JP2004011899A - 磁性流体シール回転軸機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構を提供する。
【解決手段】磁性体から形成された回転軸(1)の外周面から軸受け(2)の内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起(3)が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体(4)が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部とする。
【選択図】 図1
【解決手段】磁性体から形成された回転軸(1)の外周面から軸受け(2)の内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起(3)が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体(4)が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、磁性流体シール回転軸機構に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この出願の発明の発明者により、動径方向に着磁した永久磁石を用い、合理的な磁気回路をもち、分品点数の少ない高性能な磁性流体シール軸受けが提案されている。この磁性流体シール軸受けは、分類上、軸受け突起型に属する。すなわち、図6〜図9に示したように、回転軸(1)の外周面からそれに対向する軸受け側の磁極片(8)の内周面に向かって回転軸(1)の外周面に単数又は回転軸(1)の軸方向に配列された複数の円環状の突起(3)が突設され、突起(3)の断面形状が、図6に示した矩形、図7に示したメサ型、図8に示した三角形、又は図9に示した台形とされている。
【0003】
そして、以上の磁性流体シール軸受けでは、そのような各種断面形状を有する突起(3)と軸受け側の磁極片(8)の内周面との間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体(4)が磁気的に保持されて回転軸(1)がシールされる。
【0004】
なお、図6〜図9の図中に示した符号5は磁極、6は磁束線をそれぞれ示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6〜図9に示した先に提案した磁性流体シール軸受けを含め、以前から用いられていたその他の軸受け突起型、さらに回転軸突起型の磁性流体シール回転軸機構は、真空漏れがなく、超高真空の要求に対して十分なシール性能を有しているものの、以下に示す2つの大きな問題を抱えている。
【0006】
第一は、回転抵抗が大きいという問題である。前述のシール部分に強力な磁界をかけると磁性流体(4)の粘度が大きくなり、磁性流体(4)は回転運動に対して粘性抵抗を示すようになる。この磁性流体(4)の粘性抵抗によって回転軸(1)の回転運動エネルギーが散逸し、熱に変わるため回転抵抗が大きくなると考えられる。したがって、回転軸(1)を一定速度で駆動させるには、無負荷状態でも磁性流体(4)の粘性抵抗にうち勝つことのできる一定のトルクが必要となる。磁性流体(4)の粘性抵抗は回転軸(1)の回転数に比例して増大し、力学的には摩擦と等価であるため、たとえば大型の高速軸受けでは水冷など外部から積極的に冷却しなければならないという不都合がある。
【0007】
第二は、起動のためのトルクが大きいという問題である。磁性流体シール回転軸機構を起動させる際には回転軸(1)の質量による慣性力をはるかに上回る起動トルクが必要である。一方、一旦起動するとトルクは急に小さくなり、一定のトルクで定常状態に達する。この状態はあたかも起動前の磁性流体シール回転軸機構が固まっているかのような感じであり、この現象はこれまでの磁性流体シール回転軸機構では避けることのできない現象であった。このため、磁性流体シール回転軸機構には負荷荷重を超える駆動動力が必要であり、たとえば回転駆動源にステップモータなどを採用し、頻繁に起動・停止を繰り返すような機械系では、起動・停止の制御を精度よく、また、十分に行うことはできなかった。
【0008】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構を提供することを解決すべき課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題の解決に当たり、この出願の発明の発明者は鋭意研究をした。
【0010】
図6に示した磁性流体シール回転軸機構を代表例として説明すると、磁束線(6)は突起(3)の表面と回転軸(1)側の磁極(5)の表面からそれぞれ垂直に沸きだし、両表面をつないで分布している。これは、磁束密度に関するMaxwellの方程式
divB=0
、すなわち、磁束密度Bの法線成分が媒質間で連続であるという電磁気学の法則によっている。
