JP2004016158A - 卵の孵化率を高める方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】卵の孵化率を高める方法および該方法に用いられる組成物を提供する。
【解決手段】アミノ酸溶液を種卵に注入することを特徴とする、卵の孵化率を高める方法、および該方法に用いられるアミノ酸を有効成分として含有する卵の孵化率向上用組成物を提供する。該アミノ酸は、いかなるアミノ酸であってもよく、アルギニンやシトルリン等の塩基性アミノ酸が好ましく用いられる。また、該組成物にはワクチンが含有されていてもよい。
【選択図】 なし
【解決手段】アミノ酸溶液を種卵に注入することを特徴とする、卵の孵化率を高める方法、および該方法に用いられるアミノ酸を有効成分として含有する卵の孵化率向上用組成物を提供する。該アミノ酸は、いかなるアミノ酸であってもよく、アルギニンやシトルリン等の塩基性アミノ酸が好ましく用いられる。また、該組成物にはワクチンが含有されていてもよい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、卵の孵化率を高める方法および該方法に用いられる組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
種卵の孵化率の向上は、鶏の生産性の向上につながるため、養鶏業にとっては重要な目標である。従来、養鶏場における孵化率の向上は、温度や湿度の管理により行われており、卵へ栄養物質を注入することにより孵化率を向上させる方法は知られていない。
一方、雛の死亡率を低下させる目的で種卵に効率良くワクチンを注入する技術がEmbrex社で開発され、アメリカを中心に広く普及している。しかしながら、種卵へのワクチンの注入は、孵化前にワクチンにより抗体を形成させることにより孵化後のIBDウィルス(Infectious Bursal Disease Virus)などの感染に対する免疫を付与することを目的としており、孵化率を向上させる効果は無い。
【0003】
種卵にアミノ酸の混合液を注入すると孵化時の体重が増加する事は知られている〔Poultry Science, 78、1493〜1498,1999、British Poultry Science,23, 171−174,1982〕。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明の目的は、種卵に注入することにより卵の孵化率を向上させる有用物質、該有用物質を用いた孵化率の向上方法および該物質を有効成分として含有する孵化率向上用組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行い、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下(1)〜(14)に関する。
(1) アミノ酸溶液を種卵に注入することを特徴とする、卵の孵化率を高める方法。
(2) アミノ酸が、塩基性アミノ酸であることを特徴とする、上記(1)の方法。
(3) 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであることを特徴とする、上記(2)の方法。
(4) アミノ酸溶液をワクチンと共に注入することを特徴とする、上記(1)または(2)の方法。
【0006】
(5) アミノ酸溶液が、アミノ酸濃度0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下のアミノ酸水溶液である、上記(1)〜(4)いずれか1つの方法。
(6) アミノ酸の注入量が、注入一回当たり0.01mg以上1g以下である、上記(1)〜(5)いずれか1つの方法。
(7) アミノ酸を有効成分として含有する卵の孵化率向上用組成物。
(8) アミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、上記(7)の卵の孵化率向上用組成物。
(9) 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであるこを特徴とする、上記(7)または(8)の組成物。
(10) 卵の孵化率向上用組成物が、ワクチンを含む組成物である、上記(7)〜(9)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
【0007】
(11) アミノ酸の濃度が0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下である、上記(7)〜(10)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(12) 孵化率向上用組成物が、水溶液の形態である、上記(7)〜(11)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(13) 孵化率向上用組成物が、凍結乾燥体である上記(7)〜(11)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(14) 水溶液が、上記(13)の組成物を水に溶解して得られる水溶液である上記(12)の組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
1.卵の孵化率向上用組成物
本発明の卵の孵化率向上に用いられる組成物としては、以下に示すアミノ酸を有効成分として含有する溶液あるいは該溶液を凍結乾燥して得られる凍結乾燥物があげられる。
