JP2004018985A - 金属条材の熱処理方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】小径、長尺の円筒又は円柱状の金属条材をバッチ方式で、曲がりを発生させることなく熱処理する。
【解決手段】金属条材1の上下端を把持装置2と張力装置7で保持し、金属条材を加熱、昇温させた後、冷却装置20で冷却する。そして冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置7によって金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させ、曲がりのない状態に保持した状態で材料変態を確定させ、曲がり発生を防止する。
【選択図】 図1
【解決手段】金属条材1の上下端を把持装置2と張力装置7で保持し、金属条材を加熱、昇温させた後、冷却装置20で冷却する。そして冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置7によって金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させ、曲がりのない状態に保持した状態で材料変態を確定させ、曲がり発生を防止する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属条材の熱処理方法及び装置に関し、特に、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対して曲がりを生じることなく熱処理を施すのに好適な熱処理方法及び装置に関する。なお、ここで云う「熱処理」とは、焼入や焼戻しに代表される狭義の熱処理に留まらず、たとえば、金属条材に溶射などによって形成した自溶合金被覆を緻密化させるための再溶融処理等も含めて、金属条材を変態点より高温に加熱して行う処理全般を指すものとする。
【0002】
【従来の技術】
従来より、種々な金属条材に対して焼入れなどの熱処理を施すことが行われており、その方法としては、バッチ方式、連続方式のいずれも知られていた。ところで、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対する熱処理を行う場合、冷却時に曲がりが生じやすいという問題があり、特に、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった極端に細長いものでは顕著に曲がりが生じるという問題があった。例えば、バッチ方式で熱処理を行う場合、金属条材の冷却に当たっては、金属条材を適当な支持手段で水平に支持した状態で冷却するが、その際、金属条材に自重による撓みを生じるとか、冷却温度むらが生じることなどにより、曲がりが生じていた。また、金属条材を垂直に吊り下げた状態で冷却を行っても、やはり温度むらなどにより曲がりが生じていた。一方、金属条材を連続的に走行させながら加熱、冷却を行う連続方式の熱処理を行う場合でも、単に金属条材を搬送ローラ等で保持しただけでは曲がりが生じていた。
【0003】
そこで、本出願人は、このような小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材を、曲がりを生じることなく連続的に熱処理する方法及び装置を開発し、特許出願した(特開平9−71819号公報参照)。この公報に記載のものは、2個の受けスキューローラとその上に乗せられた金属条材を押さえるための押さえスキューローラを有するスキューローラセットを、金属条材の走行経路上に複数セット配置し、その複数セットのスキューローラセットで金属条材を回転させながら走行させ、走行中の金属条材に対して加熱、冷却を施して熱処理を行うものであり、金属条材に曲がりを生じることなく、連続的に熱処理できるという利点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載の熱処理方法では、熱処理のための加熱及び冷却を、一定速度で走行中のワークに対して行っているため、昇温速度、加熱保持時間、温度下降速度が相互に関連しており、このためそれぞれを所望の値となるように設定することが困難であり、材料によっては、最適な熱処理条件を設定できない場合があるという問題があった。この問題を解決するには、バッチ方式で熱処理を行えば良いが、その場合には上記したように冷却時に曲がりが生じてしまう。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、金属条材の熱処理時における冷却をバッチ方式で行いながら、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対しても、曲がり発生を防止することの可能な熱処理技術を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、バッチ方式で金属条材を冷却する際に生じ勝ちな曲がりを防止するため、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくという構成としたものである。本発明者らが確認した結果、熱処理時に生じる曲がりは、主として、金属条材の温度が降下し、材料変態が確定するまでの間における冷却むらなどによって生じるが、材料変態が確定する前に金属条材に軸心方向の張力を加えて多少の塑性変形域の伸びを生じさせ、金属条材を曲がりの無い状態とし、その状態で材料変態を確定させることで、曲がり発生を防止できることが判明した。そして、曲がり防止のために塑性変形域の伸びを付与する期間は、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲とすれば良いことも判明した。かくして、本発明により、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができる。また、冷却をバッチ方式で行うことにより、冷却時の温度下降速度や加熱時の昇温速度、温度保持時間などの条件は所望のように設定でき、熱処理条件を材料に応じて所望のように設定でき、高品質の熱処理製品を製造できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱処理方法の基本形態は、金属条材を熱処理に必要な温度に加熱し、次いで冷却する熱処理方法において、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくことを特徴とし、これにより、小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができるという作用効果を奏する。
【0008】
ここで、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間に金属条材に付与する張力は軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさのものであればよいが、なるべくなら、その張力によって生じる塑性変形が小さいことが、金属条材の縮径量を小さくできるので好ましい。このため、金属条材に付与する張力によって生じる軸心方向の塑性変形量(又は率)が小さくなるように、張力を制御することが好ましい。この際、金属条材の降伏応力等の物性は、温度によって変化しており、従って金属条材の冷却進行に伴って変化するので、その物性変化に応じて張力を制御することが好ましい。金属条材に付与する張力の制御は、張力自体を制御する方法でも良いし、金属条材の伸び量(又は伸び率)を制御する方法を採ってもよい。
【0009】