【0011】
また、磁束線(6)は均一に分布するのではなく、突起(3)の角部分に集中する。これは、磁極分布が曲率半径に反比例し、尖った箇所では磁極分布が高くなり、磁気的ポテンシャルが高くなるという磁性体の性質による。つまり、尖った角部分では磁界の強さが鋭い極大値をもち、したがって、その部分の磁界勾配が極端に大きくなるのである。以上の状況は図7〜図9に示したメサ型突起、三角形突起及び台形突起においても同様である。
【0012】
さらに、図6において磁束線(6)は突起(3)の根元に近い部分から漏洩している。これは、幅より高さが大きい矩形状の突起(3)においては、突起(3)の根元部分が先端部分よりも先に磁気的に飽和し、突起(3)の先端部分には磁束が効率よく集中しないことを意味している。この状況は図7〜図9に示したメサ型突起、三角形突起及び台形突起では改善されているが、矩形突起では、磁性流体(4)は、磁束線(6)につかまって分布し、突起(3)の根元部分の近くから広く分布する。
【0013】
ところで、磁性流体(4)は強い磁界勾配の中におかれると、図10に示したように、磁性流体(4)に含まれる強磁性微粒子(7)が磁界勾配の中を磁界のより強い方向に磁気力を受けて移動し、磁束線(6)に沿って長く連なり、鎖状構造を形成する。この鎖状構造は磁界勾配が大きい部分、すなわち図6に示した矩形状の突起(3)では角部分に発生しやすい。このようにして発生する強磁性微粒子(7)の鎖状構造は突起(3)と磁極(5)をつなぎ止めるように作用する。回転軸(1)が回転運動をする際、軸受け側の磁極(5)に接する磁性流体(4)の表層は静止しているが、回転軸(1)側の突起(3)に接する磁性流体(4)の表層は回転軸(1)と等しい速度で回転軸(1)に引きずられて運動する。つまり、磁性流体(4)はこのような大きなずり変形場の中で流動する。前述のとおり、磁束線(6)は常に突起(3)及び磁極(5)の各表面に垂直であるため、強磁性微粒子(7)の鎖状構造は磁性流体(4)の流動方向に垂直となる。したがって、回転軸(1)は常にその鎖状構造を切りながら回転することになり、常に制動がかかるのである。これが磁性流体シール回転軸機構における第一の問題である回転抵抗が大きいことの主因と考えられる。
【0014】
また、強磁性微粒子(7)の鎖状構造は静止状態では数十秒にわたって発達を続け、鎖状構造はより強固にしかも長くなるという性質をもっている。このため、磁性流体シール回転軸機構を静止したまましばらく放置した後、回転起動させると、以上から理解されるように制動力はより大きくなる。これが第二の問題である起動に必要なトルクが大きいことの主因と考えられる。
【0015】
このように、前述の2つの問題は、磁性流体(4)に含まれる強磁性粒子(7)の鎖状構造の形成とこれにともなう磁性流体(4)の粘弾性に起因することが判明した。この出願の発明は、以上の技術的知見に基づき、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面に他方に向かって突設する突起(3)の断面の外形を特定することによりそれらの問題が解決されることを見出し、完成されたものである。
【0016】
すなわち、 この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項1)を提供する。
【0017】
また、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はそれらの曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項2)を提供する。
【0018】
さらに、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項3)を提供する。
【0019】
さらにまた、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円又は楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項4)を提供する。
【0020】
そして、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はその曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項5)を提供する。
【0021】
そしてまた、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起の断面外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項6)を提供する。
【0022】
以下、図面に沿ってこの出願の発明の磁性流体シール回転軸機構についてさらに詳しく説明する。