該アミノ酸は、いかなるアミノ酸であってもよいが、塩基性アミノ酸が好ましく用いられる。塩基性アミノ酸としては、例えばアルギニン、シトルリン等が、単独もしくは組み合わせて用いられる。また、アミノ酸は単に遊離の形だけでなく、有機酸または無機のイオンとの塩の形でも使用できる。
アミノ酸の純度は、いかなる純度であってもよいが、90%以上であることが好ましく、95%以上がさらに好ましく、98.5%以上であればさらに好ましい。
【0009】
本発明の方法において、アミノ酸は水性媒体に溶解して用いられる。該水性媒体中のアミノ酸の濃度は、0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下、好ましくは0.1%(w/v)以上20%(w/v)以下である。
該水性媒体は、種卵に注入する際に種卵に対して影響を与えないものであればどのようなものでも良いが、例えば、生理食塩水、蒸留水等の精製水、緩衝液等が用いられる。該緩衝液のpHは6〜8、好ましくは6.8〜7.8、とりわけ好ましくは7.4である。該緩衝液としては、リン酸緩衝液、tris−塩酸緩衝液、HEPES塩酸緩衝液等があげられる。
該水性媒体中には、種卵に注入する際に種卵に対して影響を与えない抗酸化剤、溶解補助剤、等張化剤、界面活性剤、防腐剤等を含ませることができる。
該抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ビタミンE、L−システイン等があげられる。該溶解補助剤としては、例えば、ポレエチレングリコール等があげられる。該等張化剤としては、例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等があげられる。該界面活性剤としては、例えば、HCOー60(日光ケミカル社製)等があげられる。該防腐剤としては、例えば、フェノール、エデト酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クエン酸、クロロクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等があげられる。
【0010】
上記で調製されるアミノ酸溶液は、雑菌による汚染を防ぐために通常は滅菌して用いられる。滅菌の方法としては、例えば、オートクレーブによる蒸煮、フィルターろ過等、通常用いられる滅菌方法であればいずれの方法でも用いることができる。
該アミノ酸溶液は、例えば、製剤学第2版、大塚昭信編、141〜161頁、1995年、南江堂刊を参考に調製してもよい。
アミノ酸はワクチンと共に用いてもよい。該ワクチンはアミノ酸と共に水性媒体に溶解して用いられる。アミノ酸とワクチンの混合は、無菌的に混合することが好ましい。
当該ワクチンとしては、通常種卵にワクチンとして用いられるものであればどのようなものでも良いが、市販の動物用ワクチン(動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編に記載のワクチン)が好ましく用いられる。例えば、ニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチン等が単独もしくは組み合わせて用いられる。
【0011】
なお、組成物中のワクチンの力価は、各ワクチンが有効に作用する力価であればいずれの力価でもよい。該有効な力価は各ワクチンにより異なるので、例えば動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編などを参照して決定する。
アミノ酸とワクチンを混合する場合は、アミノ酸1部に対して、ワクチン0.1〜100部を混合して攪拌する。アミノ酸とワクチンを混合する際にはワクチンの濃度が減少するが、この場合は、混合液を注入する量で注入量を調製すればよい。例えば、アミノ酸溶液とワクチンを等量で混ぜた場合には、該混合液の注入量を2倍に増やせばよい。
本発明の卵の孵化率向上用組成物(以下、本発明の組成物と略す)は、上記で得られるアミノ酸含有溶液であってもよいし、該アミノ酸含有溶液を、常法により凍結乾燥して得られる凍結乾燥物であってもよい。
以下、該本発明の組成物を用いた種卵の孵化率向上方法について述べる。
【0012】
2. 卵の孵化率向上方法
上記で得られる本発明の組成物を調製した後、該本発明の組成物を種卵に注入する。
該本発明の組成物が凍結乾燥物等の固形物である場合は、該固形物を滅菌水に溶解して使用することができる。溶解する濃度は0.01%(w/V)〜50%(w/v)が好ましく、0.1%(w/v)〜20%(w/v)がさらに好ましい。
本発明において、孵化率を向上させることのできる種卵としては、鶏、七面鳥、アヒル等の家禽および水禽の種卵等があげられる。
本発明の組成物の種卵への注入の時期は特に限定されないが、好ましくは産卵後10日〜20日目である。
注入する本発明の組成物の液量は、種卵の大きさにより異なるが、好ましくは1つの種卵につき0.05〜0.5mlである。
【0013】
本発明の組成物を種卵に注入する際には、種卵の羊膜内(amniotic fluid)に注入する。雑菌汚染を防ぐために、滅菌したアミノ酸溶液を殺菌した注射器(例えば、Beckman Dickinson社製)で注入することが好ましい。また、必要であれば雑菌による汚染を防ぐために、注入部周辺を70%のエタノールあるいはヨードチンキなどで殺菌して注入する。注入後は、注入部をパラフィンなどでシールする。
