JP2004012794A - 反射型液晶表示素子および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液晶応答の非対称性の要因となる電池効果を抑制し、駆動電圧に印加するオフセット電圧を低減することができ、長期駆動を行った場合にも高い信頼性が確保できるようにする。
【解決手段】画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いる。これにより、画素電極42Aとしてアルミニウムなどを用いた従来の素子に比べて、対向する電極間での電池効果が抑制される。従って、従来に比べて、液晶応答の非対称性を抑制することができ、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧の低減を図ることができる。またこれにより、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされると共に、駆動時の長期信頼性の向上を図ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いる。これにより、画素電極42Aとしてアルミニウムなどを用いた従来の素子に比べて、対向する電極間での電池効果が抑制される。従って、従来に比べて、液晶応答の非対称性を抑制することができ、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧の低減を図ることができる。またこれにより、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされると共に、駆動時の長期信頼性の向上を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型の画素電極を有する反射型液晶表示素子およびそれを利用した反射型液晶プロジェクタ等の液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プロジェクションディスプレイ(プロジェクタ)などの各種表示装置には、液晶表示素子が利用されている。液晶表示素子は、液晶パネルまたは液晶セルなどとも呼ばれている。液晶表示素子の種類には、大別して透過型と反射型とがあり、いずれも、画素電極基板とこれに対向する対向基板との間に液晶を封入した構成となっている。透過型液晶表示素子では、画素電極基板と対向基板との双方に、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極が設けられている。
【0003】
一方、反射型液晶表示素子は、近年、液晶プロジェクタの高精細化、小型化および高輝度化が進むにつれて、その表示デバイスとして、小型化および高精細化が可能で高い光利用効率が期待できるものとして注目され、実際に実用化されている。この反射型液晶表示素子は、対向基板側に例えばITOからなる透明電極が設けられ、画素電極基板側に反射型の画素電極(以下、単に「反射電極」ともいう。)が設けられている。液晶プロジェクタに使用される反射型液晶表示素子は、一般にアクティブ型であり、画素電極基板として、例えば、C−MOS(Complementary−Metal Oxide Semiconductor)型の半導体スイッチング回路をシリコン基板上に形成したものを用いている。反射電極は、このシリコン駆動素子基板の上に配置される。反射電極は、対向基板側から入射した光を反射する機能と、液晶に対して電圧を印加する機能とを有している。反射電極の材料としては、一般にLSI(Large Scale Integrated)プロセスで用いられている、アルミニウム(Al)を主成分とした金属材料が利用されている。
【0004】
この反射型液晶表示素子では、各基板に設けられた透明電極と画素電極とにより、液晶に対して電圧が印加される。このとき、液晶は、対向する電極間の電位差に応じて光学的な特性が変化し、入射した光を変調させる。この光変調により階調表現が可能となり、その変調された光が映像表示に利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、液晶表示素子では、液晶内に存在するイオンが、駆動中に片方の基板に焼き付くことを防ぐために、所定期間ごとに駆動電圧の極性を±反転させて、電極間に電圧を印加するような駆動方式が一般的である。図12に、この駆動方式による駆動電圧の概念図を示す。図中、太い実線で示したように、対向電極間に印加される各極性の電圧の絶対値がV1で同じならば、本来、液晶にかかる実効的な電圧に差は生じず、上記したような焼き付き等の現象が起こらない。しかしながら、実際には、特に反射型液晶表示素子の場合、印加電圧がプラスとマイナスの場合とで液晶にかかる実効的な電圧に差が生じる。これは、反射型液晶表示素子では、各基板に用いられている電極材料が異なっていることに起因している。
【0006】
すなわち、反射型液晶表示素子では、上述したように透明電極として、一般にITOが用いられ、対向する画素電極には銅等がわずかに混合されたアルミニウム金属膜が用いられている。この場合、ITOとアルミニウムのそれぞれの電極自身が有する標準電極電位が異なっているために、これらの異種金属電極を用いた素子内に電池効果が発生する。アルミニウムの標準電極電位は、−1.66Vであり、このアルミニウム電極とITO電極とを組み合わせた場合には、それらの電極間でかなり大きな電池効果が発生する。なお、標準電極電位とは、単純電極系において、電極と溶液との界面に電流が流れず、電極反応が平衡状態にある場合に、溶液相に対して電極相がもつ内部電位をいう。
【0007】
このため、図12の太い実線で示したような、各極性で絶対値の同じ電圧を外部から印加したとしても、電池効果により起電力が発生し、液晶には非対称な電圧が加わる。その結果、印加電圧の極性によって素子の反射率が異なることになり、フリッカーが生じたり、素子内に内部電圧が蓄積されて焼き付き等の問題を起こす。ITO透明電極に代えてアルミニウム電極を用い、対向する電極を双方とも同じアルミニウム電極とすれば、電池効果は相殺され上記のような非対称性は起こらない。しかしながら、これでは素子内に光が透過しなくなるので、実用的ではない。また、当然のことながら、対向する電極がITO同士で構成される通常の透過型液晶デバイスでは、同種電極のためこのような非対称性の問題は起こらない。従って、この非対称性は反射型液晶素子が持つ本質的な問題である。
【0008】
この反射率の非対称性をなくすために、反射型液晶表示素子では、駆動電圧に直流的なオフセット電圧ΔVを掛け、図12に太い破線で示したように、各極性で絶対値の異なる駆動電圧を印加する必要がある。例えば、反射電極材料としてアルミニウム、対向する透明電極にITOを用いた場合、液晶にかかる各極性間での実効的な電圧差は1V以上になるが、この分をオフセット電圧ΔVとして印加する。しかしながら、オフセット電圧ΔVの数値があまり大きいと完全に非対称性を除去することができないばかりか、長期駆動中に、オフセット電圧ΔVが初期の設定値から徐々に変化してしまい、結果的に素子内に内部電圧が蓄積され、焼き付きが起こる。このため、長期駆動時の信頼性が低下する。また、オフセット電圧ΔVを印加するためには、それ用の回路を設ける必要があり、電気回路が複雑化する。従って、反射型液晶表示素子においては、本来、電池効果があることは好ましくない。
【0009】
一方、例えば特開平9−244068号公報および特開平10−54995号公報では、反射電極材料として、アルミニウムより標準電極電位が十分に低い金属、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)を用いることによって、上述の電圧差の問題を緩和し、電池効果を回避してオフセット電圧を低減できることが示されている。
【0010】
しかしながら、反射電極材料としてタングステン、チタンまたは窒化チタンを用いた場合、一般的に用いられているアルミニウムと比較すると十分な反射率が得られないため、この点で、適切な電極材料とはいない。従って、反射電極としての光の反射機能を損なうことなく、かつ、オフセット電圧の低減を図ることができる技術の開発が望まれる。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、液晶応答の非対称性の要因となる電池効果を抑制し、駆動電圧に印加するオフセット電圧を低減することができ、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる反射型液晶表示素子および液晶表示装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による反射型液晶表示素子は、金属材料によって構成された反射型の画素電極、を有する画素電極基板と、画素電極に対向するよう設けられた透明電極、を有する対向基板と、画素電極基板と対向基板との間に注入された液晶とを備え、画素電極として、その標準電極電位が、透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料が用いられているものである。
【0013】
本発明による液晶表示装置は、上記した本発明による反射型液晶表示素子によって変調された光を用いて映像表示を行うようにしたものである。
【0014】
本発明による反射型液晶表示素子および液晶表示装置では、画素電極として、その標準電極電位が、透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料を用いていることにより、対向する電極間での電池効果が抑制される。これにより、液晶応答の非対称性が抑制され、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧の低減が図られる。
【0015】
本発明による反射型液晶表示素子および液晶表示装置において、特に、透明電極としてITOを用いた場合、画素電極としては、その標準電極電位が、+0.75〜+1.25Vの範囲にある材料を用いることが望ましい。この条件を満たす材料としては、例えば、銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金などがある。これらの材料を画素電極に用いることにより、画素電極の反射機能を損なうことなく、液晶応答の非対称性が抑制される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[反射型液晶表示素子の説明]