【0023】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、概略的には、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面のいずれかにそれぞれの他方に向かって突設する突起(3)の断面の外形を、図1に示したような楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部とするか、図2に示したような一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はその曲線の一部としている。
【0024】
これらの図1及び図2に示したように、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面における磁極(5)の分布が均一であり、ここから沸きでる磁束線(6)の沸きだし点が均一に分布する。このことは突起(3)の周辺では磁界勾配が一様であることを意味している。ただし、図1に示した楕円状外形の突起(3)と図2に示した三角関数で示される波形状の外形を有する突起(3)と比較すると、前者の方が後者より磁束線(6)の分布の一様性はより高い。
【0025】
なお、突起(3)の断面の外形は半円状若しくは半円でない円の一部の形状であっても以上の楕円の範ちゅうに属する。なぜならば、円は軸比(長軸長さ/短軸長さ)が1の特殊な楕円に相当するからである。
【0026】
また、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、突起(3)の外形は先に提案した矩形、メサ型、三角形又は台形を基にし、その頂部を以上の楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状としても、ほぼ同様に均一な磁極(5)の分布、均一な磁束線(6)の沸きだし点の分布が実現される。
【0027】
そのように一様な磁束線(6)の分布と突起(3)の周辺での一様な磁界勾配を実現する突起(3)により、図10に示したような磁性流体(4)に含まれる強磁性粒子(7)の鎖状構造は発生しにくくなる。したがって、回転抵抗は小さくなり、約半分にまで減少する。また、一定時間静止していた後、起動させる際の起動に必要なトルクも小さくなり、無負荷状態で比較するとこれまでの磁性流体シール回転軸機構に要するトルクの約半分にまで減少する。このため、回転駆動源の駆動力を小型軽量化させることができ、また、力学的損失も低減し、発熱量が減少することから、たとえば大型の軸受けでも外部から積極的に冷却する必要はなくなる。回転駆動源にステップモータなどを採用し、頻繁に起動・停止を繰り返すような機械系での使用に十分耐え得る。さらに、上記突起(3)は、磁性流体シール回転軸機構において起こることのあるバースト、すなわち回転速度の増大とともに耐圧力が直線的に減少し、やがてシール性が一瞬のうちに破壊されるという現象をある程度抑えることができるという副次的な作用効果もある。より高速回転までシール性が保持されるのである。
【0028】
ところで、前述した突起(3)の三角関数で示される波形状の外形について図2を用いてより具体的に説明すると、外形線Sn(x)は突起(3)の間隔Tを周期とする周期関数であり、これをフーリエ級数を用いて以下に簡便に示すことができる。すなわち、
ここでxは回転軸(1)の軸方向の距離、ω=2π/Tである。フーリエ係数a1,a2,a3,‥‥,an及びb1,b2,b3,‥‥,bnを適当に選択することによりすべての突起(3)の断面の外形を近似的に表現することができる。たとえば楕円及び滑らかな曲線で構成される波形は低次の級数和
で示すことができる。先に提案した矩形、メサ型、三角形又は台形は前述の式においてn→∞とした高次の項までを含めた級数和で示すことができる。
【0029】
このような断面の外形を有する突起(3)は回転軸(1)に突設する際にも、また軸受け(2)に突設する際にも機械加工は容易である。したがって、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構はその生産性が高く、製造コストの低減に寄与する。この経済的効果は、前述の回転駆動源の小型軽量化、冷却手段の省略などを考え合わせると多大になると推測される。
【0030】
次にこの出願の発明の磁性流体シール回転軸機構の実施例を示す。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
図3及び図4に示したような断面の外形が楕円の一部である突起(3)が回転軸(1)の外周面に軸受け(2)に向かって突設された磁性流体シール回転軸機構を作製した。
【0032】
回転軸(1)は強磁性ステンレススチールSUS630製の外径10mmの棒状部材とした。この回転軸(1)に溝を切ることにより円環状で断面の外形が軸比(長軸長さ/短軸長さ)5の楕円の半分に相当する高さ0.5mm、基部幅0.2mmの突起(3)を1mm間隔で10段設けた。
【0033】
