JP2004017261A - 機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム - Google Patents
機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004017261A JP2004017261A JP2002179739A JP2002179739A JP2004017261A JP 2004017261 A JP2004017261 A JP 2004017261A JP 2002179739 A JP2002179739 A JP 2002179739A JP 2002179739 A JP2002179739 A JP 2002179739A JP 2004017261 A JP2004017261 A JP 2004017261A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- workpiece
- machining
- processing
- anode
- current
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Electrical Discharge Machining, Electrochemical Machining, And Combined Machining (AREA)
Abstract
【課題】不水溶性加工液や水溶性加工液といった加工液を使用することなく、機械加工を行うことができる機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システムを提供する。
【解決手段】本発明の機械加工装置は、導電性の被加工物9を加工する砥石8等の工具と、該工具による加工時に加工液としての水10を被加工物9に供給する加工液供給ノズル4と、被加工物9に電流を流すための陽極部および陰極部を備える。陽極部としては加工液供給ノズル4を使用することができ、陰極部としてはセンタ7を使用することができる。陽極部および陰極部は、直流電源供給・制御装置1の陽極および陰極とそれぞれ電気的に接続される。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の機械加工装置は、導電性の被加工物9を加工する砥石8等の工具と、該工具による加工時に加工液としての水10を被加工物9に供給する加工液供給ノズル4と、被加工物9に電流を流すための陽極部および陰極部を備える。陽極部としては加工液供給ノズル4を使用することができ、陰極部としてはセンタ7を使用することができる。陽極部および陰極部は、直流電源供給・制御装置1の陽極および陰極とそれぞれ電気的に接続される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システムに関し、特に、電気防錆を行いながら機械加工を行うことが可能な機械加工装置および機械加工方法ならびに該機械加工装置を含む機械加工システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から機械加工の一種である研削盤や旋盤に使用される加工液には、不水溶性加工液と水溶性加工液とがある。不水溶性加工液は、防錆作用と潤滑作用とを受け持つ鉱油を主成分とし、脂肪油、合成油(脂肪酸)、極圧添加材(硫黄、塩素、リン)が含まれている。水溶性加工液は、前述の不水溶性加工液に界面活性剤を添加することで水に溶融する状態とした加工液である。
【0003】
他方、加工液の代わりに−40℃に冷却した空気を加工面に噴出させることで冷却作用を付加しながら加工する加工法(冷風加工)もある。また、加工液をミスト状に加工物へ吹きつけることで、加工液の使用量をたとえば50cm3以下と従来と比較して格段に少なくして加工する方法(MQL(Minimum Quantity Lubrication)加工)もある。さらに、加工液を使用しないでドライの状態で加工するドライ加工法(ドライ加工)もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の冷風加工では、コストが膨大になるばかりでなく、潤滑性が低く、結露で工具や周辺ジグに錆が発生する等の種々の問題があり、実用段階には至っていない。MQL加工の場合にも、潤滑性と冷却性ともに低下するため加工条件が限定されるという問題がある。ドライ加工には、加工性能が格段に低下するという問題がある。このように冷風加工、MQL加工およびドライ加工には様々な問題があるので、現状では加工液を供給しながら機械加工を行う加工法が主流である。
【0005】
しかし、不水溶性加工液や水溶性加工液といった加工液を使用した場合には、該加工液の成分が環境を悪化させるという問題が生じるばかりでなく、その廃液を焼却処分するためにさらに環境を悪化させるという問題も生じる。
【0006】
近年、地球規模での環境問題に対する関心が高まっており、組織活動が環境に及ぼす影響を最小限にくい止めることを目的に定められた環境に関する国際的な標準規格としてISO14000シリーズがあるが、このISO14000シリーズを実施するには、上記のような加工液の使用を停止あるいは極力少なくすることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、不水溶性加工液や水溶性加工液といった従来の加工液を使用することなく機械加工を行うことができる機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る機械加工装置は、導電性の被加工物を加工する工具と、該工具による加工時に加工液としての水を被加工物に供給する加工液供給機構と、被加工物に電流を流すための陽極部および陰極部とを備える。なお、本願明細書において機械加工装置とは、機械加工を行う工作機械のことであり、研削盤、旋盤、マシニングセンタ、グラインディングセンタ、フライス盤、ボール盤、片削り盤、平削り盤、立て削り盤、歯切り盤、ブローチ盤、ラップ盤、超仕上げ盤などのように工具(本願明細書では工具に相当する物も含む)を使用して機械加工する装置をいう。また被加工物とは、機械加工において被削材や工作物と呼ばれる機械加工の全対象物をいい、たとえば錆を発生する金属あるいは非金属が含まれる。さらに、加工液としての水は、典型的には水道水であるが、通常の水道水に含まれない成分を含むものであっても、本発明の効果が得られ、それが環境に対して有害とはならない量あるいは種類のものであれば、当該成分を含む水を主成分とする水溶液も本願明細書における水に含まれるものと定義する。
【0009】
本願発明者等は、環境に対して有害な物質を含む従来の加工液の代わりに水を用いて機械加工を行うことを着想し、加工液として水を使用した場合と、従来の加工液を使用した場合とで比較実験を行った。水としては水道水を使用し、機械加工の一例として研削加工を行い、研削抵抗や表面温度の比較を行った。その結果、水を使用した場合の研削抵抗や表面温度は、従来の加工液を使用した場合よりも若干劣るものの実用上問題ないレベルであることを確認した。したがって、機械加工の際に加工液として水を使用することができる。加工液として水を使用することにより、加工液自体の成分や加工液の処理のために環境が悪化するという問題を解決することができる。
【0010】
しかし、加工液として水を使用した場合、加工時あるいは加工後に被加工物に錆が発生し易くなることが懸念される。そこで、かかる錆の発生を抑制すべく、本願発明者等は鋭意検討を重ね、機械加工装置に電気防錆機能を付与することを想到した。具体的には、上述のように機械加工装置に陽極部と陰極部を設け、加工液中に電流を流すことで電気回路を形成し、被加工物に電流を流しながら機械加工を行うことを想到した。それにより、機械加工時に加工液である水と、被加工物における活性化した被加工面とが接触した場合においても、被加工物のイオン化を抑制することができる。また同時に、加工液に晒される非加工面の腐食をも防止することができる。したがって、加工時のみならず加工直後における被加工物の防食を行うことができる。
【0011】
上記陽極部は、加工液供給機構の一部、加工液供給機構と電気的に接続された導電性部材あるいは加工液中に設置される電極部を含む。そして、たとえば陽極部と陰極部に直流電源等の電源を接続し、加工液を介して被加工物に電流を流すようにする。このとき、陰極部を被加工物と電気的に接続し、陽極部、加工液および陰極部間に電気回路を形成する。
【0012】
本発明の機械加工装置は、好ましくは、上記陽極部あるいは陰極部から装置本体側に電流が流れるのを抑制する絶縁手段を備える。それにより、電流が装置本体側にリークするのを抑制することができ、装置本体と電気的に接続された各種機器を保護するとともに効率的に被加工物の防食をも行うことができる。なお、加工液である水を介して外部へ電流が漏れるのを防止するためには、たとえば貯溜タンクや水道配管等の水の供給源と、加工液供給機構との間に所定の長さの絶縁体よりなるチューブを設ければよい。
【0013】
また、本発明の機械加工装置は、電源と電気的に接続され被加工物に流す電流値を制御するための電流値制御手段を備えるものであってもよい。該電流値制御手段により、たとえば機械加工中の電流値をモニタし、電流値が増減したのに応じて電源の電圧値を制御する。それにより、被加工物に流す電流値を防食に必要な最適値に保持することができ、効果的に被加工物の防食を行うことができる。