図1に示したように、本実施の形態に係る反射型液晶表示素子21は、互いに対向配置された対向基板30および画素電極基板40と、これらの基板間に液晶材料を注入することによって形成された液晶層35とを備えている。
【0018】
液晶層35を形成する液晶材料は、例えば、一般に垂直配向液晶と呼ばれる、垂直配列タイプのネマチック液晶である。なお、垂直配列とは、液晶の初期の分子配向が各基板面に対して垂直に配列されている状態のことをいう。一般に垂直配向液晶と呼ばれる。
【0019】
対向基板30は、ガラス基板31を備え、このガラス基板31の液晶層35側の面上に、少なくとも、透明電極層32と配向膜33とが積層されて構成されている。配向膜33としては、例えばポリイミド系の有機化合物をラビング(配向)処理した膜や、二酸化ケイ素(SiO2)等の無機材料の斜め蒸着膜が使われる。配向膜33の液晶層35側の表面は、液晶分子を所定の配列状態にするために、ラビング処理が施されている。透明電極層32は、光の透過作用のある透明電極が全面に設けられて構成されている。透明電極の材料としては、一般に、酸化すず(SnO2)と酸化インジウム(In2O3)との固溶体物質であるITOが用いられる。透明電極には、全画素領域で共通の電位(例えば接地電位)が印加されるようになっている。
【0020】
画素電極基板40は、例えばシリコン材料からなる基板41を備え、この基板41の液晶層35側の面上に、少なくとも、反射電極層42と配向膜44とが積層されて構成されている。基板41上には、反射電極層42の各画素電極42Aに選択的に電圧を印加するためのスイッチング素子(図示せず)が設けられている。
【0021】
配向膜44は、対向基板30の配向膜33と同様に、例えばポリイミド系の有機化合物の膜や、二酸化ケイ素等の無機材料の斜め蒸着膜が使われており、その表面にはラビング処理が施されている。
【0022】
反射電極層42は、金属材料からなる反射型の画素電極42Aが、マトリクス状に複数配置されて構成されている。反射電極層42の厚さは、例えば50nm〜500nmである。この画素電極42Aには、基板41上に設けられた図示しないスイッチング素子によって、駆動電圧が印加されるようになっている。スイッチング素子は、各画素電極42Aに対応して設けられるものであり、例えばC−MOS型またはMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET(Field Effect Transistor))によって構成されている。
【0023】
画素電極42Aの金属材料としては、可視域で高い反射率を有するものが好ましく、従来では、一般にアルミニウム、より詳しくは、LSIプロセスで配線に用いられている、銅やシリコンを数wt%以下添加したアルミニウム金属膜が使用されている。
【0024】
本実施の形態では、この画素電極42Aの金属材料として、その標準電極電位が、透明電極層32における透明電極の標準電極電位に対して、±25%以内の範囲にある材料が用いられている。透明電極としてITOを用いた場合、画素電極42Aとしては、その標準電極電位が、+0.75〜+1.25Vの範囲にある材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)もしくは白金(Pt)、またはそれらの金属材料の合金を用いることが可能である。画素電極42Aとしては、これらの金属材料を単体で用いても良いし、これらの金属材料を主成分として用いて、それらに別の元素を添加、混合したものを用いてもよい。このように画素電極42Aとして、その標準電極電位が、従来と比べて透明電極に近い材料を用いているところが、本反射型液晶表示素子21における最大の特徴部分である。
【0025】
次に、以上のように構成された反射型液晶表示素子21の作用、動作を説明する。
【0026】
この反射型液晶表示素子21では、対向基板30側から入射し、液晶層35を通過した入射光L1を、反射電極層42に設けられた画素電極42Aの反射機能により反射させる。反射電極層42において反射された光L1は、入射時とは逆方向に、液晶層35および対向基板30を通過して出射される。このとき、液晶層35は、対向する電極間の電位差に応じて、その光学的な特性が変化し、通過する光L1を変調させる。この光変調により階調表現が可能となり、その変調された光L2が映像表示に利用される。
【0027】
ところで、反射電極層42の画素電極42Aには、例えば所定期間ごとにその極性が±反転する駆動電圧が印加される。このとき、従来の反射型液晶表示素子では、対向する電極同士でその標準電極電位が大きく異なる電極材料を用いていることにより、その極性に応じて、電極間でいわゆる電池効果を要因とした内部電圧が発生し、液晶の応答に非対称性を生じる。このため、これを補正するための直流電圧を、別途オフセット電圧として印加して駆動させることになる。このオフセット電圧の大きさが大きくなると、完全な補正が難しくなるばかりか、長期の駆動においては値がばらついたり変化したりするため、これを起因として焼き付きなどの問題が生じる。
【0028】
一方、本反射型液晶表示素子21では、画素電極42Aを構成する金属材料として、その標準電極電位が透明電極に近い材料を用いていることにより、対向する電極間に発生する電池効果が抑制される。具体的には、透明電極をITOとした場合、画素電極42Aとして、その標準電極電位が+0.75〜+1.25Vの範囲にある、銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金を用いることにより、その反射機能を維持しつつ、対向する電極間で発生する電池効果が大幅に抑制される。これにより、本反射型液晶表示素子21では、液晶応答の非対称性が抑制され、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧が低減、もしくは不要とされ、ひいては長期駆動時に高い信頼性が得られる。
【0029】
ここで、画素電極42Aに上記した材料を用いることによって電池効果が抑制される理由を以下に述べる。図3に示したように、アルミニウムの標準電極電位は−1.66Vであり、符号がマイナスで非常に値が大きい。これに対して、銀、パラジウムおよび白金などの標準電極電位は、いずれも、アルミニウムとは反対符号のプラスで、1V前後の値を示すものである。また、これらの合金膜も同様にプラスで1V前後の値を示す。実際に、画素電極42Aの材料を種々変えて作製した反射型液晶表示素子の起電力の測定を行ったところ、ITO透明電極とアルミニウム電極との組み合わせではかなり大きい起電力が検出されたのに対して、ITO透明電極と銀、パラジウムもしくは白金などとの組み合わせでは、ほとんど起電力が観測されなかった。これは、ITO透明電極とパラジウムもしくは白金などとの組み合わせでは、ほとんど電池効果が発生しないことを示す。本来、電池効果は、対向する電極間で電位差があるときに現れるものであることを考えると、これらの測定結果は、パラジウムおよび白金などでは、ITO透明電極との電位差がほとんどないことを示し、従ってITO透明電極の標準電極電位が+1V前後であることを示唆している。
【0030】
すなわち、本実施の形態において提案する画素電極42Aの材料は、それが本来持つ標準電極電位が+1V前後で、ITO透明電極の持つ標準電極電位と近いかほぼ同じであるため、これを理由として、両電極間での電位差が無くなって電池効果がなくなると考えられる。この効果が認められた金属材料は、例えば銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金膜であった。
【0031】
なお、画素電極42Aを銀材料単体で構成した場合、電池効果の問題を完全に解消し、さらに他の金属材料に比べ可視域で高い反射率を有することが確認された。しかしながら、銀は、液晶プロセスに欠かせない紫外線オゾンによる表面処理で黒化したり、プロジェクションセットで高輝度の光を照射することよって表面が変質する現象が起こり、プロジェクション用途としては必ずしも適さない。しかしながら、銀材料にパラジウムあるいは白金を混合させた、パラジウム・銀合金膜あるいは白金・銀合金膜では、銀材料本来が持つ化学的な不安定性が解消され、電池効果がなく、かつ高い反射率を示す電極材料を提供することが分かった。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る反射型液晶表示素子21によれば、画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いるようにしたので、対向する電極同士でその標準電極電位が大きく異なる電極材料(例えばITOとアルミニウム)を用いていた従来の素子に比べて、対向する電極間での電池効果を抑制することができる。これにより、液晶応答の非対称性を抑制することができるので、駆動電圧に印加するオフセット電圧の低減を図ることができる。従って、オフセット電圧の印加が不要となり、もしくは長期駆動を行った場合にもオフセット電圧の変化を少なくすることができ、結果的に、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる。また、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされる。
【0033】
[液晶表示装置の説明]
次に、反射型液晶表示素子21を使用した液晶表示装置の例について説明する。ここでは、図2に示したように、反射型液晶表示素子21をライトバルブとして使用した反射型液晶プロジェクタの例について説明する。
【0034】
図2に示した反射型液晶プロジェクタは、赤、青および緑の各色用の液晶ライトバルブ21R,21G,21Bを3枚用いてカラー画像表示を行う、いわゆる3板方式のものである。この反射型液晶プロジェクタは、光軸10に沿って、光源11と、ダイクロイックミラー12,13と、全反射ミラー14とを備えている。この反射型液晶プロジェクタは、また、偏光ビームスプリッタ15,16,17と、合成プリズム18と、投射レンズ19と、スクリーン20とを備えている。
【0035】
光源11は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光(R)、青色光(G)および緑色光(B)を含んだ白色光を発するものであり、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプなどにより構成されている。