軸受け(2)の磁気回路は、軟鋼製の内径11.2mm、外径13.8mm未満の円筒状の磁極片(8)に、動径方向に着磁した内径13.8mm、外径17.8mmのネオジム−鉄−ホウ素合金の熱間押出異方性永久磁石(9)を外接させて配置し、片側を作製した。残る片側は、反対向きに着磁した上記永久磁石(9)を用いた以外は同じ部品を用いて作製した。これら両者の間にA5083耐食アルミニウム合金製の円筒(10)を介挿し、各々を7mm離間させて強磁性ステンレススチールSUS630製の内径17.8mm過ぎ、外径22mmの円筒状の継鉄(11)の内部に挿入した。このような軸受け(2)を図4に示した真空フランジ(12)付きの軸受けハウジングの内部に気密性を保って組み込んだ。
【0034】
回転軸(1)は、また、突起(3)が磁極片(8)の内面と対向し、両者間に動径方向に0.08mmの隙間が形成されるように配置され、玉軸受け(13)を用いて回転の自由を残して機械的に固定された。その突起(3)と磁極片(8)の間に形成された隙間にはフッ素油ベースの超高真空用の磁性流体(4)を注入し、シールした。
【0035】
なお、磁性流体(4)と同質のフッ素油ベースの超高真空用磁気スラリーを磁極片(8)と永久磁石(9)の界面及び永久磁石(9)と継鉄(11)の界面に含浸させ、両界面の気密性も図った。ここで、超高真空用磁気スラリーとは、フッ素油ベースの超高真空磁性流体を含む一方、磁性流体ほど分散安定性に優れていないスラリー状のフッ素油ベースの磁気コロイドのことである。また、図4図中の符号14は真空ガスケットである。
【0036】
以上の磁性流体シール回転軸機構を真空試験装置を用い、図4に示した1気圧の圧力差の下で試験した。その結果は、組立て後72時間放置後の回転起動時に必要とされたトルクは0.20N・mであり、従来品の約20%であった。また、起動後回転数が5800rpmに達したとき、回転抵抗は0.15N・mであり、従来品の約50%であった。起動時のトルク、回転抵抗のいずれも改善されていることが確認された。
【0037】
なお、30000rpm以上の回転速度では10−6Paの真空度が維持され、真空漏れは検出されなかった。
(実施例2)
実施例1に示した磁性流体シール回転軸機構における回転軸(1)に突設した突起(3)以外は全く同様の構成とした。すなわち、突起(3)の断面の外形を高さ0.75mm、周期1.2mmのsin関数の波形としたのみの変更である。
【0038】
この磁性流体シール回転軸機構もまた実施例1と同様な試験を行った。その結果は実施例1の結果とほぼ同様であった。また、30000rpm以上の回転速度で10−6Paの真空度が維持され、真空漏れは検出されなかった。
【0039】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。回転軸の形状及び材質、軸受けの構造、各部品の形状及び材質などの細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の磁気流体シール回転軸機構の一実施形態を示した要部断面図である。
【図2】この出願の発明の磁気流体シール回転軸機構の一実施形態を示した要部断面図である。
【図3】実施例1における磁気流体シール回転軸機構を示した断面図である。
【図4】実施例1における磁気流体シール回転軸機構を組み込んだ回転軸機構を示した断面図である。
【図5】実施例2における磁気流体シール回転軸機構を示した断面図である。
【図6】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図7】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図8】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図9】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図10】図6に示した磁性流体シール回転軸受けの突起付近に形成される強磁性微粒子の鎖状構造を概念的に示した概要図である。
【符号の説明】
1 回転軸
2 軸受け
3 突起
4 磁性流体
5 磁極
6 磁束線
7 強磁性微粒子
8 磁極片
9 永久磁石
10 円筒
11 継鉄
12 真空フランジ
13 玉軸受け
14 真空ガスケット
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、磁性流体シール回転軸機構に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この出願の発明の発明者により、動径方向に着磁した永久磁石を用い、合理的な磁気回路をもち、分品点数の少ない高性能な磁性流体シール軸受けが提案されている。この磁性流体シール軸受けは、分類上、軸受け突起型に属する。すなわち、図6〜図9に示したように、回転軸(1)の外周面からそれに対向する軸受け側の磁極片(8)の内周面に向かって回転軸(1)の外周面に単数又は回転軸(1)の軸方向に配列された複数の円環状の突起(3)が突設され、突起(3)の断面形状が、図6に示した矩形、図7に示したメサ型、図8に示した三角形、又は図9に示した台形とされている。