張力装置が金属条材に作用させる張力の制御方法の一つの実施形態として、あらかじめ金属条材の温度と降伏応力との関係を求めておき、張力装置によって金属条材に作用させる張力を、金属条材に生じる応力がその時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となるように、制御する方法を挙げることができる。この方法により、冷却期間中、金属条材に生じる応力がその時の降伏応力より少し高い値に保たれるため、塑性変形量(又は変形率)は小さく保持されることとなり、大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0010】
張力装置が金属条材に作用させる張力の制御方法の他の実施形態として、あらかじめ、フリー状態とした金属条材の温度と伸び量との関係を求めておき、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように前記張力装置を制御する方法を挙げることができる。この方法によっても、冷却期間中、金属条材に生じる塑性変形量(又は変形率)を小さく保持することができ、大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0011】
本発明の熱処理装置の基本形態は、金属条材を全体的に加熱する加熱装置と、前記金属条材の一端を把持する把持装置と、該把持装置に一端を把持された金属条材の他端を把持し、該金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさの張力を作用させる張力装置と、該張力装置に保持された金属条材を冷却する冷却装置とを備えている。この構成により、高温の金属条材を、前記把持装置と張力装置で保持した状態で冷却し、その冷却期間中のうち、所望の期間、例えば、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間、前記張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさの張力を作用させることができ、金属条材に曲がりを生じることなく熱処理することができる。
【0012】
ここで、前記熱処理装置に、更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、該温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となる張力を前記金属条材に作用させるように、前記張力装置を制御する制御装置とを設けることが好ましい。この温度検出装置と制御装置とを設けておくと、金属条材の冷却期間中の所望の期間において、金属条材の温度を測定し、その測定結果に基づいて金属条材に付与する張力を制御して前記金属条材に加わる応力がその時の降伏応力より少しだけ高い値に保持することができ、金属条材に大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0013】
また、前記した熱処理装置に、更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、前記金属条材の伸び量を検出する伸び量検出装置と、前記温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように、前記張力装置を制御する制御装置を設けることが好ましい。この構成とすると、金属条材の冷却期間中の所望の期間において、金属条材の温度を測定し、その測定結果に基づいて前記張力装置を制御して金属条材の伸び量を、その時の金属条材の温度に対応する伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるようにすることができ、金属条材に大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる
【0014】
本発明で熱処理の対象とする金属条材は、熱処理時に曲がりを生じる恐れのあるものであれば任意であるが、特に曲がりの生じやすい小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材、例えば、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材である場合に本発明適用の効果が大きく好適である。また、材質も特に限定するものではないが、熱処理に当たって、昇温速度、加熱保持時間、温度下降速度等を精密にコントロールすることが望ましい材料、例えば、高速度鋼等に対して本発明適用の効果が大きい。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図である。1は熱処理すべき金属条材であり、ここでは円柱状の金属条材を示している。2は、金属条材1の一端を把持する把持装置であり、装置架台(図示せず)に固定して設けられた固定側保持部材3と、その固定側保持部材3に回転自在に保持され、垂直に配置した金属条材1の上端を把持するチャック4と、そのチャック4を回転させる駆動モータ5等を備えている。7は、金属条材1の他端を把持して該金属条材1に軸心方向の張力を付与する張力装置であり、適当なガイド手段(図示せず)に垂直方向に移動可能に案内された移動側保持部材8と、その移動側保持部材8に回転自在に保持され、垂直に配置した金属条材1の下端を把持するチャック9と、移動側保持部材8を垂直方向に移動させるよう、該移動側保持部材8に連結された油圧シリンダ10と、その油圧シリンダ10への油圧供給を制御する油圧サーボ弁11等を備えている。13は、金属条材1の温度を検出する放射温度計等の温度検出装置、15は、その温度検出装置13からの信号に基づいて張力装置7を制御する制御装置である。この制御装置15による制御については後述する。
【0016】
18は金属条材1を所望の熱処理温度に加熱する加熱装置であり、この実施形態では金属条材1のほぼ全長を同時に誘導加熱可能な誘導コイルが用いられている。ここで用いた誘導コイル18は、金属条材1に平行な誘導作用部18a,18aとその上下両端を連結する連結部18b,18bを備えた鞍型コイルである。この加熱装置18は、平行な誘導作用部18a,18aが金属条材1をはさむ位置となる作動位置と、金属条材の横方向に退避した退避位置とに移動可能に設けられている。20は金属条材1のほぼ全長を同時に冷却可能な冷却装置であり、金属条材1に対して冷却媒体、例えば冷却空気、冷却水などを吹き付ける一対の冷却ジャケット20a,20aを備えている。この冷却ジャケット20a,20aはそれぞれ、金属条材1に近接した作動位置と金属条材1から離れた退避位置に移動可能に設けられている。
【0017】
次に、上記構成の熱処理装置による金属条材の熱処理動作を説明する。まず、図1に示すように、熱処理すべき金属条材1を上下のチャック4、9に取り付け、張力装置7によって金属条材1に軸心方向の張力を付与し、金属条材1を真っ直ぐな状態に保持する。この時の金属条材1に付与する張力は、金属条材1を熱処理に必要な温度に昇温させた状態における金属条材1の降伏応力よりも低い応力を生じさせる程度の小さなものでよい。次いで、加熱装置18を、その誘導作用部18a,18aが金属条材1をはさむ作動位置に来るように移動させ、金属条材1を駆動モータ5で回転させながら、誘導コイル18に通電して金属条材1を加熱、昇温させる。この際、金属条材1を回転させているので、誘導コイル18により均一に加熱、昇温させることができる。また、誘導コイル18への投入熱量を制御することにより、金属条材1を所望の昇温速度で昇温させることができる。そして、金属条材1の熱処理に必要な所望の温度、例えば、高速度鋼に対しては1100〜1200°C程度に到達した後、固溶化などの処理に必要な所望の時間だけ、その温度に保持する。この加熱、昇温期間において、金属条材1は熱膨張するが、金属条材1は張力装置7によって軸心方向に小さい張力を付与された状態となっているので、軸心方向に支障なく伸びることができ、真っ直ぐな状態に保持される。
【0018】