【0036】
ダイクロイックミラー12は、光源11からの光を、青色光とその他の色光とに分離する機能を有している。ダイクロイックミラー13は、ダイクロイックミラー12を通過した光を、赤色光と緑色光とに分離する機能を有している。全反射ミラー14は、ダイクロイックミラー12によって分離された青色光を、偏光ビームスプリッタ17に向けて反射するようになっている。
【0037】
偏光ビームスプリッタ15,16,17は、それぞれ、赤色光、緑色光および青色光の光路に沿って設けられている。これらの偏光ビームスプリッタ15,16,17は、それぞれ、偏光分離面15A,16A,17Aを有し、この偏光分離面15A,16A,17Aにおいて、入射した各色光を互いに直交する2つの偏光成分に分離する機能を有している。偏光分離面15A,16A,17Aは、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を反射し、他方の偏光成分(例えばP偏光成分)は透過するようになっている。
【0038】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、反射型液晶表示素子21によって構成されている。これらの液晶ライトバルブ21R,21G,21Bには、偏光ビームスプリッタ15,16,17の偏光分離面15A,16A,17Aによって分離された所定の偏光成分(例えばS偏光成分)の色光が入射されるようになっている。液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射光を変調させると共に、その変調された光を偏光ビームスプリッタ15,16,17に向けて反射する機能を有している。
【0039】
合成プリズム18は、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bから出射され、偏光ビームスプリッタ15,16,17を通過した所定の偏光成分(例えばP偏光成分)の色光を、合成する機能を有している。投射レンズ19は、合成プリズム18から出射された合成光を、スクリーン20に向けて投射する機能を有している。
【0040】
以上のように構成された反射型液晶プロジェクタにおいて、光源11から出射された白色光は、まず、ダイクロイックミラー12の機能によって青色光とその他の色光(赤色光および緑色光)とに分離される。このうち青色光は、全反射ミラー14の機能によって、偏光ビームスプリッタ17に向けて反射される。一方、赤色光および緑色光は、ダイクロイックミラー13の機能によって、さらに、赤色光と緑色光とに分離される。分離された赤色光および緑色光は、それぞれ、偏光ビームスプリッタ15,16に入射される。
【0041】
偏光ビームスプリッタ15,16,17は、入射した各色光を、偏光分離面15A,16A,17Aおいて、互いに直交する2つの偏光成分に分離する。このとき、偏光分離面15A,16A,17A、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を液晶ライトバルブ21R,21G,21Bに向けて反射する。
【0042】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射した所定の偏光成分の色光を画素単位で変調させる。このとき、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、上述の反射型液晶表示素子21によって構成されているので、オフセット電圧が低減され、従来よりも対称性の良い駆動電圧によって良好に駆動される。
【0043】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、変調した各色光を偏光ビームスプリッタ15,16,17に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ15,16,17は、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bからの反射光(変調光)のうち、所定の偏光成分(例えばP偏光成分)のみを通過させ、合成プリズム18に向けて出射する。合成プリズム18は、偏光ビームスプリッタ15,16,17を通過した所定の偏光成分の色光を合成し、投射レンズ19に向けて出射する。投射レンズ19は、合成プリズム18から出射された合成光を、スクリーン20に向けて投射する。これにより、スクリーン20に、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bによって変調された光に応じた映像が投影され、所望の映像表示がなされる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る反射型液晶プロジェクタによれば、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いるようにしたので、従来、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの駆動電圧に必要とされていたオフセット電圧が低減または不要とされる。これにより、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされ、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの駆動回路を簡素化することができる。
【0045】
【実施例】
次に、反射型液晶表示素子21の具体的な特性を実施例として示す。以下、実施例を説明する前に、まず、従来の反射型液晶表示素子の特性を比較例として示す。
【0046】
[比較例]
比較例となる評価用の反射型液晶表示素子(液晶セル)として、対向基板における透明電極材料にITO、画素電極基板における画素電極にアルミニウムを用いたものを用意した。この評価用の素子は、次のようにした作製した。まず、対向基板となる、ITO透明電極が成膜されたガラス基板と、画素電極基板となる、アルミニウム電極(アルミニウム膜の厚さ150nm)が形成されたシリコン基板とを洗浄後、それぞれ蒸着装置に導入し、それぞれに配向膜としてSiO2膜を、蒸着角度45°〜55°の範囲で斜め蒸着して形成した。配向膜の膜厚は50nmとした。液晶のプレティルト角は約3°になるように制御した。その後、配向膜が形成された各基板の間に2μm径のガラスビーズを適当な数だけ散布して、両者を張り合わせ、誘電異方性Δεが負の垂直液晶材料を注入して、反射型液晶セルを作製した。
【0047】
このようにして作製した素子において、ITO透明電極と画素電極との間に、駆動電圧として、図12に示したような、60Hzの矩形波電圧(±V1)を印加したときの液晶の透過率の変化(反射型なので実際にはデバイスの反射率を測定している。これは液晶の透過率を測定していることと等価である。)を、駆動特性として測定した。測定は、波長520nmで、室温で行った。
【0048】
図4に、この測定結果を横軸を印加電圧(V)、縦軸を透過率として示す(以下、この画素電極への印加電圧Vに対する反射率Rの変化を、V−T特性という)。図4において、黒塗りの○印のプロットは画素電極側にプラスの電圧を印加した場合の反射率R(+)の変化を、白抜きの〇印のプロットはマイナスの電圧を印加した場合の反射率R(−)の変化を示している。なお、図4では、横軸の印加電圧を絶対値として、図を簡略化している。
【0049】
このV−T特性を示す曲線(V−T曲線)から分かるように、印加電圧の極性に対してV−T曲線は非対称(R(+),R(−)の曲線が重なっていないことは対称でないことを示す)となり、印加電圧がプラスの場合の反射率R(+)のV−T曲線が、マイナスの場合の反射率R(−)のV−T曲線よりも、低電圧側にシフトしている。すなわち、同じ印加電圧(絶対値)で比較すると、常にR(+)>R(−)となる特性が得られた。
【0050】
プラス・マイナスで同じ外部電圧を液晶セルに印加しているにも関わらず、このように液晶が非対称な駆動をしていることは、液晶に対して対称の電圧が印加されていないことを示しているが、これはITO透明電極とアルミニウム電極との異種電極間で発生する直流的な電池効果による。この状態で駆動を続けると液晶セル内に内部電圧が蓄積され、それにより焼き付きを起こす。従って、実用のためにはR(+)=R(−)となるように、そのシフト分の電圧だけ(電池効果の分だけ)オフセット電圧ΔVを印加する必要がある。この比較例の場合は、ΔV=0.6Vであり、図12に示したように、ΔVだけ信号電圧に直流的なオフセット電圧を印加して駆動することになる。しかしながら、ΔVの数値を正確に設定し印加し続けないと上述の焼き付き現象が長期駆動では懸念される上に、長い駆動や環境温度の変化等によって、ΔVの値そのものが変化する可能性があるため、本質的にはΔVを低減する、あるいはなくすことが実用上必須である。
【0051】
なお、上記の現象は、配向膜にポリイミド膜を用いた場合にも、また垂直配向液晶以外のネマチック液晶材料を用いた場合にも、同じように起こった。
【0052】
ところで、以上の反射率R(+),R(−)の非対称性は、画素電極として用いたアルミニウムの標準電極電位(図3参照)が、ITO透明電極と大きく異なっていることに起因すると考えられる。従って、画素電極として、その標準電極電位がITO透明電極に比較的近い金属を用いることにより、以下に示す実施例のように、非対称性の改善を行うことができる。
【0053】
[実施例1]
本実施例では、上述の比較例におけるアルミニウムに代えて、画素電極42Aの金属材料として、その標準電極電位がITO透明電極に比較的近いと思われるものを使用した場合のV−T特性を調べた。対向基板30における透明電極材料には、上述の比較例と同様にITOを用いた。評価用の素子の作製は、画素電極42Aの材料が異なる以外は、上述の比較例と同様である。また、測定条件も比較例と同様であり、60Hzの矩形波電圧を印加したときの液晶の反射率Rの変化を測定した。V−T曲線は、比較例と同様、横軸を印加電圧の絶対値として簡略化して示す。
【0054】
画素電極42Aとして用いた金属は、銀、パラジウム、イリジウム、および白金である。これらの金属は、図3に示したように、標準電極電位が負のアルミニウムとは反対の正の値を持ち、その値は銀が+0.78V、白金が+1.2V、他の2つの金属はいずれも、この間に存在する材料である。画素電極42Aの厚さは150nmとした。