【0014】
また、本発明の機械加工装置は、被加工物の加工後に生じる切屑等の被加工物の屑を収容する容器を備えるものであってもよい。この場合、該容器は、上記屑に電流を流すための容器側陽極部および容器側陰極部を有する。本局面の場合には、切屑等の被加工物の屑にも電流を流すことができ、該被加工物の屑の腐食をも防止することができる。
【0015】
本発明の機械加工方法は、加工液としての水を被加工物に供給し、該加工液を介して被加工物に電流を流しながら被加工物を機械加工することを特徴とする。このように加工液としての水を使用することにより上述のように環境が悪化するという問題を解決することができ、かつ機械加工時に被加工物に電流を流すことにより被加工物の防食をも行える。
【0016】
本発明の機械加工システムは、機械加工装置と、被加工物の保管装置とを備える。機械加工装置は、導電性の被加工物を加工する工具と、該工具による加工時に加工液としての水を被加工物に供給する加工液供給機構と、被加工物に電流を流すための第1陽極部および第1陰極部とを含む。保管装置は、保存液としての水を受け入れ加工後の被加工物を保管する容器と、加工後の被加工物に電流を流すための第2陽極部および第2陰極部とを含む。
【0017】
なお、上記の容器または容器の一部の材質は、金属等の導電性のある材質としてもよく、たとえば被加工物の材質と同材質としてもよい。容器または容器の一部の材質は、好ましくは、被加工物に対して電気化学的に犠牲電極となり得る材質とする。たとえば、保管すべき材質が鉄の場合、容器または容器の一部の材質をアルミニウム、亜鉛、マグネシウム等とする。
【0018】
従来、加工後の工作物は、鉱油に浸漬する方法やオイルスプレー法で保管されていた。しかし、鉱油やスプレーオイルが漏れ出し、これが環境破壊の原因の一つとされている。そこで、上述のような保管装置を用いることにより、たとえ保存液が漏れ出したとしても、保存液は水であるので、環境が悪化することはほとんどない。また、保管装置が陽極部と陰極部を有することにより、保存液を介して加工後の被加工物に電流を流すことができ、加工後の被加工物の表面の腐食を抑制することができる。
【0019】
したがって、上記のような機械加工装置と保管装置とを備えることにより、被加工物の加工時および加工後のみならず保管時においても、被加工物の防食を行える。また、たとえば保管装置を自動搬送する搬送装置を備えた場合には、搬送中においても被加工物の防食を行える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図13を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態1は、本発明の思想を研削加工に適用したものである。図1に示すように、本実施の形態1の機械加工装置は、加工液供給機構としての加工液供給ノズル4と、被加工物9を支持する支持軸と、該支持軸の両端を保持するセンタ7と、工具としての砥石8とを備える。
【0022】
加工液供給ノズル4は、加工液としての水(たとえば水道水)を砥石8と被加工物9との間に供給し、たとえば金属等の導電性部材で構成される。図1の例では、加工液供給ノズル4は、電流計3およびリード線2を介して直流電源供給・制御装置1の陽極と接続され、陽極部として機能する。
【0023】
陽極部としては、別途電極を設けることも可能である。たとえば加工液供給ノズル4内に導電性部材よりなる電極を設置し、該電極を直流電源供給・制御装置1の陽極と接続してもよい。この場合、加工液供給ノズル4は、プラスチック等の絶縁材料で形成することができる。また、加工液供給ノズル4と被加工物9間に陽極部として機能する電極を設置し、加工時に該電極が加工液中に位置するようにしてもよい。
【0024】
他方、被加工物9は、導電性を有する材質で構成され、支持軸やセンタ7等の導電性の支持部(保持部)により支持(保持)される。この支持部は、リード線5を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と接続され、陰極部となる。
【0025】
研削中に加工液である水10を砥石8と被加工物9間に流すことにより、水10を介して上記の陽極部と陰極部との間に電気回路を形成し、電流を被加工物9へ流すようにする。それにより、電気防食法によって活性化した被加工面が腐食するのを抑制するとともに、加工液である水10に晒される非加工面の腐食をも抑制することができる。
【0026】
電流計3は、上記の電気回路に流れる電流値を計測するものであり、リード線2,6を介して直流電源供給・制御装置1と電気的に接続される。この電流計3で測定された電流値をリード線6により直流電源供給・制御装置1にフィードバックし、該電流値に基づいて直流電源供給・制御装置1の動作を制御することにより、常に最適な電圧を陽極部と陰極部間に印加することができる。該電流計3と、直流電源供給・制御装置1における制御部とが、被加工物に流す電流値を制御するための電流値制御手段として機能する。
【0027】
具体的には、たとえば図2に示す手法にて研削加工時の電圧・電流を制御することができる。この電流値制御方法を採用することにより、加工液の噴出量や加工液の温度によって加工液の電気抵抗が変動した場合においても、印加電圧値を制御することで被加工物9に流れる電流値を適正値に保持することができ、被加工物9に錆が発生するのを抑制することができる。
【0028】
図2に示すように、まず加工前のステップS1において、電気防錆に必要な実効電流値Icを設定する。この実効電流値Icは、完全防食電流値に安全率を乗じたものである。ここで、完全防食電流とは、流水中で完全防食を実行するのに必要な完全防食電流密度Kaに、加工液に晒される被加工物9ならびに被加工物保持具の面積Sを乗じた値であり、Fe系材料で水道水(流動淡水)の場合、完全防食電流密度Ka=0.05A/m2である。面積Sの算出が煩雑な場合、安全係数(>1)を大きく設定することで、完全防錆が可能となる。
【0029】
その後、初期値V0と電圧加減値ΔVをマニュアルで設定する。ただし、作業者がマニュアルで設定しなければ、これらの値として標準値が自動的に設定され、同じロットの作業を繰り返す場合は自動的に前回制御された値である実効値が設定される。
【0030】
次に、ステップS2において電圧VをV0として供給を開始し、ステップS3において研削を開始し、ステップS4において砥石8と被加工物9間に加工液(水)の供給を開始する。そして、ステップS5において電流計3を用いて電流値Imのモニタを開始する。
【0031】
このモニタされた電流値Imが直流電源供給・制御装置1に送られ、直流電源供給・制御装置1において電流値Imと実効電流値IcとをステップS6において比較する。そして、電流値Imが実効電流値Ic以下の場合、ステップS7において直流電源供給・制御装置1によって陽極部と陰極部間に印加する電圧をΔVだけ増加させる。他方、電流値Imが実効電流値Icより大きい場合、ステップS7において直流電源供給・制御装置1によって陽極部と陰極部間に印加する電圧をΔVだけ減少させる。この制御回路を加工中に継続させることで、被加工物9の完全防錆が可能となる。
【0032】
次に、研削終了の信号を研削盤の制御部であるNC(Numerical Control)部から受け取った段階で、ステップS9において研削を終了する。その後、ステップS10において加工液(水)の供給を停止し、ステップS11において直流電源供給・制御装置1による電圧の供給を停止し、最後にステップS12において電流モニタを停止する。
【0033】
次に、本願発明者は、本実施の形態1の機械加工装置を用いて機械加工を行った場合の効果を確認すべく実験を行ったので、その結果について図7〜図9を用いて説明する。本実験では、被加工物(工作物)の円筒研削を行った後に被加工物を回転させながら3時間水をかけ続けた後の被加工物の表面状態を観察した。
【0034】
図7に示す被加工物の左半分は3時間水をかけながら放置した後研削を行った研削面、右半分は研削を行っていない非研削面である。この図から、研削直後の面は、電気防錆の有無にかかわらず、錆の発生が写真上ではほぼ判別できないことがわかる。しかし、電気防錆を行った場合には非研削面も腐食していないのに対し、電気防錆を行っていない場合の非研削面は顕著に腐食していることがわかる。この結果より、本発明の電気防錆加工法の効果を確認することができた。
【0035】
なお、電気防錆を行っていない場合の加工面は砥石で研削されているので肉眼では錆は観察できないが、電子顕微鏡による観察では、金属学的には錆の核が発生しつつある。
【0036】
また、図7の結果が得られた実験では、30V×3.3mA=99mWの消費電力しか供給しなかったにもかかわらず、電気防錆の効果を確認することができた。しかし、実際に必要な消費電力量は、計算上では21mW程度とさらに少ないものでよい。このように少ない消費電力で電気防錆の効果を期待できるので、コスト的にもかなり有利である。
【0037】
次に、錆の発生時間を確認するために行った実験結果について、図8を用いて説明する。本実験では、被加工物を研削後、水をかけた状態で回転させ、10分後、30分後、1時間後、3時間後の腐食の状態を観察した。
【0038】