所定時間の温度保持を行った後、誘導コイル18を退避させ、冷却装置20の冷却ジャケット20a,20aを金属条材1に近接した作動位置に移動させ、その冷却ジャケット20a,20aから冷却媒体を金属条材1に吹き付けて冷却する。この時にも、金属条材1の回転は継続しており、これにより均一に冷却できる。また、冷却媒体の吹き付け量或いは冷却媒体の温度を制御して、金属条材1の温度下降速度を熱処理に望ましい所望値とする。これにより、金属条材1が冷却され、所望の熱処理が施される。
【0019】
この冷却期間において、張力装置7は金属条材1に加える張力を制御している。以下、その制御を説明する。図2は、金属条材1の温度と降伏応力(降伏点を把握できない材料については、たとえば0.2%耐力を降伏応力とする)σS の関係(特性線25)並びに金属条材1の温度と金属条材1に軸心方向に生じさせる応力σの関係(特性線26a,26b,26c)を示すグラフである。特性線25で示すように、降伏応力σS は温度上昇と共に低下している。この温度と降伏応力σS の関係をあらかじめ求めておき、制御装置15に入力しておく。制御装置15はこの関係(特性線25)に基づき、金属条材1に生じさせる応力σを図2の特性線26a,26b,26cで示すように設定し、その応力σが生じるよう張力装置7を制御する機能を備えている。ここで、特性線26bは、金属条材1の温度が材料変態点近傍領域Bにおける温度と応力σの関係を示すもので、この領域Bでは、応力σがその温度における降伏応力σS よりも少し大きく(Δσだけ大きく)なるように定めている。このように、金属条材1に降伏応力σS よりも大きい応力σを作用させることで、その金属条材1に軸心方向の塑性変形を生じさせることができ、金属条材の冷却時における曲がりを防止できる。ここで、応力σは塑性変形を生じさせることができる大きさであれば、曲がり防止効果を発揮できるので、降伏応力σS よりも少し大きければよく、具体的には、応力σと降伏応力σS との差(Δσ)は、降伏応力σS の1〜10%程度に選定すればよく、更には、1〜5%程度に設定するのが一層好ましい。応力σと降伏応力σS との差(Δσ)は、領域B内において一定としてもよいし、温度変化と共に変化するように選定してもよい。降伏応力σS より大きい応力σを作用させる領域Bの範囲は、冷却中の金属条材1が変態を開始してから変態がほぼ確定するまでの間を含むように定めればよく、具体的には、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を含むようにすればよく、上下に多少の余裕を見て、変態点温度+80°Cから変態点温度−30°Cまでの温度範囲程度とするのが好ましい。
【0020】
領域Bよりも高温の領域Aでは、たとえ、金属条材に曲がりが発生してもその後の領域Bにおいて軸心方向の塑性変形を生じさせて曲がりを矯正できるので、金属条材1に大きい張力を作用させて塑性変形を生じさせる必要はない。そこで、領域Aでは、金属条材1に塑性変形伸びを付与するような大きい張力を付与する必要はなく、図2の特性線26aで示すように、降伏応力σS より小さい応力が作用するように設定するか、或いは応力0に設定する。また、領域Bよりも低温の領域Cでは、金属条材にほとんど曲がりは発生しないので、この領域Cでも金属条材1に塑性変形伸びを付与するような大きい張力を付与する必要はなく、図2の特性線26cで示すように、降伏応力σS より小さい応力が作用するように設定するか、或いは応力0に設定する。
【0021】
上記構成の制御装置15による制御は次のように行われる。すなわち、図1において、金属条材1の冷却期間中、温度検出装置13が適当なサイクルで金属条材1の温度を検出し、その温度情報を制御装置15に出力する。制御装置15は、入力した検出温度に基づき、金属条材1に作用させるべき応力σが、図2に示すグラフの特性線26a,26b,26cとなるように、張力装置7を制御する。かくして、金属条材1にはその冷却期間中、特性線26a,26b,26cで示す応力σが作用し、曲がりの生じやすい材料変態点近傍領域Bを通過中、金属条材1が軸心方向に塑性変形させられ、曲がりの無い状態に保持され、その状態で変態が完了する。これにより、曲がりを発生させることなく冷却が行われ、曲がりのない熱処理製品を得ることができる。
【0022】
図3は本発明の第二の実施形態を示すものである。この実施形態では、金属条材1の下端を保持する移動側保持部材8の垂直方向の位置を検出する位置検出器30を備え、その出力を制御装置15Aに出力している。この位置検出器30からの信号は、移動側保持部材8の移動量(金属条材1の伸び量に等しい)の検出にも使用されるものであり、従って、この位置検出器30は、金属条材の伸び量を検出する伸び量検出装置として作用する。制御装置15Aは、後述するように、移動側保持部材8の位置を制御することで金属条材1の伸び量を制御する構成となっている。その他の構成は図1の実施形態と同様である。この実施形態においても、図1の実施形態と同様に、金属条材1を上下のチャック4、9で把持した状態で、金属条材の加熱昇温、温度保持及び冷却が行われ、所望の熱処理が行われる。
【0023】
この冷却期間において、制御装置15Aは張力装置7を制御して金属条材1に加える張力を制御している。以下、その制御を説明する。図4は、フリー状態とした金属条材1の温度と伸び量δF の関係(特性線32)並びに冷却工程における金属条材1の温度とその金属条材1に付与する伸び量δの関係(特性線34)を示すグラフである。特性線32はフリー状態とした金属条材1の温度と伸び量δF の関係を示すものであり、伸び量δF は金属条材1の温度上昇と共に増加している。この温度と伸び量δF の関係をあらかじめ求めておき、制御装置15Aに入力しておく。制御装置15Aはこの関係(特性線32)に基づき、材料変態点近傍領域Bにおいて金属条材1に特性線34で示す伸び量δを付与するように、張力装置7を制御する機能を備えている。ここで、この特性線34は、金属条材の伸び量δが、特性線32で示すフリー時の伸び量δF よりも少し大き目の(伸び量Δδだけ大きい)、塑性変形域に達する伸び量となるように、設定したものである。このように、金属条材1の伸び量を、フリー時の伸び量δF よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように設定したことで、その金属条材1に軸心方向の塑性変形を生じさせることができ、金属条材の冷却時における曲がりを防止できる。ここで、材料変態点近傍領域Bにおいて、塑性変形域の軸心方向の伸びを付与しておけば、曲がり防止効果を発揮できるので、特性線34の設定に用いる伸び量Δδは小さくてよく、伸び率換算で、1〜10%程度に、好ましくは、1〜5%程度に選定すればよい。伸び量Δδは領域B内において一定としてもよいし、温度変化と共に変化するように、例えば、温度降下に連れて増大するように選定してもよい。領域Bの範囲は、図1、図2に示す実施形態と同様に、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を含むようにすればよく、上下に多少の余裕を見て、変態点温度+80°Cから変態点温度−30°Cまでの温度範囲程度とするのが好ましい。
【0024】
なお、この領域Bよりも高温の領域A及び低温の領域Cでは、金属条材1に塑性変形を生じさせる必要はないので、制御装置15Aは、金属条材1に塑性変形を生じさせない程度の小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する構成としている。
【0025】