【0055】
図5、図6、図7および図8にそれぞれ、銀、パラジウム、イリジウム、および白金を用いた場合のV−T特性を示す。透過率の値は、アルミニウムの値に対する相対的な値を示している。また、図11に、それらの測定結果を、R(+),R(−)の関係(非対称性の状況)およびオフセット電圧の値と共にまとめて示す。
【0056】
これらの結果から分かるように、画素電極42Aの材料として銀およびパラジウムを用いた場合には、ほぼR(+)=R(−)であり、各極性間での反射率R(+),R(−)の非対称性は全く観察されず、オフセット電圧も全く観測されなかった。すなわち、対称駆動となった。白金およびイリジウムの場合は、0.1V以下のわずかなオフセット電圧が観測されたが、アルミニウムの場合に比べると、その値は激減した。また、これらの実施例の素子では、長期駆動を行っても、焼き付き等の問題は全く観察されなかった。
【0057】
本実施例の結果から、画素電極42Aの材料として、銀、パラジウム、イリジウム、および白金を用いた場合には、電池効果が全く観測されなくなるか、あるいはその値が低減し、V−T曲線の非対称性、すなわち液晶応答の非対称性が著しく抑制され、その結果オフセット電圧がゼロまたは非常に小さくなることが分かった。既に述べたように、本来、電池効果は、対向する電極間で電位差があるときに現れるものであることを考えると、これらの測定結果は、パラジウムおよび白金などでは、ITO透明電極との電位差がほとんどないことを示し、従ってITO透明電極の標準電極電位が+1V前後であることを示唆している。ITO透明電極の標準電極電位が+1Vであるものとすると、銀、パラジウム、イリジウム、および白金の標準電極電位は、いずれもITO透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある。
【0058】
なお、本実施例の効果は、配向膜にポリイミド膜を用いた場合にも、また垂直配向液晶以外のネマチック液晶材料を用いた場合にも、同様に認められた。
【0059】
[実施例2]
次に、画素電極42Aの材料としてパラジウムを用い、その膜厚を20nm,50nmおよび300nmと変えて、評価を行った。評価用の素子の作製および測定条件は、実施例1と同様である。その結果を図11に示す。この場合、オフセット電圧は、図11に示すように、実施例1の膜厚150nmのパラジウム電極の液晶セルと同様、すべての膜厚での試料で、非対称性は認められなかった。本実施例から、画素電極42Aの材料としてパラジウムを用いた場合には、その膜厚が、20nm以上であれば十分な効果があることが確認された。
【0060】
[実施例3]
次に、実施例1と同様にしてシリコン基板上に、画素電極42Aとして、パラジウム、銀および白金の薄膜を、その膜厚を20nm〜2000nmの間で種々変えて成膜し、その絶対反射率を測定した。比較のために、画素電極42Aとしてアルミニウムを成膜した場合の絶対反射率も測定した。
【0061】
図9に、横軸を膜厚(nm)、縦軸を絶対反射率(%)として、その測定結果を示す。画素電極42Aの膜厚が約60nm以下になると、いずれの金属材料においても本来の反射率から低下することが観測されたが、これは、膜がより薄くなることにより、光が透過し始めるために起こる。一方、膜厚が約60nmを超えると、いずれの金属材料においても、その反射率が飽和し、反射機能の観点からは十分となる。製造マージンを見越せば、その膜厚は100nm〜200nmが好ましいといえるが、それ以上厚くても良い。ただし、500nmの厚さを超えると、金属膜の結晶粒が急に成長して表面形状が荒くなり光の散乱が増す。このため、例えば液晶プロジェクタに応用した場合には、そのプロジェクション光学系で集光できなくなり、結果的にトータルの光量が低下することが明らかになった。従って、画素電極42Aの膜厚としては、50nm以上500nm未満が妥当であるという結論に達した。
【0062】
また本実施例により、画素電極42Aとして銀の薄膜を用いた場合、アルミニウム電極と比べ、その反射率が10%近く向上することが分かった。一方、パラジウムおよび白金を用いた場合には、絶対反射率がそれぞれ69%,63%と低い値を示すことが分かった。
【0063】
[実施例4]
次に、画素電極42Aの金属材料として、合金を用いた場合のV−T特性を調べた。評価用の素子の作製および測定条件は、上述の実施例1と同様である。具体的には、画素電極42Aとして、銀とパラジウムの原子比が50:50のパラジウム・銀合金膜と、白金と銀の原子比が50:50の白金・銀合金膜とを作製して測定した。膜厚は150nmとした。図11に、それらの測定結果をまとめて示す。いずれの合金膜を用いた場合においても、R(+)=R(−)であり、電池効果は全く観測されず、各極性間での反射率R(+),R(−)の非対称性は全く観察されなかった。オフセット電圧もほとんどゼロであった。
【0064】
[実施例5]
次に、実施例4と同様のパラジウム・銀合金膜および白金・銀合金膜の各合金膜について、銀の混合濃度(原子比)を種々変えて画素電極42Aを形成し、その絶対反射率を測定した。評価用の素子の作成方法、測定方法は実施例3と同様である。膜厚は150nm、測定波長は520nmとした。図10に、その測定結果を、絶対反射率(%)を縦軸、各合金中の銀の混合濃度を横軸にして示す。
【0065】
銀材料のみを画素電極42Aとして用いた場合(図中、銀の混合濃度100%の試料)には、画素電極42Aをアルミニウムにした場合よりも約10%反射率が向上する。しかしながら、一般に銀の単体膜は、液晶プロセスでは必須となっている紫外線オゾン洗浄処理によってその表面が黒化したり、また強い光の照射によって変色したりすることから実用上注意が必要である。一方、画素電極42Aとして、パラジウムまたは白金を単体で用いた場合(図中、銀の混合濃度0%の試料)には、アルミニウムに比べ反射率が低下する。しかしながら、銀材料を固容させてパラジウムまたは白金との合金膜にすることで、反射率が向上し、アルミニウムに対して遜色ないものとなることが分かった。
【0066】
本実施例から、上述の銀の化学的不安定性とパラジウムおよび白金の低反射率の双方の問題を解消する方法として、パラジウムと銀の合金膜、または白金と銀の合金膜が効果的なことが見いだされた。すなわち、銀の化学的不安定性は、化学的に極めて安定なパラジウムもしくは白金を混合させることにより解消される。また、パラジウムまたは白金による反射率の低下は、これらに銀を混合することで、アルミニウム画素電極と同等な値にまで向上する。化学的安定性と反射率との両者の性能を満たす混合比率(銀の混合濃度)は、原子比で、20%〜80%、好ましくは40%〜60%であった。
【0067】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、本発明の反射型液晶表示素子は、液晶プロジェクタに限らず、その他の表示装置、ならびに各種携帯型電子機器および各種情報処理端末などにおける映像表示部に広く適用することが可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の反射型液晶表示素子、または請求項10もしくは11記載の液晶表示装置によれば、画素電極として、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料を用いるようにしたので、対向する電極間での電池効果を抑制することができる。これにより、液晶応答の非対称性を抑制することができるので、駆動電圧に印加するオフセット電圧の低減を図ることができる。従って、オフセット電圧の印加が不要となり、もしくは長期駆動を行った場合にもオフセット電圧の変化を少なくすることができ、結果的に、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射型液晶表示素子の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した反射型液晶表示素子を使用して構成された液晶表示装置の一例を示す構成図である。
【図3】各種金属の標準電極電位についての説明図である。
【図4】画素電極の金属材料としてアルミニウムを用いた場合(比較例)における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図5】銀を画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図6】パラジウムを画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図7】イリジウムを画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図8】白金を画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図9】各種金属材料についての膜厚と反射率との関係を示す特性図である。
【図10】パラジウム・銀合金膜および白金・銀合金膜の各合金膜を、銀の混合濃度を種々変化させた場合における、反射率の変化を示す特性図である。
【図11】各材料、各膜厚についての、非対称性の状況とオフセット電圧との測定結果をまとめて示す説明図である。
【図12】液晶表示素子における駆動方式の一例を説明するための波形図である。
【符号の説明】
11…光源、12,13…ダイクロイックミラー、14…全反射ミラー、15,16,17…偏光ビームスプリッタ、18…合成プリズム、19…投射レンズ、20…スクリーン、21…反射型液晶表示素子、21R,21G,21B…液晶ライトバルブ、31…ガラス基板、32…透明電極層、33,44…配向膜、35…液晶層、40…画素電極基板、41…基板、42…反射電極層、42A…画素電極。
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射型の画素電極を有する反射型液晶表示素子およびそれを利用した反射型液晶プロジェクタ等の液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、プロジェクションディスプレイ(プロジェクタ)などの各種表示装置には、液晶表示素子が利用されている。液晶表示素子は、液晶パネルまたは液晶セルなどとも呼ばれている。液晶表示素子の種類には、大別して透過型と反射型とがあり、いずれも、画素電極基板とこれに対向する対向基板との間に液晶を封入した構成となっている。透過型液晶表示素子では、画素電極基板と対向基板との双方に、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる透明電極が設けられている。