図8に示すように、10分後では電気防錆の有無にかかわらず錆の発生は確認できないが、30分後には電気防錆を行っていないサンプルに錆の発生を確認することができた。その後、電気防錆を行っていないサンプルでは時間が経過するにつれて錆が増加しているが、電気防錆を行ったサンプルでは時間が経過しても錆の発生は確認できなかった。
【0039】
図9に、水道水を加工液として使用した本発明の電気防錆加工法と、電流供給を停止した通常の加工法における加工表面に発生した錆の面積率を示す。
【0040】
図9に示すように、電気防錆加工法の場合は錆面積率はゼロのままであるが、通常の加工法の場合には時間の経過とともに錆の発生した部分の面積が増大するのがわかる。より詳しくは、錆は、はじめは急激に、その後増加傾向を緩やかにしながら増加することがわかる。
【0041】
なお、図1の例では図示を省略しているが、陰極部や陽極部から研削装置(研削盤)本体に迷走電流が流れるのを防止するために、陰極部や陽極部と、研削装置本体との接続部に絶縁手段を設けることが好ましい。たとえば、センタ7と研削装置本体との間、加工液供給ノズル4と研削装置本体との間に絶縁テープや絶縁シート等の絶縁部材を設置すればよい。
【0042】
また、タンクなどの加工液供給源を設置した場合、加工液供給ノズル4と、加工液供給源とを接続する配管の一部を、所定長さ(たとえば1m程度)の合成樹脂等の絶縁部材よりなる管で構成することにより、加工液である水を介して加工液供給源側に電流がリークするのを抑制することができる。
【0043】
さらに、上述の例では電流計3を設置する場合について説明したが、電流計3を設置しなくても完全防食電流値を超える電流を被加工物9に流すことで防食を行える。
【0044】
また、上述の機械加工装置は、被加工物の加工後に生じる屑を収容する容器を備えることが好ましい。該容器は、被加工物の屑に電流を流すための容器側陽極部および容器側陰極部を有し、容器側陽極部および容器側陰極部は電源と電気的に接続される。
【0045】
容器としては、たとえば被加工物の屑とともに加工液を受け入れる金属製の加工液タンクを使用することができ、該加工液タンクに設けた導電性を有するフィルタ装置で被加工物9の屑を収容することができる。たとえば、加工液タンクを陽極部とし、フィルタ装置を加工液タンクから絶縁し、フィルタ装置を陰極部とすることが考えられる。
【0046】
(実施の形態2)
次に、図3を用いて、本発明を平面研削盤に適用した場合について説明する。図3に示すように、本実施の形態2では、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。該電極11は、電流計3を介して直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。被加工物9は、電磁チャック12上に載置される。電磁チャック12は、テーブル14上に絶縁体13を介して設置され、直流電源供給・制御装置1の陰極と接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0047】
本実施の形態2の場合も、電極11と被加工物9間に、加工液である水10を介して電気回路を形成することができるので、被加工物9に所望量の電流を流すことができ、被加工物9の防錆を行うことができる。
【0048】
また、電磁チャック12も直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続されるので、電磁チャック12の防錆をも行うことができる。さらに、テーブル14と電磁チャック12間に絶縁体13を設置することにより、テーブル14と電磁チャック12間を電気的に絶縁することができ、装置本体側に電流が漏れるのを抑制することもできる。
【0049】
(実施の形態3)
次に、図4を用いて、本発明を内面研削盤に適用した場合について説明する。図4に示すように、本実施の形態3でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。内面研削盤では、被加工物9はチャック16により主軸台17に固定され、該主軸台17が回転する機構となっている。
【0050】
本実施の形態3の内面研削盤では、主軸台17における円筒部外周上に、銅等の金属製のスリップリング18を設置する。このスリップリング18は、リード線等を介して主軸台17およびチャック16と電気的に接続され、銅等の導電性のブラシ15を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0051】
本実施の形態3においても、電極11と被加工物9間に、加工液である水10を介して電気回路を形成することができるので、被加工物9の防錆を行うことができる。また、主軸円筒部にも電流を流すことができるので、主軸の防錆をも行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態3においても、陰極部や陽極部と、内面研削盤本体との接続部に絶縁手段を設けることが好ましい。たとえば、主軸台17と内面研削盤本体間に絶縁体(絶縁手段)を設け、主軸台17と内面研削盤本体との間を電気的に絶縁する。
【0053】
(実施の形態4)
次に、図5を用いて、本発明をマシニングセンタに適用した場合について説明する。図5に示すように、本実施の形態4でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。
【0054】
マシニングセンタの場合には、工具および工具回転部である主軸部20も防錆する必要がある。そこで、主軸部20を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続している。なお、主軸部20とマシニングセンタ本体間に絶縁体(絶縁手段)を設け、主軸部20とマシニングセンタ本体との間を電気的に絶縁することが好ましい。
【0055】
他方、被加工物9は、導電性の被加工物保持具19により保持される。被加工物保持具19は、テーブル14上に絶縁体13を介して設置され、直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。テーブル14も同様に、直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0056】
本実施の形態4では、主軸部20のみならず主軸部20内部の金属接続部を介して工具にも電流を流すことができるので、主軸部20のみならず工具も防錆することができる。また、被加工物9および被加工物保持具19のみならずテーブル14にも電気防錆用の電流を流すことができるので、これらの防錆をも行うことができる。
【0057】
本願発明者が、本実施の形態4の機械加工装置を用いて、水道水を加工液とした電気防錆を行いながら実際に被加工物9の加工を行い、1時間後の被加工物9の表面を観察したところ、図10に示すように錆の発生は見られなかった。それに対し、電気防錆を行うことなく水道水を加工液として用いて被加工物9の加工を行った場合には、顕著な錆が発生しているのがわかる。
【0058】
(実施の形態5)
次に、図6を用いて、本発明を旋盤に適用した場合について説明する。現在の旋盤は、切屑処理の簡便さから、一般に図6の工具(バイト25)と刃物台24が上下逆に取り付けられているが、説明の便宜上、図示の形態のものを一例として挙げ、それについて説明する。
【0059】
旋盤での電気防錆加工法は、円筒研削盤、マシニングセンタ、内面研削盤への適用例を組合せた形となる。図6に示すように、本実施の形態5でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。導電性部材よりなる主軸台21の回転部にスリップリング18を設置し、スリップリング18は、ブラシ15を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。本実施の形態5の場合も、陰極部と旋盤(装置)本体との間に絶縁体等の絶縁手段を設置し、旋盤(装置)本体側へ電流がリークするのを抑制することが好ましい。
【0060】
被加工物9は、導電性部材よりなるチャック22により保持されるので、チャック22、主軸台21、スリップリング18、ブラシ15およびリード線5を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。したがって、被加工物9と電極11との間に、加工液である水10を介して電気回路が形成され、被加工物9の防錆を行える。また、同時に、チャック22、主軸台21の回転部の防錆も行える。さらに、被加工物9の一端を支持するセンタ23も、導電性部材で構成され、直流電源供給・制御装置1の陰極と接続されるので、センタ23の防錆も行える。
【0061】
バイト25は、刃物台24上に設置され、刃物台24は絶縁体13を介してテーブル上に載置される。このとき、刃物台24を直流電源供給・制御装置1の陰極と接続することにより、バイト25と刃物台24の防錆も行える。
【0062】
(実施の形態6)
次に、図11を用いて、本発明の機械加工システムの一部を構成する被加工物9の保管装置の構造例について説明する。
【0063】
本発明の機械加工システムは、上述の機械加工装置と、導電性材料で構成される被加工物9の保管装置とを備える。本実施の形態6における保管装置は、図11に示すように、保存液27としての水を受け入れ保存液27中で被加工物9を保管する保管ケース(容器)26と、被加工物9に電流を流すための電極28とを備える。