【0003】
そして、以上の磁性流体シール軸受けでは、そのような各種断面形状を有する突起(3)と軸受け側の磁極片(8)の内周面との間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体(4)が磁気的に保持されて回転軸(1)がシールされる。
【0004】
なお、図6〜図9の図中に示した符号5は磁極、6は磁束線をそれぞれ示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6〜図9に示した先に提案した磁性流体シール軸受けを含め、以前から用いられていたその他の軸受け突起型、さらに回転軸突起型の磁性流体シール回転軸機構は、真空漏れがなく、超高真空の要求に対して十分なシール性能を有しているものの、以下に示す2つの大きな問題を抱えている。
【0006】
第一は、回転抵抗が大きいという問題である。前述のシール部分に強力な磁界をかけると磁性流体(4)の粘度が大きくなり、磁性流体(4)は回転運動に対して粘性抵抗を示すようになる。この磁性流体(4)の粘性抵抗によって回転軸(1)の回転運動エネルギーが散逸し、熱に変わるため回転抵抗が大きくなると考えられる。したがって、回転軸(1)を一定速度で駆動させるには、無負荷状態でも磁性流体(4)の粘性抵抗にうち勝つことのできる一定のトルクが必要となる。磁性流体(4)の粘性抵抗は回転軸(1)の回転数に比例して増大し、力学的には摩擦と等価であるため、たとえば大型の高速軸受けでは水冷など外部から積極的に冷却しなければならないという不都合がある。
【0007】
第二は、起動のためのトルクが大きいという問題である。磁性流体シール回転軸機構を起動させる際には回転軸(1)の質量による慣性力をはるかに上回る起動トルクが必要である。一方、一旦起動するとトルクは急に小さくなり、一定のトルクで定常状態に達する。この状態はあたかも起動前の磁性流体シール回転軸機構が固まっているかのような感じであり、この現象はこれまでの磁性流体シール回転軸機構では避けることのできない現象であった。このため、磁性流体シール回転軸機構には負荷荷重を超える駆動動力が必要であり、たとえば回転駆動源にステップモータなどを採用し、頻繁に起動・停止を繰り返すような機械系では、起動・停止の制御を精度よく、また、十分に行うことはできなかった。
【0008】
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構を提供することを解決すべき課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の課題の解決に当たり、この出願の発明の発明者は鋭意研究をした。
【0010】
図6に示した磁性流体シール回転軸機構を代表例として説明すると、磁束線(6)は突起(3)の表面と回転軸(1)側の磁極(5)の表面からそれぞれ垂直に沸きだし、両表面をつないで分布している。これは、磁束密度に関するMaxwellの方程式
divB=0
、すなわち、磁束密度Bの法線成分が媒質間で連続であるという電磁気学の法則によっている。
【0011】
また、磁束線(6)は均一に分布するのではなく、突起(3)の角部分に集中する。これは、磁極分布が曲率半径に反比例し、尖った箇所では磁極分布が高くなり、磁気的ポテンシャルが高くなるという磁性体の性質による。つまり、尖った角部分では磁界の強さが鋭い極大値をもち、したがって、その部分の磁界勾配が極端に大きくなるのである。以上の状況は図7〜図9に示したメサ型突起、三角形突起及び台形突起においても同様である。
【0012】
さらに、図6において磁束線(6)は突起(3)の根元に近い部分から漏洩している。これは、幅より高さが大きい矩形状の突起(3)においては、突起(3)の根元部分が先端部分よりも先に磁気的に飽和し、突起(3)の先端部分には磁束が効率よく集中しないことを意味している。この状況は図7〜図9に示したメサ型突起、三角形突起及び台形突起では改善されているが、矩形突起では、磁性流体(4)は、磁束線(6)につかまって分布し、突起(3)の根元部分の近くから広く分布する。
【0013】
ところで、磁性流体(4)は強い磁界勾配の中におかれると、図10に示したように、磁性流体(4)に含まれる強磁性微粒子(7)が磁界勾配の中を磁界のより強い方向に磁気力を受けて移動し、磁束線(6)に沿って長く連なり、鎖状構造を形成する。この鎖状構造は磁界勾配が大きい部分、すなわち図6に示した矩形状の突起(3)では角部分に発生しやすい。このようにして発生する強磁性微粒子(7)の鎖状構造は突起(3)と磁極(5)をつなぎ止めるように作用する。回転軸(1)が回転運動をする際、軸受け側の磁極(5)に接する磁性流体(4)の表層は静止しているが、回転軸(1)側の突起(3)に接する磁性流体(4)の表層は回転軸(1)と等しい速度で回転軸(1)に引きずられて運動する。つまり、磁性流体(4)はこのような大きなずり変形場の中で流動する。前述のとおり、磁束線(6)は常に突起(3)及び磁極(5)の各表面に垂直であるため、強磁性微粒子(7)の鎖状構造は磁性流体(4)の流動方向に垂直となる。したがって、回転軸(1)は常にその鎖状構造を切りながら回転することになり、常に制動がかかるのである。これが磁性流体シール回転軸機構における第一の問題である回転抵抗が大きいことの主因と考えられる。