【0003】
一方、反射型液晶表示素子は、近年、液晶プロジェクタの高精細化、小型化および高輝度化が進むにつれて、その表示デバイスとして、小型化および高精細化が可能で高い光利用効率が期待できるものとして注目され、実際に実用化されている。この反射型液晶表示素子は、対向基板側に例えばITOからなる透明電極が設けられ、画素電極基板側に反射型の画素電極(以下、単に「反射電極」ともいう。)が設けられている。液晶プロジェクタに使用される反射型液晶表示素子は、一般にアクティブ型であり、画素電極基板として、例えば、C−MOS(Complementary−Metal Oxide Semiconductor)型の半導体スイッチング回路をシリコン基板上に形成したものを用いている。反射電極は、このシリコン駆動素子基板の上に配置される。反射電極は、対向基板側から入射した光を反射する機能と、液晶に対して電圧を印加する機能とを有している。反射電極の材料としては、一般にLSI(Large Scale Integrated)プロセスで用いられている、アルミニウム(Al)を主成分とした金属材料が利用されている。
【0004】
この反射型液晶表示素子では、各基板に設けられた透明電極と画素電極とにより、液晶に対して電圧が印加される。このとき、液晶は、対向する電極間の電位差に応じて光学的な特性が変化し、入射した光を変調させる。この光変調により階調表現が可能となり、その変調された光が映像表示に利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、液晶表示素子では、液晶内に存在するイオンが、駆動中に片方の基板に焼き付くことを防ぐために、所定期間ごとに駆動電圧の極性を±反転させて、電極間に電圧を印加するような駆動方式が一般的である。図12に、この駆動方式による駆動電圧の概念図を示す。図中、太い実線で示したように、対向電極間に印加される各極性の電圧の絶対値がV1で同じならば、本来、液晶にかかる実効的な電圧に差は生じず、上記したような焼き付き等の現象が起こらない。しかしながら、実際には、特に反射型液晶表示素子の場合、印加電圧がプラスとマイナスの場合とで液晶にかかる実効的な電圧に差が生じる。これは、反射型液晶表示素子では、各基板に用いられている電極材料が異なっていることに起因している。
【0006】
すなわち、反射型液晶表示素子では、上述したように透明電極として、一般にITOが用いられ、対向する画素電極には銅等がわずかに混合されたアルミニウム金属膜が用いられている。この場合、ITOとアルミニウムのそれぞれの電極自身が有する標準電極電位が異なっているために、これらの異種金属電極を用いた素子内に電池効果が発生する。アルミニウムの標準電極電位は、−1.66Vであり、このアルミニウム電極とITO電極とを組み合わせた場合には、それらの電極間でかなり大きな電池効果が発生する。なお、標準電極電位とは、単純電極系において、電極と溶液との界面に電流が流れず、電極反応が平衡状態にある場合に、溶液相に対して電極相がもつ内部電位をいう。
【0007】
このため、図12の太い実線で示したような、各極性で絶対値の同じ電圧を外部から印加したとしても、電池効果により起電力が発生し、液晶には非対称な電圧が加わる。その結果、印加電圧の極性によって素子の反射率が異なることになり、フリッカーが生じたり、素子内に内部電圧が蓄積されて焼き付き等の問題を起こす。ITO透明電極に代えてアルミニウム電極を用い、対向する電極を双方とも同じアルミニウム電極とすれば、電池効果は相殺され上記のような非対称性は起こらない。しかしながら、これでは素子内に光が透過しなくなるので、実用的ではない。また、当然のことながら、対向する電極がITO同士で構成される通常の透過型液晶デバイスでは、同種電極のためこのような非対称性の問題は起こらない。従って、この非対称性は反射型液晶素子が持つ本質的な問題である。
【0008】
この反射率の非対称性をなくすために、反射型液晶表示素子では、駆動電圧に直流的なオフセット電圧ΔVを掛け、図12に太い破線で示したように、各極性で絶対値の異なる駆動電圧を印加する必要がある。例えば、反射電極材料としてアルミニウム、対向する透明電極にITOを用いた場合、液晶にかかる各極性間での実効的な電圧差は1V以上になるが、この分をオフセット電圧ΔVとして印加する。しかしながら、オフセット電圧ΔVの数値があまり大きいと完全に非対称性を除去することができないばかりか、長期駆動中に、オフセット電圧ΔVが初期の設定値から徐々に変化してしまい、結果的に素子内に内部電圧が蓄積され、焼き付きが起こる。このため、長期駆動時の信頼性が低下する。また、オフセット電圧ΔVを印加するためには、それ用の回路を設ける必要があり、電気回路が複雑化する。従って、反射型液晶表示素子においては、本来、電池効果があることは好ましくない。
【0009】
一方、例えば特開平9−244068号公報および特開平10−54995号公報では、反射電極材料として、アルミニウムより標準電極電位が十分に低い金属、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)を用いることによって、上述の電圧差の問題を緩和し、電池効果を回避してオフセット電圧を低減できることが示されている。
【0010】
しかしながら、反射電極材料としてタングステン、チタンまたは窒化チタンを用いた場合、一般的に用いられているアルミニウムと比較すると十分な反射率が得られないため、この点で、適切な電極材料とはいない。従って、反射電極としての光の反射機能を損なうことなく、かつ、オフセット電圧の低減を図ることができる技術の開発が望まれる。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、液晶応答の非対称性の要因となる電池効果を抑制し、駆動電圧に印加するオフセット電圧を低減することができ、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる反射型液晶表示素子および液晶表示装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による反射型液晶表示素子は、金属材料によって構成された反射型の画素電極、を有する画素電極基板と、画素電極に対向するよう設けられた透明電極、を有する対向基板と、画素電極基板と対向基板との間に注入された液晶とを備え、画素電極として、その標準電極電位が、透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料が用いられているものである。
【0013】
本発明による液晶表示装置は、上記した本発明による反射型液晶表示素子によって変調された光を用いて映像表示を行うようにしたものである。
【0014】
本発明による反射型液晶表示素子および液晶表示装置では、画素電極として、その標準電極電位が、透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料を用いていることにより、対向する電極間での電池効果が抑制される。これにより、液晶応答の非対称性が抑制され、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧の低減が図られる。
【0015】
本発明による反射型液晶表示素子および液晶表示装置において、特に、透明電極としてITOを用いた場合、画素電極としては、その標準電極電位が、+0.75〜+1.25Vの範囲にある材料を用いることが望ましい。この条件を満たす材料としては、例えば、銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金などがある。これらの材料を画素電極に用いることにより、画素電極の反射機能を損なうことなく、液晶応答の非対称性が抑制される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
[反射型液晶表示素子の説明]
図1に示したように、本実施の形態に係る反射型液晶表示素子21は、互いに対向配置された対向基板30および画素電極基板40と、これらの基板間に液晶材料を注入することによって形成された液晶層35とを備えている。
【0018】
液晶層35を形成する液晶材料は、例えば、一般に垂直配向液晶と呼ばれる、垂直配列タイプのネマチック液晶である。なお、垂直配列とは、液晶の初期の分子配向が各基板面に対して垂直に配列されている状態のことをいう。一般に垂直配向液晶と呼ばれる。
【0019】
対向基板30は、ガラス基板31を備え、このガラス基板31の液晶層35側の面上に、少なくとも、透明電極層32と配向膜33とが積層されて構成されている。配向膜33としては、例えばポリイミド系の有機化合物をラビング(配向)処理した膜や、二酸化ケイ素(SiO2)等の無機材料の斜め蒸着膜が使われる。配向膜33の液晶層35側の表面は、液晶分子を所定の配列状態にするために、ラビング処理が施されている。透明電極層32は、光の透過作用のある透明電極が全面に設けられて構成されている。透明電極の材料としては、一般に、酸化すず(SnO2)と酸化インジウム(In2O3)との固溶体物質であるITOが用いられる。透明電極には、全画素領域で共通の電位(例えば接地電位)が印加されるようになっている。
【0020】
画素電極基板40は、例えばシリコン材料からなる基板41を備え、この基板41の液晶層35側の面上に、少なくとも、反射電極層42と配向膜44とが積層されて構成されている。基板41上には、反射電極層42の各画素電極42Aに選択的に電圧を印加するためのスイッチング素子(図示せず)が設けられている。
【0021】
配向膜44は、対向基板30の配向膜33と同様に、例えばポリイミド系の有機化合物の膜や、二酸化ケイ素等の無機材料の斜め蒸着膜が使われており、その表面にはラビング処理が施されている。
【0022】