【0064】
本実施の形態6の保管装置では、リード線2を介して電極28を直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続して陽極部として機能させる。他方、保管ケース26を金属等の導電性を有する材質で構成し、リード線5および電流計3を介して該保管ケース26を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続して陰極部として機能させる。なお、電流計3はリード線6を介して直流電源供給・制御装置1と電気的に接続されており、実施の形態1の場合と同様のフィードバック制御を行うことができる。
【0065】
保存液27を収容した保管ケース26内に加工後の被加工物9を入れると、該被加工物9は沈み、保管ケース26と接触する。したがって、被加工物9は、保管ケース26を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。それにより、被加工物9と電極28との間に保存液27を介して電気回路を形成することができ、被加工物9に電流を流すことができる。この直流電源による電気防食法(カソード防食)により、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0066】
次に、本発明の保管装置による防錆効果を確認すべく行った実験結果について説明する。本実験では、本発明の保管装置内で電気防錆を行いながら加工後の被加工物9を1日間水中保管した場合と、電気防錆を行わずに加工後の被加工物9を1日間水中保管した場合とで錆の発生の程度を比較した。
【0067】
図13に示すように、本発明の電気防錆を行った場合には全く錆は発生していないのに対し、電気防錆を行わなかった場合には錆が発生しているのがわかる。したがって、本発明の保管装置中で加工後の被加工物9を保管することにより、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができることを確認できた。
【0068】
なお、本発明の機械加工システムは、たとえば上述の保管装置を自動搬送する搬送装置を備えるものであってもよい。この場合には、搬送中においても被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0069】
(実施の形態7)
次に、図12を用いて、上述の保管装置の変形例について説明する。実施の形態7では、保管ケース26全体を導電性部材で構成したが、被加工物9と接触する部分、あるいは保管ケース26に取付けられ被加工物9を支持または保持する部分のみを導電性部材で構成してもよい。
【0070】
図12に示すように、保管ケース26の底部に金属等の導電性部材で構成された保管板29を設け、該保管板29上で被加工物9を保管する。保管ケース26の底部以外の部分は、たとえば絶縁材料で構成する。
【0071】
本実施の形態7の場合、保管板29を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続する。それにより、実施の形態6と同様に、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0072】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、機械加工を行う装置であれば、上述の各機械加工装置以外の機械加工装置にも本発明を適用可能である。また、上述の各要素の形状や材質は一例であり、当該要素の機能を発揮できる限り、上記以外の任意の形状および材質を採用可能である。
【0073】
すなわち、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、機械加工の際の加工液として水を使用することで、加工液の使用あるいは処理により環境を悪化させるという問題を解決することができる。それに加え、機械加工時や保管時に電気防錆を行うようにしたので、加工液として水を使用した場合においても、被加工物の防食を行える。さらに、当該電気防錆に必要な消費電力量は極めて少ないものでよいので、コスト的にもかなり有利である。つまり、本発明によれば、低コストで、環境への悪影響を効果的に抑制でき、しかも被加工物の防食をも抑制しながら機械加工を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における機械加工装置の概略構成図である。
【図2】実施の形態1の機械加工装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2における機械加工装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態3における機械加工装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態4における機械加工装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施の形態5における機械加工装置の概略構成図である。
【図7】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の研削加工後の被加工物の表面状態を示す図である。
【図8】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の研削加工後の被加工物の表面状態の経時変化を示す図である。
【図9】研削加工後の錆の面積率の経時変化を示す図である。
【図10】電気防錆を行った場合と行わなかった場合のマシニングセンタによる加工後の被加工物の表面状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態6における保管装置の概略構成図である。
【図12】本発明の実施の形態7における保管装置の概略構成図である。
【図13】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の水中保管後の被加工物の表面状態を示す図である。
【符号の説明】
1 直流電源供給・制御装置、2,5,6 リード線、3 電流計、4 加工液供給ノズル、7,23 センタ、8 砥石、9 被加工物(工作物)、10 水(加工液)、11,28 電極、12 電磁チャック、13 絶縁体、14 テーブル、15 ブラシ、16,22 チャック、17,21 主軸台、18 スリップリング、19 被加工物保持具、20 主軸部、24 刃物台、25 バイト、26 保管ケース、27 保存液、29 保管板。
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システムに関し、特に、電気防錆を行いながら機械加工を行うことが可能な機械加工装置および機械加工方法ならびに該機械加工装置を含む機械加工システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から機械加工の一種である研削盤や旋盤に使用される加工液には、不水溶性加工液と水溶性加工液とがある。不水溶性加工液は、防錆作用と潤滑作用とを受け持つ鉱油を主成分とし、脂肪油、合成油(脂肪酸)、極圧添加材(硫黄、塩素、リン)が含まれている。水溶性加工液は、前述の不水溶性加工液に界面活性剤を添加することで水に溶融する状態とした加工液である。
【0003】
他方、加工液の代わりに−40℃に冷却した空気を加工面に噴出させることで冷却作用を付加しながら加工する加工法(冷風加工)もある。また、加工液をミスト状に加工物へ吹きつけることで、加工液の使用量をたとえば50cm3以下と従来と比較して格段に少なくして加工する方法(MQL(Minimum Quantity Lubrication)加工)もある。さらに、加工液を使用しないでドライの状態で加工するドライ加工法(ドライ加工)もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の冷風加工では、コストが膨大になるばかりでなく、潤滑性が低く、結露で工具や周辺ジグに錆が発生する等の種々の問題があり、実用段階には至っていない。MQL加工の場合にも、潤滑性と冷却性ともに低下するため加工条件が限定されるという問題がある。ドライ加工には、加工性能が格段に低下するという問題がある。このように冷風加工、MQL加工およびドライ加工には様々な問題があるので、現状では加工液を供給しながら機械加工を行う加工法が主流である。
【0005】
しかし、不水溶性加工液や水溶性加工液といった加工液を使用した場合には、該加工液の成分が環境を悪化させるという問題が生じるばかりでなく、その廃液を焼却処分するためにさらに環境を悪化させるという問題も生じる。
【0006】