【0014】
また、強磁性微粒子(7)の鎖状構造は静止状態では数十秒にわたって発達を続け、鎖状構造はより強固にしかも長くなるという性質をもっている。このため、磁性流体シール回転軸機構を静止したまましばらく放置した後、回転起動させると、以上から理解されるように制動力はより大きくなる。これが第二の問題である起動に必要なトルクが大きいことの主因と考えられる。
【0015】
このように、前述の2つの問題は、磁性流体(4)に含まれる強磁性粒子(7)の鎖状構造の形成とこれにともなう磁性流体(4)の粘弾性に起因することが判明した。この出願の発明は、以上の技術的知見に基づき、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面に他方に向かって突設する突起(3)の断面の外形を特定することによりそれらの問題が解決されることを見出し、完成されたものである。
【0016】
すなわち、 この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項1)を提供する。
【0017】
また、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はそれらの曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項2)を提供する。
【0018】
さらに、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項3)を提供する。
【0019】
さらにまた、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円又は楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項4)を提供する。
【0020】
そして、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はその曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項5)を提供する。
【0021】
そしてまた、この出願の発明は、磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起の断面外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構(請求項6)を提供する。
【0022】
以下、図面に沿ってこの出願の発明の磁性流体シール回転軸機構についてさらに詳しく説明する。
【0023】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、概略的には、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面のいずれかにそれぞれの他方に向かって突設する突起(3)の断面の外形を、図1に示したような楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部とするか、図2に示したような一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はその曲線の一部としている。
【0024】
これらの図1及び図2に示したように、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、回転軸(1)の外周面又は軸受け(2)の内周面における磁極(5)の分布が均一であり、ここから沸きでる磁束線(6)の沸きだし点が均一に分布する。このことは突起(3)の周辺では磁界勾配が一様であることを意味している。ただし、図1に示した楕円状外形の突起(3)と図2に示した三角関数で示される波形状の外形を有する突起(3)と比較すると、前者の方が後者より磁束線(6)の分布の一様性はより高い。
【0025】
なお、突起(3)の断面の外形は半円状若しくは半円でない円の一部の形状であっても以上の楕円の範ちゅうに属する。なぜならば、円は軸比(長軸長さ/短軸長さ)が1の特殊な楕円に相当するからである。
【0026】
また、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構では、突起(3)の外形は先に提案した矩形、メサ型、三角形又は台形を基にし、その頂部を以上の楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状としても、ほぼ同様に均一な磁極(5)の分布、均一な磁束線(6)の沸きだし点の分布が実現される。