反射電極層42は、金属材料からなる反射型の画素電極42Aが、マトリクス状に複数配置されて構成されている。反射電極層42の厚さは、例えば50nm〜500nmである。この画素電極42Aには、基板41上に設けられた図示しないスイッチング素子によって、駆動電圧が印加されるようになっている。スイッチング素子は、各画素電極42Aに対応して設けられるものであり、例えばC−MOS型またはMIS(Metal Insulator Semiconductor)型の電界効果トランジスタ(FET(Field Effect Transistor))によって構成されている。
【0023】
画素電極42Aの金属材料としては、可視域で高い反射率を有するものが好ましく、従来では、一般にアルミニウム、より詳しくは、LSIプロセスで配線に用いられている、銅やシリコンを数wt%以下添加したアルミニウム金属膜が使用されている。
【0024】
本実施の形態では、この画素電極42Aの金属材料として、その標準電極電位が、透明電極層32における透明電極の標準電極電位に対して、±25%以内の範囲にある材料が用いられている。透明電極としてITOを用いた場合、画素電極42Aとしては、その標準電極電位が、+0.75〜+1.25Vの範囲にある材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)もしくは白金(Pt)、またはそれらの金属材料の合金を用いることが可能である。画素電極42Aとしては、これらの金属材料を単体で用いても良いし、これらの金属材料を主成分として用いて、それらに別の元素を添加、混合したものを用いてもよい。このように画素電極42Aとして、その標準電極電位が、従来と比べて透明電極に近い材料を用いているところが、本反射型液晶表示素子21における最大の特徴部分である。
【0025】
次に、以上のように構成された反射型液晶表示素子21の作用、動作を説明する。
【0026】
この反射型液晶表示素子21では、対向基板30側から入射し、液晶層35を通過した入射光L1を、反射電極層42に設けられた画素電極42Aの反射機能により反射させる。反射電極層42において反射された光L1は、入射時とは逆方向に、液晶層35および対向基板30を通過して出射される。このとき、液晶層35は、対向する電極間の電位差に応じて、その光学的な特性が変化し、通過する光L1を変調させる。この光変調により階調表現が可能となり、その変調された光L2が映像表示に利用される。
【0027】
ところで、反射電極層42の画素電極42Aには、例えば所定期間ごとにその極性が±反転する駆動電圧が印加される。このとき、従来の反射型液晶表示素子では、対向する電極同士でその標準電極電位が大きく異なる電極材料を用いていることにより、その極性に応じて、電極間でいわゆる電池効果を要因とした内部電圧が発生し、液晶の応答に非対称性を生じる。このため、これを補正するための直流電圧を、別途オフセット電圧として印加して駆動させることになる。このオフセット電圧の大きさが大きくなると、完全な補正が難しくなるばかりか、長期の駆動においては値がばらついたり変化したりするため、これを起因として焼き付きなどの問題が生じる。
【0028】
一方、本反射型液晶表示素子21では、画素電極42Aを構成する金属材料として、その標準電極電位が透明電極に近い材料を用いていることにより、対向する電極間に発生する電池効果が抑制される。具体的には、透明電極をITOとした場合、画素電極42Aとして、その標準電極電位が+0.75〜+1.25Vの範囲にある、銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金を用いることにより、その反射機能を維持しつつ、対向する電極間で発生する電池効果が大幅に抑制される。これにより、本反射型液晶表示素子21では、液晶応答の非対称性が抑制され、駆動電圧に必要とされるオフセット電圧が低減、もしくは不要とされ、ひいては長期駆動時に高い信頼性が得られる。
【0029】
ここで、画素電極42Aに上記した材料を用いることによって電池効果が抑制される理由を以下に述べる。図3に示したように、アルミニウムの標準電極電位は−1.66Vであり、符号がマイナスで非常に値が大きい。これに対して、銀、パラジウムおよび白金などの標準電極電位は、いずれも、アルミニウムとは反対符号のプラスで、1V前後の値を示すものである。また、これらの合金膜も同様にプラスで1V前後の値を示す。実際に、画素電極42Aの材料を種々変えて作製した反射型液晶表示素子の起電力の測定を行ったところ、ITO透明電極とアルミニウム電極との組み合わせではかなり大きい起電力が検出されたのに対して、ITO透明電極と銀、パラジウムもしくは白金などとの組み合わせでは、ほとんど起電力が観測されなかった。これは、ITO透明電極とパラジウムもしくは白金などとの組み合わせでは、ほとんど電池効果が発生しないことを示す。本来、電池効果は、対向する電極間で電位差があるときに現れるものであることを考えると、これらの測定結果は、パラジウムおよび白金などでは、ITO透明電極との電位差がほとんどないことを示し、従ってITO透明電極の標準電極電位が+1V前後であることを示唆している。
【0030】
すなわち、本実施の形態において提案する画素電極42Aの材料は、それが本来持つ標準電極電位が+1V前後で、ITO透明電極の持つ標準電極電位と近いかほぼ同じであるため、これを理由として、両電極間での電位差が無くなって電池効果がなくなると考えられる。この効果が認められた金属材料は、例えば銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金膜であった。
【0031】
なお、画素電極42Aを銀材料単体で構成した場合、電池効果の問題を完全に解消し、さらに他の金属材料に比べ可視域で高い反射率を有することが確認された。しかしながら、銀は、液晶プロセスに欠かせない紫外線オゾンによる表面処理で黒化したり、プロジェクションセットで高輝度の光を照射することよって表面が変質する現象が起こり、プロジェクション用途としては必ずしも適さない。しかしながら、銀材料にパラジウムあるいは白金を混合させた、パラジウム・銀合金膜あるいは白金・銀合金膜では、銀材料本来が持つ化学的な不安定性が解消され、電池効果がなく、かつ高い反射率を示す電極材料を提供することが分かった。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る反射型液晶表示素子21によれば、画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いるようにしたので、対向する電極同士でその標準電極電位が大きく異なる電極材料(例えばITOとアルミニウム)を用いていた従来の素子に比べて、対向する電極間での電池効果を抑制することができる。これにより、液晶応答の非対称性を抑制することができるので、駆動電圧に印加するオフセット電圧の低減を図ることができる。従って、オフセット電圧の印加が不要となり、もしくは長期駆動を行った場合にもオフセット電圧の変化を少なくすることができ、結果的に、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる。また、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされる。
【0033】
[液晶表示装置の説明]
次に、反射型液晶表示素子21を使用した液晶表示装置の例について説明する。ここでは、図2に示したように、反射型液晶表示素子21をライトバルブとして使用した反射型液晶プロジェクタの例について説明する。
【0034】
図2に示した反射型液晶プロジェクタは、赤、青および緑の各色用の液晶ライトバルブ21R,21G,21Bを3枚用いてカラー画像表示を行う、いわゆる3板方式のものである。この反射型液晶プロジェクタは、光軸10に沿って、光源11と、ダイクロイックミラー12,13と、全反射ミラー14とを備えている。この反射型液晶プロジェクタは、また、偏光ビームスプリッタ15,16,17と、合成プリズム18と、投射レンズ19と、スクリーン20とを備えている。
【0035】
光源11は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光(R)、青色光(G)および緑色光(B)を含んだ白色光を発するものであり、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプなどにより構成されている。
【0036】
ダイクロイックミラー12は、光源11からの光を、青色光とその他の色光とに分離する機能を有している。ダイクロイックミラー13は、ダイクロイックミラー12を通過した光を、赤色光と緑色光とに分離する機能を有している。全反射ミラー14は、ダイクロイックミラー12によって分離された青色光を、偏光ビームスプリッタ17に向けて反射するようになっている。
【0037】
偏光ビームスプリッタ15,16,17は、それぞれ、赤色光、緑色光および青色光の光路に沿って設けられている。これらの偏光ビームスプリッタ15,16,17は、それぞれ、偏光分離面15A,16A,17Aを有し、この偏光分離面15A,16A,17Aにおいて、入射した各色光を互いに直交する2つの偏光成分に分離する機能を有している。偏光分離面15A,16A,17Aは、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を反射し、他方の偏光成分(例えばP偏光成分)は透過するようになっている。
【0038】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、反射型液晶表示素子21によって構成されている。これらの液晶ライトバルブ21R,21G,21Bには、偏光ビームスプリッタ15,16,17の偏光分離面15A,16A,17Aによって分離された所定の偏光成分(例えばS偏光成分)の色光が入射されるようになっている。液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射光を変調させると共に、その変調された光を偏光ビームスプリッタ15,16,17に向けて反射する機能を有している。
【0039】
合成プリズム18は、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bから出射され、偏光ビームスプリッタ15,16,17を通過した所定の偏光成分(例えばP偏光成分)の色光を、合成する機能を有している。投射レンズ19は、合成プリズム18から出射された合成光を、スクリーン20に向けて投射する機能を有している。
【0040】