近年、地球規模での環境問題に対する関心が高まっており、組織活動が環境に及ぼす影響を最小限にくい止めることを目的に定められた環境に関する国際的な標準規格としてISO14000シリーズがあるが、このISO14000シリーズを実施するには、上記のような加工液の使用を停止あるいは極力少なくすることが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、不水溶性加工液や水溶性加工液といった従来の加工液を使用することなく機械加工を行うことができる機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る機械加工装置は、導電性の被加工物を加工する工具と、該工具による加工時に加工液としての水を被加工物に供給する加工液供給機構と、被加工物に電流を流すための陽極部および陰極部とを備える。なお、本願明細書において機械加工装置とは、機械加工を行う工作機械のことであり、研削盤、旋盤、マシニングセンタ、グラインディングセンタ、フライス盤、ボール盤、片削り盤、平削り盤、立て削り盤、歯切り盤、ブローチ盤、ラップ盤、超仕上げ盤などのように工具(本願明細書では工具に相当する物も含む)を使用して機械加工する装置をいう。また被加工物とは、機械加工において被削材や工作物と呼ばれる機械加工の全対象物をいい、たとえば錆を発生する金属あるいは非金属が含まれる。さらに、加工液としての水は、典型的には水道水であるが、通常の水道水に含まれない成分を含むものであっても、本発明の効果が得られ、それが環境に対して有害とはならない量あるいは種類のものであれば、当該成分を含む水を主成分とする水溶液も本願明細書における水に含まれるものと定義する。
【0009】
本願発明者等は、環境に対して有害な物質を含む従来の加工液の代わりに水を用いて機械加工を行うことを着想し、加工液として水を使用した場合と、従来の加工液を使用した場合とで比較実験を行った。水としては水道水を使用し、機械加工の一例として研削加工を行い、研削抵抗や表面温度の比較を行った。その結果、水を使用した場合の研削抵抗や表面温度は、従来の加工液を使用した場合よりも若干劣るものの実用上問題ないレベルであることを確認した。したがって、機械加工の際に加工液として水を使用することができる。加工液として水を使用することにより、加工液自体の成分や加工液の処理のために環境が悪化するという問題を解決することができる。
【0010】
しかし、加工液として水を使用した場合、加工時あるいは加工後に被加工物に錆が発生し易くなることが懸念される。そこで、かかる錆の発生を抑制すべく、本願発明者等は鋭意検討を重ね、機械加工装置に電気防錆機能を付与することを想到した。具体的には、上述のように機械加工装置に陽極部と陰極部を設け、加工液中に電流を流すことで電気回路を形成し、被加工物に電流を流しながら機械加工を行うことを想到した。それにより、機械加工時に加工液である水と、被加工物における活性化した被加工面とが接触した場合においても、被加工物のイオン化を抑制することができる。また同時に、加工液に晒される非加工面の腐食をも防止することができる。したがって、加工時のみならず加工直後における被加工物の防食を行うことができる。
【0011】
上記陽極部は、加工液供給機構の一部、加工液供給機構と電気的に接続された導電性部材あるいは加工液中に設置される電極部を含む。そして、たとえば陽極部と陰極部に直流電源等の電源を接続し、加工液を介して被加工物に電流を流すようにする。このとき、陰極部を被加工物と電気的に接続し、陽極部、加工液および陰極部間に電気回路を形成する。
【0012】
本発明の機械加工装置は、好ましくは、上記陽極部あるいは陰極部から装置本体側に電流が流れるのを抑制する絶縁手段を備える。それにより、電流が装置本体側にリークするのを抑制することができ、装置本体と電気的に接続された各種機器を保護するとともに効率的に被加工物の防食をも行うことができる。なお、加工液である水を介して外部へ電流が漏れるのを防止するためには、たとえば貯溜タンクや水道配管等の水の供給源と、加工液供給機構との間に所定の長さの絶縁体よりなるチューブを設ければよい。
【0013】
また、本発明の機械加工装置は、電源と電気的に接続され被加工物に流す電流値を制御するための電流値制御手段を備えるものであってもよい。該電流値制御手段により、たとえば機械加工中の電流値をモニタし、電流値が増減したのに応じて電源の電圧値を制御する。それにより、被加工物に流す電流値を防食に必要な最適値に保持することができ、効果的に被加工物の防食を行うことができる。
【0014】
また、本発明の機械加工装置は、被加工物の加工後に生じる切屑等の被加工物の屑を収容する容器を備えるものであってもよい。この場合、該容器は、上記屑に電流を流すための容器側陽極部および容器側陰極部を有する。本局面の場合には、切屑等の被加工物の屑にも電流を流すことができ、該被加工物の屑の腐食をも防止することができる。
【0015】
本発明の機械加工方法は、加工液としての水を被加工物に供給し、該加工液を介して被加工物に電流を流しながら被加工物を機械加工することを特徴とする。このように加工液としての水を使用することにより上述のように環境が悪化するという問題を解決することができ、かつ機械加工時に被加工物に電流を流すことにより被加工物の防食をも行える。
【0016】
本発明の機械加工システムは、機械加工装置と、被加工物の保管装置とを備える。機械加工装置は、導電性の被加工物を加工する工具と、該工具による加工時に加工液としての水を被加工物に供給する加工液供給機構と、被加工物に電流を流すための第1陽極部および第1陰極部とを含む。保管装置は、保存液としての水を受け入れ加工後の被加工物を保管する容器と、加工後の被加工物に電流を流すための第2陽極部および第2陰極部とを含む。
【0017】
なお、上記の容器または容器の一部の材質は、金属等の導電性のある材質としてもよく、たとえば被加工物の材質と同材質としてもよい。容器または容器の一部の材質は、好ましくは、被加工物に対して電気化学的に犠牲電極となり得る材質とする。たとえば、保管すべき材質が鉄の場合、容器または容器の一部の材質をアルミニウム、亜鉛、マグネシウム等とする。
【0018】
従来、加工後の工作物は、鉱油に浸漬する方法やオイルスプレー法で保管されていた。しかし、鉱油やスプレーオイルが漏れ出し、これが環境破壊の原因の一つとされている。そこで、上述のような保管装置を用いることにより、たとえ保存液が漏れ出したとしても、保存液は水であるので、環境が悪化することはほとんどない。また、保管装置が陽極部と陰極部を有することにより、保存液を介して加工後の被加工物に電流を流すことができ、加工後の被加工物の表面の腐食を抑制することができる。
【0019】
したがって、上記のような機械加工装置と保管装置とを備えることにより、被加工物の加工時および加工後のみならず保管時においても、被加工物の防食を行える。また、たとえば保管装置を自動搬送する搬送装置を備えた場合には、搬送中においても被加工物の防食を行える。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図13を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態1は、本発明の思想を研削加工に適用したものである。図1に示すように、本実施の形態1の機械加工装置は、加工液供給機構としての加工液供給ノズル4と、被加工物9を支持する支持軸と、該支持軸の両端を保持するセンタ7と、工具としての砥石8とを備える。
【0022】
加工液供給ノズル4は、加工液としての水(たとえば水道水)を砥石8と被加工物9との間に供給し、たとえば金属等の導電性部材で構成される。図1の例では、加工液供給ノズル4は、電流計3およびリード線2を介して直流電源供給・制御装置1の陽極と接続され、陽極部として機能する。
【0023】
陽極部としては、別途電極を設けることも可能である。たとえば加工液供給ノズル4内に導電性部材よりなる電極を設置し、該電極を直流電源供給・制御装置1の陽極と接続してもよい。この場合、加工液供給ノズル4は、プラスチック等の絶縁材料で形成することができる。また、加工液供給ノズル4と被加工物9間に陽極部として機能する電極を設置し、加工時に該電極が加工液中に位置するようにしてもよい。
【0024】
他方、被加工物9は、導電性を有する材質で構成され、支持軸やセンタ7等の導電性の支持部(保持部)により支持(保持)される。この支持部は、リード線5を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と接続され、陰極部となる。
【0025】
研削中に加工液である水10を砥石8と被加工物9間に流すことにより、水10を介して上記の陽極部と陰極部との間に電気回路を形成し、電流を被加工物9へ流すようにする。それにより、電気防食法によって活性化した被加工面が腐食するのを抑制するとともに、加工液である水10に晒される非加工面の腐食をも抑制することができる。
【0026】
電流計3は、上記の電気回路に流れる電流値を計測するものであり、リード線2,6を介して直流電源供給・制御装置1と電気的に接続される。この電流計3で測定された電流値をリード線6により直流電源供給・制御装置1にフィードバックし、該電流値に基づいて直流電源供給・制御装置1の動作を制御することにより、常に最適な電圧を陽極部と陰極部間に印加することができる。該電流計3と、直流電源供給・制御装置1における制御部とが、被加工物に流す電流値を制御するための電流値制御手段として機能する。
【0027】
具体的には、たとえば図2に示す手法にて研削加工時の電圧・電流を制御することができる。この電流値制御方法を採用することにより、加工液の噴出量や加工液の温度によって加工液の電気抵抗が変動した場合においても、印加電圧値を制御することで被加工物9に流れる電流値を適正値に保持することができ、被加工物9に錆が発生するのを抑制することができる。