上記構成の制御装置15Aによる制御は次のように行われる。すなわち、図3において、金属条材1の冷却期間中、温度検出装置13が適当なサイクルで金属条材1の温度を検出し、その温度情報を制御装置15Aに出力する。制御装置15Aは、入力した検出温度が高温の領域A内にある時には、張力装置7が金属条材1に金属条材1に塑性変形を生じない小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する。次いで、検出温度が材料変態点近傍領域Bに入ると、制御装置15Aは金属条材1の伸び量δが特性線34で示す値となるように張力装置7を制御する。これにより、金属条材1は、曲がりの生じやすい材料変態点近傍領域Bを通過中、金属条材1が軸心方向に塑性変形させられ、曲がりの無い状態に保持され、その状態で変態が完了する。その後の低温領域Cに入ると、張力装置7が金属条材1に金属条材1に塑性変形を生じない小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する。以上により、金属条材1が曲がりの無い状態で冷却され、曲がりのない熱処理製品を得ることができる。
【0026】
以上の実施形態では、加熱装置18として、鞍型の誘導コイルを用いたが、加熱装置としては、これに限らず、ヘヤピン型或いはマルチターン型などの他の形式の誘導コイルを用いても良く、更には誘導加熱以外の加熱方式、例えば直接通電方式、ガス加熱方式等を採用してもよい。図5はヘヤピン型の誘導コイル18Aを用いた実施形態を示すものである。この実施形態では、誘導コイル18Aが、金属条材1に対向した誘導作用部18Aaと、その両側に配置されたフェライト、鉄などの強磁性体で形成された切片(インダクター)18Abを備えており、この誘導コイル18Aを金属条材1に近接して対向配置することで、金属条材1全体を同時に誘導加熱することができる。その他の構成は、図3に示す実施形態と同様である。この実施形態でも、冷却工程において、前述の実施形態と同様に金属条材1に塑性変形域の伸びを与えることができ、曲がりを防止しながら所望の熱処理を施すことができる。
【0027】
また、図6は直接通電方式の加熱装置を用いた実施形態を示すものである。この実施形態では、金属条材1の上端を保持する把持装置2Aの固定側保持部材3に電極36が設けられ、金属条材1の下端を保持する張力装置7Aの移動側保持部材8にも電極38が設けられており、この電極36、38に通電することで金属条材1に直接通電し、加熱する構成となっている。すなわち、これらの電極36、38及びそれへの通電装置が加熱装置を構成する。その他の構成は、図3に示す実施形態と同様である。この実施形態でも、冷却工程において、前述の実施形態と同様に金属条材1に塑性変形域の伸びを与えることができ、曲がりを防止しながら所望の熱処理を施すことができる。
【0028】
本発明の実施に当たって、金属条材1の加熱は必ずしも、実施形態で示したように冷却を行う場所と同じ位置で加熱する必要はなく、別の場所で、誘導コイルによる加熱或いは炉加熱等を行うことで所望の加熱を行い、その後、図1、図3に示すような張力装置7を備えた装置にセットし、冷却を行ってもよい。
【0029】
【実施例】
[実施例1]
熱処理すべ金属条材1として、外径8mm、長さ2mの、高速度鋼の丸棒を用意した。この丸棒を図1に示す装置にセットし、誘導コイル18によって、昇温速度約2400°C/分で加熱、昇温させ、1200°Cに達した後、その温度に50秒保持した。その後、冷却ジャケット20a,20aから冷却空気を吹き付け、温度下降速度約600°C/分で冷却した。この冷却期間中の、金属条材1の温度が850°C(この温度での降伏応力σS は約120N/mm2 )から780°C(この温度での降伏応力σS は約300N/mm2 )まで下降する間、金属条材1に、図2の特性線26bで示すように、降伏応力σS より約2〜3%大きい応力を作用させた。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは0.5mm/m以下であり、無視しうる程度であった。
【0030】
[比較例1]
金属条材1に加える張力条件を除いて、実施例1と同じ条件で熱処理を施した。そして、冷却期間中の、金属条材1の温度が850°Cから780°Cまで下降する間、金属条材1に50N/mm2 の応力を作用させておいた。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは2mm/m程度生じていた。
【0031】
[実施例2]
熱処理すべ金属条材1として、外径8mm、長さ2mの、高速度鋼の丸棒を用意した。この丸棒を図3に示す装置にセットし、誘導コイル18によって、昇温速度約2400°C/分で加熱、昇温させ、1200°Cに達した後、その温度に50秒保持した。その後、冷却ジャケット20a,20aから冷却空気を吹き付け、温度下降速度約600°C/分で冷却した。この冷却期間中の、金属条材1の温度が850°Cから780°Cまで下降する間、金属条材1の伸び量δが、図4の特性線34で示すように、フリー時の伸び量δf よりも0.4〜1mm程度(伸び率換算で2〜5%)大きくなるように、張力装置7の移動側保持部材8の位置を制御した。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは0.3mm/m以下であり、無視しうる程度であった。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、バッチ方式での冷却を行うに当たって、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくことにより、冷却時に生じがちな曲がりを防止でき、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができ、しかも、バッチ方式で冷却を行うので、昇温速度、温度保持時間、温度下降速度等を所望のように設定でき、種々な材料に対して高品質での熱処理を施すことができるといった効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図2】金属条材の温度と降伏応力σS の関係並びに金属条材の温度と金属条材に生じさせる応力σの関係を示すグラフ
【図3】本発明の他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図4】フリー状態とした金属条材の温度と伸び量δF の関係並びに金属条材の温度と金属条材に付与する伸び量δの関係を示すグラフ
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【符号の説明】
1 金属条材
2 把持装置
3 固定側保持部材
4 チャック
5 駆動モータ
7 張力装置
8 移動側保持部材
9 チャック
10 油圧シリンダ
11 油圧サーボ弁
13 温度検出装置
15 制御装置
18 加熱装置
20 冷却装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属条材の熱処理方法及び装置に関し、特に、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対して曲がりを生じることなく熱処理を施すのに好適な熱処理方法及び装置に関する。なお、ここで云う「熱処理」とは、焼入や焼戻しに代表される狭義の熱処理に留まらず、たとえば、金属条材に溶射などによって形成した自溶合金被覆を緻密化させるための再溶融処理等も含めて、金属条材を変態点より高温に加熱して行う処理全般を指すものとする。
【0002】
【従来の技術】