以上のように構成された反射型液晶プロジェクタにおいて、光源11から出射された白色光は、まず、ダイクロイックミラー12の機能によって青色光とその他の色光(赤色光および緑色光)とに分離される。このうち青色光は、全反射ミラー14の機能によって、偏光ビームスプリッタ17に向けて反射される。一方、赤色光および緑色光は、ダイクロイックミラー13の機能によって、さらに、赤色光と緑色光とに分離される。分離された赤色光および緑色光は、それぞれ、偏光ビームスプリッタ15,16に入射される。
【0041】
偏光ビームスプリッタ15,16,17は、入射した各色光を、偏光分離面15A,16A,17Aおいて、互いに直交する2つの偏光成分に分離する。このとき、偏光分離面15A,16A,17A、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を液晶ライトバルブ21R,21G,21Bに向けて反射する。
【0042】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射した所定の偏光成分の色光を画素単位で変調させる。このとき、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、上述の反射型液晶表示素子21によって構成されているので、オフセット電圧が低減され、従来よりも対称性の良い駆動電圧によって良好に駆動される。
【0043】
液晶ライトバルブ21R,21G,21Bは、変調した各色光を偏光ビームスプリッタ15,16,17に向けて反射する。偏光ビームスプリッタ15,16,17は、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bからの反射光(変調光)のうち、所定の偏光成分(例えばP偏光成分)のみを通過させ、合成プリズム18に向けて出射する。合成プリズム18は、偏光ビームスプリッタ15,16,17を通過した所定の偏光成分の色光を合成し、投射レンズ19に向けて出射する。投射レンズ19は、合成プリズム18から出射された合成光を、スクリーン20に向けて投射する。これにより、スクリーン20に、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bによって変調された光に応じた映像が投影され、所望の映像表示がなされる。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る反射型液晶プロジェクタによれば、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの画素電極42Aとして、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に比較的近い値を持つ材料を用いるようにしたので、従来、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの駆動電圧に必要とされていたオフセット電圧が低減または不要とされる。これにより、オフセット電圧を印加するための回路が簡素化または不要とされ、液晶ライトバルブ21R,21G,21Bの駆動回路を簡素化することができる。
【0045】
【実施例】
次に、反射型液晶表示素子21の具体的な特性を実施例として示す。以下、実施例を説明する前に、まず、従来の反射型液晶表示素子の特性を比較例として示す。
【0046】
[比較例]
比較例となる評価用の反射型液晶表示素子(液晶セル)として、対向基板における透明電極材料にITO、画素電極基板における画素電極にアルミニウムを用いたものを用意した。この評価用の素子は、次のようにした作製した。まず、対向基板となる、ITO透明電極が成膜されたガラス基板と、画素電極基板となる、アルミニウム電極(アルミニウム膜の厚さ150nm)が形成されたシリコン基板とを洗浄後、それぞれ蒸着装置に導入し、それぞれに配向膜としてSiO2膜を、蒸着角度45°〜55°の範囲で斜め蒸着して形成した。配向膜の膜厚は50nmとした。液晶のプレティルト角は約3°になるように制御した。その後、配向膜が形成された各基板の間に2μm径のガラスビーズを適当な数だけ散布して、両者を張り合わせ、誘電異方性Δεが負の垂直液晶材料を注入して、反射型液晶セルを作製した。
【0047】
このようにして作製した素子において、ITO透明電極と画素電極との間に、駆動電圧として、図12に示したような、60Hzの矩形波電圧(±V1)を印加したときの液晶の透過率の変化(反射型なので実際にはデバイスの反射率を測定している。これは液晶の透過率を測定していることと等価である。)を、駆動特性として測定した。測定は、波長520nmで、室温で行った。
【0048】
図4に、この測定結果を横軸を印加電圧(V)、縦軸を透過率として示す(以下、この画素電極への印加電圧Vに対する反射率Rの変化を、V−T特性という)。図4において、黒塗りの○印のプロットは画素電極側にプラスの電圧を印加した場合の反射率R(+)の変化を、白抜きの〇印のプロットはマイナスの電圧を印加した場合の反射率R(−)の変化を示している。なお、図4では、横軸の印加電圧を絶対値として、図を簡略化している。
【0049】
このV−T特性を示す曲線(V−T曲線)から分かるように、印加電圧の極性に対してV−T曲線は非対称(R(+),R(−)の曲線が重なっていないことは対称でないことを示す)となり、印加電圧がプラスの場合の反射率R(+)のV−T曲線が、マイナスの場合の反射率R(−)のV−T曲線よりも、低電圧側にシフトしている。すなわち、同じ印加電圧(絶対値)で比較すると、常にR(+)>R(−)となる特性が得られた。
【0050】
プラス・マイナスで同じ外部電圧を液晶セルに印加しているにも関わらず、このように液晶が非対称な駆動をしていることは、液晶に対して対称の電圧が印加されていないことを示しているが、これはITO透明電極とアルミニウム電極との異種電極間で発生する直流的な電池効果による。この状態で駆動を続けると液晶セル内に内部電圧が蓄積され、それにより焼き付きを起こす。従って、実用のためにはR(+)=R(−)となるように、そのシフト分の電圧だけ(電池効果の分だけ)オフセット電圧ΔVを印加する必要がある。この比較例の場合は、ΔV=0.6Vであり、図12に示したように、ΔVだけ信号電圧に直流的なオフセット電圧を印加して駆動することになる。しかしながら、ΔVの数値を正確に設定し印加し続けないと上述の焼き付き現象が長期駆動では懸念される上に、長い駆動や環境温度の変化等によって、ΔVの値そのものが変化する可能性があるため、本質的にはΔVを低減する、あるいはなくすことが実用上必須である。
【0051】
なお、上記の現象は、配向膜にポリイミド膜を用いた場合にも、また垂直配向液晶以外のネマチック液晶材料を用いた場合にも、同じように起こった。
【0052】
ところで、以上の反射率R(+),R(−)の非対称性は、画素電極として用いたアルミニウムの標準電極電位(図3参照)が、ITO透明電極と大きく異なっていることに起因すると考えられる。従って、画素電極として、その標準電極電位がITO透明電極に比較的近い金属を用いることにより、以下に示す実施例のように、非対称性の改善を行うことができる。
【0053】
[実施例1]
本実施例では、上述の比較例におけるアルミニウムに代えて、画素電極42Aの金属材料として、その標準電極電位がITO透明電極に比較的近いと思われるものを使用した場合のV−T特性を調べた。対向基板30における透明電極材料には、上述の比較例と同様にITOを用いた。評価用の素子の作製は、画素電極42Aの材料が異なる以外は、上述の比較例と同様である。また、測定条件も比較例と同様であり、60Hzの矩形波電圧を印加したときの液晶の反射率Rの変化を測定した。V−T曲線は、比較例と同様、横軸を印加電圧の絶対値として簡略化して示す。
【0054】
画素電極42Aとして用いた金属は、銀、パラジウム、イリジウム、および白金である。これらの金属は、図3に示したように、標準電極電位が負のアルミニウムとは反対の正の値を持ち、その値は銀が+0.78V、白金が+1.2V、他の2つの金属はいずれも、この間に存在する材料である。画素電極42Aの厚さは150nmとした。
【0055】
図5、図6、図7および図8にそれぞれ、銀、パラジウム、イリジウム、および白金を用いた場合のV−T特性を示す。透過率の値は、アルミニウムの値に対する相対的な値を示している。また、図11に、それらの測定結果を、R(+),R(−)の関係(非対称性の状況)およびオフセット電圧の値と共にまとめて示す。
【0056】
これらの結果から分かるように、画素電極42Aの材料として銀およびパラジウムを用いた場合には、ほぼR(+)=R(−)であり、各極性間での反射率R(+),R(−)の非対称性は全く観察されず、オフセット電圧も全く観測されなかった。すなわち、対称駆動となった。白金およびイリジウムの場合は、0.1V以下のわずかなオフセット電圧が観測されたが、アルミニウムの場合に比べると、その値は激減した。また、これらの実施例の素子では、長期駆動を行っても、焼き付き等の問題は全く観察されなかった。
【0057】
本実施例の結果から、画素電極42Aの材料として、銀、パラジウム、イリジウム、および白金を用いた場合には、電池効果が全く観測されなくなるか、あるいはその値が低減し、V−T曲線の非対称性、すなわち液晶応答の非対称性が著しく抑制され、その結果オフセット電圧がゼロまたは非常に小さくなることが分かった。既に述べたように、本来、電池効果は、対向する電極間で電位差があるときに現れるものであることを考えると、これらの測定結果は、パラジウムおよび白金などでは、ITO透明電極との電位差がほとんどないことを示し、従ってITO透明電極の標準電極電位が+1V前後であることを示唆している。ITO透明電極の標準電極電位が+1Vであるものとすると、銀、パラジウム、イリジウム、および白金の標準電極電位は、いずれもITO透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある。
【0058】
なお、本実施例の効果は、配向膜にポリイミド膜を用いた場合にも、また垂直配向液晶以外のネマチック液晶材料を用いた場合にも、同様に認められた。
【0059】
[実施例2]
次に、画素電極42Aの材料としてパラジウムを用い、その膜厚を20nm,50nmおよび300nmと変えて、評価を行った。評価用の素子の作製および測定条件は、実施例1と同様である。その結果を図11に示す。この場合、オフセット電圧は、図11に示すように、実施例1の膜厚150nmのパラジウム電極の液晶セルと同様、すべての膜厚での試料で、非対称性は認められなかった。本実施例から、画素電極42Aの材料としてパラジウムを用いた場合には、その膜厚が、20nm以上であれば十分な効果があることが確認された。