【0028】
図2に示すように、まず加工前のステップS1において、電気防錆に必要な実効電流値Icを設定する。この実効電流値Icは、完全防食電流値に安全率を乗じたものである。ここで、完全防食電流とは、流水中で完全防食を実行するのに必要な完全防食電流密度Kaに、加工液に晒される被加工物9ならびに被加工物保持具の面積Sを乗じた値であり、Fe系材料で水道水(流動淡水)の場合、完全防食電流密度Ka=0.05A/m2である。面積Sの算出が煩雑な場合、安全係数(>1)を大きく設定することで、完全防錆が可能となる。
【0029】
その後、初期値V0と電圧加減値ΔVをマニュアルで設定する。ただし、作業者がマニュアルで設定しなければ、これらの値として標準値が自動的に設定され、同じロットの作業を繰り返す場合は自動的に前回制御された値である実効値が設定される。
【0030】
次に、ステップS2において電圧VをV0として供給を開始し、ステップS3において研削を開始し、ステップS4において砥石8と被加工物9間に加工液(水)の供給を開始する。そして、ステップS5において電流計3を用いて電流値Imのモニタを開始する。
【0031】
このモニタされた電流値Imが直流電源供給・制御装置1に送られ、直流電源供給・制御装置1において電流値Imと実効電流値IcとをステップS6において比較する。そして、電流値Imが実効電流値Ic以下の場合、ステップS7において直流電源供給・制御装置1によって陽極部と陰極部間に印加する電圧をΔVだけ増加させる。他方、電流値Imが実効電流値Icより大きい場合、ステップS7において直流電源供給・制御装置1によって陽極部と陰極部間に印加する電圧をΔVだけ減少させる。この制御回路を加工中に継続させることで、被加工物9の完全防錆が可能となる。
【0032】
次に、研削終了の信号を研削盤の制御部であるNC(Numerical Control)部から受け取った段階で、ステップS9において研削を終了する。その後、ステップS10において加工液(水)の供給を停止し、ステップS11において直流電源供給・制御装置1による電圧の供給を停止し、最後にステップS12において電流モニタを停止する。
【0033】
次に、本願発明者は、本実施の形態1の機械加工装置を用いて機械加工を行った場合の効果を確認すべく実験を行ったので、その結果について図7〜図9を用いて説明する。本実験では、被加工物(工作物)の円筒研削を行った後に被加工物を回転させながら3時間水をかけ続けた後の被加工物の表面状態を観察した。
【0034】
図7に示す被加工物の左半分は3時間水をかけながら放置した後研削を行った研削面、右半分は研削を行っていない非研削面である。この図から、研削直後の面は、電気防錆の有無にかかわらず、錆の発生が写真上ではほぼ判別できないことがわかる。しかし、電気防錆を行った場合には非研削面も腐食していないのに対し、電気防錆を行っていない場合の非研削面は顕著に腐食していることがわかる。この結果より、本発明の電気防錆加工法の効果を確認することができた。
【0035】
なお、電気防錆を行っていない場合の加工面は砥石で研削されているので肉眼では錆は観察できないが、電子顕微鏡による観察では、金属学的には錆の核が発生しつつある。
【0036】
また、図7の結果が得られた実験では、30V×3.3mA=99mWの消費電力しか供給しなかったにもかかわらず、電気防錆の効果を確認することができた。しかし、実際に必要な消費電力量は、計算上では21mW程度とさらに少ないものでよい。このように少ない消費電力で電気防錆の効果を期待できるので、コスト的にもかなり有利である。
【0037】
次に、錆の発生時間を確認するために行った実験結果について、図8を用いて説明する。本実験では、被加工物を研削後、水をかけた状態で回転させ、10分後、30分後、1時間後、3時間後の腐食の状態を観察した。
【0038】
図8に示すように、10分後では電気防錆の有無にかかわらず錆の発生は確認できないが、30分後には電気防錆を行っていないサンプルに錆の発生を確認することができた。その後、電気防錆を行っていないサンプルでは時間が経過するにつれて錆が増加しているが、電気防錆を行ったサンプルでは時間が経過しても錆の発生は確認できなかった。
【0039】
図9に、水道水を加工液として使用した本発明の電気防錆加工法と、電流供給を停止した通常の加工法における加工表面に発生した錆の面積率を示す。
【0040】
図9に示すように、電気防錆加工法の場合は錆面積率はゼロのままであるが、通常の加工法の場合には時間の経過とともに錆の発生した部分の面積が増大するのがわかる。より詳しくは、錆は、はじめは急激に、その後増加傾向を緩やかにしながら増加することがわかる。
【0041】
なお、図1の例では図示を省略しているが、陰極部や陽極部から研削装置(研削盤)本体に迷走電流が流れるのを防止するために、陰極部や陽極部と、研削装置本体との接続部に絶縁手段を設けることが好ましい。たとえば、センタ7と研削装置本体との間、加工液供給ノズル4と研削装置本体との間に絶縁テープや絶縁シート等の絶縁部材を設置すればよい。
【0042】
また、タンクなどの加工液供給源を設置した場合、加工液供給ノズル4と、加工液供給源とを接続する配管の一部を、所定長さ(たとえば1m程度)の合成樹脂等の絶縁部材よりなる管で構成することにより、加工液である水を介して加工液供給源側に電流がリークするのを抑制することができる。
【0043】
さらに、上述の例では電流計3を設置する場合について説明したが、電流計3を設置しなくても完全防食電流値を超える電流を被加工物9に流すことで防食を行える。
【0044】
また、上述の機械加工装置は、被加工物の加工後に生じる屑を収容する容器を備えることが好ましい。該容器は、被加工物の屑に電流を流すための容器側陽極部および容器側陰極部を有し、容器側陽極部および容器側陰極部は電源と電気的に接続される。
【0045】
容器としては、たとえば被加工物の屑とともに加工液を受け入れる金属製の加工液タンクを使用することができ、該加工液タンクに設けた導電性を有するフィルタ装置で被加工物9の屑を収容することができる。たとえば、加工液タンクを陽極部とし、フィルタ装置を加工液タンクから絶縁し、フィルタ装置を陰極部とすることが考えられる。
【0046】
(実施の形態2)
次に、図3を用いて、本発明を平面研削盤に適用した場合について説明する。図3に示すように、本実施の形態2では、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。該電極11は、電流計3を介して直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。被加工物9は、電磁チャック12上に載置される。電磁チャック12は、テーブル14上に絶縁体13を介して設置され、直流電源供給・制御装置1の陰極と接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0047】
本実施の形態2の場合も、電極11と被加工物9間に、加工液である水10を介して電気回路を形成することができるので、被加工物9に所望量の電流を流すことができ、被加工物9の防錆を行うことができる。
【0048】
また、電磁チャック12も直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続されるので、電磁チャック12の防錆をも行うことができる。さらに、テーブル14と電磁チャック12間に絶縁体13を設置することにより、テーブル14と電磁チャック12間を電気的に絶縁することができ、装置本体側に電流が漏れるのを抑制することもできる。
【0049】
(実施の形態3)
次に、図4を用いて、本発明を内面研削盤に適用した場合について説明する。図4に示すように、本実施の形態3でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。内面研削盤では、被加工物9はチャック16により主軸台17に固定され、該主軸台17が回転する機構となっている。
【0050】
本実施の形態3の内面研削盤では、主軸台17における円筒部外周上に、銅等の金属製のスリップリング18を設置する。このスリップリング18は、リード線等を介して主軸台17およびチャック16と電気的に接続され、銅等の導電性のブラシ15を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0051】
本実施の形態3においても、電極11と被加工物9間に、加工液である水10を介して電気回路を形成することができるので、被加工物9の防錆を行うことができる。また、主軸円筒部にも電流を流すことができるので、主軸の防錆をも行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態3においても、陰極部や陽極部と、内面研削盤本体との接続部に絶縁手段を設けることが好ましい。たとえば、主軸台17と内面研削盤本体間に絶縁体(絶縁手段)を設け、主軸台17と内面研削盤本体との間を電気的に絶縁する。
【0053】
(実施の形態4)
次に、図5を用いて、本発明をマシニングセンタに適用した場合について説明する。図5に示すように、本実施の形態4でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。