【0027】
そのように一様な磁束線(6)の分布と突起(3)の周辺での一様な磁界勾配を実現する突起(3)により、図10に示したような磁性流体(4)に含まれる強磁性粒子(7)の鎖状構造は発生しにくくなる。したがって、回転抵抗は小さくなり、約半分にまで減少する。また、一定時間静止していた後、起動させる際の起動に必要なトルクも小さくなり、無負荷状態で比較するとこれまでの磁性流体シール回転軸機構に要するトルクの約半分にまで減少する。このため、回転駆動源の駆動力を小型軽量化させることができ、また、力学的損失も低減し、発熱量が減少することから、たとえば大型の軸受けでも外部から積極的に冷却する必要はなくなる。回転駆動源にステップモータなどを採用し、頻繁に起動・停止を繰り返すような機械系での使用に十分耐え得る。さらに、上記突起(3)は、磁性流体シール回転軸機構において起こることのあるバースト、すなわち回転速度の増大とともに耐圧力が直線的に減少し、やがてシール性が一瞬のうちに破壊されるという現象をある程度抑えることができるという副次的な作用効果もある。より高速回転までシール性が保持されるのである。
【0028】
ところで、前述した突起(3)の三角関数で示される波形状の外形について図2を用いてより具体的に説明すると、外形線Sn(x)は突起(3)の間隔Tを周期とする周期関数であり、これをフーリエ級数を用いて以下に簡便に示すことができる。すなわち、
ここでxは回転軸(1)の軸方向の距離、ω=2π/Tである。フーリエ係数a1,a2,a3,‥‥,an及びb1,b2,b3,‥‥,bnを適当に選択することによりすべての突起(3)の断面の外形を近似的に表現することができる。たとえば楕円及び滑らかな曲線で構成される波形は低次の級数和
で示すことができる。先に提案した矩形、メサ型、三角形又は台形は前述の式においてn→∞とした高次の項までを含めた級数和で示すことができる。
【0029】
このような断面の外形を有する突起(3)は回転軸(1)に突設する際にも、また軸受け(2)に突設する際にも機械加工は容易である。したがって、この出願の発明の磁性流体シール回転軸機構はその生産性が高く、製造コストの低減に寄与する。この経済的効果は、前述の回転駆動源の小型軽量化、冷却手段の省略などを考え合わせると多大になると推測される。
【0030】
次にこの出願の発明の磁性流体シール回転軸機構の実施例を示す。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
図3及び図4に示したような断面の外形が楕円の一部である突起(3)が回転軸(1)の外周面に軸受け(2)に向かって突設された磁性流体シール回転軸機構を作製した。
【0032】
回転軸(1)は強磁性ステンレススチールSUS630製の外径10mmの棒状部材とした。この回転軸(1)に溝を切ることにより円環状で断面の外形が軸比(長軸長さ/短軸長さ)5の楕円の半分に相当する高さ0.5mm、基部幅0.2mmの突起(3)を1mm間隔で10段設けた。
【0033】
軸受け(2)の磁気回路は、軟鋼製の内径11.2mm、外径13.8mm未満の円筒状の磁極片(8)に、動径方向に着磁した内径13.8mm、外径17.8mmのネオジム−鉄−ホウ素合金の熱間押出異方性永久磁石(9)を外接させて配置し、片側を作製した。残る片側は、反対向きに着磁した上記永久磁石(9)を用いた以外は同じ部品を用いて作製した。これら両者の間にA5083耐食アルミニウム合金製の円筒(10)を介挿し、各々を7mm離間させて強磁性ステンレススチールSUS630製の内径17.8mm過ぎ、外径22mmの円筒状の継鉄(11)の内部に挿入した。このような軸受け(2)を図4に示した真空フランジ(12)付きの軸受けハウジングの内部に気密性を保って組み込んだ。
【0034】
回転軸(1)は、また、突起(3)が磁極片(8)の内面と対向し、両者間に動径方向に0.08mmの隙間が形成されるように配置され、玉軸受け(13)を用いて回転の自由を残して機械的に固定された。その突起(3)と磁極片(8)の間に形成された隙間にはフッ素油ベースの超高真空用の磁性流体(4)を注入し、シールした。
【0035】
なお、磁性流体(4)と同質のフッ素油ベースの超高真空用磁気スラリーを磁極片(8)と永久磁石(9)の界面及び永久磁石(9)と継鉄(11)の界面に含浸させ、両界面の気密性も図った。ここで、超高真空用磁気スラリーとは、フッ素油ベースの超高真空磁性流体を含む一方、磁性流体ほど分散安定性に優れていないスラリー状のフッ素油ベースの磁気コロイドのことである。また、図4図中の符号14は真空ガスケットである。
【0036】
以上の磁性流体シール回転軸機構を真空試験装置を用い、図4に示した1気圧の圧力差の下で試験した。その結果は、組立て後72時間放置後の回転起動時に必要とされたトルクは0.20N・mであり、従来品の約20%であった。また、起動後回転数が5800rpmに達したとき、回転抵抗は0.15N・mであり、従来品の約50%であった。起動時のトルク、回転抵抗のいずれも改善されていることが確認された。