具体的には、Embrex社(1035 Swabia Cout Durham, NC27703, USA)のInovoject(商品名)インジェクション・システムが、無菌的に2〜5万個/時間の処理が可能であるので、好ましく用いられる。
アミノ酸を注入した種卵は、通常と同じように培養し孵化させればよい。
該方法により、種卵の孵化率を向上させることができる。
以下、発明の実施するための最良の形態を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
【実施例】
実施例1 アミノ酸溶液の調製−1(組成物1〜5)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にアルギニンを50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、2%、5%、10%(w/v)のL−アルギニン溶液(それぞれ、組成物1、2、3、4、5とする)を得た。
【0015】
実施例2 アミノ酸溶液の調製−2(組成物6〜9)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−アルギニン L−グルタミン酸を50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、5%、10%(w/v)の L−アルギニン L−グルタミン酸塩溶液(それぞれ、組成物6、7、8、9とする)を得た。
【0016】
実施例3 アミノ酸溶液の調製−3(組成物10〜13)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−アルギニン酢酸塩を50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、5%、10%(w/v)の L−アルギニン酢酸塩溶液(それぞれ、組成物10、11、12、13とする)を得た。
【0017】
実施例4 アミノ酸溶液の調製−4(組成物14〜18)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−シトルリンを50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、2%、5%、10%(w/v)の L−シトルリン溶液(それぞれ、組成物14、15、16、17、18とする)を得た。
【0018】
実施例5 アミノ酸溶液の鶏卵への注入−1
ブロイラー(Cobb X Cobb)の種卵各群10卵を用い、実施例1〜4により得られた組成物それぞれ0.1mlを、孵卵18日目に滅菌した注射器を用いて注入した。なお、アミノ酸溶液の代わりに生理食塩水を注入する系と何も注入しない系の両方を対照として用い、注入卵の孵化率を比較した。
孵化率を第1表に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
生理食塩水、無注入のコントロールの孵化率はどちらも60%であったのに対して、第1表に示した組成物を注入した群は、孵化率が70〜100%と顕著に増加していた。
【0021】
実施例6 アミノ酸溶液の鶏卵への注入−2
ブロイラー(Ross X Arbor Acre)の種卵各144卵を用い、実施例1により得られた組成物1、2、3、14、15、16各0.1mlを孵卵18日目に注入した。なお、アミノ酸溶液の代わりに生理食塩水を注入する系を対照として用い、各群の孵化率および孵化した雛の生後0日目の体重を測定した。
結果を第2表に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
アミノ酸溶液を注入した場合、生理食塩水を注入した場合に比べ、孵化率、雛の体重は共に向上していた。
【0024】
実施例7 ワクチン含有アミノ酸溶液の調製
実施例1と同様にして、アルギニンを0.1〜20%(w/v)含有するニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチンをそれぞれ調製した。各ワクチンの力価は動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編の記載に従った。
実施例4と同様にして、シトルリンを0.1〜20%含有するニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチンをそれぞれ調製した。各ワクチンの力価は動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編の記載に従った。
【0025】
【発明の効果】
本発明によって、発育卵の孵化率を高める事が可能となった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、卵の孵化率を高める方法および該方法に用いられる組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
種卵の孵化率の向上は、鶏の生産性の向上につながるため、養鶏業にとっては重要な目標である。従来、養鶏場における孵化率の向上は、温度や湿度の管理により行われており、卵へ栄養物質を注入することにより孵化率を向上させる方法は知られていない。
一方、雛の死亡率を低下させる目的で種卵に効率良くワクチンを注入する技術がEmbrex社で開発され、アメリカを中心に広く普及している。しかしながら、種卵へのワクチンの注入は、孵化前にワクチンにより抗体を形成させることにより孵化後のIBDウィルス(Infectious Bursal Disease Virus)などの感染に対する免疫を付与することを目的としており、孵化率を向上させる効果は無い。