【0054】
マシニングセンタの場合には、工具および工具回転部である主軸部20も防錆する必要がある。そこで、主軸部20を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続している。なお、主軸部20とマシニングセンタ本体間に絶縁体(絶縁手段)を設け、主軸部20とマシニングセンタ本体との間を電気的に絶縁することが好ましい。
【0055】
他方、被加工物9は、導電性の被加工物保持具19により保持される。被加工物保持具19は、テーブル14上に絶縁体13を介して設置され、直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。テーブル14も同様に、直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続される。それ以外の構成については、実施の形態1と基本的に同様である。
【0056】
本実施の形態4では、主軸部20のみならず主軸部20内部の金属接続部を介して工具にも電流を流すことができるので、主軸部20のみならず工具も防錆することができる。また、被加工物9および被加工物保持具19のみならずテーブル14にも電気防錆用の電流を流すことができるので、これらの防錆をも行うことができる。
【0057】
本願発明者が、本実施の形態4の機械加工装置を用いて、水道水を加工液とした電気防錆を行いながら実際に被加工物9の加工を行い、1時間後の被加工物9の表面を観察したところ、図10に示すように錆の発生は見られなかった。それに対し、電気防錆を行うことなく水道水を加工液として用いて被加工物9の加工を行った場合には、顕著な錆が発生しているのがわかる。
【0058】
(実施の形態5)
次に、図6を用いて、本発明を旋盤に適用した場合について説明する。現在の旋盤は、切屑処理の簡便さから、一般に図6の工具(バイト25)と刃物台24が上下逆に取り付けられているが、説明の便宜上、図示の形態のものを一例として挙げ、それについて説明する。
【0059】
旋盤での電気防錆加工法は、円筒研削盤、マシニングセンタ、内面研削盤への適用例を組合せた形となる。図6に示すように、本実施の形態5でも、合成樹脂製の加工液供給ノズル4内にコイル状の電極(陽極部)11を設置している。導電性部材よりなる主軸台21の回転部にスリップリング18を設置し、スリップリング18は、ブラシ15を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。本実施の形態5の場合も、陰極部と旋盤(装置)本体との間に絶縁体等の絶縁手段を設置し、旋盤(装置)本体側へ電流がリークするのを抑制することが好ましい。
【0060】
被加工物9は、導電性部材よりなるチャック22により保持されるので、チャック22、主軸台21、スリップリング18、ブラシ15およびリード線5を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。したがって、被加工物9と電極11との間に、加工液である水10を介して電気回路が形成され、被加工物9の防錆を行える。また、同時に、チャック22、主軸台21の回転部の防錆も行える。さらに、被加工物9の一端を支持するセンタ23も、導電性部材で構成され、直流電源供給・制御装置1の陰極と接続されるので、センタ23の防錆も行える。
【0061】
バイト25は、刃物台24上に設置され、刃物台24は絶縁体13を介してテーブル上に載置される。このとき、刃物台24を直流電源供給・制御装置1の陰極と接続することにより、バイト25と刃物台24の防錆も行える。
【0062】
(実施の形態6)
次に、図11を用いて、本発明の機械加工システムの一部を構成する被加工物9の保管装置の構造例について説明する。
【0063】
本発明の機械加工システムは、上述の機械加工装置と、導電性材料で構成される被加工物9の保管装置とを備える。本実施の形態6における保管装置は、図11に示すように、保存液27としての水を受け入れ保存液27中で被加工物9を保管する保管ケース(容器)26と、被加工物9に電流を流すための電極28とを備える。
【0064】
本実施の形態6の保管装置では、リード線2を介して電極28を直流電源供給・制御装置1の陽極と電気的に接続して陽極部として機能させる。他方、保管ケース26を金属等の導電性を有する材質で構成し、リード線5および電流計3を介して該保管ケース26を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続して陰極部として機能させる。なお、電流計3はリード線6を介して直流電源供給・制御装置1と電気的に接続されており、実施の形態1の場合と同様のフィードバック制御を行うことができる。
【0065】
保存液27を収容した保管ケース26内に加工後の被加工物9を入れると、該被加工物9は沈み、保管ケース26と接触する。したがって、被加工物9は、保管ケース26を介して直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続される。それにより、被加工物9と電極28との間に保存液27を介して電気回路を形成することができ、被加工物9に電流を流すことができる。この直流電源による電気防食法(カソード防食)により、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0066】
次に、本発明の保管装置による防錆効果を確認すべく行った実験結果について説明する。本実験では、本発明の保管装置内で電気防錆を行いながら加工後の被加工物9を1日間水中保管した場合と、電気防錆を行わずに加工後の被加工物9を1日間水中保管した場合とで錆の発生の程度を比較した。
【0067】
図13に示すように、本発明の電気防錆を行った場合には全く錆は発生していないのに対し、電気防錆を行わなかった場合には錆が発生しているのがわかる。したがって、本発明の保管装置中で加工後の被加工物9を保管することにより、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができることを確認できた。
【0068】
なお、本発明の機械加工システムは、たとえば上述の保管装置を自動搬送する搬送装置を備えるものであってもよい。この場合には、搬送中においても被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0069】
(実施の形態7)
次に、図12を用いて、上述の保管装置の変形例について説明する。実施の形態7では、保管ケース26全体を導電性部材で構成したが、被加工物9と接触する部分、あるいは保管ケース26に取付けられ被加工物9を支持または保持する部分のみを導電性部材で構成してもよい。
【0070】
図12に示すように、保管ケース26の底部に金属等の導電性部材で構成された保管板29を設け、該保管板29上で被加工物9を保管する。保管ケース26の底部以外の部分は、たとえば絶縁材料で構成する。
【0071】
本実施の形態7の場合、保管板29を直流電源供給・制御装置1の陰極と電気的に接続する。それにより、実施の形態6と同様に、加工後の被加工物9の表面の腐食を抑制することができる。
【0072】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、機械加工を行う装置であれば、上述の各機械加工装置以外の機械加工装置にも本発明を適用可能である。また、上述の各要素の形状や材質は一例であり、当該要素の機能を発揮できる限り、上記以外の任意の形状および材質を採用可能である。
【0073】
すなわち、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、機械加工の際の加工液として水を使用することで、加工液の使用あるいは処理により環境を悪化させるという問題を解決することができる。それに加え、機械加工時や保管時に電気防錆を行うようにしたので、加工液として水を使用した場合においても、被加工物の防食を行える。さらに、当該電気防錆に必要な消費電力量は極めて少ないものでよいので、コスト的にもかなり有利である。つまり、本発明によれば、低コストで、環境への悪影響を効果的に抑制でき、しかも被加工物の防食をも抑制しながら機械加工を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における機械加工装置の概略構成図である。
【図2】実施の形態1の機械加工装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2における機械加工装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施の形態3における機械加工装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施の形態4における機械加工装置の概略構成図である。
【図6】本発明の実施の形態5における機械加工装置の概略構成図である。
【図7】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の研削加工後の被加工物の表面状態を示す図である。
【図8】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の研削加工後の被加工物の表面状態の経時変化を示す図である。