従来より、種々な金属条材に対して焼入れなどの熱処理を施すことが行われており、その方法としては、バッチ方式、連続方式のいずれも知られていた。ところで、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対する熱処理を行う場合、冷却時に曲がりが生じやすいという問題があり、特に、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった極端に細長いものでは顕著に曲がりが生じるという問題があった。例えば、バッチ方式で熱処理を行う場合、金属条材の冷却に当たっては、金属条材を適当な支持手段で水平に支持した状態で冷却するが、その際、金属条材に自重による撓みを生じるとか、冷却温度むらが生じることなどにより、曲がりが生じていた。また、金属条材を垂直に吊り下げた状態で冷却を行っても、やはり温度むらなどにより曲がりが生じていた。一方、金属条材を連続的に走行させながら加熱、冷却を行う連続方式の熱処理を行う場合でも、単に金属条材を搬送ローラ等で保持しただけでは曲がりが生じていた。
【0003】
そこで、本出願人は、このような小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材を、曲がりを生じることなく連続的に熱処理する方法及び装置を開発し、特許出願した(特開平9−71819号公報参照)。この公報に記載のものは、2個の受けスキューローラとその上に乗せられた金属条材を押さえるための押さえスキューローラを有するスキューローラセットを、金属条材の走行経路上に複数セット配置し、その複数セットのスキューローラセットで金属条材を回転させながら走行させ、走行中の金属条材に対して加熱、冷却を施して熱処理を行うものであり、金属条材に曲がりを生じることなく、連続的に熱処理できるという利点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報に記載の熱処理方法では、熱処理のための加熱及び冷却を、一定速度で走行中のワークに対して行っているため、昇温速度、加熱保持時間、温度下降速度が相互に関連しており、このためそれぞれを所望の値となるように設定することが困難であり、材料によっては、最適な熱処理条件を設定できない場合があるという問題があった。この問題を解決するには、バッチ方式で熱処理を行えば良いが、その場合には上記したように冷却時に曲がりが生じてしまう。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、金属条材の熱処理時における冷却をバッチ方式で行いながら、小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材に対しても、曲がり発生を防止することの可能な熱処理技術を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、バッチ方式で金属条材を冷却する際に生じ勝ちな曲がりを防止するため、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくという構成としたものである。本発明者らが確認した結果、熱処理時に生じる曲がりは、主として、金属条材の温度が降下し、材料変態が確定するまでの間における冷却むらなどによって生じるが、材料変態が確定する前に金属条材に軸心方向の張力を加えて多少の塑性変形域の伸びを生じさせ、金属条材を曲がりの無い状態とし、その状態で材料変態を確定させることで、曲がり発生を防止できることが判明した。そして、曲がり防止のために塑性変形域の伸びを付与する期間は、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲とすれば良いことも判明した。かくして、本発明により、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができる。また、冷却をバッチ方式で行うことにより、冷却時の温度下降速度や加熱時の昇温速度、温度保持時間などの条件は所望のように設定でき、熱処理条件を材料に応じて所望のように設定でき、高品質の熱処理製品を製造できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱処理方法の基本形態は、金属条材を熱処理に必要な温度に加熱し、次いで冷却する熱処理方法において、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくことを特徴とし、これにより、小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができるという作用効果を奏する。
【0008】
ここで、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間に金属条材に付与する張力は軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさのものであればよいが、なるべくなら、その張力によって生じる塑性変形が小さいことが、金属条材の縮径量を小さくできるので好ましい。このため、金属条材に付与する張力によって生じる軸心方向の塑性変形量(又は率)が小さくなるように、張力を制御することが好ましい。この際、金属条材の降伏応力等の物性は、温度によって変化しており、従って金属条材の冷却進行に伴って変化するので、その物性変化に応じて張力を制御することが好ましい。金属条材に付与する張力の制御は、張力自体を制御する方法でも良いし、金属条材の伸び量(又は伸び率)を制御する方法を採ってもよい。
【0009】
張力装置が金属条材に作用させる張力の制御方法の一つの実施形態として、あらかじめ金属条材の温度と降伏応力との関係を求めておき、張力装置によって金属条材に作用させる張力を、金属条材に生じる応力がその時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となるように、制御する方法を挙げることができる。この方法により、冷却期間中、金属条材に生じる応力がその時の降伏応力より少し高い値に保たれるため、塑性変形量(又は変形率)は小さく保持されることとなり、大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0010】
張力装置が金属条材に作用させる張力の制御方法の他の実施形態として、あらかじめ、フリー状態とした金属条材の温度と伸び量との関係を求めておき、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように前記張力装置を制御する方法を挙げることができる。この方法によっても、冷却期間中、金属条材に生じる塑性変形量(又は変形率)を小さく保持することができ、大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0011】
本発明の熱処理装置の基本形態は、金属条材を全体的に加熱する加熱装置と、前記金属条材の一端を把持する把持装置と、該把持装置に一端を把持された金属条材の他端を把持し、該金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさの張力を作用させる張力装置と、該張力装置に保持された金属条材を冷却する冷却装置とを備えている。この構成により、高温の金属条材を、前記把持装置と張力装置で保持した状態で冷却し、その冷却期間中のうち、所望の期間、例えば、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間、前記張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさの張力を作用させることができ、金属条材に曲がりを生じることなく熱処理することができる。
【0012】
ここで、前記熱処理装置に、更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、該温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となる張力を前記金属条材に作用させるように、前記張力装置を制御する制御装置とを設けることが好ましい。この温度検出装置と制御装置とを設けておくと、金属条材の冷却期間中の所望の期間において、金属条材の温度を測定し、その測定結果に基づいて金属条材に付与する張力を制御して前記金属条材に加わる応力がその時の降伏応力より少しだけ高い値に保持することができ、金属条材に大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる。