【0003】
種卵にアミノ酸の混合液を注入すると孵化時の体重が増加する事は知られている〔Poultry Science, 78、1493〜1498,1999、British Poultry Science,23, 171−174,1982〕。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明の目的は、種卵に注入することにより卵の孵化率を向上させる有用物質、該有用物質を用いた孵化率の向上方法および該物質を有効成分として含有する孵化率向上用組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意検討を行い、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下(1)〜(14)に関する。
(1) アミノ酸溶液を種卵に注入することを特徴とする、卵の孵化率を高める方法。
(2) アミノ酸が、塩基性アミノ酸であることを特徴とする、上記(1)の方法。
(3) 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであることを特徴とする、上記(2)の方法。
(4) アミノ酸溶液をワクチンと共に注入することを特徴とする、上記(1)または(2)の方法。
【0006】
(5) アミノ酸溶液が、アミノ酸濃度0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下のアミノ酸水溶液である、上記(1)〜(4)いずれか1つの方法。
(6) アミノ酸の注入量が、注入一回当たり0.01mg以上1g以下である、上記(1)〜(5)いずれか1つの方法。
(7) アミノ酸を有効成分として含有する卵の孵化率向上用組成物。
(8) アミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、上記(7)の卵の孵化率向上用組成物。
(9) 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであるこを特徴とする、上記(7)または(8)の組成物。
(10) 卵の孵化率向上用組成物が、ワクチンを含む組成物である、上記(7)〜(9)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
【0007】
(11) アミノ酸の濃度が0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下である、上記(7)〜(10)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(12) 孵化率向上用組成物が、水溶液の形態である、上記(7)〜(11)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(13) 孵化率向上用組成物が、凍結乾燥体である上記(7)〜(11)いずれか1つの卵の孵化率向上用組成物。
(14) 水溶液が、上記(13)の組成物を水に溶解して得られる水溶液である上記(12)の組成物。
【0008】
【発明の実施の形態】
1.卵の孵化率向上用組成物
本発明の卵の孵化率向上に用いられる組成物としては、以下に示すアミノ酸を有効成分として含有する溶液あるいは該溶液を凍結乾燥して得られる凍結乾燥物があげられる。
該アミノ酸は、いかなるアミノ酸であってもよいが、塩基性アミノ酸が好ましく用いられる。塩基性アミノ酸としては、例えばアルギニン、シトルリン等が、単独もしくは組み合わせて用いられる。また、アミノ酸は単に遊離の形だけでなく、有機酸または無機のイオンとの塩の形でも使用できる。
アミノ酸の純度は、いかなる純度であってもよいが、90%以上であることが好ましく、95%以上がさらに好ましく、98.5%以上であればさらに好ましい。
【0009】
本発明の方法において、アミノ酸は水性媒体に溶解して用いられる。該水性媒体中のアミノ酸の濃度は、0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下、好ましくは0.1%(w/v)以上20%(w/v)以下である。
該水性媒体は、種卵に注入する際に種卵に対して影響を与えないものであればどのようなものでも良いが、例えば、生理食塩水、蒸留水等の精製水、緩衝液等が用いられる。該緩衝液のpHは6〜8、好ましくは6.8〜7.8、とりわけ好ましくは7.4である。該緩衝液としては、リン酸緩衝液、tris−塩酸緩衝液、HEPES塩酸緩衝液等があげられる。
該水性媒体中には、種卵に注入する際に種卵に対して影響を与えない抗酸化剤、溶解補助剤、等張化剤、界面活性剤、防腐剤等を含ませることができる。
該抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、ビタミンE、L−システイン等があげられる。該溶解補助剤としては、例えば、ポレエチレングリコール等があげられる。該等張化剤としては、例えば、グリセリン、ブドウ糖、塩化ナトリウム等があげられる。該界面活性剤としては、例えば、HCOー60(日光ケミカル社製)等があげられる。該防腐剤としては、例えば、フェノール、エデト酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クエン酸、クロロクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等があげられる。