【図9】研削加工後の錆の面積率の経時変化を示す図である。
【図10】電気防錆を行った場合と行わなかった場合のマシニングセンタによる加工後の被加工物の表面状態を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態6における保管装置の概略構成図である。
【図12】本発明の実施の形態7における保管装置の概略構成図である。
【図13】電気防錆を行った場合と行わなかった場合の水中保管後の被加工物の表面状態を示す図である。
【符号の説明】
1 直流電源供給・制御装置、2,5,6 リード線、3 電流計、4 加工液供給ノズル、7,23 センタ、8 砥石、9 被加工物(工作物)、10 水(加工液)、11,28 電極、12 電磁チャック、13 絶縁体、14 テーブル、15 ブラシ、16,22 チャック、17,21 主軸台、18 スリップリング、19 被加工物保持具、20 主軸部、24 刃物台、25 バイト、26 保管ケース、27 保存液、29 保管板。
Claims (7)
- 導電性の被加工物を加工する工具と、
前記工具による加工時に加工液としての水を前記被加工物に供給する加工液供給機構と、
前記被加工物に電流を流すための陽極部および陰極部と、
を備えた機械加工装置。 - 前記陽極部は、前記加工液供給機構の一部、前記加工液供給機構と電気的に接続された導電性部材あるいは前記加工液中に設置される電極部を含み、
前記加工液を介して前記被加工物に電流を流すようにした、請求項1に記載の機械加工装置。 - 前記陽極部あるいは前記陰極部から装置本体側に電流が流れるのを抑制する絶縁手段を備えた、請求項1または請求項2に記載の機械加工装置。
- 電源と電気的に接続され前記被加工物に流す電流値を制御するための電流値制御手段を備えた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の機械加工装置。
- 前記被加工物の加工後に生じる屑を収容する容器を備え、
前記容器は、前記屑に電流を流すための容器側陽極部および容器側陰極部を有する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の機械加工装置。 - 加工液としての水を被加工物に供給し、該加工液を介して前記被加工物に電流を流しながら前記被加工物を機械加工することを特徴とする、機械加工方法。
- 導電性の被加工物を加工する工具と、該工具による加工時に加工液としての水を前記被加工物に供給する加工液供給機構と、前記被加工物に電流を流すための第1陽極部および第1陰極部とを含む機械加工装置と、
保存液としての水を受け入れ加工後の前記被加工物を保管する容器と、前記加工後の前記被加工物に電流を流すための第2陽極部および第2陰極部とを含む保管装置と、
を備えた機械加工システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002179739A JP2004017261A (ja) | 2002-06-20 | 2002-06-20 | 機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002179739A JP2004017261A (ja) | 2002-06-20 | 2002-06-20 | 機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004017261A true JP2004017261A (ja) | 2004-01-22 |
Family
ID=31177070
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002179739A Withdrawn JP2004017261A (ja) | 2002-06-20 | 2002-06-20 | 機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004017261A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011173190A (ja) * | 2010-02-23 | 2011-09-08 | Iwate Univ | 機械加工システム |
US9946163B2 (en) | 2003-04-11 | 2018-04-17 | Nikon Corporation | Apparatus and method for maintaining immersion fluid in the gap under the projection lens during wafer exchange in an immersion lithography machine |
-
2002
- 2002-06-20 JP JP2002179739A patent/JP2004017261A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9946163B2 (en) | 2003-04-11 | 2018-04-17 | Nikon Corporation | Apparatus and method for maintaining immersion fluid in the gap under the projection lens during wafer exchange in an immersion lithography machine |
JP2011173190A (ja) * | 2010-02-23 | 2011-09-08 | Iwate Univ | 機械加工システム |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3008344B2 (ja) | 凍結式ワーク固定法および凍結式ワーク固定装置 | |
CA2612772A1 (en) | Adaptive spindle assembly for electrochemical discharge machining on a cnc machine tool | |
US20120308432A1 (en) | Corrosion inhibitor compositions comprising tetrahydrobenzotriazoles and other triazoles and methods for using same | |
JP5352650B2 (ja) | 機械加工装置およびそれを用いた機械加工方法 | |
CN101240221A (zh) | 水溶性全合成金属加工液组合物 | |
US20120315185A1 (en) | Corrosion inhibitor compositions comprising tetrahydrobenzotriazoles solubilized in activating solvents and methods for using same | |
JP4639329B2 (ja) | チタン合金の水中におけるエンドミル切削加工法 | |
JP2004017261A (ja) | 機械加工装置および機械加工方法ならびに機械加工システム | |
AU2011300405A1 (en) | Shank adapter with corrosion protection | |
JP2013132735A (ja) | 不活性ガスを加工液に溶解させるワイヤ放電加工機及びワイヤ放電加工方法 | |
JP5636603B2 (ja) | 強アルカリ水を利用した切削加工装置及び切削加工方法 | |
Choi et al. | Electrochemical deburring system using electroplated CBN wheels | |
JP5070484B2 (ja) | 電気防錆法を利用したチタン合金の水中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法 | |
JP2004323940A (ja) | 機械加工装置、被加工物搬送装置および機械加工システム | |
JP5070485B2 (ja) | 電気防錆法を利用したニッケル合金の水中におけるエンドミル切削加工装置及びその加工方法 | |
CN103157950B (zh) | 铰刀刀体与刀片分离及再利用方法 | |
CN109531045A (zh) | 发动机缸体主轴孔修复方法 | |
JP7438490B2 (ja) | 機械加工システム | |
CN108555683A (zh) | 一种数控车床冷却散热系统 | |
JP2000126984A (ja) | 切削加工方法 | |
JP2602621B2 (ja) | ステンレス鋼部材の電解研磨方法 | |
KR100682544B1 (ko) | 전해디버링장치 | |
CN112960816B (zh) | 一种用于机械加工机床的电防锈方法 | |
CN212735388U (zh) | 一种去毛刺设备 | |
KR102506689B1 (ko) | 가스켓 가공 장치 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20050906 |