB0n,SAB1n 差分値
SAB2 診断値
Claims (7)
- 通常のエンジン制御モードを実行する通常制御モード実行手段と、
圧縮圧力の異常を検出する圧縮圧力診断モードを実行する圧縮圧力診断モード実行手段と、
上記通常制御モードと上記圧縮圧力診断モードとを選択するモード選択手段と、
エンジンの回転変動を検出する回転変動検出手段と、
を備え、
上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、上記エンジンの回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とするエンジンの圧縮圧力診断装置。 - 上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、燃料系及び点火系の駆動を停止すると共にクランキング時の回転変動に基づいて圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする請求項1記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
- 上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、各気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする請求項1或いは2記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
- 上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする請求項1或いは2記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
- 上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値に基づいてエンジンの回転変動を検出することを特徴とする請求項1或いは2記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
- 上記モード選択手段で上記圧縮圧力診断モードが選択された場合、1行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と現在の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、又3行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数と2行程前の気筒の圧縮行程時の設定クランク角間の瞬時回転数との差分値を算出し、該両差分値の差分を診断値として設定し、該診断値と予め設定した判定値とを比較して圧縮圧力の異常を検出することを特徴とする請求項1或いは2記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
- 異常と判定された気筒の診断値が2回連続して検出された場合、2番目に異常を検出した気筒を圧縮圧力の異常気筒として特定することを特徴とする請求項6記載のエンジンの圧縮圧力診断装置。
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