【0010】
上記で調製されるアミノ酸溶液は、雑菌による汚染を防ぐために通常は滅菌して用いられる。滅菌の方法としては、例えば、オートクレーブによる蒸煮、フィルターろ過等、通常用いられる滅菌方法であればいずれの方法でも用いることができる。
該アミノ酸溶液は、例えば、製剤学第2版、大塚昭信編、141〜161頁、1995年、南江堂刊を参考に調製してもよい。
アミノ酸はワクチンと共に用いてもよい。該ワクチンはアミノ酸と共に水性媒体に溶解して用いられる。アミノ酸とワクチンの混合は、無菌的に混合することが好ましい。
当該ワクチンとしては、通常種卵にワクチンとして用いられるものであればどのようなものでも良いが、市販の動物用ワクチン(動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編に記載のワクチン)が好ましく用いられる。例えば、ニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチン等が単独もしくは組み合わせて用いられる。
【0011】
なお、組成物中のワクチンの力価は、各ワクチンが有効に作用する力価であればいずれの力価でもよい。該有効な力価は各ワクチンにより異なるので、例えば動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編などを参照して決定する。
アミノ酸とワクチンを混合する場合は、アミノ酸1部に対して、ワクチン0.1〜100部を混合して攪拌する。アミノ酸とワクチンを混合する際にはワクチンの濃度が減少するが、この場合は、混合液を注入する量で注入量を調製すればよい。例えば、アミノ酸溶液とワクチンを等量で混ぜた場合には、該混合液の注入量を2倍に増やせばよい。
本発明の卵の孵化率向上用組成物(以下、本発明の組成物と略す)は、上記で得られるアミノ酸含有溶液であってもよいし、該アミノ酸含有溶液を、常法により凍結乾燥して得られる凍結乾燥物であってもよい。
以下、該本発明の組成物を用いた種卵の孵化率向上方法について述べる。
【0012】
2. 卵の孵化率向上方法
上記で得られる本発明の組成物を調製した後、該本発明の組成物を種卵に注入する。
該本発明の組成物が凍結乾燥物等の固形物である場合は、該固形物を滅菌水に溶解して使用することができる。溶解する濃度は0.01%(w/V)〜50%(w/v)が好ましく、0.1%(w/v)〜20%(w/v)がさらに好ましい。
本発明において、孵化率を向上させることのできる種卵としては、鶏、七面鳥、アヒル等の家禽および水禽の種卵等があげられる。
本発明の組成物の種卵への注入の時期は特に限定されないが、好ましくは産卵後10日〜20日目である。
注入する本発明の組成物の液量は、種卵の大きさにより異なるが、好ましくは1つの種卵につき0.05〜0.5mlである。
【0013】
本発明の組成物を種卵に注入する際には、種卵の羊膜内(amniotic fluid)に注入する。雑菌汚染を防ぐために、滅菌したアミノ酸溶液を殺菌した注射器(例えば、Beckman Dickinson社製)で注入することが好ましい。また、必要であれば雑菌による汚染を防ぐために、注入部周辺を70%のエタノールあるいはヨードチンキなどで殺菌して注入する。注入後は、注入部をパラフィンなどでシールする。
具体的には、Embrex社(1035 Swabia Cout Durham, NC27703, USA)のInovoject(商品名)インジェクション・システムが、無菌的に2〜5万個/時間の処理が可能であるので、好ましく用いられる。
アミノ酸を注入した種卵は、通常と同じように培養し孵化させればよい。
該方法により、種卵の孵化率を向上させることができる。
以下、発明の実施するための最良の形態を示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0014】
【実施例】
実施例1 アミノ酸溶液の調製−1(組成物1〜5)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にアルギニンを50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、2%、5%、10%(w/v)のL−アルギニン溶液(それぞれ、組成物1、2、3、4、5とする)を得た。
【0015】
実施例2 アミノ酸溶液の調製−2(組成物6〜9)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−アルギニン L−グルタミン酸を50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、5%、10%(w/v)の L−アルギニン L−グルタミン酸塩溶液(それぞれ、組成物6、7、8、9とする)を得た。
【0016】
実施例3 アミノ酸溶液の調製−3(組成物10〜13)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−アルギニン酢酸塩を50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、5%、10%(w/v)の L−アルギニン酢酸塩溶液(それぞれ、組成物10、11、12、13とする)を得た。
【0017】
実施例4 アミノ酸溶液の調製−4(組成物14〜18)