【0013】
また、前記した熱処理装置に、更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、前記金属条材の伸び量を検出する伸び量検出装置と、前記温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように、前記張力装置を制御する制御装置を設けることが好ましい。この構成とすると、金属条材の冷却期間中の所望の期間において、金属条材の温度を測定し、その測定結果に基づいて前記張力装置を制御して金属条材の伸び量を、その時の金属条材の温度に対応する伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるようにすることができ、金属条材に大きい伸びを与えることなく曲がり防止を図ることができる
【0014】
本発明で熱処理の対象とする金属条材は、熱処理時に曲がりを生じる恐れのあるものであれば任意であるが、特に曲がりの生じやすい小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材、例えば、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の円筒状又は円柱状の金属条材である場合に本発明適用の効果が大きく好適である。また、材質も特に限定するものではないが、熱処理に当たって、昇温速度、加熱保持時間、温度下降速度等を精密にコントロールすることが望ましい材料、例えば、高速度鋼等に対して本発明適用の効果が大きい。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図である。1は熱処理すべき金属条材であり、ここでは円柱状の金属条材を示している。2は、金属条材1の一端を把持する把持装置であり、装置架台(図示せず)に固定して設けられた固定側保持部材3と、その固定側保持部材3に回転自在に保持され、垂直に配置した金属条材1の上端を把持するチャック4と、そのチャック4を回転させる駆動モータ5等を備えている。7は、金属条材1の他端を把持して該金属条材1に軸心方向の張力を付与する張力装置であり、適当なガイド手段(図示せず)に垂直方向に移動可能に案内された移動側保持部材8と、その移動側保持部材8に回転自在に保持され、垂直に配置した金属条材1の下端を把持するチャック9と、移動側保持部材8を垂直方向に移動させるよう、該移動側保持部材8に連結された油圧シリンダ10と、その油圧シリンダ10への油圧供給を制御する油圧サーボ弁11等を備えている。13は、金属条材1の温度を検出する放射温度計等の温度検出装置、15は、その温度検出装置13からの信号に基づいて張力装置7を制御する制御装置である。この制御装置15による制御については後述する。
【0016】
18は金属条材1を所望の熱処理温度に加熱する加熱装置であり、この実施形態では金属条材1のほぼ全長を同時に誘導加熱可能な誘導コイルが用いられている。ここで用いた誘導コイル18は、金属条材1に平行な誘導作用部18a,18aとその上下両端を連結する連結部18b,18bを備えた鞍型コイルである。この加熱装置18は、平行な誘導作用部18a,18aが金属条材1をはさむ位置となる作動位置と、金属条材の横方向に退避した退避位置とに移動可能に設けられている。20は金属条材1のほぼ全長を同時に冷却可能な冷却装置であり、金属条材1に対して冷却媒体、例えば冷却空気、冷却水などを吹き付ける一対の冷却ジャケット20a,20aを備えている。この冷却ジャケット20a,20aはそれぞれ、金属条材1に近接した作動位置と金属条材1から離れた退避位置に移動可能に設けられている。
【0017】
次に、上記構成の熱処理装置による金属条材の熱処理動作を説明する。まず、図1に示すように、熱処理すべき金属条材1を上下のチャック4、9に取り付け、張力装置7によって金属条材1に軸心方向の張力を付与し、金属条材1を真っ直ぐな状態に保持する。この時の金属条材1に付与する張力は、金属条材1を熱処理に必要な温度に昇温させた状態における金属条材1の降伏応力よりも低い応力を生じさせる程度の小さなものでよい。次いで、加熱装置18を、その誘導作用部18a,18aが金属条材1をはさむ作動位置に来るように移動させ、金属条材1を駆動モータ5で回転させながら、誘導コイル18に通電して金属条材1を加熱、昇温させる。この際、金属条材1を回転させているので、誘導コイル18により均一に加熱、昇温させることができる。また、誘導コイル18への投入熱量を制御することにより、金属条材1を所望の昇温速度で昇温させることができる。そして、金属条材1の熱処理に必要な所望の温度、例えば、高速度鋼に対しては1100〜1200°C程度に到達した後、固溶化などの処理に必要な所望の時間だけ、その温度に保持する。この加熱、昇温期間において、金属条材1は熱膨張するが、金属条材1は張力装置7によって軸心方向に小さい張力を付与された状態となっているので、軸心方向に支障なく伸びることができ、真っ直ぐな状態に保持される。
【0018】
所定時間の温度保持を行った後、誘導コイル18を退避させ、冷却装置20の冷却ジャケット20a,20aを金属条材1に近接した作動位置に移動させ、その冷却ジャケット20a,20aから冷却媒体を金属条材1に吹き付けて冷却する。この時にも、金属条材1の回転は継続しており、これにより均一に冷却できる。また、冷却媒体の吹き付け量或いは冷却媒体の温度を制御して、金属条材1の温度下降速度を熱処理に望ましい所望値とする。これにより、金属条材1が冷却され、所望の熱処理が施される。
【0019】
この冷却期間において、張力装置7は金属条材1に加える張力を制御している。以下、その制御を説明する。図2は、金属条材1の温度と降伏応力(降伏点を把握できない材料については、たとえば0.2%耐力を降伏応力とする)σS の関係(特性線25)並びに金属条材1の温度と金属条材1に軸心方向に生じさせる応力σの関係(特性線26a,26b,26c)を示すグラフである。特性線25で示すように、降伏応力σS は温度上昇と共に低下している。この温度と降伏応力σS の関係をあらかじめ求めておき、制御装置15に入力しておく。制御装置15はこの関係(特性線25)に基づき、金属条材1に生じさせる応力σを図2の特性線26a,26b,26cで示すように設定し、その応力σが生じるよう張力装置7を制御する機能を備えている。ここで、特性線26bは、金属条材1の温度が材料変態点近傍領域Bにおける温度と応力σの関係を示すもので、この領域Bでは、応力σがその温度における降伏応力σS よりも少し大きく(Δσだけ大きく)なるように定めている。このように、金属条材1に降伏応力σS よりも大きい応力σを作用させることで、その金属条材1に軸心方向の塑性変形を生じさせることができ、金属条材の冷却時における曲がりを防止できる。ここで、応力σは塑性変形を生じさせることができる大きさであれば、曲がり防止効果を発揮できるので、降伏応力σS よりも少し大きければよく、具体的には、応力σと降伏応力σS との差(Δσ)は、降伏応力σS の1〜10%程度に選定すればよく、更には、1〜5%程度に設定するのが一層好ましい。応力σと降伏応力σS との差(Δσ)は、領域B内において一定としてもよいし、温度変化と共に変化するように選定してもよい。降伏応力σS より大きい応力σを作用させる領域Bの範囲は、冷却中の金属条材1が変態を開始してから変態がほぼ確定するまでの間を含むように定めればよく、具体的には、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を含むようにすればよく、上下に多少の余裕を見て、変態点温度+80°Cから変態点温度−30°Cまでの温度範囲程度とするのが好ましい。