【0037】
なお、30000rpm以上の回転速度では10−6Paの真空度が維持され、真空漏れは検出されなかった。
(実施例2)
実施例1に示した磁性流体シール回転軸機構における回転軸(1)に突設した突起(3)以外は全く同様の構成とした。すなわち、突起(3)の断面の外形を高さ0.75mm、周期1.2mmのsin関数の波形としたのみの変更である。
【0038】
この磁性流体シール回転軸機構もまた実施例1と同様な試験を行った。その結果は実施例1の結果とほぼ同様であった。また、30000rpm以上の回転速度で10−6Paの真空度が維持され、真空漏れは検出されなかった。
【0039】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施形態及び実施例によって限定されるものではない。回転軸の形状及び材質、軸受けの構造、各部品の形状及び材質などの細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、回転中の回転抵抗が小さく、しかも回転起動時のトルクも小さい磁性流体シール回転軸機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の磁気流体シール回転軸機構の一実施形態を示した要部断面図である。
【図2】この出願の発明の磁気流体シール回転軸機構の一実施形態を示した要部断面図である。
【図3】実施例1における磁気流体シール回転軸機構を示した断面図である。
【図4】実施例1における磁気流体シール回転軸機構を組み込んだ回転軸機構を示した断面図である。
【図5】実施例2における磁気流体シール回転軸機構を示した断面図である。
【図6】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図7】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図8】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図9】先に提案した磁性流体シール回転軸受けの要部断面と突起付近の磁界分布及び磁性流体の形状を示した概要図である。
【図10】図6に示した磁性流体シール回転軸受けの突起付近に形成される強磁性微粒子の鎖状構造を概念的に示した概要図である。
【符号の説明】
1 回転軸
2 軸受け
3 突起
4 磁性流体
5 磁極
6 磁束線
7 強磁性微粒子
8 磁極片
9 永久磁石
10 円筒
11 継鉄
12 真空フランジ
13 玉軸受け
14 真空ガスケット
Claims (6)
- 磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円若しくは楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
- 磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はそれらの曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
- 磁性体から形成された回転軸の外周面から軸受けの内周面に向かって単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と軸受け内周面の間に磁界が集中し、その部分に形成されている隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
- 磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が楕円又は楕円に近似する曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
- 磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起断面の外形が、一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線又はその曲線の一部であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
- 磁性体から形成された回転軸の外周面に向かって軸受けの内周面から単数又は回転軸の軸方向に配列された複数の円環状の突起が突設され、この突起と回転軸外周面の間に磁界が集中し、その部分に形成される隙間に磁性流体が磁気的に保持されてシールされる磁性流体シール回転軸機構において、突起の断面外形が、矩形、メサ型、三角形又は台形の頂部を楕円の一部を構成する曲線、又は一つの三角関数若しくは二つ以上の三角関数の級数和で示される曲線の一部に沿って丸めた形状であることを特徴とする磁性流体シール回転軸機構。
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050726 |