10mlの生理食塩水を含む試験管を5本用意し、それぞれの試験管にL−シトルリンを50mg、100mg、200mg、500mg、1g添加し、溶解後オートクレーブ殺菌(120℃、10分)を行った。
結果として、0.5%、1%、2%、5%、10%(w/v)の L−シトルリン溶液(それぞれ、組成物14、15、16、17、18とする)を得た。
【0018】
実施例5 アミノ酸溶液の鶏卵への注入−1
ブロイラー(Cobb X Cobb)の種卵各群10卵を用い、実施例1〜4により得られた組成物それぞれ0.1mlを、孵卵18日目に滅菌した注射器を用いて注入した。なお、アミノ酸溶液の代わりに生理食塩水を注入する系と何も注入しない系の両方を対照として用い、注入卵の孵化率を比較した。
孵化率を第1表に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
生理食塩水、無注入のコントロールの孵化率はどちらも60%であったのに対して、第1表に示した組成物を注入した群は、孵化率が70〜100%と顕著に増加していた。
【0021】
実施例6 アミノ酸溶液の鶏卵への注入−2
ブロイラー(Ross X Arbor Acre)の種卵各144卵を用い、実施例1により得られた組成物1、2、3、14、15、16各0.1mlを孵卵18日目に注入した。なお、アミノ酸溶液の代わりに生理食塩水を注入する系を対照として用い、各群の孵化率および孵化した雛の生後0日目の体重を測定した。
結果を第2表に示した。
【0022】
【表2】
【0023】
アミノ酸溶液を注入した場合、生理食塩水を注入した場合に比べ、孵化率、雛の体重は共に向上していた。
【0024】
実施例7 ワクチン含有アミノ酸溶液の調製
実施例1と同様にして、アルギニンを0.1〜20%(w/v)含有するニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチンをそれぞれ調製した。各ワクチンの力価は動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編の記載に従った。
実施例4と同様にして、シトルリンを0.1〜20%含有するニューカッスル病ワクチン、伝染性気管支炎ワクチン、鶏痘ワクチン、伝染性コリーザワクチン、伝染性喉頭気管炎ワクチン、マイコプラズマ・ガリセブチカムワクチン、伝染性ファブリキウス嚢病ワクチン、鶏脳脊髄炎ワクチン、産卵低下症候群ワクチン、マレック病ワクチン、サルモネラ・エンテリティディス感染症ワクチン、トリニューモウイルスワクチンをそれぞれ調製した。各ワクチンの力価は動物用医薬品用具要覧1998年版、355〜456頁、社団法人日本動物薬事協会編の記載に従った。
【0025】
【発明の効果】
本発明によって、発育卵の孵化率を高める事が可能となった。
Claims (14)
- アミノ酸溶液を種卵に注入することを特徴とする、卵の孵化率を高める方法。
- アミノ酸が、塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
- 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
- アミノ酸溶液をワクチンと共に注入することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
- アミノ酸溶液が、アミノ酸濃度0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下のアミノ酸水溶液である、請求項1〜4いずれか1項に記載の方法。
- アミノ酸の注入量が、注入一回当たり0.01mg以上1g以下である、請求項1〜5いずれか1項に記載の方法。
- アミノ酸を有効成分として含有する卵の孵化率向上用組成物。
- アミノ酸が塩基性アミノ酸であることを特徴とする、請求項7記載の卵の孵化率向上用組成物。
- 塩基性アミノ酸が、アルギニンまたはシトルリンであるこを特徴とする、請求項7または8記載の組成物。
- 卵の孵化率向上用組成物が、ワクチンを含む組成物である、請求項7〜9いずれか1項に記載の卵の孵化率向上用組成物。
- アミノ酸の濃度が0.01%(w/v)以上50%(w/v)以下である、請求項7〜10いずれか1項に記載の卵の孵化率向上用組成物。
- 孵化率向上用組成物が、水溶液の形態である請求項7〜11いずれか1項に記載の卵の孵化率向上用組成物。
- 孵化率向上用組成物が、凍結乾燥体である請求項7〜11いずれか1項に記載の卵の孵化率向上用組成物。
- 水溶液が、請求項13記載の組成物を水に溶解して得られる水溶液である請求項12記載の組成物。
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JP2002178120A JP2004016158A (ja) | 2002-06-19 | 2002-06-19 | 卵の孵化率を高める方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN106472403A (zh) * | 2016-09-26 | 2017-03-08 | 四川农业大学 | 能够提高鸡蛋孵化率以及鸡的免疫力的养殖方法 |
-
2002
- 2002-06-19 JP JP2002178120A patent/JP2004016158A/ja active Pending
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