【0020】
領域Bよりも高温の領域Aでは、たとえ、金属条材に曲がりが発生してもその後の領域Bにおいて軸心方向の塑性変形を生じさせて曲がりを矯正できるので、金属条材1に大きい張力を作用させて塑性変形を生じさせる必要はない。そこで、領域Aでは、金属条材1に塑性変形伸びを付与するような大きい張力を付与する必要はなく、図2の特性線26aで示すように、降伏応力σS より小さい応力が作用するように設定するか、或いは応力0に設定する。また、領域Bよりも低温の領域Cでは、金属条材にほとんど曲がりは発生しないので、この領域Cでも金属条材1に塑性変形伸びを付与するような大きい張力を付与する必要はなく、図2の特性線26cで示すように、降伏応力σS より小さい応力が作用するように設定するか、或いは応力0に設定する。
【0021】
上記構成の制御装置15による制御は次のように行われる。すなわち、図1において、金属条材1の冷却期間中、温度検出装置13が適当なサイクルで金属条材1の温度を検出し、その温度情報を制御装置15に出力する。制御装置15は、入力した検出温度に基づき、金属条材1に作用させるべき応力σが、図2に示すグラフの特性線26a,26b,26cとなるように、張力装置7を制御する。かくして、金属条材1にはその冷却期間中、特性線26a,26b,26cで示す応力σが作用し、曲がりの生じやすい材料変態点近傍領域Bを通過中、金属条材1が軸心方向に塑性変形させられ、曲がりの無い状態に保持され、その状態で変態が完了する。これにより、曲がりを発生させることなく冷却が行われ、曲がりのない熱処理製品を得ることができる。
【0022】
図3は本発明の第二の実施形態を示すものである。この実施形態では、金属条材1の下端を保持する移動側保持部材8の垂直方向の位置を検出する位置検出器30を備え、その出力を制御装置15Aに出力している。この位置検出器30からの信号は、移動側保持部材8の移動量(金属条材1の伸び量に等しい)の検出にも使用されるものであり、従って、この位置検出器30は、金属条材の伸び量を検出する伸び量検出装置として作用する。制御装置15Aは、後述するように、移動側保持部材8の位置を制御することで金属条材1の伸び量を制御する構成となっている。その他の構成は図1の実施形態と同様である。この実施形態においても、図1の実施形態と同様に、金属条材1を上下のチャック4、9で把持した状態で、金属条材の加熱昇温、温度保持及び冷却が行われ、所望の熱処理が行われる。
【0023】
この冷却期間において、制御装置15Aは張力装置7を制御して金属条材1に加える張力を制御している。以下、その制御を説明する。図4は、フリー状態とした金属条材1の温度と伸び量δF の関係(特性線32)並びに冷却工程における金属条材1の温度とその金属条材1に付与する伸び量δの関係(特性線34)を示すグラフである。特性線32はフリー状態とした金属条材1の温度と伸び量δF の関係を示すものであり、伸び量δF は金属条材1の温度上昇と共に増加している。この温度と伸び量δF の関係をあらかじめ求めておき、制御装置15Aに入力しておく。制御装置15Aはこの関係(特性線32)に基づき、材料変態点近傍領域Bにおいて金属条材1に特性線34で示す伸び量δを付与するように、張力装置7を制御する機能を備えている。ここで、この特性線34は、金属条材の伸び量δが、特性線32で示すフリー時の伸び量δF よりも少し大き目の(伸び量Δδだけ大きい)、塑性変形域に達する伸び量となるように、設定したものである。このように、金属条材1の伸び量を、フリー時の伸び量δF よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように設定したことで、その金属条材1に軸心方向の塑性変形を生じさせることができ、金属条材の冷却時における曲がりを防止できる。ここで、材料変態点近傍領域Bにおいて、塑性変形域の軸心方向の伸びを付与しておけば、曲がり防止効果を発揮できるので、特性線34の設定に用いる伸び量Δδは小さくてよく、伸び率換算で、1〜10%程度に、好ましくは、1〜5%程度に選定すればよい。伸び量Δδは領域B内において一定としてもよいし、温度変化と共に変化するように、例えば、温度降下に連れて増大するように選定してもよい。領域Bの範囲は、図1、図2に示す実施形態と同様に、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を含むようにすればよく、上下に多少の余裕を見て、変態点温度+80°Cから変態点温度−30°Cまでの温度範囲程度とするのが好ましい。
【0024】
なお、この領域Bよりも高温の領域A及び低温の領域Cでは、金属条材1に塑性変形を生じさせる必要はないので、制御装置15Aは、金属条材1に塑性変形を生じさせない程度の小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する構成としている。
【0025】
上記構成の制御装置15Aによる制御は次のように行われる。すなわち、図3において、金属条材1の冷却期間中、温度検出装置13が適当なサイクルで金属条材1の温度を検出し、その温度情報を制御装置15Aに出力する。制御装置15Aは、入力した検出温度が高温の領域A内にある時には、張力装置7が金属条材1に金属条材1に塑性変形を生じない小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する。次いで、検出温度が材料変態点近傍領域Bに入ると、制御装置15Aは金属条材1の伸び量δが特性線34で示す値となるように張力装置7を制御する。これにより、金属条材1は、曲がりの生じやすい材料変態点近傍領域Bを通過中、金属条材1が軸心方向に塑性変形させられ、曲がりの無い状態に保持され、その状態で変態が完了する。その後の低温領域Cに入ると、張力装置7が金属条材1に金属条材1に塑性変形を生じない小さい張力を付加するか、或いは張力を付加しないように張力装置7を制御する。以上により、金属条材1が曲がりの無い状態で冷却され、曲がりのない熱処理製品を得ることができる。
【0026】
以上の実施形態では、加熱装置18として、鞍型の誘導コイルを用いたが、加熱装置としては、これに限らず、ヘヤピン型或いはマルチターン型などの他の形式の誘導コイルを用いても良く、更には誘導加熱以外の加熱方式、例えば直接通電方式、ガス加熱方式等を採用してもよい。図5はヘヤピン型の誘導コイル18Aを用いた実施形態を示すものである。この実施形態では、誘導コイル18Aが、金属条材1に対向した誘導作用部18Aaと、その両側に配置されたフェライト、鉄などの強磁性体で形成された切片(インダクター)18Abを備えており、この誘導コイル18Aを金属条材1に近接して対向配置することで、金属条材1全体を同時に誘導加熱することができる。その他の構成は、図3に示す実施形態と同様である。この実施形態でも、冷却工程において、前述の実施形態と同様に金属条材1に塑性変形域の伸びを与えることができ、曲がりを防止しながら所望の熱処理を施すことができる。
【0027】
また、図6は直接通電方式の加熱装置を用いた実施形態を示すものである。この実施形態では、金属条材1の上端を保持する把持装置2Aの固定側保持部材3に電極36が設けられ、金属条材1の下端を保持する張力装置7Aの移動側保持部材8にも電極38が設けられており、この電極36、38に通電することで金属条材1に直接通電し、加熱する構成となっている。すなわち、これらの電極36、38及びそれへの通電装置が加熱装置を構成する。その他の構成は、図3に示す実施形態と同様である。この実施形態でも、冷却工程において、前述の実施形態と同様に金属条材1に塑性変形域の伸びを与えることができ、曲がりを防止しながら所望の熱処理を施すことができる。