【0060】
[実施例3]
次に、実施例1と同様にしてシリコン基板上に、画素電極42Aとして、パラジウム、銀および白金の薄膜を、その膜厚を20nm〜2000nmの間で種々変えて成膜し、その絶対反射率を測定した。比較のために、画素電極42Aとしてアルミニウムを成膜した場合の絶対反射率も測定した。
【0061】
図9に、横軸を膜厚(nm)、縦軸を絶対反射率(%)として、その測定結果を示す。画素電極42Aの膜厚が約60nm以下になると、いずれの金属材料においても本来の反射率から低下することが観測されたが、これは、膜がより薄くなることにより、光が透過し始めるために起こる。一方、膜厚が約60nmを超えると、いずれの金属材料においても、その反射率が飽和し、反射機能の観点からは十分となる。製造マージンを見越せば、その膜厚は100nm〜200nmが好ましいといえるが、それ以上厚くても良い。ただし、500nmの厚さを超えると、金属膜の結晶粒が急に成長して表面形状が荒くなり光の散乱が増す。このため、例えば液晶プロジェクタに応用した場合には、そのプロジェクション光学系で集光できなくなり、結果的にトータルの光量が低下することが明らかになった。従って、画素電極42Aの膜厚としては、50nm以上500nm未満が妥当であるという結論に達した。
【0062】
また本実施例により、画素電極42Aとして銀の薄膜を用いた場合、アルミニウム電極と比べ、その反射率が10%近く向上することが分かった。一方、パラジウムおよび白金を用いた場合には、絶対反射率がそれぞれ69%,63%と低い値を示すことが分かった。
【0063】
[実施例4]
次に、画素電極42Aの金属材料として、合金を用いた場合のV−T特性を調べた。評価用の素子の作製および測定条件は、上述の実施例1と同様である。具体的には、画素電極42Aとして、銀とパラジウムの原子比が50:50のパラジウム・銀合金膜と、白金と銀の原子比が50:50の白金・銀合金膜とを作製して測定した。膜厚は150nmとした。図11に、それらの測定結果をまとめて示す。いずれの合金膜を用いた場合においても、R(+)=R(−)であり、電池効果は全く観測されず、各極性間での反射率R(+),R(−)の非対称性は全く観察されなかった。オフセット電圧もほとんどゼロであった。
【0064】
[実施例5]
次に、実施例4と同様のパラジウム・銀合金膜および白金・銀合金膜の各合金膜について、銀の混合濃度(原子比)を種々変えて画素電極42Aを形成し、その絶対反射率を測定した。評価用の素子の作成方法、測定方法は実施例3と同様である。膜厚は150nm、測定波長は520nmとした。図10に、その測定結果を、絶対反射率(%)を縦軸、各合金中の銀の混合濃度を横軸にして示す。
【0065】
銀材料のみを画素電極42Aとして用いた場合(図中、銀の混合濃度100%の試料)には、画素電極42Aをアルミニウムにした場合よりも約10%反射率が向上する。しかしながら、一般に銀の単体膜は、液晶プロセスでは必須となっている紫外線オゾン洗浄処理によってその表面が黒化したり、また強い光の照射によって変色したりすることから実用上注意が必要である。一方、画素電極42Aとして、パラジウムまたは白金を単体で用いた場合(図中、銀の混合濃度0%の試料)には、アルミニウムに比べ反射率が低下する。しかしながら、銀材料を固容させてパラジウムまたは白金との合金膜にすることで、反射率が向上し、アルミニウムに対して遜色ないものとなることが分かった。
【0066】
本実施例から、上述の銀の化学的不安定性とパラジウムおよび白金の低反射率の双方の問題を解消する方法として、パラジウムと銀の合金膜、または白金と銀の合金膜が効果的なことが見いだされた。すなわち、銀の化学的不安定性は、化学的に極めて安定なパラジウムもしくは白金を混合させることにより解消される。また、パラジウムまたは白金による反射率の低下は、これらに銀を混合することで、アルミニウム画素電極と同等な値にまで向上する。化学的安定性と反射率との両者の性能を満たす混合比率(銀の混合濃度)は、原子比で、20%〜80%、好ましくは40%〜60%であった。
【0067】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、本発明の反射型液晶表示素子は、液晶プロジェクタに限らず、その他の表示装置、ならびに各種携帯型電子機器および各種情報処理端末などにおける映像表示部に広く適用することが可能である。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の反射型液晶表示素子、または請求項10もしくは11記載の液晶表示装置によれば、画素電極として、その標準電極電位が、対向する透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料を用いるようにしたので、対向する電極間での電池効果を抑制することができる。これにより、液晶応答の非対称性を抑制することができるので、駆動電圧に印加するオフセット電圧の低減を図ることができる。従って、オフセット電圧の印加が不要となり、もしくは長期駆動を行った場合にもオフセット電圧の変化を少なくすることができ、結果的に、長期駆動を行った場合にも高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る反射型液晶表示素子の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した反射型液晶表示素子を使用して構成された液晶表示装置の一例を示す構成図である。
【図3】各種金属の標準電極電位についての説明図である。
【図4】画素電極の金属材料としてアルミニウムを用いた場合(比較例)における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図5】銀を画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図6】パラジウムを画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図7】イリジウムを画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図8】白金を画素電極として用いた場合における、駆動電圧と透過率との関係を示す特性図である。
【図9】各種金属材料についての膜厚と反射率との関係を示す特性図である。
【図10】パラジウム・銀合金膜および白金・銀合金膜の各合金膜を、銀の混合濃度を種々変化させた場合における、反射率の変化を示す特性図である。
【図11】各材料、各膜厚についての、非対称性の状況とオフセット電圧との測定結果をまとめて示す説明図である。
【図12】液晶表示素子における駆動方式の一例を説明するための波形図である。
【符号の説明】
11…光源、12,13…ダイクロイックミラー、14…全反射ミラー、15,16,17…偏光ビームスプリッタ、18…合成プリズム、19…投射レンズ、20…スクリーン、21…反射型液晶表示素子、21R,21G,21B…液晶ライトバルブ、31…ガラス基板、32…透明電極層、33,44…配向膜、35…液晶層、40…画素電極基板、41…基板、42…反射電極層、42A…画素電極。
Claims (11)
- 金属材料によって構成された反射型の画素電極、を有する画素電極基板と、
前記画素電極に対向するよう設けられた透明電極、を有する対向基板と、
前記画素電極基板と前記対向基板との間に注入された液晶と
を備えた反射型液晶表示素子であって、
前記画素電極として、その標準電極電位が、前記透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料が用いられている
ことを特徴とする反射型液晶表示素子。 - 前記透明電極は、その主成分が、インジウム・すず酸化膜(ITO)である
ことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素子。 - 前記画素電極として、その標準電極電位が、+0.75〜+1.25Vの範囲にある材料が用いられている
ことを特徴とする請求項2記載の反射型液晶表示素子。 - 前記画素電極は、その主成分が、銀、パラジウム、イリジウムもしくは白金、またはそれらの金属材料の合金である
ことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素子。 - 前記画素電極は、その主成分が、銀とパラジウムの合金、もしくは銀と白金の合金である
ことを特徴とする請求項4記載の反射型液晶表示素子。 - 前記銀とパラジウムの合金、または前記銀と白金の合金における銀の混合比率は、原子比で20%〜80%である
ことを特徴とする請求項5記載の反射型液晶表示素子。 - 前記画素電極の厚さが、50nm以上500nm未満である
ことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素子。 - 前記画素電極は、シリコン基板上に設けられたスイッチング素子によって駆動されるものである
ことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素子。 - 前記液晶は、垂直配向液晶である
ことを特徴とする請求項1記載の反射型液晶表示素子。 - 反射型液晶表示素子を備え、この反射型液晶表示素子によって変調された光を用いて映像表示を行う液晶表示装置であって、
前記反射型液晶表示素子が、
金属材料によって構成された反射型の画素電極、を有する画素電極基板と、
前記画素電極に対向するよう設けられた透明電極、を有する対向基板と、
前記画素電極基板と前記対向基板との間に注入された液晶と
を備え、
前記画素電極として、その標準電極電位が、前記透明電極の標準電極電位に対して±25%以内の範囲にある材料が用いられている
ことを特徴とする液晶表示装置。 - 光源と、
前記光源から発せられ、前記反射型液晶表示素子によって変調された光をスクリーンに投射する投射手段と
を備え、
反射型液晶プロジェクタとして構成されている
ことを特徴とする請求項10記載の液晶表示装置。
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