【0028】
本発明の実施に当たって、金属条材1の加熱は必ずしも、実施形態で示したように冷却を行う場所と同じ位置で加熱する必要はなく、別の場所で、誘導コイルによる加熱或いは炉加熱等を行うことで所望の加熱を行い、その後、図1、図3に示すような張力装置7を備えた装置にセットし、冷却を行ってもよい。
【0029】
【実施例】
[実施例1]
熱処理すべ金属条材1として、外径8mm、長さ2mの、高速度鋼の丸棒を用意した。この丸棒を図1に示す装置にセットし、誘導コイル18によって、昇温速度約2400°C/分で加熱、昇温させ、1200°Cに達した後、その温度に50秒保持した。その後、冷却ジャケット20a,20aから冷却空気を吹き付け、温度下降速度約600°C/分で冷却した。この冷却期間中の、金属条材1の温度が850°C(この温度での降伏応力σS は約120N/mm2 )から780°C(この温度での降伏応力σS は約300N/mm2 )まで下降する間、金属条材1に、図2の特性線26bで示すように、降伏応力σS より約2〜3%大きい応力を作用させた。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは0.5mm/m以下であり、無視しうる程度であった。
【0030】
[比較例1]
金属条材1に加える張力条件を除いて、実施例1と同じ条件で熱処理を施した。そして、冷却期間中の、金属条材1の温度が850°Cから780°Cまで下降する間、金属条材1に50N/mm2 の応力を作用させておいた。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは2mm/m程度生じていた。
【0031】
[実施例2]
熱処理すべ金属条材1として、外径8mm、長さ2mの、高速度鋼の丸棒を用意した。この丸棒を図3に示す装置にセットし、誘導コイル18によって、昇温速度約2400°C/分で加熱、昇温させ、1200°Cに達した後、その温度に50秒保持した。その後、冷却ジャケット20a,20aから冷却空気を吹き付け、温度下降速度約600°C/分で冷却した。この冷却期間中の、金属条材1の温度が850°Cから780°Cまで下降する間、金属条材1の伸び量δが、図4の特性線34で示すように、フリー時の伸び量δf よりも0.4〜1mm程度(伸び率換算で2〜5%)大きくなるように、張力装置7の移動側保持部材8の位置を制御した。その後、常温まで冷却した後、金属条材1を装置から取り外し、曲がりを測定したところ、曲がりは0.3mm/m以下であり、無視しうる程度であった。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、バッチ方式での冷却を行うに当たって、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくことにより、冷却時に生じがちな曲がりを防止でき、外径がmmオーダで、長さがmオーダといった小径、長尺の金属条材に対しても曲がりを生じることなく、熱処理を施すことができ、しかも、バッチ方式で冷却を行うので、昇温速度、温度保持時間、温度下降速度等を所望のように設定でき、種々な材料に対して高品質での熱処理を施すことができるといった効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図2】金属条材の温度と降伏応力σS の関係並びに金属条材の温度と金属条材に生じさせる応力σの関係を示すグラフ
【図3】本発明の他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図4】フリー状態とした金属条材の温度と伸び量δF の関係並びに金属条材の温度と金属条材に付与する伸び量δの関係を示すグラフ
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る熱処理装置の概略斜視図
【符号の説明】
1 金属条材
2 把持装置
3 固定側保持部材
4 チャック
5 駆動モータ
7 張力装置
8 移動側保持部材
9 チャック
10 油圧シリンダ
11 油圧サーボ弁
13 温度検出装置
15 制御装置
18 加熱装置
20 冷却装置
Claims (6)
- 金属条材を熱処理に必要な温度に加熱し、次いで冷却する熱処理方法において、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、張力装置によって前記金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる張力を作用させておくことを特徴とする金属条材の熱処理方法。
- あらかじめ金属条材の温度と降伏応力との関係を求めておき、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記張力装置によって前記金属条材に作用させる張力を、金属条材に生じる応力がその時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となるように、制御することを特徴とする請求項1記載の金属条材の熱処理方法。
- あらかじめ、フリー状態とした金属条材の温度と伸び量との関係を求めておき、冷却期間中のうち、少なくとも、金属条材の変態点温度+50°Cから変態点温度までの温度範囲を通過する間は、前記金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように前記張力装置を制御することを特徴とする請求項1記載の金属条材の熱処理方法。
- 金属条材を全体的に加熱する加熱装置と、前記金属条材の一端を把持する把持装置と、該把持装置に一端を把持された金属条材の他端を把持し、該金属条材に軸心方向の塑性変形を生じさせる大きさの張力を作用させる張力装置と、該張力装置に保持された金属条材を冷却する冷却装置とを備えた金属条材の熱処理装置。
- 更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、該温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の温度に対応する降伏応力より少し高い応力となる張力を前記金属条材に作用させるように、前記張力装置を制御する制御装置とを有することを特徴とする請求項4記載の金属条材の熱処理装置。
- 更に、前記金属条材の温度を検出する温度検出装置と、前記金属条材の伸び量を検出する伸び量検出装置と、前記温度検出装置からの信号に基づいて、その時の金属条材の伸び量が、その時の金属条材の温度に対応するフリー状態の金属条材の伸び量よりも少し大き目の、塑性変形域に達する伸び量となるように、前記張力装置を制御する制御装置とを有することを特徴とする請求項4記載の金属条材の熱処理装置。
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JP2002178988A JP2004018985A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 金属条材の熱処理方法及び装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101441514B1 (ko) | 2014-04-30 | 2014-09-17 | 류준석 | 고주파 열처리장치 |
JP2019203184A (ja) * | 2018-05-25 | 2019-11-28 | 光洋サーモシステム株式会社 | 熱処理装置 |
-
2002
- 2002-06-19 JP JP2002178988A patent/JP2004018985A/ja active Pending
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